NETIS プラス New Technology Information System ネティス 技術情報誌 第4号 2012 夏 巻頭インタビュー 技術開発に挑み続ける日本企業への提言 自治体の取組み 静岡県の「新技術・新工法」の取組み状況について トピックス コマツ取締役会長 坂根正弘氏にお聞きしました。 がれき残渣の有効活用によるアップサイクルブロックの開発 新東名高速道路(御殿場JCT∼三ケ日JCT)の事業概要 「快適な走りを感じてください、 なだらか・ゆるやかな新東名」 NETISトピックス 四国地方整備局における取組み 四国テーマ設定技術募集 の紹介 新技術レポート 補強土擁壁分野の新技術 NETIS資料室 新技術活用システムの簡単解説 Advanced Construction Technology Center 財団法人 先端建設技術センター 広告 C o n t e n t s NETIS プラス 巻頭インタビュー 技術開発に挑み続ける日本企業への提言 2 コマツ取締役会長 坂根正弘氏にお聞きしました。 自治体の取組み 静岡県の 「新技術・新工法」 の取組み状況について 8 新技術を積極的に活用・評価するための取組み 11 静岡県 交通基盤部 建設支援局 技術管理課 静岡県 交通基盤部 建設支援局 技術管理課インタビュー 着目新技術 開発者インタビュー ∼静岡県新技術情報データベースより∼ 14 (ジオロックウォール工法、 スーパー E ユニット、高所岩盤掘削機による岩盤掘削工法) トピックス がれき残渣の有効活用によるアップサイクルブロックの開発 20 がれき残渣の有効活用によるアップサイクルブロックの開発に関する勉強会 (財)先端建設技術センター、㈱大林組、鹿島建設㈱、㈱熊谷組、清水建設㈱、大成建設㈱ 新東名高速道路(御殿場JCT∼三ケ日JCT) の事業概要 26 中日本高速道路㈱ 東京支社 浜松工事事務所 「快適な走りを感じてください、 なだらか・ゆるやかな新東名」 29 中日本高速道路㈱ 浜松工事事務所 所長 望月俊明氏にお聞きしました。 NETISトピックス 四国地方整備局における取組み 四国テーマ設定技術募集 の紹介 36 ∼公募テーマ:災害対応技術(災害発生時の即日性調査) の試行調査について∼ 新技術レポート 補強土擁壁分野の新技術 38 (財)先端建設技術センター 常任参与 松尾修、企画部 参事 富田剛司 NETIS資料室 新技術活用システムの簡単解説 42 NETISに登録して活用した場合の利点は? 44 ∼第4回「新技術活用の方法」 について∼ ACTEC 事業紹介 最近NETISに登録された新技術の紹介 48 先端建設技術センター 建設技術審査証明取得技術の紹介 54 先端建設技術センターにて推薦した技術 エポコラム工法(地盤改良工法)KT-980205-Vが 平成24年度「準推奨技術」 に選出されました。 64 ∼先端建設技術センター NETIS新技術情報提供システム登録申請支援事業∼ ネティスプラス ドット ネット を開設しました。 66 技術情報誌「NETISプラス」 がダウンロードできます。 編集後記 静岡県では、昭和51年に東海地震説が発表されて以降、 「減災」 を合言葉に様々な取組 みを行っています。表紙写真は沼津港内の日本最大級の津波水門「沼津港大型展望水門 びゅうお」 と、官民共同で開発を行い同港において海洋実験を実施した 「直立浮上式防波堤」。 「沼津港大型展望水門びゅうお」 は、水門周辺に設置された感震器が震度6弱以上を感知すると水門 が自重降下し、閉鎖するシステムを採用しています。 また、沼津土木事務所内には、ITV監視制御用端末、 ゲート監視用端末が装備されており、水門および周辺状況の遠隔監視を行っています。 「直立浮上式防波堤」 は、通常、鋼管を船の航行に影響ない海底面下に格納して、異常時に上部鋼管 内部に空気を送り込むことにより数分で海上に浮上し、津波の高さや破壊力を低減させます。 東日本大震災では水門や防潮堤の閉鎖作業等が遠隔操作できないため、作業へ向かった多くの消防 団員が津波によって死亡・行方不明になりました。 このような人的被害を無くすためにも地震、津波等の 対策技術の更なる進歩を願っております。 表紙写真 財団法人 先端建設技術センター 技術情報誌 NETISプラス 第4号 2012夏 直立浮上式防波堤の概略図 Interview 巻頭インタビュー 技術開発に挑み続ける日本企業への提言 コマツ取締役会長 坂根正弘氏にお聞きしました。 ◆ トップダウンによるビジネスモデルの構築が重要 無人ダンプトラックの開発 日本の技術は、 ひとつひとつ見ると優れていますが、 技術で勝ってもビジネスで負ける 、技術で勝っても実 用化で負ける 、 これが日本の弱さを表した言葉だと思 います。 結局トップダウンがしっかりしておらずビジネスモデル がないということですよね。 コマツは、競合メーカーが数年かかっても追いつけ ない、際立った特徴をもつ商品を「ダントツ商品」 と名づ けています。その中の一つに、大規模鉱山において複 数の超大型ダンプトラックに全地球測位システム (GPS) 等をつけ、決められたコースを無人で走行させる無人 ダンプトラック運行システム (AHS)があります。 この無人ダンプトラックの研究開発は25年くらい前に スタートしまして、同業他社の多くが研究しておりました 坂根 正弘氏 コマツ (株式会社小松製作所)取締役会長 日本経済団体連合会副会長 1941年生まれ。島根県出身。 2001年代表取締役社長就任後、創業以来初の赤字に直面するが、構造改 革を断行。翌期にはV字回復を達成する。 2010年より現職。 が、我が社が世界で初めて実用化しました。 なぜ実用 化できたかというと、 まさに技術と技術を組み合わせた ビジネスモデル化 に成功したからです。 無人ダンプトラック運行システム(AHS)の概念図 中央制御室 GPS衛星 運行管理・制御 搬送 障害物検知時の 自動停止機能 排土場 2 NETIS プラス 積込み場 技術開発に挑み続ける日本企業への提言 コマツ取締役会長 坂根正弘氏にお聞きしました。 実用化までの道のり 今から20年くらい前、 あるアメリカ人に、 鉱山でダンプトラックを無人走行にしても、 投資額の方がはるかに大きく採算が合わ ないのではないかと言われました。無人ダ ンプトラックにするということは当然情報通 信インフラが要りますよね。 このためだけ に情報通信インフラを整備するというのは とても割りが合わないだろうという意味で す。 ですがよく考えてみると、鉱山というの はものすごく僻地にあるため、業務管理 用に情報通信LANは整備してあるはずです。そこで チリ「チュキカマタ鉱山」にて鉱石を運搬する コマツ無人ダンプトラック「930E」 調査をしたら、 アメリカのアリゾナにあるモジュラーマイ られ、 それにより生産量が管理されています。 ニングシステムズ社(MMS) という会社が当時世界の この業務管理用の情報通信LANと無人ダンプトラッ 鉱山の約6割において情報通信LANを設置しているこ クを結びつければビジネスモデルになるなというヒントを とが分かりました。 このLANが整備されている鉱山で 得て、1996年にそのMMS社を買収しました。 わが社の は、 ところどころに重量計が設置され、鉱石を積んだダ 技術とこのMMS社の技術を結びつけたことによって実 ンプトラックが重量計の上を通過すると積載量を計算 用化が可能となり、今ではチリやオーストラリアの鉱山 し、LANを介して管理用のパソコンへそのデータが送 で我が社の無人ダンプトラックが活躍しています。 トップダウンがカギを握る このように技術開発というのは、 ビジネスモデルをトッ プが早い時期にまず考えて、 このビジネスモデルを実現 するために不足している要素技術や資源を見極め、迅 速に対応する、 それが大事で、 そういう動きを起こして 初めてその会社は勝者になりえます。 国の場合も一緒で、我々は大災害に活用できる機械 の適用技術をいくらでも持っています。持っていますが、 いざ災害が発生したときに、すぐこういう機械を作ってく れと突然言われても間に合いません。実際には使う機 会はないかもしれないが、例えば、国が 想定外 に備え て、 災害対応用機械を、 5年や10年に一回、 継続的に発 注して保有しておく、 そのようなことを戦略的にトップダ ウンでやれば技術は確実に進歩すると思います。 NETIS プラス 3 Interview 巻頭インタビュー ◆ トップの執念が実を結ぶ 「ダントツ商品」コムトラックス はじまりは、 私が社長になる前の1997年に、 工事現場で 我が社の建設機械には、機械稼働管理システム 「コ ATM機械ごと持ち去るという事件が当時頻発しまし ムトラックス (KOMTRAX)」を標準装備しています。 こ た。昼食時の雑談で、 建設機械を盗んでトレーラーに載 れはGPS (全地球測位システム)機能があるほか、 エン せた途端に、 お客さんのオフィスでアラームが鳴るような ジンコントローラーやポンプコントローラーなどから集め 機能があればいいんじゃないかという話になり、 それが た情報を、通信機器を使ってコマツのデータセンターに 開発のきっかけとなりました。GPSを用いて、 あるエリア 送ってくる仕組みであり、 これも 「ダントツ商品」のひとつ から建設機械が移動したらアラームが鳴るようにすれ です。 ばいいだけですからそれは簡単にできます。 盗んだショベルカーを使って、銀行のATMを破壊して 今では世界で26万台に達するコムトラックスですが、 北米3.3万台 欧州3.0万台 中国9.6万台 日本7.3万台 アジア1.6万台 中南米1.4万台 オセアニア0.4万台 全世界合計26万台(2012年3月末現在) トップは自ら価値を見出せ れから出かけていくわけです。 ある程度修理の内容を 更に私が着目した点があります。 が当たらない。そこに大変なロスを感じていたところで かつて、私は日本とアメリカでサービス部長を務めた したので、 われわれにとってもこの技術のメリットは大き ことがありますが、 建設機械というのはアフターサービス いはずです。私はここに目をつけ、開発着手を指示しま が非常に重要です。地球とケンカしているわけですか した。その後、今ではGPS機能のほか、エンジンコント ら、頻繁に機械の修理等の依頼がきます。通常建設機 ローラーやポンプコントローラーから情報を集め、部品 械は路上にあるわけではないので、 サービス員は現場 の交換の要否といった情報がすぐにわかるシステムま へたどり着くだけで一苦労です。 まず場所と行き方を確 で進化しています。 認して、 それから故障の状態を電話でやりとりする、 そ 4 NETIS プラス 想定して必要な部品を持参するのですが、大抵それ 技術開発に挑み続ける日本企業への提言 コマツ取締役会長 坂根正弘氏にお聞きしました。 コムトラックスの概念図 GPS衛星 通信衛星回線/携帯電話回線 機械のデータサーバ KOMTRAXターミナル GPS アンテナ 通信アンテナ 通信モデム KOMTRAX コントローラ ウェブ・アプリケーション・サーバ インターネット ポンプコントローラ エンジンコントローラ 車両内 ネットワーク マルチモニタ 建設機械 お客さま/代理店/コマツ 実用化への執念と トップとしての決断 しかし当初は、実際に開発したとして誰が買ってくれ るだろうと考えていたら、福島県のレンタル会社の社長 が何十台もまとめて買うからすぐ開発してくれと言って くれました。 レンタルというのは機械をお客さんのところ へ貸し出したら、 稼働状況はわかりません。例えば、 ある お客さんに貸し出したのに、雨で使えなかったとか言わ れて値切られる。そういった場合、使いたいと言ってい る他のお客さんに貸したいから稼働状況を把握したい ということです。つまりレンタル先での稼働状況の「見え る化」です。 また建設機械は自動車と違いガソリンスタ ンドで燃料補給できないため、現場で給油車にて一台 一台入れていく必要があります。 この技術で燃料管理、 1981年、 「小松アメリカ」のオフィスにて。サービス部長とし て赴任し、全米各地の代理店からかかってくるクレームの電 話に苦労した。 そして給油ルートも確認できれば工事現場の管理者に プション品ということでお金を払ってくれたお客さんにだ も役立ちます。当時経営企画室長だった私はすぐに開 け搭載していましたが、私は、 お客さんのためのコストと 発をスタートさせ、 それが実用化されはじめたときに社 思わないで、 コムトラックスから得られる様々な情報を用 長になりました。 いてわれわれ自身がそれ以上の価値を発揮すればい この技術には当時1台あたり20万円のコストがかか いと考え、標準装備に踏み切りました。 このようなことも り、車両の販売価の約2%を占めていました。最初はオ トップダウンだからできたことです。 NETIS プラス 5 Interview 巻頭インタビュー 技術開発に必要なものとは となんです。 国家プロジェクトも同様で、 トップダウンで、かつトップ トップダウンで既存の技術を集めて、 ビジネスモデルを がいかに執念を持つかが大事です。 この技術情報誌 見据えて取組む。必要ならM&Aも行う。 を発刊している㈶先端建設技術センターも強い意志を テーマを絞りこんで執念をもって徹底してネバーギブ 持ち、 この技術は絶対に必要だからなんとしても実用 アップで取組む。 化に結び付けるという強い執念を持って、様々な取組 技術開発というのはこの2つをうまく組み合わせるこ みに臨んでもらいたいと思います。 ◆ 信頼向上によりダントツを目指せ 底打ちの建設市場 輸出台数が新車販売台数を10年振りに下廻りました。 話は変わりますが、私は去年あたりで日本の社会イン この建設機械の総台数というのは「時代を先取りする フラ関係の建設市場は底を打ったと思います。 なぜか 先行指標」 という側面を持っており、建設機械が売れる というと、 90年代後半は、 われわれの作っているような建 市場は必ずその後に経済成長が待っていると言われ 設機械だけでも日本に120万台ありましたが、 それがど ています。高度成長期に建設された道路や橋にしたっ んどん減っていき80万台くらいまで落ち込んだのが一 てもう修復限界まで来ています。東日本大震災の復興 昨年です。 この数字は歴史的に見てもかなり低いです もある。つまり、建設業の国内市場はもうこれ以上落ち ね。特に過去10年間は国内新車販売台数の2倍ほど る余地がないところまで落ちて、今後はしばらく好転す の中古車が毎年海外に出ていきますから120万台から るしかないと見ています。 どんどん減るわけです。 しかし去年は円高や東日本の 6 震災もあり、建設投資額が前年を上廻ると共に中古車 NETIS プラス 技術開発に挑み続ける日本企業への提言 コマツ取締役会長 坂根正弘氏にお聞きしました。 日本国籍グローバル企業になるために そうは言うものの国内の建設投資はもうかつてのよ 本企業は、 そういう日本ならではの信頼を守り続ける戦 うな成長は期待できないので、海外市場へ目を向ける 略を持つべきです。海外企業とコスト競争しても絶対負 ことになりますが、 ゼネコンさんは、 これまでの海外進出 けますよ。手抜き工事は出来ませんからね。大事な工事 では痛い目に合ったケースも多く、 トラウマになっている だけは日本企業に任せないと危ないなと思ってもらえる ように思います。 しかし建設の仕事は作ってすぐにその ような評判が出てきて初めて勝てる。 われわれの建設 良否は分かりません。長期的に見ると日本企業のやっ 機械も一緒で新興国商品に合わせたものを作ろうと考 た工事はやっぱりしっかりしているなという評判が出てく えたらそれで負けです。高くても売れるための ダントツ ると私は思います。例えば中国の高速道路工事で日本 の付加価値をどれだけ高めるか、 そこに徹底して執念 企業と中国企業が施工した箇所が各々あった場合、5 を持って取組むしか、 勝者になる道はないと思います。 年10年とたったら恐らく歴然と差が出てくるでしょう。 日 聞き手:先端建設技術センター 技術調査部 新田恭士 石丸慶三 吉井久美子(写真) NETIS プラス 7 自治体の取組み 静岡県の 「新技術・新工法」 の取組み状況について 静岡県 交通基盤部 建設支援局 技術管理課 はじめに 静岡県では、民間等が開発し優れている新技術の公共事業での積極的な活用を目的とし、平成11年 度から 「新技術・新工法」の募集を開始しました。 平成14年3月には「建設工事における新技術活用促進に関する実施要領」 (以下、 「実施要領」) を定 め、 「新技術・新工法」の活用促進を図っているところです。 活用促進フロー図 新技術・新工法 民間等が開発 申請 技術相談窓口 受付:技術管理課 積算班 *レベル1:登録したが委員会での 評価が済んでいない新技術 情報登録 建設工事新技術 活用評価委員会 情 報 提 供 関係部局 県下市町 新技術情報DB ■登録時評価 ■活用時評価 ◆新技術概要情報 ・県交通基盤部ホームページにて 情報掲載 ・積算等基準の提供を行う。 ◆評価結果情報 レベル1, 2, 3 ・活用後の評価では、実施条件下 での適用性について再評価を行う。 新技術活用 出先機関等 レベル2 レベル3 試験施工で活用 活用後調査分析 一般工事で活用 静岡県 建設工事における「新技術・新工法」の活用推進体制 ◆実施要領の概要 活用促進の流れは以下の順になります。 (1)新技術の登録 技術管理課で新技術の申請受付け、 登録を行います。 また、必要に応じて、事業主管課とともにヒアリング を実施します。 (2)新技術の評価(活用の区分) 登録した新技術は、技術の成立性、現場での適用 性、従来技術と比較した優位性、積算資料、施工管 理基準の整備状況等を基に 「建設工事新技術活用 8 NETIS プラス 評価委員会」 (以下「委員会」) において評価を行い、 活用の区分(レベル1、2、3) を定めます。 【活用区分の定義】 レベル1:工事使用には課題があるとされた新技術 → 使用できない レベル2:試験施工として実施する新技術 → 「活用後調査を実施する」条件で使用 できる レベル3:一般工事で活用促進を図る新技術 自治体の取組み 静岡県職員が利用する一人一台パソコンネットワーク → 一般に使用できる システム (3)活用後の評価 (5)新技術の積極的活用 新技術(レベル2) については、適用可能な工事で 新技術(レベル2、3)活用促進のため、仕様書、施 試験施工を実施し、 その成果を評価します。 工歩掛、単価などを利用者に提供します。 (4)登録新技術情報と評価結果等の提供 新技術情報及び評価結果は、県関係部署には また、国 土 交 通 省「新 技 術 活 用 支 援 施 策」や SDO(※)のデーターベース、市 町や一 般にはイン 「NETIS(新技術情報提供システム)」 に登録されて ターネットで情報提供を行います。 いる新技術・新工法に関する情報収集及び情報提 ※ SDO: 「シズオカ・デジタル・オフィス」の略称で、 供を行います。 ◆現在までの取り組み実績 (1)登録件数 (表 1) その登録の内訳としては、法面工、擁壁工、舗装 現在、312件の工法・製品が登録されており、毎年 工、道路維持修繕工などの分野が比較的多くなって 20件程度の追加登録があります。 います。 表 1 登録状況 登録状況 (平成24年3月現在) (単位:件) 分 野 共通工 道路 河川・砂防 港湾 上下水道 その他 合 計 活用の区分 レベル1 0 0 0 0 0 0 0 レベル2 69 42 16 3 2 15 147 レベル3 86 45 22 1 9 2 165 155 87 38 4 11 17 312 合 計 (2)活用状況・活用効果 (表 2) 平成23年度に活用実績が多かった工種として、残 新技術・新工法の活用により、工事コストの縮減 存型枠工、吹付枠工、橋脚補強工などがあげられま (従来工法との比較により算出) が図られています。 す。 表 2 コスト縮減効果 (平成24年3月現在) 平成18年度 平成19年度 平成20年度 平成21年度 平成22年度 平成23年度 活用現場件数 (件) 151 71 176 113 97 75 コスト縮減額 (千円) 620,000 181,000 209,000 423,000 404,100 129,345 (3)その他 者へインセンティブを与えています。 ・請負工事成績評定要領の改訂により、静岡県の新 ・毎年、県職員及び市町職員へ利用促進について、 技術・新工法に登録された技術の活用現場につい より一層の周知を図ることを目的として、技術職員説 ては、創意工夫で0.8点∼1.6点の加点評価など、受注 明会や研修会、現場見学会などを開催しております。 NETIS プラス 9 自治体の取組み ◆課題・問題点 (1) 「新技術・新工法」を積極的に活用できる体制確保 毎年、新規登録は、 コンスタントに増えていますが、 それと比較して、現場での活用件数は、 あまり伸びて いない状況にあります。 掲載データのメンテナンスを行うとともに、 利用者が必 要としている情報を素早く提供できるような仕組みを検 討し、 煩雑さを解消していきたいと考えています。 (3) 「新技術・新工法」 のニーズ 活用促進を積極的にPRしていくことはもちろんで 現状では、 発注者側の指定による現場からの要請を すが、 レベル2(試験施工) における書類の簡素化と手 中心として新技術・新工法を活用する体制となっている 続きの簡略化を図るなど、利用者の負担を減らす工 のが実情です。 夫や体制づくりを検討する必要があると考えています。 (2) 「新技術・新工法」 の情報集約 現在、 1つの新技術・新工法に対して 「静岡県のデー ター ベ ー ス」 「新 技 術 活 用 支 援 施 策(国 交 省) 」 今後の取り組みとして、 例えば、 行政側が主体となり、 具体的な活用テーマを定めた中で技術の公募を行い、 技術検証まで行うといった取り組みや、 耐震・津波対策 工法、 防災製品など、 社会の要請に対応した登録技術 「NETIS」 に該当する場合があり、 また、 それぞれ重複 の更新を行うなど、 現場中心だけでなく、 行政や社会が していることもあり、 情報の取得段階で煩雑となってい 求める技術の情報を提供できる体制を作っていくことが ます。 必要であると考えています。 ◆今後の展開 制度創設からある程度の期間を経ているため、 「新技 また、 ある県内の民間企業の中では、 新技術・新工 術・新工法」 そのもの自体の認知度は上がってきている 法について独自に調査研究しているグループもあると聞 と感じていますが、 その反面、 まだまだ一般的な普及や いていますので、 そういった民間企業との意見交換など 活用が十分ではありません。 を積極的に行っていきたいと考えています。 その理由として、 発注者側の観点ですが、 従来工法 に比べ 「標準積算基準や施工管理基準などが統一化 さまざまな状況の中で、 今後は、 現行の制度に満足す されていない工法」 であることから、 採用に慎重となるこ ることなく、 できることから少しずつ改善を行いながら 「より とや、 「工法を採用する理由付け」 「見積り徴集やその結 簡単 (シンプル) に活用できる体制」 を確立することを目指 果の整理」 など、 事務作業が煩雑になることがあげられ していきます。 ます。 現在、 NETISも含め他県との類似システムと連携が その結果、 今まで以上に活用されることで制度自体も なされていない状況となっていることから、 国など他機関 活性化されていき、 県内に根付いていくような制度・仕 との情報共有を図るような仕組みも必要だと考えます。 組みになっていけば幸いです。 「静岡県の新技術・新工法」 へのアクセスは下記までお願いいたします。 ・ 「静岡県トップページ」 → 「組織別情報 (交通基盤部) 」 → 「技術管理課トップページ」 → 「静岡県の新技術・新工法について」 ・アドレス:http ://www.pref.shizuoka.jp/kensetsu/ke-130/new-tech/ 10 NETIS プラス 自治体の取組み 新技術を積極的に活用・評価するための取組み 静岡県 交通基盤部 建設支援局 技術管理課インタビュー ▲ 技術管理課 新技術・新工法情報データベース ホームページ (http://www.pref.shizuoka.jp/kensetsu/ke-130/new-tech/torikumi.html) ▲ 新技術・新工法情報データベース スーパーE―ユニットの新技術概要説明資料 ◆データベースを構築した経緯 平成15年度より 新技術情報データベース として 運用を開始しています。現在では、 職員が設計段階 戸栗班長) や工事発注にデータベースを積極的に使用して新技 県内の社会資本を整備するためには、 建設コスト、 術を活用しています。 安全性の確保や環境保全等といった建設分野を取り 巻く問題を解決する必要があります。 そこで解決策の 1つとして、 民間等で開発された優れた新技術や新工 法を活用することを考えました。 しかし、 新技術を公共 工事に活用するにも大多数の技術は、 施工実績が少 なく、 積算基準や施工管理基準が確立していないた め、 職員も新技術を活用することに慎重になっていま した。 新技術や新工法のデータベースを構築し、 技術を 登録、 評価することにより、 技術の成立性を確認し、 公 共工事において積極的に活用できるように体制を整 備することとしました。 ▲ 交通基盤部 建設支援局 技術管理課 班長 戸栗 一泰氏 NETIS プラス 11 自治体の取組み ◆試験施工の取組み 松山主査) レベル2の試験施工は、新技術を一般工事で活用促 進するために実際に調査を行い、技術の効果を確認、 検証するものです。 まず、試験フィールドの選定方法ですが、工事発注 前にレベル2の新技術が記載されたリストを土木事務 所や農林事務所の発注担当者に送付しております。 次に新技術の現場適用等を確認して当該工事で活 用できそうな場合は、我々も含め関係部署内で協議を 行い、 試験施工の実施の可否を決定します。 試験施工の調査は、発注担当者が実施しており、活 用の効果がすぐに現れない技術については、施工から ▲ 交通基盤部 建設支援局 技術管理課 主査 松山 恭彦氏 ◆試験施工の実施状況 1∼2年後を目安に土木事務所や農林事務所の職員 戸栗班長) が目視調査により効果を確認しています。 全登録技術312技術のうちレベル2に位置付けられ 調査が終わった新技術は、県の職員で構成された ているのは147技術あります。 新技術活用委員会で評価を行い、 レベル3として一般 平成23年度は、25工事において16技術が試験的に 工事で使用できるか議論します。 活用されています。 その16技術の中で1技術が評価委 レベル3に評価された技術は、静岡県が発注する工 員会において一般工事に適用できると認められてレベ 事において活用促進を図ります。 ル3に昇格しました。 静岡県庁 発注担当事務所 試験施工の活用から評価までの流れ 12 NETIS プラス 自治体の取組み 平成23年度にレベル2からレベル3に昇格した技術(例) 登録 番号 静岡県DB (NETIS) 1236 (CB-050059-V) 新技術名称 イースターマット工 生育基盤材 植生袋 (土壌改良・肥料等) 外袋(水解け性) 半開型2重織ネット 粗部 不織布シート 半開型2重織ネット 山側半分:粗部 谷側半分:密部 密部 【施工時】 『イースターマット』 の施工は、 アンカー類を用いて法面に設置・固定するだけで完了する。 写 真 斜面方向 平場部を 形成する 水平方向(平場部) 【降雨後】 少量の降雨で植生袋の外袋が解け、 飛来種子が定着しやすい平場部を形成する。 【飛来・捕捉した種子】 ○印内が平場部に 飛来・捕捉した種子である。 『イースターマット』 の構造図(施工時・降雨後の状況と飛来種子の捕捉 概 要 レベル3に 昇格した理由 法面・斜面に対して、 自然環境重視型の自然侵入促進工を行うために開発された植生 マット工で、施工時に植物材料を使用せず、周辺に自生する植物の自然侵入による緑化 を行う植生マット工である。 試験施工の調査において、経済性、工程、品質・出来形、安全性、施工性、環境の全てが 従来の植生基材吹付工と比較して優れており、静岡県内での試験施工実績が多数あり、 積算基準や施工管理基準が整備されている。 ◆技術の登録対象について ◆今後の展望 松山主査) 戸栗班長) 地元企業の育成も重要ですが、静岡県外の企業が 今後は試験フィールドや追跡調査等の結果を開発 開発した技術も当然有用なものが多数あるはずです。 者にフィードバックさせることを検討しています。開発者 そういった技術を静岡県のインフラ整備に取り入れるこ に新技術の問題点や改善点を示すことにより、技術の とでコストの縮減や品質の向上が図れると考え静岡県 改良が促され新技術・新工法情報データベースの登 外に拠点をおく企業の技術も登録対象にしました。 録技術がより良いものになればと思っています。 聞き手:先端建設技術センター 技術調査部 新田恭士、石丸慶三 中原 守 吉井久美子(写真) NETIS プラス 13 着目新技術 ∼開発者インタビュー 「ジオロックウォール工法」 ∼補強土を用いた高エネルギー吸収型落石、 なだれ、がけ崩れ防護擁壁∼ 静岡県 新技術情報データベース 登録番号1284(NETIS番号:HR-990009-V) 開発会社 ㈱プロテックエンジニアリング、前田工繊㈱、 旧日本道路公団 ◆採用事例について 国土交通省や各自治体等を中心に工事中のものも 含め現在約280件採用いただいています。 また昨年の 東日本大震災では採用現場において数多くの落石災 害が発生しましたが、想定の大きさ以上の落石もしっ かり受け止めることができました。 写真 -1 取材状況 左より前田工繊㈱ 藤岡 司氏、五十嵐 充氏 ㈱プロテックエンジニアリング 岸 大二郎氏 ㈱フタバコーケン 中村 雅士氏 ◆技術の概要と特徴 ジオロックウォール工法は、急峻斜面における落石・ 雪崩・がけ崩れ対策のために開発された新工法で す。材料には土とジオシンセティックス (強化素材) を用 い、従来の高エネルギー吸収柵やコンクリート擁壁等 では対応できなかった大規模落石等にも適用できま す。 (注:最大5000kJ程度まで対応可能) また、土構造物のため植生も可能であり、景観にな じむ自然に優しい構造物です。 防護マット 抵抗体 (現地発生土) 落石防護 補強土壁用 ジオグリッド (ロックデム) 衝撃分散 ジオグリッド (ロックデム) 受撃 体 (ガンデム) 写真-2 東京都新島村若郷災害関連緊急治山工事では施工完 了後に落石災害が発生、防護機能が発揮された。 ◆開発のきっかけ 従来の落石防護はコンクリート擁壁が主流でした が、 「大落石への対応が困難」 「地盤が悪い場合の不 等沈下等の懸念」 「景観・環境への配慮」 等の問題が ありました。 このような状況で、 欧米にて古くから実用化 されていた補強土擁壁を参考に、 狭い日本の地形に適 用でき、 大規模な落石にも対応可能で、 かつメンテナン スが容易な防護擁壁として開発を進めました。 中伸度繊維 アラミド繊維 伝達体袋材 (ジオラバッグ) (テイジン、テクノーラ) 壁面ユニット (ガンユニット) 高伸度繊維 図 -1 ジオロックウォールの構造 柔な土構造物であり、衝撃エネルギーの吸収力に優れる。 14 NETIS プラス 図 -2 補強材であるロックデムは伸び強度の異なる繊維を織 り込むことによりねばり(靭性)を有する。 着目新技術 ◆開発までの苦労 ➡ ➡ 計画高さまで 繰り返す ➡ 落石防護補強土壁としての定量的評価と設計方 法の検討が大変でした。大規模実物実験も実施しま したがそれだけでは定量的評価は困難ですので旧日 本道路公団との共同研究において1/2.5モデルによる 単載荷実験を繰返し行いました。 この結果、設計方法 を確立でき、落石規模等の現場条件に合う経済的な 形状を提案することが可能になりました。 ➡ 写真 -7 ジオロックウォール(ダイクⅠ型)の施工手順 壁面ユニットの設置→ジオグリッドの設置→植生マッ ト・排水材の設置→盛土材の投入・転圧の施工手順で、 計画高さまで繰り返し施工する。 写真-8 壁面材の周 辺やコーナー部分に は、粒径の小さい土 砂を隙間なく敷き、 念入りに転圧を行う 必要がある。 写真 -3 モデル実験の様子 1/2.5モデルにより繰返し載荷および破壊を想定した単載荷 試験を行い、ジオロックウォールの変形特性および吸収性能 を確認した。 ◆技術的課題について 形状の更なるスリム化が必要 と考えておりまして、 日本の急峻 な地形において、 より多くの現場 に採用いただけるよう日々研究開 発を続けております。 写真 -4 ㈱プロテックエンジニアリング 岸 大二郎氏 「あらゆる斜面災害から人や財産を守 るために今後も技術の改良に努めたい」と熱く語る。 現場訪問 ロックフィルダムで有 名な御母衣ダム付近の 国道において落石防護 工としてジオロックウォー ルが採用されています。 写真-5 現場周辺の風景 雄大にそびえる御母衣ダム 今回は岐阜県大野 郡 白 川 村にて、現 在 施工中の現場にお邪 魔させてもらいました。 写真-6 国道沿いの法面 庄川の谷を沿うように国道 が通るため、急勾配の法面 が目立つ。 写真 -9 補強土壁の完成 計画高さまで補強土壁を構築 して、最後に天端と落石を受 ける背面部に保護を施せば完 成である。 写真 -10 施工後2年後の状況 同じ国道沿いに設置された ジオロックウォール。 植生状況も良好で周辺の景 観との調和が図られている。 問合せ先:㈱フタバコーケン 担 当 者:統括本部 中村 雅士 住 所:〒424-0943 静岡市清水区港町1-6-4 電話番号:054-352-1116 取材後記 会社は日本三大美港にも上げられ観光地としても有名な清水港の 目の前にありました。 昭和24年からの創業で船舶艤装品の販売から港 湾環境整備事業まで手掛けており、 清水港とともに発展してきた企業 です。 ジオロックウォールは、 山地や海岸部 の急傾斜地には、 必要不可欠な技術だ と思いますので、 狭隘な場所にも適用で 清水港発展の歴史を今に きるように防護擁壁を改良して多くの地 伝えるテルファークレーン 域で採用されていくことを期待します。 (国の登録有形文化財) NETIS プラス 15 着目新技術 ∼開発者インタビュー 「スーパー Eユニット」∼袋型根固め工法用袋材∼ 静岡県 新技術情報データベース 登録番号1392(NETIS番号:CB-050029-V) 開発会社 ナカダ産業㈱ 写真 -1 ナカダ産業㈱取材状況 左:蓑川 的人氏 右:梶原 幸治氏 ◆技術の概要と特徴 写真 -4 北秋田犀川における災害復旧工事での採用事例 充填材は割栗石を使用。 ◆開発のきっかけ 当製品は1重ラッセル網地からなる袋材で、玉石、 割栗石、 コンクリート塊等を充填し、河川海岸の橋脚 や穏やかな海岸における根固め工、緊急時の水防資 材に用いるものです。袋材には再生PETボトルを原料 とした繊維を使用し、 その性能については建設技術 審査証明機関に確認をしていただいています。 また波 力に対する水理実験を行っており、潜堤や離岸堤の 洗掘防止材としての適用が可能です。 当社は拠糸業よりスタートしており、主に陸上にて使 われる野球場などのネットを生産しておりました。土木 分野において河川海岸の袋詰玉石工用のネットが頻 繁に使用されるようになるに伴い、使用者からきれい に積み重ねることができ、強度を高めたネットはできな いかという声を多数受けたことが開発のきっかけでし た。 しかし実際に実用化に至るまでには大変に苦労し ました。 ◆開発までの苦労 写真 -2 スーパー E ユニットの 吊り上げ状況 図 -1 タテ・ヨコ方向 の強さが同じである 1 重ラッセル網地にて構 成されており 500㎜程 度のコンクリート塊を 充填しても破れにくい。 ◆採用事例について 実績は数多くありますが、最近の適用事例として、 東日本大震災の復旧工事で当社の製品を採用いた だいています。 写真 -3 仙台湾南 部海岸にて採用さ れた。充填材には 破壊された防波堤 のコンクリート塊 を使用している。 16 NETIS プラス 製品を設置した際になるべく網 のたるみ、 ゆるみがなくなるような 適切な網地の形状、 ピッチを決定 するため模型シミュレーションを繰 返し実施しました。 この部分に相 写真-5 開発課の梶原幸治氏 当の労力をかけています。 また中詰め材をバックホウで投入するための型枠 形状にも非常にこだわっています。 できるだけ中詰め 材投入後の吊り上げ時においてネットが破れにくく抜 けやすい形状を模索しました。 写真-6 8 角形の開口を中 詰め材を投入しやすいよう 大きくした。 写真-7 型枠材は分割可能 とし、持ち運べるよう工夫 してある。 着目新技術 ◆技術的課題について 写真-8 生分解性 E− ユ ニ ッ ト の 施工状況 ➡ ➡ 約10年で分解されて自然に帰るネットを使用した製 品も実用化していますが、現時点では価格が高くなか なか採用されにくい状況です。周辺環境への影響低 減は社会全体のニーズですので何とかコストダウンを 図り、我が社も環境面で 社会貢献していきたいと 考えております。 ➡ 写真 -12 型枠準備、コンクリート塊の投入、袋材の 口縛り、吊り上げ、設置を何度も繰り返し 施工性を確認する。 写真 -9 ナカダ産業㈱取材状況 「静岡県もNETISと同様、事後評価に取り組んでいた だけると励みになる」と語る蓑川氏(左)。 現場訪問 や ぶきた 茶 で 有名な牧之原の 一角で開発会社 が定期的に歩掛 りや 施 工 性を確 認するための試 験 施 工を実 施し ています。 写真 -10 現場周辺の風景 茶畑と富士山、そして 大井川橋という最高の ロケーション。 今回は中詰め材 にコンクリート塊を使 用した場合の施工 性確認を実施中の 現場にお邪魔させ てもらいました。 写真 -11 施工性確認の 状況 写真-13 白いテープの目印やマニュアルに より誰でも容易に、かつ確実に口縛 りが可能である。 写真-14 従来使用していた型枠 も置いてあった。 鋼製なため移動には重機が必要 で、かつ壁も鉛直に近く、製品吊 り上げ時には型枠も共に吊って しまうことも多かったとのこと。 創意工夫はこういう課題を解決 していくことから始まる。 問合せ先:ナカダ産業㈱ 担 当 者:営業一課 蓑川 的人 住 所:〒428-0019 島田市志戸呂880-3 電話番号:0547-45-3141 取材後記 会社はJR東海道本線金谷駅にて大井川鉄道に乗り換え 4つ目の五和駅で下車したところにありました。 久しぶりに見る のどかな無人駅の先には立派な社屋が建っております。 企業としては全国を相手に業績 を上げているとのことですが、生分 解性E-ユニットを含め創意工夫や コストダウンに励み、更に広く活躍 されていくことを期待します。 大井川鉄道 五和駅 NETIS プラス 17 着目新技術 ∼開発者インタビュー 「高所岩盤掘削機による岩盤掘削工法」 ∼ロッククライミングマシーン10型による岩盤掘削工法∼ 静岡県 新技術情報データベース 登録番号1217(NETIS番号:KT-010075-V) 開発会社 大昌建設㈱ ◆技術の概要と特徴 高所岩盤掘削機による岩盤掘削工法は、斜面上 部の推定崩落線上より奥に十分な強度を持ったアン カーを設け、2本のワイヤーロープを機械に固定し、機 械の自重を反力として掘削する工法です。 機械の操作方法は、 ラジコンによる遠隔操作で作 業を行い通常の0.4m3級のバックホウと同程度の作業 能率で安全に施工ができます。 また、適用範囲として は、法面勾配90度の垂直施工が可能で土質も硬岩 の掘削が可能です。 ◆開発のきっかけ 我が社は林道工事の下請け会社をしており、非常 に高い急傾斜地で土の切取り、切り崩しの作業を人 力で行っていました。 とても危険で誰にでもできる作業 ではありません。 そこで安全且つ迅速に掘削作業を 行うために高所法面の掘削機械を開発することにし ました。 最初に開発した機械は、腕の長いバックホウでし た。 アームの先端に取り付けるカセットアームを特注で 作りましたが、取り付けが大変で、施工できる法面の 高さは10m程度まででした。 次に開発したのは、 クレーン型でブームの先端にバ ケットが付いたテレスコブームマシーン (TBM) という 機械です。 この機械は、法面の高さ45m程度まで掘削 作業を可能としました。 写真 -1 急傾斜で掘削作業を行う高所岩盤掘削機 ◆採用事例について 採用事例は法面災害等の対策工事など、数多くあ ります。最近の採用事例としては、東日本大震災にお ける岩盤の崩落・落石危険箇所の対策工事で我が 社の機械が使用されています。 写真-2 福島県白河市の岩盤が崩落した箇所の 復旧工事に高所岩盤掘削機が活用されている。 18 NETIS プラス 写真-3 テレスコブームマシーン(TBM) そして、 さらに高い法面でも掘削できるように本体を ウインチで引き上げることにより、 何十メートルでも登り、 掘削ができる機械を考え、 現在の高所法面掘削機(ロ ッククライミングマシーン [RCM]) が誕生しました。 写真 -4 現在の高所法面掘削機(RCM) 着目新技術 ◆開発までの苦労 機械を作ることも大変でしたが、 それ以上に苦労し たのが、高所岩盤掘削機を使用してよいという発注者 の許可を得ることでした。急傾斜をウインチで登ってい くため見た目では斜面をくっついているようで非常に 危険ではないかと思われ、発注者や請負者に理解し てもらうのに大変苦労しました。 ◆技術的課題について 施工能力はバックホウと同程度ですが、 堅い岩質に 遭遇するとバケットやブレーカーのアタッチメントによる 掘削が困難です。 別途、 人力による静的破砕材や発破 等で対応するための段取りが必要となります。 現在、 そ のような課題に対応する研究開発を検討中です。 写真-9 ワイヤーロー プ設置状況 立 木 に 保 護 材 と ス リン グ ロ ー プ を 設 置 し 、そ の 先 に ワ イ ヤ ー ロ ープ を連結する。 写真 -10 法面掘削 高 所 岩 盤 掘 削 機 と2本 の ワ イヤーロープを固定し施工 を行う。 法面上部から掘削を行うた め、掘削機械が宙吊りになる ことはない。 作 業 編 成 は オ ペ レ ー タ1人 と法面工2人の計3人。 法面工は、機械付近に待機し、 施工状況の確認、移動時のワ イヤー付替え、機械のメンテ ナンスを行う。 法面工 ワイヤーロープ 現場訪問 写真-11 落石防護 掘削した土砂は、中硬岩 で風化するともろく崩れ やすいため、防護柵や ネットを設置して慎重に 掘削作業を行う。 宮城県石巻市の鹿妻山において岩盤の崩落が 発生しており、 高所岩盤掘削機を用いて法面掘削、 法面整形の施工を行っている現場を訪ねました。 写真-5 現場周辺 の風景 東日本大震災から 1年以上経過し、1 日も早い復興を目 指す宮城県石巻市。 写真-6 現場の全景 岩盤が崩壊する恐れ のある箇所は取除き、 表面を整形して法面 保護を施す。 急傾斜地の高さは約 45mで、掘削土量は、 約2,500m3となる。 写真 -12 掘削機械 の操作 オペレータは、法面 下の安全な箇所か ら機械を見ながら 巧みにリモコンで 操作する。 掘削機械のリモコン 写真-7 立木の選定 最初に機械を支えるための 立木を法面の延長方向10m ごとに1本ずつ選定する。 立木がない場合は、埋込みア ンカーやバックホウ等の重 機をアンカーとして使う場 合があるとの事。 写真-8 立木の強度試験 立木選定後に強度試験を行う。 機体総重量の1.5倍以上の荷重 をかけて安全を確認する。 今回の施工では機体総重量が 14tだったので試験荷重21t で確認を実施した。 問合せ先:大昌建設㈱ 担 当 者:営業本部 市原 淳 住 所:〒299-4332 千葉県長生郡長生村金田2695番地 電話番号:0475-32-0077 取材後記 高所岩盤掘削機による施工方法や注意点などについて、 現場 を案内してくれた竹内支店長に説明していただきました。 その中で 「現場で高所岩盤掘削機を使うと インパクトがあるから、 ちょっとした観光地にな るんだよ」 と話してくれました。 取材の間も車か ら降りて写真撮影している人が何人も見られ ました。 「急傾斜地で安全に施工ができる機械なの でもっといろいろな人に知ってもらいたい」 と熱 く語る竹内さん。 日本を支える技術がここにもあ りました。 大昌建設㈱ 東北支店 竹内支店長 NETIS プラス 19 トピックス がれき残渣の有効活用によるアップサイクルブロックの開発 がれき残渣の有効活用によるアップサイクルブロックの開発に関する勉強会 (㈶先端建設技術センター、㈱大林組、鹿島建設㈱、㈱熊谷組、清水建設㈱、大成建設㈱) ① はじめに ⑴ 被災地におけるがれきの実情 平成23年3月の東日本大震災は、広域的な人的・物 的被害をもたらしました。特に、がれきの発生量は膨大 であり、東北3県のがれき推計量は約2,260万トン (岩手 県約440万トン、宮城県約1,590万トン、福島県約230万 トン) に上ります。 これは阪神・淡路大震災時の発生量 の約1.6倍、全国の年間一般廃棄物総量の1/2に相当 します。被災地では復興に向けてがれきの撤去・集積・ 処理が本格化しています。 の一部は平成23年度補正予算建設技術研究開発助 成制度(震災対応型技術開発公募) による補助金を受 けて実施しています。本稿では、 アップサイクルブロック の開発概要、実用化に向けた取り組みと課題を報告し ます。 基本コンセプトは以下の2点です。 ● がれき残渣を有効活用する ● 重金属類などの有害物質が溶出しない また、 アップサイクルブロックには以下の2種類があり、 各々の適用イメージを図-1に示します。 ■ コンクリート二次製品 無筋のコンクリート二次製品として適用 ■ 盛土用ブロック 道路盛土、 避難高台、 防潮堤、 河川堤防などの盛 土材として適用 写真-1 集積されたがれき ⑵ がれき残渣の処理に関わる問題 大量に発生したがれきを選別・分級すると、 リサイク ルできない混合廃棄物(以下、がれき残渣と呼ぶ)が残 ります。がれき残渣の処理については、不燃物としてそ のまま最終処分場に埋立てる、 あるいは、焼却不適物 を除去した上で焼却し、 焼却灰を最終処分場に埋立て ざるを得ないのが実情です。 しかし、 このような処理方法には、 最終処分場の容量 が不足する、焼却時のダイオキシン発生が懸念される 図-1 道路盛土への適用イメージ 対象とするがれき残渣は、 コンクリートガラ、木材、 ゴ ム、金属類、 プラスチック、土石、瓦などが混入したもの で、粒径150㎜以下のものです。 また、重金属類等の有 害物質、放射性物質を含んだがれきは対象にしないこ とを原則としています。 等、 大きな問題があります。 ⑶ 工法開発のコンセプトと適用箇所 そこで、㈶先端建設技術センター、㈱大林組、鹿島 建設㈱、 ㈱熊谷組、 清水建設㈱、 大成建設㈱では勉強 会を立ち上げ、がれき残渣をブロック状に固め、建設資 材として付加価値を高めた アップサイクルブロック の 開発および実用化に取り組んでいます。 また、取り組み 20 NETIS プラス 150㎜ 写真-2 がれき残渣の一例 トピックス ② 技術的課題への挑戦 プレス機械 ⑴ 成果目標 震災などで発生するがれき残渣には、木材、 ゴム、 プ ラスチックなど圧縮性の高いものが混じっており、かつ 鋼製型枠 その混入率が一定でないため、 これらを固化材と混練 しただけでは、品質が大きくバラつきます。そこで、固化 材との混練後にプレス処理を施すことにより品質のバラ ツキを抑制する方法を考案しました。 テーブルバイブレータ また、対象外とはしているものの、がれき残渣には重 金属類などの有害物質が含有している可能性を否定 写真-3 コンクリート二次製品の製造状況 しきれません。そこで、がれき残渣をセメントで固化する 使用材料は、 セメントに普通ポルトランドセメント、細骨 ことで有害物質を不溶化する方法を考案しました。製 材に陸砂、混和剤にポリカルボン酸系の高性能減水剤 品および製造方法の概要を表-1に示します。 を使用しました。がれき残渣は粉砕して粒径40㎜以下 ⑵ コンクリート二次製品の試作 にしたものを使用しました。 コンクリート二次製品の試作においては、表-1中に示 配合は、 がれき1tに対してモルタルを725L混合(がれ した目標圧縮強度を満足するブロックを、安価で製造 : し、 きとモルタルを容積比で4 6) モルタルの水セメント するため、 バイコンシステムを適用することとしました。 こ 比は30%、 細骨材セメント比は2.0としました。 のシステムは超硬練りコンクリートを振動とプレスにより 製品の製造手順は、最初にパン型ミキサを用いてモ 締め固めて成形し、 コンクリート二次製品の高強度化と ルタルを練り混ぜ、次にがれきを投入して練混ぜを行い 「即脱」 を可能にする製造方法です。 ました。 その後、 テーブルバイブレータに固定してある鋼 二次製品工場内のバイコンシステムによる製造ライ 製型枠にがれきを混合したモルタルを投入し、振動を ンにて試作を行いました。試作した製品は、 JIS A 5371 加えながら上部に設置されたプレス機械により加圧す に記載されている地先境界ブロックのCタイプ (幅150× ることで成形しました。 高さ150×長さ600㎜) です。 表-1 製品および製造方法の概要 コンクリート二次製品 サイズ 歩車道境界ブロック、 地先境界ブロック 程度 盛土用ブロック 0.75m 立方体程度 イメージ 写真-4 即脱後の表面 物理特性 目標圧縮強度 10∼20N/ ㎜ 2 がれき粒径 40 ㎜以下 1N/ ㎜ 2 程度 150 ㎜以下 がれき混入率 50%程度(重量比) がれき使用量 1.03ton/m3 程度 化学特性 目標概算コスト 重金属などの有害物質が溶出しない ¥40,000/m3 (材料費+製造費) ¥36,000/m3 (材料費+製造費+施工費) 写真-5 曲げ試験後の 破壊面の状況 NETIS プラス 21 トピックス 製品を 「即脱」 し、表面の状況を確認(写真-4) したと 製品の製造手順は、最初に傾胴ミキサーでがれき残 ころ、平滑に仕上がっていました。 また、JIS A 5371に 渣とセメントペーストを練り混ぜ、次に鋼製型枠の内面 準拠して曲げ強度試験を行い、曲げ強度荷重を測定 に大型土のう袋を装着し、その中へ型枠バイブレータ したところ18.2kNであり、JIS A 5371に規定されている を作動させながら混練物を所定の高さまで投入しま 曲げ強度荷重13kNを上回る結果でした。試験体の破 す。最後に上方より載荷板にて加圧してブロック天端面 壊面の状況を写真-5に示します。がれきの間隙に密実 を均します。 にモルタルが充填されていました。 ⑶ 盛土用ブロックの試作 36時間後に脱型し、材齢7日でコア抜きしたところ、 セ メントペーストが密実に充填されていました。 盛土用ブロックについては、試験室内の載荷装置に また、一 軸 圧 縮 試 験 を 実 施した 結 果、 σ7=2 ∼ 鋼製型枠および型枠バイブレータを装着した、新たな 4N/mm2と目標強度を上回りました。 装置を製作し、 これにて試作を行いました。 ⑷ 有害物質の溶出に関する試験 使用材料は、水セメント比60%のセメントペースト (高 当研究開発で扱うがれき残渣は、重金属類等の有 炉セメント)、粒径150㎜以下のがれき残渣を使用しまし 害物質を含有していないことを原則としています。 しか た。配合は、がれき1tに対してセメントペーストを250L混 し、がれき残渣全数を対象としてチェックすることは不 合しました。 可能であるので、万一、有害物質(重金属類)が混入し ていたとしても、製品から溶出しないことを確認する必 要があると考えました。 そこで、がれき固化体を供試体 として環境省告示46号に示されている溶出試験(以 下、環告46号試験と呼ぶ) およびタンクリーチング試験 を行い、土壌環境基準を満足するかどうかを確認しま した。 まず、入手したがれき残渣を供試体として環告46号 試験を実施しました。その結果、全ての重金属項目で 土壌環境基準を満足しましたが、六価クロム、 ひ素、 ふっ素およびほう素が微量検出されました。 そこで、が れき固化体を供試体とした試験は、六価クロム、 ひ素、 ふっ素およびほう素の4種類と、 アルカリ環境下で溶出 写真-6 盛土用ブロック 製造装置 写真-7 型枠バイブレーター しやすい性質のある鉛を加えた5種類の重金属につい て行うこととしました。無処理のがれき残渣は土壌環境 基準を満足していたので、当然、がれき固化体が土壌 環境基準を超える可能性は低いと予想されました。 こ のため、土壌環境基準の概ね20倍に相当する重金属 写真-8 盛土用ブロック (B750 W750 H850㎜) を敢えて人為的に混入した 「模擬汚染がれき」 を作製 した上で、試験を行うことにしました。 まず、環告46号試験では、がれきを粒径2㎜未満に 粉砕した試料100gと溶媒を重量体積比で10%の割合 写真-9 一軸圧縮試験 供試体 (φ100 H200㎜) 22 NETIS プラス で混合し、 それを6時間振とうさせた後、分析に供しまし た。溶媒は、純水に塩酸を加えてpHが5.8以上6.3以下 となるように調整しました。供試体は、材齢28日のがれき トピックス 表-2 溶出試験の結果一覧 無処理のがれき 土壌 環境基準 項目 環告 46 号試験 模擬汚染がれき タンクリー チング試験 タンクリー チング試験 環告 46 号試験 がれき単体 がれき固化体 がれき固化体 がれき単体 がれき固化体 がれき固化体 (2 ㎜未満に粉砕) (2 ㎜未満に粉砕) (切り出し片) (2 ㎜未満に粉砕) (2 ㎜未満に粉砕) (切り出し片) pH − 11.3 12.2 11.4 11.1 12.2 12.1 電気伝導度 EC (mS/m) − 121 424 64.6 97.0 277 184 六価クロム 0.05 0.04 定量下限値未満 定量下限値未満 1.3 0.03 0.03 ひ素 0.01 0.002 定量下限値未満 定量下限値未満 0.33 定量下限値未満 定量下限値未満 ふっ素 0.8 0.28 定量下限値未満 15 0.42 0.28 ほう素 1 0.16 定量下限値未満 定量下限値未満 28 0.33 0.78 鉛 0.01 定量下限値未満 0.002 0.008 0.002 各重金属 の溶出量 (mg/L) 0.15 0.001 定量下限値未満 クリーチング試験の結果を図-3に示します。 六価クロム ひ素 図-2 タンクリーチング試験概要 固化体を使用しました。 なお、溶液中のイオン量の目安を把握するために、水 素イオン濃度指数pHと電気伝導度ECについても併せ て測定しました。 一方、 タンクリーチング試験(図-2) では、がれき固化 26.0 0.60 0.60 33.0 定量下限値未満 定量下限値未満 18.8 ふっ素 0.53 0.35 ほう素 0.33 0.78 模擬汚染がれき 0.20 0.80 0.20 タンクリーチング試験 鉛 0 5 26.0 環告46号試験 10 15 20 25 30 倍率(溶出量/土壌環境基準) 35 図-3 模擬汚染がれき固化体の溶出試験結果 ⑸ 今後解決すべき課題 体の供試体から200g程度の試験片を切り出し、溶媒に がれき残渣には物理特性(粒径、密度、変形特性な 固液比1:10の割合で浸漬しました (溶媒は環告46号試 ど)、化学特性(分解性、安全性など)の異なる多様な 験と同じ)。がれき固化体の材齢28日に試験を開始し、 物質が混在しているため、製品の品質、出来形にバラ 浸漬期間を28日間としました。各溶出試験の結果を表 ツキが生じることは避けられません。 また、 これまでがれ -2に示します。無処理のがれき残渣からの溶出量は、 き残渣を製品化して長期間供用した事例はありませ いずれの重金属についても土壌環境基準を満足しま ん。 このため、今後解決すべき課題として以下のような した。 また、がれき固化体の環告46号試験およびタンク ものが考えられます。 リーチング試験の溶出量は、固化させていないがれき ● 試験・実験データのバラツキの統計的評価による 単体の溶出量よりも低く、重金属の溶出が抑制される 当技術の信頼性の証明 ことを確認できました。 なお、がれき固化体の環告46号 ● 耐久性、長期安全性の確認 試験による鉛の溶出量は、固化させていないがれき単 さらに、盛土用ブロックについては、以下についても検 体に比べて高い値を示しましたが、 これは検液のpHが 討してゆく必要があります。 12.2と強アルカリであり、鉛が溶出しやすい環境下で ● ブロックの積上げを含めた盛土の築造方法の確立 あったことによると考えられます。 ● 耐震性の評価 模擬汚染がれき固化体の環告46号試験およびタン ● 盛土体の安定検討手法の確立 NETIS プラス 23 トピックス 目のうち周辺地域の生活環境に影響を及ぼすおそれ ③ 法規制・許認可について のある項目について調査を行う必要があります。 災害廃棄物をコンクリート二次製品や盛土材に有効 利用する場合の法規制、処理・処分を行うために必要 ・大気質 ・騒音 ・振動 ・悪臭 ・水質又は地下水 な許認可について調査しました。関係法令の調査、 なら 最終処分場は環境影響評価法の対象ですが、 処理 びにヒアリングを行った結果、以下のような知見が得ら 施設は対象外です。ただし、地方の環境影響評価条 れました。 なお、 ヒアリング先は、廃棄物の処理・処分に 例によっては対象となる場合があります。 詳しいコンサルタント、 環境省、 宮城県です。 ④都市計画区域内における建築許可 ⑴ 災害廃棄物の法的な取扱いについて 都市計画区域内においては、処理施設の用途に供 「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」 (以下、廃 する建築物は、 都市計画によりその敷地の位置が決定 棄物処理法と呼ぶ) には災害廃棄物の定義はありませ しているものでなければ新築、増築することができませ んが、市町村が取り扱う災害廃棄物は一般廃棄物とし ん。 そのため、特定行政庁から許可を得た上で建築す て取り扱われます。 る必要があります。 ⑵ 災害廃棄物の処理に必要な許可について ⑶ 各種手続きの流れ 災害廃棄物(一般廃棄物)の処理の業を行う場合 災害廃棄物の処理を行うために必要な各種手続き や処理施設を設置する場合には、表-3に示す許可が は、 処理施設の種類、 規模、 設置場所や自治体により異 必要となります。 なります。 各種手続きの大まかな流れを以下に示します。 表-3 処理の業や施設設置に必要な許可 区分 収集運搬 必要な許可 法令 1. 事前協議 一般廃棄物の 収集又は運搬の業の許可*1 廃棄物処理法 第7条 2. 計画概要書提出 一般廃棄物の 処分の業の許可*1 廃棄物処理法 第7条 3. 生活環境影響調査 一般廃棄物処理施設の 廃棄物処理法 第8条 4. 施設設置許可申請 (市町村が設置時は届出) 処理・処分 設置許可*2 都市計画区域内における 処理施設の建築許可*2 建築基準法 第 51 条 :市町村の委託による場合は不要 :一般廃棄物のごみ処理施設の場合、5t/日以上(焼却施設は200kg/ 時以上又は火格子2m2以上)が対象 市町村が設置する場合は届出 *1 *2 ①処理業の許可 原則として、一般廃棄物の収集、運搬、処理、処分を 業として行おうとする者は、市町村長の許可を受けな 5. 建築基準法第 51 条許可申請 (都市計画区域内は必要) 6. 処理施設の設置 7. 業の許可申請 (市町村の委託の場合は不要) 8. 処理の実施 図-4 各種手続きの流れ ⑷ アップサイクルブロックの販売について ければなりませんが、市町村の委託による場合には、業 災害廃棄物を処理した有価物は廃棄物処理法の の許可は不要です。災害廃棄物においても同様です。 適用外であるため、災害廃棄物の排出事業者から受 ②処理施設の設置許可 け取る処分費や製品の販売価格については処理を行 処理施設を設置する場合、都道府県知事の設置許 可が必要となります。市町村が設置する場合には届出 となります。 ③生活環境影響調査 処理施設の設置許可の申請に当たり、処理施設の 種類、規模ならびに廃棄物の種類を勘案し、下記の項 24 NETIS プラス う事業者が設定することになります。 ⑸ アップサイクルブロックの安全性について アップサイクルブロックは、健康被害や周辺環境に影 響が及ぶような有害物質を含まないがれき残渣を使用 することを前提としています。 ⑹ 今後解決すべき課題 トピックス これまでの調査結果から、災害廃棄物を処理する上 で必要な許可や手続きに関して確認することができま した。 しかしながら、具体的な処理施設の種類、仕様、 規模や設置場所が決まらないと、担当行政との協議が できず、実際に取得すべき許可の内容や生活環境影 響調査の項目、必要な諸手続きに要する期間などを確 定できません。 今後解決すべき課題として以下があげられます。 図-6 プラントの平面図イメージ図 ● 処理施設の仕様、 規模、 設置場所の具体化 ● 施設に応じた許可の内容や生活環境影響調査項 者機関である(財)先端建設技術センターによる性能証 目、 必要な諸手続きに要する期間等の確認 明を依頼して、品質証明に関して万全の体制を敷いて ④ 事業化への挑戦 いく予定です。 しかしながら、現段階では以下のような課題が残さ ⑴ 想定ビジネスモデル れています。 想定されるビジネスモデルを図-5に示します。 がれき 処分費 販売契約 アップサイクル カンパニー 受入れ設備 製造設備 建設業者 某 ︵災害廃棄物処理業務担当︶ J V 委託契約 ラツキが生じやすいことは否めません。 このため、第三 ブロック 販売費 材料費・製作費 許認可届 監督官庁・自治体 図-5 想定ビジネスモデル (仮称) アップサイクルカンパニーなる企業を設立し、 ● 製品の性能(品質、 安全性) を証明するための自主 基準値の設定と管理方法(試験方法、頻度および 基準値) の確立 ● 製品のトレーサビリティを確保できるシステムの構築 とその運用機関の特定 ⑤ おわりに ⑴ 当該技術の社会的意義 当技術の実用化に向けては、解決すべき課題が山 ブロックの製造設備を設けます。被災地の自治体から 積しているのが実情です。 しかしながら、 当技術がもた 災害廃棄物処理業務を受注した某JVと委託契約を締 らす社会的意義(既設最終処分場容量の負担軽減、 結し、有償にてがれき残渣を受け入れ、 ブロックを製造 他地方へのがれき移送量の削減、最終処分場新設に して周辺の復興工事に携わる建設事業者に販売しま 要する時間・コストの縮減など)は非常に大きいものと す。 カンパニーの運営費、 ブロック製造費用はJVから受 確信しております。今後も早期実用化に向けて、尽力し け取る処分費とブロックの販売費で賄います。 てゆく所存です。 ⑵ プラントの概要 ⑵ 監督官庁へのお願い (仮称) アップサイクルカンパニーのプラントの平面イ 最後に、当該技術の早期実用化および普及のため メージ図を図-6に示します。某JVの事業地内もしくは には、 以下に記すような監督官庁殿のご支援が必要不 近傍に3,000m2弱の用地を確保し、がれき残渣受入設 可欠です。絶大なるご支援を賜れますよう、切にお願い 備とブロック製造設備を設けます。某JVが災害廃棄物 申し上げる次第です。 処理を終了した時、 このプラントは解体・撤去します。 ● 製品の性能証明に必要な技術基準(試験方法、 頻 ⑶ 品質・安全管理に関する今後の課題 アップサイクルブロックは、がれき残渣を使用している ため従来品と比較して製品の品質および安全性にバ 度および基準値) に関する指導 ● 法規制に基づく各種手続き、許認可業務の迅速な処理 ● 当該技術の復興公共事業へのスペックインの奨励 NETIS プラス 25 トピックス 新東名高速道路(御殿場JCT∼三ヶ日JCT) の事業概要 中日本高速道路 (株) 東京支社 浜松工事事務所 はじめに 東名高速道路(以下、 「現東名」 という)は、昭和44年の全線開通以来、日本の大動脈として産業・文 化・経済に非常に大きな貢献を果たしてきました。 しかし、現在では、利用交通量の増大により現東名の ほぼ全線にわたり混雑が著しく、本来の高速性、定時性が低下していました。 さらに、現東名は、今後30年間で発生する確率が87%といわれる東海地震の防災対策強化地域に 入っており、東海地震発生時における交通機能の確保が課題となっていました。 これらを抜本的に解決し、 「豊かな日本の将来を築く」 ための切り札として、新東名高速道路(以下、 「新 東名」 という)の建設が計画され、 このうちの御殿場JCT∼三ヶ日JCT間162kmについては、関係者の 皆様のご支援・ご協力を賜りながら平成24年度内の完成を目指して鋭意事業を進めて参りました。 ◆整備効果 ①現東名の抜本的サービス改善 ◆事業経緯と技術面の取り組み 新東名は、平成5年、国から施行命令を受け事業 新東名の整備により現東名から交通が転換す をスタートしました。事業説明会を開き、地元住民の方 ることで、現東名の混雑が緩和し、高速性、定時性 へのルート説明を行い、平成6年には、静岡市(旧清 が確保されます。 水市和田島) において初めての中心杭打ち式を行 ②ダブルネットワーク化による信頼性の向上 新東名は現東名の通過するルートよりも山側を 通過するため、津波を含め東海地震の被害を受 けにくくなっており、 さらに新東名の整備により、現 東名との間で相互に補完・連携するダブルネット ワークが確保され、災害等緊急時の代替性の確 保、避難路・緊急輸送路としての機能、緊急体制 の支援など安全・安心の実現とともに道路の信頼 性の向上が図れます。 い、 その後道路の構造などについて協議を開始しまし た。協議が完了に続いて用地幅杭の打設、用地測量 などを行い、平成7年、富士市(旧富士郡芝川町) に おいて初めての用地買収の団体調印が行われまし た。全線では、約10, 700名の関係地権者の方から 約1, 644万㎡の土地を提供していただきました。 その後工事は、平成7年に、静岡市域の和田島トン ネル (工事中名称「清水第三トンネル」) と藁科川橋 (下部工)工事を発注。平成8年3月に起工式を行っ て、本格的に工事を着手しました。 ③日本の大動脈としての三大都市圏の連携強化 新東名では、最短ルートの選択やゆとりのある 構造規格の採用により、現東名に比べ、東京∼名 古屋間の移動時間が短縮されます。 これにより、人 やモノの流れがスムーズになり、行動圏が拡大す ることで社会経済活動の活発化が期待されます。 和田島トンネル(清水第三トンネル)のTBM貫通の様子 26 NETIS プラス トピックス 工事の実施に当たっては、安全と品質の確保、 コス ト縮減、環境負荷の低減などを目指し、多くの新技術・ 新工法に積極的に取り組みました。 トンネルでは、大きな断面の効率的な掘削工法とし て、 TBM導坑先進拡幅掘削工法を確立させる一方、 個々のトンネルの地質などの条件に応じて最適な対 策を実施しました。 新東名で最長の粟ヶ岳トンネル (下り線4, 667m) を始め、今里及び富士川トンネルではこうした取り組み が評価され、 「技術賞」 ((社)土木学会が、土木技術 都田川橋 の発展に顕著な貢献をなし、社会の発展に寄与した と認められる画期的な計画、設計、施工等の技術に 対して授与) を受賞しました。 新富士川橋 粟ヶ岳トンネル 橋梁では、鋼材とコンクリートそれぞれの材料の利 点を活かした複合構造の採用や、海外からの新しい 形式の導入などを行いました。 本線で最初に完成したエクストラドーズド形式の都 田川橋、 アーチが美しい新富士川橋、橋桁の軽量化 を目指したストラット形式の芝川高架橋、背景に調和し 芝川高架橋 た複合トラスの猿田川・巴川橋など、 8橋で、優れた 橋梁として 「田中賞」 ((社)土木学会が、橋梁・鋼構 造工学に関する優秀な業績に対して授与) を受賞し ました。 猿田川・巴川橋 NETIS プラス 27 トピックス 平成21年からは、舗装工事や施設関係の工事に なお、 5箇所の地区で大規模な地滑りが発生し、完 着手。舗装では、本線部の基本的な舗装構造として 成へ向けた最後の大きな課題となりましたが、動きを コンポジット舗装を採用しました。 コンポジット舗装は、 抑止する杭やアンカー工、水抜きなどの対策工の実 連続鉄筋コンクリート版をベースとし、その上にアス 施するとともに、地滑りの状況を把握するため、観測 ファルト混合物を組み合わせた舗装構造で、 コンク 機器(定点観測、孔内傾斜計) を設置し、 その挙動を リート舗装の持つ構造的な耐久性とアスファルト舗装 計測。外部有識者のご意見をうかがい、収束を確認 が持つ良好な走行性や補修の容易さ等、両者の長 することができました。 また、建設発生土をすべて有効活用するなど資源 所を併せ持っています。 施設関係では、先行で整備した試験走路(島田金 の3Rを推進するとともに、 地球温暖化の抑制へ向 谷IC∼浜松浜北IC間の一部) を活用し実証実験によ けたトンネルや休憩施設での太陽光発電の導入、道 り、 よりきめ細かくタイムリーな情報の提供、見やすく環 路の斜面約380haへの植樹による樹林化など工事 境負荷の少ないトンネル照明(セラミックメタルハライド 中を通じて環境への取組みも行いました。 やLED照明) など、新しい取り組みを行いました。 ジャンクション情報板 藤枝地区における地滑り対策 おわりに 新東名 御殿場JCT∼三ヶ日JCT間は、 「高速道路史上最長となる162kmの開通」 として、 4月14日 15時に無事開通することができました。 開通後は東名・新東名がそれぞれ約半分の交通量を分担しており、 GWの交通渋滞も例年に比べ 緩和されるなど、予定されたダブルネットワーク効果の発出が見受けられます。 エクスパーサ浜松をはじ めとした休憩施設についても多くのお客様にご利用いただいております。 NEXCO中日本は、新東名の残りの愛知・神奈川県区間の整備についても鋭意事業を進め、 より信 頼性の高い高速道路ネットワーク整備に今後とも努めて参ります。 28 NETIS プラス トピックス 「快適な走りを感じてください、 なだらか・ゆるやかな新東名」 中日本高速道路(株) 浜松工事事務所 所長 望月 俊明氏にお聞きしました。 ー当初の予定からかなりの前倒し開通ですね。 新東名高速道路(以下:新東名) は、昭和62年、 第四次全国総合開発計画において、多局分散型国 土形成に向け、交流ネットワークの推進の必要性を鑑 み、高規格幹線道路網14,000kmの一環として位置 付けられた路線です。 この度、 4月14日に開通した新東名、御殿場JCT (ジャンクション) ∼三ケ日JCT間(162km) は、平成5年 に 「施行命令」 が出されてから約19年の歳月をかけて 完成しました。 この開通延長162kmは、今まで一番長 い昭和44年の東名高速道路(以下:現東名) ・静岡 ∼岡崎間の132kmを抜き、最長のものとなります。 従前から、静岡県内では東海地震がいつ起こって もおかしくないとの認識があり、様々な備えを官民あげ て実施してきたところです。 そこで新東名についても 有事の際の緊急輸送路として使えるよう、第一に上下 線どちらかをまず通行可能とするよう、 さらには1日でも 早い完成をと事業を進めてきたところです。 特に、 この開通までの1年間、東京支社と静岡県内 の新東名建設5工事事務所は、映画「史上最大の作 戦(The Longest Day)」 をもじり、 「史上最長の作戦 所長の望月俊明氏 1985年日本高速道路公団入社。2000年浜松工事事務 所工事長。2007年金沢支社、その間3回の出向((独)土 木研究所、日本建設情報総合センター、先端建設技術セ ンター)も経験し、2009年掛川工事事務所長、2010年 浜松工事事務所長、現在に至る。 趣味 ジョギング、漬物づくりなど (The Longest Year)」 を合言葉に事業促進を行い、 無事実現させました。 開通のクリティカルとなったのは、大規模な地滑り区 勾 配2%以 下)、ゆるやか(最 小 曲 線 半 径3,000m以 間が静岡から浜松までの間に5か所あり、 この1月に 上) な線形で計画されているため、橋梁区間やトンネ 所定地滑り対策工事と効果の確認が完了したことと、 ルの区間が全体の58%を占めています。 舗装・施設工事については地元の皆さまのご理解を いただきつつ、関係請負人等の甚大なる協力もいただ き、 当初想定していた工程よりも短縮が図られたことに より、昨年8月に発表した 「初夏開通」から4月14日開 通に前倒しが可能となりました。 当初の開通目標は平 成24年度末でしたから、 ほぼ1年の前倒しとなります。 橋梁 トンネル 土工 新東名高速道路 32% 26% 42% 現東名高速道路 14.9% 3.0% 82.1% (引佐連絡路含む) (参考値) 構造物比率 (現東名高速道路と比較すると構造物依存度の高さが明確である) ー新東名の特徴は 新東名の特徴として、現在の海側を走る現東名より 山側に位置しており、現東名より、 なだらか(最大縦断 NETIS プラス 29 トピックス ー新東名が開通することによる効果は 昨年3月11日に発生した東日本大震災の際、 日本 請負人に協力を要請し、重機や作業員の派遣、復旧 資材の調達、運搬などの支援を行いました。 中の自衛隊、警察、消防などの緊急車両が東北地方 当時私は掛川工事事務所にいましたが、現東名の へ向かいました。大津波警報により現東名(清水∼富 通行止めによる国道1号線の渋滞はひどく、新東名を 士) の通行止めが続きましたが、新東名は山側に位置 有効活用した地元負担の軽減を目的に、静岡工事事 しているため津波の恐れはなく、工事中でしたが繋 務所と連携して8月15日9時∼16時の間、地元車両 がっており緊急輸送路として使えたため、現東名の通 を対象として新東名大井川橋を開放しました。急遽の 行止めが解除されるまで、約470台の緊急車両に通 ことであり、早朝から地元民家にビラを配布したり、地 行していただきました。 まさにダブルネットワークとして 元のラジオ局FM島田の協力により広報し、約800台 の効果が発揮されたものであり、災害時における救援 の車が新東名を通行しました。 ルートの確保、 および防災機能としての高速道路の重 要性が再認識されました。 現東名は、由比海岸の波浪、高波に起因する通行 止めがこの6年間で22回発生しています。今後は新 また、現東名では約74,000台/日の交通量があると 東名が代替路となり、 また所要時間が最小となるよう ころですが、交通容量48,000台/日を大きく上回り、渋 経路選択が可能とります。 まさしく新東名開通の効果 滞も2,500回/年発生し、定時性、信頼性などが低く は大きなものであるといえます。 なっています。新東名の開通により、 この交通量が分 散し、新東名、現東名とも40,000台/日強となり、渋滞 はほぼ解消し、運転者のストレスも軽減され、安全性、 安心感が高まるものと考えています。 平成21年8月11日に発生した現東名牧之原サービスエリア付 近(上り線)の法面崩落状況。 国道1号新大井川橋渋滞状況 東日本大震災(H23.3.11)の際は、現東名(富士IC∼清水IC)が 大津波警報により通行止めとなった。そこで静岡県との協定 に基づき、新東名にて緊急車両の通行を実施、470台の車両が 被災地に向かった。 ー平成21年8月11日、静岡県駿河湾を震源とす る地震により、現東名牧之原サービスエリア付近の 上り線の盛土のり面が崩壊するという災害が発生し、 もっとも交通量が多い時期に通行止めとなり、東西 の交通に大きな影響が出ました。 国道1号新大井川橋渋滞状況 当該区間を管理する静岡保全・サービスセンター では迅速な復旧工事を実施するとともに、静岡県内の 新東名工事事務所では対策本部の指示のもと、工事 30 NETIS プラス 地元車両限定で新東名の大井川橋を一時開放した。 トピックス ー新しい保全・サービスセンターの設計上の工 先進導坑を掘削し、 その後発破により完成断面に拡 夫は? 幅する工法を採用しています。工事請負人の努力や、 新東名の浜松浜北インターチェンジに新築した浜 地質とTBMの相性がよかったこともあり、TBMの掘 松保全・サービスセンターでは、災害発生時の対応 削スピードとして一カ月で最大810mの掘削距離を記 強化を目的に、防災対策室の一部に可動式の壁を採 録しています。 これは当時、径5mのTBMとしては日 用して、関係グループ会社とともに臨機応変の対策本 本の中で1番の月進記録です。 といっても1カ月後には 部が設置できるよう対応状況に応じて広く使えるよう 新名神の鈴鹿トンネルに抜かれてしまいましたが。 施設検討したり、屋上に太陽光発電パネルを設置し 災害時の電力確保強化や環境負荷軽減を図るなど の工夫を凝らしています。 TBM(トンネルボーリングマシン)と呼ばれるモグラのような 機械で先進導坑を掘削した。 大きな苦労もありました。東坑口から約600 ∼ 700m 浜松浜北インターチェンジに建てられた浜松保全・サービス センター。屋根一面に太陽光発電パネルが設置されている。 に分布する石灰岩の区間では、連続雨量が70mm以 ー工事着手から開通までの間が約19年というこ 生しました。対策としてトンネル全周に止水注入をしまし とですが、様々な出来事があったことと思います。 たが、止水注入完了から1ヶ月後の降雨で、 トンネル肩 特に印象に残っているのは、 この新東名の中で3番 部の吹付けコンクリートを破壊する突発湧水が発生し 目に長いトンネルである三岳山トンネル (工事中名称: ました。 このため、止水による注入は限界と判断し、水 浜松トンネル、上り3,200m、下り3,262m) です。 抜き (排水)対策を併用するよう方針を変更しました。 浜松サービスエリアと浜松いなさジャンクションの中間地点 にある三岳山トンネルの坑口 発生した突発湧水の状況 上になると、 トンネル壁面から高濁度の突発湧水が発 施工データから湧水の発生経路を特定し、水抜きを このトンネルは、前方の地質確認や水抜きのため、 ま 目的とした横坑を掘削し水を供給する空洞(ぼら) に当 ず径5mのTBM(トンネルボーリングマシン) を用いて て、 さらにトンネルにかかる水圧を軽減するよう横坑から NETIS プラス 31 トピックス 多数の水抜きボーリングを施工しました。 その後の長期 間の経過観察により湧水の濁りがなくなったことを確認 し、長期的な降雨量を想定した湧水をトンネル外へ排 出できるよう排水路を設置しました。 また、横坑内に照 明とカメラを設置して供用後においても監視できるよう にしています。 セグメント製作状況 主桁の床版張出し部分を補剛するためにリブ構造となってい る。リブは床版下側にあばら骨のように配置され、セグメント の箱桁部をコンパクト、軽量化を図っている。 水抜き目的で掘削された横坑 24本のボーリング孔からは現在も水が出続けている。 また、的場川を跨ぐ的場高架橋の建設予定地はホタ ルの有数な生息地であり、地元の憩いの場となっており ました。そこで工事発注時には、工期短縮と環境に配 慮した施工方法等に関する技術提案を求め、その結 果、 プレキャストセグメントによる張出し架設工法を採用 しております。現場内で分割して製作した桁(セグメン ト) を架設地点まで運搬・接合し、 プレストレスを与えて 架設桁による張出し架設工法 橋脚を中心として、ヤジロベーのように左右バランスをとり ながら桁を架設していく。 一体化する工法なのですが、 これにより施工期間を短 下部を流れる的場川も橋脚施工時には切り替えをす 縮し、周辺環境への影響低減を図っております。 る必要があり、 河川復旧の際には、 ホタルの生態に配 慮した形を有している共和式ホタルブロック (NETIS 番号:CB-070037-A) を採用しております。 的場高架橋全景 本線上の土工事区間で分割した桁(セグメント)を製作し、工 事箇所で発生する作業をできるだけ最小限にした。 このブロックはホタルの幼虫が生育できるよう内部に土を詰 め込む構造となっており、さらに河川の水が内部の土に供給 されるよう配慮されている。 32 NETIS プラス トピックス また、現場内に的場川の水を利用したビオトープ の都田川を跨ぐ都田川橋は、狭隘で急峻な谷を跨ぎ、 ゾーンを整備しましてホタルの保全活動に取り組んだ はままつフルーツパークやキャンプ場が近くにあります。 り、 自然学習体験やホタル鑑賞会などを開催して、地 橋脚の設置位置の制約、周辺環境との調和を総合的 元の方々と楽しい交流の場を持つことができました。 に検討し、PC2径間エクストラドーズド橋を採用しまし た。桁高も低くスレンダーで、主塔の高さも背景と調和 がとれています。張出し施工長96.5mはPCエクストラ ドーズド橋として国内最大(建設当時) の規模です。 また、高橋脚となることから鋼管・コンクリート複合 構造として、 スリム化と耐震性の向上を図りました。 鋼管 PCストランド 巻き付け帯鉄筋 コンクリート 工事の際に整備したビオトープは的場川本流のホタルの産卵 を補完している。 鋼管・コンクリート複合 構造のイメージ図 鋼 管 と 鉄 筋 を 主 筋 と し、 高強度のPC鋼より線を 帯鉄筋として螺旋巻きし ていく。 ーその他の新技術は? トンネル坑口付近に太陽光発電パネルを設置し、発 電した電力をトンネルの入口部の照明に供給していま す。太陽光発電は明るければ明るいほど発電量が大 たくさんの地元の方が参加したホタル観賞会の様子。 きく、 トンネルの入口は周りが明るければ明るいほど照 明を明るくするための電力を必要とします。 つまり両者 ー様々な新技術を活用しているようですね。 設計の段階から、経済性だけではなく、周辺景観に は同じ性格を持っており、太陽光発電を採用すること により、使用電力のピークカットができ、契約電力量を も配慮して比較検討を行っています。例えば二級河川 抑えコスト縮減につながります。 都田川橋 2000年度の土木学会田中賞を受賞している。 トンネル坑口に設置されている太陽光発電パネル NETIS プラス 33 トピックス また。 トンネル内の照明についても新しい技術として、 から 「計画保全」 を図っていこうというものです。建設 プロビーム照明を採用し、進行方向に照らし前方の車が 段階においても道路を長持ちさせるようLCC(ライフ・ 明るく見えるようにして、安全性の向上を図っています。 サイクル・コスト) を考慮して設計段階から検討する 従来の照明 路面が明るく、前の車がやや暗く見えます。 必要があります。新東名の舗装は耐久性に優れたコ ンクリート舗装と走行性に優れたアスファルト舗装を複 合させたコンポジット舗装を採用しています。 その他土 構造物、 コンクリート構造物についても長寿命化技術 が必要とされています。 新しい照明 路面が暗く、前の車が明るく見えます。 ー今後どのような新技術が必要と思われますか? コンポジット舗装の構造概念図 表層工 基層工 アスファルト 安定処 理上層路盤工 コンクリート 舗装版 表層工 中間工 連続鉄筋 コンクリート 舗装版 下層路盤工 路盤工 路盤工 道路を長持ちさせる総合的な取組みが必要だと思 います。 いま中日本高速道路株式会社では、 「百年道 路」 を目指しています。 これは後世に優良な資産を継 承するため、保全段階にて対処療法的な 「事後保全」 34 NETIS プラス アスファルト舗装 + コンクリート舗装 → コンポジット舗装 コンポジット舗装はコンクリート舗装の耐久性と、アスファ ルト舗装の走行快適性と維持修繕の容易さを併せ持つ。 トピックス ー最後に(浜松工事務所管内における)新東名 は新しいブランドとして 「NEOPASA (ネオパーサ)」 を のお勧めポイントを教えてください。 展開し、施設規模、業態、施設配置、園地計画に至る まずは、 ランドマークとして都田川橋(エクストラドー まで新たな設計思想で作り上げており、多様なニーズ ズド橋)、 そしてやはり皆様が一番楽しみにしてくださ のお客様が快適にご利用いただけるものと考えていま るSA (サービスエリア)、 PA (パーキングエリア) です。 す。 ハイ・クオリティ・ウェイ 「新東名高速道路」 を是非 全部で13か所、 それぞれエリアコンセプトを設けてご 皆さん活用して、 この快適な走り、魅力あるNEOPAS 当地豊かなものとしています。 中でも7か所のSA・PA A、 PAを体感してください。 (上り線・下り線) (上り線・下り線) (上下線一体) (上り線・下り線) 聞き手: 先端建設技術センター 技術調査部 石丸慶三 吉井久美子(写真) 前列向かって左側は、 現場を案内していただいた 工務課長の北林成彦氏。 後列は取材班 NETIS プラス 35 NETISトピックス 四国地方整備局における取組み 四国テーマ設定技術募集 の紹介 ∼公募テーマ:災害対応技術(災害発生時の即日性調査)の試行調査について∼ はじめに 四国地方整備局では、産官学の有識者において、四国における具体的なニーズにマッチした、四国の これからの発展に役立つ技術テーマを設定し、 「四国テーマ設定技術募集」 として平成18年度から新技 術の公募を行っています。平成23年度は、以下の3テーマ(7技術) について募集がありました。 このう ち、災害対応技術「災害発生時の即日性調査」の試行調査が行われましたので、担当部門である四国技 術事務所への取材結果を紹介します。 表 1 平成23年度における募集技術 <災害対応技術> ●災害発生時の即日性調査 <構造物保全技術> ●管理施設の維持更新判定技術 ●路面下空洞探査技術 ●ボーリング、杭施工孔内の地質の簡易判定技術 ◆試行調査概要 試行調査は、下記の日程で開催されました。 <維持管理技術> ●作業の軽減とコスト縮減が可能な機械・資材技術 ●既設防護施設を活用した耐久性・安定性向上技術 ●橋梁の部材の腐食・劣化進行を抑制する予防的保 全技術 ◆試行調査の目的や背景 災害発生時には、応急復旧のために迅速かつ精 【日時】平成24年1月31日 (火)11:15 ∼ 16:00 度がある程度確保された現地状況の把握が必要で 【試行調査を行った技術数】 す。 しかし、被災現場への立ち入りが困難であるた 非接触測量技術 2技術 め、 目測等による推定が多く、必要な詳細情報の把握 1)写真計測による3Dモデル構築システム が困難である現実があります。 このような背景から、災 デジタルカメラによる3次元災害地形図作成システム 2) 害発生後、 その規模の把握、復旧対策検討期間の短 【試行現場】 縮を目指し、災害調査の迅速化に向けた即日性調査 測量場所 高松市庵治町高尻海水浴場 を可能とする新技術を募集しました。NETISにおける 作図場所 四国技術事務所 会議室 フィールド提供型(P.43「新技術活用の方法」参照) の 場合、発注者が、現場ニーズに沿った新技術を公募 および選定し、その現場にて、選定した新技術を活 用・事後評価するのが一般的です。 しかし、今回の 災害対応技術などは、実現場における試験確認が時 間的に困難ですが、防災という観点で事前に新技術 のレベルを確認しておくことが非常に重要となります。 こういった技術も含めて、四国地方整備局では、 テー マを設定し、試行を行っています。 写真-1 現地および測量状況(有識者立会のもと試行調査を実施する) 36 NETIS プラス NETISトピックス ◆四国技術事務所の声 NETIS登録したことによって、その技術が世に出回 り、技術革新に繋がるようなものであれば、 また、少し − 四国テーマ設定技術募集とはどういうもので でも技術革新の目があるようなものであれば、 それなり すか。 のアドバイスをするようなことはやっています。 基本的には、 フィールド提供型に該当します。 ただ、 − そういったお考えの中、過去に試行された新 全国で試行されているものとは違う意味で四国に特 技術で、実際に現場等にフィードバックされたもの 化したもの、四国内で使う技術の確認が必要であると はありますか。 いう認識のもとに始めたものです。四国テーマ設定に 橋梁点検足場技術は、平成20年度にテーマ設定 おける試行経費は、工事を発注していないため、開発 技術として試行しましたが、 それは現在、事後評価さ 者負担となっています。 ただし、すべてが、開発者負担 れており、 フィードバックの代表的なものです。 そのほ というわけではありません。今回の場合で言えば、 事前 か、四国テーマ設定技術募集で試行したものが準推 測量や精度確認等の資料作成費用は発注者負担と 奨技術に選ばれました。 また、過去に試行した技術を しています。 事務所で導入した事例もあります。 − 四国に特化したものとは。 四国は、地形・地質・気象面から、厳しい環境にさ らされています。 これより、他の地域とは違う取組みを する必要があると考えました。全国ベースのものという より、四国のニーズにあったものを開発していくことが、 四国の基盤整備に役立つと考えています。 − テーマはどのように設定していますか。 テーマ設定については、今、四国で一番困っている ◆まとめ 取材を通じて、四国テーマ設定技術に対する考え 方や実施方針および展開方法などをお聞かせいただ きました。今後も各地の取組みや技術を紹介し、 「有用 な新技術」 の普及促進に努めたいと考えております。 ご協力いただきありがとうございました。 ことは何か?というニーズを、各事務所に対して技術の 紹介と要望を聞く 「キャラバン」 と呼ぶ機会を通じて確 認しています。最近は、維持管理技術と災害対応技 術が多いです。今、困っていることを正直に我々の事 務所にぶつけてもらえれば、有効な手立てになるかど うかわかりませんが、掘り下げていき、発掘していきた いとも考えています。 − この取り組みに関する評判や反響はどうですか。 開始した当初に比べると最近、特に応募が増えて います。昔に比べたら打てば響くような感じでしょうか。 写真-2 四国地方整備局四国技術事務所 香西副所長、岡技術情報管理官、岡村専門官(右より) 東日本大震災を契機に反響が変わった気もします。 ま た、NETIS登録に対する考え方について、開発者側 が変わったと感じるときもあります。 − 四国テーマ設定技術募集に関するお考えを少 し教えて下さい。 国土交通省が欲しているものを発信することが重 要だと考えています。 また、本当に必要なものを登録し たいと考えていますので、 ある程度選別しています。 写真-3 作図および説明状況 NETIS プラス 37 新技術レポート 補強土擁壁分野の新技術 (財)先端建設技術センター 常任参与 松尾 修 企画部 参事 富田 剛司 補強土擁壁は、盛土内に敷設した補強材と壁面材とを連結し、垂直もしくは垂直に近い勾配を有する 土留め構造物です。その用途は従来のコンクリート擁壁と同様ですが、その主な特徴としては、①垂直に 近い壁面を有する盛土を形成できるため用地を有効に活用できる、②コンクリート擁壁のような剛体で ないため不連続な変形が生じにくい、 ということが挙げられます。 補強土擁壁は1970年代にテールアルメ工法がフランスから技術導入されたのを契機として、以後 急速に普及してきた技術です。補強土擁壁が我が国に導入されるにあたっては、我が国が地震国である ため、耐震設計法の検討も早くからなされており、 この方面では世界をリードしていると言えます。 この ような事情もあり、過去の地震でも顕著な被害が生じた事例はほとんど見受けられないようです。昨年 の東北地方太平洋沖地震についてもこれまでのところ補強土擁壁の大被害事例は報告されてないよう ですが、技術の妥当性の確認やさらなる改良のためにも今後の詳細な調査が望まれます。 この記事では、補強土擁壁分野の新技術の開発活用動向について、新技術活用システム(NETIS)に 登録されている工法を中心に御紹介するとともに、今後の活用促進にかかわる留意事項等について述 べることとします。 ① 補強土擁壁分野の新技術 補強土擁壁は、補強材として帯鋼、 アンカープレート、 ジオテキスタイルを用いる工法が以前より主流となって いますが、その後、多様な壁面材や補強材が開発提 案されています。 ここでは、新技術情報提供システム (NETIS) に登録された新技術を概観してみます。 としての用途に限定すると23技術になるようです。 これらの技術を主要構造部材である補強材と壁面 材に着目して分類すると表-1のようになります。 補強材については、帯状鋼材、 ジオテキスタイル、 ア ンカープレート付棒鋼の他に、 チェーン、溶接金網が新 現在、NETISの「補強土擁壁工」のカテゴリーには 34技術が登録されていますが、通常の土留め構造物 たに出現しています。工法の種類としては、 ジオテキス タイルを用いたものが最も多くあります。 表 -1 NETIS に登録された補強土擁壁工(23 技術) 補強材 壁面工 帯状鋼材 アンカープレート付棒鋼 既製コンクリートパネル コンクリート枠・ブロック (4)スーパーテールアルメ工法 (6)テールアルメ工法 A3 (22)アクアテール 35 (9)緑化テールアルメ(テラ トレール F2, テラヴェール)工法 (11)多数アンカー式補強土壁工法 (19)FILL WALL 工法 (摩擦プレート付) (26)スーパーレクサ 溶接金鋼 (1)アデムウォール (12)テンサー VIG 工法 (土のう + 場所打ちコンク リート) (16)RRR 工法 (コンクリート枠) (14)トレグリッド PF 工法 (30)ハイブリッドフレーム 補強土工法 (コンクリートブロック) (27)ジオブロック (30)ハイブリッドフレーム 補強土工法 (2)補強土壁工法 「テンサーダブルウォール」 (安定処理土) (5)アデム (3)ハイビーウォール (13)盛土法面補強構造体 工法 (TOGA-WALL) (15)セルフォース (間伐材) (2)補強土壁工法 「テンサーダブル (31)テラムグリッド工法 ウォール」 (34)補強土壁工法「テンサー」 (17)トリグリッド (8)ワイヤーウォール 60 (注 1)番号は NETIS 公開情報一覧表の番号。(注 2)壁面工に土のうを使用することができるものもある。 38 NETIS プラス その他 (10)チェーンウォール工法 アンカープレート付チェーン ジオテキスタイル 鋼製枠 新技術レポート 壁面材については、以前はコンクリートパネルや土の 20m前後となっているものが多く見られます。 また、壁面 うをジオテキスタイルで巻き込む方式が主体でしたが、 勾配はコンクリートパネルの系統では鉛直が主流であ この他に鋼製枠(エキスパンドメタル、溶接金網等)、 コ り、鋼製枠などでは最急勾配が1:0.1や1:0.0(鉛直) ンクリート枠・ブロック、安定処理土(壁) などが新たに などが多く見られます。擁壁高さが高く、壁面勾配が急 出現しています。特に鋼製枠を用いた工法が多く見ら であるほど擁壁の安定や変形に対して慎重である必 れますが、 その目的とするところは壁面の緑化、軽量化 要がありますので、採用にあたっては、安定性等の裏 による施工の簡略化、経済性の向上などです。安定処 付けはあるのか、施工実績がどれくらいあるのか、将来 理土の壁を壁面に配置する新しい技術もあります。 問題となる変状が生じるおそれはないか等をよく調べ つぎに、NETIS申請情報より擁壁高さや勾配等の適 用範囲を見てみましょう (実績等に基づく根拠があるも た上で判断する必要があるでしょう。 つぎに、 どのような技術がよく活用されているかを見 のやないものが混在していることに注意してください)。 てみましょう。NETIS公開情報には申請者の自己申告 図-1は、 申請情報にある最大盛土高さと最急勾配の組 による実績件数が掲載されています。 それによると、実 み合わせを盛土肩で代表させています。最大高さは 績件数トップ10は表-2のようになっています。技術によ り実用化された年が異なるので、右の実績件数が最 図 -1 擁壁高さと勾配の適用範囲(申請情報による) 頼度を判断するための一つの参考にはなると思われ 13 ます。 なお、表に示した以外にも、現在NETISに登録 6 25 されていない技術で使用実績の多いものがあることに 1,5,11,15,19,22 20 15 9 2 4,10,14 表 -2 活用実績の多い補強土擁壁技術 技術名称 30 10 1:0.6 1:0.5 1:0.3 5 0 も留意が必要です。 14 17 31 26 3,8,27 -1 1:0.1 0 近の実績を反映しているとは限りませんが、技術の信 5 10 15 (m) 20 実績件数 補強土壁工法「テンサー」 8600 ワイヤーウォール 8156 アデム 4144 テンサーダブルウォール 2718 多数アンカー式補強土壁工法 2383 緑化テールアルメ(テラトレール F2, テラヴェール)工法 641 アデムウォール 504 RRR 工法 480 セルフォース 461 ジオブロック 330 (注)実績件数は NETIS 公開情報による。 ② 技術のチェックポイント よい技術を選定し、 また技術を向上させるために これらに伴う盛土の沈下、補強材の破断、壁面材の は、 その技術の特徴や弱点を理解しておくことが大切 破損・座屈、盛土材料のこぼれだしなどの事例が報 です。 告されています。 これまでの経験によれば大部分の補強土擁壁は健 そのような変状を生じるに至った要因としては、図-2 全に機能していますが、 その一方で不具合事例の報 に示した事項が指摘されています。 なお、典型的な変 告もなされています。不具合の内容としては、崩壊に 状の事例を図-3に示します。 至った事例は稀ですが、壁面のはらみ出し、前倒れ、 NETIS プラス 39 新技術レポート 不良な盛土材料を使用 (高含水土など) ● 排水層が適切に配置されていない (背面排水層、基盤排水層など) ● 締固めが十分でない (特に壁面の背面) ● ● ● 基礎地盤の支持力が十分でない 壁面材や補強材連結部の 強度が十分でない 図 -2 変化を生じる主な要因 (a)主な要因:盛土材料不良、締固め不足、排水が不良 (b)主な要因:基礎地盤の支持力不足 図 -3 補強土擁壁の変状の典型的な例 このうち適切な盛土材料の選定、十分な締固め、排 水工の設置などは土工構造物の設計・施工に共通す る基本事項であり、土工の基本を忠実に行うことが大 切であると言えます。 実に維持されるか、長期間での土のこぼれだしのおそ れはないか等にも留意が必要でしょう。 つぎに、NETIS公開情報にある 「活用効果評価」結 果ではどのような指摘がなされているかを見てみましょ また、補強土擁壁に特有の事項としては壁面工近 う。 「活用効果評価」 とは、NETISに登録された新技術 傍の締固めを丁寧に行うことや、施工時や供用後に地 のうち、 5件以上の現場で活用されて活用効果調査表 震・豪雨の作用を受けても容易に変形・破損しないよ が得られたものについて総合評価がなされたもので うな耐力を有する壁面材や補強材などの配慮が必要 す。留意事項に属する主なコメントを拾い上げると以下 であるようです。緑化等を目的とした鋼製枠では土圧に のようです。 (すべての新技術に共通するコメントでは 対する変形や、 あるいは急勾配の場合には植生が確 ないことに注意してください。) 40 NETIS プラス 新技術レポート ● ● ● ● ● ● ● 壁面近傍での盛土材の締固めに留意する。 地山からの湧水がある場合には排水対策工を確 実に行う。 使用する部材数が多く、設置場所の確保、施工 が面倒である。 壁面近傍での作業員墜落に対する安全対策が必 要である。 大型壁面工は工程的には有利である一方、安全 管理が重要である。 簡略化された壁面工は施工が容易である一方、 締固め、将来の変形に留意する。 適用高さ・勾配、耐久性について確認できない ので慎重な検討が必要である。 上に述べた変状要因と共通する指摘がなされてい るのがわかります。 また、施工の簡素化と施工時の安全 対策、構造の簡略化と将来の変形についての懸念な ど、相反する指摘も見られます。 なお、活用効果調査は 工事が終了した時点でなされるものであるため、供用 後に問題なく機能しているか、 あるいは耐久性は問題 ないか、 については評価できません。 そのため、新技術 の適用にあたってはそれらを慎重に検討する必要があ るとの指摘がなされています。 ③ 新技術の活用と普及のために それでは、 補強土擁壁の新技術が適切に活用され、 かつ技術の向上につながるために必要と思われる事項を、 新技 術を活用する立場と、 新技術を供給する立場からのそれぞれの視点で述べてみます。 補強土擁壁技術を活用する立場からは以下のことが大切であるように思われます。 ① 補強土擁壁を用いる目的を明確にする。 従来型の擁壁を含めてなぜ補強土擁壁を適用するのかを明確にしておくことが必要です。用地確保の問題、地山条件や盛土 材料と構造物の安全性確保、緑化などの環境・景観、経済性などが考えられます。 ② 経済性のみに目を奪われず、現地条件に適した工法を優先的に選択する。 長期にわたって供用される道路などの公共施設にとって、構造物の安全性確保は最優先事項であり、そのため基礎地盤の状 況、盛土材料の特性に見合った工法を選定する必要があります。緑化や壁面工のテクスチャなど、周辺環境との調和も必要 に応じて考慮する必要があります。これらの観点から絞り込んだ上で、最終的に経済性比較を行うのが望ましい姿勢です。 ③ 安定性や耐久性等の技術的裏付けがあるものを優先的に選択する。 安全性や耐久性についての検証材料を えるのは開発者にとっては容易ではありません。それでもできるだけ技術的な裏付 けを求める姿勢が必要でしょう。類似技術を含めて過去の変状事例等を調査分析し、自前の技術の改善努力をしている新技 術は活用の機会が与えられるようにすべきと思われます。 ④ 追跡調査を必要に応じて行う。 新技術の採用にあたっては、技術が備えるべき要件のすべてを事前に確認することは簡単ではなく、ある程度技術者の経験 に基づく判断によらざるを得ない面があります。それらは実際に使ってみて確かめ、改良していくことになります。補強土 擁壁の場合には、建設後の変形・安定、主要部材の耐久性などについて、必要に応じて追跡調査することが望まれます。 補強土擁壁技術を供給する立場からは以下のことが大切であるように思われます。 ① 新技術の特性を明確にする。 新技術の開発者にとって、その技術の得意分野を強調する(「本技術は○○の現場条件の場合に特に優位性を発揮します。」) のは痛し痒しの面があるかもしれません。活用の機会を狭めるおそれは否定出来ませんが、逆に得意分野で活用されること により高い評価を勝ち取り、次第に実績・改良を加えて適用範囲を拡げていくというのが望ましい姿であると思われます。 技術の優位性を発揮しにくい現場条件の下で使われて芳しくない評価がなされる事例も垣間見えます。 ② 技術情報を発信する。 新技術を採用する側からすれば、技術的な信用力は大きな要素だと思います。このため、新技術の開発者におかれては、よ い情報に加えて、不具合情報とそれについての改善事項を発信していただくことが望まれます。また、補強土擁壁の品質は 施工の善し悪しに依存する度合いが高いです。供給者と施工者は別であることが多いので、その技術に固有の施工上の配慮 事項・工夫なども積極的に発信していただくことが望まれます。 NETIS プラス 41 NETIS 資料室 NETIS 新技術活用システムの簡単解説 第4回「新技術活用の方法」 について 「新技術活用システム」は、国土交通省の新技術情報提供システム (NETIS) に登録された新技術を対象 に、公共工事等において良い技術の活用を推進するための仕組みです。 活用された技術を積極的に評価し、 更なる技術の開発・改良に繋げていくことを目的としています。 新技術活用システム ・推奨技術 ・準推奨技術 「有用な新技術」 として普及促進 評価がよければ 「有用な新技術」 に 指定されます ・設計比較対象技術 ・少実績優良技術 ・活用促進技術 評価結果を蓄積 評価された技術は 産学官からなる 有識者会議がその 技術を評価 活用現場の調査表が 蓄積された時点で 実施されます NETlS番号 ○○-○○○○○○-V となります NETIS 評価情報 新技術が採用されれば、 その技術の効果について 活用時に調査されます 新技術情報提供システム 公共工事等で活用効果調査 新技術を積極的に 活用し、技術のスパイラル アップに繋げます 新技術を評価する ため活用を促進 NETIS 今回は 「新技術活用の方法」 について説明します 申請情報 新技術情報提供システム 登録 登録 登録された技術は国の公共工事等で 活用される候補となります NETlS番号 ○○-○○○○○○-A 登録 民 間 等にて 開 発され た新 技 術 42 NETIS プラス NETIS 資料室 第4回「新技術活用の方法」 について 新技術を活用するパターンには大きく4つの型(試行申請型、 フィールド提供型、施工者希望型、発注者指定型) があり、 新技術活用の提案者によってその手順は異なります。 開発者 ●開発者が新技術の活用を提案する方法 (NETIS 申請者) 事後評価が実施されていない技術を対象に、NETIS 申 請者の申請に基づき、事前審査の結果を踏まえて活用 を行う型※1 試行申請型 流れ NETIS 申請者が自社 技術の活用を申請 新技術活用 評価会議 事前 審査 直轄現場で活用 発注者による試行調査 現場の照会・選定 試行調査 活用効果調査 新技術活用 評価会議 事後 評価 ※1 かし発生時の修補が困難な技術は試行申請型の対象となりません。 また、試行調査現場が見つからない場合もあります。 地方整備局等が具体の現場ニーズを提示して技術を公 募し、提示条件を満足する技術の中から優れた技術を 選び活用する型 フィールド提供型 技術営業 新技術活用 評価会議 流れ 地方整備局等が必要と なる新技術を公募 施工者 (総合評価方式における技術提案の場合) 流れ NETIS 新技術情報提供システム 事後 評価 入札参加者がNETIS 登録技術を提案 技術提案の審査 落札者決定 (請負契約締結後提案の場合) 評価情報 総合評価方式における技術提案に基づき施工者が NETIS 登録技術の活用を行う型 入札時VE 審査委員会 (技術審査会) 施工者希望型 直轄現場で活用 活用効果調査 直轄現場で活用 施工者がNETIS登録 技術の活用を申請 活用された新技術は、5件の 工事で活用効果調査が適切 に実施された後に事後評価 が実施されます。 請負契約締結後における技術提案申請に基づき施 工者がNETIS 登録技術の活用を行う型 流れ 申請情報 試行調査 活用効果調査 新技術活用 評価会議 ●施工者が新技術の活用を提案する方法 施工者希望型 閲覧・ 比較検討 事前 審査 開発者が応募 直轄現場で活用 発注者が確認 又は承諾 活用効果調査 活用された新技術は、5件の 工事で活用効果調査が適切 に実施された後に事後評価 が実施されます。 閲覧・ 比較検討 発注者 ●発注者が新技術を採用する方法 発注者指定型 流れ 現場ニーズ・行政ニーズなどから必要とされる新技術を、 発注者が特記仕様書で指定することにより活用を行う型 直轄現場で活用 発注者がNETIS 登録技術を 指定・発注 活用効果調査 活用された新技術は、5件の 工事で活用効果調査が適切 に実施された後に事後評価 が実施されます。 NETIS プラス 43 NETIS 資料室 NETISに登録して活用した場合の利点は? NETISに登録、 または登録された新技術を活用することにより、建設工事における設計・入札契約・ 施工・完成時・完成後に下記のような様々な+プラス面(利点)があります。 評 価が優 秀な場 合「有 用な 新技術」に選定され、これに より 普 及 促 進 の 対 象に なります。 (46頁「利点③」 をご覧ください) 新技術を活用することにより 課 題 が 見 つ かり 改 良・改 善につながります。 NETISの新技術を活用すれ ば 工事成績評定におい て加点されます。 完成時 ・ 完成後 (次頁「利点②」 をご覧ください) 施工時 NETISの新技術を活用すれ ばコストの縮減、 工期の 短縮等が期待できます。 入札・ 契約時 総合評価方式での提案 で加点の対象になります。 (次頁「利点①」 をご覧ください) まずはNETIS に登録してく ださい。発 注 者や施 工 者 は NETISを検索して新技術の 情報を収集しています。 設計時 NETIS登録申請者 44 NETIS プラス 施 工 者 NETIS 資料室 利点① 総合評価落札方式における新技術活用に対する加点について 総合評価方式においてNETISに登録された新技術の活用を提案した場合、 加点の対象になります。 注)加点の方法は提案を行った地方整備局等によって異なります。 ●東北地方整備局の場合(ホームページより抜粋) ●近畿地方整備局の場合 ■適用工事 標準型・簡易型 ■加点措置の概要 当該工事において、新技術情報提供シ ステム (NETIS)登録技術のうち、有用 な技術とされた新技術の活用の有無 2点 MAX+ ※掲載の内容は、平成24年6月22日時点のものです。 利点② 工事成績評定における新技術活用に対する加点について 新技術の活用を提案(契約後提案、施工計画書、工事打合せ簿による活用提案)すれば 下記のように工事成績評定に加点されます。 (必ず活用効果調査表は出してください。) ●事後評価が実施された技術活用の場合 1.6点 最大 ■「有用な新技術」の活用で活用効果調査表を提出 1.6点 + ■「有用な新技術」以外の技術の活用で活用効果調査表の総合評価が120点以上 ●事後評価が実施されていない技術活用の場合 ■活用効果調査表を提出 1.6点 + 1.6点 最大 0.8点 + さ ら に ■発注者による活用効果調査表の総合評価が120点以上であれば 0.8点 + NETIS プラス 45 NETIS 資料室 利点③「有用な新技術」 として普及促進の対象となります 推奨技術 準推奨技術 公共工事等に関する技術の水準を一層高めるために新技術活用システム 検討会議(有識者会議) において選定された、画期的な新技術。選定された 技術は『○○年度 推奨技術(新技術活用システム検討会議(国土交通 省))』又は 『○○年度 準推奨技術(新技術活用システム検討会議(国土交 通省))』 という名称を使用できます。 平成24年度『推奨技術』の紹介 技術名:SPR工法 NETIS 登録番号:KT-990074-V 技術開発者:東京都下水道サービス(株)、積水化学工業(株)、足立建設工業(株) 技術名:ダンビー工法 NETIS 登録番号:KT-990220-V 技術開発者:クボタシーアイ(株)、 (株)クボタ工建、 (株)大阪防水建設社 技術名:グレーチングストッパー SP NETIS 登録番号:HR-050026-V 技術開発者:丸運建設(株)、 エコシビックエンジ(株) 技術名:法面2号ユニバーサルユニット自在階段 NETIS 登録番号:KT-090046-V 技術開発者:日綜産業(株) 平成24年度『準推奨技術』の紹介 技術名:パルテムSZ工法 NETIS 登録番号:SK-000010-V 技術開発者:芦森工業(株) 技術名:情報BOXハンドホール用シリンダー錠付中蓋 NETIS 登録番号:KK-030028-V 技術開発者:(株)土井製作所 技術名:オメガライナー工法 NETIS 登録番号:KT-050096-V 技術開発者:東京都下水道サービス(株)、積水化学工業(株)、足立建設工業(株) 技術名:オートフラップゲート (Auto Flap Gate) NETIS 登録番号:QS-000020-V 技術開発者:(株)協和製作所、 国土交通省九州地方整備局 技術名:3次元設計データを用いた計測及び誘導システム NETIS 登録番号:KT-060150-V 技術開発者:(株)トプコン 46 NETIS プラス NETIS 資料室 技術名:グリッドシーバー工 NETIS 登録番号:CG-040015-V 技術開発者:日本植生(株) 技術名:プレキャスト樋門工法 NETIS 登録番号:HK-030028-V 技術開発者:共和コンクリート工業(株) 技術名:鋼橋仮組立代替工法pbfantom(ピービーファントム) NETIS 登録番号:QS-070014-V 技術開発者:新日本製鐵(株) 技術名:CATS NETIS 登録番号:CB-010018-V 技術開発者:(株)横河ブリッジ、 (株)横河技術情報 技術名:高分子系浸透性防水材アイゾールEX NETIS 登録番号:CB-030003-V 技術開発者:(株)アイゾールテクニカ 技術名:ひび割れ計測システム NETIS 登録番号:KK-080019-V 技術開発者:関西工事測量(株) 技術名:YTロック工法 NETIS 登録番号:KK-080017-V 技術開発者:エスアールジータカミヤ(株)、 アサヒ産業(株) 技術名:通信ルートを自動的に組み換える無線通信を用いた水位センシングシステム NETIS 登録番号:QS-090024-V 技術開発者:富士通(株) 技術名:ツイン・ブレードミキシング工法 NETIS 登録番号:KT-050086-V 技術開発者:小野田ケミコ(株) 技術名:エポコラム工法(地盤改良工法) NETIS 登録番号:KT-980205-V 技術開発者:エポコラム協会 設計比較対象技術 技術の優位性が高く、安定性が確認されている技術。設計業務において、 設計比較の対象となります。 少実績優良技術 技術の優位性が高いが直轄工事等における実績が少ない技術。技術の 安定性が確認されるまでの間、活用に努めます。 活用促進技術 特定の性能又は機能が著しく優れている技術など。指定された技術は 『○ ○年度 活用促進技術』 という名称を使用できます。 NETIS プラス 47 ACTEC 事業紹介 最近NETISに登録された新技術の紹介 ∼先端建設技術センター NETIS新技術情報提供システム登録申請支援事業∼ ここに記載された内容は、NETIS申請情報に基づいております。 スプリング拘束型鉛プラグ入り高減衰積層ゴム支承(SPR-S) スプリング拘束型鉛プラグ NETIS登録番号:CB-110020-A 技術の概要 従来は、高減衰ゴム支承を用いて橋梁の免震化を行っていたが、支承の平面形 状が大きくなる傾向にあった。 本技術は、 その高減衰ゴムにスプリング拘束型鉛プラグを挿入することで減衰性 能が大幅にアップし、支承サイズのコンパクト化によるコスト縮減が期待できる。 高減衰ゴム 新規性 SPR-S支承イメージ図 ・従来は高減衰ゴムのみを使用していたのを、 スプリング拘束型鉛プラグを挿入 することとした。 申請者:株式会社川金コアテック スーパーハイグレード(S HIG)工法 NETIS登録番号:SK-110008-A 技術の概要 本技術は、 コンクリート構造物補修時の高耐久性能のある充填用ポリ マーセメントモルタルで、本技術の活用により既存コンクリート構造物 の断面修復材として一般的な補強材と比べ剥落発生などの心配も 少なく、摩耗性に優れており機能回復する事により延命効果がある。 SHIG現場施工前 SHIG現場施工後 新規性 従来は劣化した水路を取壊し断面打ち換えをしていましたが、 ポリマー セメントモルタルに、高強度ファイバー (コンクリート補強用合成繊維) を添加する事により付着性能が高く、高耐久性能があるため、既設構 造物を壊さずに補修補強し、機能回復することができます。 申請者:株式会社大山建設、株式会社羽根産業社 多段式非火薬破砕剤「NRC(New R ock C r acker )」 NETIS登録番号:CB-110029-A 技術の概要 段発 瞬発 本材料は、火薬を使用せずに岩盤やコンクリート構造物を破砕する薬剤であり、従 来は静的破砕剤で対応していた。 本材料の活用により経済性、施工性の向上、工期短縮が期待できる。 また、段発破 砕が可能なため深礎杭やトンネル掘削にも適用でき、振動の低減が期待できる。 新規性 ・従来は、 セメントの膨張圧による破砕であったものを、 テルミット反応による水蒸 気圧を利用した破砕とした。 カートリッジ・イニシエーター・コントローラー 48 NETIS プラス 申請者:カヤク・ジャパン株式会社、株式会社アクシス、株式会社クキタ Wonhwa corporation CO.LTD. ACTEC 事業紹介 フィールドビューモニター NETIS登録番号:KT-110057-A 技術の概要 本技術は、建設車両の後方270度パノラマ映像モニターを用いた作業半径 内監視システムであり、従来はカラーコーンによる作業範囲の明示と監視員 配置で対応していた。 本技術の活用により、建設車両オペレータが直接に車両後方の状況を確認 できるため安全性が向上する。 新規性 ・建設車両の周辺監視をカラーコーンと監視員を配置から後方270度パノラ マ映像モニターに変えた。 油圧ショベル搭載の周辺モニターシステム概要 申請者:住友重機械工業株式会社、住友建機株式会社 小 径強力バイブレーター NETIS登録番号:HR-110024-A 技術の概要 本技術は、狭隘な過密配筋部のコンクリート締固め時に用いる、高い締固め能力を有した小径のバイ ブレータであり、従来は既存の小径バイブレータを狭い間隔で挿入し対応していた。 本技術の活用により、締固め間隔を広くできるため施工性の向上が期待できる。 新規性 ・一般的に径が小さくなるほど締固め能力は低下するが以下の技術により、他の小径バイ ブレーターより締固め能力を向上させ、鉄筋間隔・かぶりが30㎜であってもバイブレーター の挿入を可能にした。 ・駆動モータを、従来バイブレーターに使われていた電源周波数により回転数が決まるイン ダクションモータ (誘導電動機) から、 ギアードモータ (整流子モータと減速ギアとの組み合 わせ) に変更することによって出力回転数・振動数を上げ、締固め有効範囲を拡大した。 ・振動体とシャフトとの連結部をコイルスプリング形式から、駆動用フレキシブルシャフトを 連結する方式にすることによって小径化を可能にした。 軽量防音シート (白色) 小径強力バイブレーター 申請者:大成建設株式会社 エクセン株式会社 NETIS登録番号:CG-110033-A 技術の概要 本技術はポリオレフィン素材の軽量で白い防音シートで、従来は塩化ビ ニール製の防音シート (グレー色) にて対応していた。 本技術の活用により現場の美観性やイメージアップ (景観との調和) が期 待できる。 また、軽量化により作業労力の低減が期待できる。 新規性 ・従来はグレー色であったものを、 白色にした。 ・従来は製品重量が9.0㎏/枚(サイズ:1.8×3.4m) であったものを、製品 重量を5.8㎏/枚(サイズ:1.8×3.4m) にした。 ・従来は塩化ビニール製であったものを、 ポリオレフィン素材に変更した。 外観写真 申請者:日建リース工業株式会社 NETIS プラス 49 ACTEC 事業紹介 リサイクルボード 『型丸』 NETIS登録番号:KT-110076-A 技術の概要 本技術は、合成樹脂中空板の両面に耐水性板紙を接着し、合成樹脂フィルム で包みこんだコンクリート用型枠であり、従来はコンクリート型枠用合板を使用 していた。 本技術の活用により、繰返し使用が可能なため産業廃棄物の抑制ができ、周 辺環境への影響低減が期待できる。 新規性 ・コンクリート用型枠の堰板を合板から両面に耐水性板紙を接着した合成樹 脂中空板に変えた。 ・コンクリート用型枠の表面をアクリル樹脂塗装から合成樹脂フィルム包装に 変えた。 申請者:株式会社長大 株式会社ダイヤ・プロフェッショナル・ジャパン アロシット水中防食塗装工法 NETIS登録番号:KTK-110008-A 技術の概要 本技術は、水中塗装可能なエポキシ樹脂防食材をエアレス式機械で被覆する防 食工法で、従来技術は水中施工型ライニング材を鋼材に機械や道具などを使用 せず被覆する防食工法で対応していた。 本技術の活用により水中での施工時間が短縮でき経済性、安全性が向上する。 新規性 ・水中施工型ライニング材を鋼材に機械や道具などを使用せずにハンドワーク被 覆防食工法から、 ポリアミドアミン配合の材料でエアレス機械被覆防食工法に変 えた。 申請者:A&Eシステムズジャパン株式会社 アロシット水中防食塗装工法 (下塗り施工) 足場作業用リフト 「猿鳶太助」 NETIS登録番号:QS-110034-A 技術の概要 本技術は、足場設置作業等に使用する資材運搬用リフト である。従来はクレーンや人力により足場設置工事をおこ なっている。 本技術の活用により、人力による作業が軽減され、 コスト縮 減、安全性向上が期待できる。 新規性 ・資材をリモコン式電動チェーンブロックにて昇降する専 用ボックスで運搬することにした。 Ⅰ型 Ⅱ型 50 NETIS プラス 申請者:株式会社アイル、和新工業株式会社 ユアサ商事株式会社 ACTEC 事業紹介 アルミギア式サポート 電動工具で伸縮 NETIS登録番号:KK-110049-A 技術の概要 本技術は小規模な開削工事における仮設土留切梁でギアとネジを組み合せる構造に より伸縮可能。従来技術では水圧シリンダー式切梁であり、水圧ポンプで圧水を送る 必要があった。 本技術の活用により、水圧ポンプが不要になり経済性向上。又、水漏れの心配がなく なった。 新規性 従来技術は水圧シリンダー方式で、寸法を伸ばす際に水圧ポンプで水圧を作用させ、 水の圧力にて土圧を受ける構造。縮める際には手動にて水抜き作業が必要である。 本技術はギアとネジを組み合わせる構造により、 ネジを回転させることで伸縮可能。 イ ンパクトドライバー (電動工具) を使って伸縮や作動検査も可能になった。 申請者:株式会社 ホーシン ラスタッフ1100セラミック金属補修工法 NETIS登録番号:KT-120003-A 技術の概要 本技術は、鋼構造物の腐食による穴塞ぎ・減肉厚補修をセラミッ ク配合エポキシ樹脂材料で被覆防食する技術で、従来は、鉄板 溶接工後錆止め塗装工法で対応していた。 本技術の活用により、長期防食性能があり錆止め塗装が不要に なるため経済性が向上する。 フランジ部施工完了 フランジ部施工前 新規性 ・鋼構造物の腐食による穴塞ぎや減肉厚補修を鉄板溶接後、錆 止め塗装する工法からセラミック配合エポキシ樹脂補修工法に 変えた。 フランジ取り付け穴施工完了 ソーラー式LEDサインライト 申請者:株式会社アクセス NETIS登録番号:TH-120002-A 技術の概要 本技術は、高輝度LEDの使用と表示板の四隅に青色LEDを 使用する事により視認性を向上させた工事現場用LED電光 表示板です。 新規性 従来技術 新技術 ・青色LEDを使用することで夜間の視認性を向上させた。 (プ ルキニエ現象による) ・LEDを使用していたのを、高輝度LEDを使用した。 ・使用頻度の高い文書が登録されているため、 リモコン操作 により入力が容易になりました。 申請者:セフテック株式会社 NETIS プラス 51 ACTEC 事業紹介 コンパクト ストッパー(KCS) NETIS登録番号:KT-120008-A 技術の概要 コンパクトストッパー(KCS)構造図 緩衝ゴム 上沓 本技術は水平2方向及び上向き (上揚力) の地震力に抵抗する緩衝ゴム 付き変位制限装置であり、従来は鋼製ブラケットによる変位制限装置によ り対応していた。 本技術の活用により、上向き地震力に抵抗可能な構造としたことにより、 地震時における品質の向上となる。 新規性 下沓 ・上部工または下部工に取付ける構造を、上下沓の構造に変えた。 ・現場ごとの個別設計品を、汎用性を持った規格製品に変えた。 コンパクトストッパー (KCS) 構造図 折りたたみ式飛散防止ネット 「作柵(サクサク)」 申請者:株式会社川金コアテック NETIS登録番号:CB-120003-A 技術の概要 従来は、型枠用パネルによる防護で対応していたが、 パネルが重く、作業員がパネルを支える 方法であった。 しかし新技術では、折りたたみ式軽量ネットと転倒防止バーの自立式により、運 搬設置が容易で作業員が不要となり、 その結果、施工性と経済性の向上が期待できる。 新規性 ・従来は型枠用パネルを用いていたが、折りたたみ式の軽量なネット (重量16kg) を用いること とした。 ・従来は作業員が型枠用パネルを支えていたが、収納式の転倒防止バーによる自立式とした。 ・従来は型枠用パネルを複数使用して現場を囲っていたが、現場の状況に応じた形状に設置 できる構造とした。 ・従来は900㎜×1800㎜の型枠用パネルを用いていたが、1000㎜×4000㎜の大きさとした。 ・従来は一枚もののパネルを使用していたが、風を透過するシースルー構造とした。 52 NETIS プラス 設置状況 申請者:シーキューブ株式会社 株式会社アイデア・サポート 広告 先端建設技術センター 建設技術審査証明取得技術の紹介 MITS工法CMSシステム 概要 −中圧噴射機械攪拌工法− 54 NETIS プラス ACTEC 事業紹介 NETIS プラス 55 先端建設技術センター 建設技術審査証明取得技術の紹介 ファイバードレーン工法 概要 −環境にやさしい天然繊維排水工法− 56 NETIS プラス ACTEC 事業紹介 NETIS プラス 57 先端建設技術センター 建設技術審査証明取得技術の紹介 アーマー・ヒュームセグメント 概要 −鋼殻と遠心力締固めコンクリートで構成されるセグメント− 58 NETIS プラス ACTEC 事業紹介 NETIS プラス 59 先端建設技術センター 建設技術審査証明取得技術の紹介 CI-CMC工法 大径・高品質の深層混合処理工法 60 NETIS プラス ACTEC 事業紹介 NETIS プラス 61 先端建設技術センター 建設技術審査証明取得技術の紹介 表面波探査法による地盤調査 起振機を用いたビイック方式の表面波探査 62 NETIS プラス ACTEC 事業紹介 NETIS プラス 63 ACTEC 事業紹介 先端建設技術センターにて推薦した技術 エポコラム工法(地盤改良工法)KT-980205-Vが 平成24年度『準推奨技術』 に選出されました。 (当センター建設技術審査証明取得技術) 本技術は、 機械攪拌方式のスラリー撹拌工法に区 分される深層混合処理工法の一種で、 硬質地盤への 貫入・攪拌が可能な特長を有しています。 技術のさら これらの改良技術により、深層混合処理工法の施 工能力の向上が期待できます。 なる進展に伴い、 平成23年3月に当センターにおいて技 ◆推奨・準推奨技術への推薦 術審査証明の内容変更 (No.2206) を行ったものです。 国土交通省本省が事務局をしている 「新技術活用 ◆技術の概要 「エポコラム工法」 は攪拌翼に特徴を有しており、篭 システム検討会議」 では毎年「推奨技術」 「準推奨技 術」 を選定しております。 その際、 当センターでは 『「公 共工事等における新技術活用システム」実施要領』 状の外・中・芯翼と削孔ヘッドの全てが各々相対に (NETISホームページよりダウンロード可) に基づき、第 回転する複合相対攪拌翼(図1) を用いて、効率良く 三者機関に該当する1機関としての選考対象技術の 攪拌・コラム造成を行うことができます。 推薦を行っているところです。 また、 低速回転・高トルクで攪拌を行うため、 従来の 本年度は、前述の経緯から、技術が改善され適用 技術と比べて適用範囲が広く、 軟弱地盤における大口 性に優れた工法として、 当センターから本技術を推奨 径コラム (φ2,500) ,高強度改良施工(qu=2N/mm2) , 技術に推薦しました。 礫・転 石 層 や 硬 質 地 盤 における施 工(φ1,500, φ 1,600) において優位性の高い技術です。 本技術は、 国土交通省で約100件, その他発注機関 において500件以上の多くの施工実績を有しています。 ◆他に見られない特徴 本技術では、掘削ヘッドおよび攪拌翼に図1に示す 改良(「巻き取り・破断促進機構」 と 「破砕促進刃」 の 設置) を加えることにより、従来は別工程であった 「地 中残存物の破砕攪拌」 と 「地盤改良」 とを同一工程で 行うことが可能となりました。 ◆準推奨技術に選出される 平成24年度第1回新技術活用システム検討会議に おいて 「推奨技術」4技術、 「準推奨技術」 15技術が選 定され、 当センターで推薦した 『エポコラム工法(地盤 改良工法) KT-980205-V』 が、 昨年度に引き続き 「準推 奨技術」 を獲得しました。 (NETISホームページ参照) 当センターでは、今後も建設技術の向上に貢献す べく、新技術のスパイラルアップに積極的に関っていく 所存です。 ☆巻き取り・破断促進機構の回転により既製杭中のP C鋼線・鉄筋, ドレーン材等を巻き取り,杭の破断の 促進を可能としている (図1,写真1)。 ☆同機構は掘削時の先行ガイドとして機能し、地中残 存物に遭遇した際のコラム芯のずれを抑止する。 ☆同機構の刃の配置により、巻き取った破断物に間 隙が生じ,破断物を容易に回収できる。 ☆掘削ヘッドや複合相対攪拌翼と連動して回転する 外翼下端部に設置した破砕促進刃(図1,写真2) により、地中残存物の破砕促進を可能としている。 64 NETIS プラス 写真-1 巻き取り状況 ACTEC 事業紹介 芯翼 外翼 中翼 破砕促進刃 巻き取り・破断促進機構 (先行ガイド作用) 掘削ヘッド 芯翼 中翼 外翼 破砕促進刃 破砕促進刃 掘削ヘッド 巻き取り・破断促進機構 (先行ガイド作用) 巻き取り・ 破断促進機構 写真-2 破砕促進刃 図-1 エポコラム-Taf 攪拌翼改良部 広告 学識経験者等による委員会を設置し、国等が定める技術指針等に照らし、公平かつ公正に (建設技術審査証明協議会15機関が実施) 当該新技術について審査を実施しています。 先端建設技術センターにおける建設技術審査証明事業の対象 審査証明の対象とする先端建設技術の範囲は、国土交通省所管の建設事業に係るニューフロンティア開発 技術、メカトロニクス、バイオテクノロジー等の先端的技術で次に掲げるものとなります。 1.調査、設計、施工、管理等の技術 2.機械、設備、器具、材料等の開発・利用技術 ◆お問い合わせ先 (担当:中澤) NETIS プラス 65 ACTEC 事業紹介 クラウドサービスの提供に向けて ネティスプラス ドット ネット を開設しました。 技術情報誌「NETISプラス」がダウンロードできます。 http://www.netiplus.net/ ネティスプラス 1 「ネティスプラス」 で検索 ●技術調査部ホームページ 2 当冊子は全国の国土交通省、自治 体、NETIS登録申請者を中心に約 23000部無料で配布しておりま す。是非御社のPRにお役立て ください。 3 当センターで各種支援を実施した新 技 術をデ ータベ ース化して います。 (近々大幅にリニューアル予定です。当 センターではクラウドサービス構築に よる新技術情報の一層の充実・提 供を進めてまいります。 (動画や 現場実績レポート等)) 66 NETIS プラス 平成24年度 先端建設技術研究開発助成募集のご案内 主 催 財団法人 先端建設技術センター 対 象 先端建設技術を活用し、建設事業の効率的な推進に資する土木技術 分野の調査研究及び開発 者 (1)大学、高等専門学校及びこれらの付属研究機関に属する研究者 及び研究グループ (2)法人格を有する民間企業等 (3)その他の研究者及び研究グループ 対 象 助 成 規 模 原則として、1件につき年間200万円を上限とし、2件程度とします。 申 請 期 間 平成24年8月1日 (水) ∼平成24年9月28日 (金) 問い合わせ先 財団法人 先端建設技術センター 企画部「研究開発助成事務局」 〒112-0012 東京都文京区大塚2-15-6 ニッセイ音羽ビル4階 電話:03-3942-3991 FAX:03-3942-0424 ※詳細は、当財団のホームページ (URL:http://www.actec.or.jp/) でご覧下さい。 編 集 後 記 あや 「言葉は心の使い」 「言葉は立ち居を表す」 「言葉は身の文」 ない会話から生まれたアイデアを実現し、後にそれが会社の いずれも言葉遣いなどから、 その人の人間性がわかってし 強みとなっていったことなど、言葉の持つ力に関するエピソー まうという意味のことわざです。話す言葉、書く言葉、見る言葉 ドがそこにはたくさんつまっていました。 などを私たちはあらゆる五感で感じることができますが、同じよ 言葉の奥深さや難しさ、選び方がいかに重要であるかを考 うに自分が使う言葉によって、相手に与える印象も変わってし えるいい機会だったと感じ ております。 まうことがあります。 本号の取材にてコマツの坂根会長とお話しする機会を得 最後になりましたが、 お ましたが、内容はもちろん言葉の選び方や声のトーンや速度 忙しい中本号の取材にご など、 その話し方にも私はすっかり惹きこまれてしまいました。 取材に先立ち、坂根会長の著書『言葉力が人を動かす』 を 協 力いただいた関 係 の 方々に厚く御礼 読ませていただきましたが、短くて覚えやすく、 わかりやすい言 申し上げます。 葉を何度も言い続けることで社内が動いていったこと、何気 編集・発行 財団法人 先端建設技術センター 編集長 編集メンバー 印 刷 石丸 慶三 吉田 貴 吉井 久美子 松尾 修 松本印刷株式会社 中原 守 新田 やすし 富田 剛司 新井 佐由美 小原 勝巳 NETIS プラス 67 広告 00 NETIS プラス N E T I S 用 語 の 説 明 技 術 開 発 者 技術を開発した民間事業者等又は技術行使権原を有する者(当該技術についてそれを行使すること ができる正当な権原を有する事業者等をいう。) をいう。なお、海外の民間事業者が開発した技術に あっては、 日本国内に営業所が所在する技術行使権原を有する者とする。 フィールド提供型 フィールド提供型は、直轄工事等における現場ニーズ・行政ニーズ等により、具体のフィールドを想 定して求める技術要件を明確にしたうえで、広く技術開発者から技術提案の募集を行い、NETIS申 請者から応募されたNETIS登録技術について審査・選考し、工事等の発注に当たって発注者が選考 された新技術を指定することにより活用を行う型をいう。 施工者希望型 施工者希望型(総合評価方式における技術提案の場合)は、総合評価方式における技術提案に基づ き施工者がNETIS登録技術の活用を行う型をいう。 施工者希望型 施工者希望型(請負契約締結後提案の場合) は、請負契約締結後における技術提案申請に基づき施 工者がNETIS登録技術の活用を行う型をいう。 発注者指定型 発注者指定型は、直轄工事等における現場ニーズ・行政ニーズ等により必要となるNETIS登録技術を 対象に、直轄工事等における新技術の適用範囲と活用効果等の確認又は有用な新技術の活用の促進 を目的として、工事等の発注に当たって発注者が新技術を指定することにより活用を行う型をいう。 活用効果調査 活用効果調査は、工程、品質・出来形、安全性、施工性、耐久性、環境等の技術的事項及び経済性等 の事項について、当該技術の適用範囲において従来技術との比較を行い、主として技術の優位性を 確認するために行う調査である。 総合評価方式におけ る技術提案の場合 請負契約締結後提 案の場合 活用効果調査は、直轄工事等において当該新技術の活用が行われる毎に行うものとし、発注事務所 に加え、施工者(当該工事等の請負者等をいう。以下同じ。) ・NETIS申請者も実施するものとする。 活用効果調査の実施主体は、 「発注者指定型」、 「施工者希望型」の場合は発注事務所及び施工者、 「試行申請型」 「フィールド提供型」の場合は発注事務所及びNETIS申請者又は施工者それぞれが実 施するものとする。 NETIS掲載期間 NETISへの掲載期間は以下のとおりとする。 (1)NETIS(申請情報) : NETIS(申請情報)の掲載期限は、当分の間、当初にNETISに登録した日の翌年度の4月1日から起 算して5年を経過した日までとする。 なお、NETIS(評価情報) に掲載されている技術については、上 記にかかわらずNETIS(評価情報)への掲載期間中、NETIS(申請情報) における掲載も継続され る。同一技術について再申請登録は認めないものとする。 (2)NETIS(評価情報) : NETIS(評 価 情 報)の 掲 載 期 限 は、 NETIS(評価情報) に掲載された日の翌 年度の4月1日から起算して5年を経過 した日までとする。 ただし、掲載期間中に 当該技術について活用効果評価が実施 され、NETIS(評価情報) に反映された場 合のNETIS(評価情報)の掲載期限は、 NETIS(評価情報) に反映した日の翌年 度の4月1日から起算して5年を経過した 日までに変更されるものとする。なお、掲 載期限が変更された場合においても、当 該 技 術 に 対 す る 掲 載 期 限 は、当 初 に NETISに登録した日の翌年度の4月1日 から起算して10年を経過した日までを 限度とし、上記ただし書きにかかわらず、 その日をもって掲載を終了する。 HPで過去の用語集を検索! ネティスプラス ドット ネット http://www.netiplus.net/にて 過去に掲載されたNETIS用語集が閲覧できます。 NETIS プラス 69 t e n . s 03-3942-3991 050-3085-6113 技術調査部 03-3942-3992 050-3085-6114 技術評価室 03-3942-3990 050-3085-6112 PM推 進 室 03-3942-3991 050-3085-6113 研究第一部 03-3942-3993 050-3085-6115 研究第二部 03-3942-3994 050-3085-6116 関東センター 〒112-0012 東京都文京区大塚2-15-6 ニッセイ音羽ビル4F TEL.03-3942-3990 / FAX.03-3942-0424 TEL.050-3085-6112 近畿センター 〒540-0012 大阪市中央区谷町2-7-4 谷町スリースリーズビル7F TEL.06-6966-0222 / FAX.06-6966-0223 中部センター 〒460-0002 名古屋市中区丸の内3-5-10 住友商事丸の内ビル3F TEL.052-955-1755 / FAX.052-955-1758 h t t p:/ /www.netisplus.ne t/ 技術情報誌「NETISプラス」 は技術調査部にて作成しております。 「NETISプラス」 に関するお問合せは以下へお願いします。 p l u 部 s 画 i 企 t 03-3942-3990 050-3085-6112 e 部 n 務 . 総 w 〒112-0012 東京都文京区大塚2-15-6 ニッセイ音羽ビル4F w 財団法人 先端建設技術センター w 技術調査部メールアドレス : [email protected]
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