「でんき」と「あかり」の 因幡電機製作所

◇ 会員企業訪問 ◇
「でんき」と「あかり」の
因幡電機製作所
㈱因幡電機製作所 代表取締役社長 川口久美雄 氏
大阪府工業協会の企業訪問。
今月は株式会社因幡電機製作所を訪問し、川口
久美雄代表取締役社長にお話しをお伺いしました。
― はじめに御社の規模・沿革を教えてください
創立は昭和37年5月10日。従業員数は217名(昨
年末時点)。資本金は1億3000万円。会社の目的
は電気機器の製造販売ですが、それに付帯した事
業として工事関係や設置関係も定款に記載してい
ます。
社名の由来は、因幡弥太郎氏が昭和13年、個人
企業として電機機器の製造を始めたことにありま
す。この点では当社と因幡電機産業は同じルーツ
です。昭和32年から、照明器具と配電盤の製造部
門がそれぞれ独立し、昭和37年にこの2つが統合
し現在の形態となりました。
昨年創業満50周年を迎え、今年で51年目となり
ます。現在は柏原市、羽曳野市、奈良、群馬の
高崎市に工場を持ち、営業拠点を本社並びに羽曳
野工場、東京の神田に構え、社員一同頑張ってい
ます。
― 業界の今後
因幡電機製作所は「でんき」を供給する配電事
商工振興・2013.4
業と「あかり」を提供する照明事業の2つを基軸
としています。配電事業部は公共施設関係や大規
模な建物の電気設備等を取り扱い、照明事業部は
主に屋外の照明を中心にしています。もともと因
幡照明、因幡パネルという会社が昭和37年に合併
してできたときからのいきさつです。会社の歴史
のなかで配電事業、照明事業それぞれが好業績、
低業績の時期がありましたが、売上については現
在ほぼ同じ規模となっています。
配電事業に関しましては地場産業に近い性質が
あります。もともと関西における公共事業向けの
電気設備をもっぱら生産していました。現在では
一般の大型のビルや駅ビル等の商業施設に供する
電気設備についても数多く取り組んでいます。
非常に多くの会社が乱立して競争が激しくなって
おり、とくに需要の少ないときは過当競争に陥ら
ない経営の工夫が必要です。近年は、原発の停止、
自然エネルギーへの移行、再生エネルギーの行政
施策(再生可能エネルギーの固定価格買取制度)
などの事情で、配電制御機器の需要も活況を呈し
て多くの受注をいただいている状態です。
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主力生産拠点 羽曳野工場
照明事業に関しては照明の光源が電球や蛍光ラ
ンプから LED に変わり、産業構造が劇的に変化
しました。当社は LED 事業をかなり先行してい
たおかげで、特に屋外照明の LED 化については
大手メーカーさんと互角に競争しています。5年
位前に首都高が高速道路としては始めて LED の
照明器具を取り入れました。それ以来、昨年大阪
府の「まるごと LED 化事業」に照明器具がノミ
ネートされ、約15,000台の受注をいただきまし
た。大阪府の管理下の道路照明については相当な
割合で、当社の照明器具が使われています。特に
大阪府はほとんどの照明を LED 化する方針のも
と、リースを中心に今までのランニングコストよ
り安くかつ設備投資なしの切り替えを推奨してお
り、当社が草分け的な存在となっています。
LED は寿命が4万時間~6万時間、15年~20
年にもなります。今となっては性能の向上や価格
の低下が進みどんどん採用しやすくなってきまし
た。当社は初期よりある程度のシェアを獲得して
いるためなんとかコストダウン競争に追いついて
います。照明器具の価格低下により初期設備費の
負担がそれほど大きくならなくなりましたので、
これから先道路照明は全て LED に変わるだろう
というのがわれわれの見方です。保守以外は既存
の光源はなくなるではと思っています。
屋内用の照明器具についても多くの種類が
LED 製品に変わりつつあります。一般の屋内用
LED 製品は価格競争が激しく、規模と体力のあ
る会社しか生き残れない状況です。当社は屋内用
については体育館や工場に用いるいわゆる高天井
照明、高光度の照明が要求される投光器などに特
化し、活路を見出そうとしています。
― 省エネや環境問題が大きな要素に
配電制御機器についてはそれ自体が直接省エネ
になるわけではありませんが、省エネ関係のシス
テムを構成するための設備としての需要が高まっ
ています。照明器具は LED の採用により劇的な
省エネが可能となり消費電力は最大で従来の3分
の1となりました。
当社は電機メーカーでありますが、道路照明用
のポール等の鉄鋼構造物を自社で生産していま
す。1970年頃より高速道路網の拡充に対応し、道
路照明に関してはもっぱら鉄鋼構造物を中心に生
産するという時代が長くありました。今回 LED
という新しい部品を得て、われわれ従来の光源を
生産していたメーカーでも製品が完成できるよう
になりました。既存のメーカーとは競合すること
になりますが、照明用の鉄鋼構造物を内製してい
るコスト的アドバンテージもあり積極的に製品展
開することとなりました。
こういうことで当社の屋外用の LED 照明器具
は遡及力や知名度があがってきています。しかし
ながら、LED 製品への移行は今まで照明業界に
参入されていなかった会社の新規参入も多くあり
製品の技術的な差別化が必要です。ただ、この業
界はある程度基礎的な技術力も必要です。このた
め当社ではたゆまざる技術力の向上と改善を進め
ております。
― 新規参入される方との差別化
新規で LED 照明に参入される方には半導体産
業の方が多くあります。回路に強く LED を点灯
することはできますが、問題は多い。例えば、
LED は光そのものに熱はありませんが、本体は
非常に発熱します。その熱をどこに逃がすのか、
発熱すると寿命も短く、発光効率も悪くなり、悪
循環に陥ります。また、照明特有の配光。どのよ
うに光がでるかという問題では、要求される道路
の平均輝度を満足しなければなりません。
これらに対応するには技術的な蓄積と実験設備
を持つ必要があります。当社は業界の基準に準拠
した配光測定設備を羽曳野工場に持っています。
これは国際標準にも近いもので、当社で測定した
ものはそれを十分検証できるレベルに達していま
す。中小企業としては大きな設備投資ではありま
すが、製品の性能の検証が自社でできることは大
きな強みとなっています。例えばベンチャーさん
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風力による LED 照明 壁面風車
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が測定するとなると公共機関に持ち込まないとい
けません。研究開発に関しても絶えず自社設備を
利用して進めていける強みもあります。
また、当社においてはコンピューターシミュ
レーションによりユーザに対し、照明器具の配置
設計の支援をさせていただいております。そうい
うところも差別化のひとつと考えています。
― オーダーメイド
道路照明は特殊ではありますが照明器具として
基本的なスペックや要求される事項も決まってい
ます。日本照明委員会や国土交通省の規定などで
決められているものもあります。特に照明器具に
関しては型式も決めて、設計見積もり単価も決め
ていますので一般的なオーダーメイドとは少し違
うかもしれません。また、ひとつの路線で何十台、
場合によっては何百台と使用されるので、その路
線向けは多くの数量を生産しているということに
なります。色やポールの高さ、メンテナンス関係
の細かい仕様は少しずつ違ってきますが、照明器
具は基本的に性能がギャランティーされないと進
められないので、いくつかの型式をもって、その
なかから最高のものを提供しているのが現状です。
配電盤の方はご要望をいただいてそれに対応す
るかたちです。標準仕様があって標準品として対
応するメーカーもありますが、当社の場合は、プ
ロジェクトベースでそこに向けた製品を1台1台
作ります。そこに長年のノウハウが蓄積されてい
ます。ただ、当社が作る製品と言いましても、配
電盤のなかに使う部品は基本的には標準化されて
おり、ブレーカーやスイッチ、変圧器などを組み
合わせてできた製品が特注品として成り立ってい
羽曳野工場 配電盤製造ライン
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ます。当社は仕様に合わせた設計と配線および組
み立てをしています。箱の大きさや排熱の問題を
解決するためにファンを入れるとか、屋外に置く
場合、防水構造をどうするかなど客先の要望に
沿った形で生産しています。
― ものづくり優良賞
当社の場合、特に配電盤・照明器具どちらも基
本デバイス・部品を自社で生産するわけではあり
ません。あくまでも組み合わせ技術と組み合わせ
でできるアウトプットで勝負しています。例えば
照明器具だとどのような明かりの出方をするの
か、配電盤だとどのような部材で作ると電力の供
給ができるのか、といったノウハウをベースに設
計しています。設計技能と生産に関する段取りが
当社の強みです。人を集めて、協力会社を含めて、
製品をお客様に納入するまでのプロセス、QCD
の対応がどこまでできるかというチャレンジのな
かで長年築いてきたノウハウが評価されたと感じ
ています。
― 因幡電機の信条
①「製品サービスを通じて社会に貢献する」
②「技術、製品、経営、市場の創造に努める」
③「全社員がこぞって経営に参加する」
④「良き社会人の集団としてその繁栄を誓う」
これが因幡電機の信条です。
「製品サービスを通じて社会に貢献する」これ
は製品と同時にその製品に関連するソフト、いわ
ゆるサービスも含めて貢献するということです。
製品がお客様にお届けしたのち、それがどのよう
に機能するかまで含めて考えた設計をしなければ
なりません。また、サービス(品質、コスト、納
期)に関する絶え間ない努力が必要です。さらに
サービスが実現するためには「技術、製品、経営、
市場の創造に努める」ことが重要です。技術的な
問題、製品にインプットするお客様の要求事項に
関する問題、全体のマネジメント、当社の製品が
どのように市場で遡及していくかを全社員がつね
に考えていかなければなりません。これが「全社
員がこぞって経営に参加する」ということにつな
がってきます。
― ISO について、これを通じたマネジメント
ISO9001に つ い て は、 照 明 事 業 部 は2000年 の
9月、配電事業部は2000年の1月に取得していま
す。これに先んじまして1999年に奈良工場単独で
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ISO9002を取得しています。当初は取得・維持す
るのに一生懸命で、マネジメントシステムが認証
機関に認められることが主な目的となっていまし
た。会社の決め事を確実に遵守しながら、PDCA
スパイラルのグレードを徐々にあげていく方向に
しないといけないという考えのもと、もう一度
ISO9001を当社の全組織、全部門の業務に関して
の骨組みの中心にする方向に変えました。現在は
ISO のマネジメントシステムをうまく遡及させ
て、経営に取り組んでいます。
ただ、残念ながら各事業
部の事情で、現在はそれぞ
れが別のシステムとして成
り立っています。将来的に
は全社的に統合していくつ
もりです。ものづくりや品
質、納期や価格からコンプ
ライアンスにいたるまです
べて遵守できるような体制
を整えていきたい。ベース
平成16年
として ISO のマネジメント
おおさか環境賞受賞
システムを使っていきたい。
今は特に ISO9001を遵守することを重視していま
す。まずは品質 ISO を確立して、必要に応じて環
境 ISO に取り組んでいく予定です。もちろん環境
に対する高い意識は持ち合わせています。環境に
関しては2009年に環境大臣賞、平成16年には大阪
府の大阪環境賞を受賞しています。政府の推進す
る「チャレンジ25キャンペーン」にも企業として
参加しています。
― 営業の体制
当社の製品はお客様に「こんな商品です。買い
ませんか?」というだけで売れる製品ではありま
せん。逆にいうと営業は提案をしなければ売れま
せん。営業は「こういう所へはこういうものがい
いだろう」とか「こういうものを照らすにはどう
いうものがいいだろう」と思いめぐらせることか
ら始まります。
配電機器は建物や設備に応じて、設計の提案を
含めた営業活動をする必要があります。営業とは
言ってもセールスエンジニア的な役割です。当
然、提案しなければ受注できません。
照明もしかり、各道路・路線に対する設計の提
案です。明るさなどを絶えず検証し、お客様には
具体的なデータを示していく営業をしています。
「対応力」は特に不具合がでたときに、すぐに
サービス対応できること。当社は官公庁がお客様
となることが多いので保証期間だけではなく、製
品の寿命まで対応しなければなりません。当然、
価格対応や納期対応が必要となるので市場競争の
なかで、
「対応力」がないと自然と淘汰されてし
まいます。他社よりも高いレベルの QCD でもっ
て対応するよう心掛けています。最後はお客様が
これで良かったと満足いただけるまでフォローし
ます。
今、問題になっているのが再生可能エネルギー
の定額買取制度。これは時限的な部分もありま
す。太陽光発電における1 kwh あたり42円での
買い取りはここ1~2ヵ月で終了するということ
で駆け込み需要が増えています。工場をフル稼働
して生産を急いでいますが部品の供給が追いつか
ず、納期の対応に苦慮しています。品質的な問題、
納期的な問題、科学的な問題に対してどこまでわ
れわれが対応していけるのかが課題です。例え
ば、部品が間に合わないというのは購買力や調達
力の問題で、これらの実力をつけることによって
お客様へのサービスの状況が決まってくると思い
ます。
照明事業は代理店販売をしていないので情報が
入りづらく、初期の情報を掴むのは非常に難しい
と感じています。ひたすら足で稼いで、広範囲の
営業をしているのが現実です。特に地方をまわっ
ていてつらいのが、会社の知名度や製品について
の遡及力不足です。当社は大阪と東京にしか営業
拠点を持っていません。歯がゆさがありますが、
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配電事業部の主力製品 キュービクル式配電盤
商工振興・2013.4
道路照明や大型のプロジェクトになるとメーカー
が動かないといけません。
配電事業に関しては必ず代理店が入ります。当
社の営業は、スペックを決定や現場の調整がメイ
ンになります。こういう状況では価格対応力や納
期対応力が弱いので、もっとお客様に近いところ
で活動できるよう、今後研究していく必要があり
ます。
― 社員教育
正直、一番苦しんでいるところです。多くは配
属されたその部門のラインのなかで教育をしてい
ます。新入社員には因幡電機の考え方や方針を浸
透させ、礼節や意識改革をする意味からお寺で研
修をしています。それ以外に資格制度やスキルを
査定する制度を構築するにあたって、社員教育の
必要性を痛感しています。
当社は課長制・部長制を取っていません。役員
以下の管理職は資格のうえでの管理職と事業部
長、マネージャー。それぞれのプロフィットセン
ター、利益最小単位の集団ですが、そのマネー
ジャーがいて、さらに配電事業部と照明事業部を
それぞれ総括する事業部長がいます。かなりフ
ラットなシステムです。利益管理の大部分がマ
ネージャーにゆだねられています。全部で13~14
人のマネージャーがいて、それぞれ月次決算をし
ています。月末から3営業日以内に月次決算が全
社としてまとまる仕組みになっています。管理会
計がベースですが、それぞれのプロフィットセン
タ ー で 完 結 す る 仕 組 み に な っ て い ま す。 プ ロ
フィットセンターで利益がでると当然会社全体で
利益がでます。マネージャーの役割・権限は非常
に大きいものです。当社は賞与も通常の賞与に加
えて業績賞与のパーセンテージが大きくて、部門
ででた利益の一定の割合はその部門のなかで還元
する、いわゆる業績配分のインセンティブをつけ
ています。給与でカバーできない部分はインセン
ティブをもって意識づけをしています。今の体系
が必ずしもマッチしているとは限りませんが、創
業以来、このスタイルは変わっていません。
― 社長の夢
先代の私の父も同じ考えでしたが、あまり大き
な会社にする必要はないと考えています。規模拡
大よりもコンパクトでありながら、得意製品につ
いてはその業界、カテゴリーのなかでナンバーワ
ンになれるよう、品質・価格・お客様への対応力
を開発していきたい。社員が誇りをもって仕事が
できるような環境にしたいと思っています。
そして、絶えず新しい分野、今だと自然エネル
ギーや LED の情報をできるだけ早くキャッチし
て、製品に活かしたい。そのためには絶えずアン
テナを張り巡らせる必要があります。LED の次
の光源は何か、それが有機 EL なのか、また新し
い光源なのか。配電については自然エネルギーや
スマートグリッド、スマートメーター。これから
も早くから技術を開発してやっていきたいと思い
ます。照明部門でも大手メーカーさんの OEM を
させていただいて、型番によってはロットで生
産・納入しているものもあります。そういう仕事
をしていると量産的品質や、共通部品の採用など
製品設計に対する考え方が特注品とは異なり、
違った意味でコストダウンと品質向上につながり
ます。配電事業部の人たちには難しいですが、個
別の営業活動をしなくても売れるような製品も
作っていかないといけないと思っています。
株式会社 因幡電機製作所
所 在 地:大阪市西区立売堀3-1-1
創 業:昭和37年
資 本 金:1億3,000万円
事業内容:配電盤、照明器具、照明ポール、
電子機器
LED 道路照明 阪神高速池田線
商工振興・2013.4
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