「 顧客攻略力 」 を強化し 受注を獲得す る 方法

顧 客 に 関 わ る 情 報 を 収 集・分 析・活 用 し 、戦 略 的 に 攻 め る
「顧客攻略力」を強化し
受注を獲得する方法
桜 井 正 樹 氏は法 人 営 業のプロフェッショナルである。提 案 型 商 材 を 扱 う クライアントの営 業 支 援に
年あまり従事し、高い成果を上げてきた。そのクライアントはIT系企業を中心に、設備機器メーカー、
販 促・マーケティング会 社、食 品メーカーなど、1 0 0 社を 超 える。果 たして、「売 上 を 伸 ばす企 業」と
「売 上を伸ばせない企 業」の違いはどこにあるのか。今 回は桜 井 氏に、戦 略 的 営 業 で受 注 率 を 上 げる方 法 を 聞いた。
難 しい市 場では「商 品 が強 くなくても
力は重要ですよ。ただ、今日の差別化が
えるから勝てるのです。もちろん、商 品
このような会 社の場 合、実 質 的な営
業スタッフの活 動 は「状 況 確 認」と「お
いない証拠ですから。
や決裁者が何を考えているか把握して
己を知りて相手を知れば
百戦危うからず
顧 客に売れること」、
つまり戦 略 的に顧
願い」だけ。ちょっと提案して、先方の返
桜井さんは様々な会社の営業を指
客を分 析し、受 注を獲 得できる方 法を
事を待って、何の策もなく再 訪する。結
―
導してきました。競 争が激しく 苦 戦し
考える営業が必要なのです。
な 営 業 を すれば、売 上 を 伸 ばせるので
果 、適 切 な 対 応 ができ ず 、あ えな く 失
ている会社も多いようですが、どのよう
で、戦略的な営業を行っている会社はあ
させられるか」、
「どうした ら予 算を確
らい。本来は「どうしたら決裁者を理解
か、他のサー ビスを 無 料で追 加 するぐ
注。
できる対応といえば、価格を下げる
りますか?
保させられるか」という方法を考え、ア
様々な 企 業の営 業 を 見 てき た 中
属人的、場当たり的な営業から脱却
し、戦略的に営業を行うことです。
ほとんどの会 社の営 業は属 人 的、場
当 たり 的で、戦 略 的 な 営 業 ができてい
プローチすべきです。
―
今日では商 品の差 別 化が難しく、顧
客の要 望 や 課 題 も 様 々です。
このよ う
ません。
できているか否かを把握するの
しょうか?
な中では商品力だけで売上をあげるこ
な営業から戦略的な営業へと改善でき
日の商談どうだった?」と聞けば、すぐ
は容 易なことです。営 業スタッフに「今
で判断していく」ということです。
まず理解してもらいたいのは「顧客は
様々な人たちが様々な状況や考えの中
顧客攻略力を強化する方法①
力が必要です。
とが困 難なため、営 業で売 上を上 げる
してもらえないんです」とか、「予算がな
ますか?
いと言われました」なんて営業スタッフ
ど う す れば、属 人 的 、場 当たり的
握 するための情 報」に過 ぎず、
「顧 客 を
攻略するための情報」
ではありません。
は難しくありませんか?
しかし、すべての状況を把握するの
効 果 と 予 算 を 考 える だ けでは あ り ま
―
せん。実 際に使 う人 事 部 門や関 係 する
する部 門( 営 業、製 造、商 品 企 画、仕 入
そのた めには、ま ず 顧 客 を 把 握 する
必要があります。人事部門、そして関係
「顧客攻略」
です。
考え、営業の立場で促進していくことが
入 を 実 現 していき ま す 。このすべてを
議 書を工 夫しながら予 算を確 保し、購
の調整や交渉をしています。そして、稟
し、常に活 用できる状 態にしてお く必
る。そ ういった 情 報 を 社 内で一元 管 理
れないし、同 業 他 社の情 報 も 利 用でき
2つめは、自 社に蓄 積 されている 情
報 。社 内には多 くの顧 客 情 報 があるは
り、間違っている場合もあります。
みにしないこと。あくまで断片的だった
ここで
1つめは、顧客から聞いた情報。
注意すべきなのは、担当者の情報を鵜呑
攻略方法を考えることで受注率が向上
せん。
これを総合的に把握したうえで、
算や計画などを把握しなければなりま
の戦略や方針、会社の体質、全体的な予
をして、どのように考えているか。会 社
うな人た ちが、どのような状 況で仕 事
報などから、顧 客の状 況を想 像して得
のホームペー ジや プレスリリースの情
“想定”
。
これ
一番重要なのは3つめの
は業界構造、市場のトレンド、顧客企業
表層的な情報に過ぎません。
命集めても顧客のほんの一部分であり、
要があります。た だ、
この2つは一生 懸
られる情 報です。たとえば、ホームペー
ジに掲載された企業の沿革や組織図と
業 界 知 識などを組み合わせれば、部 門
大 手・中 堅 企 業でも 、そういった戦
略的な営業は行っていないのですか?
の有無を中心にチェックしている。
これは
境、予 算、決 裁 者、競 合 他 社、検 討 計 画
いのです。
把 握できず、適 切な戦 略が立てられな
でも、この想 定 を 使 えている 企 業 は
数 少 ない。そのた め 、ほ と ん ど 顧 客 を
間の関係性や業務の流れなどがわかる
のです。
「顧 客が導 入 する可 能 性があるかを把
/ 株 式 会 社 セント リ ー ディング
いません。たとえば、現 在のシステム環
「ウチでもやってるよ」とおっしゃる方
も多いのですが、実際はほとんどできて
―
します。
ずです。過 去に誰かが訪 問したかもし
れなど、関係する全部門)
で日々どのよ
の状 況や要 望を踏 まえて検 討し、社 内
人 た ちに理 解 されるよ う、その人 た ち
顧客のすべてを把握するためには、3
種類の情報が必要です。
は何をするでしょうか。機能、利便性や
ムを導 入 するときに、担 当 者や決 裁 者
自 分の会 社のことを考えてみてくだ
さい。たとえば、新しい人 事 管理システ
―
に症状がわかりますよ。「なかなか決裁
1969年、埼玉県生まれ。1998年に日総ブレイン株
式会社に入社し、営業職派遣事業・アウトソーシング
事業の立ち上げを経験。2000年に株式会社コンフィ
デンスに入社し、営業専門のコンサルティング・アウト
ソーシングを行う。その後、株式会社ベルシステム24
にて、法人向け提案型セールス専門の営業コンサル
ティング・アウトソーシング事業の立上げ、
および事業
責任者を務める。2009年に株式会社セントリーディ
ングを設立し、代表取締役社長に就任。
3つの情報から
顧客を把握する
スポーツでも、弱いチームが強いチー
ムに勝つことがよくあります。
このほと
戦略的営業のプロフェッショナル
受注の獲得!
ん どは「戦 略 勝 ち」です。強いチームの
攻略方法の修正
が話した ら重 症です。商 品の利 用 部 門
業界情報や顧客のホームページの情報から実態を考える想定が重要!
特 徴や弱 点を分 析し、勝てる方 法を考
売上を上げる
戦略が具体的であれば、
問題も具体的にわかり、
具体的に修正できる
POINT
Do→Check→Act
提案内容
担当者や決裁ルートだけでなく、
顧客企業全体を見ながら考える
ヒアリング方法
戦略を
考える
新たな情報・想定のズレ
顧客攻略方法を実践
実践する
3
●
利害関係者全員を理解させるルートと方法
予算を確保させる方法
● 時期・計画を調整させる方法
● 商品導入による変化を調整させる方法
調整方法
Plan
考える内容
課題と効果を理解させる方法
購入へと調整させる方法
●
アプローチ先
POINT
攻略プロセス
の組み立て
● ターゲットの課題と提供する効果
組み立てる方法
2
顧客を知る
1
POINT
Knowledge
1
顧客企業の方針・戦略や課題、
計画、
経営状態、
体制や連携方法
● 商品購入に関する利害関係者
● 利害関係者それぞれの予算、
方針や戦略、
計画や課題、
業務や体制
桜井 正樹
戦略的営業
知る方法
知る内容
さくらい まさき
のプロフェッショナル
1.顧客から入手した情報
2.社内に蓄積された情報
3.想定
●
代表取締役社長
10
3
セントリーディング
売上を上げる
1
ステップ
顧客を攻略するための
顧客企業を分析し
クロージング力を高めよ!
顧客攻略力を強化する方法②
すべき点はありますか?
件を
件に増やしても、受 注は1 件 増
えるかどうかです。
一方、受 注にならな
せん。なぜなら、顧客は本当に購入した
ければ予 算 を 調 整 するからです。その
かった
件は本 当に受 注できなかった
方法は、関係する部門の状況や課題、予
て、案 件が進んだ 段 階で上 司を紹 介し
内容やアプローチ先、方法を考えること
算、会社の重要課題などを想定し、提案
えるのは、せいぜい4 ~ 5 件 程 度です。
見てきた 中で本 当にしょうがないと言
のでしょうか?私が多 くの営 業 現 場を
一般 的に、営 業は「アプローチできる
人 」を 中 心 に 考 えてし まいま す 。そ し
てもらえるよう、担当者にお願いする。
で策定できます。
「 ど う した ら 受 注 が 獲 得できるか」と
「攻略方法=勝てる戦略」を
考える
しかし、紹介がもらえず、商談が進まな
これは、競 合 他 社と価 格 差がある場
合 も 同 じですね。たとえ機 能の差 がな
じです。ただ、「課題と効果」
の見方は部
れは一般 的に行っている提 案 内 容と 同
顧客企業の戦略・方針、組織間の連携な
アプローチすべき人が考えていること、
ロー チすべき か」です 。そのた めには、
まず最初に考えるべきなのは「誰にア
プローチできるか」
ではなく、「誰にアプ
を考 え、価 格が高い方を選 ぶことも多
社に対する理解度や将来的な課題など
いい」と考 えさせるべきです。顧 客は自
くても、「価格は高いけどおたくの方が
になります。
きたと 思いま す。それだ けで売 上は倍
ら、失 注した
分析し適切な攻略方法で営業していた
なるほど。それでは、顧客攻略法の
作り方を教えてください。
い・
・
・という話をよく耳にします。
門やボジションによって異なります。
で
いのです。
いった戦略的な営業にこだわり、顧客を
2つの方法から組み立てます。1つめ
は「課 題と効 果を理 解させる方 法」。
こ
すから、情 報システム部 門に出 す 提 案
どの情報から、どのような方法で、どの
件 中 2 ~ 3 件は受 注で
書と、人 事 部 門に出 す 提 案 書やパンフ
営業は「量と質のバランス」が重要で
す。
「営 業の量」を増やすには限 界があ
りますが、「営 業の質」を改 善 する余 地
経営状態や全体計画、各部門の現状や
で、担当者は2割。ターゲットは中小企
の商談です。
マネージャークラスが4割
実際、当社が支援している企業では、
新 規 営 業の4 割 が 部 長 クラス 以 上 と
願いします。
で、お気軽にご相談ください。
ミナーや無料相談も開催していますの
攻 略 プランを策 定 する方 法を確 立し、
考えなければなりません。
よ うな 切 り口でアプローチすべきかを
組織における関係性などから、「どのよ
売 上 を 伸 ば す た めには ど う すべき
か、改めて考えていただきたい。商談数
はまだまだあります。当社では「営業の
うに理解させ調整すれば、顧客が購入へ
業ではなく、大 手・中 堅 企 業ですよ。
こ
や案件数を増やす施策に取り組んでい
スタッフの行 動 量を増やすのは無 理が
います。すでに一生 懸 命やっている営 業
営業部門へ確認
営業部門
スタッフ採用部門
顧 客 社内の
打ち合わせ
ー
「関西面接での履歴書管理
の改善が必要」
との
問題意識を共有
営業部門から
Cent社支援先に相談
費用などの質問「予算はないんだけど、いくらかかるの?」
→Cent社支援先から打診「基幹システム見直しと一緒に検討できないか?」
情報システム部門を紹介。
営業部門主導で打ち合わせ設定
企 業の戦 略 営 業を支 援しています。セ
把握して分析する方法や戦略的な顧客
質」を追求し、実際の営業現場で顧客を
と判断するか」
を考える方法です。
めの戦略を考えているからです。その結
れが可 能 な 理 由は、キーマンに会 うた
る会社は多いのですが、営業の中身の改
顧客攻略によくある間違い②
ある。どんなにがん ばっても、せいぜい
03-5909-7740
最後に、経営者へのアドバイスをお
まず、決 裁ルートだけでなく関 係 す
る人をすべて洗い出します。次に、その
果、商 談の4 割 以 上が案 件 化していま
整のさせ方を考える。そして、誰にアプ
予算は確保させるもの
出張時のスタッフ情報管理(特に関西での履歴書)
に対する
リスク訴求し、営業部門と相談するよう促す
無 料 相 談 実 施 中!
―
関 係 者 そ れぞ れの現 状 や 戦 略 、計 画 、
善は営業社員個人にほとんど依存して
ローチすべきか、どうしたらキーマンに
1・2 倍が限 界でしょう。そうやって営
業スタッフを疲弊させてしまうよりも、
「営業の質」を上げる方が賢明です。
商 談
アプローチできるかを考え、具体的な計
顧客に「予算が少ない」と言われた場
合 、ほとん どの営 業は少 ない予 算に合
営業部門に「スタッフ管理の効率化もできる」
と提案。初期段階で情報管理リスクを訴えると、
スタッフ採用部門を紹介してもらえなかった
営業部門主導でスタッフ採用部門と連携させ、
情報管理部門を巻き込ませることで、全社予算
での検討に導いていった
スタッフ部門が実態(関西の履歴書管理)
を理解することで問題意識を持つことを想定
営業部門とスタッフ採用部門の2つの課題
を結びつけることで全社的な課題へと変え
られると想定
画に落とし込んでいくのです。
スタッフ採用部門
設立/2009年1月 事業内容/法人向け提案型商材に
専門特化した営業支援事業
(営業コンサルティング事業、
営業
アウトソーシング事業、
営業教育事業)
URL/http://www.centleading.co.jp
提案書の内容に
「関西エリアにおけるアプ
ローチ量の予測と来期以降の顧客数」
を
盛り込み、
何とかしたいと思わせた
わせようとする。
つまり、価格を下げよ
関係部門の紹介を獲得する方法を策定できてい
る。各部門にどう理解させれば積極的に検討して
もらえるかを考えられている
数 字で比 較 するために、簡 単な計 算
をしましょう。
これまでは、 件の案 件
スタッフ採用部門を紹介
株 式 会 社セントリーディング
スタッフ採用部門や情報システム部門の状況・課
題を想定できている
(関係部門がどのように考え
るかを予測できている)
%ですね。がんばって案
情報管理レベルを維持しながら、
スタッフ管理の効率化も可能
→スタッフ採用部門の意見も聞きたい
普通、社内調整は顧客に任せる
紹 介 依 頼
/ 株 式 会 社 セント リ ー ディング
攻略した方 法
検 索
営業部門に対して
「導入したい」
という意欲を高
められている
(顧客の課題と商品の導入効果を
理解させることができている)
顧客攻略によくある間違い①
モバイルPCの持ち出しや社外から
のサーバーアクセスは不安
セントリーディング
3 戦略
に対 して受 注 が2 件 だとしま す。
つま
意 識
[email protected]
2 想定
うとします。
これは大きな間違いです。
「収益を確保するまでは営業2名
のがんばりで対応しよう!」
(平日/9:00〜18:00)
1 動機付け
どうしたら予算を取らせることができ
あまりない
普通はここで終わる
「確かに必要だ。でも
ウチは予算がない・・・」
理解のさせ方、予算の確保のさせ方、調
す。通常はありえない確率ですね。
営業の量を増やすよりも
質を上げる方が効果的
18
方 針、予 算、体 質などの状 況を踏まえ、
「購入へと調整させる方法」
で
2つめは
す。
これは顧客企業の戦略、方針や体質、
レットは作り分けなければいけません。
―
24
18
成功した理由
誰にアプローチするか
予 算
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本社予算で受注!
普通、予算を確保する項目などは提案しない
り、受 注 率は
効率化、
負荷の軽減、
顧客対応の
スピード化が必要だと思っている
現 状
履歴書は採用部門で一元管理
(社内システムで営業も閲覧可
能)
、
関西での現地面接の履歴書
は営業スタッフが出張から戻って
から回収
戦略的営業のプロフェッショナル
ターゲット顧 客の状 況 ②( 部 門 単 位 )
るのか、
これをまず考えなければいけま
意 識
スタッフ情報(個人情報)管理の
強化
ココがポイント
ココがポイント
ココがポイント
顧客企業の3部門とCent社支援先で打ち合わせ。
3部門で改善の必要性を共有し、基幹システムの予算に含めて検討(本社予算で導入を検討)
検 討
営業部門
スタッフ採用部門
情報システム部門
全社指示が優先で
各部門からの要望は面倒
予 算
あまりない
(収益を確保しなければいけない)
意 識
広域での営業、
面接から雑務まで
2名で対応
(その一方で、
より多く
の顧客との商談が必要)
計画・方針
そういった顧客攻略において、注意
ターゲット顧 客の状 況 ①( 会 社 全 体 )
20
今期の収益計画に対し、現状での限界とモバイルシステム導入による
アプローチ量増加、顧客対応のスピード化による機会ロス・失注削減
営業部門
他の予算はほとんど取れない
(会社から削減の指示あり)
現 状
予 算
基幹システムの見直しが
最優先
来期、
関西に事務所を持つための
収益を今期中に確保
計 画・方 針
計 画・方 針
―
売上を上げる
ターゲット顧 客の状 況
10
提 案
営業部門
顧 客
アプローチ内容
対 象
情 報システム部 門
スタッフ 採 用 部 門
営 業 部 門
営業部門が伸ばしてきた
会社なので、営業の権限が強そう
2名の営業スタッフは
営業と請負スタッフの採用を兼務
今期は関西に事務所を持たず、
2名の営業スタッフが出張で対応
今期に関西エリアへ
進出したばかり
※Cent社=セントリーディング社 支援先企業の見込み顧客/中堅製造請負会社
Cent社の支援先企業/モバイルシステム提供会社
1
顧客企業を総 合 的に考 察し、受 注を獲 得
dy
Stu
se
戦略的営業の実例から学ぶ
Ca