広告におけるストーリーとブランド―分析と試作

14G-01
広告におけるストーリーとブランド―分析と試作―
志村 和彦
小方 孝
岩手県立大学ソフトウェア情報学部
発表要旨
小方らは,「物語生成システム」の研究の応用として,広告シナリオ生成システムの
研究を開始した (小方・渡辺,1995;小方・渡辺・堀・大須賀,1995a,1995b).この研
究で,広告風のシナリオが「物語生成システム」の方法で生成できることが明らかにな
った.しかし,広告のシナリオにおいて重要な,出来事もしくはストーリーと商品(ブ
ランド)との関係についての踏み込んだ調査や考察は行われなかった.そこで,萱森・
小方 (2003),Ogata and Kayamori (2004) は,テレビコマーシャルを 100 本調べ,広告の
中にブランドがどのように出現しているのかを分析し,その結果を使って広告風のシナ
リオを生成するプログラムを作成した.しかしその分析結果が不完全だったため,吉
尾・小方 (2007) は,テレビコマーシャルを素材としたブランドの出現パターンを「ブ
ランド出現レトリック」として再分析した.しかしこの研究は,プログラムの実装には
至らなかった.そこで,本研究では,ブランド出現レトリックをプログラムとして実装
することを主な目的とする.但し,広告シナリオ全体の生成ではなく,単一のイベント
におけるブランドの出現のヴァリエーションを作り出す部分のみに絞っている.本研究
では,以上のような研究背景を踏まえ,単一イベントにおけるブランド出現レトリック
の分類・整理を行い,これを簡単なプログラムとして実装し,その結果について考察す
る.
なお,物語論的広告論とでも言うべきアプローチが存在する.例えば,福田 (1990) は
プロップ等筆者の興味と類似する文学理論を取り上げて広告における物語性について
論じているが,本研究のようなシステム実装的な問題意識はない.川村 (2007) は,統
合的な広告制作のモデルを提示しているが,システム設計としては極めて概念的なレベ
ルに留まっている.Zaltman (2003) は,ユングの原型に依拠し,人の無意識レベルに食
い込む広告の技法について実践的に論じているが,問題意識は謂はばコンサルティング
的である.このように,広告を物語生成の対象として把握する研究は筆者らの試みを除
いて稀である.
広告の物語生成研究はその目的として,自動生成広告としての利用だけでなく,堀
(2007) の言う「創造活動支援システム」としての利用も想定している.
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参考文献
福田 敏彦 (1990).『物語マーケティング』
.竹内書店新社.
堀 浩一 (2007).
『創造活動支援の理論と応用』
.オーム社.
萱森 修・小方 孝 (2003).物語―ブランド関係に注目した TVCF の分析と CF シナリオ
生成―.
『2003 年度人工知能学会全国大会(第 17 回)論文集』
.2G2-06.
川村 洋次 (2007).広告映像の技法・修辞と効果に関する研究,認知科学,Vol.14,No.3,
409-423,2007.
Ogata, T. and Kayamori, O. (2004).Automatic TV-CF Generation Based on the Analysis of the
Relation between Story and Brand.In 小方孝 編著 (2004).
『物語の<認知・テクスト・
社会>―山梨大学集中講義 2002 の記録―』.日本認知科学会テクニカルレポート
No.52,126-131.
小方 孝・渡辺 光一 (1995).人工知能による広告作成支援システムのための物語型 CF
の構造分析と広告の物語生成過程の検討.
『広告科学第 31 集』
.153-157.
小方 孝・渡辺 光一・堀 浩一・大須賀 節雄 (1995a).マーケティング/広告統合支援
のための物語生成システムの応用の基本的枠組み.
『経営情報学会誌』
.4(1),19-42.
小方 孝・渡辺 光一・堀 浩一・大須賀 節雄 (1995b).物語生成システムによる広告創
作支援を目的としたテレビコマーシャルの構造分析.『広告科学』.第 30 集,1-22.
吉尾 貴史・小方 孝 (2007).ストーリーとブランドの関係に着目した広告分析知識を
利用した広告シナリオ自動生成システム.
『第 69 回情報処理学会全国大会講演論文
集(分冊 4)
』.4Z-6,507-508.
Zaltman, G. (2003). How Customers Think. Harvard Business School Press.(ザルトマン
(2005).『心脳マーケティング―顧客の無意識を解き明かす―』.ダイヤモンド社.
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