モーリシャスとの租税条約改正 - Mayur Batra Group

Mayur Batra Group.
June 2016I Volume 1 Issue 5
モーリシャスとの租税条約改正
1. 背景
モーリシャスとの旧租税条約では、モーリシャスの居住者がインドの会社の株式を譲渡することで発
生する収益(キャピタルゲイン)はモーリシャスのみで課税対象となっていました。モーリシャスで
は、同国に拠点を構える事業体に対し、キャピタルゲイン課税を課さないことから、株式譲渡から発
生するキャピタルゲイン税は免税扱いとなり、その結果、キャピタルゲインにかかる租税優遇措置に
関し、多くの税務訴訟に繋がっていました。インド税務当局は、これら税制優遇を「トリーティ・シ
ョッピング(条約濫用)」を理由に否定していました。
訴訟の増加および税収の減少という観点から、2016 年 5 月 10 日、インド政府は 1983 年 4 月 1 日発
効の条約の改正に関する議定書に署名を行いました。財務省は、議定書は、租税条約の濫用および資
金の周回取引にかかる課題への取り組み、税収減少の抑制、二重免税の回避、投資の流れの合理化、
インドとモーリシャス二国間における情報交換の流れを奨励するものであると述べています。また、
これにより投機家や投資家による遊戯的な投資も抑制され、市場の乱高下が軽減されることが期待さ
れています。
2. 主要改正点
議定書における特徴は以下のとおりです

株式譲渡から発生するキャピタルゲイン税:改正により、2017 年 4 月 1 日以降に取得される、
インド企業の株式を譲渡することで発生するキャピタルゲインに対し、インドに徴税権が付与さ
れます。2017 年 4 月 1 日より前に行われた株式投資は、対象外となります。

キャピタルゲインにかかる税率:下記の条件を満たす場合、移行期間として設けられている2年
間(2017年4月1日~2019年3月31日)における税率は、国内所得税率の50%を上限とします。
(a)
(b)
(c)
モーリシャスの会社の主要な業務目的が、低税率の優遇措置を利用するものでない
こと
株式譲渡が「主要目的テスト」および「事業の真正性テスト」に合格すること 且
つ
株式譲渡が、モーリシャスの(課税回避を目的とした)シェルカンパニー、あるい
はトンネル会社に対して行われるものではないこと、つまり、収益(キャピタルゲ
イン)が発生する日から起算した前12ヶ月間において、最低150万モーリシャス・ル
ピーの費用が発生しているモーリシャスの非上場会社への譲渡であること
( 税率に関する影響分析については別添参照)
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
利子所得:インド源泉の利子所得は、利子総額の7.5%で課税されます。以前は、インドの税
金に対して上限はありませんでした。モーリシャス居住銀行の利子所得の免除は、2017年3
月31日時点で存在する債務に対する請求権から生じる利子に関しては継続します。

技術上の役務提供にかかる報酬:以前の条約にはなかった技術上の役務提供にかかる報酬に
対する課税条項が、インドとその他の多くの国々の条約と同様の内容で導入されました。技
術上の役務提供にかかる報酬総額の10%の税率が示されています。

恒久的施設(PE):議定書は、サービスPEを含むようにPEの範囲が広がりました。これによ
り、1つまたは関連するプロジェクトを合わせた活動が12ヶ月間で累積90日を越える期間続
く場合は、コンサルティングサービスを含むサービス提供をPEに含みます。

情報交換:議定書では、情報交換や徴税共助に関する条約の既存条項を改正されます。
※キャピタルゲインを除くすべての改正は、2017年4月1日より発効されます。
3. 地域特性の分析
投資を行う際の地域毎の分析を以下の通り比較しました。
表:外国法人に対するインド会社株式譲渡にかかるキャピタルゲイン課税
比較条件

外国法人の管轄
地域

インド国内
キプロス
なし
租税条約に
基づき免除
シンガポール
アラブ首長国連
邦(UAE)
オランダ
なし
なし
なし
インド‐モーリシャス
租税条約の改正がイン
課税対象
条件付きで免除
ド‐シンガポール租税
条約に自動的に適用さ
れ、免除が撤廃
モーリシャスまたはシンガポール経由で投資を行う投資家へ与える今後の影響
本租税条約にかかる改正は、インドにおいてキャピタルゲインが課税されるため、通常非上場株式に
投資を行ってきた投資家及びプライベートエクイティ・ベンチャーキャピタルに影響を与えます。加
えて、上場株式に投資し 12 ヶ月以内に当該株式を売却していた外国ポートフォリオ投資家(Foreign
Portfolio Investors-FPIs)も短期キャピタルゲイン課税の対象となるため影響が見込まれます。
よって、上場株式に投資をし 12 ヶ月超保有する場合のみ、長期キャピタルゲインの税率が 0 パーセ
ントであるため、インドでの課税を免れることが可能です。
政府統計では、外国直接投資の約50%はモーリシャス、シンガポールを経由して投資されています。
2017 年 3 月 31 日までの投資は、キャピタルゲイン課税の対象外ですので、投資家による即時の資金
流失のリスクはありません。しかし、2017 年 4 月 1 日からあらゆる投資に関して今回の改正が適用
されます。2 年間の移行期間の恩恵は、(課税回避を目的とした)シェルカンパニー、あるいはトン
ネル会社を除く、過去 12 ヶ月のモーリシャスの事業に関する総費用がモーリシャスルピー150 万以
上の企業に限定されます。さらに、本改正では、これまで議論されなかった間接譲渡、株式以外の金
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融証券、GAAR(一般租税回避防止規定)の相互作用、特にシンガポールとの租税条約交渉が取り上
げられます。
ある強気の投資家は、税金を節約するために2017年4月1日までに計画を前倒で投資し、その他大勢
が投資に関するデューデリの手続きを取り、投資家の利得に関する税金分をファクタリングする可能
性があります。モーリシャスとの租税条約の改正による想定されるシナリオでは、オランダやキプロ
スのようなその他地域が魅力的な投資先として代替します。
付表 - 株式譲渡に関する税率
上場/未上 利 得 の 性 株 式 市 場 /
場株式
質
相対を通
じた譲渡
上場
短期
市場内
相対
長期(注
記 2)
2017 年 4 月 1
日以前の投資の
ための税率
市場内
改正法案の適用
除外(現行の恩
典の継続)
相対
未上場
2017 年 4 月 1 日から
2019 年 3 月 31 日の投
資及び販売に係る税率
(サーチャージ、教育
目的税は除く)
2019 年 3 月 31 日以降
の投資・販売に係る税
率(サーチャージ、教
育目的税は除く)
7.50% (15%の 50%)
15%
20% (40%の 50%)
40%
証券取引税(STT)を条件とした国内法下での免
税
10%
5% (10%の 50%)
短期
20% (40%の 50%)
40%
長期(注記 3)
適用外(注記 1)
10.82%
注記
1.
2.
3.
4.
税率の 50%軽減はシェルカンパニー、あるいはトンネル会社を除く企業に適用されます。
株式が 12 ヶ月後に販売された場合、キャピタルゲインが長期に該当します。
株式が保有から 24 ヶ月後に販売された場合、キャピタルゲインが長期に該当します。
上記の税金は、サーチャージと教育目的税の適用前です。
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