日本消化器外科学会 - My Schedule

日本消化器外科学会 第 69 回日本消化器外科学会総会【2014 年 7 月】
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[RV-42] 要望ビデオ 42:私が推奨するヘルニア術式 4
座長:柏木 秀幸(富士市立中央病院外科)
日時:2014年7月18日(金)15:10∼16:00
会場:第15会場 (ホテルハマツ 2階 福寿)
RV-42-1 鼠径部ヘルニアに対する前方アプローチによる腹膜前腔修復術
RV-42-2 局所麻酔下 Lichtenstein 法における鼠径管の微細解剖
島田 長人:1、高地 良介:1、須磨崎 真:1、白鳥 史明:1、松本 悠:1、吉田 公彦:1、
皆川 輝彦:1、本田 善子:1、瓜田 純久:1、金子 弘真:2
1:東邦大学医療センター大森病院 総合診療・急病センター (外科)、2:東邦大学医療セ
ンター大森病院 消化器センター (外科)
和田 則仁:1、古川 俊治:1、北川 雄光:1
1:慶應義塾大学医学部 一般・消化器外科
はじめに:Lichtenstein 法は欧米で標準的術式のひとつとして広く受け入れられている.
オンレイ・メッシュだけのテンションフリー修復であり,腹膜前腔に侵襲を加えない点
当科では前方アプローチによる腹膜前腔修復術を標準術式としている.腹腔鏡手術と同
様に underlay patch のみで,ヘルニアが発生しうる 3 か所の部位の修復が可能であ
る.デバイスは Direct Kugel patch と Ultrapro Hernia System(通常 on lay patch
をカット) を用いている.2004 年以降,約 1200 例以上の手術を経験したがその手技
はほぼ確立されてきている.今回,われわれが行っている腹膜前腔修復術の手順とポイ
ントについてビデオで供覧する.麻酔はラリンゲルマスクによる全麻と局麻を併用して
いる.創部にはドレープを貼る.皮切は約 4 ㎝で浅腹壁動静脈は結紮・切離する.外
で比較的低侵襲といえる.Lichtenstein 法は鼠径管の解剖を理解し適切にメッシュ展
開の場を作る必要がある点で他のテンションフリー修復術と若干異なる.今回,我々が
行っているメッシュ固定の縫合を行わない Lichtenstein 法を実施する上で重要と考え
ている鼠径管の微細解剖について報告する.
対象と方法:対象は当院で加療した鼠径ヘルニア患者である.局所麻酔下に Lichten-
stein 法を行った.無名筋膜を剥離した後,外腹斜筋腱膜を切開し,背面に付着する壁
側聞筋膜・挙睾筋膜は毛細血管を含むため丁寧に剥離した.精索の内側で壁側聞筋膜を
腹斜筋腱膜下に局麻を浸潤させ線維方向に切開を加える.まず,局麻を含んだガーゼを
切開すると内腹斜筋腱膜部が露出され,この層で精索との間を剥離した.挙睾筋膜は精
用い内腹斜筋との間を頭側から足側に向かって剥離し,腸骨下腹神経および腸骨鼠径神
索側に付け剥離を進め横筋筋膜と精索の間を剥離し鼠径靱帯近傍に至った.次いで外側
経を確認し温存する.精索を鼠径靭帯から局麻ガーゼで鈍的に剥離し外精静脈を確認し
で外腹斜筋腱膜と挙睾筋膜との間を剥離した.恥骨結節部で精索背側を剥離すると反転
精索とともにネラトンカテーテルで牽引する.後壁との間を内鼠径輪側に向かい下腹壁
靭帯を認めた.恥骨近傍で鼠径靱帯に付着する挙睾筋膜を切開し精索を一周したのでネ
動静脈が透見できる部位まで剥離する.外鼠径ヘルニアの場合には,内鼠径輪の高さで
ラトンチューブで精索を確保した.壁側間筋膜を外側に向かい切開した後,内腹斜筋を
精索の内側を筋鈎で広げるとヘルニア嚢が確認できるので鉗子で把持し末梢側に向かっ
精索から剥離した.外側で挙睾筋膜を鼠径靱帯から切離した.精索前面で挙睾筋膜,内
て剥離を進める.次に,ヘルニア嚢を内側に牽引しながら精管および内精動・静脈を腹
精筋膜を切開すると腹膜前筋膜浅葉に至るこれを切開すると腹膜前脂肪の奥に深葉を認
膜から剥離する (parietalization).ヘルニア嚢をやや頭・外側に牽引し下腹壁動静脈を
めた.深葉と腹膜の間で剥離を進めるとヘルニア嚢のみが剥離されるため,これを頼り
確認する.腹膜前筋膜浅葉を切開し腹膜前腔に入り局麻ガーゼを挿入する.精管の近傍
に parietalization を高位まで進め結紮した.ポリエステル製 self-fixating メッシュ
で parietalization の空間と腹膜前腔との境となる腹膜前筋膜深葉が存在するのでこれ
を切開し二つの空間を連続させる.次に腹直筋裏面から頭側に向けて剥離を進める.腹
膜前腔の剥離範囲を指で確認する.内側は腹直筋裏面,尾側は Cooper 靭帯を確認す
るが,この時に必ず大腿輪も確認する.大腿ヘルニアが無くても腹膜前脂肪が大腿輪に
入り込んでいる場合があり,そのままでは patch が十分に展開できなくなるため脂肪
織を必ず腹腔内側に戻しておく.十分な剥離スペースが確保できたら恥骨側にガーゼと
自在鉤を挿入し patch を「手巻き寿司」様に把持し挿入する.次に patch の頭側を挿
入する.この時点で patch が「くの字」に曲がっていないことを確認する.patch の
展開は内側から始め次に外側を展開する.ストラップを横筋筋膜と鼠径靭帯にそれぞれ
を恥骨・反転靭帯に 2 センチ重なるよう展開した.内鼠径輪では横筋筋膜・内腹斜筋
に接着するよう注意を払った.
結果:2009 年 1 月から 2012 年 8 月の 32 か月に 377 例に本法を実施した.年齢は 69
± 10 歳,男女比は 350:27 であった.26 例 (6.9%) で抗凝固薬を内服継続した.6 か
月時点の再発例は内鼠径ヘルニア (II-3) 後の大腿ヘルニアの 1 例のみであった.血腫
を 9 例 (2.39%),軽度の慢性疼痛を 4 例 (1.06%) に認めた.
考察:Lichtenstein 法では鼠径管の微細解剖を踏まえた手術により良好な中期成績が
得られた.わが国においても鼠径ヘルニアに対して推奨しうる術式のひとつと考えら
れた.
一針ずつ固定する.皮膚はダーマボンドを使用している.
RV-42-3 Parietex Progrip Mesh を使用した Lishtenstein 法における
Lateral Tail First Technique
池谷 佑樹:1、磯貝 尚子:1、河内 順:1、下山 ライ:1、荻野 秀光:1、渡部 和巨:1
1:湘南鎌倉総合病院
RV-42-4 成人鼡径部ヘルニアに対する当院でのダイレクトクーゲル法
中島 弘治:1、峯 由華:1、福田 真義:1、大久保 仁:1、円城寺 昭人:1、山口 淳三:1
1:佐賀病院 外科
【緒言】当院では成人鼡径部ヘルニア修復術として H20.4 よりダイレクトクーゲル法
【背景】鼠径ヘルニアに対して様々な方法やメッシュが開発され,再発なく疼痛少な
い低侵襲治療が目指されているが,鼡径ヘルニア手術の目的はヘルニア根治と再発の
予防であるのは自明である.また副次的な要素として若手外科医にとっての手術教育
の側面がある.当院では日帰り手術を前提としての鼠径ヘルニア手術を従来から前方
アプローチである Lichtenstein 法にて施行してきたが,低侵襲性特に,疼痛軽減と
手術時間短縮は極めて重要な因子である.腹膜前アプローチや腹腔鏡手術が話題とな
る中,ライトウエイトでセルフグリップ機能をもつ Parietex Progrip Mesh が開発さ
れ,Lishtenstein 法は疼痛軽減及び真の Tension Free 術式へと進化した.一方でこの
メッシュ最大の特徴である組織に密着する機能をもつポリ乳酸マイクログリップは手術
操作中においてメッシュが周囲組織にひっつき手技が煩雑になりえる.通常はフラップ
を開き恥骨側とスリットを精索周囲に固定・閉鎖した後,テイルに向かって展開してい
く方法である.今回提示する留置方法は,セルフグリップ機能によって最も周囲組織に
ひっつき操作が困難になるテイル部分を最初に展開した後,恥骨部分を固定し最後に精
索周囲に新内鼠径輪を作る方法であり,当方法を Lateral Tail First Technique として
いる.【方法】2011 年 6 月から 2013 年 5 月まで当メッシュによって治療した 202 例
のうち,両側,嵌頓,再発,同時他手術を除外した当方法での 141 例を検討した.手術
手技を供覧し留置方法とその結果を報告する.【結果】再発なく経過し平均手術時間は
30.4 分でこれは術者学年によって違いはなかった.【考察】短い手術時間の利点は言う
(DK 法) を採用している.術直後ではない時期に外側三角から再発した 2 症例 (93 例
中;2.1%) を踏まえ,当院では H21.8 より定型的な DK 法に,on lay mesh による外
側三角の補強を追加した.この手技を追加した以降の 42 症例では再発を認めていない
ことを 111 回日本外科学会で誌上報告した.
【目的】H21.8 より現在まで 188 症例を経験したが,再発を認めていない.効果的な修
復術であると考え,当院での DK 法を供覧する.
【症例】期間:H21.8∼H25.11. 症例:188 例.
症例内訳:外鼡径ヘルニア 135 例,内鼡径ヘルニア例 39 例,内外鼡径ヘルニア 6 例.
大腿ヘルニア 7 例,閉鎖孔ヘルニア 1 例.男 164 女 24.年齢中間値 60 歳 (24∼96
歳).観察期間中間値:23 ケ月 (1∼51 ヶ月).再発:0 例.
【手技】腹膜前腔に underlay patch を留置し,Hesselbach 三角を被覆する.さらに
付属の mesh に slit を入れ,精索を通したのち縫縮して,内鼠徑輪を補強する.次い
で mesh を trimming して外側三角を広く被覆する.
【考察】DK 法では鼡径管後壁を広く補強する利点があるが,実際の手技では,underlay
patch の外側縁は精索の内側に位置し,内鼠徑輪を全周性に被覆するのは困難である.
underlay patch のみ行う DK 法では,内鼠径輪周囲のヘルニア門となる可能性がある
部位を補強できない場合もある.
【結語】外側三角の mesh 補強は同部位のヘルニア再発予防に効果があると考える.
までもない.古典的な前方アプローチによって容易な解剖学的理解が得られことによっ
て再発率が低いと考えられ,また若手外科医にとって教育的であり術者機会の安全な提
供ができる.全てが腰椎もしくは局所麻酔で施行され,ハイリスク,特に循環・呼吸器
合併症をもつ患者群にとっては利点が大きい.また麻酔科医・第 2 助手・スクラブナー
スを必要とせず,術者・助手・サーキュレーティングナースのみで手術施行が可能であ
り腹腔鏡関連の大掛かりな医療機材を必要とせず医療資源・人的資源の節約が可能であ
る.【結語】当方法は,より低侵襲かつ教育的で安全・効果的な鼡径ヘルニア手術であ
ると考えられた.また手術機材の進歩だけでなく手術手技自体の進化も必要であろう.
第69回 日本消化器外科学会総会
日本消化器外科学会
The Japanese Society of Gastroenterological Surgery
日本消化器外科学会 第 69 回日本消化器外科学会総会【2014 年 7 月】
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RV-42-5 私が推奨するヘルニア術式 ∼Kugel 法∼
RV-42-6 当院における ULTRAPRO Plug 法
三宅 邦智:1、瀬下 明良:1、成田 徹:1、板橋 道朗:1、亀岡 信悟:1
1:東京女子医科大学病院 外科・小児外科
山東 雅紀:1、長谷川 洋:1、坂本 英至:1、小松 俊一郎:1、法水 信治:1、新宮 優
二:1、稲葉 一樹:1、田口 泰郎:1、伊佐治 孝洋:1、牧野 安良能:1
1:名古屋第二赤十字病院 一般消化器外科
メッシュが鼠径ヘルニアにおいて主流をなしてから 10 年以上の歳月が経過した.しか
しながらメッシュのメリットである再発なしのうたい文句とは裏腹に再発は後をたた
【目的】
ない.さらに鼠径部ヘルニア,閉鎖孔ヘルニアは嵌頓により腸閉塞や腹膜炎をきたす疾
近年,鼠径ヘルニア修復術は,術式や麻酔方法,使用する人工素材などの組み合わせに
患であり,今後高齢者社会において鼠径部ヘルニアや閉鎖孔ヘルニアは増加すると思わ
より多種多様化している.そのなかで我々は,簡便性・普遍性・安全性を重視し,局
れ,その術式の選択は重要である.当科での 2008 年∼2013 年におけるヘルニア手術
所麻酔によるメッシュプラグ法を第一選択としている.使用する人工素材は,独自の
症例は 292 例で,Kugel 法症例は 100 例,前立腺手術の既往のないソケイヘルニア
RCT で各素材の有用性を検証しながら改変し,現在は,lightweight largepore mesh
をはじめ,大腿ヘルニア,閉鎖孔ヘルニア,ヘルニア緊急手術に対して施行している.
である ULTRAPRO Plug (ETHICON) を主に使用している (ULTRAPLO Plug 法:以
ヘルニア緊急手術は同期間 14 例に施行しており,Kugel 法は 8 例 (5 例は腸切除) で
下 UPP 法).今回我々の UPP 法の手術手技および麻酔方法別に成績・再発率を供覧
あった.ヘルニア手術で推奨される上で重要な点は①再発しないこと②手技が標準化さ
れること③待機手術緊急手術問わず対応できることなどが挙げられる.①②について当
し,再発予防についての留意点を述べる.
【方法】
科では以下のことを留意して行っている.1. 剥離操作の上で最も重要な下腹壁動静脈
2009 年 6 月から 2013 年 11 月まで UPP 法を施行した 537 例を対象に,その手術成
の同定が困難な時がしばしばある.このため当科では腹膜前腔に達したのち内側,腹直
績を集計した.麻酔法について,2012 年 6 月からは,従来行っていた step by step 法
筋外縁に向かって剥離を行い下腹壁動静脈の同定を行っている.この方法では腹膜前腹
による局所麻酔法から膨潤局所麻酔法に改変をした.手術手技では,確実な神経温存,
腔にて横走する下腹壁動静脈を検索するより容易に同定することができる (平均 2-3
Plug 留置の際に腹膜前腔の充分な剥離と Anchor の確実な展開および Rim の必要最
分).その後下腹壁動静脈をテーピングし内側の剥離を腹直筋の背側までおこなってい
小限の固定,Onlay patch 留置の際に恥骨結節前面へのオーバーラップと外側への展
る.2. 確認の困難な 2-Ⅰに分類される内ソケイヘルニアに対しても腹膜を十分背側に
おとし,前方に腹膜の吊り上げがないことを直視にて確認している.3.sac を精管,精
開を心がけている.
【成績】
巣動静脈より剥離する際,精管,精巣動静脈と腹膜 (底辺) に三角ができるまで十分剥
術後合併症は,出血・血腫形成が 12 例 (2.23%),Seroma が 9 例 (1.68%),創感染が
離している (壁在化).以上の点を留意することにより再発症例を経験していない.ま
2 例 (0.37%),再発は 1 例 (0.19%) だった.麻酔法別にみると,膨潤局所麻酔法では,
出血が 3 例 (1.66%),Seroma が 3 例 (1.66%) で,step by step による局所麻酔法で
は,それぞれ 9 例 (2.53%),6 例 (1.69%) であった.
た③については緊急手術では腸閉塞が高度な場合や腹部手術既往がある場合など腹腔
鏡手術にて対応が困難なことがある.その点でも Kugel 法は同一術野で腹部操作も行
え,ヘルニア手術も遂行でき有用である.【結語】私が推奨するヘルニア術式は Kugel
法である.
【結論】
再発率は,他術式の報告と比較して遜色なく,局所麻酔下 UPP 法は至適術式と思わ
れる.再発予防は,外側三角と恥骨上の確実な補強が重要であり,前者においては
Anchor の展開と Rim の内鼠径輪外側補強を意識した固定が有用で,後者においては
恥骨結節前面での十分なオーバーラップが重要と思われる.また膨潤局所麻酔法によ
り,明確な解剖の把握および止血効果を期待できると考えられる.
第69回 日本消化器外科学会総会
日本消化器外科学会
The Japanese Society of Gastroenterological Surgery