書評 『決算書がスラスラわかる 財務 3 表一体理解法』 さいとう りょうや この書評は、朝日新書から出版されている、國貞克則著『決算書がスラスラわかる 財 務 3 表 一 体 理 解 法 』 に 対 す る も の で あ る 。 財 務 3 表 (貸 借 対 照 表 (BS)・ 損 益 計 算 書 (PL)・ キ ャ ッ シ ュ フ ロ ー 計 算 書 (CS))の 5 つ の つ な が り の よ っ て 、会 計 の 仕 組 み を 理 解 し よ う と い う 趣旨の本である。 ま ず 、こ の 3 表 は 何 を 表 し て い る か と い う と 、BS の 貸 方 (右 側 )で は 企 業 が ど う お 金 を 集 め た か を 表 し て い る 。BS の 借 方 (左 側 )で は 、そ の 集 め た お 金 を 何 に 投 資 し た か を 表 し て い る 。そ し て 、投 資 し た 結 果 上 が っ た 利 益 を PL で 表 し て い る 。こ の お 金 を 集 め 、投 資 し て 、 利 益 を 上 げ る 一 連 の 流 れ は 、CS に も 表 さ れ 、そ れ ぞ れ 営 業 キ ャ ッ シ ュ フ ロ ー 、投 資 キ ャ ッ シュフロー、財務キャッシュフローとなるのである。 そ し て こ の 本 の ポ イ ン ト で あ る 5 つ の つ な が り で あ る が 、1 つ 目 は PL で 最 後 に 出 て く る 当 期 純 利 益 が BS の 借 方 に あ る 純 資 産 の 中 の 利 益 剰 余 金 と つ な が る 。 2 つ 目 は 、 BS の 左 右 は 一 致 す る と い う こ と で あ る 。3 つ 目 は 、BS の 現 金 お よ び CS の 現 金 の 残 高 が 一 致 す る 。4 つ 目 は 間 接 法 CS(BS と PL の 資 金 の 動 き か ら つ く る CS)へ 税 引 前 当 期 純 利 益 を PL か ら 持 っ て く る 。 5 つ 目 は 直 接 法 CS(実 際 の 資 金 の 流 れ か ら 作 る CS)と 間 接 法 CS が 一 致 す る 。 こ の つながりの中に企業の各取引をあてはめることによって、簿記の考えを使わずに財務 3 表 を理解するのである。 以上でこの本の内容を紹介したが、私はこの本に出てくる財務 3 表の読み方は、非常に 分かりやすいものであると考える。その理由を以下で述べていく。 分かりやすい理由として、この読み方では簿記の知識を必要としないため、財務 3 表を 読 む 事 に よ っ て 、直 感 的 に そ の 会 社 の 財 務 状 況 を 把 握 で き る こ と が 理 由 で あ る 。pp.72~ 75 に、事務用品を 5 万円で購入したという例があるが、これを簿記の知識で行った場合、つ まりどういう取引があったか仕訳を行うとする。5 万円で事務用品を購入し、それを帳簿 に借方に備品の増加と、貸方に現金の 5 万円を・・・というように記入して、それをさら に期末に決算書として財務 3 表にまとめてといった感じとなる。しかし、この本の財務 3 表 の 読 み 方 を 使 う と 、 ま ず PL で 事 務 用 品 費 が 発 生 し 、 結 果 当 期 純 利 益 か ら 5 万 円 が 控 除 さ れ 、 BS の 繰 越 利 益 剰 余 金 が 減 る 。 同 時 に CS で も 、 営 業 キ ャ ッ シ ュ フ ロ ー で は 支 出 が 発 生し、結果現金および同等物期末残高から 5 万円が控除される。このように帳簿へ記入し ないで、そのまま取引内容を把握できるのである。 また、この本の悪い点として、全く会計の知識がない場合では、少々理解しづらいとい うことがある。簿記の仕分けの知識は必要ないが、たとえば営業利益とはどのようなもの で、どの際に発生するかといった基本的な知識の説明まではされていないためである。 最後に、ある程度会計の知識がある人であれば、この考え方を利用することによって財 務 3 表が、標題のとおりスラスラ読めるようになるであろう。私は数字が苦手であるのだ が、この本の理解法によって、決算書が企業の活動を映し出していることがよくわかるよ うになった。
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