Major Projects: Energy, Mining & Infrastructure Tokyo Client Alert July 2012 米政府、対日 LNG 輸出拡大承認の見込み 近時の展開 米国では、過去 40 年以上にわたり、1 カ所の LNG(液化天然ガス)基地のみ から日本に LNG を輸出してきた。今、この状況が変化しようとしてる。昨年、 米政府は 2 カ所目の基地からの輸出を許可した。さらに年内には、その他の 8 カ所の基地からの輸出を許可する決定が見込まれている。 日本の LNG の買い手および投資家への影響 米国の LNG 輸出が拡大されると、日本の LNG の買い手は、シェールガスの 供給元を多様化できることにとどまらない恩恵を享受することとなる。価格 面では、原油価格ではなく、ヘンリー・ハブ価格に基づく競争による価格設 定が期待される。さらに、日本の企業は、LNG 輸出施設建設プロジェクトへ の投資やシェールガス田の利権獲得によって米国内にバリューチェーンを構 築することが可能となる。 1967 年から、アラスカ州のケナイ LNG 基地は米国内で輸出許可を受けた唯 一の LNG 基地として稼動してきた。2011 年における対日輸出の全量となる タンカー8 隻分の LNG は、この基地から輸出されている。しかし、昨年、ル イジアナ州のサビンパスの施設が輸出許可を得たことから、この状況に変化 が訪れた。さらに、以下の表に示す 8 つの施設についても、輸出許可申請が 審査中である。 企業名(州) 産出量 申請日 Freeport LNG(テキサス) 1.4 Bcf/d 2010 年 12 月 17 日 Lake Charles Exports(ルイジアナ) 2.0 Bcf/d 2011 年 5 月 6 日 Dominion Cove Point LNG(メリーランド) 1.0 Bcf/d 2011 年 10 月 3 日 Carib Energy(フロリダ・テキサス) 0.01 Bcf/d 2011 年 10 月 20 日 Freeport LNG(テキサス) 1.4 Bcf/d 2011 年 12 月 19 日 Cameron LNG(ルイジアナ) 1.7 Bcf/d 2011 年 12 月 21 日 Gulf Coast LNG Export(テキサス) 2.8 Bcf/d 2012 年 1 月 10 日 Jordan Cove Energy(オレゴン) 0.8 Bcf/d 2012 年 3 月 23 日 www.bakermckenzie.com 本クライアントアラートに 関するお問い合わせ先 アン・ハン パートナー +81 3 5157 2710 [email protected] コリン・クック アソシエイト +81 3 5157 4307 [email protected] 加藤 洋光 アソシエイト +81 3 5157 2737 [email protected] 東京青山・青木・狛法律事務所 ベーカー&マッケンジー外国法 事務弁護士事務所 (外国法共同事業) 〒100-0014 東京都千代田区永田町 2-13-10 プルデンシャルタワー 輸出許可プロセスと今後の展望 米国の天然ガス法(Natural Gas Act)は、ガスを輸出するためには連邦政府の許 可を受けることを要件とする。この許可は、対象となるガスの輸出が公益と一 致することを米エネルギー省が認めた場合にのみ下される。米国と自由貿易協 定(FTA)を締結している 17 カ国への輸出は公益と一致するとみなされており、 同省はこれらの国々への輸出を「変更または遅滞なく」許可しなければならな い。一方、日本を含む米国との FTA を締結していない国々への輸出許可は、公 益に合致するものであることを確認するための長期にわたるプロセスを経る必 要があり、この間、関係者には意見、抗議、介入のための動議の提出などの参 加機会がある。 適用法規によると、エネルギー省は、許可申請への対応について、何をいつ までにするという期限を課されていない。同省は、2011 年 5 月に米国と FTA を締結していない国への輸出基地としてサビンパスの施設に許可を与えた後、 LNG 輸出が米国内のエネルギー市場に及ぼす影響に関する調査の結果を待っ て、LNG の輸出許可申請の審査をすべて保留にしている。これは、LNG の輸 出拡大による国内価格の上昇を懸念する複数の米国議員からの抗議を受けた 後のことである。当初、今年の第 1 四半期までに終了する予定であったこの 調査は、未だ終了しておらず、現在は、今年の夏に終了すると見込まれてい る。したがって、保留中の輸出申請に対する許可は、今年の第 4 四半期まで に与えられないことが予想される。 しかしながら、日本を含む米国と FTA を締結していない国に対する LNG の 輸出拡大については、政治的支援が期待できる。2012 年 7 月 2 日には、 シェールガス田を保有する州出身の下院議員、21 名で構成された超党派グ ループが、米エネルギー省のスティーブン・チュー長官に対し、保留中の LNG 輸出申請への早急な対応を求める文書を送付している。同長官は今年の 2 月、LNG の輸出への支持を表明していた。また野田佳彦首相も、2012 年 4 月 30 日にバラク・オバマ大統領と LNG 輸出拡大について討議したと述べた。 今後の対応と対策 • 米国と FTA を締結していない国に対する輸出許可申請が現在保留と なっている、LNG の買い手と投資家を探していると思われる LNG プロ ジェクトについて、予備的デューデリジェンスを実施する • 米国と FTA を締結していない国に対する LNG 輸出許可プロセスに関 する米エネルギー省の動向を注視する • 米国産シェールガスを原料とする LNG と、日本の再ガス化施設および パイプライン網の間の適合性の調査 まとめ ニューヨーク・マーカンタイル取引所における取引で使用されるヘンリー・ ハブ スポット価格と JCC 価格の大幅な違いに鑑みると、米国のシェールガス 田から産出された LNG の輸出拡大は、北東アジア、特に日本のガス市場に大 変革をもたらす可能性が高い。LNG の買い手となる日本企業は、米国からの LNG の将来的な買い手や投資家としての立場を確立するために、LNG 輸出基 地の許可に関する今後の動向に注視することが重要となる。 本クライアント・アラートに関するご質問やお問い合わせは、左記のコリ ン・クックまたは加藤 洋光までご連絡ください。 2 米政府、対日 LNG 輸出拡大承認の見込み | July 2012 ©2012 Baker & McKenzie. 東京青山・青木・狛法律事務所 ベーカー&マッケンジー外国法事務弁護士事務所(外国法共同事業)は、スイス法上の組織体であるベーカー&マッケンジー インターナショナルのメンバー ファームです。専門的知識に基づくサービスを提供する組織体において共通して使用されている用語例に従い、「パートナー」とは、法律事務所におけるパートナーである者またはこれと同等の者を指しま す。同じく、「オフィス」とは、かかるいずれかの法律事務所のオフィスを指します。
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