小次郎講師のトレーダーズバイブル第 75 回 第 11 部 投資リテラシー

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小次郎講師のトレーダーズバイブル第 75 回
第 11 部
投資リテラシーについて その 8
「中央銀行 2」
皆さん、こんにちは、小次郎講師です。
こんにちは。助手のムサシです。
中央銀行について解説しているところ。日銀黒田総裁、ECB ドラギ総
裁、FRB イエレン議長、この 3 人は覚えておかなければいけない。
よく名前がメディアに出てきますね。世界経済を動かす実力者 3 人なんです
ね。
前回も説明したが中央銀行は政府と独立した機関。その代表者というこ
とはある意味大統領や首相と同じくらい影響力があると思っていい。
そうなんですね。
【1、 日銀総裁黒田東彦】
まずは、日銀総裁黒田東彦。「東彦」と書いて「はるひこ」と読む。
「東」を「はる」と読むんですか、珍しいですね。
黒田さんは福岡の出身。福岡の太宰府天満宮は菅原道真が祭られて
いることで有名だね。その菅原道真の歌に「東風(こち)吹かばにほいお
こせよ梅の花、主(あるじ)なしとて春な忘れそ」というのがある。
そうなんですか。知りませんでした。
太宰府に左遷されたときに菅原道真が庭の梅の花に別れを告げた歌
だ。「梅の花よ、主人がいなくなっても春を忘れてはいけないよ。東風が
吹いたら梅の香りを私の元に届けておくれ」というような意味だ。その梅
が主人を慕って太宰府まで飛んでいったという伝説もある。太宰府には
今でもその梅が「飛び梅」として存在するのだよ。
す、すごい。
ということで、福岡では東風=春という連想は常識。だから「東彦」と書い
て「はるひこ」と読んでも何の不思議もない。
博学恐れ入りました。
そして、福岡の黒田氏と言えば名門も名門。元々福岡は黒田藩。つまり
黒田総裁の先祖は豊臣秀吉の軍師だった黒田官兵衛ということにな
る。黒田総裁はよく策士と言われるが、家柄からすれば当たりまえの話。
なるほど、黒田官兵衛の子孫だったんですか。
ちなみに、金融担当大臣の麻生太郎氏も福岡県出身で黒田家の親戚
に当たるそうだ。つまり、日本の金融行政は現在、黒田官兵衛の子孫に
支配されているとも言える。
凄い話だ。
黒田さんは、東大を出て大蔵省に入省したが、その後、国際金融畑を
歩み、ミスター円と言われた榊原英資氏の後任として財務官となった。と
いうことは為替に関しては昔から専門だったと言える。
なるほど、為替行政のプロ中のプロだったんですね。
そして黒田さんはリフレ政策の代表的人物でリフレ派と言われる。
リフレ政策とは?
デフレ経済を正常化するために適度なインフレを起こそうという政策。日
銀はよく物価の番人と呼ばれるが、物価の番人の一番の仕事はインフ
レを起こさないこと。ということでかつての日銀の政策でインフレを人為
的に起こすなど考えられなかった。黒田さんは大蔵官僚時代によく日銀
と喧嘩をしていたそうだ。その喧嘩相手だった日銀の総裁に黒田氏が
なったというのも劇的な話。アベノミクスを推進したい安倍さんと考え方
が近く、乞われて日銀総裁に抜擢された。
なるほど。
退任した白川総裁の後を継いで第 31 代日本銀行総裁となった黒田さ
んは、前任者とあまりに政策が違うため、「日銀は白から黒くらい変化し
た」と言われた。
上手い。座布団 1 枚。
頭が良く、切れ者の黒田総裁は、長く通貨行政を担当してきた経験か
ら、為替はサプライズで動くということを知っていた。どんなに凄い政策
でも、市場に読まれてしまえば、織り込み済みということで市場は反応し
ない。市場が想像もしない政策を、市場が想像もしない時期にやって、
ショックで為替を思い通り動かすというのが黒田さんの手法。そのサプラ
イズ手法は破壊力の大きさからバズーカ砲に例えられ、黒田バズーカと
呼ばれた。
すごいネーミングですよ。黒田バズーカなんて。
策士だよね。自分の政策を「異次元規模」と説明した。それ以来、黒田
総裁の金融政策は「異次元緩和」と呼ばれるようになった。
バズーカもいっぱい撃ちましたよね。
2013 年 3 月 20 日に日銀総裁になるや否や、4 月 4 日に「インフレ目標
2%」を標榜して、マネタリーベースを 2 年で 2 倍という大胆な政策を打ち
出した。それがバズーカの始まり。株価は 12000 円から 1 ヶ月あまりで
16000 円まで跳ね上がった。
出だし好調。
その株価が上げ止まり、反落のムードが出てきた 2014 年の 10 月、さら
に大胆な金融緩和政策を発表。マネタリーベースを年 80 兆円に拡大。
長期国債の買い入れを 30 兆円増やし、ETF の買い入れを 3 倍にする
などという大胆なもの。しかもその発表を GPIF が株式運用比率を大幅
に引き上げると決定したのと同時にするなどという念の入れよう。
さすが、策士。
これがバズーカ2。この 2 回のバズーカは大成功で、黒田総裁の株は大
きく上がり、2014 年度の「セントラルバンカー・オブ・ザ・イヤー」を受賞し
た。
つまり世界の中央銀行総裁の中でナンバー1だと。
そういう評価だね。黒田さんのおかげで日本の株が暴騰したのだから。
ここまでが黒田総裁が我が世の春を楽しんだ時代。おごれる者は久し
からずという運命をここからたどる。
平家物語みたいだ。
2015 年末、黒田さんらしくない中途半端な金融緩和から株安のきっか
けを作ってしまった。2016 年はそのため、暴落からスタートした。その汚
名を挽回するために発動した黒田バズーカ3が 2016 年 1 月末のマイナ
ス金利導入。
あれは衝撃的でしたね。日本では初のマイナス金利でしたからね。
昨年末にアメリカは金利を引き上げた。日本ではマイナス金利導入。ど
う考えても円安ドル高になるはずだった。
お金は金利が高い方に流れていきますからね。
確かに発表直後は瞬間円安となったが、黒田さんの予想に反して、あっ
という間に円高に戻り、逆にその後はマイナス金利の政策をあざ笑うか
のように円高が進行し、株が下落した。
。
黒田さんが神通力を失い、アベノミクスが失敗に終わったということを象徴し
た出来事でしたね。
そして、2016 年 4 月末の日銀政策決定会合。事前に大幅な金融緩和
が打ち出されるという内部情報もあり、期待されていたが実際には何も
変化はなかった。そのため、期待外れでまたもや大幅円高・株安となっ
てしまった。
残念です。
つまり、黒田さんは誰もやらないと思っているときにやり、みんながやる
だろうというときにはやらないサプライズ型。今度いつバズーカを撃つか
と言えば、誰もやるとは思わない時期ということになる。
それを予想するのは難しいですね。
しかし、黒田さんは「セントラルバンカー・オブ・ザ・イヤー」を受賞したほ
どの人物。プライドも高く、このまま汚名を受けたまま終わる人物ではな
い。ということは、予想も付かない奇策を今考えていると思う。
黒田官兵衛の子孫ですからね。
ということで次の手がいつどんな形で出てくるか楽しみだが、その予想を
してもしょうがない。予想をすると黒田さんはへそ曲がりだから逆にやら
なくなるのでね。
なるほど、難しい性格だ。
ちなみに趣味は歌舞伎鑑賞。
それで見得を切るのが得意なんだ。
【2、 ECB 議長 マリオ・ドラギ】
欧州中央銀行の第 3 代総裁に任命されたのはイタリア人マリオ・ドラギ
氏。
イタリア人なんですね?ドイツ人かと思った。
ヨーロッパを牛耳っているのは今やドイツだが、ECB(欧州中央銀行)の
トップは何故かイタリア人。このドラギ氏、苦労人でね。若い頃両親を失
い、奨学金で名門マサチューセッツ工科大学に行った。
マサチューセッツ工科大学と言えば名門中の名門ですね。でもアメリカじゃ
ないですか。イタリアかアメリカまで奨学金で行ったんですか。
凄いだろ。そこで経済博士号を取り、世界銀行のエグゼクティブ・ディレク
ターまで上り詰めた。その頃イタリアは経済危機に陥り大変だった。ドラギ
氏はイタリアの財務局長に迎えられ、大胆な民営化でその危機を救った。
すごい。英雄ですね。
イタリアでは今でもドラギ氏のことをスーパーマリオと呼んでいる。
スーパーマリオ!?それは凄い。
その後、ゴールドマンサックス副会長、イタリア銀行総裁を経て、2011 年
11 月より ECB の総裁となった。ドラギ氏の手法は、黒田氏とは逆。マー
ケットにどんどん情報を出し、マーケットに最大限に期待をさせるという
手法。口先介入というのと近いが、ドラギ氏の場合はスケールが違い、
みんながドラギ氏の手腕を知っているだけに、今や世界の景気や為替
が一番動くのはドラギ氏の発言によると言われる。ドラギマジックという言
葉が生まれたほどだ。
マジックですか。
あまりに説明が上手く、マーケットに期待をさせすぎるので、結果として
実際の発表時には期待はずれとなるケースもしばしばあるが、ユーロの
リーダーであり発言権の強いドイツがいろいろと口出しをしてくる中で、
中立的な政策を打ち出す能力は高く評価されている。今世界でもっとも
マーケットを動かす人物であることは間違いない。ということで、ECB の
理事会の日程は特に頭に入れておかなければいけない。
なるほど。
ちなみに趣味は山登り。
【3、 FRB 議長 ジャネット・イエレン】
アメリカの中央銀行の代表でありながら、いまいち地味なのがジャネッ
ト・イエレンさん。初の女性議長という名誉を担いながら、優等生で慎重
派、市場との対話を重視するタイプで、逆に言うと実行力に欠ける。金
利を上げる上げると言い続けながら、今まで僅かに 1 回しか上げてな
い。
でも初の女性議長というのは凄いですね。
ニューヨーク生まれだがユダヤ人。ユダヤ人というのはやっぱり経済や
金融に強い。ノーベル経済学賞受賞者の 40%がユダヤ系だと言う。ち
なみに日本人のノーベル経済学賞受賞者は過去 0 人。
凄い差だ。
イエレンさんのご主人もユダヤ人でノーベル経済学賞を受賞している。
すごい夫婦ですね。ご主人がノーベル経済学賞、奥さんが FRB 議長なん
て。
この二人のラブロマンスは有名でね。二人がまだ無名のアナリストだっ
たころ、FRB でバイトをしていたそうだ。その FRB のカフェテラスで出会
って双方一目惚れだったという。
素敵ですね。
その当時、二人とも不遇でね。お互い出世コースから外れていた。当時
二人はお互いの才能を認め合い、その才能を理解してくれるのは二人
だけだと嘆いていたそうだ。その二人が今や世界を動かす二人となって
いる。やっぱりアメリカはスケールが大きいね。
いろいろな意味でうらやましいです。
イエレンさんの趣味は料理。世界各国の民族料理を作るのが得意だそ
うだ。仕事も忙しいが良妻賢母、家庭も大事にする素敵な女性のよう
だ。
いやあ惚れますね。
ということで女性としては素敵だが、FRB 議長としてはまだ実力を発揮し
ていない。世界経済が不安定な中、アメリカの果たす役割は大きいのだ
が、なにしろ慎重派だ。今年 4 回やると言われていた金利の引き上げ
も、もう今の段階で 1 回出来るかどうかという状態になっている。共和党
の大統領候補トランプ氏は大統領に就任したら、イエレンさんを変えると
言っている。彼女の持つ実力を発揮出来るチャンスがこれから果たして
あるのか、今のところわからない。
頑張れイエレン!
このように世界を動かす 3 人の中央銀行の代表者の性格は大きく違う。
そしてその代表者の性格がその決定会合の結果に大きく関わってくる。
なるほど。サプライズ型の黒田さん、花火打ち上げ型のドラギさん、石橋を叩
いても渡らないイエレンさんという感じですね。
しばらくはこの 3 人の発言や動向から目が離せない。要注目だ。というこ
とで本日はここまで。
世界経済を動かす中央銀行の秘密が少しわかったような気がします。ありが
とうございます。