いがいと知らない? 飲み水の素顔

かながわサイエンスサマー
いがいと知らない?
飲み水の素顔
実習の手引き
神奈川県衛生研究所
2008 年 8 月 20 日
◎実習にあたっての注意
・わからないことは質問すること。
・説明が終わってから器具や薬品などにさわること。
・器具を倒したり、ぶつけたりしないようにていねいに扱うこと。ガラス器具は壊れると
危険なので注意して扱うこと。
・薬品類はこぼしたり、目に入れたり、手につけたりしないように注意すること。
・廃液、ゴミは指示された場所に捨てること。
・困ったときは職員に声をかけ、指示に従うこと。
◎準備
・材料:衛生研究所の水道水、各種ミネラルウォーター、各自が持参した飲料水
・メスシリンダー(50mL)
・メスフラスコ(50 mL、20mL)
・三角フラスコ(100 mL)
・ビュレット
・デジタルピペッター(1mL、二人に 1 本)
・ビーカー(100 mL、一人4本程度)
・超純水(洗浄びん入り、二人に1本)
・EDTA 溶液(100mL 共栓三角フラスコ入り)
・ろうと
・共栓三角フラスコ(100mL)
・パックテスト(総硬度)
・パックテスト比色表(二人に1枚)
・湯飲み茶碗
以下は全員共通で、あるいは必要に応じて使用します。
・アンモニア緩衝液(分注器入り:全員共通で使用します)
・EBT 指示薬(滴びん入り:全員共通で使用します)
・メスフラスコ各種(必要に応じて使用します)
-1-
1.硬度を調べる
表1 WHO(世界保健機関)による軟水・硬水の目安
1)硬度とは?
区 分
硬 度
水に含まれるカルシウム(Ca)
やマグネシウム(Mg)などの量を
軟 水
0~60mg/L
これに相当する炭酸カルシウム
中程度の軟水
60~120mg/L
(CaCO3)に換算して数値で表し
硬 水
120~180mg/L
たものです。
非常な硬水
180mg/L以上
硬度が高いとせっけんの泡立
ちが悪くなることから、硬度の水道水質基準は 300mg/L(水 1 リットル中に炭酸カルシウ
ムとして 300mg)以下となっています。
硬度が低い水は、あっさりとして癖がなく、逆に硬度が高い水は、こくがあり癖のある
味となります。日本では、おいしさの面から硬度の目標値 10~100mg/L が設定されていま
す。
2)地域による硬度の違い
水道水の硬度は、水源の種類に大きく影響され、一般的に地下水の方が河川水などに比
べ、高くなる傾向があります。
欧米のように石灰質の地域を長い時間かけて通ってくる水の硬度は高く、日本のように地
中での滞留時間や河川延長が短い場合、硬度は低めになります。
3)硬度と料理の関連
水に含まれるカルシウム・マグネシウムの作用により、料理の味に影響が出ると言われ
ており、和風料理には軟水が、シチューなどの洋風料理には硬水が適していると言われて
います【表2】。
表2 料理などに合う硬度
昆布などの和風だし
軟水だと昆布表面のグルタミン酸などを溶解し、うまみ成分を引き出す
日本茶・紅茶
軟水でいれると苦味や渋みの成分であるタンニンを引き出し、風味がはっきりする
炊飯
軟水で炊くとお米がやわらかく炊き上がる
軟
水
ビーフシチューなど
硬
の肉の煮物
硬水で煮込むと肉の臭みがやわらぎ、臭みの元である灰汁(アク)がよく出る
水
ミネラル分の補給
運動の後のミネラル補給に適している
(東京都水道局 HP より抜粋)
-2-
A パックテストで硬度を調べる
1.専用カップを検水で共洗いした後、カップの線まで検水をとる。
2.パックテスト(総硬度用)のピンを抜き、穴の部分を上にしてパックテストを指でつ
ぶして空気を追い出す。そのまま穴の部分をカップにつけて力をゆるめて水をパック
テストの中に吸い上げる。
3.30 秒経過後、標準比色列と色を比べる。一番近い色の値が硬度となる。硬度が比色列
の最高値(200mg/L)を超える場合は、次のようにして 20 倍に希釈した後、もう一度測
定を行い、得られた値を 20 倍して硬度を算出する。
-3-
20 倍希釈の方法
デジタルピペッターを用いて検水 1mL を 20mL メスフラスコにとる。洗浄びんを用いて超純水
をメスフラスコの標線まで加える。メスフラスコに栓をしてよく振り混ぜる。メスフラスコの中
身をビーカーにあけた後、パックテスト専用カップに入れる。
パックテスト専用カップは超純水で洗い、希釈した溶液を一度入れて捨てた後、再度希釈溶液を
線まで入れて、測定に用いる。
B 滴定で硬度を調べる
1.検水 50mL をメスシリンダーを用いて三角フラスコにとる。パックテストで測定した
結果、硬度が高かった水については、硬度 100mg/L 程度以下になるように超純水で希
釈する(例えば、硬度 300mg/L の水は、10mL を 50mL メスフラスコにとり超純水で
50mL にすることにより 60mg/L となる。コントレックスはデジタルピペッターを用
いて 2mL を 50mL メスフラスコにとり、超純水で 50mL とする。希釈の仕方がわか
らなかったら職員に聞いてください。)。
-4-
2.三角フラスコにアンモニア緩衝液 1mL を分注器を用いて加える。
3.EBT 指示薬3~4滴程度を溶液に加える。
4.ビュレットに EDTA 溶液を入れる。ビュレットの目盛りを読み、値を記録した後、三
角フラスコ中の液の色が青色になるまで、ビュレット中の EDTA 溶液を加える。
-5-
滴定前
滴定後
フラスコを振り混ぜながら
EDTAを滴下
液面の一番凹んだ部分の目盛り
を読む。この場合、2.00mL。
5.滴定後のビュレットの目盛りを読んで、加えた EDTA 溶液の量(a mL)を算出し、次式
により硬度を計算する。
硬度=a×1000/50
(検水を希釈した場合は、希釈の倍率をかけた値が元の水の硬度となる)
6.測定終了後は三角フラスコの中身を所定の場所に捨て、フラスコを超純水で洗い、次
の測定に用いる。
C パックテストや滴定で得られた結果をイオンクロマトグラフで得られた結
果と比べてみよう
-6-
硬度は水中のカルシウムとマグネシウムの濃度から下記のような計算で求めることもでき
ます。
硬度(mg/L)=(カルシウム濃度(mg/L)×2.497)+(マグネシウム濃度(mg/L)×4.118)
イオンクロマトグラフを用いて測定した南アルプス天然水、衛生研究所の水道水、コント
レックスのカルシウム濃度、マグネシウム濃度は以下のとおりです。
これらの濃度から硬度を計算して、パックテストや滴定で得られた硬度の値と比較してみ
よう。
南アルプス天然水
080814 #7
18.0 μS
南アルプス
ECD_1
1 - Na - 3.933
15.0
カルシウム:9.39mg/L
10.0
マグネシウム:1.80mg/L
4 - Ca - 10.973
5.0
3 - Mg - 8.810
2 - 5.610
-2.0
0.0
2.0
4.0
6.0
8.0
10.0
分
15.0
12.0
衛生研究所水道水
080814 #8
20.0 μS
衛研水道水
ECD_1
1 - Na - 3.930
15.0
4 - Ca - 10.920
カルシウム:17.4mg/L
10.0
3 - Mg - 8.790
マグネシウム:5.02mg/L
5.0
2 - 5.607
-2.0
0.0
2.0
4.0
6.0
8.0
10.0
分
15.0
12.0
コントレックス
080814 #10
20.0 μS
コントレックス*20
ECD_1
4 - Ca - 10.887
15.0
カルシウム:477mg/L
10.0
マグネシウム:81.2mg/L
3 - Mg - 8.797
5.0
1 - Na - 3.923
2 - 5.607
-2.0
0.0
2.0
4.0
6.0
5 - 12.793
8.0
10.0
12.0
分
15.0
-7-
D 水の味を比べてみよう
硬度の非常に高い水(コントレックス)と低い水(南アルプス天然水)を口に含んでみて
味を比較する。
(普段飲み慣れていない水を飲み込むと下痢をすることがあります。味見した水は飲み込
まず、流しに出しましょう。)
E 紅茶を入れて色を比べてみよう
硬度の非常に高い水(コントレックス)、硬度のある程度高い水(エビアン)
、硬度の低い
水(南アルプス天然水)を同じ量沸かし、同じ時間紅茶のティーバッグを入れて紅茶を作
る。できた紅茶の色を比較する。
F 石鹸の泡立ちを比べてみよう
硬度の高い水(コントレックス)
、低い水(南アルプス天然水)
、水道水を約 40mL 共栓三
角フラスコ(100mL)にとり、ハンドソープを一押しずつ加える。栓をしてフラスコを激し
く振り、泡立ち方を比較する。
-8-
◎実験結果
検体名(南アルプス天然水)
A:パックテストで調べた硬度
mg/L
B:滴定で調べた硬度
滴定終了時のビュレッ
トの目盛り
滴定開始時のビュレッ
トの目盛り
硬度
(
-
) × 20
=
mg/L
(
-
) × 20
=
mg/L
C:イオンクロマトグラフで調べたカルシウム・マグネシウム濃度から
算出した硬度
カルシウム濃度
マグネシウム濃度
(
×
2.497
)+(
×4.118
硬度
=
mg/L
)
◎実験結果
検体名(衛生研究所の水道水)
A:パックテストで調べた硬度
mg/L
B:滴定で調べた硬度
滴定終了時のビュレッ
トの目盛り
滴定開始時のビュレッ
トの目盛り
硬度
(
-
) × 20
=
mg/L
(
-
) × 20
=
mg/L
C:イオンクロマトグラフで調べたカルシウム・マグネシウム濃度から
算出した硬度
カルシウム濃度
マグネシウム濃度
(
×
2.497
)+(
×4.118
硬度
=
mg/L
)
◎実験結果
検体名(コントレックス)
A:パックテストで調べた硬度
mg/L
そのまま測定したとき
mg/L × 20=
20倍希釈したとき
mg/L
B:滴定で調べた硬度
滴定終了時のビュレッ
トの目盛り
(
滴定開始時のビュレッ
トの目盛り
) × 20
-
硬度
希釈倍率
×
(
=
mg/L
) × 20
-
硬度
希釈倍率
×
=
mg/L
C:イオンクロマトグラフで調べたカルシウム・マグネシウム濃度から
算出した硬度
カルシウム濃度
マグネシウム濃度
(
×
2.497
)+(
×4.118
硬度
=
mg/L
)
◎実験結果
検体名(普段飲んでいる水: )
A:パックテストで調べた硬度
(そのまま測定した結果)
mg/L
(希釈倍率)
(希釈したとき)
mg/L×
=
mg/L
B:滴定で調べた硬度
滴定終了時のビュレッ
トの目盛り
(
滴定開始時のビュレット
の目盛り
) × 20
-
硬度
希釈倍率
×
(
=
) × 20
-
硬度
希釈倍率
×
mg/L
=
mg/L
硬度の低い水
(南アルプス天然水)
硬度の高い水
(エビアン)
硬度の非常に高い水
(コントレックス)
309
硬度
味
紅茶の色
硬度の低い水
(南アルプス天然水)
石鹸の
泡立ち
衛生研究所の水道水
(硬度: )
硬度の非常に高い水
(コントレックス)