ダウンロード - 三菱総合研究所 大学経営・イノベーション政策

農林水産省 平成23年度新事業創出人材育成事業
科目2 経営・マーケティング基本論
経営管理パート
(3)経営理念/組織・経営者論
開発担当者 :
高知工科大学 教授 平野 真
株式会社三菱総合研究所
農林水産省 平成23年度新事業創出人材育成事業
概要
1.経営理念とは?
2.経営学から見たリーダー像
3.リーダーの行動パターンとその変化
4.地域ビジネス・農業に見るリーダーの役割
1
農林水産省 平成23年度新事業創出人材育成事業
経営理念とは?
企業の経営に対する
普遍性を持つ信念
変わらない価値観や
判断基準となる
理念
環境変動を考慮にいれた
あるべき姿
(概ね5~10年スパン)
ビジョン
(未来図、目
標)
全社戦略
あるべき姿を実現する施策群
(概ね1~3年スパン)
事業戦略
事業戦略
事業戦略
実行計画
実行計画
実行計画
2
農林水産省 平成23年度新事業創出人材育成事業
経営理念とは?
例)トヨタ自動車株式会社
出典)トヨタ自動車ホームページ
http://www.toyota.co.jp/jp/environmental_rep/03/rinen.html
3
農林水産省 平成23年度新事業創出人材育成事業
経営理念とは?
出典)トヨタ自動車ホームページ
http://www.toyota.co.jp/jp/environmental_rep/03/rinen.html
4
農林水産省 平成23年度新事業創出人材育成事業
経営理念とは?
企業の経営に対する普遍性を持つ信念
変わらない価値観や判断基準となる
内部・外部の利害関係者に示されるとともに、従業員への浸透を通じ
て企業文化の形成に深く関わる
5
農林水産省 平成23年度新事業創出人材育成事業
理念にはそれ自体に光るもの
(個性と重みを伴う優れた考え方)が必要
誰もが言っている使い古された言葉や抽象的な言葉には中
身が伴わない
人類の平和のため、社会の進歩のため、顧客第一主義、従業員を大
切にする、、、、
言葉への緊張感で、内容の重さがわかる。
考え抜かれ極められた「固有の表現」は、具体性のある提案に結び付
く。
近江商人の「三方よし」の精神
西武百貨店「おいしい生活」
6
農林水産省 平成23年度新事業創出人材育成事業
経営理念とブランド
地球(環境)保護を中心に考えると、
限界集落とは、もっとも効率のよい(尐人数での)地球保護活動とみな
すこともできる。
最低限の人数で、最低限の費用で、地球を壊すことなく、自然と人間
をうまく調和させる仕組みと考える。
务等感ではなく、責任感から、心を奮い立たせる見方ができないか?
優れた経営理念は、人々の心を奮いたたせてくれる。
同時に、多くの人の信頼を醸成し、支持を増やしていける。
長い時間と努力をかけてようやく蓄積された信頼も、一瞬の不祥事で
崩壊する「ブランド性」は、経営理念についても同じである。
7
農林水産省 平成23年度新事業創出人材育成事業
経営理念とは、あらゆる戦略を貫く柱である
流通戦略
生産戦略
開発戦略
営業・販売戦略
一環した思想
人事・組織戦略
財務戦略
一環した思想が、各要素のシナジー効果を生み出す
8
農林水産省 平成23年度新事業創出人材育成事業
事例:めがね21(広島のめがね販売チェーン)
従業員にノルマはない。
お客を家族と思って接する。
儲けようと思わない。
すべて定価の4割引き。
売上予測はあるが、売上目標がない。
給料はすべて公開。
社長は交代制。
会社に内部留保がない。
そのかわり従業員が会社に融資している。
従業員の独立を奨励。
社内で、技術やノウハウを共有し教え合う。
戦略を貫く思想
一環した考え方
戦略の
シナジー効果
経営理念:会社に利益を残さず、値下げで還元する。
社是:21は社員の幸福を大切にします。
社員は皆様の信頼を大切にします。
9
農林水産省 平成23年度新事業創出人材育成事業
農業における経営理念とは?
農作物を作ることなのか、「食」の提供者なのか?
「生産者の思い入れ」と「消費者の思い」
現在の生産者は、食の消費の2割にしかかかわっていない?
消費者への追随と、消費者への働きかけ(啓発)
どの範囲まで責任を持つのか、流通、小売、加工、観光、地域ブラ
ンド、村・町・郡・県・域・国・圏・・・・、日本の食、世界の食、、、、、
何が本当の目的なのか、地元の高齢者同士の交流、本業の他の
楽しみ、生きがい、生産することの楽しさ、小遣いかせぎ、生活費の
獲得、年金以外の副収入、事業経営、事業の拡大、ロハス的生き方、
産業としての確立、地域経済の振興、共同体の活性化、、、、、、
無意識に進めている事業を一度振り返り足場を確認することも必要
10
農林水産省 平成23年度新事業創出人材育成事業
経営理念に完成はない?
実は、どの事業体も初めから確固とした理念が完成されていたわ
けではない。
基本的な姿勢はあるにしても、実際の事業活動をかいくぐることで、
経営理念は磨かれ、より完成度を増していく。
理念は絶えず磨かれ、より本質をついた言葉へと昇華されていく。
経営理念に完成ということはない。理念を磨く努力を怠ってはなら
ない。
理念
戦略
実践
反省
理念
戦略
実践
11
農林水産省 平成23年度新事業創出人材育成事業
経営理念とは
グループディスカッション
・身の回りで経営理念がうまく機能している事例
はありますか?
・それはどのように機能していますか?
・グループで話し合ってみてください
12
農林水産省 平成23年度新事業創出人材育成事業
概要
1.経営理念とは?
2.経営学から見たリーダー像
3.リーダーの行動パターンとその変化
4.地域ビジネス・農業に見るリーダーの役割
13
農林水産省 平成23年度新事業創出人材育成事業
経営者(リーダー)とは?
組織の中心に立つリーダーとしての経営者は、経営理念の具
現者である。
戦略や戦法が理念から導かれるように、経営者は一貫した理
念・思想によって、事業・組織のあらゆる構成・運営を指揮する
責任がある。
組織の中での求心力は、理念具現化の条件である。
リーダーの一挙手一投足にメンバーは注目している。
では、リーダーとはどのように、その責務を果たしていけばい
いのだろうか?
リーダーに求められるものとは何だろうか?
14
農林水産省 平成23年度新事業創出人材育成事業
経営学における思想の系譜
経営工学、管理学、
組織論
経営学
行動科学
テイラー、メイヨー、フォード、
大野耐一、デミング
ファヨール、バーナード、サイモン、
ドラッガー、 チャンドラー、
マズロー、マクレガー、オオウチ、
ヴルーム、シャイン、フィードラー
アンゾフ、コトラー、ポーター、大前研一、
戦略論
クリステンセン、
ハメル&プラハード、
イノベーション論
野中郁次郎、
15
農林水産省 平成23年度新事業創出人材育成事業
様々なリーダー像
経営工学、管理学、
組織論
経営学
行動科学
生産行動を組織化し、運営
管理していくリーダー像
チームをまとめ、組織の目標に向けて統合・
指導していくリーダー像
メンバーを動機付けし、メンバーのキャリヤ
を育てコーチしていくリーダー像
企業の戦略を立案・実行し、協力と競争を
戦略論
使い分けて実行していくリーダー像
知識を有し、イノベーションを
イノベーション論
起こしていくリーダー像
16
農林水産省 平成23年度新事業創出人材育成事業
リーダーシップの考え方
リーダーシップの内容は、その視点によって様々なものが
指摘されており、どれもが真実でありうる。
普遍的なリーダーシップがあるのではなく、リーダーシップ
は様々なタイプに分類できる。着目している側面、メンバー
の特徴(組織の内部環境)、置かれた外部環境などの条件
によって、適切なタイプが変わってくる。
どんなリーダーとなるべきか、各企業、各時機、各環境条
件によって異なるので、最後の判断(選択)は自分でしてい
かねばならない。
その時の状況に必要なリーダー像(行動パターン)に自分
を近付けていく能力こそ、真のリーダーへの能力である。
17
農林水産省 平成23年度新事業創出人材育成事業
概要
1.経営理念とは?
2.経営学から見たリーダー像
3.リーダーの行動パターンとその変化
4.地域ビジネス・農業に見るリーダーの役割
18
農林水産省 平成23年度新事業創出人材育成事業
リーダーシップとは
リーダーシップ(人と組織を動かす能力=変革の推進)
1、長期的なビジョンの提示
2、ビジョンの伝達によるメンバーの統合
3、メンバーの動機づけ
マネジメント(管理する能力=効率的な組織運営)
1、短期的な計画や予算の立案
2、組織構造の設計と人員配置
3、予算や実績管理を行い、問題解決を図る
19
農林水産省 平成23年度新事業創出人材育成事業
資質論から行動論へ
あらゆる状況に有効なリーダーの特性(資質)はない。
従って、優れたリーダー特性とは、人間の個人的な資質ではなく、ある状況に
おける行動パターンのことを指す。
行動パターンである以上、それは学習によって、すべての人が身につけるこ
とが可能である。
リーダーの行動特性は、1種類ではなく、いくつかの対立的なカテゴリーに分
類できる。
どのような相手(メンバー、組織の内部環境)に対してのリーダーシップか、
どのような外部環境下におけるリーダーシップか、
どのような局面・タイミングでのリーダーシップか、
どのような要素が重要と考えるか、
などによって、その行動パターンの最適性がきまる。
20
農林水産省 平成23年度新事業創出人材育成事業
リーダーシップの特性と適合性
事業や組織の使命やタイミングから考えてみて、
リーダーの特性は求められる特性にフィットしてるだろうか?
事業の障害を乗り越える
創造力、技術力
組織の目的や戦
略を明確にする
指導力、判断力
組織メンバーの動機付
けを行いまとめあげる
支援力、教育力
組織をうまく運営する
統率力、管理能力
21
農林水産省 平成23年度新事業創出人材育成事業
リーダーの目的と特性・分析例
(内部環境・外部環境・目的から求められるもの)
メンバーは論理性を重視する
長期的視野
で「過程」を
重視するか
後押し型
ひっぱり型
ともだち型
親分型
短期的視野
で「結果」を
重視するか
メンバーは人情を重視する
22
農林水産省 平成23年度新事業創出人材育成事業
事業や組織の成長と求められるリーダーシップ
開拓期 成長期
(黎明期)
成熟期
衰退期
事業規模
時間
23
農林水産省 平成23年度新事業創出人材育成事業
事業や組織の成長と求められるリーダーシップ
開拓期:革新リーダー?
価値創造型?万能型?楽天的?エネルギッシュ?
必要なメンバーの特性は?
成長期:組織リーダー?
目標達成型?組織統制力?専門力?
必要なメンバーの特性は?
成熟期:運営リーダー?
戦略実行型?管理者型?計算に強い?慎重派?
必要なメンバーの特性は?
衰退期:変革リーダー?
組織変革型?はちゃめちゃ型?個性派?政治力?
必要なメンバーの特性は?
組織が存続するためには、リーダーは変わらなければならない
人が変わるか?人を変えるか?
リーダーだけでなく、組織のメンバーも変わらないといけない
24
農林水産省 平成23年度新事業創出人材育成事業
参考:リーダーとしての信長・秀吉・家康
信長(開拓期リーダー):
旧来のものを破壊し、新たな体制を創造する改革者、絶対的な君臨
秀吉(成長期リーダー):
巧みな運営によって、人情の機微を利用して組織を把握し、状況に対応して
処していく運用者
家康(成熟期リーダー):
巨大な組織を管理し、安定と継続を生み出すシステムを構築する管理者
龍馬(衰退期リーダー):
従来の組織のマンネリ化を打破する改革者、改革勢力の連携を構築
25
農林水産省 平成23年度新事業創出人材育成事業
リーダーシップの特性と変化
事業や組織の進化の時機によって、求められる特性
も変化していく。あなたはいまどこにいるのか?
事業の障害を乗り越える
創造力、技術力
組織の目的や戦
略を明確にする
指導力、判断力
組織メンバーの動機付
けを行いまとめあげる
支援力、教育力
組織をうまく運営する
統率力、管理能力
26
農林水産省 平成23年度新事業創出人材育成事業
リーダーシップ
演習
①あなたの現状においてリーダーとしてのありたい像は?
発揮したいリーダーシップは?
②自分自身の現状は?
③ギャップは? 課題は?
④課題を解決するために何ができる?
27
農林水産省 平成23年度新事業創出人材育成事業
リーダーシップを伸ばす
機会をつくる
・普段と異なる内容仕事
・変化を起こす仕事
・責任の重い仕事
・いつもと異なる人との仕事
他
×
そこから学ぶ
コルブの経験学習モデル
経験
試行
経験学習の
サイクル
一般化
ルール
化
省察
■経験
自身が、具体的な経験をする。
■省察
自分自身の経験を多様な観点
から振り返る。
■概念化・ルール化
他の状況でも応用できるよう、
一般化、概念化する。
■試行
新しい状況下で実際に試す。
28
農林水産省 平成23年度新事業創出人材育成事業
リーダーシップとは覚悟である
リーダーは生まれつきリーダーなのではなく、つくられる
人はリーダーになるということを自分の意思で選択をする
ウォレン・ベニス 「こうしてリーダーはつくられる」
29
農林水産省 平成23年度新事業創出人材育成事業
概要
1.経営理念とは?
2.経営学から見たリーダー像
3.リーダーの行動パターンとその変化
4.地域ビジネス・農業に見るリーダーの役割
30
農林水産省 平成23年度新事業創出人材育成事業
なぜヒト(人材)なのか?
地域や事業の「持続的発展」のためには、宝くじで大金があ
たったような復興をしても無意味である
ビジネスは、絶えざる工夫と改良の積み重ねであり、絶えざ
る工夫を生み出せる人材なくして成功はありえない
工夫と努力を続けられる人材(特にリーダー)の有無が地域
の発展を決定づける
農業に関しても、従来の考え方から大きく踏み出し、マーケ
ティング力や経営的センスと知識に基づき新しい考え方、新
しい連携活動ができる人材が必須
人材育成こそ火急の課題である
行政と大学には人材育成という大任がある
31
農林水産省 平成23年度新事業創出人材育成事業
地域に求められる「知」のリーダーシップ
書物で手にいれることのできないマーケティングや事業経営の暗
黙知を吸収するためには、リーダー自らが他の組織や他の地域に
物理的に移動し、「知」の吸収と、伝達に努める必要がある。
(最前線で行動するリーダーシップ)
逆にいえば、他の組織や地域で過ごした人を、「知」のリーダーと
して迎える柔軟性と寛容さが必要。
外から来たリーダー、外から帰ったリーダー(留学や外部から戻っ
た2代目指導者など)に活躍してもらう。
(地域の現状からいうと後者が多い)
32
農林水産省 平成23年度新事業創出人材育成事業
「知」の伝達者としてのリーダー
形式知
グループAの個々人
グループBの個々人
暗黙知
暗黙知の移入には、リーダー自らが
暗黙知を持ってグループ間を移動する必要がある
33
農林水産省 平成23年度新事業創出人材育成事業
「知」のチームワーク
異業種・異分野を越えて、共通の価値観(郷土愛・同郷意識)
をベースに知識交換
専門分野は違うほど合算効果は大きい(多様性の強み)
なかよしクラブと共通の目的(ミッション)を持ったチームとのち
がい
日本の場合、従来の画一的チームワークから脱却し、ミッショ
ン型多様性チームワークへと向かう必要あり(教育が重要)
34
農林水産省 平成23年度新事業創出人材育成事業
事業の多面性と戦略
「知」の共有
産業論
技術論、科学論
マーケティング論
市場の視点
生産の視点
技術経営論
技術の視点
イノベーション論
組織の視点
政治学
オペレーション論
企業戦略論
経営の視点
企業経営論
財務の視点
組織論、人事論
会計学、財務論
経営学
経済学
哲学
心理学
金融工学
戦略
35
農林水産省 平成23年度新事業創出人材育成事業
「知」のネットワークの必要な時代
資源・資産中心の時代から技術・情報重視の時代へ、そして更
に人材・組織重視の時代へ
イノベーティブ(つまり自律的・挑戦的)な人材育成とミッション
(夢・モラル)共有が課題
地域ビジネスの核となる人材をどう確保するか?
(長期的には「教育」が最も重要)
現実に属人的に地域ビジネスの核になる地域密着型リーダー
を発掘し、「知」のネットワークへとつなげていく
共有ミッションの明確化(短期的な利益モデルを含む)
36
農林水産省 平成23年度新事業創出人材育成事業
参考図書
・今口忠政「組織の成長と衰退」白桃書房
・ウォレン・ベニス「リーダーになる」海と月社
・川喜田二郎「チームワーク」光文社
・コッター「リーダーシップ論」ダイヤモンド社
・嶋口充輝「マネジメントの世紀」東洋経済
・ソープ他「コーチングマニュアル」ディスカバー社
・バーナード「経営者の役割」ダイヤモンド社
・バダラッコ「静かなるリーダーシップ」翔泳社ドラッガー「チェンジリーダーの条件」ダイ
ヤモンド社
・マーカート他「グローバル・リーダーシップ」中央書院
・宮田矢太郎「経営学100年の思想」ダイヤモンド社
・ミンツバーグ「マネジャーの仕事」白桃書房
・吉田耕作「ジョイオブワーク」日経BP社
・渡辺峻他「マネジメントの学説と思想」ミネルヴァ書房
37
農林水産省 平成23年度新事業創出人材育成事業
本講義の内容
経営理念
– 経営理念とは?
– 経営理念があらゆる戦略・施策を貫く
リーダーシップ
– リーダーシップとは?
– 良いリーダーシップは置かれた状況によって異なる
– リーダーシップとは覚悟である
地域・農業ビジネスに見るリーダー
– 一つの形態として「知」のリーダーシップが求められる
38
農林水産省 新事業創出人材育成事業
教材利用条件
この教材は以下で公開されている、農林水産省「平成22~23年度新事業創出人材育成事業」で開発された成果を
利用しています。
http://www.6ji-biz.jp/kyozai/
「クリエイティブコモンズ・ライセンス 表示 - 非営利 - 継承 2.1」に従う限り、自由に利用・改変することができます。
http://creativecommons.org/licenses/by-nc-sa/2.1/jp/
(このページは削除しないで下さい)