付録:参考資料 - RAJ ラフティング協会

付録:参考資料
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国際的医学コンセンサスに従ったファーストエイド
●ファーストエイドの基本原則
ラフティング中の事故にはさまざまなものがある。ちょっとした擦り傷や切り傷から捻挫や骨折、
脱臼(とくに肩)、ハイパーサミアやハイポサミア、ハイパーベンチレーション、ショック症状、
重篤な場合は心配停止状態の場合もある。それらを手あてするのがファーストエイドなのだが、医
師が行う現場での初期治療は別にして、一般民間人レベルで行えるファーストエイドとは、そもそ
もいったいどういうことなのであろうか。
結論から言うと、その定義は「医師または公的救急隊に引き渡すまでの間、被害者の状態が今より
も悪化しないよう行う、一般人としてできうるケアの数々」となる。ファーストエイドと聞いてよ
く勘違いしがちなのが、治療しなければ、診断しなければと考えてしまうことだ。古来より、「生
兵法はケガの元」と言われるが、もとより、医師でも看護士(婦)でも救急救命士でもないわれわ
れ一般人が、被害者の状態を見て「これは○○だ」と診断し、「これはこう手術(または投薬)す
るんだ」などと判断しようとするのは間違いの元だ。われわれ一般人には、そんな知識もないし、
それを行う技術も、権限もない。
われわれにできることは、医師や救急隊に引き渡すまでの間、いかに被害者のコンディションを維
持、または改善してあげられるかということにある。たとえば、誰かがヒザをひどくひねったとし
よう。そういうとき、それが骨折なのか捻挫なのか靭帯切断なのかは、医療素人のわれわれには判
断がつきかねる。もちろん、学習することで多少の判断や予測は可能だが、診断はあくまでも医師
が行うものだ。われわれができることは、患部や傷を悪化させないように固定して、痛みを和らげ
つつ被害者の状態をいいコンディションに保ち、可能な限り迅速に安全な場所に移送し、救急隊ま
たは医療機関とアクセスしやすいようなセッティングを行うことだ。すなわちこれが、ファースト
エイドである。
●緊急医療の連鎖
下の図をご覧いただきたい。これは、トラブルが発生してから被害者が病院に運ばれていくまで
の経路を図式化したものだ。
事故発生!⇒バイスタンダー⇒救急車⇒病院
↓
ファーストエイド⇔119
われわれの立場は、患者の第一発見者であり、同時に当事者でもある。こいう立場の人間をバイス
タンダーというが、このバイスタンダーが救急隊を呼び、今度は救急隊が病院に運び、病院ではじ
めて被害者は高度な医療を受けることになる。これが救急医療の連鎖=メディカル・エマージェン
シー・チェーンである。
さらにリバーガイドであるわれわれは、単なるバイスタンダーという立場だけではなく、保護責任
や安全配慮義務が法的、社会通念的に課せられている立場である。すなわち、この救急医療の連鎖
の中において、ファーストエイドの実施者として、非常に高い社会的期待と、契約上の保護義務が
生じることに注目していただきたい。
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救急医療の連鎖を具体的に見てみよう
たとえば東京都の場合、一般的に、119番通報してから救急車が現場に到着するまでには平均5.5分
かかるという統計がある(97年度調べ)。これはあくまでも平均値、しかも都市部を中心としたそ
れであり、ラフティングエリアでは、これ以上に時間がかかることは容易に想像できる。この時間
は、緊急医療の世界では「空白の時間」とも呼ばれている。
救急隊が到着するまでの数分間、または数十分間の空白の時間、保護義務のあるリバーガイドとし
てその場にいた場合は、どうする? 「救急車を呼んだから役目終了」と、あとは見ているだけか、
それとも、出血しているなら止血を試みるか? 被害者の呼吸が止まっていたら? 人工呼吸してあ
げるか? それとも、ただうろたえつつ見て見ぬ振りをするか?
もしバイスタンダーであるリバーガイドが、救急隊到着までに適切な処置を被害者に施こさなけれ
ば、以後の医療に大いに悪影響を及ぼすばかりか、被害者の心象に大きな嫌悪感を残し、遺棄行為
と判断されれば、訴訟問題へと容易に発展するはずである。
●ファーストエイドのプライオリティー(優先順位)
ここで紹介するのは、ファーストエイドの基本的優先順位、つまりケアを施していく順番だ。仲間
から被害者が出た場合や、事故やトラブルに行き会った場合、この順番だけでも覚えておけば、ど
う言う風にアプローチすればいいのか、何から手をつければいいのかがクリアになるはずだ。
ちなみに、さまざまな機関で応急手当や救命手当、救助方法の講習やトレーニングが実施されてい
るが、いずれの講習でも、緊急の医療的ケアに関しては、教える手法や符牒は違っていても、教え
る内容は大差がない。というか、ほとんど同じだ。当たり前といえば当たり前だが、それらはみん
な、どれも世界的な医学コンセンサスに基づいてプログラミングされているからだ。
その順位(手順)を分かりやすくキーワードを使って図式化したものが、以下のものだ。
1:世界共通のファーストエイドの順位(プライオリティー)
D=DANGER 状況把握&危険を察知せよ!=セルフレスキュー
R=RESPONSE 意識レベルの確認→必要に応じて119番通報 、AED(自動体外除細動
器)の手配をする
------------------------------------------------------------------------A=AIRWAY 気道の開放・確保
B=BREATH 呼吸の確認→呼吸のサポート=人工呼吸
C=CIRCULATION循環の補助=胸部圧迫
( D=DEFIBRILLATION AEDによる除細動 )
------------------------------------------------------------------------B=BLEEDING 出血の有無の確認→止血
S=SHOCK ショック状態か否かの確認→ショックの管理
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2:プライオリティーの詳細
① D ANGER(状況把握・二次災害防止)
危険!というキーワード。これは、これから行おうとしていること、つまりファーストエイドを行うことで、自分自身が危険
な目にさらされはしないかを確認しましょうというステップ。たとえば、落石で怪我をしている人がいて、それをケアしに
行って自分も落石を受けてしまうとか、溺水している人を見て思わず飛び込み、自分も溺水してしまうというようなことを
避けるための段階だ。なんでもかんでも猪突猛進するのではなく、いったん止まって一呼吸置き、自分の安全をまず確
保してから被害者にアプローチする。つまり、ミイラ取りがミイラにならないよう、二次災害予防=セルフレスキューをま
ず考えましょうというステップだ。
② R ESPONSE(意識レベルの確認・意識の喚起)
安全を確認して被害者にアプローチしたら、次にまず被害者の意識レベルを確認する。意識レベルには、
① 正常な状態(声をかけると明確に反応し、起こったこと、自分の氏名・年齢などがきちんと返答できる)。
② 混乱している状態(反応は見せるが、会話が成り立たなかったり、極端躁または鬱状態、視点が定まら
ない状態になっている)。 ③ 眠っているようだが、声をかけると反応する。④声をかけても反応しないが、
痛みを与えると反応する。 ⑤ 声にも痛みにも反応しない(昏睡状態)。 といろいろあるが、いずれにせよ
「これは手におえないな」と思ったり、意識がはっきりしているようでも大怪我をしていたり骨折しているよう
な場合は、とにかく一刻も早く救急車を要請しよう。また、昏睡状態、心肺停止が疑われる場合は近隣施設
や装備品にあればAEDの要請も行う。そして、相手に意識があってもなくても、たとえ返事を返してこなくて
も積極的にコミュニケーションを図り、これから応急手当を試みることや救急車がまもなく到着することなど
を伝え、精神的に励ましてあげるべきである。この場合、もっとも避けるべきことは、状況を過少評価するこ
とだ。なまじな素人診断で判断してあとで深刻な事態になってしまっては取り返しがつかない。それは、場
合によっては遺棄行為にも発展し得る。過大評価で万全を尽くすべきである。
③ A IRWAY(気道の開放・確保)
意識がなかったり、意識レベルが極端に低い場合は、まず被害者の気道が常に確保されるようにしてあげよう。怪我
の有無に関わらず、頭部後屈あご先挙上で起動を開放する。自力呼吸をしていても、仰向けで倒れているような場合
は、意識レベルの低下とともに筋肉が弛緩し、舌根沈下で自分自身の気道をふさいでしまい、呼吸ができなくなる。意
識レベルが低い場合は、相手に反応があってもなくても必ず気道を確保して次のステップに進もう。
④ B REATH(呼吸の確認・呼吸の補助)
気道の確保ができたら、その状態を維持したまま、次は呼吸の確認だ。相手の胸の上下運動、呼吸音、吐息などを、
自分の視覚・聴覚・触覚のすべてを動員して確認する。そして、10秒以内に呼吸のサインが認められない場合、すぐ
に人工呼吸を行う。人工呼吸は、マウスツーマウスが一般的で確実な方法だが、直接、相手の体液や吐しゃ物、血液
などに触れる可能性があるので、感染予防と精神的な負担を減らすため、専用のマウスピースやポケットマウスなどを
使用する必要がある。人工呼吸は、まず2回(1回1秒程度)行い、相手の胸の隆起を確認する。
⑤ C IRCULATION(脈拍のチェック・胸部圧迫)
胸部圧迫を行って、強制的に血液を循環させ、脳に酸素を送り込む。この胸部圧迫と人工呼吸を合わせた
ものを「人工心肺蘇生法」または「CPR」と呼ぶが、成人の被害者に1名の救助者が施す場合は、2回の呼
吸サポートと 15 回の胸部圧迫を 30 回の胸部圧迫と 2 回の呼吸サポート(30:2)を組み合わせて1セットと
し、これを脈拍や呼吸が回復するか、救助者が動き出すまで、AED が装着されるまで、あるいは救急隊や
医師が到着するか、自分の体力がなくなって「もう限界だ」となるまで続ける。ただし、相手に脈拍がある場
合は、胸部圧迫は絶対に行ってはならない。
( ⑤´D EFIBRILLATION AED による除細動 )
AED(自動体外式除細動器)が使用可能であれば、AED 処置を行う(CPR は AED の準備が整って AED 機器から指示
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が出るまで中断しない!)。日本でも 2004 年 7 月に厚生労働省から一般市民の AED 使用を認める旨の解釈が示され
ており、徐々に設置場所が増えている。
⑥B LEEDING(出血のコントロール)
次のステップは、出血の有無の確認だ。もし、相手の意識が明確で、こちらの問いかけにすらすら答えられ
るようなら、当然、呼吸も脈拍もあるわけだから、上記の A・B・C のステップはとばしてもいい。このステップ
では、体のどこかに出血がないか十分に確認する。特に冬場の厚着状態や、暗色の衣服を着用している
場合など、ぱっと見ただけでは確認しずらい。頭の先からつま先まで、指で追って指差し確認するようにチ
ェックしよう。
しかし、出血は体の外だけとは限らない、腹部や頭蓋内部への内出血もある。普通なら柔らかいはずの腹
部が異常に張っていたら腹部内出血、耳から血が出ていたり、目の回りがパンダのように黒ずんでいたら
頭蓋内出血を疑っておこう。ただし、これらはかなり重篤な状態である。
外部出血が確認できたら、すぐに止血を行う。止血には直接圧迫法を用いる。清潔な当て布と手で傷口を
直接圧迫する。血液が当て布からしみ出てきたら、当て布を追加して圧迫する。この他にもトールニケとも
呼ばれる止血帯を使った方法もあるが、出血を止める一方で神経や他の血管を破壊したり、壊死の危険
性があるので、一般人レベルで行うにはリスクが高すぎる。
⑦S HOCK(ショック状態のケア)
ショック状態とは、体の各組織に供給される酸素の量が不足することで起こるさまざまな症状の総称だ。そ
うなる原因は血液や体液の流出、血圧の低下、呼吸不全などなど。ハイパーベンチレーションによる動転・
精神錯乱も、この範疇に入ると考えられる。ショックに陥った人を適切にケアするには、体温調整をサポー
トしてあげたり、安息が得られるような体位にしてあげたり、安全・快適な場所に移送してあげたりといろい
ろある。
3:A→B→C(→D)→B→S の循環
最後に、ファーストエイドの手順を実行する際、これら以外に必ず頭の隅に置いておきたい項目がある
ので紹介したい。ひとつは、原則として、可能であれば被害者を発見した状態から動かさないで行うこと。も
ちろん、そこにいることでよりいっそうの危険性が予見されるのであれば話は別だが。
ふたつめが、感染を防ぐために、体液や血液が直接、自分の体や粘膜に接触しないよう、マウスピースや
手袋などのバリアを装着することだ。これは普段から用意しておかないと望めない物品だが、知識とスキル
とともに、常に携行しておきたい。
みっつめが、ABC(D)BS のプライオリティーは、被害者を救急隊もしくは病院に引き渡すまでの間、つね
にサークルとして循環させておくということ。A→B→C(→D)→B→S とチェックしたすべて OK だったとしても、
被害者はいつ何時、状態を急変させるかもしれない。さっきまでしっかりした意識で会話もできていたのに、
急に意識不明に・・・ということも少なくない。A→B→C(→D)→B→S の最後の S が終わったら、また最初の
S に立ちかえってチェックするという具合に、手順を繰り返し繰り返し循環させて万全を期そう。ファーストエ
イドが必要な場面に直面したとき、常にその順番で ABC(D)BS を考えるとうろたえなくて済む。もちろん、そ
のひとつひとつには細かな留意点やスキルが存在するが、ここでは割愛する。
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保険の基礎知識
加入すべき保険には、大別して傷害保険、賠償責任保険のふたつが挙げられるが、個別の商品として
は、前者には国内旅行傷害保険、普通傷害保険など、後者のものには施設賠償責任保険などがある。
以下に、代表的な傷害保険のひとつである国内旅行傷害保険と、代表的な賠償責任保険である施設所
有管理者賠償責任保険の概要を示す。ただしこれらはあくまでもサンプルであり、実際の詳細については
各自、保険会社と交渉・確認のこと。
●国内旅行傷害保険
旅行中(旅行のため家を出てから帰宅するまで)の傷害(ケガ)に備える保険。被保険者が旅行中に「急
激かつ偶然な、外来の事故」によりケガをした場合に保険金が支払われる。
○急激性 単に時間的に短いということだけでなく、予測不能と不可避の2要素が必要。
ケース1:「パドルのTグリップが顔に当たる事故」 ○
Tグリップは急に飛んで来る、パドリング中に思いがけずグリップを離すことは予測不能だし、
顔に当たる過程は不可避。
ケース2:「足に合わないリバーシューズを長時間はいて歩いて靴擦れができた」
×
足に合わないリバーシューズを長時間履くことは不可避ではないし、この結果「靴擦れができる」
ことも予測可能なため急激な事故とはいえない。
○偶然性 「原因が偶然」、「結果が偶然」、「原因と結果がともに偶然」のいずれかであり、
また、偶然性は被保険者にとって偶然であることが要件。
ケース1:「トロ場を泳いでいて尾骨を骨折」
○
原因であるトロ場の水泳には偶然性はないが、結果である骨折は予見不可であり、偶然性があり、
偶然な事故。
ケース2:「鉄橋から飛び込み自殺を図る」
×
自殺を図ろうと鉄橋から飛び込んだことに偶然性がなく、偶然な事故ではない。
○外来性
傷害が身体の内部からでたものでないことの因果関係を明らかにする主旨の要件。
ケース1:「脳疾患で意識不明になり転倒し骨折」
×
事故の原因が体の内部にあたるため外来性の要件からはずれる。
ケース2:「犬にかまれて狂犬病になる」
○
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狂犬病の犬にかまれたことを直接の原因にしているため傷害事故となる。
○傷害保険では、次のような場合については保険金が支払われない。
1,
故意、被保険者の無免許・酒酔い・麻薬等運転により当該被保険者が死傷したとき。
2,
ケンカや自殺、犯罪行為により当該被保険者が死傷したとき。
3,
戦争・暴動など
4,
地震・噴火またはこれらによる津波(海外旅行傷害保険は可)
5,
核燃料物質(原子核反応になどによるケガ)
6,
むちうち症または腰痛で他覚症状がないもの
7,
脳疾患・疾病・心神喪失によるケガ
など
●施設所有管理者賠償責任保険
各会社が所有、使用または管理している各種の施設・設備用具などの不備や業務活動上のミス
により、第三者の身体傷害や財物損壊が生じ、被害者との間に損害賠償問題が発生した場合、対
象となる保険。
☆ポイント
偶然な事故による賠償損害ではなく、
1.偶然な事故が原因で
かつ
2.他人の身体や財物に損害を与え、
かつ
3.損害賠償責任を負う場合
という因果関係が成立する必要があります。
また、身体障害や財物損害に関する損害で、名誉毀損、精神的被害は対象となりません。
○指導中の賠償責任
ガイドが参加者に対して指導ミス、装備の不備、監督不行き届きなどの過失により、参加者や
その他の第三者の身体や財物に損害を与えた場合。
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(具体例)危険な場所や欠陥のある施設で開催したため参加者がケガをした場合。技術的な指導
ミスにより、参加者がケガをした場合等
○飲食物による賠償責任
飲食物が原因で食中毒を起こした場合。
注)契約内容の確認が必要
施設所有管理者賠償責任保険では、「販売または提供した飲食物によって生じた事故は対
象とならず、「生産物賠償責任保険」に加盟する必要があります。
企業総合賠償責任保険に加入していれば、PL と施設賠が基本契約なので問題なくカバーされて
います。
○支払われる保険金
1.被害を受けた方に支払う損害賠償金
損害賠償金とは、被保険者が被害者に対して、賠償債務のために支払うことを義務付けられ
た金額。治療費、入院費、通院費、慰謝料、休業損、葬儀料、死亡による逸失利益、物の修
理代等の費用
2.裁判・仲裁・和解などに要した費用
3.被害者を救済するための応急処置などの費用
この費用のうち、応急手当、護送、その他緊急処置に要した費用については、被保険者に賠
償責任がないことが後で判明しても保障されます。
過失相殺・・・賠償責任事故は、一方的な不注意で発生する場合だけでなく、双方の不注意が重
なっておきる場合が多い。そのような場合発生した損害をどう負担しあうかという問題が生じて
くる。よって安易に過失を認めないことが重要。但し、誠意を表すことは問題を大きくしないた
めに重要。
賠償責任保険では次のような場合については保険金が支払われません。
1.法律上の賠償責任がない場合
2.故意によって生じた賠償責任
3.スタッフの業務上災害(労災保険の対象)
など
○自動車を所有、使用、管理することによって生じた事故
自動車保険で担保される
○事故発生時の注意点
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・ 事故通知
保険会社等に速やかに連絡をする。通知内容は、契約内容、事故当事者、事故日時、場所、状
況、損害状況、現在までの処置など。
・ 事故記録
正確な事故の状況を書面にて記録しておく。記録内容は、事故当事者、事故日時、場所、状
況、損害状況、現在までの処置、目撃者等の証人など。
・ 発言に気を付ける
「保険にてすべて弁償させていただきます」「保険に加入していますのでお金は出ます」な
どの安易な言動に気を付ける。例えば、「専門的なことになるので保険会社からご回答させ
ていただきます。」等と回答すること。
・ 誠意ある対応
事故に対して遺憾の意を表現する意味で、素直に謝る。下手にあやまらないと事故が大きな事
件(裁判)にまで発展してしまう。
・ 責任を安易に認めない
誠意ある対応として謝ることは良いが「責任はすべて認めます」など安易に自分の責任を認め
る事は絶対にしないこと。会社オーナーまたは弁護士等の専門家に相談して事後処理を進める。
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川の専門用語の理解
∼川を知り、RAJ ガイドとして用語の共同認識を持つために∼
●川の水量(ボリューム)の認識
川の流れを読む場合、まず始めに確認するのは、その時点での川の水量である。 何故なら、その水
量によって川のグレードが極端に変化するからだ。日本の場合、その川の殆どはダムによって水量が管
理されており、水量はダムの放水量によって決まると言っても過言ではない。本来水量は、降水量によ
って変化するのだが、台風や集中豪雨を除けば、一見降雨によっての増水も、ダムの貯水量調整による
放水であることが多い。そのことから、その川の水量を知るには、ダムからの放水量の情報を知ること
で、その時点での川の難易度が想像できるの。
一般的に、日本で水のボリューム(水量、放水量)の単位として、立方メートル毎秒(CMS)を用
いるが、慣例として単に「トン」と表現されることが多い。使い方として、「昨日は 10 トンだったが、
今日は 30 トンも出てやがるぜ。あそこの岩はオーバーフローしてストッパーになっているぞ」となる。
ちなみにアメリカでは、その単位をキュービックフィート パー セコンド(CFS)と表す。アメリ
カの書物を見たり、実際に渡米してパドリングする際には単位の違いを理解しておくことが必要だ。
それでは、この水量の情報はどこから入手すればよいか。それは、その川の上流にあるダム管理事務
所である。職員によって快くか、若しくは渋々かの差はあるだろうが、必ず答えてくれる。また、テレ
ホンサービスで自動的にタイムリーな放水量、流入量を知ることができる場合もある。アメリカでは、
必ずその川に入る前、水量の情報を入手するのがセオリーとなっている。実際に川を見て水量変化の情
報を得ることも出来る。それは、岸の状況を見ることだ。水面から、岩等に付いている水あかや水苔が
見える状態であれば、通常水位。それより水位が下がっていれば減水。反対に、岸に苔等が見当たらな
く、なお且つ、草が水没し、水面が低木の生え際より上にある場合は増水している、と判断できる。
川の形態を語る時、まずベースとなるのがこの「水量(ボリューム)」である。水量の変化によって、川
の状態の変化や難易度が決まることを頭に入れておいて欲しい。
*流量計算の方法
深度×流速×川幅=平均的流量(CMS)
●川の傾斜
川の形態を知る上で、川床の勾配も重要なファクターである。その情報は、国土地理院発行の地形図
から読むことができる。川が進む方向の等高線が密である程勾配が急であり、流水速度が速くなる。時
としてドロップや、滝の存在も考えられる。このことから、等高線が密で勾配のきつい源流部や、上流
部は川の難易度が高いと言えるのだ。対して、中流から下流域では、等高線が広く、勾配が緩やかであ
ることが多く、流水速は一般的に緩慢で、難易度も高くはない。
単位として、Aキロ進むごとにBメートル傾く、B/Aと表記される。傾斜がきつければ分子が大き
くなっていくのである。この場合、一本の川全体の勾配を表わすことも出来るが、可能な限り細かいポ
イントごとに表記されたものが、川相を知る上で重要である。
●流水速度
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川の流水速度を決定する要因は、前記した・川の勾配・いわゆる、シュートやタンと呼ばれる流れの
集まる所・川の地形が考えられるが、ここでは川の地形が与える流水速度の変化に付いて考えてみたい。
図 1 を見ていただきたい。これは、ストレートな川を上から見たものである。川の中心に向かうに従
い、水深が深くなるとすれば、そこに多く水が集まり、岸から受ける抵抗も弱まって、流水速度は速く
なる。この川の流れの最も速いゾーンを「本流(メインフロー)」と呼ぶ。この本流こそ、最速ラインなの
だ。リバートリップの場合でも、スピードに乗った軽快なダウンリバーが楽しめる。
反対に岸に近づく程、流れは岸の抵抗と、岸に反射した流れの抵抗を受けて、徐々に速度は弱まって
行く。時に、この岸に反射した流れ(ヘリカルフロー)は、落水者が岸に泳ぎ着こうとする時に、本流
側に押し戻され、なかなか岸に辿り付けない厄介な流れでもある。
図2は、図1の横断面を見たものだ。岸や川底に近くなるに従い流水速度は遅くなる。また、水面も
空気抵抗を受け、水面直下より速度は遅くなる。この具体例を挙げれば、漂流者をスローバッグにてレ
スキューしようとした時、投げられ水面に浮いたバッグが、漂流者より移動速度が遅い。こんな経験を
した方は多いはずだろう。もう一つ、余談ではあるが、水面を数多くバシャバシャ漕いでいるガイドを
見うけるが、水面の水をブレードでキャッチするより、より深い速い流れをキャッチして、ブレードに
更に大きな抵抗を受けることで、効率の良いパドルワークが出来るのだ。
図3は、流れの横断面であり、川底から水面にかけての速度変化を表わしたものである。ここで問題
になるのは、水面よりどの位の深さに最も速い流れがあるのか。と言うことだが、水深や岸方向への川
底の傾斜によって違ってくるので、一概には言えないが、経験的に空気の抵抗を直接的に受けない、水
面直下が最速のゾーンと考える。
今までは、ストレートな川の流れの流水速度を考査してきたが、今度は、カーブ(ベンド)した川の
流水速度を探ってみよう。
川の流れは、勾配の高い所から低い方へ、直線的に流れようとする。その時川がカーブしていると、
流れはそのカーブしている外側に集まり、カーブの最曲部に当たり、反射しながらカーブ終点に向かう。
その状態を、上から見たのが図4である。同じく、その縦断面が図5であり、カーブの外側であるほど、
川底が流れに侵食されて水深は深くなり、より水量が集まり、本流が形成される。反対に、カーブの内
側になるほど速度は遅くなり、最も内側には、しばしばエディー(淀み)も見られる。このカーブした
外側には、岩や壁を流れが侵食したことによって出来た、アンダーカットや、増水時に引っかかった流
木やごみが作る、ストレーナーが多く存在して、しっかりボートコントロール出来ないパドラーに試練
を与えることが多い。
もう一つ、流水速度が速まる要因として、岸の出っ張りや、流れに存在する岩が障害物となって、そ
れが抵抗となり、流れは逃げ道を求め、障害物の片方、若しくは両側から下流側に流れる。この流れの
速度も速いのだ。
ここで理解しておいて欲しいことがある。それはエディーとエディーラインである。エディーとは、
岸、岩によって流れが抵抗を受けたとしよう。すると、その下流側に流れの留まった、若しくは逆流し
たエリアが出来る。それがエディーである。また、抵抗を受けた流れが、下流側のエディーに本流との
境目を作る。これがエディーラインである。
●波(ウエーブ)
川の流れが、岩等の障害物から流れ落ちることによって波(ウエーブ)が形成される。この流れの中
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の波の形状は、水量、流水速度、障害物への当り方と落下の仕方によって決まる。代表的な波の形状と
しては以下のスタンディングウェーブ、ハイスタック、ストッパーの三種類が挙げられるだろう。
①スタンディングウエーブ(立ち波)
スタンディングウェーブ(S.W)は川の流れの中で最も良く見かける波形だ。障害物を乗り
越えた流れで造られたS.Wは、必ず連続性があり、下流に行くに従い波高は小さくなってい
く。また、海の波と違い、川の定位置に立つ。通常S.Wは本流と直角に発生することが多い
が、岸近くの岩や棚で狭められた流れが、タンやシュートを形成し、その対角線上、下流に作
るものもある。そして、このS.Wが高くなったものがハイスタックであり、波の頂点の上流
への巻き返しが強くなったものがストッパーである。
②ハイスタック
この波形はSWと似ているが、波の斜面がより急角度でその頂点も高くなる。
ダウンリバ−して来た場合、ボートコントロールがおぼつかないとフリップさせられることに
なる。
③ストッパー
波の斜面が急角度であれば、その頂点は上流側にカールして白く崩れる。これは、ダウンリバ
ーするボートを停止させるパワーを持っている可能性もある。この返し波が強烈になり、川底
に引き込む流れが生じると、ホールとなる。
●シュート、タン
川の流れを、両側から岩や棚等の障害物が押し狭めると、その流れは速度を増す。その区間をシュー
トと言う。そして、速度を増した流れは、V字型の滑らかな流れを作る。これがタンである。殆どの場
合、シュートの後にはストッパーかハイスタックかスタンディングのウエーブが待ち構えている。
●流れの合流
二つの異なった流れが合流した場合、水量、流速、傾斜、合流部分の流れ、に変化がある。二つの流れ
が殆ど、平行に、同じ方向から合流した時には、あまりその流れに変化は見られない。だが、その合流
角度が直角に近くなるほど、弱い流れの方が、強い流れの下に潜り込み、それを押し上げて、ボリュー
ムとスピードを増して下流に流れる。すると、その合流部に強い渦や不規則な盛り上がりが生じ、難し
いパドリングエリアを造っている。
●波を形成する障害物
流れの中で波が造られる要因は、川底にある障害物である。その多くの場合は岩である。だが、時に
は、地形、木、人工物によって起こされることもある。即ち、流れの中のどんな障害物でも波を造りう
る要因なのだ。また、もう一つの要因は水量である。水量が少なく(もしかしたら通常水位かもしれな
い)岩が露出した状態なら、岩の上流には水が盛り上がったピローが形成され、下流にはエディーが出
来る。水量が増え、岩の上に流れが被ると、岩の下流で流れは急角度に落ち、そこにストッパーやホー
ルが誕生する。そして流れが完全に岩の上を通過すると、その下流にウェーブが発生する。
●アンダーカット
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川が屈曲したり、本流の強い流れが岩や岩盤に当ると、侵食作用により、垂直のひさしの様なオーバ
ーハング部を残し、えぐり取られた様になる。これがアンダーカットである。落水して流されている場
合、引きずり込まれるので注意を要する。大部分のアンダーカットには、丸太や、ゴミが入り込み、ス
トレーナーとなっていることが多い。そこにスイマーが入り込むと、引っ掛かり、出てこられなくなる。
そして、大水で押し流されるか、減水した時に発見されるか、と言うなかなか恐いものなのだ。アンダ
ーカットには近寄らないのが賢明だ。
●ボイル
ボイルは流れの下に隠れている障害物によって引き起こされる。形状は水が沸騰した時のように、下
から湧き出す感じを連想してもらいたい。これは、流れが水中で障害物に衝突すると、流れは、速度を
増して水面に噴出する。増水時、浅い所にある岩の周り、流れの合流点、逆流の強いエディー、アンダ
ーカットの上流側に発生し易い。だが、このボイル自体に危険性はない。但し、ボートコントロール不
能になり易く、それも不意に発生することもしばしばあり、急旋回させられることが多い。
●クッション(ピロー)
流れが障害物に当たり、押し上げられ、その障害物の上流側に水の盛り上がりを作る。これがピロー
と呼ばれているものである。また、上流からの流れがより急角度に持ち上げられると、先端はカールし
て、空気を含んで白く泡立つ。これを特にクッションと呼ぶ。この持ち上げられた流れは、逃げ道を求
め、障害物の横を本流より速い速度で流れ落ちる。このピローはパドラーにとって、障害物を回避する
のにとても有効に働くのだ。それは、ボートが障害物とまさに衝突する時、ピローがバンパー代わりに
なり、さらに障害物横の速い流れが、素早くボートを下流に押し流すのに、有効に働く。
●噴出波(ルースターテール)
あたかも雄鶏のしっぽの様に、波が空中に広がるような形をしている。この場合、障害この波は上流
から見ると、波が障害物に衝突した際、空中に噴出された状態になり、物の上流側にピローは形成され
ないので、ボートにもろに当り、ブローチングしてしまう可能性がある。上流からこの波が見えた時に
は、素早く回避するのが得策である。
● エディー
流れが障害物によって整流されると、その下流側に逆流、渦若しくは流れが止まっている部分が形成
される。それがエディーである。このエディーの性状を決めるのが、障害物の形状と水量(水速)なの
だ。その障害物に当る流れが速く成る程、エディーの渦や逆流が強くなる。また、エディーの中でも、
障害物に近い上流側が、最も渦、逆流が強くなり、エディーの一番下流側が最も弱くなる。
ホールを作るバックウオッシュが、下流側に作る空気を多く含んだ白い逆流もエディーである。それ
は通常のエディーよりも不規則であるので、そこを漕ぐのは簡単ではない。
●エディーライン
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エディーラインとは、障害物の上流側にできたピローに連続した流れで、エディーと流れの境を作る
ものである。水量が多くなり、水速が速くなると、このエディーラインに厄介なものが出来る。それは、
ワールプールとエディーフェンスである。ワールプールの大きいものは、まるで台風の目のように,中
心にぽっかりと口を開けて、スイマーをしばしば飲み込もうとする。
●エディーフェンス
エディーフェンスとは、極度に速い流れが障害物に当ると、その上流側に出来るピローが巨大化して、
障害物のサイドに回り込み、上流からの速い流れと合わさって、フェンスのような仕切りを作る。大き
なものになると、優に頭を超えるものもある。
●ホール
流れが障害物の上をプルオーバーしながら流れたとする。すると流れは、障害物から急角度でスムー
スな水面のグリーンウォーターを形成しながら川底へ落ち、逆流しているエディーに押し戻されて、今
度は急角度で水面に沸き上がろうとする。そして、下流から上流への流れとなり、また、障害物から落
ち込む流れと合わさり、その循環を繰り返す。この時、水面近くに押し上げられた流れは、空気を十分
に含みバックウォシュとなる。それはまさに、縦方向の渦である。
このホールは、ダウンリバーするボートを停止させるに十分はパワーがあることが多い。また、ボー
トを横にしてホールに入った場合、留まってしまうことが多い。なぜなら、上流から落ち込む流れと、
下流から上流に向かう流れは等しいパワーを持つからである。
●キーパーホール
ホールが果たして安全か、危険かを判断するには知識と経験が必要である。ホールの中で、特に危険
とされているのはキーパーホールと呼ばれるもので、その性状を決定する要因として、落ち込みの傾斜、
ホールの深さ、幅、形それとバックウォシュの長さが関係している。
・落ち込みの傾斜
落ち込みの角度が垂直に近い程、流れのスピードは速くなり、それに伴い反転流も強くなるの
で、強いバックウォシュはなくても、キーパーになり易い。反対に落ち込み角度が緩いく、バ
ックウォシュとのバランスが取れているとプレイスポットとしては最良の場所となる。だが、
水量が増えバックウォシュが長く、大きくなるとこれもキーパーとなる。
・ホールの深さ(ホール半径の大きさ)
ホールの深さは、障害物から落ちる流れのスピードとボリュームに比例している。スピードが
速く、水量が多いとホールは深くなる。浅いホールでは、川底方向には十分なアウトフロー(下
流に押し出す流れ)だあり、スイマーはこれを掴んでホールから脱出しることが出来る。しか
し、深いホールは、そのホール半径が川底まで達していまい、川底の流れも水面に向かう反転
流となってしまい、ホールからの脱出は困難となる。
・ホール形状
ホールはその殆どが、流れに対して垂直方向に出来る。そして、そのホール両端の開いている
方向でその形状が判断できる。この形状を判断する場合、必ず、上流から見なくてはいけない。
下流から見た形状で判断したら、あなたはきっと泣きを見るだろう。それでは正しく上流から
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ホールを見てみよう。その端が、下流側に向いていたなら、それはスマイルホールである。も
し、ホールから出たいのであれば、端まで移動すれば後は上流からの流れが押し出してくれる。
したがって心地よいスポットになり易い。だが、上流側にホールの端が開いていたら、アング
リーホール(怒っている)である。このホールの端から脱出するのは困難を極める。こんなホ
ールは見るだけにした方が良い。
・ホールの長さ
ホールの長さとは、流れと垂直をなす真っ直ぐな部分の長さである。つまり、ボートがサイド
サーフィンした時、上流からの流れがボートに垂直に当る長さである。これがボート一艇分位
であれば、良いホールであるが、それ以上直線部分が多いとホールアウトが困難になるかも知
れない。その極端な例が堰堤である。川幅いっぱいに出来た、直線的なホールは、自力での脱
出は諦めなければならないだろう。それは、流れのスピードや水量に関係なくである。
・バックウォシュのサイズ
ホールが深い程、バックウォシュは長く、パワフルになる。このバックウォシュが下流側に長
いほど、ホールに戻される力が大きいと言うことで、脱出が困難になる。
●滝とドロップ
川の傾斜が垂直に落ちると滝になる。もし、この滝の全長が短ければ、それはドロップ(落ち込み)
である。この滝やドロップの下には、必ず、深いホールが待ち受けている。だが、ここをボートで下る
場合、ボート自体にも加速が付いているので、ホールのキープ力より、ボートの着水時のリバウンドの
ほうが強い場合が多いので、 ホールに捕まることは少ない。だが、滝の場合は、滝壷の裏側にも反転
流があり、これに捕まることもある。また、滝壷にボイルが発生している時には、比較的浅い所に、岩
等の障害物がある可能性が高いので、ダイブの際には着水地点の水深等の状況をしっかり把握しなくて
はならない。
ダウンリバーの最中、上流から下流を見て、川の水平ラインが、一直線に切れていることがある。な
おかつ、流れが轟音を伴っていれば、それはそこに、急激な落ち込み、つまり、ドロップ、滝、堰堤、
ダム、等困難なことが待ち受けていると判断して良い。
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ボートを準備する段階での基礎知識
●ラフトボート各部の名称と機能の理解
・チューブ
このチューブ内の空気によってボートは、水面に浮く。分割式になっているのがほとん
どである
・アウターチューブ(ポンツーン)
周囲を取り巻くように本体を形成するチューブ
・ソート(スォート)チューブ
横からの衝撃に対してボートを守る機能を持つ
・バルブ
チューブ・ソート・フロアーのエアーの開閉口
・フロアー
ボートが水面に浮く補助的機能と、ボートに人が乗れる機能を持つ
・セルフベイラー(セルフベイリングシステム)
自動排水システム。ボート内に入った水を抜く機能
・バウライン
主にボートを停泊するときに、何かに括り付ける場合に使用されるロープのこと
通常ボートの前(スタン)後(バウ)に取り付けられる
・D リング
アストサイド・ラインを通したり、Z ドラッグ・システム等でボートを引くとき
に使用される
・アウトサイドライン(セイフティーロープ)
ボートに乗っている人、ボートから落ちた人等が捕まるロープ
●ラフトのチェックとメンテナンス(主なチェック項目)
エア−のチェック
各部からのエアーの漏れはないか?
特に損傷を受けやすいフロアーは、要注意。
バルブのチェック
バルブからのエアー漏れはないか?
正常に機能しているか?
D リングのチェック
破損や磨耗はしていないか?
D リングは、ものすごいテンションをかける場合があるので、慎重
にチェックする必要がある。
バウ/スタン・ライン 適切な収納がされているか?
適切なロープの長さが確保されているか?磨耗していないか?
アウトサイド・ライン ロープの張りが、適切であるか?磨耗していないか?
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●ラフトボートのリペア
道具の修理の知識や技術を身に付けておくことも大切。ここでは簡単ながら、ボート修理
の一例を紹介しよう。 現在、コマーシャルラフティング用に使われているボートの素材
は、ハイパロン PVC と呼ばれているものが主流。素材の違いによってメンテナンスやリペ
ア−方法が違う場合があるので注意すること。
1.補修布を傷の大きさより大きめにカットし、船体・パッチ双方の接着面をパフがけする。
(荒目のヤスリを使用し少し白くなる程度、ゴム布を削りすぎないように注意)
・パッチの貼り付け位置を船体にマーキング(色鉛筆等)しておくと作業がしやすい。
2.パフがけ後、粉をよく拭き取り、船体・パッチ双方の接着面にのりを塗り完全に乾かす
(30分程度ハケを使い均等に塗る。)
3.2と同様にのりを塗りべとつかない程度に乾いたら(20分程度)パッチを船体に貼り
付け、ローラーやビールビンの底など丸くて重量のあるのものでパッチを良く圧着す
る(1の時点で貼り付けポイントをマーキングしておくことによって貼り付け位置の
ズレを防げる)。
4.修理部分に無理な力がかからない状態で24時間以上乾燥させる(丸めて保管したりし
ない。)
:修理作業をされる日は雨の日(湿度の高い日)や気温10度以下の日は避ける。
資料提供:オカモト(株)
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コマンドについて
◆指示・号令の出し方について
各カンパニー、ガイドによってその言いまわしは様々だと思います。ここではその中でも代表的な3つ
の号令についての説明をします。しかし、いかなる指示号令の場合もクルー全員が瞬時にそれを理解し、
実際に行動できるようにその意思を明確にはっきりと伝えることができるものでなくてはならないと
思います。
①ホールドオン(捕まって)
ラフトが浅い落ち込みや、軽い衝撃を受けると予測判断した場合、クルーの落水を防ぐために出すコマ
ンドです。その際ラフトのチューブなどに張ったロープを素早く握って衝撃から身を守るように指示し
ます。
注意点…その際に当然パドルから片方の手を離すことになりますが、必ずTグリップを握って
いない手でロープを確保するように指示して下さい。ラフティングの際にこのTグリ
ップで顔を打撲したり歯を折ったりする事故は非常に多く見受けられます。
②ゲットダウン(伏せて、座って)
状況的には上記のホールドオンよりももっと激しい衝撃が予測される場合にこの号令を使います。また
オーバーハングした岩や樹木にラフトが突っ込みそうになった場合などにも用いったりします。
注意点…Tグリップに関する注意は動きが激しくなる分、ホールドオン以上に怠らないよう徹
底して下さい。また号令の際にラフトのフロアに尻餅をつかないようにした方が次の
行動に素早く移ることができます。
③ハイサイド(右へ寄って、左へ寄って)
この号令によってラフトにかかっている重心の移動を行い、フリップやラッピングを回避します。
注意点…まず、ラフトのどこら辺りの浮力を回復させればよいのか、瞬時の、正確なガイドの
判断が必要になってきます。それにより全員を安全に素早く行動させることがポイン
トです。
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パドルワークについて
パドルワークは、用途や特性を理解し身に付けることで、ボートを安全にコントロールすることが
できる。次に挙げる例は、現在主に使われているパドルワークを紹介したものである。
●シッティングポジション
ガイド自身がボートから落ちることなく、パドル操作をし易い姿勢を取れる位置に座ることが大切
である。一般に、チューブに足をかけることでボートの上での姿勢を安定させたり、ボートコント
ロールがしやすい最高部左右どちらか一方のチューブの上に座ってガイドする場合が多い。 最前
部でガイドする場合ががあるが、最後部に座ってガイドする場合に比べボートから落ちにくいが、
クルーに目が行き届かないでデメリットがある。
*身体的個人差があるので、それぞれに合った座りかたが大切である。
●フォワードパドル
前進させるための漕ぎ方で漕いだ分だけ前に進むが、右後方に位置したガイドはボートが左方に、
左後方に位置したガイドは右方向に流れていく。
●バックパドル
後進させる為の漕ぎ方である。右後方に位置したガイドはボートが右方に
左後方に位置したガイドは左方に振れていく。
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●スウィープストローク
ボートのアングルを変えるための漕ぎ方。パドルの動きはフォワードパドルと同じであるが、ボー
トから可能な限り遠くから後方まで漕ぐことによって素早くボートのアングルを変えることがで
きる。
●バックスウィープストローク
スウィープストロークの逆の方向にボートのアングルを変える。
●Jストローク
ボートをガイドひとりで直進させる漕ぎ方である。パドルが水中でJの字の様に漕がれるのでこの
名が付いたが、カナディアンカヌーなどで用いられる漕ぎ方とは異なる。下の図を参考にして頂く
と、A の部分でボートを前に押し進め、Bの部分で少し斜めになったボートをもとの位置に修正。
●ドローストローク
パドルを遠くから自分の方へ引くようにして漕ぐ。ドローが出来るのは、自分の位置を中心に90
度の範囲で行なえる為、微妙なボートコントロールやエディーキャッチに活用できる。
●スカーリング
より早くパドリングの動作に移れるようにパドルのブレードを縦にし、水の抵抗にならない様に漕
ぎ出し点まで水中を移動させること。連続でドローストロークを行う場合等によく見られる
●ラダー
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パドルを使いボートのアングルなどを微調整し舵を取ること
流れの中でのパドルワークについて
川の中でのラフトの操作
実際のボート操作では、いろいろなパドルワークを組み合わせて使う場
合もある。次の一覧表は、ボートの動きとパドルワークとの関係を表した基本的動作である。
●ストリームイン
川の流れのない場所から、流れにボートが入ること。ストリームインする時は、ボートの角度をア
ップストリーム45度で流れに入っていくのが一般的。これにより、ボートがフリップすることを
防ぎ、またスムーズに流れに乗ることができる。このとき、パドルでのボートコントロールが必要
である。
●エディーキャッチ
流れの中にあるエディーにボートを入れ、流れから外れボートを停止させること
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●フェリーグライド
流れのある川を横断するときに使う。アップストリーム45度にボートを向け、予め流れに流され
ることを計算して横に移動していく。流れの早さに応じて、漕ぐ力やボートのアングルを調整する
必要がある。
*バックパドルを使って後ろ向きに進む場合、バックフェリーグライドと呼ぶ。
●障害物の回避
川の流れの中には、危険な岩やホールなどの障害物がある。これらの障害物を回避するためには、
早めのボートコントロール、コース取りの判断、川の流れを知ることなど知識と経験が必要になる。
川のコンディションは常に変動するので、スカーティングするなどして予めプランを立て、より優
位性を持つことも重要である。 岩や障害物を避けるとき、ボートを意図的にまわすピポットと呼
ばれるテクニックもある。
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ガイド装備に付いての理解
ライフジャケット(PFD,パーソナルフローテーションディバイス)
* 現在日本では、明確なリバーPFD に関する基準はないのが現状である。
* アメリカ製では、US コーストガード、ヨーロッパ製では CE 認定の製品を奨励する。
* 浮力は最低約6.5kgもしくは 50Nを有しており、10kgもしくは 70N前後の浮力のものを奨励する。
* 形状的に理想のものは、泳ぎ易く、十分な浮力を持ち、耐久性に富むものである。
* フリップライン、プルジックなどが収納できるポケットがあれば理想である。
* フリップ後、ボート上に上がるときに、胸の部分に極力邪魔になるものがないもの。
* 縫製部分にほつれ、本体布に亀裂がないもの。汚れにも注意する。
* 体に完全にフィットするように、ベルト類の締め忘れがないか確認する。
* 必ず毎使用後には、真水にて洗浄して陰干しにする。
* 使用前には、ベルト類のほつれや切れがないか確認して、不都合があれば修理終了まで使用は控え
る。
* 汚れたものや、消耗の激しいものは、使用を控えるべきである。
ヘルメット
* どのようなグレードの河川でも、必ずヘルメットを被る。
* 衝撃に十分耐えられる素材、構造のものを使用する。
* 一度衝撃を受け、亀裂のあるグラス素材や、表面の色が変色し、紫外線劣化した
カーボネイト素材のものは、使用してはならない。
* 使用時には、必ずあご紐は締めること。
* スイム時に頭部で移動しないように、頭にフィットしたものを使う。
* 使用後は、真水で洗浄し、陰干しする。特にあご紐部分は、悪臭が起こりやすい。
ポリエチレン、ポリ
パドル
* ガイド用パドルの素材として、シャフトでは木、グラス、金属、ブレードには木、グラス、ABS、ポリエチレ
ン、ポリカーボ、リム等がある。乗船するボートの大きさ、ガイドのパドリングスタイルにより、理想の長
さ、強度は変わる。
ボートが小さかったり、ブレスやストロークを多用するガイドは、ガイド用としては短めの 150cm 程度で軽
くしなりのあるグラス製。大型のボートや、ラダー系の者は、160cm 以上でブレードが大きめで、丈夫な
金属製シャフトのパドルを選ぶことになる。
* 使用前に、Tグリップにぐらつきがないか、パドルに破損がないか確認して、異常があれば使用しない。
ホイッスル
* ホイッスルは、トリップ中は重要なコミュニケーションツールである。
* 中球付とそうでないものがあるが、中球は濡れると良く鳴らない可能性がある。
* 素材は、金属製とプラスチック製があるが、金属製の場合、ステンレス製にする。
* 少なくとも川面で100m 以上の間隔をもって聞き取れるもの。
* 常にPFDの利き手側ですぐに吹ける位置に取り付ける。
* 使用前にテストで必ず吹くようにする。
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ナイフ
* ナイフは必ず所持する。
* 取り付け位置は、直ぐ使用できるようにPFDの肩口に、グリップを下にして取り付ける。
* 不用意にさやから抜けないように、ロック機構のあるものか、落としても紛失しないようにビニールスプリ
ング等を取り付ける。
* 素材として、鉄、ステンレス、チタン、セラミックなどがあるが、鉄にメッキが施されているものは、さびに注
意しなければならない。
* いつも最高の切れ味を維持するために、刃の点検をし、鈍っていた場合、研がなくてはならない。
* ナイフは通常使わないので、非常時に使用する際、戸惑わないように日ごろから慣れておく。
シューズ
*
リバーガイド用として求められる機能とは、泳いでも脱げなく、濡れた岩の上でもことができ長い時間足が濡れた状況
でも、健康に害を及ぼさないもの。
* スポーツサンダルは、基本的に推奨はしないが、最大限、泳いでも脱げないもので、走れるものでなくて
はならない。
* ベルト、紐の類は、絡まる危険があるので、必ずしっかりと閉めてから行動する。
* 安全面から、素足で乗船してはならない。
* 使用後は真水で洗浄し、十分乾燥させるのが理想だが、毎日使用するのであれば除菌スプレー等を用
いる。
* 使用前にベルトの破損、底の剥がれを点検し、使用中に切れ、剥がれで使用不能になる恐れがあるとき
には、使用しない。
レスキューロープ
* 素材は編みこみのしっかりしたフローテションロープを用い、投げられるバックに収められたものである
こと。
* ボート1艇に対し、少なくとも、25m 以上の長いものと、ガイド自身が身に付けることができる、15m 程度
の短いものを備えること。
* バック、ロープの色は、水面、水中でも確認しやすい黄色などの色が望ましい。
* 常に、投げる練習を行い、緊急時でも確実にスローできるようにする。
* 亀裂やささくれがあるものは使用しない。
* 使用後は、真水でよく洗浄し、砂などが噛んでいないか確認し、それも取り除き乾燥させ、紫外線避け
て保存する。
フリップライン
* ウエイビングテープ、フローテーションロープにカラビナを取り付けてフリップラインとする。
* 腰に巻いて携帯する方法があるが、PFDに取り付けられたバック、
ポケットに収納するのが望ましい。
* 長さは、長すぎても短すぎても使い勝手が悪いので、乗船するボート
に最適な長さに調整しておく。
* 使用前に点検し、亀裂、ささくれがあれば交換する。
* 使用後は、真水で洗浄し、日陰に干す。
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カラビナ
* 形状はいろいろあるが、基本的なDリング、オーバルを選ぶ。
* 素材は鉄、アルミ、ステンレス、チタンなどがある。強度的には鉄製が良いが、新型のアルミ製のもの
で、強度表示が高いものであれば、使用に耐えうる。
* ロックはねじ式ロックがラッチについたものを薦める。
* カラビナをかけた後は、ゲートが上にくるようにセットする。
* カラビナの長い形状方向以外には、過重をかけない。
* 過重のかかっているゲートを開けない。
* 常に点検して、少しでも不都合があるものは所持しない。
ファーストエイド
*
収納するのは、ソフトの防水バックが望ましいが、ボートに積載する
スペースが十分取れる場合は、ハードの防水BOXでも良い。
* 内用品が濡れないように、気を配る。
* ボートに携帯する内容は、三角巾1枚以上、 滅菌ガーゼ
(30cm角をたたんだもの)5枚以上、バンドエイド各種大きさのもの5枚以上、
(防水バンドエイドも含む)、収縮ホータイ幅の狭いもの2本以上、
広いもの1本以上、テーピングテープ細幅、広幅各1本以上、洗浄液1本以上、
傷パウダー1本以上、はちにも有効な虫刺され用薬品、フレキシブルパット、
毛抜き、手術用手袋、ビニール袋を最低限用意する。
これ以上の衛生用品、薬品は、回送車に備えておく。
* トリップボート1艇にⅠセット装備するのが望ましい。
* 常に点検し、内用品表を作り、使用して欠品となっているものは直ちに補充する。
通信機器
事故に対して、即時対応をするために、無線、携帯電話など、外部との通信機器を所持するのが望ましい。
中でも、携帯電話が通話可能な河川では、非常に有効であるので、標準装備することを薦める。
Zドラッグ装備
* 装備として、十分なZドラッグ装備を携帯するのが理想だが、
実際のトリップにおいて、十分な装備を持つのは無理な場合多い。
ここでは、スローロープを用いたZドラッグ(奨励はしない)の
場合の装備について記する。
* スローロープは2本所持することは前記した。1本をメイン、
もう片方はアンカーに使う。
* カラビナ3枚以上を所持。
* プルジック3本以上所持。
* できるならプーリー2個以上も携帯するのが望ましい。
* 回送車には、十分なZドラッグ装備を車戴しておく。
* 常に装備は点検し、不都合なものがあれば、交換する。
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