What's New in DesignWare IP? 車載アプリケーション向けの路上試験済み MTP NVM IP - 車載機器向け SoC のマストアイテム シノプシス DesignWare NVM IP 担当プロダクト・マーケティング・マネージャー Faisal Goriawalla 車載アプリケーションの厳しい要件を満たすように設計された車載グレードの不揮発性メモリー(NVM)IP を使用することで設計チームに もたらされる利点について、シノプシスの DesignWare® NVM IP 担当プロダクト・マーケティング・マネージャー、Faisal Goriawalla がご説明します。 最近の自動車は電子システムの搭載が急速に進んでおり、自動車メーカーは これまで、自動車メーカーはインフォテインメントなどの機能についてはそ 安全、効率、ドライバーの快適・利便性の向上に役立つスマートな機能を追 れほど高い信頼性は必要ないという前提でコンシューマ・グレードの IP を使 加することで製品の差別化を図れるようになっています。こうした急速な電 用していました。しかし現在の自動車規格では車両の安全性、セキュリティ、 子化によって大きなチャンスが生まれると同時に、設計チームは解決すべき 信頼性に関して包括的なアプローチが要求されており、エンジン管理 / 制御、 課題にも直面しています。 エアバッグ、シャシー、ブレーキといった車両の基幹部分では車載グレード IP が使用されるようになっています。しかも自動車は一般的な使用年数が 特に大きいのは、車載電子システムの設計と実装には信頼性、コスト、面積、 10 ~ 15 年と、家電製品に比べてかなり長く、たとえばタイヤ・センサーは 消費電力に関して厳しい要件が存在するという点です。これらの要件をシス 新車装着タイヤよりも長寿命であることが求められます。 テムレベルで満たそうとするなら、まず不揮発性メモリー(NVM)などの IP を調達する際に、これらの要件を満たしたものを選ぶことから始める必要が シノプシスは、各種の車載アプリケーションにとって理想的な、ビット容量 あります。車載グレードの NVM IP を使用することにより、市場投入までの と書き込み耐性の異なる 3 つのアーキテクチャの NVM IP 製品をラインナッ 期間を短縮し、IP 統合のリスクを軽減することができます。 プしています(図 2) 。 シ ノ プ シ ス の DesignWare IP に は、特 に Grade 0、Grade 1、Grade 2 の 車 1. 書 き 換 え 可 能 な EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory):高い書き込み耐性が要求される用途向け 載アプリケーションに向けた書き換え可能な NVM IP が豊富に揃っています。 シノプシスがご提供する製品について述べる前に、まずは自動車業界から NVM に求められているものは何かを考察してみましょう。 2. FTP(Few-Time Programmable)TRIM:センサーおよびアナログ IC の係数 / パラメータ格納用。ワーストケースで最大 1K サイクルの書き 込み耐性が要求される用途向け 車載アプリケーションにおけるNVMの用途 3. Medium Density アーキテクチャ:上記アーキテクチャよりビット容 最近の車載アプリケーションには、キャリブレーション、データ・ロギング、 ユーザー設定、セキュリティ情報の格納など NVM ストレージを必要とする機 量が大きく、特に BCD(Bipolar CMOS DMOS)プロセスにおいて組込み フラッシュ・メモリーを置き換える低コストなソリューション 能が増えています。図 1 に、NVM が使われる代表的な車載機能を示します。 スマート・キー 130 / 110nm TRIM タッチ・スクリーン・コントローラ 180nm TRIM または Medium Density NVM ミラー、ウィンドウ、ライトなどの制御 180nm EEPROM エアバッグ・センサー 180nm TRIM 角速度 / 加速度センサー 180 / 130nm TRIM 圧力 / 流量センサー ホール・センサー 180nm TRIM 180nm TRIM パワー・マネジメント エンジン制御 180nm BCD Medium Density 180nm EEPROM キーレス・エントリー基地局 180nm Medium Density ABS – ホール・センサー / 制御 180nm TRIM、180nm Medium Density 温度 / 空気圧センサー 180nm TRIM 図 1. 車載アプリケーションで用途が広がる NVM 8 1M ビット 512K ビット – 1K ビット < 256 ビット 組込みフラッシュ アンチ ヒューズ OTP Medium Density 浮遊ゲート OTP EEPROM FTP TRIM ヒューズ DesignWare NVM IP 1 2 – 100 100 – 1K イベント / セミナー レポート 1K ビット – 256 ビット マスク ROM Industry Trend ビット容量 1K → 1M 書き込み耐性 ル・デバイスをテストして、そのテスト結果の外挿によって自動車メーカー 機能安全の確保 が要求する厳しい基準を満たすことができるのかという点です。 設計チームが車載 IP に求める重要な要件として真っ先に挙げられるのが、機 能安全規格への対応です。シノプシスが設計した NVM IP は、最も厳しい自 クオリフィケーション・テストに合格しても、それだけで最終製品が信頼性 動車規格に適合するように自社内で包括的なテスト※1 を実施しています。 目標を達成できると判断するのは早計です。たとえばクオリフィケーショ What's New in DesignWare IP? 図 2. シノプシスの車載向け DesignWare NVM IP 製品群 ン・テストで 1,000 個の NVM アレイの故障がゼロだったとしても、それは タを収集することによって信頼性予測の精度を高め、自動車メーカーの要求 リットで最小限のサンプルを用いた統計的解析によるデバイスのバリデー を満たそうというものです。 検証編 ています。これは、テスト・チップをより詳細に計測し、より多くの統計デー ファウンドリによっては独自の受け入れ基準を設け、複数のプロセス・スプ Support Q&A この問題を解決するために、シノプシスは拡張信頼性テストを追加で実施し フィジカル編 定されています。 Support Q&A 以下です。 があります。最も厳しいのは Grade 0 で、周囲温度は -40℃ ~ +150℃と規 論理合成編 要件には遠く及びません。通常、自動車メーカーが要求する故障率は 1ppm 要とされる機能安全に見合った「温度グレード」に合わせて設計を行う必要 Support Q&A ん。これはほとんどの量産製品で許容できない数字で、車載グレード製品の しています。AEC-Q100 規格に適合するには、個々のアプリケーションで必 最新技術情報 信頼水準 90% で欠陥率が 2,000ppm 程度であることを実証したにすぎませ と信頼性を維持できるかをストレス・テストによって判定することを目的と Technology Update AEC-Q100 規格は、デバイスがアプリケーションにおいて一定レベルの品質 ションおよびクオリフィケーション要件を厳格に規定している場合もありま す。車載向け IC および IP に関する規格としては、ストレス・テストに基づい NVMアレイの信頼性を実証する際に最も見落としがちなのが、この拡張信頼 たICのクオリフィケーションについて規定したJEDEC JESD47Fもあります。 性テストです。1,000 個の IP の故障をゼロに抑えたとしても、実際の自動車 に求められる DPPM(百万個当りの不良チップ数)基準を満たすものではない こうした点をふまえ、シノプシスはすべての主要プロセス・ファウンドリお よび Tier 1 半導体サプライヤと緊密に協力してテスト・チップを作成し、上 記の 3 つすべての基準を満たすかそれを上回る IP を開発しています。 からです。拡張信頼性テストでは「テールビット」に着目します。テールビッ トは、フローティング・ゲート(ビットセル)に存在し、ゲート内に発生する チャージロスに起因するリテンション故障を引き起こします。これが、通常品 種とは異なる振る舞いをする原因となります。こうした現象を最小限に抑え 1 DPPM(100万個当たりの欠陥部品数 = 1)未満の高い信頼性目標 高信頼性の NVM を開発するには、テスト手順に以下のものをすべて含める必 要があります。 ● ● ● ておかない限り、市場での信頼性を損なう原因を根絶することはできません。 クオリフィケーション・テストの後に実施する拡張信頼性テストでは、さ らに多くのデータを収集してビットセルの将来的な故障確率を推定します。 キャラクタライズ:量産環境における NVM IP の製造性を確認します 次に、NVM の経年的なふるまいを予測するモデル内でこのデータを使用し クオリフィケーション:NVM IP が関連するすべての業界標準規格に適合し ていることを確認します ます。 信頼性:NVM IP が目標とする信頼性仕様に適合していることを確認します シノプシスは、限られた数のサンプルの信頼性トレンドに基づいて経験的モ これら3つの要求をすべて満たすために、シノプシスは実証済みのIPテスト・ メソドロジを導入しています。特に大きな課題は、ごく限られた数のサンプ NVM アーキテクチャ デルを作成し、はるかに多くのサンプルの長期的な信頼性を評価しています。 表 1 に、各アーキテクチャの信頼性に関する経験的モデルの精度を示します。 浮遊ゲート故障率 テストしたロウの数 不良ロウの数(モデル) 不良ロウの数(データ) シングルエンド・センスアンプ 2.4E-4 48,604 364 386 シングルエンド・センスアンプ(ECC あり) 2.4E-4 48,604 1.88 2 差動センスアンプ 2.4E-4 48,604 0 0 差動センスアンプ(ECC あり) 2.4E-4 48,604 0 表 1. 長期的信頼性モデルと実際のシリコン テスト結果の比較 0 ECC:エラー検出訂正機能 9 What's New in DesignWare IP? 車載アプリケーション向けの路上試験済みMTP NVM IP - 車載機器向けSoCのマストアイテム 前ページより続く コストと消費電力の削減 車載市場で競争力のある製品を投入するには、コストと消費電力に関する厳しい要求も満たす必要 があります。たとえば NVM のアイドル・モード時の消費電流は 180nm 1.8/5V テクノロジの場合 シノプシスの路上試験済 DesignWare AEON MTP NVM IP で0.1µA未満が要求されるのが一般的です。車載システム設計者やシリコン・パートナーの間では、 DesignWare AEON™ MTP NVM IP ソリューション 従来のシステムで使用されていた組込みフラッシュに代わる、より低コストで最適化されたソ は最大 100 万サイクルの書き込み耐性および最大 リューションが求められるようになっています。こうしたニーズに向けて、シノプシスは追加のマ スクやプロセス工程が不要なマルチタイム・プログラマブル(MTP)NVM を提供しています。 200ºC までの温度をサポートしており、過酷な PVT (プロセス、電圧、温度)ばらつきにも耐えられるよう 設計されています。200ºC まで正常読み出しが可能 より安価なパッケージの採用、ダイ面積の縮小、IC 製造に必要なマスク数の削減などはいずれも量 で、プログラムの書き換えは 175ºC まで可能です。 産コスト削減に効果があります。しかしメーカーにとっては、量産立ち上げ時に使用する自動テス これは業界最高レベルの耐性です。シノプシスの ト装置(ATE)のコストも大きな負担となっています。このコストは ATE の使用時間に比例して毎 NVM IP を利用すれば、ロジック修正による複数回書 秒数セント単位で発生し、ミックスド・モード・テスターの場合はさらに跳ね上がります。シノプ き換えが可能になるため、マスクを作り直す必要がな シスのNVM IPは、バルク消去や高速プログラム / 消去など、プログラミング時間(すなわちコスト) くなります。AEC-Q100、JEDEC JESD47F やその他 を圧縮して量産立ち上げ期間を短縮する特別なテスト・モードをサポートしています。 のファウンドリ認証基準など、主要な業界基準への準 拠性認証を受けています。また、更なる信頼性強化の 市場投入時間 ためにエラー検出訂正(ECC)機能も提供しています。 シノプシスの IP ソリューションを活用することによ 豊富なラインナップを誇るシノプシスの MTP NVM IP は多くのファウンドリをサポートし、プロセ り、設計者の皆様は、車載機器に要求されるコスト、 ス・テクノロジも250nmから40nmまで対応しているため、設計者にとってインプリメンテーショ サイズ、高度な信頼性、プログラマビリティなどの条 ンの選択肢が最大限に広がります。特に入念なクオリフィケーション・テストが必要な場合、新規 件を達成することができるようになります。シノプ IP の開発とバリデーション、キャラクタライズには 1 年を要することもあるため、幅広い種類の シスの NVM IP は、非常に厳格な認証テスト・プロセ NVM IP を既成品として入手できることは、余分な開発リードタイムを防いで市場への早期投入を スを経てリリースされていますので、IP の組込みで発 果たす上で大きなアドバンテージとなります。 生するリスクを最小化することができます。 さらに、シノプシスの NVM IP はこれまで 100 を超える量産デザインで採用実績があるため、新規 導入のリスクも劇的に軽減します。 まとめ 現在の自動車では、さまざまな安全重視機能をサポートするために書き換え可能な NVM が必要と されています。ここで重要なのが、Grade 0、1、2 の車載アプリケーション向けに設計され、自動車 規格の厳しい要件を満たした NVM IP を使用するということです。車載グレードの NVM IP を使用 すると、市場投入時間の短縮およびリスクの軽減につなげることができます。 シノプシスの NVM IP は厳格なキャラクタライズ、クオリフィケーション、信頼性テストに合格し ており、コスト、面積、消費電力の厳しい要件を満たすことができます。 詳細情報 ※1 ● ● ● ● 動画:DesignWare NVM IP Characterization and Qualification Process Testing https://www.youtube.com/watch?v=9u84M9O0eaw ウェブページ:DesignWare NVM IP http://www.synopsys.com/JP2/IP/SRAMandLibraries/nvm Today & Tomorrow バックナンバー(96 号) :車載アプリケーション向け NVM IP 設計の要点 http://www.synopsys.com/Japan/today-tomorrow/Documents/96/96-22-23.pdf ホワイトペーパー:Developing High-Reliability Reprogrammable NVM IP for Automotive Applications https://www.synopsys.com/dw/doc.php/wp/developing_high-reliability_reprogrammable_nvm_for_automotive_wp.pdf お客様活用事例:Analog Devices Achieves Silicon Success for Multiple ICs Using DesignWare NVM IP https://www.synopsys.com/dw/doc.php/ss/adi_nvm_ss.pdf 著者紹介 Faisal M. Goriawalla:シノプシスの DesignWare NVM IP および組込みテスト / リペア担当プロダクト・マーケティング・マネージャー。組込みフィジ カル IP のデザイン・エンジニアリングおよびマーケティングに 13 年以上従事。組込みメモリー・コンパイラの開発者としてキャリアをスタートし、ARM® 社および Lucent Technologies 社でメモリー、スタンダードセルおよび I/O ライブラリに関するさまざまな技術職およびマーケティング職を経て、シノプシ スに入社。ノースカロライナ州立大学にて電気 / 計算機工学の修士号を取得。 10
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