第1日 6月12日 D会場 セッション「消費者」 自動車相談の実態と自動車保証制度−中古車関連問題を中心に− 武蔵野短期大学 1. 磯村浩子 問題意識 これまで自動車保有リスクへの対応という視点から、自動車の保証制度につき、アメリカ、ドイツ、 日本を比較して考察してきた。この間、わが国の中古車についての問題の所在が推測されたもの の、実態把握が困難で、確認し得ない部分があった。 商品やサービスにかかる相談の実態は、国民生活センターほか全国の消費生活センターなど に寄せられた苦情が、国民生活センターが管理する、PIO−NETに集約され、国民生活センター から年報、あるいは警戒情報の形で発表されている。自動車に関しても同様であるが、中古品が 大きな市場を形成し、流通市場も発達しているにもかかわらず、中古車についての苦情などのデ ータは殆ど発表されていない。民間の裁判外紛争処理機関である自動車公正取引協議会、自動 車製造物責任相談センター、日本中古自動車販売協会連合会からの関連資料の報告はあるもの の、部分的なものに過ぎなかった。そこでPIO−NETの自動車相談につき、中古自動車を中心に 情報公開を求め、中古車の苦情の実態を明らかにするとともに、特に中古車における表示および 保証制度との関連につき考察しいと考えた。そしてその結果に基づき、諸外国に比し未発達ともい える、中古車保証制度につき問題提起を試みる。 2.報告要旨 PIO−NETの分類は、新車と中古車を明確に分別するものではなく、自動車に関する相談 のうち、中古品と分類されたもの、すなわち中古自動車とその他の自動車を比較するものであ る。2002年12月の一ヶ月間に全国の消費生活センター等に寄せられた自動車に関する相 談、約830件のうちの約46%を占める中古自動車の苦情傾向を分析すると、中古車の実態が 浮き彫りにされ、諸外国に比し未発達ともいえる、中古車保証制度の問題点も推測された。 さらに消費者利益のため、情報の非対称性が問題となるが、中でも特に情報提供の必要が 強く求められる中古自動車について、基本的な情報の提供が必要であるにもかかわらず、「自 動車業における表示に関する公正競争規約」に中古車に関する施行規則は存在するもの の、一般に浸透しているとは言いがたい。また都道府県の条例に、保証、アフターサービスの 項を含むものもみられるが、現在のところ、指定商品として、自動車は含まれない。保証に関 する条例の見直しもなされる昨今であるが、まず行政において、保証に関する一般的なルー ルの検討が不可欠と考えられる。また事業者においても、「公正競争規約」の検討とそのルー ルの徹底を図る方策が必要である。
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