無言の見張り番―遠隔海洋汚染センサーの利用の増加

無言の見張り番―遠隔海洋汚染センサーの利用の増加
The silent sentinels – Increased use of remote marine pollution sensors
リモート汚染センサーにより、汚染状態の定点での継続的監視が可能に。
海洋汚染を検出するための監視ニーズの高ま
ギーの光線が対象範囲に存在する油を蛍光発
りを受けて、政府と産業界の双方で、炭化水
光させ、特徴的な波長の光を発生させます。
素の流出の確実な検出と、流出対策の強化に
ユニットに搭載されたカメラは、ユニットの
向けた様々な取り組みが行われています。例
範囲内、つまり装置から半径 10 メートル以内
えば、上空からの海面浮遊油の検出、赤外線
の水面に浮遊する、あるいはわずかに水面下
/紫外線カメラを使用した夜間の流出検出、
にある極めて微量の炭化水素(厚さ±3 ミクロ
船舶の油水分離器の高性能化、研究室でサン
ン)を検出することが可能です。
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プルを精密にChemical Fingerprinting をするこ
とによる流出汚染物質と汚染源との照合等の
多様な技術が活用されています。
このような機械化と自動化の進展が、汚染の
All photos courtesy of InterOcean Systems Inc., San Diego.
検出精度の向上をもたらしてきたのです。
最近の大規模な流出事故では、海や海岸線の
広範囲かつ(数日間にわたるような)長時間
の調査に、小型の無人飛行機や無人船 2、さら
には人工衛星が活用されています。現場から
離れた陸上の制御センターから、音声・画像
通信リンクを通じて状況を確認しながら、遠
隔制御が行われています。
リモートセンサー
さらに最近では、汚染状態の定点監視を可能
にする、より狭い範囲の流出検出に的を絞っ
たリモート汚染センサーが開発されて広く利
用されています。
光学センサーが搭載された監視ユニットは、
海上、沿岸、港湾用の環境監視プラットフォーム「Slick
全天候型であり、そのセンサー部でユニット
Guard」
の下の狭い水域を捉えられるようになってい
ます。センサーには高出力のキセノンランプ
汚染物質を検出すると表示または音によるア
が使用されており、ここから発する高エネル
ラームが発せられるほか、電波、データ、電
話回線、携帯電話、Wi-Fi、衛星などを介して、
近くにいる、あるいは数百/数千マイル離れ
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質量分析装置や X 線分光器などの分析技術によって汚
染物質の存在、種類、発生源を特定すること
た場所にいる乗組員やドックの作業員に対し
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Gard News206 号 2012 年 5/6 月の記事「隠れる場所はな
い―船舶活動の遠隔監視の拡大」を参照してください。
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remote marine pollution sensors
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Gard News 210 May/July 2013
てテキストメッセージや、電子メール、音声
に高めることができます。また、特に夜間な
メッセージで検出レポートが送信されます。
ど、人が監視できない遠隔地に設置すること
も可能です。装置は、人と違って疲れること
も見逃しなどのミスもなく、常にタイムリー
に通報します。装置の費用は、ある場所に人
を張り付けて監視させるコストよりも大幅に
少ないため、そういった業務に割り当ててい
た人員をもっと重要な業務に回せるようにな
ります。
また、流出検出に冗長性をもたせて、実際の
港、ターミナル桟橋用の代表的な設置型プラットフォー
値と乖離した観測結果が生じないようにする
ム
ことが可能です。ドック、船舶、海洋施設か
ら離れた場所にいる陸側の管理担当者が汚染
影響
事故の発生に早期に気付くようになるため、
この技術がもたらす影響は広範囲に及びます。
対応計画の発動までの時間を無駄にしないで
限られた範囲(船舶やドックの側、係留施設
済むほか、現場のスタッフの対応状況を確認
や港湾、船や海洋施設のデッキなど)の汚染
できるようになります。
事故を直ちに検出し、すぐに現場に駆け付け
て状況確認が行えるように現場のスタッフに
監視装置を用いて早期に検出できれば、汚染
通知したり、遠く離れた場所にいる管理者に
対策が迅速に発動できるようになり、結果と
知らせたりすることができます。こうした技
して、事態の深刻化を防げる可能性が高くな
術を用いることで、どのような天候や環境下
ります。
でも、24 時間昼夜を問わず、連続監視が行え
ます。監視ユニットは、浮きを装着して沿岸
水域と沖合のいずれにもブイのように配置で
きます。監視ユニットの検出感度は、感度を
落として炭化水素が高濃度の場合のみ警報を
発するように設定することも、常に高感度に
しておくように調整することも可能です。
非接触光学スキャン技術が使用されているこ
とから、ユニットは汚損することがなくメン
テナンスもほとんど必要ありません。カメラ
は、レンズが覆われるとアラームを発信する
ように設定できるため、汚染の隠ぺいや発見
の妨害ができないようになっています。また、
ビデオカメラを装着すれば、検出を妨害しよ
うとする者の特定にも役立ちます。
監視装置を利用することで、港湾地域、船上、
海洋施設における汚染事故の検出機会を大幅
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remote marine pollution sensors
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まとめ
全体として見れば、このような高性能な「無
言の見張り番」の利用度が高まると、ドック、
ターミナル、船舶、係留施設、海洋施設等に
おける汚染の検出状況のバラツキが限りなく
ゼロになり、検出件数が増えるため、結果と
して、よりクリーンな環境がもたらすように
なるでしょう。
船積み埠頭の例
限界
もちろん完璧な技術というものはなく、監視
装置にも限界があります。ユニット自体が故
障することもあれば、停電によって機能が停
止する場合もあります(ただし、このような
事態を想定してバッテリーやソーラーパネル
が装着されたユニットもあります)。通信上
の問題により、汚染事故の情報が遠く離れた
受信者に届かないこともあります。また、自
分たちが働く場所に「スパイ」装置が設置さ
れていることに憤ったり、人為的ミスが原因
で起こった流出事故が検出されないように邪
魔立てしようとするスタッフが出てくるかも
しれません。
監視ユニットは、非常に限られた範囲内の炭
化水素の汚染物質のみ検出が可能です。つま
り、非炭化水素の汚染物質が排出されていて
も通知されません。また、大規模汚染が発生
していても、装置に搭載されたカメラの範囲
内に流入や浮遊がなければ通知されることは
ありません。
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