国際法レポート・小レポート 国際法レポート・小レポート総評

国際法レポート・小レポート総評
国際法レポート・小レポート 総評
◎レポート
レポートは『核兵器』の方を高めに採点したのですが、平均点がほぼ同じという意外な
結果になりました。
採点基準としては、まず要約の出来を重視し、よくまとめられているか、まんべんなく
同じペースで要約できているかを6割(18 点)を標準に採点しました(要約ができていれ
ばおおむね 21 点を与えています)。次に意見の内容が優れているか、よく考え抜かれてい
るか、本文の内容を踏まえて書かれているかを見て、要約の点数から0点から4点位まで
の間で加点・減点しました(減点はほとんどしていませんが)。
『核兵器と国際平和』と『テロ・戦争・自衛』に共通することを書かせていただきます。
要約にバラつきがあるものが多く、同じようなペース・分量で要約していただきたいと
思います。前半をていねいに要約しても、後半は手を抜いて雑な要約というのが多かった
です(特に『核兵器と国際平和』で1章・6章のみとか、1章・2章のみの要約が多かっ
たです)。章毎の要約でもバラつきが見受けられました。段落の最初を一字空けるというこ
とができていませんし、最初から最後まで1段落というレポートもかなりありました。内
容の流れを考えて、段落を分けながら書くようにしてください。文末の「です・ます体」
と「だ・である体」を統一せず、両者が混じっているものが多くありました(普通は「だ・
である体」です)。
要約と意見の区別が不明確なレポートが非常に多かったです。はっきり見てわかるよう
に区別して書いてください。また、「
」をつけて引用する場合には一字一句正確に引用し
てください。それから、参考資料を使うのはかまわないが意見は自分の言葉で書いてくだ
さい。
意見はダラダラと書かないで、整理して、いくつの項目に分けて、「第一に」「第二に」
などをつけて書いてほしいと思いました。レポートの中には漠然と課題図書の内容に「賛
成」「反対」と書いているだけで、本のどの部分について賛成・反対なのか、賛成・反対の
理由は何なのかはっきりしないものがありました。
インターネットの資料の丸写しは減点しました。確認できたサイトは以下のとおりです。
http://www.jlaf.jp/seimei/2001/sei_20010928-2.html
http://www.cpm.ehime-u.ac.jp/AkamacHomePage/Appeal/Appeal.html
http://www.gifu-u.ac.jp/~terasima/peace-material.htm
それ以外に、どの本からはわからないが何か教科書の内容を下敷きに書いているものが
ありました。
インターネットでロシアのSTARTII 条約批准を確認して載せた(URLを明記して)
のは良かったです。が、要約をしながらその途中に区別も典拠も示さずイラクや北朝鮮の
現況を書いたものがあって、それでは正確な要約とはいえないだろうと思います。注をつ
けるなり意見の部分に書かなけばいけないだろうと思います。
○核兵器と国際平和
この課題図書では各章の冒頭に章のまとめが載っていて、それを安易に引き写したレポ
ートも多かったです。
気になったこととして、条約が「発効される」「発効されていない」と言い方が多くて
驚きました。「発効」は「効力の発生」のことですから、「条約が発効する/しない」「条約
を発効させる」という言い方が正しいです。ちなみに、その他の専門用語は「条約に署名
する」「条約を批准する」「条約を採択する」という使い方をします。
意見の内容が課題図書の内容と直接関係ないものも見受けられました。例えば米国のイ
ラクへの軍事攻撃や対テロ戦争、北朝鮮の核開発疑惑(関係がないわけではないが課題図
書を踏まえた意見とはいえない)を論じたものがありました。
意見については、冷戦や核抑止論を肯定する意見が多くて大変驚きました。課題図書の
内容をそのまま肯定する意見よりも、反対する意見の方がインパクトがありましたが、数
の上でも結構ありました。一つ気になるのは、CTBTが原発まで禁止しているとの誤解
がありました(原子力発電は平和目的ですが核爆発ではないので禁止されていません)。
興味深いコメントとして次のようなものがありました。
・抑止力のため核を持つのは当然である。
・核兵器は拡散して当然である。
・差別的体制であり、五大国の優位の容認になるのでNPT体制に反対である。
・核兵器によって世界の秩序が保たれており、核を廃絶すると戦争の危険が増す。
・核兵器を上回る威力の兵器が開発されてはじめて核廃絶が実現するだろう。
・一国非核地位宣言は非核地帯条約と違って、他国と交渉する手間が省けてよいのではな
いか(湯山注・五大国の支持する内容で五大国が消極的安全保障を与えないと意味ない
でしょうね)。
・北朝鮮との信頼醸成に役立つので、北東アジア非核地帯構想を推進すべきである。/北
朝鮮の核開発を阻止するため韓国と連携すべきである。
・ロシアのSTARTII 批准を促進するためにはNATO解散や先制不使用の保障が必要
である。
・理想や理念を語るよりも、既存の条約をしっかり守らせる方が重要である。
○テロ・戦争・自衛
最初に、この本の自衛権の要件(必要性・緊急性・均衡性)は授業で教えた要件(急迫
性・比例性)とは違いがあることにご注意ください。
その自衛権についての議論がこの本の核心部分ですが、その要約が不正確なものが見受
けられました。特に、「慣習法上の自衛権」に関して、著者が一番言いたいのは「慣習法上
の自衛権も武力攻撃の発生を要件とする」ということで、「カロライン号事件は自衛でなく
緊急避難の事例で、そのフォーミュラを用いるのは適切ではない」という話は傍論に過ぎ
ません。そこがよく読めていないレポートが多数ありました。
また、テロ関係の条約で裁判権の設定は締約国の義務であって、権利ととらえているレ
ポートも多く見られました。
それから、レポートの中で国連総会決議の内容をダラダラと引用しているものがありま
した。
意見についてですが、最初対テロ戦争に賛成していたが本書を読んで反対になったとい
う意見が非常に多くありました。昨今のイラク問題を取り上げた意見も結構ありましたが、
中には「イラクを攻撃するのはブッシュ大統領にとって父親の仇だからである」という意
見があったり、イラクとイランを間違えているレポートもありました。
興味深い意見として、
・課題図書の内容はユートピア的である。理性を持った人だけが法を守るのであって、ア
メリカの行動は殺人事件の犠牲者の遺族が犯人の死刑判決を望むのと同じようなもの
である。
・国際法は現在の状況にまったく対応できていない。
・経済制裁でいくべきであると課題図書は主張するが、経済制裁は市民が被害にあうだけ
でテロ防止の実効性はない。/経済制裁をすれば自暴自棄になるだけである。
・テロ組織にも国際法主体性を認めれば国際法によって規制できるのではないか。
・米英軍がタリバーン政権を打倒したのは、アフガン人民の自決権を手助けしたのではな
いか。/今のアフガニスタンは自立能力がないので、タリバーンを打倒しても自決権侵
害とはいえない。
・アメリカは「自衛」を主張しているが、真の目的は自衛ではなくメンツや憎しみのため
である。
・タリバーンがテロの容疑者をかくまい引渡要求に応じないならタリバーン自身の行為と
いってよいと思う。
・再びテロ攻撃にあう蓋然性は高いので、緊急性の要件はみたされる。
・同時多発テロからアフガン攻撃までの4週間はテロ組織やタリバーンの動向を見定める
ために必要な期間であった(緊急性がないわけではない)。
・米国がイラクや北朝鮮を攻撃しようとするのは本書の指摘する自衛権の濫用である。
・国際法にのっとって自衛権を主張するなら被疑者の取り扱いも国際法に従うべきである。
・アメリカが安保理決議を求めなかったのは拒否権の問題があるから。
・米国の支配こそが抑圧であってテロを生む。北朝鮮の挑発的行動もそうである。
・テロを実行したわけではない一般市民の被害が一番問題である。
◎第1回小レポート
要約の出来が採点のポイントですが、どなたかも書かれていたように、きちんと要約し
ようとすると3枚でまとめるのは難しいかもしれません。内容を理解した上でバランスよ
く要約ができるかどうかが重要です。最初の部分の要約で3枚に達したのでそこで打ち切
る、または後の部分の要約が雑というレポートが多く、また後半の第2回の要約がレポー
トのほとんどを占めるというものも見受けられました。
意見については、色々と面白いものがありましたが、戦争についての記述に関連して、
米国のアフガン空爆やイラク攻撃にコメントしたものが多かったですし、「国際法の問題
点として戦争を抑制する力がない」という意見もありました。国際法の歴史についてのコ
メントもたくさんあって、中には、「国際法というのはヨーロッパから始まったという事実
は意外だった」(世界史を習ったことがない?)とか、「国際法は昔に比べるとずいぶんよ
くなった」「国際法が進歩しても小国には今も発言権はない」といったコメントもありまし
た。
◎第2回小レポート
二つの論文を読んで論点をまとめるようにという課題でしたが、第一論文しか読んでな
ものが多数あり、それには辛目に採点させていただきました。それぞれの単なる要約に終
始し、論点毎のまとめになってないものも多かったです(第一論文=判例評釈の事案の概
要をダラダラと書いたものも見受けられました)。第一論文の論点と第二論文の論点で重な
っているのはどれか、関連する点を把握した上でうまくまとめることができるかどうかと
いう点がポイントです。
特に第一論文と第二論文で論点が重なっている「無害性の基準」の論点(第一論文の通
航の性質を基準する説と通航の態様を基準とする説の対立と、第二論文の軍艦の無害性は
その行為または態様により判断されるという見解が重なっている)と「沿岸国の規則の内
容」の論点(第一論文の非核三原則の法規性と第二論文の軍艦への退去要求の根拠となる
沿岸国の規則の問題が重複している)は、そのまま要約すると繰り返しになってしまいま
す。そこを結合させてうまくまとめることができるかどうかです。
それから、(パソコン・手書きともに)誤字に非常に多かったのが、正しくは「法規性」
(法規としての性質を持つかどうかということ)が「法規制
制 」(法によって規制すること)
となっていたこと、船舶ですから「通航」としなければならないのが、「通行
行 」となって
いたことです。課題論文にも使われているわけですから、よく見て書いてほしいと思いま
す。
意見では、非核三原則は重要で、核搭載艦の通航は国民に不安や恐怖を与えるから「無
害でない」という意見がかなりありましたが、無害性の定義に国民の不安は入ってないと
思います。それから、「放射能汚染の心配がある」という意見もありましたが、ソ連原潜の
場合は事故で汚染が危険がありましたが、核兵器や原子力潜水艦というだけでは放射能汚
染の心配があるということにならないのではないかと思います(原発は全部危ないことに
なります――現実に危ないのかもしれませんが)。
目についた意見として、
・非核三原則は重要。条約(国連海洋法条約)の改正をめざすべきである(湯山注・この
意見は非常に多かったです)。
・日米間、日ソ間の個別協定で国連海洋法条約を修正すればよい。
・通過するだけなら問題ない(湯山注・これは目からウロコの意見でした。入港は日本が
事前に許可できる〔米軍の場合は地位協定の問題でありますが〕ので、入港目的の領海
通航はそれで規制できるでしょう。通過目的の領海通航だけ我慢すればよいということ
になります)。
・通過するだけなら核の持ち込みにあたらないのでは(湯山注・こちらは非核三原則との
関係で問題ないという意見)。
・航路を指定すればよいのでは。
・日本が領海条約・国連海洋法条約に留保をしなかったのが悪い。
・非核三原則を憲法化して国際法に対抗すべきである。
・やはり国際法は大国の押し付けだ(湯山注・それはちょっと違うと思います。領海条約
はジュネーブ会議で各国の意見のやりとりの中で生まれたものだからです)。
なお、最後の授業で配布した補足をもう一度載せておきます。
第一論文(高林論文)が、無害通航権の「無害性」について、①「船舶の通航その
ものの性質を基準とする説」と②「船舶の通航の行われる仕方を基準とする説」があ
るとし、①説が領海条約の解釈であるが国連海洋法条約は②説をとっているとしてい
ます。ただ、①の表現は誤解を招く表現です。「船舶そのものの性質を基準とする説」
(船種別規制説という。つまり商船か軍艦か)が正確であると思います。第二論文(中
村論文)は当初から②説(行為・態様別規制説という)が妥当であるという立場(こ
ちらが多数説)で、この説では、軍艦があるからといって無害通航権を否定されるわ
けではなく、軍事演習や測量、機雷敷設など具体的行為に従事して初めて「無害でな
い」ことになります。
◎誤字脱字集
未発行(未発効)
保証措置(保障措置)
安全保証(安全保障)
用件(要件)
観
告的意見・歓告的意見(勧告的意見) 中距離核戦略(中距離核戦力) IMF(INF、
中距離核戦力削減条約/IMFは国際通貨基金)
止条約)
批難(非難)
非判(批判)
CTBC(CTBT、包括的核実験禁
ストックスパイラル(ストックスパイル、解体
した核弾頭から取り出した核物質)
ラトロンガ条約・ラトンガ条約(ラロトンガ条約)
悲裂(卑劣)
強硬規範(強行規範)
検当・見当(検討)
CC規定(ICC規程)
栽判(裁判)
殖民地・値民地(植民地)
栽量(裁量)
入航(入港)
政党政府(正統政府)
特懲(特徴)
詩人(私人)
I
過度期(過渡期)
軍鑑(軍艦)
規制(規則)