今月のテーマ記事 「懲戒処分について(第2回)」

平成26年3月号
今月のテーマ記事
「懲戒処分について(第2回)」
~懲戒解雇~
・懲戒解雇の相当性
・懲戒解雇の手続き
・懲戒解雇と退職金
・懲戒解雇と解雇予告制度
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目次
・各弁護士からのご挨拶(2,3頁)
・今月のつぶやき(4頁)
~離婚前でも、親がDV防止法の保護命令を受けた児童は児童
扶養手当の対象に!~
・今月のテーマ記事(5,6頁)
・今後のニュースレター発行とセミナー開催のご案内(7頁)
・事務所からのご案内(8頁)
・事務所へのアクセス(9頁)
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各弁護士からのご挨拶
代表社員弁護士
森本精一
「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」
村上春樹の最新作です。
ちなみに,「多崎」は,関西風の「たさき」ではなく,「たざき」なのだそ
うです。
何故彼が昔高校時代仲のよかった友人達から仲間はずれにされたのかという
ことを巡って,最後にノルウェイにいるクロちゃんがその謎を解き明かした上
で,「癒し」てくれます。「ノルウェイの森」に出てくる病んでいるレイコさ
んみたいな存在です(この解釈があっているかどうかは自信がありませんが)。
これを読んで,直接の関連性はありませんが,修復的司法の世界を思い出し
ました。
ノルウェイの犯罪学者ニルス・クリスティ・オスロー大学教授は,囚人の大
半は失業者や障害者など社会からの逸脱者であり,全ての市民が裁判に参加し,
逸脱者の実態を知り,社会秩序を維持するために何をなすべきかを考えること
が必要だといっています。ノルウェイは社会サービスを受ける権利が保障され
ており,死刑も無期懲役もない国で,ノーマリティの原則という必要以上に自
由を制限しないと刑事政策の国でもあり,その効果たるやほかの北欧諸国に比
べ再犯率が低いという成果を収めてもいます。連続殺人犯すらも許してしまう
究極の死刑廃止論です。よりよい社会政策は究極の刑事政策であるというべき
でしょうか。
日本でももう少し進んだ議論がなされてもよいように思います。
3
弁護士
湯川優子
湯川です。桃の節句も過ぎて、春の到来を感じるこの頃です。
3月は、卒業や異動の季節でもありますね。
長崎地方裁判所でも大村支部や島原支部配属の裁判官が異動され(3年くら
いで転勤されることが多いです。)、4月から新しい裁判官が来られます。
どのような裁判官が来られるか、今の一番の関心事です。
弁護士
山下雄一
こんにちは。島原の山下です。
最近,ルンバを購入しました。所定の時間に設定しておくと,毎日その時間に
所定範囲を掃除をしてくれるのでラクチンです♪
さらに,ルンバに活躍してもらうには部
屋の荷物をどけないといけないので,従来
より部屋の整頓を意識するようになったと
いう効果も出ました。「ほら,ルンバくん
がお掃除できるようにお片付けしなきゃ。」
などと言って,子供に整理整頓をしつける
のにいいかもしれません。
何度も壁にぶつかって方向転換しながら
掃除をしている健気な姿を見ていると,
不思議と動物のように愛おしい気持ちにな
ってしまいます。
弁護士 春明航太
今年も早いもので3月になりました。
3月15日は我が家の愛犬「ふく」の17
回目の誕生日です。
人間に換算すると90歳近いおばあちゃ
ん犬になりましたが,いまでも私が帰宅す
るとけなげに毎日お出迎えしてくれます。
階段が登れなくなったり,トイレが近く
なったりと,手間がかかることは増えまし
たが,いまだもって現役バリバリの我が家
のアイドルのご紹介でした。
4
今月のつぶやき
~離婚前でも,親がDV防止法の保護命令を受け
た児童は児童扶養手当の対象に!~
森本綜合法律事務所の弁護士の湯川優子です。
警察庁のまとめでは、昨年、児童虐待の疑いがあると児童相談所に通告された件数
が過去最高だったとのことです。
あまり知られていませんが、少し前の平成24年8月1日より、児童扶養手当の支
給対象が、父または母が配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律
(DV防止法)の保護命令を受けた児童に拡大されています。
この改正により、両親の離婚前でも、父または母が裁判所のDV防止法の保護命令
を受けた児童が児童扶養手当の支給対象となりました。
本改正は、配偶者からの暴力を受けた親及び児童の生活への援助のために重要な改
正であったと考えます。
配偶者に対する暴力や児童虐待が未然に防止できるよう周囲の関わりが重要である
ように感じました。
今月のテーマ記事
「懲戒処分について」第2回(最終回)
~担当弁護士 春明航太~
5
第4
懲戒解雇
1 懲戒解雇の相当性(処分内容が重すぎないか)
第1回でお話ししたように,懲戒処分をする場合には,「その処分内容は重すぎ
はしないか」という点が問題となります。懲戒解雇は労働契約を一方的に終了させ
るという懲戒処分の中でも最も重い処分なので,従業員が重大な問題行為をした場
合でなければなかなか有効とは認められません。
もっとも,横領などの刑事事件,経歴詐称やセクハラなどの会社に重大な混乱を
及ぼす行為については,比較的懲戒解雇の有効性が認められやすい傾向にあります。
2 懲戒解雇の手続き
懲戒解雇は,最も重い懲戒処分なので,以下のような慎重な手続きを経る必要が
あります。
(1)
懲戒処分対象行為の告知
まず,従業員に対して,いつのどのような行為に対して懲戒処分を科す予定
であるかを書面で告知します。告知書面の写しに受領署名をもらうなどして,
告知したことの証拠を残しておくとよいでしょう。
(2)
弁明の機会の付与
次に,懲戒処分を科されることについて,従業員に意見を述べる機会を与え
る必要があります。
この手続きは,あくまでも従業員に意見を述べる機会を与える手続なので,
従業員が欠席したり,出席しても意見を述べなかったりした場合でも問題はあ
りません。従業員に意見を述べる機会を与えたことの証拠として,前記(1)の
懲戒処分対象行為の告知と併せて,従業員の意見を聞く日時と場所を書面で通
知し,通知書面の写しに受領署名を得ておくとよいでしょう。
従業員が出席して意見を述べるときには,後に紛争になった場合に備えて,
録音をしたり,議事録を作成して内容確認の書面をもらったりしておくことを
お勧めします。
(3)
以上が,懲戒解雇をする場合の最低限の手続きとなります。さらに慎重な手
続きをとる場合には,賞罰委員会を開催する,労働組合と協議する等の方法が
ありますので,ケースに応じてどのような手続きをとるべきかを十分検討する
必要があります。
6
3 懲戒解雇と退職金
退職金規程などに「懲戒解雇された場合には退職金を支給しない又は減額す
る」旨の定めを設けておけば,懲戒解雇した場合に退職金を支給しない又は減額す
ることも不可能ではありません。
もっとも,退職金には,従業員の勤続貢献に対する報償という性格があるので,
上記のような規定を置いていたからといって,全ての場合において退職金を支給し
なくてよいということにはなりません。
この点,一般的には,従業員の懲戒処分対象行為が重大な問題行為であり,当
該従業員のそれまでの勤続による功労を失わせてしまうほど著しく信義に反するも
のであったと認められる場合に限り,退職金の不支給や減額が認められるとされて
います。
したがって,まずは退職金規程に懲戒解雇の際の退職金不支給規定を設けてお
き,実際に懲戒解雇することになった場合に,その従業員の問題行為の性質に応じ
て,支給するか否か,支給するとしていくら減額するかを慎重に検討する必要があ
ります。
4 懲戒解雇と解雇予告制度
懲戒解雇も解雇の一種である以上,「解雇予告制度」の適用があります。
「解雇予告制度」とは,従業員を解雇する場合には,原則として,①30日以
上前に解雇することを告知するか,又は,②平均賃金の30日分以上の金銭を支払
わなければならないとするものです。もっとも,この制度には例外があり,「労働
者の責に帰すべき事由に基づいて解雇」する場合には,解雇予告制度の適用がない
とされています。
この点,懲戒解雇をする場合には,通常は「労働者の責に帰すべき事由に基づ
いて解雇」する場合にあたると考えられるので,懲戒解雇をすることが可能な場合
に解雇予告制度が適用されることは少ないでしょう。
※ なお,労基法では,「労働者の責に帰すべき事由に基づいて解雇」する場合と
して解雇予告を省略して解雇する場合には,労働基準監督署長による「解雇予
告除外認定」を受けなければならないとされています。しかし,「解雇予告除
外認定」は行政上の手続きにすぎないため,この認定を得ないままに解雇予告
を省略して解雇した場合でも,直ちに違法な解雇となるわけではありません。
もっとも,「解雇予告除外認定」を受けたことは,当該ケースにおいて解雇予
告制度が適用されないことの根拠づけの1つになりうるので,特別の事情がな
い場合には解雇予告除外認定を受けておく方が無難でしょう。
お知らせ
3月27日(木),本件記事と関連した
経営者様向け無料セミナー
「失敗しない懲戒処分の方法」
を開催いたします。セミナー概要は次頁に記載しております。
7
今後のニュースレター発行とセミナー開催のご案内
今後のニュースレターの発行とセミナー開催のご案内
本年は,4つのテーマについて各3回ずつ計12回のニュースレターを発行致しま
す。さらに各テーマのニュースレターの3回目が発行された時期に合わせて,各テー
マに関するセミナーを当事務所の弁護士が行います。
今後のニュースレターの発行予定
「問題社員対策」平成26年4月~6月(全3回)
法律上の処分をするまでではないが,問題のある社員について,どのような対応
をするのが得策か,当事務所所属の森本精一弁護士が解説します。
「農地をめぐる諸問題」平成26年7月~9月(全3回)
農地は売買や賃貸するために農業委員会の許可がいるなど,特別の規律がなされ
ています。これらについて,当事務所所属の湯川優子弁護士が解説します。
「高齢者住まい法」平成26年10月~12月(全3回)
高齢社会において,高齢者の住居確保などを目的として高齢者住まい法(正式名
称;高齢者の居住の安定確保に関する法律)が制定されました。これについて,当
事務所所属の湯川優子弁護士が解説します。
第1回セミナー開催のお知らせ
3月27日(木)諫早商工会館4階大会議室において平成26年第1回セミナー
「失敗しない懲戒処分の方法」を開催いたします。当事務所の弁護士春明航太が懲
戒処分の方法,必要な手続,注意すべき点など具体的事例を挙げながら分かりやす
く解説いたします。
セミナーの概要は,こちらからご覧ください。
http://www.justitialaw.com/img/201403%E3%80%80%E6%87%B2%E6%88%92%E5%87%A
6%E5%88%86%E3%82%BB%E3%83%9F%E3%83%8A%E3%83%BC.pdf
セミナー参加のお申し込みは,こちらから「FAXお申込用紙」をダウンロード
し,ご利用ください。
http://www.justitialaw.com/img/%EF%BC%A6%EF%BC%A1%EF%BC%B8%E7%94%B3%E8
%BE%BC%E7%94%A8%E7%B4%99.docx
当日は,質疑応答やご参加された方とのディスカッション等も予定しております。
参加費は無料となっておりますので,是非ご参加ください。
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当事務所のご案内
相談受付時間
平日・土曜9時~18時(土曜日は諫早事務所のみ)
※上記時間外,日曜日,祝日等は留守電対応となっております,営業時間内に
事務所より折り返しお電話いたします。
法律相談料
原則として,初回30分無料,30分超過後1時間まで5000円(別途消
費税),以後30分ごとに5000円(別途消費税)が加算となります。
ただし,交通事故(被害者側)に関するご相談は時間に関わらず無料となり
ます(任意保険の弁護士費用特約がご利用可能な場合を除く)。また,離婚に
ついてのご相談は,初回に限り無料となります。
このほか,電話相談,メール相談,キャンペーン等も行っておりますので,
お気軽にお問い合わせください。
離婚・相続サポートプラン
離婚・相続事件において,弁護士より定期的にアドバイスを受けられるリー
ズナブルなサポートプランをご用意しております。詳しくはお問い合わせくだ
さい。
顧問契約のご案内
法的問題発生の前段階で,弁護士によるリーガルサービスを受けることは,
法的紛争の回避,問題発生の予防に役立つものです。また,既に問題が発生し
ている場合でも,弁護士による適切なアドバイスを速やかに得ることで,問題
を早期に解決することができます。
当事務所と顧問契約を結んでいただけると,以下のような特典があります
(一例)。
・法律相談を何度でも無料で,速やかに受けることができます。
・電話・FAX・メールでお気軽にご相談可能です。
・問題が発生した場合の着手金・報酬が割引となります。
・当事務所が開催する各種セミナーに優先的に無料でご参加いただけます。
顧問料は,月額30000円(別途消費税)からとなっております。
是非ご検討ください。
当事務所へのアクセス
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島原鉄道線「島原駅」より徒歩1分
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