日本バーチャルリアリティ学会第 10 回大会論文集(2005 年 9 月) 史跡の VR 化における地中の空間認識補助の研究 Study of space recognition assistance of the earth with VR remains archive 竹谷 康彦 1),小林 孝浩 1),平林 真実 2),関口 敦仁 1) Yasuhiko TAKEYA, Takahiro KOBAYASHI, Masami HIRABAYASHI, and Atsuhito SEKIGUCHI 1) 岐阜県立情報科学芸術大学院大学 (〒503-0014 岐阜県大垣市領家町 3-95 , [email protected],[email protected],[email protected]) 2) 岐阜県立国際情報科学芸術アカデミー (〒503-0014 岐阜県大垣市領家町 3-95 , [email protected]) Abstract: We have been researching the visualization system of the historic site archive that consists of GPS and the direction sensor and the 3DCG display viewer. Our system doesn't use the camera, prepare a real thing as modeling data, and used the technique for synthesizing it to a virtual thing. Therefore, a processing and an effect CG as for a real thing such as geographical features can be added. By using this feature, the visualization to assist the space recognition in the underground was tried to the geographical features display. Key Words: Hhistoric site, GPS, Space recognition 1. はじめに なる、地中物の空間認識の難しさを軽減するための表現方 我々は測量用 GPS と方位・姿勢センサ、三次元表示ビュ 法の報告を行う。 ーアからなる史跡アーカイブの視覚化システムの研究を 地中物の空間認識のし易さによって今ある現実の風景 行ってきた。史跡には、地中に埋まった物体情報が多く含 と、仮想の古代風景を、その土地の持つ環境の中で重ね合 まれるが、これらをモデル化した 3DCG 情報を可視化する わせることができ、時代別の地層の違いを地中に表示する 際、次のような問題が存在する。すなわち、地中にある遺 ことで空間的な情報とともに時間的な情報をも把握しや 構や遺物など隠れて直接見えないものを単に視線に合わ すくする。考古学上では時代層の違いによる表現はきわめ せて表示しても、対象の位置や方向を現在いる地表との関 て重要である。 係で把握させることは困難である。我々のたちのシステム 3.システム構成 では、対象とする環境にある実物体をモデルデータとして あらかじめ用意し、仮想物体とをディスプレイ上で合成、 本研究で使用するシステムは、測量用の GPS と3軸の方 表示する手法を用いている。このため地形など現実物にも 位・姿勢センサを接続したタブレット型 PC で、屋外での CG 的な加工や効果を付加することができる。この特徴を利 個人使用を前提としたコンパクトなシステムである。実際 用し地形表示に地下の空間認識を補助するための視覚化 と仮想の土地・構造物をモデリングした3次元 CG を、位 をこころみた。 置・方向によってリアルタイムに表示するビューアであり、 地形を歩きまわることでインタラクティブに地形の持つ 2. 目的 情報を探索できる。 遺跡の多くは堆積した覆土や埋土の下にある。発見され た遺跡は、発掘調査のあと、一般に保存のため再び埋め戻 される。本研究の目的はこうした遺跡の情報と本来あった 土地との関係を、GPS 装置と電子遺跡アーカイブとの連携 によって維持し、実在する史跡および、周辺の原自然環境 を保存することである。史跡全体や埴輪などの物体の 3D 形状やテクスチャ、それぞれの説明や、鑑賞者とのインタ ラクションのためのデータなどを電子史跡アーカイブと 名づける。 図 1 本報告では、地中に埋まった遺跡の可視化の際に問題に 291 システム概念図 4.地中表示 4.1 従来の地中表示 実際に地中物を表示する方法として、地形を透明にする またはワイヤーフレーム表示にしてまず対象物への視覚 的な障害物を取り除き、それに加えて対象物体の埋まって いる深さをゲージで示したり、深さによって色を変えると いった方法が取られたものが一般的であった。本システム 図 3 でも同様な手法を試みた。しかし視覚的な障害物は同時に ゲージと方位計 現状の地形との比較への手がかりでもあり、従来の方法で は充分とは言えなかった。またゲージや色による空間認識 5 評価 クリッピングする立体として、直方体、円柱、カプセル は、画面が複雑になったり、必要な情報が見辛くなるため 切り替えて使用することが多い。 型など切り替えて使用してみた。総じて従来の方法に比べ て数人が見て、見やすいと感じた。距離感や、傾きの把握 4.2 立体クリッピング 今回は視覚的な障害物を取り除くのに、遠近法に基づい たパースペクティブのついた視線ボリューム立体でクリ において直方体が優れている。側面が垂直面として、底辺 が水平線として出て比較し易い。前面と底面が垂直・水平 だったほうが、より理解しやすいと予測できる。 ッピングを行い、切土やトンネルなど土木で見かける観察 円柱・カプセル型も対象物を円形の中心に合わせ易い効 者が受け入れやすい形状での地形除去を行った。 立体ク 果があると思われ、対象物までの距離や角度を正確に測り リ ッ ピ ン グ は 地 形 と 基 本 立 体 と の CSG(Constructive たいときの視覚効果として有用である。 空間にクリッピング立体という間接的な立体を作り出 Solid Geometry)表現の差演算を擬似的に表示する手法で すことで比較物ができ、空間把握ができるようになった。 ある。 アルゴリズムとして Z バッファとシェーディングバッフ 6 むすび ァをクリッピング立体と地形立体を別々に作成し、ピクセ 空間把握は我々のような屋外型システムには特に重要 ルシェーダにより合成する方法を使用した。 生成された画像の例を図2に示す。 である。次の行動を決めるのに、現在の位置の把握が必要 だからである。また表示する情報を相互で比較するものの 場合、表示の優先順位のつけ方も重要である。 今回の地中表示手法は、この2つの点で優れているおり、 地中物の空間認識の難しさを軽減し、さらに我々のシステ ムのインターフェイスと連携することで計測への可能性 も拡がった。 地層の構造によるレイヤに応じたクリッピングの取捨 選択機能を組み込み、時代による地層の表現についての考 察をすすめることが今後の我々の課題である。 図 2 直方体による立体クリッピングの例 参考文献 [1]関口敦仁,小林孝浩,平林真実,井口誠:RTK-GPS を利 用した史跡アーカイブ表示システムの研究,日本バー 4.3 インターフェイス 我々の使うシステムは位置を取得する GPS とビューアの チャルリアリティ学会第 8 回大会論文集 2003 [2]穴吹まほろ,佐藤清秀,山本裕之,田村秀行:屋外装 向きを 3 軸で取得するセンサを持ち、屋外においても視点 着型複合現実感システム と視線が精度よくリアルタイムで取得できる。常に視線方 の開発と応用,日本バーチャルリアリティ学会大会第 6 向に観察対象物が位置しているため、視線ボリューム立体 回大会論文集,pp.277-280,2001. は効率よく不必要なものだけを取り除ける。取り除かれな [3]大垣市教育委員会:史跡昼飯大塚古墳 い地形は観察対象物の比較の対象として残るため、大きさ や距離を相対的に認識しやすくなる。 化財調査報告書第 12 集 大垣市埋蔵文 2003 [4]Yasuhiko Takeya,Geo-Media:The interactive Augumented またクリッピングされた地形内にグリッドや方位計な -Realty system for outdoor use with VRS-RTK-GPS. どを表示し、視点視線の移動とキー操作で計測を可能とし VSMM2004 た。(図3) 292
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