生活保護受給者における住宅扶助の 代理納付制度の活用実態について

生活保護受給者における住宅扶助の
代理納付制度の活用実態について
調査報告書
平成 26 年 1 月
公益社団法人
全国賃貸住宅経営者協会連合会
©ちんたい協会
は じ め に
本調査報告書は、
「生活保護受給者における住宅扶助の代理納付制度の活用実態」と題し、
平成 25 年 11 月 20 日から平成 26 年 1 月 17 日にかけて、家主及び管理受託会社へアンケ
ート調査を実施し、その結果を取りまとめたものである。
まず、生活保護受給者における住宅扶助の代理納付制度とは、
『生活保護費の受給者が住
宅に関わる扶助費を、賃貸人である家主や管理受託会社に対して、生活保護法第 37 条の 2
に定められた給付費用を遅滞なく納付されるように促す制度』である。
歴史的にみると、同制度は公営住宅においては平成 14 年から存在していたが、民間賃
貸住宅においては、受給者が住宅扶助費を一般の生活費用に充当し、家賃を滞納する問題
などが多く発生したことが原因で、平成 18 年から対象とされることとなった。
その際、手続きの煩雑さを解消するために、滞納実績や受給者の同意、また委任状等の
要件が除外され、よりスムーズに活用しやすく変更されている。このように同制度は、生
活保護受給者に対して、家主が安心して部屋を貸すことが出来る有用な制度であるものの、
制度改正後も実施件数が伸び悩んでいることが懸念されており、また同時に、各自治体に
よって、活用についての適用条件に差があることも判明した。
平成 25 年 10 月時点において生活保護受給者 2,164,338 人のうち 1,838,739 人(出典:厚
生労働省)が住宅扶助費を受給しているが、厚生労働省にも各自治体にも、代理納付制度に
関する統計データは存在しておらず、そのため正確な現状認識ができない状態であった。
そこで家主団体である当会では、当会役員及び全国賃貸管理ビジネス協会会員の協力の
もと、本制度の認知度や活用状況等について、アンケート調査を実施し、その実態の解析
を行った。
この調査報告書により、同制度の課題や自治体の活用度が明確になり、賃貸人と賃借人
の関係がより良好となり、同時に民間賃貸住宅が住宅セーフティネット整備の一助となり
得ることも期待できる。関係者の皆様には、本制度を再認識して頂き、有効活用するため
のご参考にして頂きたい。
最後に、本アンケート調査にご協力頂いた多くの方々に感謝の意を表する。
平成 26 月 1 月
公益社団法人 全国賃貸住宅経営者協会連合会
会長 川口 雄一郎
調 査 概 要
1.調査目的
◎ 生活保護受給者の住宅扶助における代理納付制度の活用実態を調査することにより
現在の活用状況における問題点を抽出し、今後の同制度の有効利用を促すことを目的
とする。
2.調査時期
◎ 平成 25 年 11 月 20 日(水)~ 平成 26 年 1 月 17 日(金)
3.調査対象数
◎ (公社)全国賃貸住宅経営者協会連合会 理事・監事・支部長〔家主等:112 社〕
◎ 全国賃貸管理ビジネス協会 会員〔賃貸管理会社:1,221 社〕
4.調査方法
◎ FAX によるアンケート調査票の配布並びに回収
配布総数:1,333 対象
回収総数:954 対象
回収率:71.5%
(公社)全国賃貸住宅経営者協会連合会 回収数:112/ 112 社〔100%〕
全国賃貸管理ビジネス協会
回収数:842/1,221 社〔68.9%〕
◎ 回答がなかった 379 社については、生活保護受給者との賃貸借契約がなかったもの
として集計した。
5.調査協力
◎ 全国賃貸管理ビジネス協会
6.調査主体
◎ (公社)全国賃貸住宅経営者協会連合会
東京都中央区八重洲 2-1-5 東京駅前ビル 4F
1
TEL.03-3510-0088㈹
調 査 結 果
1.生活保護受給者との契約状況
◎ 約 6 割の家主や管理会社が受給者と賃貸契約をしている。
生活保護受給者との契約件数
2.生活保護受給者の滞納状況
◎ 受給者と契約している家主や管理会社のうち約 5 割に家賃滞納者がいる。
滞納者の滞納期間
3.代理納付制度の活用状況
◎ 受給者と契約している家主や管理会社のうち約 5 割に代理納付の実績がある。
代理納付の活用件数
2
4.受給者による自治体への代理納付の申込み状況〔家主・管理会社の代理納付状況〕
◎ 家主や管理会社のうち、受給者による代理納付の申込み経験があるのは約 4 割で、
そのうち約 8 割の家主や管理会社が代理納付を受けている。
滞納期間別の受理件数
申込み後の受理の状況
5.代理納付制度の活用について
◎ 代理納付制度が積極的に受理されるようになった場合、約 9 割の家主や管理会社が
受給者に申込みを促して、活用したいと考えている。
3
6.自由回答による意見・要望等
◎ 申込み受理に対する要望としては、「家賃滞納後に代理納付を受理されたとしても滞
納分については支払われないため、契約時から代理納付を受理して頂きたい」
◎ 滞納後の督促等の労力を軽減するためにも、
「契約時の代理納付の義務付けを求める」
◎ 地域的に広範囲にわたる契約者がいる場合、「市区町村によって申込み内容や受理さ
れる条件に違いがあり、事務的な手間がかかるため、申込み条件が全国的に統一され、
かつ、簡便な手続きになれば活用しやすくなる」
7.現状における課題・改善点
◎ 「自治体によって制度の活用状況が異なる。また、自治体の担当者が代理納付制度を
知らないこともあるため、本省から再度、周知徹底をして頂きたい」
◎ 「代理納付における受給者情報や家賃・共益費等の振込明細が発行されないため、扶
助費の入金があっても、入金確認するのに手間がかかる」
◎ 「家賃だけではなく、共益費、管理費、水道代(定額)等の請求額全てを代理納付の対
象として頂きたい。また、同時に入金管理の仕組みも整備して頂きたい」
◎ 「受給者の意思で代理納付の申込み、停止ができるので、入居後に代理納付を停止さ
れることがある。家主や管理会社が申込みできるようにして頂きたい」
◎ 「代理納付停止や生活保護打切りの際に自治体から連絡がなく、確認に手間がかかる」
◎ 「一般的な賃貸借契約の場合、家賃の納入は前月 25 日頃となっているが、住宅扶助
費の支給日が当月の 1 日~5 日となっている。公営住宅では家賃は当月払いなので問
題ないが、民間賃貸住宅の代理納付は前月 25 日納入にして頂きたい」
8.その他の意見
◎ 「代理納付制度の受理だけでなく、孤独死の対応や原状回復の費用等まで補って頂け
るのであれば、より一層、受給者の受入れは増加する」
◎ 「連帯保証人や緊急連絡先がいない高齢者も多いので、自治体や地域に密着した NPO
法人や社会福祉法人に借上げて頂ければ、もっと民間賃貸住宅の活用が促進される」
◎ 「受給者の方は、以前に近隣住民とのトラブルが発生したこともあり、基本的にお断
りしている」
◎ 「本来、受給者の住まいは、国が住宅セーフティネットとして整備するものであり、
民間に委ねるのなら、現況を的確に把握し、民間の意向を組み入れるべきである」
4
調査結果における傾向
1.代理納付が受理されるのであれば、多くの家主や管理会社が活用したいと考えている。
2.受給者の家賃滞納者の数に比例して、代理納付の申込みが増えている。
3.受給者の家賃滞納の有無に関わらず、家主や管理会社は代理納付を希望している。
4.代理納付の受理は家賃滞納の期間や理由の有無ではなく、自治体の方針によって決ま
っており、対応状況にはバラつきがある。
5.受給者が代理納付の申込みをしても、また、家主や管理会社が代理納付を希望しても
自治体の方針によって申込みへの対応にバラつきがある。
総
括
1.生活保護法の趣旨に則り、住宅扶助費が生活費や遊興費等に流用されることなく、家
賃や共益費等の支払いに的確に充てられるためには、代理納付の申込みがあれば、すべ
て受理されるべきである。
2.生活保護受給世帯の居住の確保を図るためには、家主が家賃滞納の心配をすることな
く安心して契約できるように代理納付の申込みがあれば、すべて受理されるべきである。
3.自治体による申込み受理の対応のバラつきがあることから、厚生労働省は全国統一の
ルールを作成し、同制度の活用を推進すべきである。
5
参 考 資 料
1.都道府県別住宅扶助特別基準額〔平成 25 年度〕
6
2.政令指定都市・中核市別住宅扶助特別基準額〔平成 25 年度〕
出典:厚生労働省
7
(公社)全国賃貸住宅経営者協会連合会 全国 103 支部
北 海 道
北
部
神奈川県
神 奈 川 湘 南 支 部
札 幌 中 央 支 部
新 潟 県
新
札
千
札
海
幌
道
東
歳
幌
支
支
支
南
支
部
潟
県
支
広 島 県
広
島
支
部
部
広 島 県 備 後 支 部
新 潟 中 央 支 部
広 島 中 央 支 部
部
富 山 県
富
山
県
支
部
山 口 県
山
口
県
支
部
部
石 川 県
石
川
県
支
部
徳 島 県
徳
島
県
支
部
部
香 川 県
香
川
県
支
部
函
館
支
部
金
沢
支
釧
路
支
部
福 井 県
福
井
県
支
部
旭
川
支
部
山 梨 県
山
梨
県
支
部
北
見
支
部
長 野 県
長 野 県 諏 訪 支 部
愛
香 川 県 高 松 支 部
愛 媛 県
愛 媛 県 東 予 支 部
媛
県
支
部
青 森 県
青
森
県
支
部
長 野 県 長 野 支 部
愛 媛 県 燧 支 部
岩 手 県
岩
手
県
支
部
長野県伊那飯田支部
愛 媛 県 中 予 支 部
宮 城 県
宮
城
県
支
部
秋 田 県
秋
田
県
支
部
秋 田 中 央 支 部
山 形 県
山
形
県
支
部
福 島 県
福
島
県
支
部
い
わ
き
支
部
岐 阜 県
静 岡 県
愛 知 県
岐
阜
県
部
高 知 県
高
知
県
支
部
岐 阜 中 央 支 部
福 岡 県
福
岡
県
支
部
静 岡 東 部 支 部
北
九
州
支
部
静 岡 中 部 支 部
粕
愛
部
北 九 州 中 央 支 部
愛 知 県 中 央 支 部
福 岡 中 央 支 部
福 岡 県 筑 紫 支 部
知
支
本
屋
支
部
茨 城 県
茨 城 中 央 支 部
三 重 県
三
重
県
支
部
栃 木 県
栃
部
滋 賀 県
滋
賀
県
支
部
栃 木 中 央 支 部
京 都 府
京 都 中 央 支 部
長 崎 中 央 支 部
栃 木 県 北 支 部
大 阪 府
大
阪
本
部
長 崎 県 諫 早 支 部
神
支
部
木
県
支
群 馬 県
群
馬
県
支
部
阪
埼 玉 県
埼
玉
県
支
部
大
千 葉 県
東 京 都
阪
北
支
長 崎 県
熊 本 県
部
長
熊
崎
本
県
県
支
支
部
部
熊 本 中 央 支 部
埼 玉 西 部 支 部
大阪センター支部
宇
千
葉
県
支
部
京
熊
本
東
支
部
か
ず
さ
支
部
大 阪 北 摂 支 部
大
分
県
支
部
東
京
新
支
部
兵 庫 県
兵
庫
県
支
部
大 分 中 央 支 部
住 宅 流 通 支 部
奈 良 県
奈
良
県
支
部
大
分
新
支
部
東
和歌山県
和 歌 山 県 支 部
宮
崎
県
支
部
京
本
部
首 都 中 央 支 部
首 都 圏 第 一 支 部
東
東
京
支
部
首
都
圏
支
部
東 京 成 増 支 部
東京センター支部
阪
鳥 取 県
阪
和
支
支
部
大 分 県
宮 崎 県
部
鳥 取 東 部 支 部
都
鹿児島県
鳥 取 西 部 支 部
岡 山 県
岡 山 中 央 支 部
倉
敷
支
部
城
支
城
支
部
部
鹿 児 島 県 支 部
鹿児島県大隅支部
沖 縄 県
沖
縄
県
支
部
沖 縄 県 那 覇 支 部
平成 26 年 1 月 17 日現在
生活保護受給者における住宅扶助の代理納付制度の活用実態について
調査報告書
平成 26 年 1 月
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全国賃貸住宅経営者協会連合会