12月の花 ノースポール

■発 行 日 ; 2014.11.25
第 2 巻 12 号
■発 行 所 ; 株式会社アーバン不動産
岩手県盛岡市三本柳 11-1-40 TEL.019-601-3011
■発 行 人 ; 下川原 弘忠
http://urban777.com/
12月の花
ノースポール
キク科 フランスギク属。 花言葉 「誠実」
ノースポールは 1960 年~1970 年頃に日本に渡来してきた新しい花です。キク科の
小さい花で、冬から春にかけて、コスモスやマーガレットに似た白い花を咲かせます。
花つきがよく、株全体をおおうほどに白く咲くところから「北極」のイメージが連想
され、
「ノースポール(北極)」と名づけられました。花自体は 12 月頃から咲きます
が、たくさん咲くのは 2 月ごろからです。花言葉の「誠実」は、白い花びらに黄色い
花芯の花の上品さと可憐さに対して与えられたのでしょうか。マーガレットよりちょっと小型で、道端の
花壇によく植えられています。
賃貸経営の基本シリーズ
「入居者はお客様、貸室は商品」
“ある場所”で“ある商売”を始めると
き、最初に調べるのは、
「需要はあるか?」
ということです。その商品を求めている「お
客様」がいるかどうかは極めて重要です。
その需要があるとしたら、つぎは「強力な
ライバルがいるか?」が気になります。た
とえ需要があっても、すでにライバルが抑
えていたら、経営に苦労するでしょう。反
対に十分な需要があり、脅威を感じるライ
バル不在なら、その事業は「GOサイン」
が出せます。
先日、不動産投
資に積極的な方
に質問をする機
会がありました。
「すでに世帯
数より住宅の戸
数が大きく超えて空き家が問題になってい
ます。しかも新築供給は止まることなく続
いていて、需要と供給のバランスが悪化し
ていくのに、なぜ、賃貸物件をさらに所有
しようとするのですか?」彼の答えは「賃
貸住宅への需要はあります。でも、ライバ
ルのオーナーさんの8割は経営をサボって
いますから、脅威ではないのです」
。私は「オ
ーナーがサボってるなんて、そんなワケな
い。みんな真剣に経営しているはず」と反
論しましたが、彼は、
「多くのオーナーさん
は、入居者を“お客様”と思っていない」
そして、「自分の貸室を“商品”と考えてい
ない」と持論を展開しました。「だから、お
客様に“いい商品”を提供すれば、賃貸経営
はまだ有望だと思います」。この彼の意見は
いかがでしょうか?
いまどき、
「部屋を貸してやってる」と言
うオーナーさんはいません。誰だって「お
金を払う入居者は“お客様”
」と考えている
はずです。オーナー100人に「入居者さ
んはお客様ですか?」と聞けば、ほとんど
「当たり前」と答えるでしょう。
でも、その不動産投資家の意見を聞いて
いて思ったのは、ひょっとすると、頭では
「入居者はお客様」と分かっていても、本
当に心から「そう」想ったり、行動に表し
ているかどうか? という疑問でした。
もし本当に「入居者はお客様」と考えて
いるなら、
「この施設を気に入ってもらいた
い」
「安心して暮らしてほしい」
。だから「長
く住み続けてもらいたい」と思うはずです。
「そのために何をすればよいか?」を考え
て、それが、具体的な行動を生むのではな
いでしょうか。
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もし本当に「自分の貸室は商品」と思っ
ているなら、「建物施設内を清潔に」「お客
様の希望する設備を付ける」
。あるいは「家
賃の“安さ”で競争力をアピールする」な
どと色々なアイデアを考えるでしょう。そ
れが、日常清掃やリフォーム等の具体的な
行動を生むのではないでしょうか。
もちろん賃貸経営は「収益をあげる」こ
とが目的ですから、かけられる「手間」に
は限度があります。その「範囲内で」とい
うのが大前提です。限られた範囲内で、入
居者という“お客様”のために、貸室とい
う“商品”に磨きをかけているライバルは、
この地域にそう多くはいないと思います。
だから「そのように」すれば、賃貸経営と
いう事業は「まだ有望」なのでしょう。
賃貸経営の基本を考えたときに、時々 立
ち止まって「入居者をお客様と想っている
か、貸室は商品と考えているか」と自問自
答することは、賃貸経営で収益を挙げるた
めに、意味のあることでないでしょうか。
「カスタマイズという貸し方」
今回から、具体的な「貸室の魅力を増す
ための方法」について考えたいと思います。
「カスタマイズ」という貸し方をご存知
でしょうか?あるオーナーさんが、築40
年のマンションを「ある方法」で募集した
ところ、すぐに借り手がついたそうです。
その「ある方法」とは、壁や造作などを、
自分の好きなように「模様替え」すること
ができる賃貸借契約です。
借主となった
女性はお母さん
と一緒に、畳の上
にフローリング
を敷き込み、壁を
塗り替え、キッチ
ン等のパネルに
好きな柄のシートを貼ったそうです。契約
条件は、躯体に影響するような工事は行わ
ない、電気・ガス・水道などは専門業者に
依頼する、次の借主に影響するような工事
は行わない、事前に工事の内容を届け出る
こと、等です。
似たような方式を国土交通省も検討して
います。
「個人住宅を賃貸物件として流通さ
せるための検討会」というのがあり、そこ
で打ち出された「借主負担のDIY型」と
いう貸し方です。この方式は、貸主は安い
賃料で賃貸する代わりに「入居前と入居中
の修繕義務」が免除されます。借主は、修
繕せず そのまま居住することも可能です。
一方で、躯体を除き、自分の負担で自由に
修繕や模様替えすることもでき、退去時の
原状回復義務も免除される、というもので
す。まさに「カスタマイズ賃貸」です。
「築年数が古いが費用もかけたくない」
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という貸主と、
「自分の好きなように模様替
えして暮らしたい」という借主の思惑(お
もわく)を一致させることができます。
「老朽化の一歩手前」の貸室でも活用で
きる賃貸方式として、今後は増えていくの
ではないでしょうか。
しかしこの方法は、築30年40年の話
ですから、多くのオーナー様は「関係がな
い」と思うでしょう。そこで、もっと多く
普及しているカスタマイズは、
「壁紙を自由
に選ぶことができる」という貸し方です。
借主は「自分好みの部屋を選びたい」と
願いますが、貸主は「そんなに自由にされ
ても困る」と考えます。でも壁紙くらいな
ら、自由に選ばせても大きな問題ではあり
ません。それでも借主の「自分好み」とい
う要望を叶えることはできます。
壁紙は、居室の4面のうちの1面だけ「選
べる」というのが一般的です。その方が、
思い切った色や柄を選択することができま
す。間取りのカタチにもよりますが、玄関
ドアを開けたときに最初に目に飛び込む壁
面に、好きな色や柄の壁紙を貼ることが出
来る、というサービスも、特に女性には人
気があると思います。
もうひとつ、カスタマイズではありませ
んが、その方法から波及した「アクセント
クロスを採用する」という貸し方がありま
す。アクセントクロスとは、
「部屋の一面だ
けに貼られる色や柄のあるクロス」のこと
です。お部屋のアクセントになる、という
ことで名付けられたのでしょう。
実は「壁紙を選んでもらう」というのは、
現場の作業が煩雑になります。退去後の原
状回復工事も、壁の一面だけ残しておかな
ければなりません。一方で、借主の方も「選
べるのは嬉しいが、実際に選ぶのは悩むし
難しい」という現実があります。そこで、
オーナー様側の方でクロスを選び「それを
アクセントとして貼っておく」という簡易
方式が採用されています。
「自分好み・・・
ではないかもしれないけれど、他(ほか)
とは違った部屋」ということで人気があり
ます。この「カスタマイズ=自分好み、自
分だけ」というキーワードは、貸室の魅力
を増すための方法として、今後も多く採用
されていくことでしょう。次回は「家具・
家電付き」という貸し方についてです。
Q.月極駐車場を所有していますが、空き
庫数が増えてきました。駐車場の“空車対
策”というのはありますか。
A.駐車場の対策というのは、アパートや
賃貸マンションの空室対策と比べると、ず
っとシンプルです。方法としては、①料金
を下げる ②もっと付加価値を高める ③
別の活用方法を考える の3点でしょう。
①の「料金を下げ
る」は、貸し駐車場
が多すぎて需要を
上回っている場合
は、ある程度は仕方
ないですね。でも
「価格競争」に陥るのは、あまりお勧めし
たい方法ではありません。そこで、②の「付
加価値を高める」という方法を具体的に考
えてみます。ライバルの駐車場より、同じ
料金なら「こっちがいい」と利用者に実感
していただく方法です。
まず、一番先に思い付くのは「舗装にす
る」という方法。美観もよくなり雑草も防
げます。雨の日など、利用者にとって大き
なメリットがあるでしょう。ただし、舗装
された貸し駐車場は珍しくはありません。
次に「外灯をつけてセキュリティを高め
る」という方法。車を大切にしている利用
者にとって、自宅から見えるところに「愛
車を停めることができない」というのは心
配でしょう。同じ主旨で「入口にバーを設
けて契約車以外は入れないようにする」と
いう設備もあります。これなら空き部分は
コインパーキングとして活用することが出
来ます。ともに費用がかかりますので、駐
車料金の相場によるでしょう。
「屋根付きに
する」というのもありますが、かなり「高
く貸せる」ことが前提となってしまいます。
どうせ空いているなら「一台当たりのス
ペースを大きくする」というのも差別化の
ひとつです。月極駐車場は、なるべく多く
の台数が停められるように、一台当たりの
巾を2.5m程度にしているケースが多い
ですね。大きい車や運転に慣れない人にと
っては、停めるのに一苦労です。スーパー
の駐車場並みに、巾も通路も広くすると、
それが「強み」になるでしょう。
駐車場利用者の悩みのひとつは、車の備
品やタイヤ等を置くスペースがないことで
す。そこで、どうせ空いているなら「保管
庫」を設置してあげるというアイデア。こ
れなら別料金をとることも可能です。結構
な需要が掘り起こせるかもしれませんね。
もうひとつ「洗車する場所がない」とい
う悩みのために、洗車スペースを作れるな
ら、検討してはどうでしょうか。給排水や、
他の契約車両に水がかかるとか、水の使用
頻度とか、色々と課題は多いのですが。
このように、自宅から多少なりとも離れ
たところに車を駐車する利用者の目線で考
えてみると、
「月極駐車場に望むニーズ」に
対して、応えられるアイデアは、まだまだ
考えられるのではないでしょうか。
最後は③の「別の
活用方法を考える」
です。もともと土地
を「ずっと駐車場と
して運用したい」と
いうオーナー様は
少ないと思います
ので、需要が落ち込んだのを機に、別の活
用方法を模索してはどうでしょうか。まず
思い浮かぶのは「コインパーキング」です。
入口付近の「一部だけ」をコインパーキン
グにすることも可能ですね。もちろん、そ
の需要があるかどうかが一番重要ですが。
コインパーキングは「繁華街近く」とい
うイメージがありますが、駐車場が市街地
から離れた場所なら「コンテナ等でスペー
ス貸しをする」という運用法も多く使われ
-3-
ています。自宅の収納スペースが足りない、
という人は多いですし、商売の道具や在庫
を置きたい、という需要も根強いものがあ
ります。「スペース貸し」の特徴は、「一度
借りたら長く使っていただける」というこ
とです。同じコンテナで「バイク置き場」
とする方法もよく紹介されていますね。
土地活用の最後は、
「店舗(コンビニや飲
食店)を誘致する」
。あるいは、
「アパート・
賃貸マンションを建てる」などですが、こ
ちらは税金対策と合わせながら検討されて
はいかがでしょうか。
「駐車場が空いてしまったが、何も打つ
手はない」ということはないでしょう。
ただし、費用対効果を考えたうえでの(最
低限度の)投資は必要です。
「民法改正が
オーナーに与える影響は?」
司会 「120年ぶりの民法改正」が話題
になっています。この改正はオーナーに「ど
のように」
」影響するでしょうか。
H 法律についてはAさんが詳しいです。
A 別に詳しくはあり
ませんが(笑)。予定で
は、審議会が要綱を来年
2月に答申して、次の通
常国会で成立するよう
ですが、成立しても施行
まで時間がかかるので、
まだまだ先の話です。
Y ならば、もっと先に
なってから話題にすれば良いのでは。
A そうなんですが、誤解を招くこともあ
り、惑わされないために知っておいた方が
いいかもしれませんね。
D 僕たち賃貸オーナーにとって、どんな
影響がありそうですか?
A 大きく分けると2点だと思います。
ひとつは「原状回復義務」についてですね。
改正案には、次のように明文化されること
になります。要約すると「賃借人の原状回
復義務から、通常の使用によって生じた損
耗と経年変化は除く」というものです。
Y うん? 国土交通省のガイドラインと
同じですよね。
H 15年前なら「えーっ」となったでし
ょうが、現在では「当たり前」の慣習にな
っていると思いますけど。これに意味があ
るのですか?
A そうなんです。ただし、ガイドライン
には法的な拘束力はありませんが、今回は
民法にしっかりと記述されることに、今ま
でとの違いがあると思います。
D でも、法律といってもこの規定は「任
意規定」でしょうから、貸主と借主が合意
すれば、そちらが優先されるのですよね。
-4-
Y ちょ、ちょっと待ってください。
「任意規定」って何ですか?
H 法令の規定には、当事者が合意した契
約の方が優先されるものがあり、それを任
意規定というようです。たとえば家賃は「前
払い」という契約が多いけど、民法では「後
払い」が原則です。でも当事者が合意して
「前払い」を合法にしています。
A Dさんが仰るように、改正案の原状回
復義務も任意規定だと思いますので、貸主
と借主が合意して「ルームクリーニング費
用は借主負担とする」と契約書に書けば、
そちらが優先されるでしょう。ただし、借
主さんは個人の方が多いですから、あとで
消費者契約法の洗礼を受けることがありま
す。そのとき、民法の規定は意味が出てく
るのではないかと思いますね。
H 影響があるのは、それだけですか?
A いえ。心配なのはマスコミの「誤った
報道」なのです。
Y 誤った報道?マスコミが?
A 少し前になりますが夕方の報道番組で
「これからは敷金が返ってくる」みたいな
特集を報じてました。まるで今回の民法改
正によって「新たに敷金が取り戻せる法律
が出来る!」みたいな取り上げ方だと、僕
には理解できました。すでに世間は「そう
なっている」のに、不要な「退去時のトラ
ブル」を助長させるような印象でした。
H 僕たちオーナーも正しく理解していな
いと、マスコミの報道に踊らされてしまう、
ってワケですね。管理をお願いしている不
動産会社のスタッフさんも同様ですね。
Y もう1点とはなんですか?
A それは、借主の連帯保証人、つまり「個
人保証」についてです。
司会 そのつづきは次回、ということにい
たしましょう。