第5回山岳遭難事故調査報告書 2008.6.29 日本の山岳遭難事故の特徴 -欧米事故データとの比較- 日本山岳協会 遭難対策委員会総会 青山講演資料 本事故調査報告について • 今回の第5回事故調査報告は、本来、2007年度中 に報告しなければならなかった。しかし、2007年の 上半期は欧米でのレスキュー活動と事故調査のた め、調査報告ができず、今回2年分をまとめて報告 する。 • 今回の報告は、山岳3団体事故調査データ警察庁 データ、に加えて、欧米での事故調査データと比較 を基に、我が国の山岳事故の特徴を明らかにした。 • なお、比較には、事故データベースを専門家に提供 し、かつ、我が国と事情が似ているイギリスでの事 故報告を中心に行った。 イギリスレスキューMRにおける 事故データの収集と利用・活用状況 • MR(E&W)には、イングランドとウエールズで、8地 域、56のレスキューチームが参加し、さらに、4ヶ所 のレスキュー犬の訓練施設を持っている 。 • 現在データベースは(15,117件)あり、毎年、各レス キューチーム単位で、活動報告集が発刊される。報 告集は、レスキュー関係者から政府、救急機関(警 察、消防、沿岸救助隊)に回される。データは遭難の 現状報告などの啓蒙活動から、対策まで活用される。 • 我が国とはレスキュー体制の違いがあるものの、地 域活動など、見習うべきものは多い。 湖水地帯の事故報告書とその内容例 014 16490 19 January 17:38 High Crag Gatesgarth NY184137 Cold, cloudy afternoon/evening. Dry, snow and ice above Hill Walking (Winter) Man(56), Woman(48) - Two fellwalkers from Oxford were descending on the High Crag to Gatesgarth when one fell 100m down a snow/ice slope. His companion became cragfast on craggy and icy ground. No injuries reported. 1人1人のデータ公開 Cause Of Incident 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 Avalanche 0 0 0 0 0 0 0 Belay/Runner Failure 1 2 3 0 2 1 3 Benighted 7 8 37 19 6 34 32 事故の原因データ 湖水地帯では、HomePageで、個々の事故データを事故別に類型化し、 地図上に公開している。GPSを用い現在位置を表示しているので、 大幅拡大も可能となる。 基礎情報の確認 事故の発生状況 会員数、事故発生状況と 事故調査の経年変化 事故調査データベースの内訳 年 2001以前 2002 2003 2004 2005 2006 2007 不明・その他 総計 女 男 32 53 98 93 50 125 101 1 553 総計 33 55 101 78 46 104 107 3 527 65 108 199 171 96 230 208 4(5) 1082 事故調査のデータ量は今回1000件を超えた。 しかし、回答率が 2003-2007の5年間でもで、37.8% であった。事故内容を把握するために、できれば70%以上 の回答率が望ましい 5年間の事故調査と会員数の推移 2003-2008 日山協 労山 会員数は11末締め 事故者数は1月-12月 都岳連 年度 2003 2004 2005 2006 2007 2003 2004 2005 2006 2007 2003 2004 2005 2006 2007 会員数 事故者数 33003 38534 41089 42545 44666 22771 22191 22001 21415 21189 3654 4513 5340 6457 7593 171 103 90 148 174 345 307 340 320 318 12 10 16 11 24 対会員事故 アンケート回答数 回収率(%) 比(1:x) 193 30 17.5 374 34 33.0 457 0 0.0 287 58 39.2 257 28 16.1 66 163 47.2 72 125 40.7 65 84 24.7 67 164 51.3 67 167 52.5 365 6 50.0 501 10 100.0 381 12 85.7 587 8 72.7 316 13(16) 54.2(66.7) ( )内は締め切り以降報告 5年間で3団体は、59428人から73448人に約15000人増加している。 日本山岳会を加えると、現在、約8万人が組織会員であろう。 その間、事故者数の変化幅は小さく 478±41人、死亡者数は23±7 であった。 2003-2008 日山協 年度 2003 2004 2005 2006 2007 会員数 事故者数 33003 38534 41089 42545 44666 171 103 90 148 174 死亡者数 5 5 10 14 9 事故者にしめる 死亡率' (%) 2.9 4.9 11.1 9.5 5.2 対会員数死亡比 6601 7707 4109 3039 4963 *日本山岳協会の5年間 日山協における5年間は、会員数が約1万人増加し、 1.4倍まで急増した。事故者数、死亡者数は、ともに 会員増にもかかわらず、その影響が少ない。 対会員数事故率は、増員分下がってきている。事故者 の変化幅は90名~174名、死者の変化幅は5~14名 である。 日山協の問題点は、本調査へのアンケート回答率が低い ことである。今回17%にとどまっている。せめて50%ほしい。 今後とも、事故情報のスピーディーな定期公開が望まれる 2003-2008 労山 会員数は11末締め 事故者数は1月-12月 年度 2003 2004 2005 2006 2007 会員数 事故者数 22771 22191 22001 21415 21189 345 307 340 320 318 死亡者数 11 5 10 11 9 事故者にしめる 死亡率' (%) 3.2 1.6 2.9 3.4 2.8 対会員数死亡比 2070 4438 2200 1947 2354 *日本勤労者山岳連盟の5年間 労山の会員数は5年間で1000名ほど微減してきた。その 目安は、日山協の約半数となる。 事故者数、死亡者数ともに、あまり変化なく安定している が、事故者数は高止まりしている。保険制度の違いにより、 3者比較は難しく、遭難対策基金の問題もあるが、特別 基金に変更されるにしろ、事故者を現在の半数まで下 げたいものである。ただし、死亡者数は、事故者数に比べ ると低く、労山事故者の特徴であろう。 2003-2008 都岳連 年度 2003 2004 2005 2006 2007 会員数 事故者数 3654 4513 5340 6457 7593 12 10 16 11 24 死亡者数 7 1 8 6 6 事故者にしめる 死亡率' (%) 58.3 10.0 50.0 54.5 25.0 対会員数死亡比 522 4513 668 1076 1266 *東京都山岳連盟の5年間 都岳連も日山協同様、会員数が5年間で約4000名弱 2.1倍に急増加してきた。都岳連共済から新制度に移行 してきた成果なのか。事故者も2倍となっている。しかし、 事故者数そのものは、対会員数に対し最も低い状態を保っ ている。 都岳連の場合、登山レベルの違いからか、事故者に 占める死亡率が異常に高い問題がある。事故者は少ない が、事故を起こすと半数が死亡するというのは、昭和30年 初期に近く、深刻な問題と言わざるを得ない。 影響レベル 女 無回答 レベル2 レベル3 レベル4 レベル5 総計 男 40 28 414 55 16 553 無回答 44 33 342 69 39 527 総計 1 1 2 85 61 756 124 56 1082 ★事故影響レベルについて レベル1 インシデント レベル2 軽い傷害、自宅治療 レベル3 入院による治療 レベル4 長期入院、後遺症を残す レベル5 死亡 当報告中、対事故者数死亡率は5.2%であった。ただし、5年間死亡者 119人であるから、半数弱しか、回答が得られなかった。 最重要事項として、本報告の最後にまとめた。 事故が発生した山域および県(上位20位まで) 長野県 北海道 兵庫県 山梨県 群馬県 富山県 神奈川県 新潟県 滋賀県 東京都 岐阜県 福島県 三重県 大分県 栃木県 静岡県 奈良県 埼玉県 京都府 福岡県 172 68 63 54 46 45 44 40 29 28 27 24 24 22 20 20 19 19 19 17 0 20 複数県にまたがるため65 国外8ヶ国 40 60 80 100 120 140 160 180 200 該当数 北アルプス 関東山地 越後山脈 南アルプス 八ヶ岳連峰 六甲山地 奥羽山脈 鈴鹿山脈 比良山地 中央アルプス 奥秩父山地 独立峰 両白山地 知床半島 日高山脈 三国山脈 九州山地 大峰山脈 石狩山地 秩父山地 195 59 N=1082 49 36 34 30 22 17 14 14 13 12 11 11 10 10 10 9 9 8 0 20 対象山地・山脈60 40 60 日本アルプス(2割強)が突出し、関東・関西の近隣山脈が続く 80 100 120 140 160 180 200 該当数 事故データベースより 欧米データとの比較を基にした 我が国の山岳遭難の特徴の検討 以下、欧米と比較が可能な 5項目について 説明していく ④ 事故態様 ⑤ 症状と 痛めた部位 ① 年次事故 発生状況 ③ 登山目的 欧米と比較可能な 5項目 ②事故年齢 分布 ① 登山事故の発生状況 欧米での山岳事故の発 生状況はいづれも 増加傾向を見せていると ころが多い。 その背景には、健康のた めの野外での活動ブーム (Walking Holidayなど) や、携帯の影響等が指摘 されている 我が国における事故発生状況 警察データ 2000 発生件数 死・不明 負傷者数 無事救出 遭難者総数 1800 1400 1200 1000 800 600 400 最近の右肩上がりの増加は、無事救出者の増加が反映されている 2007 2006 2005 2004 2003 2000 1999 1998 1997 1996 1995 1994 1993 1992 1991 1990 0 2002 200 2001 欧米の専門家には いづれも死亡者数 が多いことを指摘 された 1989 事故者数と発生件数 1600 イングランド、ウエールズの事故発生状況 1600 死亡 負傷 遭難者総数 無事救出 1400 該当者数 (人) 1200 1000 800 600 口てい病の 発生 400 200 0 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 年 2001年付近は口てい病の影響で野外活動が禁じられた。 その後、現在まで増加している スコットランドの事故発生状況 Dr.Bob Sharp氏の資料より 図のように92年まで増加してきたが、その後は高止まりしている フランス/シャモニーの事故発生状況 Development 1200 1200 1000 1000 800 800 Dead Dead Injured Injured Unharmed Unharmed Total Total 600 600 400 400 200 200 00 1974 1974 1976 1976 1978 1978 1980 1980 1982 1982 1984 1984 1986 1986 1988 1988 1990 1990 1992 1992 1994 1994 1996 1996 Ifremmontの代表、Dr Emmanuel Cauchy講演資料より かなり古いデータであるが、増加傾向を見せている ② 事故者年齢分布について 事故データ-ベース(3団体) 警察データ 欧米データ 日本では、 若者は家の中で遊び、 年寄りは野外で遊ぶ 20歳代 5.8 40歳以上79.6% 40歳以下 29.7 30歳代 9.6 増加層 減少層 50歳代 22.2 60歳代 28.7 40歳代 9.2 70歳代以上 19.5 最大年齢層 19歳未満 5.1 2007年事故者の年齢分布 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100% 40歳以下の全合計値が60歳代にほぼ等しくなった 警察データ 団塊トップ50歳代に入る 35.0 数値は世代年齢 30.0 25.0 50 70歳以上 60 20.0 40 20 15.0 50 30 30 40 20 70歳以上 10.0 19歳未満 5.0 19歳未満 2007 2006 2005 2004 2003 2002 2001 2000 1999 1998 1997 1996 1995 1994 1993 1992 0.0 1991 各世代の割合(%) 全団塊60 歳 60 世代変化予想 各世代の増減が明確に現れ、50歳代の減少が始まっている。間もなく数年後に 60、70世代が突出してくる高齢化登山時代と予想される。 警察データ 50.0 45.0 2003年 2004年 2005年 2006年 2007年 40.0 女性該当率(%) 35.0 30.0 25.0 20.0 現段階では あまり変化し ない 15.0 10.0 5.0 0.0 10-19 20-29 30-39 40-49 50-59 60-69 70-80 80< 70-80 80< 50.0 45.0 40.0 男性該当者(%) 35.0 2003年 2004年 2005年 2006年 2007年 30.0 25.0 20.0 高齢化シフト 15.0 10.0 5.0 0.0 10-19 20-29 30-39 40-49 50-59 60-69 男女別に事故年齢分布を 描くと、5年間で男女で かなり異なる変化を見せる *女性層は50-60で固まり、 *男性は全体が70に向か ってシフトしている 事故データベース 7年間のデータより、男女別に、事故を起こした年齢での比較 40 35 30 該当人数 25 2001~2007における、男女年齢別事 故者を「事故を起こした年齢」に注目して まとめた。 各年齢で、女性数が上回る場合は黒棒 男性が上回る場合は白棒で表す。 女 男 20 15 10 5 19 21 23 25 27 29 31 33 35 37 39 41 43 45 47 49 51 53 55 57 59 61 63 65 67 69 71 73 75 80 0 年齢 女性50-65歳の動きは非常に特徴的 警察データピークは60前半 イギリス 湖水地帯の7年間年齢分布 30 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 該当割合 (%) 25 20 15 10 5 0 1-10 11-20 21-30 31-40 41-50 年 齢 51-60 61-70 71-80 80< 10代と40-50代に2ピークを持つ。この範囲内でバラツク。 欧米のデータでは、日本と山岳事情が似ており一番比べやすい地域 2004アメリカ 51歳以上 36-50 18 16 14 12 10 8 6 4 2 0 31-35 26-30 2007 スコットランド 80< 71-80 61-70 51-60 41-50 31-40 20.0 21-30 10 11-20 25.0 21-25 0 1-10 15 該当者割合(%) 20 15-20 20歳代強調図 遭難者割合(%) 81 and over 71 - 80 yrs 61 - 70 yrs 51 - 60 yrs 41 - 50 yrs 31 - 40 yrs 20歳代ピーク 15歳未満 51歳以上 36-50 31-35 26-30 21-25 60 50 40 30 20 10 0 21 - 30 yrs 11 - 20 yrs 10< 25 15-20 15歳未満 遭難者数 30 2ピーク 15.0 10.0 5 5.0 0.0 2007イギリス 20歳代強調図 1959-2003カナダ 日本の高齢化は、他国には見られないパターンである。分布形式は 若い世代にかたまる国が多く、一部日本型に近づきつつある国などもある ③ 登山目的 Activityと訳される登山 目的は、その項目を 見るだけで、その地方の 山岳活動の特徴を見るこ とができる。 世界の登山目的の特徴 • 登山目的に使用される項目は、すべての組織で大幅 に異なる。 日本の項目の特徴は山菜採りに代表さ れる、生活に根ざしたものが多く、欧米は、バイクや グライダーのようなスポーツ系が多い。 • 登山、 ハイキング、縦走 • クライミング、沢登り、キャニオニング、グリセード(滑 降)、ボルダリング、オリエンテーリング • 懸垂下降、スキー、スノーボード、ジムクライミング • ハンググライダー、パラグライダー、マウンテンバイク、 クロスカントリー • 山菜採り、渓流つり、作業、観光、写真撮影、山岳信 仰、自然観賞、狩猟、etc 5年間合計 入山目的 <警察 自然観賞, 0.2 山岳信仰, 0.9 写真撮影, 1.1 観光, 1.2 作業, 1.5 狩猟, 0.4 その他, 1.8 渓流つり, 1.8 非登山系31% 登山系69% 山菜採り, 22.3 登山, 55.7 岩登り, 1.5 沢登り, 2.4 スキー登山, 2.8 ハイキング, 6.5 登山系:非登山系=7:3 警察データ (ほぼ固定された割合) 登山目的 組織系 観光 山野 1% 観光 草花 2% 山菜採り 2% 山岳信仰 0% 観光 紅葉等の鑑賞 2% 山菜採り 山菜採り 野草 仕事 森林伐採 仕事 下草刈り 0% きのこ 0% 0% 0% 写真撮影 渓流釣り 3% 1% 狩猟 0% 観光 5% その他 3% 非登山系20% 山歩き 28% 山スキー 5% フリークライミング 5% キャンピング アルパインクライミン 1% グ 8% アイスクライミング 2% 登山系80% 縦走 21% 沢登り 10% 組織系の登山目的は、登山系:非登山系=8:2 となり、未組織より登山系の 割合が高くなる。特にクライミング系26%(未組織4%)が目立つ Dr Emmanuel Cauchy資料より フランス・シャモニー Activity Paragliding Paragliding 2% 2% Mountainering Mountainering 44% 44% Hiking Hiking 14% 14% n = 5200 Ski Ski 40% 40% 国別にみた様々な登山目的 非登山系 80% その他 一般作業系 60% 登山系 40% ハイキング スキー系 クライミング 系 登山 20% ニュージーランド (雪崩事故) オーストラリア (クライミング中心) スコットランド オーストリア (山岳事故) スイス ドイツ 英国LD (湖水地域) 英国MRC (England and Wales) 0% 日本 遭難者の目的別割合(%) 100% 各登山組織で、取り扱う登山目的項目の違いは、そのまま レスキュー活動対象の違いを意味している。 ④ 事故態様 事故態様は、組織/国に よって 地勢、登山形態、山岳ス ポーツの違い等により、ま た、初期原因か最終原因 なのかにより、事故の解釈 が大幅に異なる。 5年間合計、事故態様図 警察より 1413 16.4% 滑落 1146 13.3% 転倒 563 転落 3129 道迷い 36.3% 489 疲労 717 8.3% 病気 97 落石 突出する道迷い事故は、今後とも、増加していくこ 126 雪崩 とが予想される。道迷いは欧米でも発生しているが、 落雷 37 日本のような、突出するものではなく、海外専門家 189 悪天候 からも注目される。 有毒ガス 0 ・各事故原因にみる5年間 鉄砲水 13 (2003-2007)事故者数 熊襲撃 229 ・5年間事故者総数 8620人 146 不明 その他 326 0 500 1000 1500 2000 5年間事故者数(人) 2500 3000 3500 道迷い遭難の突出が目立つ。携帯の普及/老齢化による増加 事故態様 転倒 滑落 墜落 疲労 道迷い 落石 悪天候の為の行動不能 発病 野生動物・昆虫の襲撃 不明 雪崩 転倒 鉄砲水 有毒ガス 落雷 その他 事故データベース 43.7 20.5 6.0 5.1 3.4 2.7 2.0 1.5 1.4 0.7 0.6 0.1 0.1 0.1 0.1 0.0 転倒・滑落・墜落で70.2%に達する。 「道迷い」が僅か3.4%、「発病」も1.5% 複数回答N=1156(1082) 12.2 5.0 10.0 15.0 20.0 25.0 30.0 該当割合(%) 35.0 40.0 45.0 保険利用の事故調査のため、簡単な比較は難しいが、 組織・未組織の差がハッキリと現れる 50.0 イングランド・ウエールズの事故態様 27.0 スリップ/つまずき 24.5 墜落/転倒 道迷い 26.6 8.2 病気 注意 初期原因のため、その後、 滑落/転倒は分からない。 レスキュー出動の原因と なった項目である 雷 0.0 5.4 動けなくなる 雪崩 0.0 ビレイ失敗 0.5 誤った情報 3.9 継続不能 3.9 0 5 2007年における事故原因 一部、内容を変更表示 10 15 該当割合(%) 20 25 我が国の態様に似かよった状況を示している。なお、道迷いは予定遅れ、暗くなる などの項目も道迷いに含めた。 30 ドイツ山岳レスキューBWBの事故状況 Einsatzzahlen der Bergwacht Bayern Bergrettungen Hilfeleistungen Krankentransporte Totenbergungen im Jahr 2004 im Jahr 2005 2004/1/1~ 2005/1/1~ 12/31 11/17 4153 3916 1096 1102 310 178 63 71 レスキュー活動 補助活動 病人の移送 死体回収 Lawinenbergungen 2 7 雪崩 Sucheinsätze 66 52 捜索 Sucheinsätze mit geringem Aufwand 29 57 軽度の捜索 Sondereinsätze 80 76 特殊操作 Sondereinsätze mit geringen Aufwand 25 38 軽度の特殊操作 Fehleinsätze 256 279 間違った操作 Fehleinsätze mit geringem Aufwand 125 199 軽度の間違った操作 Summe der erfassten Einsatze 8427 8190 合計 アルプス近く、バーバリアン州にあるBWBは、いわゆる事故の原因などの 詳細な調査はしていないため、 その内容ももう一つ良く理解できない 事故全体に占める道迷いの割合(%) 南ヨーロッパ地区、PitSchubertとの話の中では、どうして日本は道迷いが多い のか、ヤブ山への理解が難しかった。山菜茸採りだけでは、この地区も同一目的 での山行が多いからである。 世界的に見ても、山岳地形がなだらかになってくるにつれ道迷いが多くなってく るようである。Ken氏のHalifaxは事故全体が掴めないが、97年で267人の道迷 いが発生している。この地は林で覆われた小さな丘陵地である 40.0 35.0 34.4 30.0 25.0 22.6 20.0 15.8 17.5 17.9 15.0 10.0 5.0 0.4 0.0 日本 米国 カナ ダ 英国 MR C 英国 (En g LD l a nd ドイ (湖水 a nd 0.0 ツ 地域 ) Wal es) スイ ス ⑤ 症状と痛めた部位 欧米はレスキュー 関係者に、山岳医 が多いため、事故 時にどの部位を痛 めるのか、研究が 多い。 日本の傷害部位 事故データベース 頭部 16% 下腿と足 24% 背中・首 7% 肩・胸 8% 大腿と膝 10% 腕・手 26% 腹 5% 骨盤 4% 手・指の外傷が増加 (大腿・足):(頭):(背・首):(胸・肩・腹・骨盤):腕≒34:16:7:17:26 頭頂部 前頭右 後頭右 ひたい右 ほほ右 目右 耳右 20 前頭左 後頭左 ひたい左 ほほ左 目左 耳左 18 18 19 15 あご左 16 19 首左 16 24 22 26 27 12 7 鼻 口 歯 あご右 首右 頚椎 上腕右 肘右 前腕右 手首右 手の甲右 てのひら右 親指右 人差し指右 中指右 薬指右 小指右 傷害部位2268の 全身分布 事故データベース 20 18 25 26 19 31 25 28 73 17 13 肩右 胸右 背中右 34 17 36 28 15 5 28 50 肩左 36 胸左 30 背中左 胸椎 45 46 23 15 腰椎 20 腹右 腰右 9 腹左 42 腰左 9 46 でん部(尻) 骨盤右 股関節右 22 でん部(尻) 14 骨盤左 6 股関節左 26 18 6 大腿右 ひざ右 下腿右 足首右 足右 足の甲右 足裏右 28 83 58 121 15 14 9 大腿左 ひざ左 下腿左 足首左 足左 足の甲左 足裏左 30 95 62 121 20 12 12 足親指右 第二指右 第三指右 第四指右 第五指右 14 10 10 10 13 足親指左 第二指左 第三指左 第四指左 第五指左 18 9 9 7 10 上腕左 肘左 前腕左 手首左 手の甲左 てのひら左 25 23 30 84 15 15 親指左 人差し指左 中指左 薬指左 小指左 14 20 21 28 23 MRイングランド-ウエールズ、傷害部位 頭 15% 手、腕 7% 下腿、足 41% 背中、首 9% 胸と肩 9% 腹 1% 骨盤 4% 大腿、膝 14% 日本に比べ、手、 腕の外傷が少ない。 ただし、手足の指の 計算法不明 (大腿・足):(頭):(背・首):(胸・肩・腹・骨盤):腕≒55:15:9:14:7 縦走とロッククライムとの違い MRイングランド-ウエールズ、傷害部位 60.0 Hillwalk.S ClimbingR 50.0 該当割合(%) 40.0 30.0 20.0 10.0 0.0 下腿、足 大腿、膝 骨盤 腹 胸と肩 背中、首 手、腕 頭 ヒルウオーク(一般登山)とロッククライムとの違いは、前者が大腿から足まで を傷害するのに対して、胴体部の傷害が異なる シャモニー周辺部での傷害部位 Traumatic Injuries (90%) (n : 5200) Head 頭部 22% 耳鼻咽喉 ENT 4% Spine 10% 背骨 下腿 Lower Lower Limb Limb 35% 35% Thorax 9% 胸部 Abdomen 3% 腹部 大腿 Pelvis 3% 骨盤 Upper Upper Limb Limb 14% 14% Dr Emmanuel Cauchy資料より 死亡事故の一部背景 日本の場合 Mountain Rescueにとって、先ず 目指すべき目標は、 「死亡率の低下」である 参考;死亡率から見た登山リスク比較 • 2005年の登山人口をレジャー白書から引用して 660万人とすれば、 登山による死亡率は 4.1×10-5 (人口10万人に対し4.1人) • 交通事故 5.4×10-5 • 自然災害 10-6 (大災害がない場合) • 自殺 2.55×10-4 • 家庭内事故 8.8×10-5 • 自殺>家庭内>交通>登山>自然災害 一般に死亡率は行為者を母数とするが、登山事故の場合、登山者数が求めにくい ため、ここでは、事故者総数に対する死亡率として扱う。 50.0 0.0 1956 1958 1960 1962 1964 1966 1968 1970 1972 1974 1976 1978 1980 1982 1984 1986 1988 1990 1992 1994 1996 1998 2000 2002 2004 2006 遭難者総数に対する死亡率(%) 遭難者総数に対する死亡率の年次変化 70.0 60.0 日山協 2.9-11.1 % 労山 1.6-3.4 都岳連 10.0-58.3 40.0 30.0 20.0 10.0 欧米での死亡率 イギリスでは過去5年間で、5-8%の推移 都岳連(‘05-07) 死亡者データ 性別 年齢 男 45 男 55 女 男 22 30 男 51 男 26 男 47 男 32 男 57 男 男 男 男 58 42 65 46 診断名 山行目的 発生場所 態様/原因(R どのような状態 問題点の指摘 自家用車内にて 車内にてガスコンロ、ガスランタン シュラフに入り、湯を /酸素欠乏による窒息アイスクライミング八ヶ岳広河原沢、舟山十字路を入った林道 を使用中、酸素欠乏を来た 沸かしていた(ガス したものと推測 コンロ) 足を滑らし(又は足場が崩 岩壁をロープを 滑落/道迷 れた?)滑落した。その際打 使って登っていた /頚椎損傷 アルパインクライミ谷川岳一の倉沢Cルンゼ い/疲労 ち込んだハーケンが抜けグラン 時 ドフォールした。 /脳挫傷 沢登り 上信国境魚野川本流下部ゴルジュ帯(井戸沢滑落 /肺損傷 アルパインクライミ北アルプス唐沢岳幕岩西壁ルンゼルート4P目 滑落 全く急に予告的動作もなく 前にのめるように倒れ、直 後に2回転して山道を転げ 入山直後の樹林 落ちたが、後続者が止め 帯急斜面を登る /急性虚血性心疾患 縦走/観光 山野 岩手県南部和賀郡秋田県境湯田町沢内村発病 た。この時点で既に意識不 途中 明の状態であったが、すぐ に人工蘇生術開始の必要 があり、全員で処置にか 雪道をトラバースし 滑落し木に激突アイゼンピッケ /外傷性ショック死 アルパインクライミ谷川岳登山指導センターから一の倉沢へ向か滑落 ていた ルを出していなかった。 天候の悪化に対応しきれ /凍死 山スキー 北アルプス 小蓮華山頂上付近 道迷い 山頂付近でビバーク なかった 天候の悪化に対応しきれ /凍死 山スキー 北アルプス 小蓮華山頂上付近 道迷い 山頂付近でビバーク なかった 天候の悪化に対応しきれ /凍死 山スキー 北アルプス 小蓮華山頂上付近 道迷い 山頂付近でビバーク なかった 滑落 /外傷性脳挫傷 山スキー/アルパ 北穂高岳東稜 滑落 /脳挫傷 アルパインクライミ北アルプス鹿島槍ヶ岳赤岩尾根 /心疾患 縦走 谷川連峰 エビス大黒付近 /溺水死 沢登り 飯豊連峰 飯豊川本流 その他 都岳連では、20-30の若い世代が4名と目立つ 労山(‘05-07) 死亡者データ 性別 女 年齢 診断名 57 山行目的 縦走 発生場所 北アルプス大キレット長谷川ピーク 態様/原因(Rどのような状態 滑落 沢登り 遊楽部山塊 見市川 鉄砲水 北八甲田寒水沢 滑落 女 63 /水死 男 64 /脳挫傷 沢登り /滑落による頭蓋骨 陥没ほぼ即死 (大津 沢登り 65 北警察署による検 死) 男 女 50 /凍死 縦走 男 58 /心筋梗塞 沢登り 男 48 縦走 女 女 64 /脳挫傷(頭蓋骨骨折山歩き 49 縦走 男 59 /外傷性ショック死 男 67 男 /動脈硬化による心 筋梗塞 67 /多臓器不全 川を渡渉していた 問題点の指摘 急に水量が増し、水圧に負 けて水没した ハーネス、ヘルメット無し、装備不 滝の右岸を高巻 完全な状態での実施。チーム 滋賀県比良山系 安曇川 明王谷 口の深谷滑落/墜落 内抑制力の不足。チームプ き中に滑落 レーが十分に取れていな 5.6のコルに早く着きすぎた ので泊まる予定を変更して その日のうちに岳沢小屋 前穂高岳 道迷い/疲労 前まで行こうとして山頂か ら一般道に出る際に道に 南アルプス 小仙丈ヶ岳 日向四郎沢 発病 事故現場の直前 小屋直前にブリザードにつ まで天候悪化して かまり、4名が低体温症に いたとは思わな より凍死する。前夜の天気 悪天候の為 かったし、温帯低 予報による荒天の知らせ 北アルプス後立山連峰 白馬岳 清水尾根 白 の行動不能 気圧が発達しな もなく、現場においても悪 がら北上していた 天の兆候も感じられず、事 とは気づかなかっ 故現場にて嵐につかまり 引き返すこともできなかっ た。 六甲山系 西山谷 西山大谷の巻道 滑落/転倒 巻道上部で踏み跡8人パーティの4番目 滑落 ハーケンで支点が取 草付部をぬけたと思われ れずランナウトした たとき、足をすべらせ滑落、 谷川連峰 一の倉沢岳3ルンゼ草付き 滑落 状態で草付きを ランナウトしていたため下部 1800m付近 のスラブに落下した 登攀していた 奥秩父両神山白井差登山道ブナ平付近(13 発病 その他 高齢者が多く、心筋梗塞、多臓器不全 日山協(‘05-07) 死亡者データ 性別 年齢 診断名 山行目的 発生場所 態様/原因(Rどのような状態 女 /後頭部骨折/両大 縦走 38 腿骨折開放骨折 西穂~奥穂への縦 西穂高岳~奥穂高岳縦走中 間ノ岳北東約 走中 間ノ岳を通 墜落/その他 10mの下り斜面 過して下っていた 時、歩行中 男 66 山スキー 白馬乗鞍岳 女 女 60 /脳挫傷 46 63 /脳挫傷 縦走 北アルプス双六岳 山スキー 北アルプス 針ノ木岳 針ノ木雪渓 沢登り/アイスクラ黒部峡谷 折尾谷 引き返すためにス 道迷い/雪崩キーシールを取り付 けていた 滑落 転倒 転倒 データ数が少ないため、死亡者からの報告なし 2006年のみ。 問題点の指摘 コース上に浮石が多いこと は認識していた。気が付く 限り本人も注意していたよ うだし、リーダー(北村)もわか る限り指示をしていた。経 験が少ないため、浮石であ るこあどうか見極められな かったのではないか。また 必要よりも多くホールドに 頼ってしまったことも考えら 雪崩により装備の大半を 失う。何処に行っても雪崩 の起きそうな斜面に迷い まとめ • 現在、我が国で発生している山岳遭難事故の特徴 (高齢化/道迷い等)は、世界的に見ても、他に例を みない。ただし、世界的には事故は増加傾向にある。 • 特に、登山者の高齢化は、どこまでこのような現象 が続いていくのか、良い意味にも、悪い意味にも世 界が注目していくであろう。 • 後者の場合、道迷い、疲労、病気などの項目が増加 していくと予想している。 • 我が国の死亡率の高さ(約15%)は、レスキューのあ り方、特に山岳医問題、ヘリ・レスキュー体制の充実 などに関係している。 欧米のレスキュー体制の良い ところを少しでも、我が国に導入していくことが望ま れる。 今後の遭対活動への提案 欧米での活動を参考にして、 事故データの活用(案) • 将来、3山岳団体データを基に、日山協・労 山・都岳連などのブロック(近畿、関東など) 単位で、事故報告書(小冊子)の出版、共通 ルールのHP事故公開はできないだろうか。 • 勿論、個人情報に何とか触れない程度に情 報公開の可能性検討が必要。 • また、欧米のレスキュー団体と公的な協力体 制を結べないか。 公益法人として、遭対活動を見ると • MRの活動は、ボランティアを原則とし、活動 資金の多くを寄付金によって賄っている。 • したがって、常に、事故の発生現状と活動状 況について、市民に情報公開している。 • 日山協も、国民に事故の状況を情報公開し 遭難の防止に役立てなければならない。事故 者の減少、ひいては、共済のメリットにもつな がることである。
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