小川山 初心者クライマー 恐怖の体験記 Junzou S

小川山 初心者クライマー 恐怖の体験記
Junzou S
こんにちは。
「おがわやまだより」は毎週楽しみに見させて貰っています。
今回、私の小川山での中高年初心者クライミング初体験をお便りします。
エキスパートの方にはどう思われるかは知りませんが、こんな人も廻り目平にやって来ると云うことで報告しま
す。
私は今年50歳!になるので、なにか記念になることをしたいと思い、思い切って若い頃からやりたかったクラ
イミングをと考えました。
今年の春(`97)の春頃からクライミングの本を、アルパイン・フリー・沢登りと片っ端から読み、ビデオも2本買
って(決して日本100名山のようなものではありません)、毎晩机上学習をしました。と言ってもよくわからない
部分も多かったのですが。
用具も少しずつ買い漁りました。ロープは 9mm を買ってしまい、後で 10.5mm の 45m を買い足しましたました
が、小川山のことを考えると 50m のものにしておけば良かったと思いました。
ハーネスはビレイループのないものをしかも2種類も買ってしまい、これも買いなおしました。
カラビナもバーゲンで思いついたように買っていたので不揃いで使いにくくてだめ、周りにアドバイスをしてくれ
る人がいないのでとんだ回り道をしてしまう。
トレーニングは同レベルの超初心者の友人と奥武蔵の日和田山に行ったのですが、休日のゲレンデは、縄の
れんのようにロープが垂れ下がり、圧倒されて下の小さな岩でボルダリングだけをして帰ってきました。
これではいけないと、スクールに入ったのですが、なぜかアルパイン系の重登山靴とヘルメットを被った講習
会を選んでしまい、それでも一通り教わり、今度はフリークライミングのジムに3∼4回通いました。
そして小川山へ出掛けるために「おがわやまだより」へ Mail を出したところ、事細かくアドバイスを頂き、小川
山へ出掛けたのですがあいにく天候が悪くどこも登らずに帰ってきました。
(これで良かったのかもしれませんが)帰京後「おがわやまだより」へ再度 Mail したところ、H氏というクライマ
ーを紹介して貰い、マンツーマンで小川山でのフリークライミング1日体験コースをやることになった。
97 年 9 月 21 日
午後遅く廻り目平へ到着しH氏と対面をする。自分より若いがいかにも登れそう、そして信頼感もありそうに感
じたが、その夜は興奮してなかなか寝付かれなかった。
97 年 9 月 22 日
晴れのち曇り、時々雨の肌寒い廻り目平。昨晩はよく寝付かれず、「明日はオンサイトだ!」
などと威勢の良い気持ちは全然なくなり思わず帰ってしまおうかと思ったくらいでした。
今日のコースはガマスラブと言うことで、林道を歩きながら、あれがマラ岩、これがリバーサイド、あっちが父
岩などと周辺の事を話しながら取り付きに向かう。ガマスラブは初心者の入門コースと聞いていたので1ピッ
チ目でトップロープを張り遊ばせてくれくれると思っていたのだが、1ピッチ目は最初から素通りして2ピッチ目
でやるという。
(確かここはグレード 5.9 だぞ!スクールで登った日和田山の一番易しい南面ルートの 5.4 位しか登っていない
のに・・・・・)と思ったのですが、クライミングジムで垂直の壁は登っているしだいいち50歳の記念のなのだか
ら少々危険を冒してもチャレンジしなくちゃと決心を固めました。
H氏に「ハイ、私が登りますからビレイして下さい」と云われロープを渡されるが「ハイ、ハイ、ビレイですね」と
云ったものの、ビレイ、ビレイ?ビレイって?と頭は理解しているのに極度の緊張で身体も手も動
H氏は私のビレイなど無視しているかのように何のためらいもなく登りはじめ、立木を利用してトップロープの
準備をしてくれる。さあ私の登る番だ。
ハーネスにロープを結び岩に取り付く。クラックをレイバックで登った後ダイクに乗り右にトラヴァース。そしてこ
のピッチの核心と云われているスラブをスメアリングで登るところで冷や汗
がどっと出る。(あれー、ジムの壁と全然違う!掴むところがない・・)
顔を上げないように立ち上がりトカゲになったつもりで一歩一歩足を上げる。何とか難関を乗り越えて枯れ木
のあるテラスへ辿り着く。よくよく考えるとテンションもかからずに登ってしまったのだ。H氏に降ろしてくれるよ
うに声を掛け取り付きに戻ったときには夢心地だった。
一休みしているときにH氏が「さーて、リードしてみる・・・」と云う。「うそーだろー」と云ったものムクムクと冒険
心が湧き起こり「リードしてみる」と思わず口走ってしまう。
トップロープで一回登っているものの、初めてのリードで緊張するがH氏の励ましで登り始める。
やっぱりトップロープで登るのとは大違いで冷や汗だらだらであったが枯れた立木のあるテラスまでテンション
もかからずに登ってしまった。これってレッドポイント!?ロープをクリップる練習をしておいて良かった!
ロワーダウンで取り付きに戻った後でHしが「今度は頂上まで行く」と云う。(うそー)
フリークライミング体験だけのはずが、なんとフリークライミングでのマルチピッチのクライミングになってしまう。
H氏が終始リードし、私はフォローアーとして登るのだが緊張と恐怖が入り乱れた心境であった。先程の枯れ
木のテラスは通り過ぎかなり傾斜のきついテラスでピッチを切る。
ここまではあまり難しくはない。次のピッチでの難関は凹角状のところで傾斜もきつく足下も切れ高度感抜群
であった。
その後は林の中を左上の方へ歩いて行く。一服した後再度岩場へ取り付く。眼下には西股沢の流れが見える。
フレークを2度程乗り越えるのだが高度感もあり足がすくんでしまう。
H氏の姿は見えないが声はよく通るので安心する。ここまでフオローとはいえロープで引き上げられることもな
く登ってきたのにはH氏以上に自分が驚いてる。
その先少し歩き尾根の上に出ると、霞む廻り目平の景色がすばらしい。その後傾斜の緩い岩場を登るが終了
点直下の大きな割れ目をまたぐ時は恐ろしかった。終了点に着き下を見るとそこは垂直の壁ではないか?!
今いるところがソドムの頭だと教わる。
ボルトが3本打ってある下降支点から懸垂で先程の垂直の岩場を懸垂下降するという。
こーんな高所から降りるなんて生まれて初めてだ!実はここでエイト環にロープを掛ける方法を教えて貰った。
俗に云う「ちょい掛け」と云うものでしたが実にスムースにロープが送り出せるものだと感心する。
今回は短時間のうちに役に立つことばかり教えてくれる。感謝!感謝!H氏よ)
2回の懸垂下降でスラブ状岩壁南面の基部へ下降し、その後岩場の基部を回り込むようにてガマルートの2
ピッチ目の取り付きにやっと戻ってきた。途中気がゆるんだのか泥の中を滑ってしたたか尻を打ってしまう。イ
テー!!。
今日登ったルートの余韻を味わいながら廻り目平へ戻る途中から心配していた雨が降り出してしまう。
その夜は大きなタープの下でランタンの光が美しく輝く頃、2缶目のビールのふたを開ける私50歳記念の喜
びがじわーっと襲ってきました。
ありがとう 小川山、そしてH氏。そうそう忘れてはいけない「おがわやまだより」にも・・・。