ここ - 香川大学農学部

五班
地域内の飼料用米をえさにした
高品質豚肉生産
飼料用米の導入
~山形県庄内地方の例~
08A061 白鳥良祐 08A066 関健太郎
08A067 千崎雄佑 08A087 中尾圭佑
地域の概要
飼料用米を活用するきっかけ
庄内地方とは
• 主食用米の消費の低下
• 山形県北西部にある
地方
• 夏は暑く、冬は寒い
ため、寒暖の差が激
しく、高品質な作物
ができる。
メリット
• 子実利用であれば主食用米と同じ機械や作
業で行うことができる。
• 国内での畜種を超えた穀物飼料自給率の向
上
• 休耕田の有効活用
• 水田の多面的機能(洪水防止機能など)
• 凶作など万一のとき食料に回すことが可能
• 後継者不足による不耕作地の増加
• 生産調整による休耕地でのダイズに変わる
転作作物(連作障害回避)
飼料用米活用システムの確立
飼料用米プロジェクト
ワーキンググループ
・市町村
・消費者団体
・全農庄内本部
・農協
(株)平田牧場
助言・指導
・(独)東北農業研究センター水田利用部
・(独)山県大学農学部
・山形県庄内総合支庁酒田農業技術普及課
協力(分析など)
・山形県農業総合研究センター
畜産試験場
畜産試験場養豚支部
事業概要
• 産地に適した飼料用米品種の選定
• 家畜への給与における肉質の調査
• 飼料用米生産による国内自給率向上効果の
調査
• 補助金制度や転作作物としての利用による
生産者や生産量の増加
平田牧場での給与システム
大型品種の導入
バークシャー種の導入
平田牧場が設立された当時、世間の養豚業では
生産能力の向上のみを追い求めて、海外からラ
ンドレースや大ヨークシャーなどの大型品種を導
入しました。
平田牧場では、生産効率よりも肉質の良さを追
求していたので、日本で古くから飼育されて
いたバークシャー種を導入しました。
しかし、バークシャー種は脂質、肉質、おいしさ
に定評があるももの、産子数が少ない、脂肪
量が多いという問題点がありました。
しかし、これらの品種の肉質は悪かったのです。
三元交配豚LDB種の導入
そこで、産子数の多いランドレース種と肉質の
良いデュロック種を交配し、そのF1にバーク
シャー種を交配し、三元交配豚LDB種を作り
出しました。
肉質のおいしさをバークシャー種より引き継ぎ、
バークシャー種よりも生産能力は向上しまし
た。
仕上げ飼料
仕上げ飼料は植物質性であり、遺伝子操作を
行っておらず、そして収穫後に農薬処理され
ていないトウモロコシと大豆かすを使用してい
ます。
飼料用米はこの仕上げ飼料に混合されていま
すが、トウモロコシの代わりに玄米が配合さ
れています。
平牧若豚用飼料の作り方
•
•
→粉砕
豚の出荷
一般的に豚の出荷には、180日必要であるが、
平田牧場では、豚肉の品質を追求しているた
め20日ほど長い200日飼育し出荷していま
す。
飼料用米は玄米であり、粉砕し、粉末状にした後、
仕上げ飼料に配合して平牧若豚用飼料を作る。
平田牧場では、豚1頭に対し、出荷までに仕上
げ190Kg与えるので、10%の飼料用米配
合割合であれば、飼料用米を19Kg与えてい
ることになる。
解決策
飼料用米利用による発育・肉質と食
味の変化
平田牧場では産直方式を用いて、枝肉コストの
増加を物流コストを抑えることでカバーしてい
ます。
発育・肉質への影響
飼料用米利用による発育・肉質と食味の変化
飼料用米10%配合飼料を給与された豚と,
飼料用米が配合されていない飼料を給与さ
れた豚の肉質を比較調査した。実験は,平田
牧場の肥育農場の一つである庄内町の千本
杉農場で行ない,飼料用米10%配合の仕上
げ飼料をLDB種へ給与した。仕上げ飼料の給
与期間は約3か月である。
1.
2.
3.
4.
5.
6.
水分含量と粗脂肪含量
ドリップロスと加熱損失率
肉色と脂肪色
テクスチャー
脂肪酸組成
脂肪酸の融点
水分含量と粗脂肪含量
1.水分含量と粗脂肪含量
• 肉に含まれる水分や脂肪は,食べたときの肉
汁感などに影響
• 豚の水分含量は約70~75%、粗脂肪含量は
約3~4%、この量は品種や飼養方法により
大きく変動
• 水分含量と脂肪含量は拮抗的であり,どちら
かが増加すればもう一方は減少する関係
2.ドリップロスと加熱損失率
• ドリップの少ない肉ほど保水性が高く,旨味
や肉汁を保持できる高品質の肉
• ドリップロスとは,肉を4~5℃で24~48時間
保存した後のドリップの流出による重量損失
分を示したもの
• 加熱損失率とは,肉を調理した際に失われる
肉汁などの重量損失分を示したもの
s水分含量(%)
粗脂肪含量(%)
10%区
70.23
4.66
対照区
72.45
2.88
ドリップロスと加熱損失率
ドリップロス(%) 加熱損失率(%)
10%区
2.74
24.56
対照区
4.74
28.36
3.肉色と脂肪色
• 度(L値),a値(赤色度),b値(黄色度)を測定、
数値が高いほど明るく,色が濃くなることを示
す
• 豚肉の場合、L値が45~55、a値が7~14、b
値が0~5が平均で、消費者が好みやすいの
はL値が50±2のもの
• 脂肪については,純白であることが理想とさ
れ、L値が高く,a値とb値が低いほどよい
肉色と脂肪色
脂肪色
L a b
81.14 4.33 7.75
肉色
L a b
10%区 51.40 9.53
9.64
S
対照区 50.89 79.53
9.71
7.74
4.22
5.13
テクスチャー
4.テクスチャー
硬さ
• テクスチャーとは,硬さや弾力性,もろさ,歯
ごたえなどの物理特性の総称
10%区 2.36
0.45
71.33
対照区 2.75
0.63
73.45
脂肪酸組成
5.脂肪酸組成
• オレイン酸
コレステロールを下げたり,胃腸を守ったり,
腸を滑らかにしたり,紫外線から肌を守る
• ステアリン酸
オレイン酸のコレステロールを下げる働きを補助
• リノール酸
必須脂肪酸であるが,多すぎるとアレルギーの
原因となる。また、リノール酸などの多価不飽和
脂肪酸が多くなると脂肪の融点が下がり,脂肪
が軟らかくなる。
〈皮下内層脂肪〉
ステアリン酸
ミリスチン酸 パルミチン酸 パルミトレイン酸
オレイン酸 リノール酸 リノレン酸
10%区
対照区
1.61
1.62
28.37
29.18
2.92
2.54
14.83
16.08
43.38
42.4
8.52
9
飽和
0.33
0.12
不飽和
44.84
46.88
55.16
53.12
〈筋肉内脂肪(ロース芯)〉
ステアリン酸
ミリスチン酸 パルミチン酸 パルミトレイン酸
オレイン酸 リノール酸 リノレン酸
10%区
対照区
1.59
1.7
26.68
27.9
4.74
4.37
13.8
13.47
46.16
45.97
6.83
6.5
脂肪の融点
6.脂肪の融点
• 豚の脂肪の融点は約30~40℃
• 融点が低すぎると軟脂と呼ばれ,風味も悪い
• 融点が高すぎても食べたときになめらかさが
なくなる
• 一般的には口の中で程よく溶ける温度(35~
37℃)くらいがよい
凝集性 ゴム性
内層脂肪
10%区
34.36
対照区
35.46
0.18
0.13
不飽和
飽和
42.09
43.06
57.91
56.94
食べてみての食味評価への影響
飼料用米を給与した豚を,消
費者である生活クラブの組合
員に実際に食べてもらった。
10%区と対照区を用意し,約
100名の組合員に対し試食と
アンケート調査を行なった。
試食はしゃぶしゃぶで行なっ
た(第9図)。
アンケート項目は,
見た目,香り,食感,味・風味,
総合評価の5項
目とした。
肉質向上の可能性は十分ある
アンケート結果
項目
見た目
香り(調理)
食感(調理)
アンケート内容
10%区(%) 対照区(%)
決められない(%)
Q1.見た目はどちらが好き か?
45,7
27,7
26,6
Q2.脂肪の色はどちらが好き か?
53,2
18,1
28,7
Q3.色つやはどちらがいいか?
40,2
25,0
34,8
Q.香りはどちらがいいか?
47,8
12,0
40,2
Q1.柔らかさはどちらがよかったか?
80,9
13,8
5,3
Q2.食感はどちらがよかったか?
74,5
19,1
6,4
Q3.ジューシー感(肉汁感)はどちらがよ
かったか?
73,7
14,7
11,6
Q4.どちらが飲み込みやすかったか?
75,3
12,9
11,8
味・風味(調理) Q.味・風味がよかった肉はどちらか?
64,1
15,2
20,7
73,1
17,2
9,7
総合評価
Q.(見た目、香り、食感、味、風味を総合
して)どちらの肉が好き か?
第9図
以上のアンケートの結果、すべての項目において10%区の方が上という
回答を得た。
つまり以上のことからいえることは・・・
飼料用米を肥育豚に給与す
ることにより豚肉に限らず,牛
肉,鶏肉,魚など脂肪がおい
しさの決め手といってもよい
脂肪に好影響を及ぼしている
可能性が示されたのである。
理化学分析の結果から、10%区と対照区とに差があった項目は、
色つや、脂肪の白さ
肉食b値
内層脂肪色b値及びL値
に好印象!
脂肪酸組成 オレイン酸が多くなり、リノール酸が少なくなる傾向が
あった。
脂,肉ともにしっかりと枝肉の締ま
りのある肉となった
一方,保水性,加熱損失率,テクスチャー(全体の立体感)にはほとんど
差がなかった。
リノール酸(C17H31CO2H)・・・多くの植物油に
含まれる。
オレイン酸・・・ほとんどの動物性油脂
に含まれオリーブ油の主成分でもある
今後の課題
飼料用米生産に関しては,さまざ
まな問題点がある。2005(平成17)
年,庄内地域での飼料用米価格
は主食用米の7分の1程度で,
普通の米より不利であり,飼料用
米生産者にとっては利益にならな
い。飼料用米は輸入穀物飼料との
代替となるため,徹底した高収量
低コスト低産を行なわなければな
らないのである。(売れない。)
高収量は品種改良によって達成できるが・・・
平田牧場の取り組み
この飼料用米プロジェクトの活性化するためにでき
るだけ多くの飼料用米を与えたい。
飼料用米生産者の負担軽減のために
飼料用米を高く買い取れば豚肉の生産費が増加
する。(生産者側の厳しい現実に配慮)
豚肉生産費が上がらないようにするためには,ま
ず平田牧場自身がむだの削減や資源の再利用な
ど加工にかかる費用の低減に努める
質問事項
飼料米を与えることでなぜ肉質が向上するのか?
庄内地方は米の産地として、大規模な飼料用米の生産ができると思
うが、他の地域でも大規模生産が可能か?
この事例では県や市町村など外部からの協力を得られていますが、
一農家や一畜産関係者(小規模)が新しく飼料用米の生産を始めよう
と思った時、このような協力はすぐにえられるのか?
私たち消費者がかんがえるべきこと~まとめ
消費者との交流を通して飼料用米生産の取
組みの意義を説明し,消費者は若干の豚肉価
格の増加分は再び飼料用米生産へと還元され
るという再生産可能性に理解を求めなくてはな
らない。この取り組みは日本の食料自給率の
増加という大きな目標につながるかもしれない。
消費者は安全で安心な国産の食
料を望み,同時に食料自給率の
向上を望んでいる。しかし,そのた
めに生産者側が厳しい状況に直
面しているということを考えないと
いけない!
2006年に開かれた飼料用米シンポジウム