建築基礎構造講義(4) 地盤について(3) (砂の液状化のしくみと対策) 1 到達目標 z砂の相対密度と液状化の関係、液状化のしく みと、液状化を起こしやすい地盤の条件が説 明できる。 z地盤改良の種類と方法について説明できる。 2 液状化とは z 液状化とは、地震によって地盤が一時的に液体のようになっ てしまう現象。埋立地や河口など砂質の地盤で起こり、地盤 の上の建物を傾かせたり沈ませたりする。 z この現象は、1964年の新潟地震で、アパートの倒壊や新設 の橋の崩落などの被害が続出したことにより注目された。最 近では、1995年の兵庫県南部地震(阪神・淡路大震災)でも、 ポートアイランド・六甲アイランドが被害を受けて注目された。 3 液状化のしくみ 1. 普通の状態では地盤内の砂粒子が互いにかみ合っているため、砂粒子もその隙間の水(間隙 水)も安定しています。(①の状態) 2. しかし、強い地震が発生するとその揺れで砂粒子の隙間が変形し、中に閉じこめられている間 隙水の圧力が高くなります。 3. やがてその圧力が砂粒子のかみ合いの力を越えた時、砂粒子のかみ合いがはずれます。この とき砂粒子は水中に浮いた状態となり、まるで液体のようになります。(②の状態) これが液状化です。 4. その後、圧力の高くなった間隙水は逃げ場を求めて地表面に移動しますが、その際土砂を伴い 泥水となって地表面に吹き出します。 5. 結果的に地表面に吹き出した泥水の量だけ地盤は沈下することになります。(③の状態) 4 http://www.pref.tottori.jp/kigyou/taisakuiinkai/panf/panf.htm わかりやすく言うと 上載圧 緩詰めの砂(各円 が上下左右で接 している) 上載圧 地震動によってせ ん断ひずみを生じ、 各円が上下ではで 接しなくなる 一般に,砂地 盤で地下水位 が高いと 地盤が揺すられる ことによって,間隙 水圧が上がる。 水中に浮遊した砂 は,水とともに地 表面に噴砂する 5 数学的に言うと 砂層のせん断強度 τ = σ ⋅ tan φ σ : 上載圧(土の単位体積重量 × 深さ) 間隙水圧が上昇すると τ = (σ − uw ) ⋅ tan φ uw : 間隙水圧 σ = uwとなるとτ = 0 6 液状化が起こりやすい地盤 z 平均粒径(D50)が0.15~1.0mmで,粒度が均等で 細粒分が少なく(均等係数Uc<5),かつ地下水位が 浅く水で飽和している密度のゆるい砂(相対密度 0.75以下)は,地震時の液状化の危険性が大きい。 「建築基礎構造設計指針(日本建築学会)」 地盤の形成された地質時代 沖積層(約1万年前~現在) 深度 GL-15~-20m以浅 砂の粒径 0.02mm≦D50≦2.0mm、Fc<35% D50:平均粒径、Fc:細粒分(シルト・粘土)含有率 地下水位 GL-10m以浅 N値 N<20~30 7 液状化の発生しやすい地形 液状化の A 可能性:大 自然堤防縁辺部、比高の小さい自然堤防、蛇行州、旧河道、 旧池沼、砂泥質の河原、砂丘末端緩斜面、人口海浜、砂丘間 低地・堤間低地、埋立地、湧水地点、盛土地(*1) B 液状化の 可能性:中 デルタ型谷底平野、緩扇状地、自然堤防、後背低地、湿地、デ ルタ、砂州、干拓地 C 液状化の 可能性:小 扇状地型谷底平野、扇状地、砂礫質の河原、砂礫州、砂丘、 海浜 8 液状化の実験 1. 砂を洗います。 2. 水槽の中に水と砂を混ぜて入れます。砂に たっぷりと水をしみこませてください。ただし、 砂の上に水がしみ出さないように水の量を加 減してください。 3. 砂の上に模型を置きます。 4. 平行に置いた棒の上に水槽を静かにのせま す。衝撃を与えるとすぐに液状化現象が始 まってしまうので注意してください。 5. 水槽を手で揺らします。 6. 砂の上に水が出てきて、模型が沈めば大成 功です。 7. 砂の量を変えたり、模型の重さを変えたりして、 どのような変化があるかを観察しましょう。 昨年実験したものを見てください。 9 液状化の被害 地盤が液状化すると建物を支える力がなくなったり、地盤そのも のが不均一に沈下することから次のような被害が発生します。 http://www.pref.tottori.jp/kigyou/taisakuiinkai/panf/panf.htm 10 液状化対策(1) 砂地盤を締め固めることにより間隙比の減少をはかり、 液状化に対する抵抗を増加させる。 【代表的な工法】 ・サンドコンパクションパイル工法 ・振動棒工法 ・プレロード工法等 http://www.pref.tottori.jp/kigyou/taisakuiinkai/panf/panf.htm 11 サンドコンパクションパイル工法 z 衝撃荷重あるいは振動荷重によって砂を地盤中に圧入し砂 杭を形成させるものであり、緩い砂質地盤に対しては液状化 の防止のために、粘性質地盤では支持力を向上させたり沈 下量の減少を図る目的で用いられる。 12 プレロード工法(載荷工法) この工法は、軟弱地盤対策の最も基本的な工法です。 軟弱地盤の上に、実際にできる構造物より重い荷重を加え(土を盛 る)、かつ6ヶ月程度放置することによって地盤を硬くする工法です。そ の後、土を取り除き構造物を築造することにより、構造物ができた後 の沈下を防ぐことができます。 この工法の利点 地盤の沈下促進効果が 確実である。 経済的である。 この工法の欠点 土を高く盛るため、工期がか かる。 13 http://www.ypl.pos.to/jhkanazawa-gi/press/preroad-new.htm 液状化対策(2) 砂質土にセメントなどの安定材を添加・混合して砂質土の 液状化抵抗を増加させる。 【代表的な工法】 ・深層混合処理工法 ・注入固化工法等 http://www.pref.tottori.jp/kigyou/taisakuiinkai/panf/panf.htm 14 深層改良工法 http://www.jcassoc.or.jp/Jca/Japanese/Uj_02_03a.html 15 液状化対策(3) 地下水位を低下させることにより、飽和領域を不飽和領 域にしたり、有効応力を増大させる。 【代表的な工法】 ・ディープウェル工法 http://www.pref.tottori.jp/kigyou/taisakuiinkai/panf/panf.htm 16 液状化対策(4) レキや人工材料などによるドレーンを地盤中に設置する ことにより地盤の透水性を高め、地震時の砂層内に生じ る過剰間隙水圧の上昇を抑える。 【代表的な工法】 ・グラベルドレーン工法 ・人工材料ドレーン工法 17 http://www.pref.tottori.jp/kigyou/taisakuiinkai/panf/panf.htm サンドドレーン工法 この工法は、地面に深い穴をあけて水を通しや すいように砂を詰めます。地中に水を通す砂の 柱をたくさん作り、地盤の水を搾ることにより地 盤を硬くする工法です。 サンドドレーン打設状況 18 サンドドレーン工法 http://www1.ocn.ne.jp/~g urariso/sunakui.html ①重機で地盤の中に砂杭を打設します。 ③地中の水分は、砂杭をつたわりサ ンドマットを経由して両端の排水溝へ ②サンドマットを1m程布設します ④自然条件下で数年かかる地盤 19 沈下が数ヶ月で沈下する 液状化対策(5) 壁体などにより地盤を囲み、地震時あるいは液状化時の 地盤のせん断変形を抑制する。 【代表的な工法】 ・連続地中壁工法 ・矢板等地中壁工法 20 http://www.pref.tottori.jp/kigyou/taisakuiinkai/panf/panf.htm 連続地中壁工法 http://www.takenaka-doboku.co.jp/03_technology/ekijyo/ekijyo.html 21 まとめ z液状化は地震によって土粒子のかみ合いが はずれ,水圧が上昇することによって起こる。 z液状化は,平均粒径が0.15~1.0mmで,粒 度が均等で,細粒分が少なく,かつ地下水位 が浅く,密度のゆるい砂で起こりやすい。 z液状化の対策として,締め固め,地盤改良, 地下水位を下げる,透水性を高めるなどの方 法がある。 22
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