第 2章 超 高層建 築物 の 防火安 全対策 25 第 2 章 超高層建築物の防火安全対策 ― 特 別 寄稿 ― I 超高層 ビルの 防火管理 につ い て 東京消防庁指導広報部 指導課長 小林恭 一 防 火管 理 に係 る超 高層 ビルの特性 と,超 高層 ビルの防火 管理 の あ り方 超 高 層 ビルにおけ る防 火管理 の あ り方 を考 え るため に は, まず,「超 高 層 ビルJと呼 ば れ る ビ 点に つ い て ルが ,防 火管理 面 で他 の建 物 とは際立 った どの よ うな特 性 を有 して い るか, とい うフ 整理 してお く必要 が あ る。 (1)建 築 ・設備 面 の 特性 防 火管理 に係 る超 高層 ビルの特性 を,建 築 的側 面 か ら整理 してみ る と,次 の よ うに な る。 ① は しご車 に よ る建 物 外部 か らの 消 火,救 助 活動 が期 待 出来 な い こ と これ は良 く知 られ た事 実 で あ るが,「超高 層 ビル 」を考 え る場合 には欠かす こ とは 出来 な いの で,改 め て整理 してお く。 は しご車 の 届 く高 さは通常 31mま で で あ り,特 に大 型 の は しご車 で も41∼ 2m程 度 が ,は し ″ ご車 に よって建 物外部 か ら消 火,救 助 を行 え る限 界 で あ る。 が か 助 活動 ら消 火,救 等 な建 か 全 物外部 や 煙 ら比較 的安 は は しご車 が 使 え る と,消 防隊 ,火 出来 るため,全 体 の 消 防活動 が効 果 的 に行 え るだけ で な く,臨 時 の屋 外避 難階段 が は しご車 の 数 だけ増 設 され たの と同様 の効 果 が あ り,防 火安 全上 きわめ て有 利 で あ る。 逆 に, ビル には しご車 が届 か な い部分 が あ る と,以 上の よ うな メ リッ トが期待 出来 な い ため , 建 築 的 な措 置 で そ の不 利 を補 ってや らな い と,防 火上極 め て問題 の 多 い ビルが 出来上 が って し ま うこ とに な る。 この ため, 高 さが3 1 m を 超 え る建 築 物 に は, 主 として火 災時 に消 防隊 が使 用す る こ とを 目的 として非常 用 の エ レベ ー ター が設 置 され て い る ( 建築 基準 法 第 3 4 条第 2 項 ) 。 ー 非常 用 エ レベ ー タ には, 火 災時 に使 用 で きる こ とを前提 として, 予 備 電源 等 が設 け られ る と ともに, 乗 降 ロ ビー は防 火区画 され, 排 煙 設備 等 が設 け られ て い る ( 建築 基準 法施行 令 第 1 2 9 条 の1 3 の 3 ) の で, 自動 火 災報知 設備 が発 報 した時 に火 災の確 認 等 に行 く等, 初 期 の 自衛 消 防 活動 に使 用 す る と効 果 的 で あ るが, 消 防隊 が到着 す る と, 消 防隊 は各 階 に設 け られ た制御 装 置 や か ご内の制御 装 置 を停 止 させ , か ご を呼 び戻 して専 用 的 に使 用す るの で, い つ まで も自衛 消 防 の ため に使 用 出来 る と考 えて い る と, 危 険 な場合 が あ る。 26 この ほか超 高層 ビル には, 消 防隊 の消 火活動 が 困難 で あ るこ とを補 うため, 初 期 火 災 の段 階 で 自動 的 に消 火 出来 る よ う, 1 1 階 以上 の 階 に は原 則 と して スプ リン クラー 設備 が設置 され てお り( 消防法施行 令 第 1 2 条第 1 項 第 9 サ ) , 超 高層 ビルの 火 災安 全対策 の極 め て大 きな部分 を受 け 持 って い る。 スプ リン クラー 設備 は, 信 頼性 が非常 に 高 い 自動 消 火設備 であ り, ス プ リン クラー 設備 が 確 実 に働 くよ うに維 持 管 理 す るこ とが, 超 高層 ビルの 防 火管理 業務 の 主要部分 を 占め る と言 って もよ い。 スプ リン クラー 設備 が きちん と維持 管 理 さ″して い て大 きな火 災に な るこ とは殆 どな いの で, む しろ工 事 や 点検 な どで スプ リン クラー 設備 を停 止 した時や , そ の 後 でバ ルブ を開 くの忘 れ る な ど とい った, 人 為 的 な ミスに注意 す る こ とが重要 で あ る。 ② 延床面積が大 きい巨大 ビルが 多い こと 超高層 ビルは階数が 多い ため,延 床 面積 は必然的に大 きくなるが, 1つ の階 の面積 は必ず し も大 き くない もの も出て きて い る。 階数が 多 く延床面積が大 きい と,火 災が発生 した時に,建 物 の他 の部分に いて異常に気付か ないでい る人が 多 くな り, また火災に対処 しなければな らない従業買 (自衛消防隊真)も 火災 部分 の様子 が分か りに くく,建 物全体 の状況 も把握 しに くくなるため,火 災対応 が難 しくなる。 その ような状態 の まま初期消 火に失敗 して火や煙 が拡 大す ると,逃 げ遅れ る人が 多 くな り, ラ ン ドホテル火 災 (1980年) 結果的に大惨事 につ なが る可能性がある (ラスベ ガ スのMGMグ 等)。 また,火 災を初期 の 内に消 火す るか,火 と煙 をなるべ く狭 い範囲内に閉 じ込め るように しな い と,建 物 が巨大 で高層部分 を有す るだけに,一 日火災が拡大 し始めた場合,公 設 の消防隊で も消防活動は極 めて閃難になる (ロスアンゼルスの イン ター ステー トビル 火災 (1988年)等 )。 特 に階段の構造は重要 であ り,火 災が発生 して初期消火に失敗 した場合 で も,階 段 を通 じて 火や煙が上階に拡大す ることだけは絶対 に避けなければならな い。 このため15階以上の階に通 種防 じる階段 については,原 真」として,階 段室 の扉 を常時閉鎖式又 は煙感知器連動閉鎖式 の L口 火戸にす るだけでな く,階 段室 と廊下 との間に排煙設備等 を有す る附室 を設け,い わば二重に 階段部分 を区画す る,特 別避難階段 の構造 として い る (建築基準法施行令第122条第 1項 ,同第 123条第 3項 )。 超高層 ビルの幾 つかの階 を専有す るテナ ン トの場合には,他 の階にある自社 の部 門に行 く際 に, 日常,エ レベ ー ター を使わず階段 を使 って移動 して い る場合がある。超高層 ビルの階段 は 特別避難階段 であるため,一 回の移動 について,附 室 の 防火戸 を含めて階段部分 だけで合 計 4 枚 の防火声 を通過す ることになるが,移 動手段 にエ レベ ー ター が使 われ ることを前提 として計 画 されて い るため,普 通は常時閉鎖式 の防火戸が設置 されてお り,移 動 のたびに重 い鉄製 の防 火戸 を都合 4回 も開閉 しなければならな くなる。 この結果,閉 鎖 されて い なければならない防 火声に楔 を打 って開け っ放 しに して しまう等 の恐れ も出て来 る。 防火管理 に当たっては,階 段が 日常動 線 として使 われて い ることはないか,そ の場合 に防火 戸に楔 を打 った りして閉 まらない ようになって い ることはないか, よ く注意 してお くことが必 要 であ り,そ の ような傾 向が 見 られ るの なら,そ の部分 だけ煙感矢H器運動閉鎖式 の防火戸に変 更す ることもひ とつの方法 である。 点検や,荷 物, ただ しその場合 には,通 常 は階段室が開放状態になるので,運 動閉鎖機構等 の′ 第 2章 超高層建築物 の防火安全対策 27 家具 等 に よって閉鎖 が 阻害 され るこ とに つ い ての点検 を, 常 に怠 らな い こ とが要 求 され る。 超 高 層 ビルの場合 は, 店 舗 や 飲 食店 の ビル と違 って, 階 段 室 を合 庫 替 わ りに使 うこ とは あ ま りな い よ うで あ るが , こ の部 分 に可 燃物 が大 量 に置か れ るこ とが あ る と最 悪 で あ るの で, 不 断 の 注 意 が必要 であ る。 防 災 セ ン ター が 設置 され て い るこ と ③ 建 物 が 巨大 で 火 災等 の状 況 が把 握 しに くい こ とを補 うため , 超 高層 ビル には, 火 災情 報 の 監 視, 建 物 内部 に い る従 業 員や客 に対 す る連絡 , 指 示, 防 災設備 等 の監視 や 制御 等 を集 中的 に行 え るよ うにす る 「防 災 セ ン ター 」 が設 置 され るこ とが 多い。 防 災 セ ン ター は, ④ の よ うに設備 面 の 集 中管理 が行 われ て い る場合 に は そ こに 置 か れ るこ と もあ るが, 東 京都 の よ うに条例 で一 定 の建 物 に防 災 セ ン ター の 設 置 を義務 付 け て い る場 合 もあ る ( 東京都 火 災予 防条例 第5 5 条の 2 の 2 ) 。 防 災 セ ン ター に は, 多 くの場合 , a 火 災の 発生位 置 b C 防 火戸 の 作動状 況 防 火ダ ンパ ー の 作動状 況 d 煙 の拡散 状 況 e 排 煙 設備 の作 動状 況 スプ リン クラー 設備 の 作動状 況 f g h 屋 内消 火栓 の使 用状 況 非常用 エ レベ ー ター の使 用状 況 i 非常 電源 の 作動状 況 等 の 情報 が 集 中 され る とと もに ( 上記 の どの情 報 を把握 す る機 能 が あ るか に つ い て は, ビルに よ って 異 な る) , a 防 火設備 の 遠 隔操作機 能 b 非常放 送 設備 , 非 常 電話 等 に よる逗 絡, 指 示機 能 が あ るこ とが 多い。 この こ とか ら も分 か るよ うに, 火 災が発生 した場合 には, 防 災 セ ン ター では, 表 示 盤 の 示 す 状 況 と従 業員 の 報告 とか ら, 火 災 の状 況, 避 難 の状 況, 防 火設備 の動 作状 況 等 を的確 に把 握 し て, 状 況 に応 じた判 断 を行 い, 従 業 員 に とるべ き行 動 を指 示 し, 客 等 に避 難 の 方 向 を指 示 す る と ともに, 作 動 して い な い 防 火設備 等 が あれ ば それ を作動 させ , あ るい は従 業 員 に指示 して代 一 替行 動 を とらせ て, 速 や か に消 火す るか, 消 火出来 な い場合 に は 火や 煙 を 定 の 区画 内に閉 じ 込 め る とともに建 物 内部 の 人 を無事 に遊 難 させ るこ とが 出来 るよ う, 行 動 す るこ とが期 待 され て い る。 実 は, この よ うな状 況 判断や 対 応行 動 は, 的 確 に行 うこ とが極 め て難 しい オペ レー シ ョンの 一 つ な の で あ る。 この ため , 防 災 セ ン ター に勤務 す る者 に一 定 の 資格 を要 求 す る動 き もあ り, 東 京都 の よ うに, 消 防警備 業務 技能 認定証 」 を有 す る者 を置 くこ とを義務 付 け て い 条例 で, 防 災 セ ン ター には 「 る ところ もあ る ( 東京都 火 災予 防条例 第5 5 条の 2 の 2 第 2 項 ) 。 ④ 空調 ・電気 ・エ レベ ー ター 等 の 設備 面 の 集 中管 理 が行 われ て い る場合 が 多 い こ と。 H 大 な建 物 の 設備 を コン トロー ル す るため 中央管理 室 が 置か れ て い るこ とが 多 い。( 建築 基準 28 法施行令 第2 0 条の 2 第 2 引 。 。 ″ ダ ク ト方式 で争調 を行 って い る場 合 には, 火 災が発生 す る と, ダ ク トを伝 わ ぅて k 炎 や や ` い1 を驚通 す る 有毒 ガ ス等 が建 物 中 に拡 大 す る可能性 が あ る。 これ を防 くため , ダ ク トが防 火│ て ー パ い ン が設 置 され て るが 建 築 准f 隼 部分 に は熱 又 は煙 に よ り自動 的 に閉鎖 す る構 造 の 防 火 ダ ー 法施行 令 第 1 1 2 条第1 6 項) , 多 くの 防 火 ダ ンパ は熱 感知 式 であ るため, 煙 や 有毒 ガ スの投 火を 防 ぐため に は, 火 災発生 直後 に空調 設備 の運 転 を停 止 してや る必要 が あ る。 防 災 セ ン ター と中央 管 理 室 が 同 じ= 内 に あ る場 合 には, この よ うな対 応 は比較 的 円滑 に行 わ れ得 るが , 離 れ て い る場合 に は, 相 互 に余程 緊密 に連 絡 を と りあ うか, 火 災の発 生 と運動 して 空調 設備 を停 止す るよ うな シ ステム に してお か な い と, 適 切 な対 応 が行 われ な い可能性 が あ る 垂 直 方 向 の移 動 手段 として, エ レベ ー ター が 予定 され て い る場合 が 多 い こ と ー ー 地 1 1 数1 本 階 の建 物 に な る と, 日常 の垂 直 方向 の移 動 は エ レベ タ に頼 らざるを得 な い。 こ の ため , 建 物 の 用途 に応 じて, 朝 夕 の ラ ッシュ時 等 の 混雑 時 に もあ る程 度対 応 出来 る容 量 の エ ⑤ レベ ー ター が あ らか じめ 入念 に計 画 され て設置 され て い る。 火災時 には, a b C 停 電 の ため エ レベ ー ター が途 中 で ス トップ し, 宙 づ りに な る危険が あ るこ と 上 階 か らの エ レベ ー ター が , ま さに 火 災階 で ス トップ し, 扉 が 開 い て 火煙 の 中 に放 り出 され る危険 が あ るこ と 性 能 が通 常 の 防 火戸 よ り弱 い こ とが 多い た 通常 のエ レベ ー ター は, 扉 部分 の 防 火区l B 4 の ー ー ー ー め, エ レベ タ シャ フ トが 火煙 の 通 り道 に な る可能性 が あ り, 上 階 か らエ レベ タ を 使 って避 難す る と, 火 煙 の 中 を通過 す るこ とに な り, 極 め て危 険 であ るこ と r 能性 が あ る場 合 には, 一 つ の エ レ d 火災時 の よ うに, 各 階 か ら一 斉 に避 雑行 動 を起 こす 古 ベ ー ター に一 度 に一 定 の 人数 しか 利用 出来ず, か つ そ の満 員 に な った エ レベ ー ター が下 の ー ー 一 各階 で呼 ばれ れ ば逐 停 ま って い くよ うな システム では, エ レベ タ を避 難 の ため の 唯 一 の 経路 と考 えて エ レベ ー ター を待 った 人は, 大 部分 が逃 げ遅 れ るこ とに な るこ と ー ー 等 の理 由か ら, 遊 難 に エ レベ タ を使 用す べ きでは な い, とされ て い る。 この ため , 火 災時 の避 難経 路 は, 別 に用意 され て い る特別 避 難 階段 に よ るこ と とな るが, 通 常 の移動動 線 とは異 な るため, 複 雑 なプ ラ ン を もつ 超 高層 ビル では, 避 難 が 円滑 に いか な い可 ′ 能 性が あ る。 ⑥ 建 築 基準法上, 大 空間が制 限 され て い るこ ン 超高 層 ビルの1 1 階以上 の部分 は, 最 大 の場 合 ( 壁及 び天丼 が 不 燃材料 に よ り内装制 限 され, か つ スプ リン クラー 設備 が設 置 され て い る場 合 ) で も1 0 0 0 m 2 以内毎 に耐 火構 造 の 床 及 び壁並 び に 甲梅 防 火戸 で防 火 区画 しなけれ ば な らな い こ ととされ てお り, 結 果 的 に1 0 0 0 m 2 を超 え る大 律 間が制 限 され て い る ( 建築 基 準法施行 令 第1 1 2 条) 。 この規 定 だけか ら) こ る と, 超 高層 ビルの1 1 階以 1 1 の部 分 は防 火区画性 能 の あ る小 区画 に別 れ て い るよ うに 見 え るが, 実 際 の 超 高層 ビル は, まず 1 0 0 0 m 2 毎に防 火 区画 を作 ってお き, テ ナ ン トが決 ま り次 第 そ の要望 に応 じて, 必 ず し も防 火区画性 能 の な い簡 易 な間仕切 り壁 で小部 屋 を 作 って い く場合 が あ るの で, 火 災の 早 期 発 見, 情 報伝 達 等 の 観 点 か らす る と, 見 通 しの 良 い大 空間 に比 べ てむ しろ不 利 な点 もあ る。 いず れ に しろ, 超 高層 ビルの 高 層部分 の 防 火区画が通常 の ビル ( スプ リン クラー 設置 の場 合 で3 0 0 0 m 2 以内毎 に防 火 区画 す る) に 比 べ て小 さ くな って い るの は, 火 災が発生 した場合 に 火煙 第 2章 超高層建築物 の防火安全対策 29 をな るべ く小 区コi に封 じ込 め ておか な い と, 通 常 の ビルに比 べ て消 防活動 が l a l 難 な超 高層 ビル にお い ては, 極 め て危 険 であ る とい うこ とであ り, 火 災が 発生 した場 合 の対 応 もこの 点 を念頭 に置 い て考 え る必要 が あ る。 ② ア トリウム 等 の 吹 き抜 けの大 空 間 を とる例 が増 えて い るこ と ア トリウム は, 超 高層 ビルに 限 らず最 近 の 大規模建 築 物 に しば しば設 置 され るよ うに な って きて い る。 ア トリウムの 本 質 は吹 き抜 け の 大 空間 であ るか ら, a スプ リン クラー を設 置 しに くい こ と b スプ リン クラー を設 置 して も, 消 火設備 と しての効 果 は期待 しに くい こ と ( ヘッ ドの 配 置 に よっては, 4 7 1 焼防止 設備 と して の効 果 な ら期 待 で きる) C 火 災 に な った場合 に, [ i 階 へ の 火煙 の伝 播経路 とな る可能性 が あ るこ と 等 の 防 災上 の 問題 点 を有 してお り, これ らの 点 を解 決 す るため , a ア トリウム に 面す る各階 の 開 H 部 に網 入 リガ ラス等 の 防火 戸 を設 置す る b ア トリウム に面す る各 階 の 開 田部 に煙 感知 器運動 の 防火 シ ャ ッター を設置す る C ア トリウム の床 面 に可 燃物 を大 量 に置か な い よ うにす る d ア トリウムの上 部 に排 煙 設備 を設 置す る e 放 水銃 等 の 特殊 な消 火 設備 を設 置す る 等 の 対策 が, 必 要 に応 じて施 され て い るこ とが 多い。 従 って, ア トリウムが設 置 され て い る場 合 には, ア トリウム におけ る催 し物 の 際 の 可 燃物 管 理 等 の他 , 火 災が発生 した場合 の 防 火区画 の 設定, 消 火 設備 の 作動, 排 煙 設備 の 作動 等, ア ト リウムの 防 災対 策 と してあ らか じめ考 え られ て い るプ ロ グ ラム を, 必 要 に応 じて行 わ なけれ ば な らな い。 ① はめ殺 しの 窓が 多い こ と 超 高層 ビルの 高 層部分 は風 圧 が 強 い ため , 窓 は はめ 殺 しにす るこ とが 多 い。 また。 エ レベ ー ター 部分 や 階段 室部分 を含 め, 避 難路 とな る部分 は窓 に 面 して い な い こ とが 多 い ため , 火 災が 発生 した場合 に煙 が 充満 す る可 能性 が 高 い。 この ため 排 煙 設備 が 設 置 され るこ とに な る ( 建築 基準法施行 令 第 1 2 6 条の 2 ) が , り 卜 煙 設備 は, 作 動 させ る時期 と場 所 の選 定 が 難 し く, これ を誤 る と, 結 果 的 に火 勢 を強め るこ とに な りかね な い の で注 意 を要 す る。 また, 排 煙 設備 の 容 量 に限界が あ るの で, 一 度 に 多数 の排 煙 口か ら排 煙 させ よ う とす る と, 気 流 が うま く形 成 され ず, 効 果 が な い こ と もあ る。 基本 的 には, 排 煙 設備 は, ( ど 1 火室 で な く) 避難路部分 の 煙 を排 除 して避 難 を容 易 にす るため に有 るの だ とい う原則 を念頭 に置 い て, 重 ′ 点的 に作動 させ るこ とが必要 で あ る。 ( 2 ) 管 理 面 の 特性 超 高層 ビルの 管理 面 の特性 は, 法 令 に規 定 され る事 項 とは 異 な リー 律 に定 まる もの では な い が , 経 済 的社 会 的 に, 自ず と一 定 の傾 向が 見 られ る もの もあ るの で, 特 に 防火管理 に関係 の 深 い部分 につ い て整理 してお く。 ① 用途が複合 したビルが 多いこと ② 管理権原が複数に分かれているビルが多いこメ ③ 多くの場合,キ ーテナン トとなる大企業が入っていること 30 ー 超 高層 ビル は, 多 くの場 合, 1つ 又は少数 の企 業 が キ テナ ン トとして 入 って相 当 の フ ロア 面積 を 占有 してお り,そ の他 に比較 的小 さな事務 所 が相 当数 入 り, さ らに最 上 階や地 階部分 に 飲 食店 や 物 品販売 店 が 入 って い る とい う形態 が典 型 的 であ る。(ただ し,大 都 市 の ビルの建 て方 として超 高 層 ビルが 一 般 的 に な るに従 い, 1つ の企 業や 1つ の公 共機 関 が 1つ の超 高層 ビル を 占有 す る もの,逆 に比較 的小 規模 なテナ ン トばか りで構 成 され て い る もの な ど,「典 型的 J超高 層 ビル以外 の もの も増 えて来 て い るよ うであ るの で,留 意す る必要 が あ る。) 「 防 火管理 を考 え る際 に重要 な の は, この 典イ!的J超 高層 ビルの よ うに用途や 管理権 原 が 複 雑 に別 れ て い る場合 で あ る。 超 高層 ビルは,通 常 の ビル に比 べ て,火 煙 を出火部 分 に限定 す るため の 防火 区画 の 考 え方 が よ り強 い が,そ れ で も万 一 を考 えれ ば, 1つ の 超 高層 ビル を 1つ の運 命共 同体 と考 えて火 災対 策 を講 ぜ ざるを得 な い。 一 管理権 原 が複雑 に別 れ て い る もの で あ って も, ビル全体 を 体 的 に考 えて火 災対策 を講 じな けれ ば な らな いの は 当然 であ る。 この ため ,個 々の 管理 単位 ご とに (多 くの場 合 テナ ン トご と に)防 火管理 者 を置 き消 防計 画 を定 め て 防 火管理 を行 うほか (消防法 第 8条 ),そ れ ぞれ の 管 理 単位 の責 任 者 (管理 権 原者)が 協 議 して,火 災等 が発生 した場 合 の 活動 等,防 火管理 上必要 な 「 事 項 を定 め ておか なけれ ば な らな い こ と とされ てお り, これ を 共 同防 火管理 Jと 呼 ん で い る (消防法 第 8条 の 2)。 共 同防火管理 の 内容 は,4Ll々の テナ ン トの 用途,規 模 ,管 理 形 態,運 営 形 態等 に よ って様 々 であ るが,「典 イ!的J超 高層 ビルで あれ ば, a 防 災 セ ン ター を中心 と した火 災情報 の 集 中管 理 警備 員 を中心 とした初期 消 火,防 災設備 の作動 等 の対 応行 動 ビル管 理部 門 を中心 と した防 災設備 の維持 管 理 b C 個 々 の テナ ン トご との 火気 管理 及 び初期 消 火並 びに通 報 連絡 テナ ン トの種 類 に よっては テナ ン ト職 員 に よ る避 難誘 導 d e な どに よ り,適 宜行 われ るこ ととな ろ う。 防災 セ ン ター ,警 備 員, ビル管 理 部 門, テナ ン ト等 の役 割分 担 は,そ れ ぞれ の実 態 に応 じて ∼ 異 な るが ,Vヽ ず れ に しろ 「自衛 消 防隊」,「 自衛 消 防隊長J,「地 区隊」,「消 火班 」,「 班 J等 の 典 型的 な 自衛 消 防組織 に こだわ り過 ぎる と,実 態 とか け離 れ た机上 の 計 画 に な る可能性 が あ る の で注意 を要 す る。 重要 な こ とは, a そ の ビルの本 当 の使 われ方 に合 わせ た無理 の な い計 画 にす るこ と b 超 高 層 ビルの 防 火安 全 対 策 の 基本 であ る,初 期 消 火,火 煙 の 閉 じ込 め ,他 の部分 へ の運 絡 等 を誰 が どの よ うに行 うか 「∼班 」 に あて とい うこ とであ り,そ れが で きるの な ら,個 々の テナ ン トの職 員 をむ りや り はめ る必要 は企 くな い。 ー ー 最 近 の 超 高層 ビルの 中 には, タ ミナ ル駅 ,バ ス タ ミナ ル,高 速 道路,地 下街,劇 場 ,デ パ ー ト等,「典 11的J超高 層 ビル では考 え られ なか った よ うな様 々 な用途 が組 み込 まれ る例 も出 て 来 て い るが ,個 々の部分 か らの 客 の避 難誘 導 に重点 をお くこ と以外 は,上 の 原則 は 同 じと考 えて良 い だ ろ う。 ④ 一 警備 業者, ビル メンテナ ン ス業者 等 に,防 火管理 業務 の 部 を委託 して い る場 合 が 多い こ と 第 2章 超 高層建築物 の 防火安 全対策 31 ⑤ 特に防災センターの業務については委託されている場合が 多いこと 最近は,超 高層 ビルに限らず大規模なビルの防火管理業務については, ビルの所有者等が行 うだけ で な く, そ の 一 部 を警備 業 者 等 に委託 して い るこ とが 多 い。 防 火管理 業務 の一 部 が 委 託 され た場合 , a テナ ン トとの 力関係 が は っ き りしな い可能性 が あ るこ と b 火 災が 発生 した場合 の 活動 の 際 の指揮 命令 系統 が 明確 で な い可能性 が あ るこ と C 契約 の 際 に 業務 範 囲 を明確 に しておか な い と, 火 災の 際 に混 乱す る可能性 が あ るこ と d 業務 範 囲 は 火 災の性状 , 特 1 生に 合 った もの とす る必要 が あ るこ と 等 の 点 に留 意す る必 要 が あ り, この ため , 防 火管理 業務 の 一 部 を委託 す る場合 に は, 受 託 者 の 名称や 業務 範 囲等 を消 防計 L R l に 定 め ておか なけれ ば な らな い こ ととされ て い る ( 消防法施行 規 民J 第 3 条 第 2 項 ) 。 特 に 防 災 セ ン ター の 業務 に つ い ては, ビル メン テナ ン ス業者 等 に委託 され て い るこ とが 多い が, 火 災時 の 情 報 が 集 中す る とと もに各部 門に活動 内容 を指示 す る等, 火 災が 発生 した場 合 の 中枢機 能 を担 うこ とに な るの で, 火 災時 の 活動 マ ニ ュアル に よっては, あ らか じめ 必要 な権 限 が 与 え られ て い なけれ ば な らな い。 また, 防 災セ ン ター の オペ レー シ ョン と″ 点検 整備 業務 と衛 生 ・給排 気 ・電 気 設備 等 の運転 業 務 とが それ ぞれ別 の 業 者 に委 託 され て い るこ と もあ るが, そ の場 合 には, あ らか じめ余 程 入念 な計画 と訓 線 を行 って い な い と, 円 滑 な活動 が 出来 な い可能性 が あ るの で注意 を要 す る。 超 高層 ビルの 消防計画の 留意点 以上 1 述べ て 来 た よ うなハ ー ド両, ソフ ト面 の特性 を踏 まえて, 火 災予 防 の ため 日頃か ら行 っ てお くべ き事 項, 火 災時 に行 うべ き事 項 とそ の 役常J 分担 等 を ま とめ たのが 消 防計 l R l で あ る。 超 高層 ビルの場合 , 通 常, 管 F I P 権 原 が 複数 に別 れ て い る場合 が 多 い の で, 消 防計 画 は, 個 々 の テナ ン ト毎 に作 られ る もの と, ビル / f t 体 で作 られ る もの とが あ る。 ビル全体 を対 象 として作 られ る消 防計画 は, そ の ビルの 防 災対 策 をか た ち作 る基本 思 想 が前 提 とな って い なけれ ば な らず, テ ナ ン ト毎 に 作 られ る消 防計 画 は, ビル全体 の 消 防計 画 が 前梶 とな って い なければ な らな い の は, 当 然 で あ る。 最 近 の 超 高層 ビル は, 計 L B l 段 階 で防 災計 画書 を作成 し, 0 日 本建 築 セ ン ター の評 定 を受 け な けれ ば な らな い こ ととされ て い るが, この 防 災計 画書 は, そ の ビルの 防災対 策 の 計 画段 階 での 基本思 想が表現 され て い る もの で あ るの で, 消 防計画 に は, 防 災計画書 に盛 り込 まれ て い る基 本思 想 を実 際 の使 用 に際 して い か に して実 現 す るか , とい う観 点 か らの ソフ ト面 の 規 定 が 定 め られ て い なけれ │ ゴな らな い。 通常, 防 災計 画書 は, 計 画段 階 で設 計者 が 作 成す るの で, 0 日 本建 築 セ ン ター の評 定 を通 っ て しまえば用 済み で あ り, 竣 工 ・引 き渡 し時 に施 主 に引 き継 が れ る もの とは考 え られ て い な い 面 が あ るが , 大 きな誤 りであ る。 特 に, 複 雑 な計 画 を持 つ 巨大 な複 合 用途 の超 高層 ビルの よ うな場合 は, 防 災面 での基 本構 想 の 策定 に極 め て 多 くの 努 力が払 われ てお り, 典 イ! 的な超 高層 ビル の 防 災対 策 とは 多少違 った ソ フ ト面 での対 応 が 要 求 され るこ と も多 いの で, 消 防計 画 の 作成 に 当た って 防 災計 画書 を前提 に しな い と, せ っか く設 置 され て い るハ ー ド面 の 対策 を十分 発揮 させ るこ とが 出来 な い ばか りで な く, 誤 った対 応 を して, か え って 危険 を招 く可能性 さえあ るの で注意 を要 す る。
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