平成24年度 共同商品テスト 「夏用手袋の紫外線遮蔽効果について」 結果報告書 平成24年11月 横浜市消費生活総合センター 目 次 1.テスト概要 1-1 目的 ··························· 1-2 テスト対象銘柄 ······················ 1-3 テスト項目と主なテスト条件 ················ 1-4 モニター ························· 1-5 テスト期間 ························ 1-6 テスト結果の公表 ····················· 2 2 2 2 4 4 2.テスト結果 2-1 表示等 1)家庭用品品質表示法に定められている表示 ··········· 2)紫外線遮蔽効果に関する表示 ················· 3)編地・厚み ························· 2-2 紫外線遮蔽効果の測定 ··················· 2-3 洗濯10回後の紫外線遮蔽効果 ··············· 4 4 4 5 7 3.消費者へのアドバイス ······················ 8 4.モニターの感想 ························· 8 資料1 検体一覧表 ························· 3 1 1.テスト概要 1-1 目的 紫外線は「肌のしみ・しわ」の原因になるだけでなく、紫外線アレルギー(湿 疹)や皮膚癌の発症率を高めるなど、有害性が広く知られるようになってきま した。そのため、市場ではさまざまなUVカット製品が出回っています。「紫 外線遮蔽率」や「UVカット率」などの表示があるものも増えています。そこ で、製品の色や素材により効果の違いがあるのか、洗濯することにより効果が 落ちないのかなど、夏用手袋(アームカバー)を対象に紫外線遮蔽効果につい てテストしました。 テストは、横浜市内の消費者団体、横浜市消費生活推進員の協力を得て実施 しました。 1-2 テスト対象銘柄 紫外線遮蔽率の数値の表示があった3銘柄と、遮蔽率の表示はないが、「U Vケア」 「紫外線対策」などの表示があった3銘柄(それぞれ色違いをテスト) の6銘柄 10 点をテストしました。(3ページ 資料1参照) 1-3 テスト項目と主なテスト条件 1-3-1 テスト項目 1)表示等の確認 2)紫外線遮蔽効果の測定 3)洗濯10回後の紫外線遮蔽効果 1-3-2 テスト条件 簡易紫外線測定器を使用し、8月の晴れた日にそれぞれのモニター宅にて紫 外線量を測定しました。簡易紫外線測定器で計測できるのは、A波とB波の 290~390nm(ナノメートル、10 億分の1メートル)の領域で、表示単位はμW/c ㎡(マイクロワット)です。 1-4 モニター 組織名 参加団体 参加数 横浜市消費者団体連絡会 コープかながわ、横浜くらし見直し「結 3団体 の会」、横浜市女性団体連絡協議会 横浜市消費生活推進員 中区、港南区、栄区 2 6名 ■資料1 № 検体一覧表 1 2 3 4 5 商品名 ロングアームカバー ロングUVグローブ ロング無地 (スベリ止め付) ロング無地 (スベリ止め付) 手袋ミドルサンダイヤ 価 格 1,785円 1,995円 1,050円 1,050円 1,575円 黒 ベージュ 黒 白 黒 綿 100% ポリエステル 63% レーヨン 37% 綿 100% 綿 100% 《甲部》綿・ポリエステル 《掌部》綿100% 《レース部》綿90%、レ ーヨ ン5%、ポリウレタン5% 写 真 色 組 成 製 品 の UV遮蔽率99.9%生地 UV遮蔽率91.7% 使用 特徴 UVケア加工 吸汗透湿 7 8 9 10 アームカバー サマーグローブ サマーグローブ サマーグローブ 1,575円 390円 105円 105円 105円 白 黒 6 № UVケア加工、抗菌、 UVカット、汚れの分 解、消臭 UVケア加工 吸汗透湿 写 真 商品名 手袋ミドルサンダイヤ 価 格 色 組 成 《甲部》綿・ポリエステル 綿 《掌部》綿100% アクリル 《レース部》綿90%、レ ーヨ その他 ン5%、ポリウレタン6% 黒 グレー ベージュ 《本体》 ポリエステル100% 《レース》 ナイロン、ポリウレタン 《本体》 ポリエステル100% 《レース》 ナイロン、ポリウレタン 《本体》 ポリエステル100% 《レース》 ナイロン、ポリウレタン 紫外線遮蔽率90%以 紫外線対策、内側は通 紫外線対策、内側は通 製 品 の UVケア加工、抗菌、 上、吸汗速乾性、抗菌 紫外線対策、内側は通 気性のよいメッシュ地 気性のよいメッシュ地 気性のよいメッシュ地 UVカット、汚れの分 防臭、デオドラント効 特徴 使用 使用 解、消臭 使用 果 紫外線遮蔽(UVカット)加工とは 紫外線を吸収もしくは反射することによって紫外線を遮断する加工の ことです。一般に使用される紫外線遮蔽物質には、紫外線散乱剤(カーボン やセラミック、チタンなどの無機物)と紫外線吸収剤(主に有機物)の2タ イプがあります。加工方法は、化学繊維の製造過程で繊維内部に紫外線遮蔽 物質(主に無機物)を練り込む方法と、染料のように紫外線遮蔽物質(無機 物、有機物)を付着させる方法があります。 3 1-5 テスト期間 テスト期間 平成24年7月~9月 ■実施日程 回 第1回 第2回 日 付 内 容 7月30日(月) 検査機器の使い方、測定方法 8月 紫外線量測定 1日(水)~31日(金) 9月10日(月) 結果報告・まとめ 1-6 テスト結果の公表 ・街頭キャンペーン、「よこはま くらしナビ 2月号」、当センターホーム ページなどで公表します。 2.テスト結果 2-1 表示等 1)家庭用品品質表示法に定められている表示 表示者名、連絡先、繊維の組成は、全ての銘柄に記載がありました。 2)紫外線遮蔽効果の表示 紫外線遮蔽率の「%」表示があったのは 3 銘柄(№1、№2、№7)です。 №3~№6 は「UVケア加工」、№8~№10 には「紫外線対策」という表示 がありました。 3)編地、厚み ●編地 №5,№6 はレース編み、その他は全てニット地です。 ●厚み №7 は厚手、№2 と№8~№10 は薄手の生地です。 4 ■表1 表示等 № 家庭用品 表示者名 品質表示 法に定め 連絡先 られている 表示 組成 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ UV遮へ UV遮へ UV遮へい効果に関 い率 い率 する表示 99.9%生 91.7% 地使用 紫外線遮 UVケア加 UVケア加 UVケア加 UVケア加 へい率 紫外線対 紫外線対 紫外線対 工 工 工 工 90%以 策 策 策 上 編地 ニット ニット ニット ニット レース レース ニット ニット ニット ニット 生地の厚み ふつう 薄 ふつう ふつう ふつう ふつう 厚 薄 薄 薄 2-2 紫外線遮蔽効果の測定 繊維製品の紫外線遮蔽(UVカット)加工の評価試験方法は、アパレル製品 等品質性能対策協議会(以下、アパ対協という)のガイドラインにより決めら れています。 ■アパ対協ガイドラインによる試験方法■ 測定波長領域:280~400nm 分光光度計を用いて、試料に紫外線を照射し透過率を測定する。 〔透過率(%)=透過光×100〕 紫外線遮蔽率(%)=100-紫外線透過率 今回は、簡易紫外線強度計で太陽光の紫外線量を測定後、簡易紫外線強度計 のセンサーを手袋の中に入れ、どの程度紫外線量が減少するかを調べました。 今回のテストにおける紫外線遮蔽率は、次の方法によります。 紫外線遮蔽率(%)=100-手袋の中に入れて測った紫外線量/太陽光の紫外線量×100 【結果】 遮蔽効果がもっとも高かったものは 99.96%(№3)で、もっとも低かった ものは 84.31%(№10)でした。(表2) ■表2 紫外線遮蔽率(%) №1 №2 №3 №4 №5 №6 №7 №8 №9 №10 99.91 94.37 99.96 97.00 98.46 92.80 98.43 94.54 89.78 84.31 5 アパ対協ガイドラインによる試験方法とは異なるため単純な比較はできませ んが、UV遮蔽率が記載されている№1、№2、№7 は、表示と同等かそれ以上 の効果が確認できました。 テスト結果から、編み方、色、生地の厚みなどとの関係を考察してみました。 ①編み方 №5 と№6 はレース編みの製品です。同じメーカーの№3、№4 に比べ若干遮 蔽率が劣りましたが、これはすき間があるためと考えられます。 ②色 色違いの銘柄(№3 の黒と№4 の白、№5 の黒と№6 の白、№8 の黒と№9 のグレーと№10 のベージュ)では、黒い色の方が淡色に比べて遮蔽効果が高い 傾向がみられました。 「UV遮蔽率」 「UVケア加工」と書かれているものでも、 ベージュ(№2)や白色のもの(№4、№6)は黒い色のものに比べて数値が低 くなりました。 ③生地の厚み 生地が薄い№2、№8~№10 は、比較的遮蔽効果が低くなりました。№7は 生地に厚みがありますが、伸縮性があるため、腕に装着すると生地が伸びて編 地の隙間が広がり、遮蔽効果は低下しました。 紫外線遮蔽率 (%) 100.00 95.00 90.00 85.00 80.00 №1 №2 №3 №4 №5 №6 6 №7 №8 №9 №10 2-3 洗濯 10 回後の紫外線遮蔽効果 洗濯することで遮蔽効果が落ちることはないのか調べてみました。 蛍光増白剤は紫外線を吸収する働きもすることから、蛍光増白剤不使用の洗 剤で洗濯、吊り干し、自然乾燥を 10 回繰り返した後、紫外線遮蔽率について 測定しました。また、遮蔽効果は生地の密度とも関係があると考え、新品時と 洗濯後の寸法についても測ることにしました。 ■新品と洗濯 10 回後の紫外線遮蔽率の変化 紫外線遮蔽率 (%) 100.00 95.00 90.00 85.00 80.00 №1 №2 №3 №4 新品 №5 №6 №7 №8 №9 №10 洗濯10回後 【紫外線遮蔽率の変化】 ■表3 洗濯10回後の寸法の変化 洗濯 10 回後は、新品時とほぼ同じか、 A.洗濯前 B.洗濯後 若干高くなる傾向がみられました。遮蔽率 長さ 55.0 51.5 1 が高くなったのは、洗濯で縮んだために密 幅 10.5 10.0 長さ 54.0 53.0 度が高くなったためと考えられます。 2 幅 11.3 10.9 【寸法変化】 長さ 49.3 47.2 3 幅 10.4 9.7 洗濯後は、ほぼ全ての検体が新品時と比 長さ 50.0 46.9 較して縮みました。 4 幅 10.6 10.5 「綿 100%」の製品(№1、№3、№4、 長さ 27.0 25.5 5 幅 7.8 7.0 №7)は全長が2cm 以上縮んでいました。 長さ 27.5 25.3 6 もっとも差があったのは№7 の 6.3cm で 幅 8.3 9.3 長さ 57.6 51.3 す。幅については1cm 以上縮んだものは 7 幅 10.0 10.2 ありませんでした。(表3) 長さ 60.0 59.0 8 【その他の変化】 幅 12.0 11.4 長さ 60.2 58.8 №8~№10 はレースや縫い目にほつれ 9 幅 12.5 12.5 が見られました。 長さ 59.9 59.0 10 7 幅 12.0 11.7 (cm) B-A -3.5 -0.5 -1.0 -0.4 -2.1 -0.7 -3.1 -0.1 -1.5 -0.8 -2.2 1.0 -6.3 0.2 -1.0 -0.6 -1.4 0.0 -0.9 -0.3 3.消費者へのアドバイス 紫外線遮蔽効果は、製品の色や繊維の密度に影響されるようです。白系やベ ージュ、グレーなどの淡色系のものより、黒いものの方が遮蔽効果は高いよ うです。 レース編みや生地が薄く透けやすいものより、繊維の目が詰まった密度の高 いものの方が、遮蔽効果がありました。伸縮性に優れたニット地は、装着す ると目が広がって遮蔽効果が減少するものがあります。店舗に見本が置いて ある場合は、装着した状態を確認した上で購入するとよいでしょう。 紫外線遮蔽率を数値で表示していた商品は、いずれも数値を満たしていまし た。「紫外線対策」など、一見するとUVカット加工を施しているかのよう な表示をしているものがありますが、具体的な表示をしているものより効果 は劣っていました。購入する際は表示をよく確認した方がよいでしょう。 4.モニターの感想 今回のテストでは安価なものでも 80%以上の遮蔽効果があることがわかり ましたが、洗濯後にほつれが生じたり、着用中にずり下がったりして着用感 が劣りました。 もともと黒い方が太陽光を吸収するというイメージがありましたが、今回の テストでやはり黒い物の方が、紫外線の遮蔽効果が高いことが分かりました。 ただし、黒色は身に付けると暑くなるので、裏面がメッシュになっているも のなど、涼しくなる工夫がされているものを選ぶようにしたいと思いました。 自分の衣類や日傘も測定してみましたが、淡色より濃色の方が紫外線を遮蔽 する効果が高いことが分かりました。 今まではデザインを重視して選んでいましたが、今後は表示をよく読んで、 機能性も考えて選びたいと思いました。 8
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