No.120 - 首都大学東京 図書館

りべる
No.120
1
働くなかでの学びと図書館 ―自治体行政の職場から―
3
首都大学東京機関リポジトリ『みやこ鳥 MIYAKO-DORI』が公開中です!!
5 「デジタル情報時代の図書館建築、その可能性と課題」講演会レポート
7
十色館 ( としょ ( く ) かん )
8
東京と鷹狩
9
∼テレビにも登場した本館所蔵資料 堀江家文書(ほりえけ・もんじょ)
図書館のある映画 Vol.13
10
Night at the Library Vol.2
11
Information /編集後記
首都大学東京図書情報センター本館 2011.4
働くなかでの学びと図書館 ―自治体行政の職場から―
都市教養学部都市政策コース 准教授 松井 望
■職場での学びから「自学」へ
働くことに必要な知識はどこで身につけるのだろうか。
第一の専門知識は、大学で学ぶような、法学、経済学、工学等の
現在、大学の各学部や学系で学び、または本年度から新しく学び
各学問分野に基づく知識である。その知識は体系的であり包括的な
始めようとする新入生の皆さんにとっては、まだまだ先のこととも
内容を持つものである。ただし、特定の仕事に対して即効的に有効
考えられるかもしれない。または、大学こそがそのような働くこと
な知識というよりも、仕事全体を俯瞰しつつ、その意味や仕組みを
に必要となる知識を学び取得できる場とも考えられているかもしれ
自覚する機会を提供してくれる知識でもある。
ない。
第二の執務知識とは、書類の書き方から始まり、仕事に必要な制
しかし一般的には、働くことに必要な知識は何よりも職場での実
度や仕組みに関する知識のことである。行政の世界では、法に基づ
際の仕事を通じて身につけるものとされてきた。つまり、働くこと
き運営されており、法令、政省令、通知、技術的助言、そして、業
に必要とされる知識とは、じっくりと腰を落ち着け机の前に座り体
務運営上のマニュアルなどの各種ルールや、各種財政・会計制度に
系的に学ぶものではなく、実践と経験を通じて身につけるものとさ
関する理解が不可欠となる。つまり、先ほどの専門知識という普遍
れる。これをオン・ザ・ジョブトレーニングと呼ぶ(略して OJT)。
的な知識から、より職員が職場で日常的な必要性に基づき、適宜修
このような職場での先人達の働く背中を見つつ、自らの働き方やそ
正、発展させた知識とも言い換えることができる。これら二つの知
こに必要となる知識を学ぶ OJT とは、職場というものが安定して
識は理屈に沿った知識でもあり、その利用対象からも、紙あしらい
いることを前提としつつ、そして、恐らくは今後も継続されるであ
に関する知識とも言い換えることができる。
ろうとの見通しのもとで行われてきた職業教育・訓練や技能習熟方
一方で、聞きなれない名称かもしれないが、第三の知識は、その
法でもあった。自治体の行政における仕事の進め方や物事の決め方
ものずばり、職場知識である。これは、職場を動かすために必要と
を観察テーマとする筆者もしばしば、そのような状況を伺うことが
なる関係性や、調整対象の属性といった、より実態的な知識ともい
ある。やはり職場となる現場での経験こそが実務では推進力となり、
える。そのため、職場以外の者には限りなくその意味の薄い知識で
その経験を大部屋のなかで働く職員間で共有され、その結果、日常
もある。ただ、職場は、有り体にいえば「あの上司は、誰と仲がよ
的につつがなく仕事が進められていく、という。
い」「この上司には、このような説明の資料の作り方が好き」とい
ただ現状を見てみると、職場での学びの機会は変化しつつあるよ
うような、いわば「固有名詞と個体差にかかわる情報」がなければ
うである。例えば平成 19 年度版の『国民生活白書』からは、職業
うまくは動かない。先の理屈に沿った知識と比べれば、きわめて情
教育訓練の実施状況は上記のような状況とは異なる風景を見ること
に基づく知識であり、これも言い換えれば、人あしらいに関する知
ができる。例えば、OJT と通常の仕事を一時的に離れて行う職業教
識や知恵ともいえる。
育訓練とされる「Off-JT」のいずれもが、現在の大学生が生まれた
もちろん、職場ではこれらの 3 つの知識が混然一体の状況にあり、
1990 年代頃から大きくその実施率が低下しているのである。その
いずれかのみの知識では職場は動かない。しかし、3 つの知識の間
背景を同白書では「企業がかつてのように長期的なつながりを前提
では、冒頭で述べたように、仕事を進める上では、専門知識よりも
とした人材育成を行わなくなってきた」と分析する。一方で、同じ
執務知識、執務知識よりも職場知識の重みを増しているのである。
職場に限らず他の職場の人との間で開催される勉強会や交流会に参
加する人の割合は 32.6%もいるという。これは、3 人に 1 人の働く
人がその学びの場を職場以外にも広げていることになる。また、同
白書では「職場という「場」で働くこと自体よりもその「場」でど
んな仕事をするかを重視」する傾向性も指摘する。
これらは、従来の職場は安定しているという前提から、経済低迷
状況、長期的雇用関係の重視の基調からの変化、人事管理における
成果主義の重視、個人単位での仕事を進める機会の増加などにより、
不確実性が高い職場へと移り変わるなかで、その学びのスタイルも、
個々人のレベルでの学び(いわゆる「自学」)へと移行しつつある
とも考えられる。
1
■自治体の政策立案を支援する
では、自治体行政では、人あしらいだけで乗り切れることがで
きるのだろうか。または、政策立案の機会は全く皆無なのだろうか。
1990 年代後半から 2000 年代までの地方分権改革を通じて、従来
の国と自治体の関係は、制度面では大きく変化した、とされる。
そして、その変化により、自治体には、この時期以前に比べても、
自主的な政策立案が必要とされている。近年では、東京都では環
境確保の条例化、神奈川県の受動喫煙防止の条例化など、他自治
体のみならず国に先んじた政策立案が進められている。
なるほど、知識の習得は個々人の意欲と持続力次第であること
■働くことに必要な知識
は確かではある。しかし、それらの知識に近づくためには、何ら
では、そもそも、働くことに必要な知識とはどのようなものであ
政策をつくるための知識を支援する環境はどうだろうか。一般的
ろうか。ここでは、行政、特に、自治体行政の職場に共通して必要
には、政策をつくる主体の一人である自治体職員に関しては、住民、
とされる知識に絞って考えてみる。その際、官僚機構の生態を歴史
議員に比べても、その環境ははなはだ貧弱な状況にある。そのた
的に論述した水谷三公『官僚の風貌』(中央公論新社、1999 年)の
め伝統的には(自治体)行政が、専門知識が必要な場合には、先
議論を参照しつつ、3 つに分ける。それは、専門知識、執務知識、
ほど述べたような人あしらいの知識や知恵を最大限活用し、外部
職場知識である。
の有識者専門家に依拠されることが常であった。ただし、その政
かの環境の整備があるもまた望ましいことも事実だろう。では、
策をつくる段階では、人あしらいの知識だけでは、何ともならな
に、2 名の司書(非常勤)
いことも事実である。
の職が配置されており、こ
おそらく、そのような政策立案の支援環境の一つが、図書館で
れら司書の方々が、知識の
ある。例えば、多くの県庁や市役所の近隣には、県立図書館や市
窓口案内人となり、政策に
立図書館が設置されていることが多い(いわゆる県庁所在都市で
関連する論文の取り寄せや
は、その両方が、ごくごく至近距離に設置されていることもある)。
他の自治体の事例、関連の
そのため、自治体の職員の大半は、それらの自治体の住民である
アンケート結果等の仕事に
可能性も高く、これら公立図書館を利用すればよいのではないか
必要な資料や情報収集の支
とも思わなくもない。ただ、どうだろう。執務時間中、ふらりと
援などのレファレンスサービスを提供してくれる。
図書館にいる職員の姿を県民が気付いた場合、少なからず、訝し
ただ、情報収集には、当然、費用が掛かる。地方自治法に規定さ
く思わるのではないだろうか。また、図書館という空間の常であ
れている「最少の経費で最大の効果を挙げる」という自治体の事務
る憩いの瞬間に直面した場合には、その眼差しはより一層厳しく
処理の理念からすれば、その理念を文言通りに受け止める、やや生
なることも考えられる。
真面目な職員は、政策立案の費用と情報収集に要する費用との比較
写真1
写真 2
では、政策立案に要する専門知識
衡量のうえで、その費用からも情報収集を回避すること、つまり、
や執務知識を、柔軟かつ迅速に、そ
政策立案を行わない行動にもなりかねない。同図書室では、情報収
して、世評にも配慮することなく、
集に要する費用を自ら負担されている、という。これにより情報収
身につける方法としては、どのよう
集に対する障壁を低くするのだろう。もちろん、無用で私的な情報
な方策が考えられるだろうか。その
収集に利用されることは望ましくはない。しかし、政策立案にとっ
解決法としては、職場に図書館を置
ては、情報収集の費用負担の軽減化は、一つのアイディアとして有
くことが考えられる。つまり、自治
効であろう。
体の職場である庁舎の中に図書室を
では、どの程度利用されているのか。平成 21 年度の同県におけ
配置するのである。これにより、気
る「予算要求書」を確認すると、「1 か月当たり延べ利用職員数」
軽に立ち寄り、政策に必要な知識を
は平成 20 年度で 866.75 人、平成 21 年度は 813.00 人と微減傾向
利用することが可能となる。しかし、現状はどうか。残念ながら、
にある。ただ、「1か月当たりデータベース利用件数」に関しては、
ほとんどの自治体ではそのような取り組みは皆無に近い。せいぜい、
平成 20 年度県が 62.42 件、
職場の片隅にある文書管理のための資料棚に、古びた刊行物が申し
平成 21 年度は 76.33 件の
訳なさそうに並ぶことが関の山である。しかし、都道府県という広
利用状況にある。決して高
域自治体のなかでも、人口が約 60 万人という最も少ない人口を抱
頻度とはいえないものの、
える自治体である鳥取県では、その取り組みを行っている。そこで、
広く活用されている様子が
今回、同県庁に訪問してみた。(写真1)
分かる。
■「知の拠点」としての庁舎内
写真 3
鳥取県では、2005 年に当時の同県知事のもとで、職員向けの図
書室を同県庁舎内に設置した(「県庁内図書室」)。同図書室は、同
県庁舎の 2 階に配置されており、9 時から 17 時 45 分までと、執
務時間中の利用が可能とされている。
同図書室は、なぜ設置されたのか。それは、まさに、県庁として
の政策を立案する際の必要な情報の収集や活用を支援することを目
的としたことにある。そのため、同県庁では、
「分権時代の県政の「知
の拠点」」として位置づけている、という。このことは、組織的には、
同県の政策立案や部内調整を行う組織である統括轄という組織の下
にあることからも分かる。そして、同図書室内では、写真にもある
ように(写真 2,3)、各政策分野に関連する行政分野に特化された
図書も配架されている。ただ、その同図書室は、大学の小教室程度
の広さであり、図書や資料の保有にも、物理的にも限定されている。
一方で、国の行政が専門分化されていることに比べても、自治体は
しばしば総合行政主体とも評され、特定の政策分野の知識だけでは
不十分である。そこで、同図書室は、県立図書館の分館としても位
置付けられており、同県立図書館が所蔵する約 88 万冊の書籍の利
用も可能である。これにより知識の量がグンと広がることになる。
更に、新聞各社、官報、法令・判例、行政情報に関するデータベー
■働くなかでの学びのために
職場で働くことを通じて学びがある。そして、学びのための環境
もまた、職場にあることが望ましい。しかし、今日では、職場での
学びの環境を職場の側が常時提供することは、やはり難しい。自治
体レベルでも、鳥取県の取り組みは、例外的な事例ともいえる。あ
くまで個々人の「自学」を通じて、働くことの知識を身につけるし
かない。ただ、そのような学びの姿勢は、職場に加わったことで、
身につくものではない。更には、今日では自治体の職場における職
員の減少等、以前のように職場での知識や知恵の伝承も困難になり
つつある。そのため、将来、職場で学びの場を提供してくれない、
と嘆くことより、まずは、そのような学びの場を自ら築き上げるこ
とが必要となる。
学びは学校で終え、あとは、職場では働くことのみになるわけで
はない。働きつつも学ぶことは継続されるのである。存外、学びは
生き方でもある。そのためにも、学生時代、知と情報の拠点である
図書館の使い方を習慣的に身につけておくこと、そして、図書館を
利用し続けることは、働きながらで学ぶうえでは有益となるだろう。
スも整備されており、多面的な情報ニーズに対応が可能となる。更
2
首都大学東京機関リポジトリ 『みやこ鳥 MIYAKO-DORI』 が
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本学の研究成果を世界へ向けて発信しています
受入担当 長内尚子
機関リポジトリ「みやこ鳥」では、本学に所属する研究者の論文や報告書などの学術成果を収集し、
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2011 年 3 月現在、閲覧できるコンテンツは約 1,600 件です。
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本文が閲覧できます。
3
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・「Google Scholar」、「CiNII」、「JAIRO」(国内の機関リポジトリを横断的に検索できるデータベース) からも検索可能です。
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教員及び大学院生の皆様、是非機関リポジトリ『みやこ鳥 MIYAKO-DORI』へご登録下さい!
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※「高度閲覧文献」では、月毎の
閲覧回数を表しています。
■『みやこ鳥 MIYAKO-DORI』は、2011 年 2 月に決定した
名称です。応募数 101 件の中から選ばれました。
「鳥が大空を飛び回るように、本学の研究成果が世界中を
飛び回り、活発に利活用されるよう鳥の名前にしました。
古典文学に登場する 都鳥 は、ユリカモメを指すという
どうして「みやこ鳥」
説もあります。ユリカモメは東京都の鳥でもあるため、都
という名前に?
の大学のリポジトリの名称にふさわしいと考えました。
多くの人々の手に届くことを願っています。」
受賞者:小林誠(社会科学研究科 大学院後期 3 年)
村岸純(都市環境科学研究科 大学院後期 3 年)
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第 5 回首都大学東京図書情報センター本館主催講演会 「デジタル情報時代の図書館建築、その可能性と課題」講演会レポート
閲覧担当 渡辺 友見
●開催概要
演題:
「デジタル情報時代の図書館、その可能性と課題」
講師:植松 貞夫(筑波大学教授)
日時:2010 年 12 月 6 日(月)15:00 ∼ 16:30
会場:首都大学東京南大沢キャンパス 講堂小ホール
対象:本学学生、教職員、都民ほか 定員:200 名
●講師:植松 貞夫(筑波大学教授)
1948 年神奈川県生まれ。東京都立大学工学部建築工学科卒業
東京大学大学院工学系研究科建築学専攻修士課程修了
筑波大学大学院図書館情報メディア研究科長・情報メディアマネージメント分野 教授
社団法人日本図書館協会施設委員会・委員長
(ウェブ : http://www.slis.tsukuba.ac.jp/ uematsu/ )
●講演会について
首都大学東京図書情報センターの講演会は「より多くの学生に図書館を身近に感じてもらえる」ことを基本コンセプトとして、過
去 4 年間に渡り開催してきました。これまでの講演会では、「情報」や「図書」について取り上げてきましたが、今回は「建築」の
観点から、図書館をクローズアップしたいと考えました。
今日、情報化社会の中で、様々な情報が電子化されることから、利用者が図書館へ足を運ぶ理由が減りつつあります。インターネッ
トを通じた情報収集が主流となる中で「場所としての図書館」とはどのような存在なのでしょうか。図書館という<場>へ足を運び
たくなる、魅力的な図書館とは、どんな図書館なのでしょうか?
●講演内容
「今回の講演会は、図書館建築についてあまりご存じない方から、よくご存じの方までを対象に、全体的なお話をさせていただき
ます。
」との前置きがあり、まずは図書館とは?と言うところからお話が始まった。
<図書館の定義>
昭和 25 年(1950 年)に「図書館法」が制定された。
「図書館」とは、
「図書、記録その他必要な資料を収集し、整理、保存して、
一般公衆の利用に供し、その教養、調査研究、娯楽等に資することを目的とする施設」である。
<図書館の利用のされ方と施設としての変遷について>
1960 年代は「学生の勉強部屋図書館」、つまり受験勉強や自習の場所であった。1960 年代~ 1980 年頃には机や椅子などを無
くし、借りて帰って家で読んでもらうことに重点を置いた「貸出型図書館」が登場。駅前など行きやすく分かりやすい場所に建設
された。(例:日野市立中央図書館)
1980 年代半ばからは、高度経済成長後の豊かな社会を背景とし、人々が生活の質を求める中で「長時間滞在館型図書館」となっ
てゆく。雑誌やビデオの利用数の増加、オンラインカタログ
(OPAC)
の発展により、
人々はより長い時間を図書館で過ごすようになっ
た。
(例:朝霞市立図書館)同時に、一つの市や町の中に本館と分館の形で複数の図書館が造られた。この他、数種類の施設が入る
複合施設図書館が主流となり、中には商業施設に入る例も現れた。
(例:多摩市立関戸図書館、さいたま市立中央、川口市立図書館)
近年では、人々の図書館での利用行動も変わってゆく。休日になると自家用車で家族そろって大きな図書館へ行く。中学生や高
校生で自宅近くに小規模な図書館(分館)がある場合でも、土日に、親と車で遠くの大規模な図書館へ行くことが多数であるとの
事例もある。
1960 年から 1990 年代半ば頃までに図書館で起こった変化は、それまでの図書
館の固定観念の払拭が大きな特徴である。例えば、
「学生の勉強部屋」から「あら
ゆる年齢層の市民の活動の場」へ。
「無料貸本屋」から「情報を知識に変える場所」
へ。「趣味や娯楽のための施設」から「地域や住民に役立つ施設」へ。
「静かに読書
をする場」から「静かな場所とにぎわいのある場所が同居する施設」へといった具
合だ。
さて、これからの社会像は、知識基盤社会、生涯学習社会、少子高齢社会、高学
歴社会の 4 つとされる。いずれも、人々が正確な知識や情報を入手することが求め
られる社会である。例えば、
「自己判断、自己責任」というからには、誰もが公平に、
正確な情報を入手できることが必要であり、そのための社会的な仕組みが図書館で
5
ある。
<デジタル情報ネットワーク社会と図書館の存在意義>
もう一つ、建築物として
現代では情報受発信の個人化(セルフ化)が進み、情報取得能力
の図書館に欠かせないの
による情報格差の解消が大きな課題となっている。また、情報の電
が、働く図書館職員のため
子化が進むことにより、来館しなくても情報の取得が済んでしまう
の快適な職場環境。日本の
という利用者も現れている。
図書館建築は世界的に見て
1982 年に出版された『紙からエレクトロニクスへ : 図書館・本
も、アメリカ、カナダ、北
の行方』
★でランカスターは、” 印刷された図書を収めるために図書
欧などの先進的な図書館建
館建築が建てられてきた。今後、図書の多くが電子媒体に転換され
築に相当追い付いてきた
るから、西暦 2000 年には、利用者が図書館に行く必要はなくなり、
が、未だ残るその最も大きな差は、職員のための質・量ともに充
図書と図書館建築はなくなるだろう ” と予測。実際問題として、大
学図書館では、2000 年以降、STM 領域(科学・技術・医学)の学
術雑誌の多くは電子ジャーナル化されており、それを読むために図
書館へ足を運ぶ必要がなくなってきている。しかし、ランカスター
は一方で、” 図書館職員を情報専門家としてとらえ直すことで、図
書館は絶滅へのシナリオを歩むことはない ” とも言っている。
つまり、専門知識と技術を持つ図書館職員が、本や情報の入手方
法など、利用者の図書館利用を支援することに重点をおき、「頼り
になる図書館」を目指すべきということ。これには図書館と職員の
特色化、個性化、専門分化が必要となる。能力の高い職員が、適当
な余裕を持って応対してくれるレファレンスサービスを充実させる
べきである。(例:スウェーデン・マルメ図書館、新潟市立図書館)
そのために自動貸出機、自動返却・仕分け機、自動化書庫、セル
フサービス等の導入によって、職員の作業量を減らし、専門的なサー
ビスに集中できるようにしている例もある。(例:府中市立図書館、
さいたま市立浦和図書館、国際基督教大学、東京大学柏図書館)
この他、紙媒体と電子媒体の両方にアクセスできるような「ハイ
ブリッドライブラリー」であること。具体的には、“ 活字資料とデ
ジタル資料とが併用でき、インターネットで見たことを本で確認で
きる ”“ 本で読んでいて分からないことをインターネットで情報を
探す “ という、まさにハイブリッドな利用ができることである。こ
れにはインターネットに接続でき、利用者の持ち込みパソコンが使
用できる環境で、かつ豊富な印刷資料を備えていることが必須条件
である。
(例:筑波大学中央図書館、ドイツ国立図書館フランクフ
ルト館、ロサンゼルス中央図書館)
昨今、大学図書館では「ラーニング・コモンズ」(以下、LC)の
設置も多くなっている。LC とは、チューター、教員、図書館職員、
上級生、学生同士の相互交流を通じて、主体的な学びの能力を獲得
していくための空間である。授業でどういう課題を出すかによって、
LC の活用度合いが変わるので、この点において日本ではまだ発展
途中と言えるかもしれない。
実した環境である。これは日本の図書館建築において残された課
題の一つといえよう。
(例:フィンランドの図書館(職員専用ラウンジ)
、カナダ・バンクー
バーの図書館(職員専用の図書室、ジム)
)
<新潟市立中央図書館の紹介>
最後に、植松先生が 20 年ほど関わってこられた図書館が紹介さ
れた。新潟市立中央図書館(2007 年 10 月オープン)である。駐
車場があり、駐車場から入る入口と、駅から歩いて来る人が入る
入口がそれぞれある。自転車置き場も設置されている。パンの香
りがする図書館にしようと、石窯でパンを焼くレストランを誘致
した。これは大変好評である。このようにして、まず人々に、図
書館に用がなくても来てもらえる工夫をした。今では、ここで食
事をするためだけに来る人もいる。
あらゆるニーズに対応できるよう閲覧席も多様だ。大きな机が
ある場所や、静かに集中できるような場所、窓際の個別性の高い
座席、ちょっと腰をかけるための座席、大きな座席などがある。
非常に人気があるのは、隅のほうの階段の下の座席。外で読む人、
中で読む人など様々に利用されている。小学校のひと学年程度の
人数が来館し、ワークショップが開けるような場所もある。2 階に
は大きな自習室を作り、自習者をここで受け止め、ほかの座席に
自習者がしみ出さないよう工夫した。このような自習室は 3 段階
に分けて作った。
(個人で利用、複数人で利用、持ち込み PC の利用)
この他、特徴的なものとしては、マンガ家が多く輩出された新
潟市ということで、水島新司などの作品をそろえた「マンガコー
ナー」がある。
デジタル時代の図書館建築ということで、図書館が生き延びて
いくためのいくつかの手段についてお話しした。以上で終わりた
いと思います。ありがとうございました。
* 講演会担当者のひとこと * 社会環境のデジタル化が進めば、将来、私のような司書
次に、建築物としての図書館について。行ってみると非常に居心
という職業はなくなってしまうのではないかと少なからず思っ
地が良く、
「また行きたくなる図書館」であることが求められる。
ていました。しかし、今回のお話を聞いてあながちそうでもないの
その条件はいくつか考えられる。例えば、入口などが入りやすい・
かなぁとちょっと安心。それにしてもヨーロッパの図書館はカラフル
書架の場所などが分かりやすい・快適に滞在できる図書館。(例:
でびっくり。日本の図書館も館内に木があったり暖炉があったりと、
島根県立斐川町立図書館、ドイツ・ドレスデン工科大学図書館、デ
ンマーク・ハスレブ市立図書館、秋田・国際教養大学、アムステル
ダム公共図書館、多摩美術大学図書館)安全で快適な環境がある図
書館。
(例:防災防犯対策、人と人とのセキュリティーに配慮して
いる)きちんと管理された資料が並ぶ図書館。(例:図書の無断持
ち出し、切り取りなどの問題への対策をしている)・・・といった
ことが挙げられる。
すてきな雰囲気の場所がたくさん紹介されていました。他にも興
味深い写真が数多くありますので、下記で紹介しているス
ライドもぜひご覧になってみてください!
★『紙からエレクトロニクスへ : 図書館・本の行方』F.W. ランカスター著
田屋裕之訳 . -- 日外アソシエーツ , 1987
本館:2F一般書架 請求記号 010.4/L21K、資料 ID: 001133760
* 講演で使われたスライドの PDF は
図書情報センター機関リポジトり「MIYAKO-DORI」に登録されています。
(http://hdl.handle.net/10748/3935 から直接閲覧可能。)
6
十色館 ( としょ ( く ) かん )
都市教養学部都市政策コース 教授 白石 賢
先日、私の自宅の近所にある、世田谷区立中央図書館に、 図書や雑誌をめくっているという時間はない。話題の
首都大の図書館に無い本を借りに行った。10 時の開館前
テーマを電子ジャーナルで検索し、引用されるものが多
には、入口にパチンコ店の開店前か病院の待合室かと思
い論文は何か。それを知らないと、時流に乗り遅れたり、
うような高齢者の行列ができている。図書館が高齢者の
自分の研究が既に誰かに発表されていたりすることを知
サロンとなっているのである。少子高齢化の中では、こ
らないまま、研究をし続けていたりするかもしれないの
れも図書館の 1 つの利用方法・役割である。
だ。
図書館の行列といえば、夏休みに恒例だった、受験生
などが、図書館の静寂な環境を求めて席取りをするとい
その時に大きな武器になるのが、大学図書館で契約し
うのがあった。図書を借りるわけではないが、これも図
ている電子ジャーナルなどである。例えば、自宅パソコ
書館の利用方法の 1 つである。
ン上でペーパーを EconPapers や Google Scholar から
検索してもフルテクスト・フリーアクセスではないかも
私は、受験生の行列をしたこともないし、まだ、図書
しれない ( もちろん abstract まではアクセスできる )。
館をサロンとして利用するほどの年齢でもない。さりと
しかし、大学の電子ジャーナルで契約していれば、フリー
て、学生時代も、図書館といえば、ゼミの購読で必要と
アクセスとなる。首都大の図書館の ScienceDirect は不
なる洋書の論文を借りてコピーをするためにたまに訪れ
十分ながらそのような体制となっている。また、首都大
る程度で、ほとんどといっていいほど物理的には図書館
図書館 HP にもある Scopus などを利用すると、論文の
には行かなかった。そして研究者のはしくれになった今
引用件数などからの検索や、h-index などの分析、さら
も、実は、その「癖」は変わっていない。
には、5 万円ぐらいするソフトである EndNote と同様
の機能も持たせることができる。私は、それらを利用す
その理由は、研究分野によるのかもしれない。私は、
るために、自宅から VPN を利用して図書館にアクセス
法制度を経済学的に分析するという研究をしてきたが、
している。そのため、学生時代と同様、物理的に図書館
研究を続けているうちに、徐々に、法学の研究スタイル
にはいかなくて済むのである。しかし、図書館は大いに
と経済学の研究スタイルの違いというものが分かってき
利用させてもらっている。これも図書館の 1 つの利用法
た。
である。
法学は日本語で書かれた大学の紀要などに発表された
論文を中心に研究が蓄積され、それが体系化されていく
図書館の利用方法は、利用する人ごとに十人十色で
と、書籍となっていく。そういう意味では、従来型の図
あってよい。色々な方法で図書館を大いに利用しよう。
書館利用型の研究スタイルに近いのではないかと思う ( た そして、願わくば、図書館も、十人十色の利用方法に応
だし、判例検索はオンラインになりつつある )。
えていって欲しいものである。その結果できあがる理想
の図書館の姿は、十色館 ( としょ ( く ) かん ) となるは
経済学は、最先端の研究は英語のジャーナルで発表さ
れ、またたく間に世界のジャーナルにその話題が拡散さ
れていく。ジャーナルは当然電子化され、世界中の読者
が閲覧できるようになっている。私の研究は、最近は、
ニューロサイエンス分野にも拡大せざるを得なくなって
いるのだが、多分理科系のジャーナルでは経済学以上に、
その傾向が強いのかもしれない。そうであれば、経済学
や理科系の最先端の研究を知るには、図書館で悠長に、
7
ずである。
東京と鷹狩
~テレビにも登場した本館所蔵資料 堀江家文書(ほりえけ・もんじょ)
閲覧サービス担当 市東 礼位子
東京と鷹狩の深い関係を示す絵図が首都大図書情報セン
もありました。家康以降、2代秀忠から4代家綱まで将
ター本館の特別コレクションの中にあります。江戸期の中野
軍の鷹狩は続き、将軍が鷹狩を行う江戸近郊の「御鷹場」
村(現在の中野区)の名主・堀江家の村政文書に含まれる「御
は整備が進みます。これは生類憐みの令を出した5代将
城より五里四方鷹場惣(そう)小絵図」
(享保 10 年(1725 年)、 軍綱吉で廃止されますが、8代将軍吉宗(享保元年~延
91・0 ㎝ ×79・5 ㎝)がそれです。江戸城を中心とした近郊
享 2 年)による家康回帰の政策によって復活します。冒
の農村が6つのエリア(六筋)に色分けされ、将軍家の鷹場
頭に述べた首都大のコレクション「御城より五里四方鷹
が詳細に示されています。鷹狩を題材に放映された NHK の「ブ
場惣小絵図」(堀江家文書 S15)はまさにこの時代に整備
ラタモリ」(第 8 回、2010/11/25 放映)の中でも紹介されま
された江戸の御鷹場の様子を描いたものです。 した。
← 御城より五里四方鷹場惣小絵図
(首都大学東京図書情報センター所蔵 堀江家文書 S15)
小絵図をみると、江戸近郊の農村(当時)が6つのエ
リア(筋)に分けられているのが分かります。それは、
東から西へ葛西筋、岩淵筋、戸田筋、中野筋、目黒筋、
品川筋となり現代の東京 23 区にほぼ重なります。区政の
歴史を示す資料として貴重なため、区立博物館の企画展
示用に貸し出されることもあります。首都大コレクショ
ンの堀江家文書には中野筋に編成された村々の境界を示
す「中野筋鷹場境村方境杭覚」(堀江家文書 S16)も含ま
れています。杭覚とは御鷹場との境界を示す杭の数のこ
とです。当時農村に発布された「御鷹場御法度手形」では、
鷹場に家や寺社の新築が禁止されていました。当時、こ
鷹狩の歴史は古く、その起源は古代中央アジアとされてい
の境杭が大変重要な意味を持っていたと推測されます。
ますが明らかではないようです。その後ヨーロッパや世界各
地へと広まり、日本では埴輪にも表れ源氏物語にも登場して
冒頭で紹介したブラタモリでは、目黒筋の駒ケ原(現
います。東京と鷹狩の結びつきはやはり徳川家康です。家康
在の東大駒場キャンパス)や岩淵筋の浜御殿(浜離宮恩
は鷹狩を好んだことで知られていますが、単なるエンターテ
賜庭園)など現代に残る身近なスポットが将軍の御鷹場
イメントとしてではなく、大阪冬の陣では鷹狩を名目に緒将
だったことが紹介されています。「御殿」は鷹狩の時に将
を集め、戦時情勢を見極めるために利用するなどしています。 軍が休息をとる宿泊施設を示す言葉でした。吉祥寺の井
江戸期に入ると鷹の産地である東北など全国各地から名鷹
の頭公園にある「御殿山」もその名残です。他にも「三鷹市」
が定期的に献上され、また鷹や鷹が捕らえた獲物(鶴、鴨、
の名前は将軍家や尾張徳川家の鷹場が集まっていること
鶉など)が将軍から諸侯へ下賜されるなど、鷹狩は将軍と諸
に由来しています。地名に意外な歴史が隠されているの
侯との贈答システムの一部として確立していくようです。こ
ですね。
の過程は、『鷹と将軍』(岡崎寛徳、講談社)に分かり易くま
以上、首都大コレクションから垣間見える東京と鷹狩
とめられています。また鷹狩には将軍による地方巡視の意味
の関係をご紹介しました。
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図書館のある映画:13
『天使と悪魔』ANGELS AND DEMONS
(2009 年米 )
る。バチカン図書館の蔵書の貸出が許されているのは
監督:ロン・ハワード
ローマ教皇だけ、ということを考えると、これは破格の
出演:トム・ハンクス、アイェレット・ゾラー、ユアン・
待遇である。
マクレガー
Cardinal: And it’ s our understanding that you require
宗教象徴学が専門のハーヴァード大学教授ロバート・ラ
this text to complete your scholarly work. We ask only
ングドンは、バチカン警察からの要請を受けて、次期ロー
that in your last will and testament you ensure it
マ教皇の有力候補者の誘拐という大事件の調査のため、
finds its way home. And when you write of us and you
急遽アメリカからバチカン市国に向かった。バチカンで
will write of us may I ask one thing? Do so gently.
は、先のローマ教皇の死去により、次のローマ教皇を選
枢機卿 : これがあれば本を書き上げることができるで
ぶためのコンクラーベ(枢機卿による次期ローマ教皇の
しょう。遺言にこう書き残して下さい。“ この本を元に
選出会議)が開かれようとしていた。
戻すように ”と。我々のことをいつか書かれる時は、ど
犯行声明を出したのは「イルミナティ」と呼ばれる秘密
うか温かい配慮をいただきたい。
結社。脅迫状が送り付けられていた。手掛かりのとなっ
Langdon: I’ ll try.
たのは、ガリレオが著したとされる『真実の図表
ラングドン : そうします。
(Diagramma della Verita)』という謎の書物。その中に
Cardinal: Religion is flawed but only because man is
記されている暗号に基づいて、3人の教皇候補が次々と
flawed. All men, including this one.
殺されていった。
枢機卿 : 宗教には欠点もある。それは人間に欠点がある
かつて教会に弾圧された科学者による地下組織「イル
から。この私を含めてね。
ミナティ」が現代に甦り、科学=「イルミナティ」が、教
『真実の図表』を著したとされるガリレオは、地動説
会=バチカンに報復していく、というシナリオの陰に、
を唱えたことにより、裁判で有罪判決を受け、教会から
犯人は着々と自身の恐ろしい目的を遂行していく。それ
異端者のレッテルをはられた。しかし 1965 年にローマ
は、神に仕えるはずの神父が、科学から教会を守るとい
教皇パウロ 6 世がこの裁判に言及したことを発端に、裁
う信念の基に、神から最も遠い行動である殺人を犯す、
判が見直され、1992 年にはローマ教皇ヨハネ・パウロ 2
天使と悪魔が同時に存在する瞬間でもあった。
世が、ガリレオ裁判が誤りであったことを認めた。ガリ
ラングドンは、長年の研究を確立させるために必要な
レオの死去から実に 350 年後のことである。このことか
文献として、幾度となくバチカン図書館へ『真実の図表』
らもわかるように、この映画のテーマの一つである宗教
の閲覧願いを出していたが、その度に断られていた。こ
と科学の対立は現在でも続き、映画のラストシーンがそ
の事件によって、ラングドンにその文献を閲覧すること
の問題を静かに投げかけている。
ができる機会が巡ってきたことになる。最新の厳重な警
Vittoria : He chose the name Luke.
備システムを備えた保管所で、警備員に見張られながら、
ヴィットリア : 新教皇の名は“ ルカ ”。
ラングドンは遂に『真実の図表』と対面する。
Langdon: There’ s been many Marks and Johns…
バチカン図書館(Biblioteca Apostolica Vaticana、
never a Luke.
http://bav.vatican.va/)は、ローマ教皇庁の図書館で
ラングドン : マルコやヨハネはあったが、ルカは初めて
あり、1475 年に設立された世界で最古の図書館の一つと
だ。
言われている。手稿や初期の印刷本(インキュナブラ)
Cardinal: It’ s said he was a doctor.
を含む貴重な資料を所蔵しており、年間 5,000 人程度の
枢機卿 : ルカは医者だ。
研究者が利用する。2010 年 9 月には、3 年間の大規模な
Vittoria: It’ s quite a message, science and faith all in
改修工事を終えて再開館している。また、バチカン図書
one.
館は、蔵書のデジタル化を進めており、この壮大な計画
ヴィットリア : 科学と宗教が融合した名ですね。
が完成するまでには数十年かかるという。
Cardinal: The world is in need of both.
映画の最後でラングドンは、犯人を突き止めたその活
枢機卿 : 両方大切だ。
躍をバチカンに認められ、『真実の図表』の貸出を許され
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受入担当 長内尚子
Vol.2 新入生の皆さんへ
都市教養学部法学系政治学コース 小林 賢太郎
(学生アルバイト)
新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。
さて、皆さんは小中高と図書館を利用してこられたと思いますが、ここ大学の図書館というのは、今までの学
校の図書館や町の図書館とは趣が異なります。大学の図書館は基本的に調査研究用の本しか置いていません。一
応小説なども置いてありますが、数は少ないです。学生や教員が勉強や研究に使う資料の保存庫としての側面が
あります。
南大沢の図書館は地上 3 階地下 2 階です。皆さ
んは一部の書架を除いて地上も地下も自由に出入
りできます。飲食は禁止です。ドラマの撮影にも
使われる有名な(?)図書館です。綺麗に使って
下さいね。
カウンターで業務をしているといろいろな質問
をされるのですが、使い慣れていない方からは「本
の探し方が分からない」という質問をよく受けます。
館内の本を探すには、OPAC(蔵書検索)というシス
テムを使います。館内に設置してある蔵書検索用の PC
からブラウザを立ち上げていただくと、緑色のページが
でます。なにやら項目が沢山出てくると思いますが、一
番上のキーワードのところに探したいキーワードを入れて
検索するのが手っ取り早いです。キーワードによっては沢
山出すぎて絞る必要があるので、適宜絞ってみて下さい。
所蔵館(本館や日野や荒川)や種類(図書か雑誌か)などで絞れます。見事お目当ての本が見つかっ
たら、「配置場所」「請求記号」「状態」と書いてあるところを見て下さい。設置場所には「本館:
3F 一般書架」、請求記号には「/323.53/Ko58a/2010」などと書いてあります。この本は本館の 3
階にあることが分かります。請求記号というのは、図書館の本の背表紙に貼られているラベルに
書かれています。3 階に行くと、本棚に 300 番台から 500 番台の数字が割り振られていると思い
ます。本は数字通りに並んでいるので、順番に見ていけばあるはずです。ちなみに「状態」が貸
出中になっていると、その本は他の人に貸出中なので、その時は借りることが出来ません。「予約」
というシステムもありますがここでは割愛します。
さて遂にお目当ての本を見つけたわけですが、カウンターに持ってきて頂くかカウンター
の前の自動貸出機で貸出処理をします。学生は合計で 10 冊まで借りることが出来ます。注意し
て頂きたいのが返却期限で、これは通常 2 週間となっています。1 回に限り貸出期間延長(手続き
から 2 週間)も出来ます。返却期限を過ぎてしまうと、その間本を借りることが出来なくなってしま
う上、返却後も延滞した日数分貸出が出来なくなってしまいますので、本は必ず期限内に返却するよう
お願いします。返却はカウンターにある返却 BOX に入れて下さい。
図書館では本の貸出以外にも、資料のコピー、ノート PC の貸出、グループ閲覧室の利用など様々なことが出
来ます。私も利用者として図書館を使いますが、静かな環境で読書をしたり勉強するには最適な場所だと思いま
す。皆さんも図書館を使いこなして有意義な大学生活を送って下さい。
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information
新入生オリエンテーションにご参加ください!
図書情報センター本館では、新入生のみなさんに図書館の利用方法を知っていただくための
オリエンテーションを実施します。
当日は、教室でプロジェクターを使用して図書館の利用方法について説明し、その後、図書館ま
で移動して、
「館内ツアー」
も開催いたします。所要時間は1時間程度です。奮ってご参加ください。
<日時>
●4月6日
(水)①10:00∼ ②13:00∼ ③15:30∼
●4月7日
(木)①10:00∼ ②13:00∼
<場所>
●南大沢キャンパス 1号館 220番教室
*和雑誌が増えました!*
本館では、4月から新たに約10タイトルの和雑誌を購入することになりました。
新着雑誌コーナーをご覧ください。
(『近代建築』
『CNN English Express』など)
*寄贈図書*
平成22年度中に、先生方から以下の図書をご寄贈いただきました。ありがとうございました。
春田伸先生 『「通信」の時代と現在の間(土壌微生物通信(1962-1986)探訪(2)』
『難培養微生物の利用技術』
中塚利直先生 『応用のための確率論入門』
大杉覚先生 『グローバル競争時代の大都市ガバナンスに関する日韓比較 : 大都市における基礎自治体』
『道府県議会への補佐・支援機構 「弱議長」
:
制と議会事務局』
『大都市における行政事務のアウトソーシングとPPP : 東京23特別区行政事務のアウト
ソーシングについての調査研究」について』
(グローバル競争時代の大都市ガ バナンス
に関する日韓研究フォーラム:vol.1, no.1∼no.3)
日高千景先生 『企業成長の理論』
川村栄一先生 『地方税 平成22年度版(税務力UPシリーズ)』
保母敏行先生 『役にたつガスクロ分析』
『分析化学(基礎教育)』
『ガスクロ自由自在Q&A 準備・試料導入編』
西山雄二先生 『格闘する思想(平凡社新書:554)』
舛本直文先生 『スポーツ映像のエピステーメー : 文化解釈学の視点から』
赤塚若樹先生 『Phases 2011.01』
朝山章一郎先生『新・材料化学の最前線 : 未来を創る
「化学」の力(ブルーバックス:B-1692)』
編集後記
3月、東北地方太平洋沖地震という未曾有の災害の影響を受ける中での編集作業となりました。ここ首都大学東京
でも直接間接的に被害にあわれた方々が少なからずいらっしゃると存じます。心よりお見舞い申し上げます。
今号は、新入生を迎える号にふさわしく、ちょっと意外な「図書館の今」が満載です。巻頭言と講演会報告では
「図書館という場所」の新たな可能性を、一方、機関リポジトリのご紹介と「十色館」では「図書館に行かなくて
も図書館」という図書館機能の拡がりを教えてくれます。図書館員の方々からは、「貴重な首都大コレクションが
『ブラタモリ』に」、「由緒あるバチカン図書館でもデジタル化」、そして図書館カウンター現場ならではの「使
える利用案内」等々、いつもながらの興味深い話題のご提供。どうぞ今日の図書館の多彩な顔をご堪能ください。
(図書情報センター委員 都市教養学部都市政策コース 准教授 朝日ちさと)