イラク - 一般財団法人日本エネルギー経済研究所 中東研究センター

ISSN 1347-7676
国別定期報告
イラク
2012 年 4 – 6 月
政 治 .................................................................................................... 1
外 交 .................................................................................................... 1
国 際 関 係 ..................................................................................................... 1
米 国 ............................................................................................................ 1
欧 州 ・ カ ナ ダ ............................................................................................... 1
ア ジ ア 諸 国 .................................................................................................. 3
ト ル コ ........................................................................................................ 4
イ ラ ン ........................................................................................................ 6
ア ラ ブ 諸 国 .................................................................................................. 7
内 政 .................................................................................................. 10
政 府 ・ 議 会 関 連 ......................................................................................... 10
政 党 ・ 宗 教 界 関 連 ...................................................................................... 15
政 局 関 連 ................................................................................................... 15
ク ル デ ィ ス タ ン 情 勢 ................................................................................... 18
治 安 情 勢 ................................................................................................... 20
テ ロ 関 連 ................................................................................................... 21
デ モ 関 連 ................................................................................................... 24
治 安 部 隊 ・ 司 法 関 連 ................................................................................... 24
経 済 .................................................................................................. 25
経 済 一 般 ........................................................................................... 25
サ ウ ジ と の 国 境 検 問 所 の 再 開 を 協 議 ............................................................ 25
小 麦 輸 入 量 が 増 加 見 通 し ............................................................................ 25
失 業 率 は 16% ............................................................................................ 25
KRGは 特 定 の 果 物 ・ 野 菜 を 輸 入 停 止 ........................................................... 25
イ ラ ン と の 貿 易 額 は 97 億 ド ル .................................................................... 25
規 則 違 反 の 民 間 病 院 な ど を 閉 鎖 ................................................................... 26
中 東 協 力 セ ン タ ー が イ ラ ク に 進 出 支 援 拠 点 .................................................. 26
財 政 ・ 金 融 ........................................................................................ 26
中 銀 が ド ル 需 要 の 高 ま り に 懸 念 ................................................................... 26
中 銀 へ の 政 府 介 入 を 議 会 が 批 判 ................................................................... 26
2012 年 KRG予 算 成 立 と デ モ ....................................................................... 26
吉岡 明子
一般財団法人 日本エネルギー経済研究所
中東研究センター
ISSN 1347-7676
産 業 .................................................................................................. 27
運 輸 ・ 通 信 ................................................................................................ 27
電 力 .......................................................................................................... 28
工 業 ・ イ ン フ ラ ......................................................................................... 29
石 油 ・ ガ ス ........................................................................................ 30
生 産 状 況 ................................................................................................... 30
IOCsの 動 向 ・ 開 発 状 況 ............................................................................... 32
エ ネ ル ギ ー 政 策 ......................................................................................... 33
ク ル デ ィ ス タ ン 地 域 ................................................................................... 36
JIME 国別定期報告「イラク」2012 年 4-6 月
1.0 政 治
1.1.
1.1.1.
外交
国際関係
1.1.1.1. UNAMI の 活 動 を 1 年 延 長
イ ラ ク 政 府 は 6 月 27 日 の 閣 議 で 、UNAMI の 活 動 の 1 年 延 長 を 承 認 し た 。7 月 31 日 に 期
限 切 れ を 迎 え る こ と に な っ て い た 。 UNAMI は 2011 年 6 月 末 に 、 イ ラ ク 議 会 と 政 府 が 望 む
限 り 活 動 を 続 け る こ と を 表 明 し て い た 。( al-Sumaria News, 2012.06.27)
1.1.2.
米国
1.1.2.1. バ ル ザ ー ニ KRG 大 統 領 が 訪 米
バ ル ザ ー ニ KRG 大 統 領 は 4 月 1 日 、 ブ ル ガ リ ア と ハ ン ガ リ ー を 経 て 、 ワ シ ン ト ン に 到
着 し 、国 務 省 の 代 表 者 並 び に 米 国 の KRG 代 表 者 に 出 迎 え ら れ た 。2 日 に は ワ シ ン ト ン の 在
イラク大使館を訪れ、ジャービル・イラク大使と会談した。その後 5 日、公式にホワイト
ハウスを訪れ、オバマ大統領と会談した。会談では、民主的・多元的・連邦制のイラクと
い う 枠 組 み に お け る 、 米 国 と KRG と の 関 係 強 化 の 必 要 性 に つ い て 話 し 合 わ れ た 。( Aswat
al-Iraq, 2012.04.01; KRG ウ ェ ブ サ イ ト , 2012.04.03, 2012.04.05)
1.1.2.2. F-16 戦 闘 機 の 到 着 は 2014 年 初 を 予 定
ロ ッ キ ー ド 社 に 36 機 発 注 し た F-16 戦 闘 機 の う ち 、 24 機 が 2014 年 初 に イ ラ ク に 到 着 の
予 定 だ と 4 月 29 日 に 政 府 高 官 が 明 ら か に し た 。国 防 委 員 会 副 委 員 長 の ウ ィ ト ウ ィ ト 議 員 は 、
24 機 で 2 飛 行 中 隊 が 編 成 で き る と 指 摘 し 、ク ウ ェ ー ト で さ え 5 飛 行 中 隊 持 っ て い る の だ か
ら 、 イ ラ ク は そ れ 以 上 の 装 備 を 調 え た い と 語 っ た 。( Reuters, 2012.04.29)
1.1.3.
欧州・カナダ
1.1.3.1. バ ル ザ ー ニ KRG 大 統 領 が ブ ル ガ リ ア 訪 問
ブ ル ガ リ ア を 訪 問 し た バ ル ザ ー ニ KRG 大 統 領 は Nikolai Mladenov ブ ル ガ リ ア 外 相 と 会 談
した。外相は、今年中に在バグダード大使館を再開させたい意向を伝えた。駐ソフィア・
イ ラ ク 大 使 は 、ブ ル ガ リ ア 大 使 館 と し て 使 用 で き る 適 切 な 建 物 を 提 案 し た と の こ と で あ る 。
バ ル ザ ー ニ KRG 大 統 領 は 、 大 使 館 並 び に エ ル ビ ル 領 事 館 開 設 に 必 要 な 支 援 を 惜 し ま な い
と 約 束 し た 。( NINA, 2012.04.10)
1.1.3.2. ス ウ ェ ー デ ン が エ ル ビ ル 領 事 館 開 館
ス ウ ェ ー デ ン は 、 エ ル ビ ル に ス ウ ェ ー デ ン 領 事 館 と 貿 易 代 表 部 を 開 館 し た 。 同 国 の Eva
Dorling 貿 易 相 は 、こ の ス テ ッ プ に よ っ て 、ス ウ ェ ー デ ン 企 業 や 投 資 家 が ク ル デ ィ ス タ ン 地
域を訪れ、国家再建のプロセスに参加することが後押しされるだろうと語った。現在、ク
ル デ ィ ス タ ン 地 域 で 活 動 し て い る ス ウ ェ ー デ ン 企 業 は 11 社 あ り 、主 と し て 住 宅 建 設 な ど に
携 わ っ て い る 。( NINA, 2012.04.19)
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JIME 国別定期報告「イラク」2012 年 4-6 月
1.1.3.3. EU と パ ー ト ナ ー シ ッ プ 協 定
EU と イ ラ ク は 5 月 11 日 、 初 め て 対 テ ロ 分 野 や 貿 易 、 エ ネ ル ギ ー 、 医 療 、 人 権 な ど に 関
す る パ ー ト ナ ー シ ッ プ 協 定 を 締 結 し た 。 ジ バ リ 外 相 と 、 ア シ ュ ト ン EU 外 務 ・ 安 全 保 障 政
策上級代表が署名を行った。ジバリ外相は、世界ののけ者だったイラクが初めて国際社会
と 再 統 合 さ れ た 、 と 語 っ た 。 イ ラ ク 戦 争 後 、 EU は 12.9 億 ド ル 以 上 を イ ラ ク 復 興 の た め に
拠 出 し て い る 。( AFP, 2012.05.11)
1.1.3.4. イ ラ ク 英 国 ビ ジ ネ ス ・ カ ウ ン シ ル が エ ル ビ ル に オ ー プ ン
イ ラ ク 英 国 ビ ジ ネ ス ・ カ ウ ン シ ル ( IBBC: The Iraqi-British Businessmen Council) は 6 月
13 日 、 エ ル ビ ル に 事 務 所 を 開 設 す る こ と を 決 定 し た 。 IBBC の メ ン バ ー と ク ル ド 人 ビ ジ ネ
スマンの関係を深め、クルディスタン地域への投資を促進することが狙いである。また、
IBBC と ク ル デ ィ ス タ ン ・ ユ ニ オ ン 商 工 会 議 所 は 同 日 、 ク ル デ ィ ス タ ン 地 域 の ビ ジ ネ ス 状
況 を 紹 介 す る 会 議 を エ ル ビ ル で 開 催 し た 。( AK News, 2012.06.13)
1.1.3.5. タ ラ バ ー ニ 大 統 領 が ド イ ツ へ 私 的 訪 問
タ ラ バ ー ニ 大 統 領 は 6 月 17 日 、 ド イ ツ に 到 着 し た 。 PUKmedia が 情 報 筋 の 話 と し て 、 タ
ラ バ ー ニ 大 統 領 の ド イ ツ で の 手 術 は 成 功 裏 に 終 わ っ た と 報 じ た 。( NINA, 2012.06.17; AK
News, 2012.06.20)
1.1.3.6. ブ ル ガ リ ア 外 相 が イ ラ ク 訪 問
ジ バ リ 外 相 は 6 月 20 日 、 イ ラ ク を 訪 問 し た ブ ル ガ リ ア の Nicolai Mladenov 外 相 と 会 談
し、二国間関係について協議した。ブルガリアは近々バグダードに大使館を開館予定で、
両 国 の 共 同 委 員 会 も 10 月 か ら ソ フ ィ ア で 活 動 を 開 始 す る 。ま た 、内 相 に は 貿 易 ビ ジ ネ ス 代
表 団 も 同 行 し た 。 (AK News, 2012.06.21)
1.1.3.7. シ ャ ハ リ ス タ ー ニ 副 首 相 が 仏 企 業 の KRG と の 石 油 契 約 を 牽 制
シ ャ ハ リ ス タ ー ニ 副 首 相 は Denys Gauer 仏 首 相 に 対 し て 、 Total と KRG と の 交 渉 を 念 頭
に、イラクの石油産業で働くフランス企業がイラク政府以外の地方政府などと契約を結ば
な い よ う に と 警 告 し た 。産 業 筋 に よ る と 、Total の 他 Statoil も KRG と の 契 約 を 検 討 中 で あ
る 。 (Reuters, 2012.06.20)
1.1.3.8. ポ ー ラ ン ド 、 ス ウ ェ ー デ ン 、 ブ ル ガ リ ア の 外 相 が イ ラ ク 訪 問
EU 外 相 代 表 団 と し て 、 ポ ー ラ ン ド 、 ス ウ ェ ー デ ン 、 ブ ル ガ リ ア の 外 相 が 6 月 23 日 に バ
グ ダ ー ド に 到 着 し 、 ジ バ リ 外 相 と イ ラ ク ・ EU 関 係 や シ リ ア 問 題 に 関 し て 話 し 合 っ た 。 外
務 省 声 明 に よ る と 、 EU 外 相 代 表 団 は 、 イ ラ ク の 民 主 化 や 、 イ ラ ク 欧 州 協 力 パ ー ト ナ ー シ
ップ協定を支援し、シリア危機に対するイラクの立場や地域の安定を得る方法などについ
て 協 議 す る た め に 訪 れ た 。 翌 24 日 に は 、 マ ー リ キ 首 相 と も 会 談 し 、 EU と イ ラ ク と の 関 係
に つ い て 話 し 合 っ た 。 同 日 午 後 、 外 相 代 表 団 は エ ル ビ ル で バ ル ザ ー ニ KRG 大 統 領 及 び ネ
チ ル ワ ン KRG 首 相 と 会 談 し 、 EU・ イ ラ ク 関 係 及 び そ の 強 化 に つ い て 、 並 び に ポ ー ラ ン ド
の 領 事 館 開 設 に つ い て 協 議 し た 。 (Aswat al-Iraq, 2012.06.23; NINA, 2012.06.23, 2012.06.24)
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1.1.3.9. ポ ー ラ ン ド が エ ル ビ ル に 領 事 館 を 開 設
6 月 24 日 に ポ ー ラ ン ド が エ ル ビ ル に 領 事 館 を 開 館 し た 。Radosław Sikorski ポ ー ラ ン ド 外
相 が エ ル ビ ル を 訪 問 し 、 フ ァ ラ フ ・ ム ス タ フ ァ KRG 外 務 長 官 と 会 談 し た 。( AK news,
2012.06.24)
1.1.4.
アジア諸国
1.1.4.1. フ ィ リ ピ ン が 渡 航 情 報 の 変 更 を 検 討
フ ィ リ ピ ン 外 務 省 は 、 5 月 13 日 、 ク ル デ ィ ス タ ン 地 域 へ の フ ィ リ ピ ン 人 労 働 者 の 派 遣 を
禁 じ る 規 定 を 解 除 し た こ と を 発 表 し た 。2004 年 に フ ィ リ ピ ン 人 運 転 手 が 誘 拐 さ れ た 事 件 を
契機に当時のアロヨ大統領は軍を引き上げた。運転手は無事解放されたが、フィリピン政
府は国民にイラクでの就労を禁止していた。
当面は、クルディスタン地域に限って就労を認めるが、政府関係者は、すでに約 1 万人
がイラクで働いていると見積もっている。バグダードのフィリピン大使館に登録されてい
る フ ィ リ ピ ン 人 は 279 人 、ク ル デ ィ ス タ ン 地 域 に は 192 人 と な っ て い る 。
( AFP, 2012.05.13;
KRG ウ ェ ブ サ イ ト , 2012.05.14; フ ィ リ ピ ン 外 務 省 , 2012.05.30)
1.1.4.2. ジ バ リ 外 相 が 訪 日
5 月 末 に ジ バ リ 外 相 が 日 本 を 訪 問 し た 、 29 日 の 野 田 首 相 と の 会 談 に お い て 、 首 相 は , 昨
年 11 月 の マ ー リ キ 首 相 来 日 の フ ォ ロ ー ア ッ プ と し て 日 イ ラ ク 間 の ビ ジ ネ ス 関 係 を さ ら に
強化したいと述べ、ジバリ大臣に対し、ビジネス環境や治安状況の改善へのリーダーシッ
プを期待すると述べた。これに対し、ジバリ外相は、マーリキ首相来日時の共同声明は野
心 的 な も の だ が 、そ の 実 施 に 努 力 し た い 、日 本 と の 友 好 関 係 の 強 化 は イ ラ ク の 目 標 で あ る 、
日本からのこれまでの継続的な支援に感謝する、イラクへの投資に関する障害を改善する
よう努力する、日本にも渡航情報の見直しをお願いしたい旨などを述べた。
同日、経済産業省及び外務省が主催する第 1 回日イラク経済合同委員会が開かれ、日本
側議長を枝野経済産業大臣及び玄葉外務大臣が務め、イラク側議長をズィバーリ外務大臣
が務めた。エネルギー開発・インフラ整備等の幅広い分野での日本企業のイラク進出を促
進 す べ く 、政 府 間 で 活 発 な 意 見 交 換 が 行 わ れ た 。
( 外 務 省 プ レ ス リ リ ー ス 、経 済 産 業 省 プ レ
ス リ リ ー ス , 2012.05.29)
1.1.4.3. ジ バ リ 外 相 が フ ィ リ ピ ン 訪 問
日本訪問後、ジバリ外相はフィリピンを訪問した。イラクの外相が同国を訪れるのは初
めてである。ジバリ外相はマニラで 6 月 1 日、アキノ大統領と会談し、両国関係の強化に
つ い て 協 議 し た 。( NINA, 2012.06.02)
1.1.4.4. シ ャ ハ リ ス タ ー ニ 副 首 相 が イ ン ド ネ シ ア 訪 問
6 月 27 日 に 、イ ン ド ネ シ ア を 訪 問 し て い た シ ャ ハ リ ス タ ー ニ 副 首 相 は Jero Wacik イ ン ド
ネ シ ア ・エ ネ ル ギ ー 相 と の 間 で 、エ ネ ル ギ ー 部 門 の 協 力 に 関 す る MOU を 締 結 し た 。Wacik
エ ネ ル ギ ー 相 は 、イ ラ ク の 戦 後 復 興 に イ ン ド ネ シ ア 企 業 が 貢 献 し た い 旨 を 語 っ た 。25 日 に
は シ ャ ハ リ ス タ ー ニ 副 首 相 は Boediono イ ン ド ネ シ ア 副 大 統 領 と も 会 談 し た 。
( Global Times,
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1.1.5.
トルコ
1.1.5.1. フ ァ イ ヤ ー ド 国 家 治 安 顧 問 が ト ル コ 訪 問
ト ル コ 外 交 官 は 4 月 7 日 、フ ァ イ ヤ ー ド 国 家 治 安 顧 問 が 4 月 3 日 か ら イ ス タ ン ブ ー ル と ア
ンカラを訪れて、トルコの外相や内相と二国間関係やシリア問題について協議したと明ら
か に し た 。5 日 に 2 度 に わ た っ て ダ ウ ト オ ー ル 外 相 と 会 談 し た 他 、サ ヒ ン 内 相 と も PKK 問
題について話し合った。トルコのヒュリエット紙によると、マーリキ首相がイラク・トル
コ関係の改善を希望している旨のメッセージを伝えたとのことである。トルコ外務省は否
定も肯定もしていない。マーリキ首相の再選をトルコが支持しなかったことから、両国関
係 は 2010 年 か ら 悪 化 し て い た 。( Aswat al-Iraq, 2012.04.06; AFP, 2012.04.07)
1.1.5.2. ハ ー シ ミ 副 大 統 領 が ト ル コ へ
ハーシミ副大統領が 4 月 9 日にカタルからトルコに移り、現在も滞在中である。トルコ
の NTV テ レ ビ 局 は 、ハ ー シ ミ 副 大 統 領 が イ ス タ ン ブ ー ル へ ド ー ハ か ら 専 用 機 で 到 着 し た と
報 じ た 。ハ ー シ ミ 副 大 統 領 は 4 月 15 日 に エ ル ド ア ン 首 相 と イ ス タ ン ブ ー ル で 会 談 し た 。ま
た 、4 月 24 日 に は 、ア ン カ ラ で エ ル ド ア ン 首 相 と ダ ウ ト オ ー ル 外 相 と 会 談 し た 。ハ ー シ ミ
副 大 統 領 に よ る と 、エ ル ド ア ン 首 相 は イ ラ ク の 宗 派 対 立 の 懸 念 を 共 有 し た と の こ と で あ る 。
ト ル コ は 17 名 の 警 察 官 と 5 台 の 車 、う ち 1 台 は 防 弾 車 を 、ハ ー シ ミ 副 大 統 領 警 護 の た め
に 割 り 当 て た 。ハ ー シ ミ 副 大 統 領 は 脅 迫 状 を 受 け 取 っ た と い う 理 由 で ト ル コ に 保 護 を 求 め 、
特別警護体制に置かれている。彼の家族は、安全上の理由でホテルには滞在していない。
も し イ ラ ク 政 府 が 正 式 に 引 き 渡 し を 求 め た 場 合 、 ト ル コ 政 府 は 1989 年 9 月 19 日 の 協 定
の 条 項 を も と に そ れ を 拒 む こ と が で き る 。 1990 年 4 月 19 日 に ト ル コ 議 会 が 承 認 ( 1995 年
3 月 1 日 施 行 )し た 司 法 協 定 の 43 条 は 、法 的 手 続 き が 開 始 さ れ た り 有 罪 に な っ た り し た 容
疑 者 を 引 き 渡 す こ と に 合 意 し て い る が 、47 条 に よ る と 、容 疑 者 の 人 種 、宗 教 、政 治 的 見 解
に基づく犯罪と見なされる場合は、拒否できることになっている。今のところ、イラク政
府から正式な引き渡し要請はない。
( al-Sumaria news, 2012.04.09; Today’s Zaman, 2012.04.15,
2012.05.02; NINA, 2012.04.25)
1.1.5.3. バ ル ザ ー ニ KRG 大 統 領 が ト ル コ 訪 問
4 月 19 日 に 、 バ ル ザ ー ニ KRG 大 統 領 が ト ル コ 政 府 関 係 者 と 、 対 テ ロ や シ リ ア を 含 む 地
域問題を話し合うためにトルコを訪問した。イスタンブールでエルドアン首相と会談し、
ト ル コ と KRG の 関 係 、と り わ け 経 済・貿 易 関 係 に つ い て 協 議 し た 。そ の 後 の 記 者 会 見 で 、
エルドアン首相は「イラクで起こっていること、とりわけ現在の首相の連立パートナへの
振 る 舞 い は 、 良 い 兆 候 で は な い 」 と 語 っ た 。 そ の 後 、 バ ル ザ ー ニ KRG 大 統 領 は ハ ー シ ミ
副 大 統 領 と も 会 談 し 、マ ー リ キ 首 相 不 信 任 に つ い て 協 議 し た 。副 大 統 領 は 、
「実りある会談
を し た 」 と 述 べ た 。( AFP, NINA, 2012.04.19; Reuters, 2012.04.20; Aswat al-Iraq, 2012.04.21)
1.1.5.4. ト ル コ と の 関 係 悪 化
マ ー リ キ 首 相 は 4 月 20 日 、 前 日 の エ ル ド ア ン 首 相 の 発 言 を 、「 イ ラ ク 内 政 へ の 目 に 余 る
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干 渉 」と し て 、
「 彼 の 発 言 に は 宗 派 主 義 の 側 面 が あ る 。こ う し た 内 政 や 域 外 外 交 を 続 け る こ
とは、トルコの国益を損ない、すべての者にとってトルコを敵対国にする」と語った。ま
た、トルコが地域に覇権を確立しようとしていると非難した。エルドアン首相は、バルザ
ー ニ KRG 大 統 領 と 会 談 後 、「( マ ー リ キ 首 相 の ) 自 分 中 心 主 義 は 、 シ ー ア 派 の グ ル ー プ や
バルザーニ、イラクのグループを苛立たせている」と述べていた。
こ れ に 対 し て 、エ ル ド ア ン 首 相 は 21 日 に「 我 々 は シ ー ア 派 も ス ン ナ 派 も ア ラ ブ も ク ル ド
もトルコマンも区別しない」と反論した。
22 日 に は 、 イ ラ ク 外 務 省 が Yunis Dimirer 駐 イ ラ ク ・ ト ル コ 大 使 を 招 致 し 、 ア ッ バ ー ウ
ィ外務次官がイラク政府のエルドアン首相への強い抗議を伝えた。イラクへの内政干渉で
受け入れられない旨を伝え、トルコ政府にイラクの国家主権を害する声明をやめて、外交
的な手段で意見を伝えるよう求めた。また、イラクは両国関係を発展させ強化する意図を
持っていると語った。
24 日 、ダ ウ ト オ ー ル ・ト ル コ 外 相 は 記 者 団 に 、ト ル コ は イ ラ ク の 政 治 紛 争 や 宗 派 問 題 の
一 部 で あ っ た こ と は な い 」 と 反 論 し た 。( Reuters, 2102.04.20; NINA, al-Jazeera, 2012.04.22;
Wall Street Journal, 2012.04.25)
1.1.5.5. ト ル コ 領 事 館 の 武 装 車 両 を 押 収
ア サ デ ィ 内 務 次 官 は 、Dimirer ト ル コ 大 使 と 会 談 し 、イ ラ ク 当 局 が 在 モ ス ル・ト ル コ 領 事
館 の 武 装 車 両 を モ ス ル 空 港 で 押 収 し た 件 に つ い て 協 議 し 、た と え 領 事 館 の も の で あ っ て も 、
法 的 な 許 可 を 得 て い な け れ ば 武 装 車 両 の 持 ち 込 み は 認 め ら れ な い と 伝 え た 。( NINA,
2012.04.21)
1.1.5.6. ネ チ ル ワ ン KRG 首 相 が ト ル コ 訪 問
ネ チ ル ワ ン KRG 首 相 は 5 月 16 日 、 多 く の 大 臣 を 伴 い 、 今 期 の 首 相 就 任 後 初 め て ト ル コ
を訪問した。ギュル大統領、エルドアン首相、ダウトオール外相らと会談を行った。ギュ
ル 大 統 領 と は 貿 易 、エ ネ ル ギ ー 分 野 で の 協 力 、KRG と 連 邦 政 府 間 の 問 題 、対 テ ロ に お け る
協 力 な ど を 協 議 し 、 ネ チ ル ワ ン KRG 首 相 は 、 ト ル コ の 投 資 家 へ の 全 面 的 な 支 援 を 約 束 し
た 。 (NINA, 2012.05.17; KRG ウ ェ ブ サ イ ト , 2012.05.18)
1.1.5.7. ネ チ ル ワ ン KRG 首 相 が ト ル コ で の 国 際 経 済 フ ォ ー ラ ム 出 席
ネ チ ル ワ ン KRG 首 相 は 、6 月 5 日 に イ ス タ ン ブ ー ル で 開 催 さ れ て い た 国 際 経 済 フ ォ ー ラ
ムに出席するため、同地を訪れた。訪問中にダウトオール外相と会談し、エネルギー、石
油、経済などを中心とするトルコとクルディスタン地域の関係について協議した他、エル
ドアン首相とも会談し、原油・製品のスワップ計画、国境問題などについて協議した。国
際経済フォーラムに正式にクルディスタン地域政府が招かれたのは初めてのことである。
( NINA, 2012.06.05, 2012.06.06)
1.1.5.8. ト ル コ 軍 が イ ラ ク 北 部 を 空 爆
ト ル コ の 戦 闘 機 が イ ラ ク 国 内 の PKK を 攻 撃 し た こ と を 、 ト ル コ 軍 が 6 月 20 日 に 明 ら か
に し た 。 PKK は 6 月 19 日 、 ト ル コ 南 部 で ト ル コ 軍 に 対 し て 迫 撃 砲 な ど で 攻 撃 を 行 い 、 ト
ルコ兵士 8 名を殺害していた。クルド語ソラニ方言の放送を開始したトルコの国営テレビ
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で 、 バ ル ザ ー ニ KRG 大 統 領 は 20 日 、 イ ラ ク 北 部 か ら の 中 継 で 、「 戦 争 と 武 器 の 時 代 は 終
わ っ た 」と 停 戦 を 呼 び か け た 。同 じ 番 組 で ト ル コ の Bulent Arinc 副 首 相 は 、
「我々はバルザ
ーニ氏がテロとの戦いでより貢献することを期待している」と語った。
そ の 後 、 ト ル コ 軍 は 、 22-24 日 に も ク ル ド ・ ゲ リ ラ に 対 す る 空 爆 を 行 っ た 旨 24 日 に 発 表
し た 。ほ と ん ど の 標 的 は カ ン デ ィ ル 山 脈 の PKK の 隠 れ 家 で あ り 、戦 闘 機 は 全 て 無 事 に 帰 還
し た と の こ と で あ る 。 バ ル ザ ー ニ KRG 大 統 領 は ト ル コ の 空 爆 を 非 難 し 、 平 和 的 解 決 が 唯
一 の 答 え だ と 語 っ た 、ト ル コ 軍 は 、19 日 の PKK に よ る 攻 撃 後 、ト ル コ 国 内 で 30 名 以 上 の
ゲ リ ラ を 殺 害 し た と 発 表 し て い る 。 (APm 2012.06.20; Reuters, AP, 2012.06.24)
1.1.6.
イラン
1.1.6.1. バ バ イ ・ イ ラ ン 教 育 相 が イ ラ ク を 訪 問
バ バ イ・イ ラ ン 教 育 相 が 4 月 16 日 に イ ラ ク を 訪 問 し た 。議 会 の 教 育 委 員 会 と 協 力 関 係 に
つ い て 話 し 合 い 、専 門 家 の 相 互 派 遣 を 協 議 し た 。 ま た 、 ISCI の ハ キ ー ム 党 首 が バ バ イ ・ イ
ラン教育相と会談し、教育カリキュラムの分野における両国の協力強化について話し合っ
た。マーリキ首相との会談では、ババイ教育相は、イランはイラクにおける学校建設に貢
献 す る 用 意 が あ る と 述 べ 、マ ー リ キ 首 相 も イ ラ ク は 5000 校 の 学 校 建 設 を 必 要 と し て い る と
応 じ た 。( Aswat al-Iraq, 2012.04.16; NINA, 201204.17; al-Sumaria, 2012.04.18)
1.1.6.2. マ ー リ キ 首 相 が イ ラ ン 訪 問
マ ー リ キ 首 相 が 4 月 22 日 、 2 日 間 の 日 程 で イ ラ ン を 訪 問 し た 。 到 着 時 に は ラ ヒ ー ミ 副 大
統 領 に 迎 え ら れ た 。 2010 年 10 月 以 来 、 初 の マ ー リ キ 首 相 の イ ラ ン 訪 問 で あ る 。 主 要 随 行
者は、シュクリ計画相、カルブーリ工業相、ハサン貿易相、ファイヤード国家治安顧問。
マーリキ首相と会談したアフマディネジャード大統領は「
、イランとイラクが強くなれば、
米国やシオニスト体制の場所はなくなる」と語り、また、マーリキ首相は国家の再建と発
展 の た め に 取 り 組 ん で い る と 褒 め 称 え た 。マ ー リ キ 首 相 は ラ リ ジ ャ ニ 国 会 議 長 と も 会 談 し 、
両国関係について協議した。ハメネイ最高指導者は、マーリキ首相との会談において、ア
ラ ブ・サ ミ ッ ト 及 び 地 域 に お け る イ ラ ク の 役 割 を 称 え 、
「イラクをアラブ世界から遠ざけよ
うという試みがあったが、バグダードでのサミットの開催によって、イラクはそれをひき
いる立場になった」と語った。
ジャリリ国家安全保障会議議長は、ファイヤード国家治安顧問とも会談して、米軍が完
全撤退した今、イランはイラクと治安の経験をシェアしたいと語った。ファイヤード顧問
は、イラクの地域・国際関係におけるイランの重要性に言及した。イランの貿易相やエネ
ル ギ ー 相 と も 会 談 し た 。 (AFP, AP, NINA, al-Hurra TV, 2012.04.22; Aswat al-Iraq, 2012.04.23)
1.1.6.3. イ ラ ン 石 油 相 が イ ラ ク 訪 問
6 月初めにイランの石油相がイラクを訪問し、マーリキ首相と会談した。また、イラク
の石油相や電力相と会談を行い、イラクへのガス及び石油製品供給、イラク向けガスパイ
プライン敷設などについて協議した。イラン石油相は、石油精製やガス探鉱分野における
イ ラ ン 企 業 の 能 力 に つ い て も 強 調 し た 。( NINA, 2012.06.02)
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JIME 国別定期報告「イラク」2012 年 4-6 月
1.1.7.
アラブ諸国
1.1.7.1. 第 二 回 シ リ ア 友 人 会 合 に は 副 外 相 が 出 席
イラクは第二回シリアの友人会合に副外相と国会議員代表を出席させる、とジバリ外相
が語った。ムサウィ首相顧問が、イラクは仲介者の役割を維持するためとして、会議に出
席 し な い 可 能 性 に 言 及 し て い た 。 (AFP, 2012.04.01)
1.1.7.2. シ リ ア 反 体 制 派 へ の 武 器 支 援 を 否 定
マ ー リ キ 首 相 は 4 月 1 日 、 シ リ ア 情 勢 に 関 し て 、「 1 年 経 っ て 政 権 は 崩 壊 し て い な い し 、
崩 壊 し な い だ ろ う 。な ぜ 崩 壊 し な け れ ば な ら な い の か 」と 記 者 会 見 で 語 っ た 。
「 我 々 は( 反
体制派)の武器供与と政権転覆のプロセスに反対する。なぜなら、それは地域のより大き
い 危 機 を 招 く か ら だ 」 と 述 べ た 。 4 月 17 日 の ク ル ド 紙 Awena の イ ン タ ビ ュ ー で は 、「 我 々
の唯一の政策は(シリアの)内政に干渉しないことと、暴力ならびにそれを煽るすべての
も の に 反 対 す る こ と 、武 力 に よ る 挑 発 を 防 ぐ こ と だ 」
「我々はこの政策が我々の国益を保持
するのに最良だと思っている」と語った。
ジ バ リ 外 相 は 6 月 23 日 、 イ ラ ク が シ リ ア の SNC や 軍 事 関 係 者 な ど の 反 体 制 派 と コ ン タ
クトをとっているとは語ったが、
「 政 権 に せ よ 反 対 派 に せ よ 、武 器 供 与 は 危 機 の 深 化 と 継 続
に つ な が る 」 と 述 べ て 、 武 器 供 与 に つ い て は 否 定 し た 。( AFP, 2012.04.01; DailyStar,
2012.04.15; AFP, 2012.06.23)
1.1.7.3. サ ド ル 師 は サ ド ル 派 支 持 者 が シ リ ア で 捕 ま っ た こ と を 否 定
ムクタダ・サドル師は、自由シリア軍が捕まえた人物がサドル派の支持者だと自称して
い る と ア ラ ビ ー ヤ TV が 報 じ た 件 に つ い て の 支 持 者 か ら の 質 問 に 答 え 、 最 初 か ら 今 ま で 、
シ リ ア へ の い か な る 内 政 干 渉 も 禁 じ て い る と 語 っ て 否 定 し た 。 ま た 、 ア ラ ビ ー ヤ TV に 対
し て は 、真 実 を 明 ら か に し 、ニ ュ ー ス を 否 定 す る よ う 求 め 、
「メディアは嘘であろうと真実
で あ ろ う と 、 好 き な こ と を す る 」 と 批 判 し た 。( al-Sumaria News, 2012.04.12)
1.1.7.4. ハ ー シ ミ 副 大 統 領 が カ タ ル を 訪 問
ハ ー シ ミ 副 大 統 領 が 国 内 亡 命 先 の ク ル デ ィ ス タ ン 地 域 か ら 、4 月 1 日 に カ タ ル に 渡 っ た 。
副大統領の事務所は、カタルの首相、首長と会う予定であり、事前の招待状に基づく訪問
だと発表した。このタイミングでの出国について、イラーキーヤのジャマール・キーラー
ニ議員は、ハーシミ副大統領がカタルの招待に応えるのはアラブ・サミットの後にするこ
とを希望したため、としている。
こ れ に 対 し て ム サ ウ ィ 首 相 顧 問 は「 な ぜ 彼 が 出 国 で き る の か 」
「彼は渡航を禁止されてい
る」と述べ、マーリキ首相も、記者会見で、他のアラブ諸国は、司法に追われているハー
シ ミ を 副 大 統 領 と し て 受 け 入 れ る べ き で は な い 。イ ラ ク は ア ラ ブ 連 盟 の 創 設 国 で あ り 、彼
を受け入れることは外交規範に反する」と語った。一方、クルディスタン同盟のタイイブ
報道官は、
「 ハ ー シ ミ 副 大 統 領 は ク ル デ ィ ス タ ン 地 域 で 逮 捕 さ れ て い た わ け で は な い 。カ タ
ル政府の招待で出発した。彼は依然として副大統領だ」としている。
一 方 、ハ ー シ ミ 副 大 統 領 は カ タ ル で 、憲 法 93 条 に 基 づ く 不 逮 捕 特 権 が あ る と の べ 、い か
なる裁判所からの司法の決定もないことを指摘した。カタルでは、ハマド首長と会談し、
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国内や地域の問題を話し合った。カタルの外交担当国務相も同席した。ハーリド・アティ
ー ヤ・カ タ ル 国 際 協 力 担 当 国 務 相 は 、記 者 団 に「 彼 へ の 裁 判 所 判 決 は 存 在 し な い 」
「彼はカ
タ ル に 副 大 統 領 と し て 来 て お り 、今 も そ の 肩 書 き と( 外 交 )特 権 を 有 し て い る 」と 述 べ た 。
なお、イラクの大統領府は 4 月 5 日、ハーシミ副大統領が複数国を訪問する旨を大統領に
伝 え た 後 、大 統 領 の 同 意 を 得 る 前 に 出 国 し た と 明 ら か に し た( CNN, New York Times, NINA,
2012.04.01; Idha’ al-Iraq al-Hurr, AFP, 2102.04.02; AP, 2012.04.03; NINA, 2102.04.05)
1.1.7.5. ハ ー シ ミ 副 大 統 領 が サ ウ ジ を 訪 問
4 月 4 日、ハーシミ副大統領は事前に得ていた招待状に基づき、カタルのドーハからサ
ウジのジッダに到着した。サウード外相と会談し、地域の問題について話し合った。5 日
には、メッカを訪れてウムラを行った。
アルジャジーラとのインタビューでは、ハーシミ副大統領は、マーリキ首相は彼を「イ
ラ ク か ら 追 い 出 し た い だ ろ う が 、私 は 帰 る 」と 語 っ た 。
( NINA, 2012.04.04; AFP, 2012.04.05;
副 大 統 領 府 ウ ェ ブ サ イ ト , 2012.04.06)
1.1.7.6. リ ビ ア に 化 学 兵 器 廃 棄 の 支 援
ダ ッ バ ー グ 政 府 報 道 官 は 4 月 12 日 、イ ラ ク は 、化 学 兵 器 の 廃 棄 に 関 す る リ ビ ア か ら の 支
援要請を受け入れたと語った。
「 彼 ら の 化 学 兵 器 の 在 庫 を 処 分 す る た め 、リ ビ ア 政 府 に 技 術
支 援 を 提 供 す る こ と 」 に イ ラ ク 政 府 が 合 意 し た と し て い る 。( AFP, 2012.04.12)
1.1.7.7. 国 防 省 代 表 団 が UAE を 訪 問
ジバリ参謀総長を筆頭とする国防省の代表団が 4 月上旬、イラク軍とUAE軍の協力に
つ い て 話 し 合 う た め に UAE を 訪 問 し た 。UAE の 参 謀 総 長 が 昨 年 12 月 に イ ラ ク を 訪 れ 、マ
ー リ キ 首 相 と も 会 談 し て お り 、 そ の 際 に 招 待 状 が 手 交 さ れ て い た 。( NINA, 2012.04.11)
1.1.7.8. サ ド ル 師 が バ ハ レ ー ン の F1 ボ イ コ ッ ト を 呼 び か け
サ ド ル 師 は 4 月 19 日 、22 日 に 開 催 予 定 の バ ハ レ ー ン で の F1 レ ー ス に つ い て 、バ ハ レ ー
ンの人々の自由の侵害、殺害、抑圧を支援することになると述べて、ボイコットを呼びか
け た 。( AFP, 2012.04.18)
1.1.7.9. サ バ ー ハ ・ ク ウ ェ ー ト 副 首 相 が イ ラ ク を 訪 問
4 月 29 日 に サ バ ー ハ 副 首 相 兼 外 相 が 、国 連 憲 章 第 7 章 問 題 な ど を 話 し 合 う た め に 代 表 団
を率いてイラクを訪問した。マーリキ首相は、サバーハ副首相との会談でクウェートと経
済投資関係を活発化することが重要だと指摘した。ジバリ外相は国連憲章第 7 章に関連し
て 、 ク ウ ェ ー ト と の 間 で は 国 境 画 定 、 決 議 833 号 、 戦 争 捕 虜 、 不 動 産 、 公 文 書 、 賠 償 金 な
どの問題が残っているが、イラクは安保理が定めた国境線や金銭的義務を尊重すると語っ
た。ムバーラク港問題については、クウェートの国内に建設される以上反対しないが、そ
れがイラクの国益、港湾、経済を損なわない保障が必要だと語った。一方、ルアイビ石油
相 は 、 ク ウ ェ ー ト 側 に 対 し て 賠 償 金 の 支 払 い 割 合 5%を 下 げ る こ と を 申 し 入 れ 、 ク ウ ェ ー
トも話し合うことには合意したとしている。
12 時 間 に 及 ぶ 二 国 間 の 会 議 を 重 ね た 末 、 ジ バ リ 外 相 と サ バ ー ハ ・ ク ウ ェ ー ト 副 首 相 は 、
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協力会議の設置、水路ナビゲーション規定、などの合意を結んだ。二重課税問題や投資・
商業協力についても話し合われ、年末までにクウェート首相がイラクを訪問して協定に署
名 す る 見 通 し と な っ て い る 。ま た 、賠 償 金 問 題 も 集 中 的 に 協 議 さ れ た 。
( Aswat al-Iraq, NINA,
2102.04.29; Kuwait Times, 2012.05.01.)
1.1.7.10. バ ル ザ ー ニ KRG 大 統 領 が UAE を 訪 問
ハ リ ー フ ァ UAE 大 統 領 か ら の 招 待 を 受 け て 、バ ル ザ ー ニ KRG 大 統 領 が 4 月 30 日 に UAE
を 訪 れ た 。 ム ハ ン マ ド UAE 副 首 相 と 会 談 し 、 イ ラ ク と UAE、 ク ル デ ィ ス タ ン 地 域 と UAE
の 二 国 間 関 係 を 協 議 し た 他 、投 資 協 力 、文 化 協 力 に つ い て も 話 し 合 っ た 。ま た 、UAE 企 業
に ク ル デ ィ ス タ ン 地 域 へ の 投 資 を よ び か け た 。随 行 者 は イ マ ー ド・ア フ マ ド 副 首 相 、ア リ ・
シ ン デ ィ 計 画 相 、フ ァ ラ フ・ム ス タ フ ァ 対 外 関 係 局 長 、ヘ ル シ ュ・メ フ ラ ム 投 資 局 長 な ど 。
( Aswat al-Iraq, 2012.04.30, 2012.05.01; NINA, 2012.05.02)
1.1.7.11. ド ゥ レ イ ミ 国 防 相 代 行 が ヨ ル ダ ン 訪 問
5 月 6 日 、 ド ゥ レ イ ミ 国 防 相 代 行 が ヨ ル ダ ン を 訪 問 し 、 the Special Operations Forces
Exhibition & Conference (SOFEX)に 出 席 し た 。ア ブ ダ ッ ラ・ヨ ル ダ ン 国 王 も 出 席 し て 国 防 相
代行と会談し、二国間関係の強化について話し合った。同相は国王にタラバーニ大統領と
マ ー リ キ 首 相 か ら の メ ッ セ ー ジ を 伝 え た 。( Aswat al-Iraq, 2012.05.06)
1.1.7.12. シ リ ア 難 民 が ク ル デ ィ ス タ ン 地 域 に
UNHCR に よ る と 、 ク ル デ ィ ス タ ン 地 域 に 逃 れ て き た シ リ ア 難 民 は 4038 人 で さ ら に 243
人 が 登 録 待 ち と の こ と で あ る 。内 訳 は 、227 家 族 か ら な る 1711 人 と 、2327 人 の 単 身 者 で あ
る。昨年 3 月の騒乱発生以降、シリア・クルド人がクルディスタン地域に逃れてくるよう
に な っ た 。 UNHCR は 、 KRG 商 業 省 と の 合 意 に 基 づ き 、 難 民 が ク ル デ ィ ス タ ン 地 域 に 6 ヶ
月以上滞在する場合、イラクの配給システムに含まれる可能性もあるとしている。
難民のほとんどはクルド人で、シリアの治安部隊を避けて密入国している模様である。
KRG は ド ホ ー ク 県 に Domiz 難 民 キ ャ ン プ を 設 営 し 、 1500 人 が 暮 ら し て い る 。 現 在 は KRG
が キ ャ ン プ に 食 料 と 電 力 を 供 給 し て い る が 、7 月 か ら WFP が 支 援 を 行 う 予 定 で あ る 。KRG
内務省難民担当のムハンマド・アブダッラ・ハンモ氏によると、全ての難民はどこででも
暮らすことができるが難民申請はドホーク県で行うよう求められている。国連は、これま
で に 発 生 し た シ リ ア 難 民 は 8.6 万 人 、う ち イ ラ ク に 逃 れ た 難 民 は 5400 人 と し て い る 。KRG
は 今 後 3 ヶ 月 間 に 200 万 ド ル を シ リ ア・ク ル ド 難 民 の た め の 支 援 に 割 り 当 て た と 発 表 し た 。
( al-Hayat, 2012.05.30; AFP, 2012.06.19; NINA, 2012.06.23)
1.1.7.13. イ エ メ ン と 対 テ ロ 協 力 協 定
イラクとイエメンは、テロ対策のために諜報協力を行う協定を結んだ。両国間では初だ
が 、 イ ラ ク は 類 似 の 協 定 を サ ウ ジ 、 ヨ ル ダ ン 、 リ ビ ア な ど と も 締 結 し て い る 。( UPI,
2012.06.02)
1.1.7.14. パ レ ス チ ナ に 2500 万 ド ル の 支 援
ジ バ リ 外 相 は 6 月 19 日 、パ レ ス チ ナ の ア ッ バ ー ス 大 統 領 と 電 話 会 談 し 、イ ラ ク が パ レ ス
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チ ナ に 2500 万 ド ル の 支 援 を 提 供 す る こ と を 決 定 し た 旨 伝 え た 。ア ッ バ ー ス 大 統 領 は 、マ ー
リ キ 首 相 、 タ ラ バ ー ニ 大 統 領 、 及 び イ ラ ク 国 民 に 謝 意 を 伝 え た 。( WAFA, 2012.06.19)
1.1.7.15. ハ ー シ ミ 副 大 統 領 が サ ウ ジ へ 弔 問
ハ ー シ ミ 副 大 統 領 が 6 月 20 日 に ジ ェ ッ ダ へ ア ブ ド ゥ ル ア ジ ー ズ・サ ウ ジ 皇 太 子 の 弔 問 に
出 か け る と 、副 大 統 領 府 が 発 表 し た 。副 大 統 領 は 4 月 9 日 以 降 ト ル コ に 滞 在 し て い る 。
( NINA,
2012.06.20)
1.1.7.16. ス ー ダ ン の エ ル ビ ル 領 事 館 開 館 と 教 師 派 遣 を 閣 議 承 認
ダ ッ バ ー グ 政 府 報 道 官 は 6 月 19 日 、エ ル ビ ル 県 に お け る ス ー ダ ン 領 事 館 の 開 館 が 閣 議 で
承認されたと明らかにした。さらに、学校教師をスーダンに派遣するというスーダン政府
からの依頼についても合意し、今後、イラクの学校に影響が出ない範囲で、教育省が希望
者を募ることになると語った。イラク政府が教師の給与並びに渡航費を負担し、スーダン
政 府 が 住 居 と 国 内 移 動 費 を 提 供 す る と い う 枠 組 み で あ る 。( al-Sumaria, 2012.06.20)
1.1.7.17. エ ジ プ ト の 新 大 統 領 に 祝 辞
マーリキ首相はエジプトの新大統領ムハンマド・ムルシに祝意を伝える書簡を送った。
( NINA, 2012.06.25)
1.1.7.18. サ ド ル 師 が ク ウ ェ ー ト 訪 問
サ ド ル 師 が 6 月 25 日 に ク ウ ェ ー ト を 訪 問 し た 。同 国 の ジ ャ ー ビ ル 首 長 と 会 談 し 、イ ラ ク
やアラブ諸国での出来事や、両国の経済関係促進の手段について、協議した。会談にはク
ウ ェ ー ト の 副 首 相 、 外 相 ら も 出 席 し た 。( NINA, 2012.06.25)
1.2.
1.2.1.
内政
政府・議会関連
1.2.1.1. 国 家 和 解 会 議 は 無 期 限 延 期
ヌ ジ ャ イ フ ィ 国 会 議 長 は 4 月 4 日 、翌 日 予 定 さ れ て い た 国 家 会 議 の 無 期 限 延 期 を 表 明 し た 。
3 日にフザーイ副大統領邸宅で準備会議が開催されていたが、議題に関して合意に至らな
かった。法治国家連合のアブド・イーサーウィ議員が述べたところでは、国家会議が開か
れ な い 理 由 は 、 ① イ ラ ー キ ー ヤ に よ る 憲 法 に 反 し た 条 件 、 ② 石 油 収 入 に つ い て の KRG と
連邦政府間の問題、が主要因だという。イラーキーヤは国家会議出席の条件として、①エ
ルビル合意の履行、②無差別逮捕の停止、③司法への介入停止、④ムトゥラク副首相の権
利についての違憲行為の停止、⑤ハーシミ副大統領の問題についての政治的側面の終結の
5 つ を あ げ て い た 。法 治 国 家 連 合 の ハ ー デ ィ ・ ハ サ ニ 議 員 は 、同 党 は 、「 国 家 建 設 に 関 す る
憲 法 の 問 題 と 、政 治 体 制 の 失 敗 に つ い て 話 し 合 う こ と を 希 望 し て い る 」
「それ以外のことは
会 議 の 議 題 に な ら な い 」と 述 べ た 。
( al-Hayat, Furat News, 2012.04.03; AP, 2012.04.04; NINA,
2012.04.05)
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1.2.1.2. 人 権 委 員 会 を 設 置
議 会 は 4 月 上 旬 、イ ラ ク で 初 め て と な る 独 立 し た 人 権 委 員 会 を 設 置 す る こ と を 承 認 し た 。
アシュワク・ジャフ議員によると、主な役割は、公営・非公営のあらゆる分野における人
権違反を監視するこ。独立した機関として活動し、市民が直接に申し立てをすることがで
き る 。ま た 、年 間 レ ポ ー ト を 議 会 と 国 際 機 関 に 提 出 す る 。な お 、遅 く と も 2014 年 ま で に 委
員 会 は 人 権 省 に 移 行 す る こ と に な っ て い る 。議 会 が 承 認 し た 11 名 の メ ン バ ー の う ち 2 名 が
女 性 、 任 期 は 4 年 。 コ ブ ラ ー UNAMI 代 表 や 米 国 大 使 館 も 歓 迎 の 声 明 を 発 表 し た 。( AFP,
2012.04.10)
1.2.1.3. 選 管 委 員 長 と 委 員 が 汚 職 で 逮 捕
フ ァ ラ ジ ュ・ハ イ ダ リ 選 挙 管 理 委 員 会 委 員 長 と カ リ ー ム・タ ミ ー ミ 委 員 が 不 動 産 部 門 の 職
員 4、 5 人 に 、 そ れ ぞ れ 10-15 万 ID( 83-125 ド ル ) の ボ ー ナ ス を 支 払 っ た と い う 容 疑 で 4
月 12 日 に 逮 捕 さ れ た 。法 治 国 家 連 合 は 2011 年 7 月 30 日 に 汚 職 疑 惑 で ハ イ ダ リ 委 員 長 の 不
信任を試みたが、他党が反対してその試みは失敗に終わっていた。
ハ イ ダ リ 委 員 長 と タ ミ ー ミ 委 員 は 、各 1500 万 ID( 1.25 万 ド ル )の 保 釈 金 を 払 っ て 同 日 保
釈 さ れ た 。委 員 長 は GZ で イ ン タ ビ ュ ー に 答 え 、
「 選 管 を こ の よ う に 侮 辱 す る こ と は 、政 治
プロセス全体のためにならず、独立を脅かす」と非難した。彼によると、法治国家連合の
ハ ナ ン ・ フ ァ ト ラ ウ ィ 議 員 が 多 数 の 苦 情 を 申 し 立 て 続 け 、 過 去 6 ヶ 月 間 に 500 名 以 上 の 職
員 が 裁 判 所 に 出 頭 す る こ と に な り 、 そ の う ち 7-8 割 が 取 る に 足 ら な い こ と と し て 却 下 さ れ
ていたという。ボーナスについては選管の規定に則っており、必要な承認を受けていると
反論した。
マ ー リ キ 首 相 は 4 月 14 日 、 逮 捕 さ れ る ま で 、 こ の 問 題 は 知 ら な か っ た と 語 っ た が 、 サ ド
ル 師 、 イ ラ ー キ ー ヤ の ハ イ ダ ル ・ ム ッ ラ 議 員 、 バ ル ザ ー ニ KRG 大 統 領 ら は 、 首 相 が 逮 捕
の 背 後 に い る と し て 非 難 し て い る 。サ ド ル 師 は ナ ジ ャ フ の 事 務 所 か ら 、
「逮捕を命じたのは、
正 確 に は 同 胞 ヌ ー リ・マ ー リ キ だ 」
「 私 の 意 見 で は 、逮 捕 に よ っ て 選 挙 を 延 期 ま た は キ ャ ン
セ ル で き る か ら 、こ の 逮 捕 は 同 胞 で あ る 首 相 の 利 益 に な る 」
「ハイダリの逮捕は法の下にあ
る べ き で あ っ て 、独 裁 者 の 権 力 の 下 に あ る べ き で は な い 」と す る 声 明 を 発 表 し た 。2010 年
3 月の選挙後、ハイダリ委員長はマーリキ首相による、数千のイラーキーヤの票を無効に
す る と の 訴 え を 棄 却 し て い た 。( AFP, 2012.04.12, 2102.04.14, 2012.04.15; Washington Post,
2012.04.18)
1.2.1.4. 選 管 委 員 の 任 期 を 3 ヶ 月 延 長
イ ラ ク 議 会 は 4 月 19 日 、 出 席 議 員 197 名 の 過 半 数 で 、 選 管 委 員 の 任 期 を 3 ヶ 月 間 延 長 す
る こ と に 合 意 し た 。現 在 の 委 員 の 任 期 は 4 月 28 日 に 切 れ る 予 定 だ っ た 。3 ヶ 月 以 内 に 後 任
が 選 出 で き な け れ ば 、 さ ら に 延 長 も あ り 得 る 。 議 会 は 7300 名 分 の 立 候 補 を 11 月 に 受 け 取
っ た 後 、 22 名 の 専 門 家 会 議 が 2 月 に 条 件 に あ う 候 補 者 4200 名 ま で 絞 り 込 ん だ 。 会 議 は 60
名の候補者を面接して、9 名の 4 年任期の新委員を選ぶ。人選の支援には国連もあたって
い る 。( AFP, 2012.04.19)
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1.2.1.5. ハ ー シ ミ 副 大 統 領 ボ デ ィ ガ ー ド の 拷 問 死 亡 疑 惑
ハーシミ副大統領は 4 月 5 月、2 名のボディガードが先月、治安機関によって捜査の過
程で拷問されて死に至ったとする声明を発表した。アラブ・サミットの数日前に殺害され
たとしている。彼ら二人と、その前に死亡した別のボディガード、アミール・サルバト・
ザイダンについて、調査を要求している。治安機関は、アミールは肝臓の病気で死亡した
と し て い る 。 報 道 官 に よ る と 、 ハ ー シ ミ 副 大 統 領 の 件 に 関 す る 拘 留 者 は 73 名 に 上 っ て い
る 。 (AP, 2012.04.11)
1.2.1.6. ア デ ィ ー ブ 高 等 教 育 相 が 国 会 喚 問 を 拒 否
イラーキーヤのムッラ議員は記者会見で、アディーブ高等教育相が議長による国会喚問
の要請を拒否したと語った。イラーキーヤが、同相と高等教育省が 6 つの憲法違反を行っ
て い る と し て 提 起 し た も の で 、議 長 は 5 月 5 日 を 喚 問 日 程 と し て い た 。
( NINA, 2012.04.21)
1.2.1.7. 最 高 裁 が 閣 僚 喚 問 を 制 限
最 高 裁 は 5 月 2 日 、 憲 法 第 61 条 7 項 3 条 に 基 づ い て 議 会 で 閣 僚 の 喚 問 を 行 う 際 に は 、 明
確な憲法違反か犯罪を行った場合に限られる旨の決定を出した。ただし、閣僚の喚問を定
め た 憲 法 61 条 に は そ う し た 制 限 は 設 け ら れ て い な い 。( Inside Iraqi Politics, No.38, pp.7-8)
1.2.1.8. サ フ ワ へ の 給 与 支 払 い を 減 額
ア ミ ー ル ・ フ ザ ー イ 国 家 和 解 担 当 首 相 顧 問 は 、 2390 億 ID( 1.9 億 ド ル ) 予 定 さ れ て い た
2012 年 度 の 国 家 和 解 予 算 を 、議 会 の 財 務 委 員 会 が 3 分 の 1 減 額 し た こ と を う け て 、月 額 20
万 ID( 158 ド ル ) 以 上 の 支 払 い を 得 て い る サ フ ワ の メ ン バ ー に は 、 20%の 減 額 を 余 儀 な く
されると発表した。多くが治安部隊や公的機関に吸収されて、現在は 4 万人以下と見られ
て い る 。 フ ザ ー イ 顧 問 は 、 残 り の 者 も 公 的 部 門 に 統 合 し た い と 語 っ た 。( AFP, 2012.04.24)
1.2.1.9. ハ ー シ ミ 副 大 統 領 裁 判
5 月 3 日 と 10 日 の 2 度 の 延 期 を 経 て 、5 月 15 日 に 始 ま っ た 。弁 護 団 は 特 別 法 廷 で の 実 施
を求めていたが、刑事裁判所で開かれることになった。バイラクダル裁判所報道官は事前
に 、 訴 追 案 件 は 150 に 上 る と 語 っ て い た が 、 そ の う ち い く つ が ハ ー シ ミ 副 大 統 領 の 罪 か は
明 ら か に し な か っ た 。 ま た 、 証 拠 不 十 分 で 13 名 の ボ デ ィ ガ ー ド が 釈 放 さ れ 、 訴 追 人 数 は
73 名 に な っ た 。 15 日 は 、 2010-2011 年 の 事 件 の 被 害 者 の 親 族 ら が 証 言 し た 。 目 撃 者 で は な
い 。 ま た 、 ボ デ ィ ガ ー ド が 、 2011 年 11 月 に ハ ー シ ミ 副 大 統 領 の 命 令 に よ っ て 治 安 関 係 者
を 暗 殺 し 、 翌 日 、 副 大 統 領 か ら 3000 ド ル を 受 け 取 っ た と 証 言 し た 。
2 回 目 の 審 理 が 開 か れ た 20 日 、副 大 統 領 と 義 理 の 息 子 が 殺 害 を 命 じ た と さ れ る 証 言 へ の
反論証拠として、弁護団は電話記録とスケジュールを引用することを要求したが、裁判官
は 要 求 を 棄 却 し た 。そ れ を 受 け て 、弁 護 団 は 抗 議 の 退 席 を 行 っ た 。5 月 31 日 に 裁 判 が 再 開
したが、弁護団は傍聴席に座った。一方で、大統領を証人として出廷させることを求めた
が、裁判官に棄却された。
6 月 19 日 の 裁 判 で は 、 警 察 官 や 兵 士 が 、 4 月 の ハ ー シ ミ 副 大 統 領 自 宅 の 家 宅 捜 索 に て 、
ピストルのサイレンサーを発見した旨を証言した。前回ボイコットしていた弁護団は、今
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JIME 国別定期報告「イラク」2012 年 4-6 月
回 は 弁 護 に 戻 っ た 。( AFP, 2012.05.03; Time, AP, 2012.05.15; AP, 2012.05.21, 2012.06.19; AK
News, 2012.05.31)
1.2.1.10.
ハーシミ副大統領がタラバーニ大統領を批判
5 月 半 ば 、 ア ン カ ラ で Today’s Zaman の イ ン タ ビ ュ ー に 答 え た ハ ー シ ミ 副 大 統 領 は 、「 タ
ラ バ ー ニ が 、バ ル ザ ー ニ が 見 せ た ス タ ン ス と 同 じ も の を 見 せ て く れ る こ と を 期 待 し て い る 」
「それはまだ起こっていない。だが、私はまだ期待している」と述べた。
なお、自身の逮捕状の背景として、4 月に、①人権や公平な資源分配の点で自分がマー
リキ首相に最も強く反対していた政治家だった、②シリアの状況が悪化する前に、首相は
シリア政策に反対するかもしれない影響力のあるスンナ派の政治家を取り除いておきたか
っ た 、 ③ 超 大 国 が マ ー リ キ 首 相 を 挑 発 し た の か も し れ な い 、 と 述 べ た 。 逮 捕 状 発 給 の 10
日 前 に マ ー リ キ 首 相 が 訪 米 し て い た 。( Today’s Zaman, 2012.04.15; UPI, 2012.05.18)
1.2.1.11.
マーリキ首相がキルクークで閣議開催
マーリキ首相は 5 月 8 日朝、キルクークを訪れ、ナジム・ディーン・キルクーク県知事、
ハ サ ン・ト ゥ ラ ン 県 議 長 と 会 談 し 、キ ル ク ー ク の 状 況 や 公 共 サ ー ビ ス に つ い て 話 し 合 っ た 。
その後、キルクークで初めて閣議を開催した。
テ レ ビ 中 継 を 通 じ て マ ー リ キ 首 相 は「 キ ル ク ー ク は イ ラ ク の 縮 図 故 に 特 別 だ 」
「そのアイ
デ ン テ ィ テ ィ は イ ラ ク 人 だ 」と 語 っ た 。ま た 、KRG へ の 併 合 問 題 を 示 唆 し て「 こ の 県 は 現
在の政治的、社会的、経済的状況に留まる」と述べた。
今 回 の 閣 議 に は 、KRG か ら の 指 示 を 受 け て 、ク ル ド 人 の 大 臣 ら は ボ イ コ ッ ト し た 。
( NINA,
AFP, 2012.05.08)
1.2.1.12.
ハ ー シ ミ 副 大 統 領 に イ ン タ ー ポ ー ル が red notice を 発 行
イ ン タ ー ポ ー ル( 国 際 刑 事 警 察 機 構 )が 5 月 8 日 、ハ ー シ ミ 副 大 統 領 に 対 し て 最 重 要 指 名
手 配 リ ス ト に 相 当 す る red notice を 発 行 し た 。イ ラ ク 政 府 の 要 請 に よ る も の 。こ れ に よ り 、
国境を越えた移動がかなり制限されることになる模様である。ただし、インターポールは
個別の国に対して逮捕を要請することはできない。ハーシミ副大統領はトルコの治安機構
に 守 ら れ て イ ス タ ン ブ ー ル の 豪 華 な ア パ ー ト メ ン ト に 滞 在 し て い る 。( AP, 2012.05.08)
1.2.1.13.
ダクダク容疑者を釈放
2007 年 に 米 兵 5 名 を 殺 害 し た ヒ ズ ボ ラ の ア リ・ム ー サ・ダ ク ダ ク 容 疑 者 が 証 拠 不 十 分 で
釈放されたと弁護士が明らかにした。同容疑者の処遇は米軍撤退の際に米国との間で懸案
事項となっていた。米国は、同容疑者がイラクで裁かれることを条件に引き渡しに最終的
に合意していた。今後、出身国のレバノンに引き渡すかどうかはイラク政府が決定する、
と 弁 護 士 は 述 べ た 。( Reuters, 2012.05.07)
1.2.1.14.
マーリキ首相がムトゥラク副首相の不信任取り下げ
マーリキ首相はムトゥラク副首相に対する不信任要求を取り下げたと、法治国家連合の
ヤシーン・マジード議員が明らかにした。マーリキ首相は地元紙のインタビューで、国家
会議におけるムトゥラク副首相とハーシミ副大統領の問題に対する姿勢について、ムトゥ
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JIME 国別定期報告「イラク」2012 年 4-6 月
ラク副首相の件は政治的なものであり交渉可能だが、ハーシミ副大統領の件は司法の問題
であり、いかなる政治対話にも含まれない、と語っていた。
し か し ム ト ゥ ラ ク 副 首 相 は 6 月 2 日 、マ ー リ キ 首 相 は 独 裁 者 だ と 再 度 繰 り 返 し 、各 党 に
不 信 任 に 向 け て 団 結 す る よ う よ び か け た 。( NINA, 2012.05.13, 2012.05.17; AFP, 2012.06.02)
1.2.1.15.
モスルで閣議開催
バ ス ラ と キ ル ク ー ク に 続 い て 、 イ ラ ク 政 府 は 5 月 29 日 に ニ ナ ワ 県 で 閣 議 を 開 い た 。 情 報
筋によると、閣議のトップ議題は、ニナワ県の治安と公共サービスについてだった。しか
し 、 ク ル ド 人 の 大 臣 と 、 県 議 会 の ク ル ド の メ ン バ ー は ボ イ コ ッ ト し た 。( Aswat al-Iraq,
2012.05.28; AK News, 2012.05.29)
1.2.1.16.
ナースィリーヤで閣議開催
マ ー リ キ 首 相 は 12 日 に デ ィ ー カ ー ル 県 に 到 着 し ナ ー ス ィ リ ー ヤ の イ マ ー ム ・ ア リ 軍 事 空
港で閣議を開催した。地方開催はこれで 4 カ所目。随行大臣はシャハリスターニ副首相、
シャーウィース副首相、タミーム教育相、アディーブ高等教育相、シャマリ司法相、ダラ
ージ住宅相、ジャァファル青年相、シヤーウ人権相、マフーダル地方問題相、アミーン保
健相、アフターン電力相、アッラーウィ通信相、サーマッラーイ科学技術相など。
閣議では、多くの話題、とりわけ製油所拡張計画、軍事空港の一部民間空港転用問題な
どが話し合われた。また、ディーカール県やバスラ県に資するようにユーフラテス川のル
ートを変更することにも合意がなされた。県は、ウルの遺跡をイラク通貨のデザインに使
うことを提案した。閣議の地方開催は、毎年に夏に見られるデモを避けるための一歩であ
る 。ダ ッ バ ー グ 政 府 報 道 官 は 、
「 第 一 に 県 に お け る 電 力 不 足 を 話 し 合 っ た 。首 相 は 県 知 事 に
今 年 は デ ィ ー カ ー ル 県 へ の 割 り 当 て を 増 や す よ う 約 束 し た 」 と 述 べ た 。( NINA, Shabaka
Akhbar al-Nasiriya, 2012.06.12; al-Hayat, 2012.06.13)
1.2.1.17.
国防大学が開校
マ ー リ キ 首 相 は 6 月 半 ば 、国 防 大 学 と ナ ハ レ イ ン 戦 略 研 究 軍 事 セ ン タ ー の 開 校 セ レ モ ニ ー
に出席し、これは国家建設の重要なステップだと語った。また、中東地域が不確実性に直
面しているという事実から、これらのセンターが国家の枠組みを作るのに貢献するべきだ
と 述 べ た 。セ レ モ ニ ー に は 、バ バ キ ル ・ ジ バ リ 参 謀 総 長 や 各 国 大 使 ら も 出 席 し た 。( NINA,
2012.06.17)
1.2.1.18.
メ デ ィ ア 44 社 へ の 閉 鎖 命 令 は 撤 回
イ ラ ク 政 府 は 6 月 24 日 、 国 内 外 の メ デ ィ ア 44 社 に 閉 鎖 命 令 を 出 し た こ と を 明 ら か に し
た 。閉 鎖 を 命 じ ら れ た メ デ ィ ア は 、BBC、Voice of America、Radio Sawa、Sharqiya、Baghdadiya
な ど で 、 大 半 は 国 内 メ デ ィ ア 。 Sharqiya、 Baghdadiya な ど は 政 府 に 批 判 的 だ が 、 そ の 他 に
は宗教放送で政治的なアジェンダのないものも含まれている。サファ・ラビーウ・メディ
ア 通 信 委 員 会( CMC: Communications and Media Commission)委 員 長 は 、閉 鎖 措 置 の た め こ
れらのリストを内務省に送ったと語った。
CMC 関 係 筋 に よ る と 、 決 定 は 彼 ら が ラ イ セ ン ス 料 を 払 わ な か っ た こ と が 原 因 と の こ と 。
CMC の サ ー リ ム ・ マ シ ュ ク ー ル 氏 は 、 CMC の 業 務 は 通 信 部 門 の 規 制 で あ り 、 世 界 の ど こ
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の 国 で も 政 治 と は 離 れ て 行 わ れ て い る こ と だ 、 と 語 っ た 。「 CMC の 決 定 は 、 組 織 と し て の
プロフェッショナルなものである」として、法律や規則に基づいて自由を保障している、
と述べた。
し か し 、国 内 外 か ら の 非 難 の 高 ま り を 受 け て 、CMC の ア リ・ナ セ ル 副 局 長 は 6 月 26 日 、
44 社 に 対 し て ラ イ セ ン ス 更 新 や 費 用 支 払 い な ど の た め の 時 間 的 猶 予 を 与 え る と 発 表 し た 。
こ れ ま で に 実 際 に 閉 鎖 さ れ た メ デ ィ ア は な い 模 様 で あ る 。 内 務 省 は メ デ ィ ア に 対 し て 、 45
日以内にライセンスを取得するように求めた。正確な期限は同省のウェブサイトで告知す
るとのことである。
( Reuters, al-Sumaria News, AP, 2012.06.24; Aswat al-Iraq, AP, 2012.06.26)
1.2.2.
政党・宗教界関連
1.2.2.1. ア ン マ ー ル が ISCI 代 表 に 再 任
ISCI は 5 月 19-20 日 に 大 会 を 開 い て ア ン マ ー ル・ハ キ ー ム を 党 首 と し て 再 任 し た 。ま た 、
NA の 存 続 、 憲 法 遵 守 、 選 挙 の 中 立 性 、 法 律 シ ス テ ム の 独 立 性 、 政 党 法 成 立 及 び 選 挙 法 改
正 、 係 争 地 問 題 の 解 決 な ど に つ い て も 強 調 し た 。( Aswat al-Iraq, 2012.05.20)
1.2.2.2. サ ド ル 派 が 予 備 選 挙 開 始
サドル派広報官のサラーフ・ウバイディは、バスラ、マイサン、ディーカールの3県に
お け る 県 議 会 選 挙 の 予 備 選 挙 を 6 月 8 日 に 開 始 し た と 語 っ た 。( NINA, 2012.06.08)
1.2.3.
政局関連
1.2.3.1. NA は 結 束 を 強 調
NA 政 治 局 は 4 月 22 日 の 声 明 で 、21 日 に ジ ャ ァ フ ァ リ 代 表 の 事 務 所 で 定 例 会 を 開 き 、困
難に立ち向かうために連帯と結束を呼びかけ、有効な解決策を見つける必要性が話し合わ
れ た 、 と 発 表 し た 。 会 議 に は マ ー リ キ 首 相 も 出 席 し た 。 ま た 、 NA は な る べ く 早 く 国 民 会
議を開催することを決定したとしている。そして、イラク内政への干渉を拒否すると発表
した。
法 治 国 家 連 合 の ア ド ナ ー ン ・ サ ッ ラ - ジ ュ 議 員 は 、 NA は 以 前 も 今 も マ ー リ キ を 支 持 し
て お り 、 NA 内 部 か ら 不 信 任 に 向 け た 秘 密 行 動 な ど な い と 否 定 し た 。 法 治 国 家 連 合 は 、 マ
ーリキ首相のイラン訪問は政治経済関係の強化が目的であって、イランをイラク内政に関
与 さ せ る た め で は な い と 強 調 し た 。( al-Hayat, 2012.04.23)
1.2.3.2. 首 相 不 信 任 を 目 指 し て エ ル ビ ル 会 合 を 実 施
イ ラ ー キ ー ヤ の ア ッ ラ ー ウ ィ 代 表 及 び ヌ ジ ャ イ フ ィ 国 会 議 長 、バ ル ザ ー ニ KRG( ク ル デ
ィ ス タ ン 地 域 政 府 ) 大 統 領 ( KDP 党 首 )、 タ ラ バ ー ニ 大 統 領 ( PUK 党 首 )、 ム ク タ ダ ・ サ
ドル師の 5 人が 4 月末にクルディスタン地域の主都エルビルに集まって 5 者会談を開催し
た 。 と り わ け 、 従 来 か ら 首 相 批 判 の 急 先 鋒 だ っ た ア ッ ラ ー ウ ィ 代 表 や バ ル ザ ー ニ KRG 大
統 領 だ け で な く 、 首 相 率 い る 法 治 国 家 連 合 も 所 属 す る NA( 国 民 連 合 ) か ら 、 サ ド ル 師 が
参加したことが注目された。同師は議員ではないが、同師が率いるサドル派は国民議会で
40 議 席 を 有 し て い る 。
5 者 会 談 後 、タ ラ バ ー ニ 大 統 領 を 除 く 4 人 の 連 名 で 、9 項 目 の 要 求 書 な る も の が 発 表 さ れ
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た 。要 求 が 15 日 以 内 に 満 た さ れ な い 場 合 、内 閣 不 信 任 を 議 会 で 可 決 し て 真 の 挙 国 一 致 内 閣
を 形 成 す る と の 内 容 を 含 む 、「 最 後 通 牒 」 の 形 を と っ て い る 。
とはいえ、要求書の内容は、公共サービスの改善、憲法遵守、エルビル合意やサドル師
の 18 項 目 リ ス ト の 履 行 、独 立 機 関 の 独 立 性 維 持 、大 臣 代 行 で 運 営 さ れ て い る 省 の 問 題 、議
会の活性化、治安部隊の政治化禁止、首相三選禁止といったかなり総論的な内容となって
い る 。な お 、サ ド ル 師 の 18 項 目 リ ス ト と は 、今 回 の 5 者 会 談 に あ た っ て 師 が 用 意 し た も の
だが、こちらも、排除と周辺化の政治の終焉、宗派・民族の利益を超えたイラク国家の利
益追求、といった非常に漠然とした内容のものである。
こ の よ う に 、 い ず れ に し て も 15 日 以 内 に 全 て 改 善 で き る よ う な 内 容 と は な っ て お ら ず 、
果たして彼らがどこまで本気で内閣不信任を考えているのかはよくわからない。サドル派
の報道官も、5 者会談はあくまで「合意」のレベルであって「同盟」ではないと述べてい
る。そして、法治国家連合は、要求は現実的でないとして反発しており、同連合の議員か
ら は 、政 治 危 機 が 続 く よ う な ら 議 会 解 散 と 総 選 挙 も 辞 さ な い と の 発 言 も 出 て い る 。 ( 吉 岡
明 子 「 イ ラ ク : 混 迷 続 く 政 局 」 中 東 研 ニ ュ ー ズ リ ポ ー ト , 2012.05.09)
1.2.3.3. エ ル ビ ル 会 合 に 法 治 国 家 連 合 が 反 発
エ ル ビ ル 会 合 後 、法 治 国 家 連 合 の ア ッ バ ー ス・バ ヤ ー テ ィ 議 員 は 、
「 N A 、特 に 法 治 国 家
連 合 は 、現 実 的 で な い 要 求 を 非 難 す る 」
「選挙で選ばれた正当な政府に対して 2 週間以内に
要求を実現しなければ不信任を行うというのは受け入れられない」
「 法 治 国 家 連 合 は 、政 治
危機が続く際には国会解散後に早期選挙を行うことも排除しない」と語った。また、法治
国 家 連 合 の ア ミ ー ン ・ ハ デ ィ 議 員 は 、 サ ド ル 師 は NA の 合 意 な く エ ル ビ ル に 行 っ た と 語 っ
た 。 (Aswat al-Iraq, 2012.05.06; al-Hayat, 2012.05.07)
1.2.3.4. 首 相 不 信 任 支 持 署 名 は 163 票 に 達 せ ず
4 月末に北部クルディスタン地域の主都エルビルで、イラーキーヤ、クルディスタン同
盟、サドル派のリーダが集まり、彼らの首相に対する要求が満たされない場合は内閣不信
任 を 行 う と の 書 簡 を 提 出 し て い た 。そ の 後 、首 相 か ら 前 向 き な 返 答 が 得 ら れ な か っ た た め 、
反 対 派 は 5 月 20 日 に ナ ジ ャ フ で 再 度 会 合 を 開 き 、首 相 が 属 す る シ ー ア 派 宗 教 政 党 連 合 NA
(国民同盟)に対して、首相の後任候補を選出するよう求めた。
す で に NA か ら は サ ド ル 派 が 首 相 反 対 派 に ま わ り 、 続 い て ISCI ( イ ラ ク ・ イ ス ラ ー ム
最 高 評 議 会 ) も ナ ジ ャ フ 会 議 に 参 加 す る の で は と 噂 さ れ た こ と か ら 、 NA の 対 応 が 注 目 さ
れ た 。 し か し 、 NA 代 表 の ジ ャ ァ フ ァ リ 元 首 相 は 、 あ く ま で マ ー リ キ 首 相 支 持 で 党 内 を 固
め 、後 任 候 補 の 選 出 と い う 要 求 に は 応 え な か っ た 。ま た 、ISCI も 結 局 ナ ジ ャ フ 会 合 に 参 加
しなかった。
これをうけて 5 月末に再度、クルディスタン地域で会合が開かれた。同じくイラーキー
ヤ、クルディスタン同盟、サドル派が中心であったが、彼らはタラバーニ大統領(クルデ
ィ ス タ ン 同 盟 の PUK 所 属 ) に 対 し て 、 議 会 に 首 相 の 不 信 任 要 求 を 提 出 す る よ う 説 得 す る
ことができなかった模様である。イラクの憲法では、首相不信任決議の採択に至る方法と
し て 、 (1)大 統 領 が 議 会 に 要 求 を 提 出 、 (2) 5 分 の 1 以 上 の 国 会 議 員 が 要 求 を 提 出 、 の 2 種
類 の 方 法 を 定 め て い る 。 採 択 に お い て 、 議 員 の 絶 対 過 半 数 で あ る 163 票 以 上 の 賛 成 が 得 ら
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れれば不信任決議が可決され、内閣は総辞職することになる。
タラバーニ大統領は、議会に不信任要求を提出する条件として、不信任案に賛成する議
員 の 署 名 を 163 人 分 ( 絶 対 過 半 数 ) 以 上 、 事 前 に 確 保 す る こ と を 求 め た 。 署 名 そ の も の に
は法的拘束力はないが、かくして署名集めが行われ、大統領府に提出された。
しかし、6 月 9 日の大統領府発表によると、署名は当初イラーキーヤ、クルディスタン
同 盟 、サ ド ル 派 議 員 か ら な る 160 人 分 あ り 、そ の 後 、大 統 領 が 率 い る PUK 議 員 か ら 署 名 数
が 追 加 さ れ た も の の 、後 か ら 計 13 人 の 議 員 が 署 名 の 取 り 消 し を 求 め て き た 、と い う こ と で 、
結 局 163 人 分 に は 届 か な か っ た 、と の こ と で あ る 。 ( 吉 岡 明 子「 イ ラ ク:内 閣 不 信 任 案 の
試 み 第 一 弾 は 不 発 」 中 東 研 ニ ュ ー ズ リ ポ ー ト , 2012.06.15)
1.2.3.5. 首 相 喚 問 の 準 備 、 法 治 国 家 連 合 は 脅 し
法治国家連合のアブドゥルハーディ・ハサーニ幹部は、議会で首相喚問があればテロや
汚職にかかわっている人物を擁している政党のプラスにならないだろうと述べ、彼らの悪
事を明るみに出すことを示唆した。
イ ラ ー キ ー ヤ は 6 月 13 日 に 、 イ ラ ー キ ー ヤ と ク ル デ ィ ス タ ン 同 盟 と サ ド ル 派 の 3 党 が 、
広報・法務の 2 委員会を立ち上げて首相喚問の準備をしており、まもなく準備を終える予
定だと述べていた。
な お 、ク ル デ ィ ス タ ン 同 盟 の ア ザ ー ド ・ ア ブ ・ バ ク ル は 、PUK の メ ン バ ー の 一 部 は マ ー
リキ不信任を望んでいないと述べ、それが最近、クルド 2 大政党の軋轢になっていると語
っ た 。( al-Hayat, 2012.06.14)
1.2.3.6. サ ド ル 師 は マ ー リ キ 首 相 の 三 選 目 を 不 支 持
サドル師は、民主主義が未来を支配する道具になるべきではないとして、マーリキ首相
の三選目は支持しない、と明言した。再任を目指すとしても間をあけるべきだと述べた。
( NINA, 2012.06.17)
1.2.3.7. 首 相 反 対 派 が 喚 問 の 準 備 会 合
6 月 17 日 に 、 首 相 反 対 派 が 形 成 し た 、 首 相 喚 問 を 行 う た め の 委 員 会 が エ ル ビ ル で 会 合 を
開いた。イラーキーヤのタラール・ザウバーイ氏は、憲法・法務・政府の 3 つの準備委員
会の形成により、3 党(イラーキーヤ、クルディスタン同盟、サドル派)は新たなステー
ジに入った、と語った。
ア フ ラ ー ル・ブ ロ ッ ク の バ ハ・ア ァ ラ ジ 議 員 は 、同 ブ ロ ッ ク は 首 相 喚 問 プ ロ セ ス に 参 加 し
な い が 、 ク ル デ ィ ス タ ン 同 盟 と イ ラ ー キ ー ヤ が 不 信 任 の た め の 124 票 を 集 め る の な ら ば 、
我 々 は そ こ に 40 票 を 積 み ま す だ ろ う と 語 っ た 。( NINA, 2012.06.17, 2012.06.26; AK News,
2012.06.17)
1.2.3.8. ヌ ジ ャ イ フ ィ 国 会 議 長 は 不 信 任 支 持
ヌ ジ ャ イ フ ィ 議 長 は 6 月 21 日 の 記 者 会 見 で 、 個 人 的 な 意 見 と し て 、 マ ー リ キ 首 相 は 退 陣
すべきだと述べた。また、マーリキ首相が数日以内に議会で喚問され、過半数がその喚問
内容に満足しなければ不信任投票が行われることになると述べて、そのプロセスは「国家
を正しい軌道に乗せようとする試み」だと語った。ムサウィ首相補佐官は、首相は喚問に
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も答えるし反対派の不信任の権利も尊重するが、
「我々は彼らが必要な票を集められないと
確 信 し て い る 」 と 語 っ た 。( AP, 2012.06.21)
1.2.3.9. ハ ッ ル 党 は 首 相 喚 問 に も 国 会 議 長 喚 問 に 反 対
イ ラ ー キ ー ヤ に 参 加 し て い る ハ ッ ル 党 の カ ル ブ ー リ 党 首 は 6 月 20 日 、同 党 は 首 相 不 信 任
への署名を拒否すると明らかにした。旧イラク軍人を公務に戻すことや国民の公共サービ
スを提供することを含め、自分たちの要求にかなう党を支持するとして、マーリキ首相は
それらの要求を実行していると語った。
一方で、法治国家連合が進めているヌジャイフィ国会議長に対する不信任要求も支持し
な い と し て い る 。( AK News, 2012.06.20; NINA, 2012.06.24)
1.2.3.10.
首相は早期議会選挙の脅し
マ ー リ キ 首 相 は 6 月 27 日 、政 府 を 麻 痺 さ せ る よ う な 膠 着 状 態 が 続 く よ う な ら ば 早 期 解 散
総 選 挙 を よ び か け る と 脅 し た 。首 相 府 の 声 明 に よ る と 、
「他党が交渉のテーブルにつくこと
を拒否して危機の継続を形成する政策に拘泥するならば、首相はイラク国民が決定できる
早期選挙を呼びかけざるを得ないと判断するだろう」としている。投票日などについての
言及はない。ムサウィ首相顧問は、依然として首相は対話を通じて危機を解決することを
期待している、と述べた。
これに先だって、法治国家連合は、議会で首相が喚問された場合には早期選挙か多数派
内 閣 形 成 を 行 う こ と を ほ の め か し た 、 と サ バ ー ハ 紙 が 6 月 19 日 に 報 じ て い た 。
ムハンマド・ハーリディ議会報道官は、議会にはいかなる政治グループからも首相喚問
に 対 す る 公 式 な 要 請 は 届 い て い な い と し て い る 。( al-Hurra TV, 2012.06.19; AP, 2012.06.27)
1.2.4.
クルディスタン情勢
1.2.4.1. KRG 議 会 が 新 政 府 を 承 認
KRG 議 会 は 4 月 5 日 ネ チ ル ワ ン・バ ル ザ ー ニ を 首 相 、エ マ ー ド・ア フ マ ド を 副 首 相 と す
る 第 7 期 新 ク ル デ ィ ス タ ン 地 域 政 府 を 信 任 し た 。コ ス ラ ト・ラ ス ー ル 副 大 統 領 、バ ル ハ ム ・
サ ー リ フ 前 首 相 も 議 会 に 出 席 し た 。閣 僚 数 は 19 名 。マ ー リ キ 首 相 は ネ チ ル ワ ン 首 相 に 電 報
を送り、就任に祝意を伝えた。また、新首相の就任が中央と地域間の問題解決につながる
ことに期待を表明した。
一 方 、ゴ ラ ン 、KIU、KIG の 野 党 3 党 は 、信 任 投 票 を ボ イ コ ッ ト し た 。議 席 111 の う ち 、
二 大 政 党 が 59 議 席 、 野 党 が 35 議 席 を 握 っ て い る 。 ゴ ラ ン 代 表 の カ ル ド ・ ム ハ ン マ ド は 、
与 党 が 数 々 の 約 束 -法 の 支 配 、公 共 サ ー ビ ス の 改 善 、汚 職 対 策 、党 の 政 府 へ 介 入 阻 止 、予 算
の 透 明 性 向 上 な ど -を 履 行 で き な か っ た こ と を 認 め る こ と を 望 ん で い る 、 と 語 っ た 。 シ ャ
ホ ・ サ イ ー ド ・ ゴ ラ ン 報 道 官 は 、 今 回 の 新 政 府 は 前 政 府 の 続 き に す ぎ ず 、 そ も そ も KDP
と PUK の 間 の( 政 府 を 2 年 ご と に 交 代 す る )合 意 に 参 加 し て い な い こ と が ボ イ コ ッ ト の 理
由 だ と 述 べ た 。( NINA, 2012.04.05; AK News, 2012.04.05; al-Sumaria TV, 2012.04.08; Niqash,
2012.04.12)
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1.2.4.2. ネ チ ル ワ ン 首 相 と サ ド ル 師 が 会 談
サ ド ル 派 事 務 所 は 4 月 5 日 、 サ ド ル 師 と ネ チ ル ワ ン KRG 新 首 相 が 、 後 者 の 求 め に 応 じ
て イ ラ ン の コ ム で 会 談 を 行 っ た こ と を 明 ら か に し た 。( al-Sumaria, 2012.04.05)
1.2.4.3. 4 月 9 日 を 祝 日 に 決 定
KRG は 4 月 8 日 の 初 閣 議 で 、 2003 年 に バ グ ダ ー ド 陥 落 に 至 っ た 4 月 9 日 を ク ル デ ィ ス
タ ン 地 域 の 祝 日 に 決 定 し た 。 連 邦 政 府 は 公 休 日 に 指 定 し て い な い 。( NINA, 2012.04.08)
1.2.4.4. KRG は ハ ー シ ミ 副 大 統 領 の 帰 国 に 反 対 せ ず
KRG の ナ シ ー フ ・ ハ イ ダ リ 司 法 相 は 4 月 21 日 の 声 明 で 、「 ハ ー シ ミ 副 大 統 領 の ケ ー ス は
政 治 と 司 法 の 2 側 面 が あ る 。 司 法 面 は バ グ ダ ー ド の 問 題 で あ り KRG は 関 知 し な い 」「 KRG
の 司 法 省 は 、ハ ー シ ミ 副 大 統 領 が 地 域 に 戻 っ て く る こ と に 反 対 し な い 」と 述 べ た 。
( NINA,
2012.04.21)
1.2.4.5. バ ル ザ ー ニ KRG 大 統 領 が イ ラ ク 政 府 の F-16 戦 闘 機 取 得 を 警 戒
バ ル ザ ー ニ KRG 大 統 領 は 4 月 22 日 、エ ル ビ ル で 記 者 団 に 対 し て 、
「 F-16 戦 闘 機 を こ の 男
( マ ー リ キ 首 相 )の 手 に 持 た せ て は な ら な い 」
「 彼 が そ の 武 器 を 手 に す る の を 防 ぐ か 、も し
彼が持つのならば、彼は今の地位に留まるべきではない」と述べて、マーリキ首相への警
戒 を 語 っ た 。マ ー リ キ 首 相 が 軍 関 係 者 と の 会 合 で 、KRG と 中 央 政 府 と の 問 題 が 話 し 合 わ れ
た 時 に 、 「 F-16 戦 闘 機 の 到 着 ま で 待 て 」 と 述 べ た と い う エ ピ ソ ー ド を 明 ら か に し た 。
一 方 、マ ー リ キ 首 相 は 5 月 半 ば 、
「 ク ル デ ィ ス タ ン 地 域 で は 、今 日 、戦 争 の ド ラ ム が 鳴 っ
て い る 」と 指 摘 し 、F16 戦 闘 機 に つ い て 、
「 ク ル ド は 我 々 の 人 々 だ 。誰 も 攻 撃 な ど で き な い 」
と 語 っ た 。 係 争 地 に つ い て は 「 80%を ペ シ ュ メ ル ガ が 、 20%を 中 央 軍 が コ ン ト ロ ー ル し て
い る 。 そ の 部 隊 の 大 勢 も ま た 、 ク ル ド で あ る 」 と 述 べ た 。( AFP, 2012.04.23; al-Hayat,
2012.05.11)
1.2.4.6. 独 立 問 題
バ ル ザ ー ニ KRG 大 統 領 は 4 月 23 日 の 声 明 で 、 タ ラ バ ー ニ 大 統 領 や ク ル ド 政 治 家 と 、 ク
ルドの独立問題について協議を始めると語った。危機を意図的に大きくしているわけでは
なく、6 年間放置されてきた、存在する危機について話をしていると述べた。独立宣言を
した場合の地域の政党間の内戦勃発の不安については、クルディスタン域内のあらゆる内
戦に反対の立場だとしつつ「
、クルドの人々がその血を犠牲にしなければならないのならば、
そ れ は 連 邦 の た め で は な く 、今 度 は 独 立 の た め で な け れ ば な ら な い 」と 述 べ た 。25 日 の イ
ン タ ビ ュ ー で も 、「 イ ラ ク の 統 一 を 妨 げ て い る の は 権 威 主 義 的 支 配 だ 」「 も し イ ラ ク が 独 裁
国家に向かっているなら、我々は独裁と共に生きることはできない」と述べ、9 月に独立
を 問 う 住 民 投 票 を 検 討 し て い る こ と を 明 ら か に し た 。専 門 家 は 、こ う し た バ ル ザ ー ニ KRG
大 統 領 の 発 言 の 背 景 に は 、新 党 が 出 て き た こ と に よ る KDP の 人 気 の 後 退 が あ る と 見 て い る 。
一方、タラバーニ大統領は、今は独立は現実的ではないと述べ、独立を求める人々に現
実的になって連邦国家イラクを支援するよう求めている。
( Ilaf, 2012.04.23; AP, 2012.04.25)
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1.2.4.7. KRG は 重 火 器 の 所 有 を 主 張
KRG は 中 央 政 府 の F-16 戦 闘 機 の 所 有 に 難 色 を 示 す 一 方 、 KRG が 全 て の 種 類 の 兵 器 を 所
有することを求めた。サーミ・アスカリ議員は旧政権崩壊後に押収された重火器は中央政
府に引き渡すべきだとしているが、クルドは、憲法は地域が所有する武器について何も触
れ て い な い と 反 発 し て い る 。法 治 国 家 連 合 の サ ア ド・ム ッ タ リ ビ 議 員 は 、KRG の 武 器 が テ
ロリストにわたってトルコやイランを攻撃すれば対外関係を損なうと指摘している。
また、議会の治安国防委員会のウィトウィト議員は、武器購入には連邦政府の国防相の
責 任 だ と し て 、KRG が 中 央 政 府 の 許 可 な く 300 台 の 戦 車 を 購 入 す る こ と は 不 可 能 だ と 述 べ
た 。バ ル ザ ー ニ KRG 大 統 領 が ロ シ ア 、セ ル ビ ア 、モ ン テ ネ グ ロ に 購 入 を 打 診 し て い た が 、
そ れ ら の 国 は 拒 否 し た と 議 会 筋 が 語 っ た 。( NINA, 2012.04.23; antiwar.com, 2012.04.29)
1.2.4.8. 財 務 省 が 統 合
エ マ ー ド ・ ア フ マ ド KRG 副 首 相 は 5 月 20 日 、 エ ル ビ ル の ス レ イ マ ニ ア の 財 務 省 の 統 合
が 行 わ れ た こ と を 発 表 し た 。 財 務 規 定 な ど も 統 合 さ れ る 。( Aswat al-Iraq, 2012.05.20)
1.2.4.9. KRG は 県 議 会 選 挙 を 無 期 限 延 期
KRG は 6 月 5 日 、 9 月 に 予 定 さ れ て い た 北 部 3 県 の 県 議 会 選 挙 を 無 期 限 延 期 す る と 発 表
し た 。理 由 は 、KRG の 選 挙 法 が 、少 数 派 の キ リ ス ト 教 徒 に 対 し て 彼 ら の コ ミ ュ ニ テ ィ か ら
の候補者にしか投票を認めていないことに対して、国際的な基準に合致しないとして選管
が 異 議 を 唱 え た た め 。ハ イ ダ リ 選 管 委 員 長 は 、法 律 に 関 し て 合 意 に 達 し た ら 、KRG が 新 た
な日程を発表するとエルビルでの記者会見で語った。北部 3 県で県議会の投票が行われた
の は 2005 年 で あ る 。
また。選挙延期の理由として資金不足の問題も指摘されていたが、クルディスタン同盟
のハサン・ジハード議員は、県議会選挙の延期の背景は資金問題よりもむしろ政治的対立
だ と 語 っ た 。 (AFP, 2012.06.06; AIN, 2012.06.27)
1.2.4.10.
クルディスタン地域の空港がシリア反体制派支持に使われている疑惑を否定
法 治 国 家 連 合 の ワ リ ー ド・ヒ ッ リ 議 員 が 、KRG が 域 内 の 空 港 施 設 を シ リ ア 反 体 制 派 へ の
武 器 支 援 に 利 用 し て い る と 非 難 し て い た こ と に 関 し て 、 KRG は 否 定 し た 。 6 月 21 日 付 け
の KRG の 声 明 は 、「 法 治 国 家 連 合 と イ ラ ク 連 邦 政 府 は 、 す べ て の イ ラ ク の 空 港 が イ ラ ク の
民 間 航 空 委 員 会 ( Civil Aviation Committee) に よ っ て 管 理 さ れ て い る こ と を 知 っ て い る は
ず だ 」 と し て い る 。( NINA, 2012.06.21)
1.2.5.
治安情勢
1.2.5.1. 3 月 の 死 者 数 は 戦 後 最 低
3 月 の 死 者 数 は 112 人 で 、 78 人 の 市 民 、 22 人 の 警 察 官 、 12 人 の 兵 士 だ っ た 。 こ れ は 保
健 省 、 内 務 省 、 国 防 省 に よ る 数 字 で 、 イ ラ ク 戦 争 後 最 も 少 な か っ た 。( AFP, 2012.04.01)
1.2.5.2. 4 月 の 死 者 数 は 前 月 比 増
保 健 省 、 内 務 省 、 国 防 省 か ら の デ ー タ に よ る と 、 4 月 の イ ラ ク 人 死 者 数 は 126 人 で 、 88
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人 の 市 民 、18 人 の 警 察 官 、20 人 の 兵 士 だ っ た 。負 傷 者 数 は 271 名 で 、市 民 132 名 、警 察 官
89 名 、 兵 士 50 名 。 殺 害 さ れ た 武 装 勢 力 は 25 名 、 逮 捕 が 185 名 。( AFP, 2012.05.01)
1.2.5.3. 無 人 偵 察 機 を 購 入
米国大使館の防衛協力室の関係者は、イラク軍が南部の石油積み出し施設などを警護す
るため、米国製の無人偵察機を購入したと発表した。数や種類については公表していない
が 、 年 末 ま で に 稼 働 開 始 の 予 定 で あ る 。( Reuters, 2012.05.21)
1.2.5.4. パ イ プ ラ イ ン 製 造 工 場 の 労 働 者 4 名 が 誘 拐
ギ リ シ ャ に 拠 点 を 置 く Consolidated Contractors Company の 社 員 4 名 ( イ ラ ク 人 2 名 、 レ
バ ノ ン 人 1 名 、パ レ ス チ ナ 人 1 名 )が バ ス ラ で 5 月 13 日 朝 に 誘 拐 さ れ た 。偽 の 検 問 所 で 止
められ、連れ去られた模様である。警備員は同行しておらず、社員はルメイラ油田近くの
パイプライン製造工場で働いていた。バスラ警察は、これはテロや政治性のある事件では
なく、一般犯罪に近いものだとしている。
そ の 後 、4 人 は 1 ヶ 月 後 に 50 万 ド ル の 身 代 金 を 払 っ て 釈 放 さ れ た 。バ ス ラ 警 察 関 係 者 に
よ る と 、 こ の 件 に は マ ー リ キ 首 相 自 身 が 乗 り 出 し て い た 。 救 出 オ ペ レ ー シ ョ ン が 5 月 22
日に行われ、ヘリで所在地も確認できていたものの、犯人は頻繁に居場所をかえるなど手
慣 れ て お り 、犯 人 1 名 を 除 い て 逃 げ ら れ た 。家 族 は 独 自 に 犯 人 と 携 帯 で 連 絡 を と る に 至 り 、
最終的に政府からの指示のもと、バスラの治安部隊が犯人と交渉し、身代金と引き替えに
釈放された。被害者のイラク人 1 人が犯人の協力者ではないかと見られていたが、彼が逮
捕 さ れ る と の 情 報 は 出 て い な い 。( Iraq Oil Report, 2012.05.17, 2012.06.21)
1.2.6.

テロ関連
4 月 4 日 、バ グ ダ ー ド 北 部 で 地 元 の 警 察 署 長 を 狙 っ た 自 動 車 爆 弾 に よ っ て 、民 間 人 5 名
が 死 亡 、 15 名 が 負 傷 し た 。 署 長 は 無 事 だ っ た 。( AP, 2012.04.04)

4 月 7 日 、デ ィ ヤ ー ラ 県 で 道 路 脇 の 爆 弾 で パ ト ロ ー ル 中 の 警 察 官 3 名 が 死 亡 、バ グ ダ ー
ド で は カ ッ ラ ー ダ 地 区 で ミ ニ バ ス に 仕 掛 け ら れ た 爆 弾 が 爆 発 し て 2 名 が 死 亡 、8 名 が 負
傷 し た 。( AFP, 2012.04.07)

4 月 9 日 、バ ー ビ ル 県 の PUK 事 務 所 が 爆 弾 で 被 害 を 受 け た 。負 傷 者 は で な か っ た 。PUK
は 非 難 声 明 を 発 表 し た 。 NA も 同 様 に 非 難 声 明 を 発 表 し た 。( NINA, 2012.04.09
2012.04.10)

4 月 12 日 、 キ ル ク ー ク で 警 察 官 2 名 と 民 間 人 3 名 が 車 か ら 銃 撃 さ れ て 死 亡 し た 。 犯 人
は 警 察 と の 30 分 間 の 銃 撃 戦 の 後 に 逃 げ 去 っ た 。 ま た 、 南 部 の デ ィ ワ ニ ー ヤ で は ISCI
に 所 属 す る 宗 教 施 設 に ダ イ ナ マ イ ト が 投 げ 込 ま れ 、 8 歳 の 女 の 子 が 死 亡 し た 。( AFP,
2012.04.12)

4 月 15 日 に 3 件 の 爆 発 事 件 が あ っ た 。1 件 は 、キ ル ク ー ク の 大 学 近 く で 1 名 が 死 亡 、15
名 が 負 傷 し た 。ま た 、同 県 で サ フ ワ の リ ー ダ を 狙 っ た 路 肩 爆 弾 が 爆 発 し 、息 子 が 死 亡 し
た。タージでは、武装勢力がシーア派の家族の家を爆破し、3 名が死亡、2 名が負傷し
た 。 (AP, 2012.04.15)

4 月 19 日 に 7 県 で 爆 弾 テ ロ や 銃 撃 が 相 次 ぎ 、 少 な く と も 38 名 が 死 亡 、 170 名 が 負 傷 し
た 。3 月 20 日 以 来 の 惨 事 で あ る 。民 間 人 23 名 、警 察 官 10 名 、サ フ ワ メ ン バ ー 3 名 、兵
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士 2 名 が 犠 牲 に な っ た 。自 動 車 爆 弾 が 14 件 、そ の 他 爆 発 が 13 件 、自 爆 テ ロ が 3 件 あ っ
た 。 バ グ ダ ー ド 周 辺 で の 犠 牲 者 が 少 な く と も 17 名 と 見 ら れ て い る 。 翌 日 、 ISI が 犯 行
声 明 を 出 し た 。 治 安 機 関 と 政 府 職 員 を 狙 っ た と し て い る 。( AFP, 2012.04.19; AP,
2012.04.20)

4 月 24 日 、 ナ ジ ャ フ の 4 人 の マ ル ジ ャ ァ の う ち 2 人 ( バ ー シ ル ・ ナ ジ ャ フ ィ 師 、 イ シ
ャ ー ク・フ ァ イ ヤ ー ド 師 )の オ フ ィ ス が 何 者 か に 攻 撃 さ れ た 。負 傷 者 は で な か っ た 。
( AFP,
2012.04.25)

4 月 26 日 、 デ ィ ヤ ー ラ 県 バ ァ ク ー バ 郊 外 の カ フ ェ で 2 件 の 爆 発 が あ り 、 10 名 が 死 亡 、
18 名 が 負 傷 し た 。死 者 は 、1 件 目 の 自 爆 テ ロ に よ る 爆 発 で 生 じ た 。
( Reuters, 2012.04.26)

5 月 3 日 、ハ ー シ ミ 副 大 統 領 の 裁 判 が 開 か れ る 数 時 間 前 、中 央 高 等 裁 判 所 が あ る ハ ー リ
ス ィ ー ヤ 地 区 で 、銃 撃 と 爆 発 が 起 こ っ た 。銃 撃 で 兵 士 1 名 が 死 亡 、3 つ の 道 路 脇 爆 弾 で
警 察 官 2 名 が 負 傷 し た 。( AFP, 2012.05.03)

5 月 13 日 、 フ ァ ッ ル ー ジ ャ で は パ ト ロ ー ル 中 の 兵 士 を 狙 っ た 自 動 車 爆 弾 で 2 名 の 兵 士
が 死 亡 、3 名 が 負 傷 。ラ マ ー デ ィ で は 警 察 官 2 名 が 爆 弾 で 死 亡 。ヒ ッ ラ で は 道 路 脇 爆 弾
で 民 間 人 2 名 が 死 亡 。イ ラ ク 全 土 で 6 名 が 死 亡 し た 。こ れ ま で 数 週 間 は 比 較 的 平 穏 だ っ
た 。( Radio Free Europe, the New York Times, 2012.05.13)

5 月 15 日 、モ ス ル で 自 爆 犯 が 燃 料 を 積 ん だ ト ラ ッ ク を 使 っ て 軍 基 地 で 自 爆 し 、7 名 死 亡 、
20 名 負 傷 。( AP, CNN, 2012.05.15)

5 月 15 日 、 モ ス ル 市 議 が 自 動 車 か ら 撃 た れ 暗 殺 さ れ た 。( CNN, 2012.05.15)

5 月 22 日 、 バ ァ ク ー バ で 爆 弾 が 爆 発 し 、 子 供 を 含 む 6 名 が 死 亡 し た 。 狙 わ れ た の は サ
フ ワ の リ ー ダ だ っ た 。( AFP, 2012.05.22)

5 月 23 日 、3 名 の レ バ ノ ン 人 シ ー ア 派 巡 礼 者 が ラ マ ー デ ィ の 道 路 脇 爆 弾 で 死 亡 し た 。バ
ス に は 45 名 の レ バ ノ ン 人 が 乗 っ て い た 。そ の 他 23 日 に は キ ル ク ー ク で 警 察 官 2 名 が 死
亡 、5 名 が 負 傷 し 、ま た 、西 バ グ ダ ー ド で は ヤ ム ル ー ク の ス ン ナ 派 モ ス ク の 近 く で 自 動
車爆弾が爆発し、4 名が負傷した。加えて、バァクーバでの銃撃と 3 件の路肩爆弾で 3
名 が 死 亡 、 14 名 が 負 傷 し た 。( Reuters, AFP, 2012.05.23)

5 月 26 日 正 午 頃 、 バ ァ ク ー バ で パ ト ロ ー ル 中 の 警 察 官 を 狙 っ た 爆 弾 が 爆 発 し 、 兵 士 3
名 が 死 亡 し た 。( SPA, 2012.05.27)

5 月 27 日 、ア ン バ ー ル 県 で 18 名 の シ ー ア 派 パ キ ス タ ン 人 巡 礼 者 が 乗 っ た バ ス が 、路 肩
爆 弾 の 攻 撃 を 受 け 、 運 転 手 を 含 む 19 名 が 負 傷 し た 。 う ち 3 名 は 子 供 で 重 体 。 巡 礼 者 は
ア ス カ リ 聖 廟 に 向 か っ て い た 。( AFP, 2012.05.27)

5 月 26 日 正 午 頃 、モ ス ル 北 西 20km の 町 で パ ト ロ ー ル 中 の イ ラ ク 軍 兵 士 が 爆 弾 で 襲 わ れ
3 名 が 死 亡 し た 。( SPA, 2012.05.27)

5 月 31 日 、 バ グ ダ ー ド で レ ス ト ラ ン や パ ト ロ ー ル 中 の 警 察 を 狙 っ て テ ロ が 発 生 し 、 合
計 13 名 が 死 亡 し た 。負 傷 者 37 名 。シ ー ア 派 地 区 の 混 み 合 っ た レ ス ト ラ ン の 外 で 駐 車 中
の 自 動 車 爆 弾 が 爆 発 し て 、8 名 が 死 亡 し た 他 、ジ ャ マ ー ル・ デ ィ ー ン 首 相 顧 問 自 宅 近 く
で 同 じ く 駐 車 中 の 車 が 爆 発 、民 間 人 1 名 が 死 亡 し た 。ス ン ナ 派 地 区 の ア ー マ リ ー ヤ で 警
察 官 の 自 宅 が 狙 わ れ 2 名 が 死 亡 、ま た パ ト ロ ー ル 中 の 警 察 官 へ の 攻 撃 で 1 名 死 亡 。全 土
で の 死 者 は 18 名 、 負 傷 者 は 53 名 に 上 っ た 。( AP, 2012.05.30; Morning Star, 2012.05.31)

6 月 1 日朝、非番の内務省職員が自動車を運転中、銃撃されて死亡した。また、その 1
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時 間 後 に は 道 路 脇 爆 弾 に よ っ て 1 名 が 死 亡 。( AP, 2012.06.01)

6 月 4 日 、バ グ ダ ー ド の シ ー ア 派 宗 教 管 理 施 設 の 外 で 、自 爆 犯 が 爆 弾 を 積 ん だ 車 を 爆 発
さ せ 、25 名 が 死 亡 し た 。負 傷 者 は 70 名 以 上 。ISI が 犯 行 声 明 を 出 し た 。
( AP, 2012.06.04;
AFP, 2012.06.10)

6 月 9 日 、 全 土 で 少 な く と も 11 名 が 死 亡 、 7 名 が 負 傷 し た 。 バ ア ジ で の 爆 発 で 兵 士 4
名 が 死 亡 、民 間 人 3 名 負 傷 。ラ マ ー デ ィ の 道 路 脇 爆 弾 で 民 間 人 3 名 死 亡 、2 名 負 傷 。警
察 官 が 銃 撃 さ れ て 1 名 死 亡 、2 名 負 傷 。モ ス ル で は 学 生 の 遺 体 が 発 見 さ れ 、警 察 官 1 名
が 銃 撃 さ れ て 死 亡 。 キ ル ク ー ク で は KDP 所 属 の ア サ イ ー シ ュ ( ク ル ド 警 察 官 ) が 遺 体
で 発 見 さ れ た 。部 族 間 の も め 事 が 背 景 に あ っ た 模 様 。ま た 、キ ル ク ー ク 県 の バ イ ハ サ ン
で 7 つ の 爆 弾 が 発 見 さ れ た 。う ち 2 つ は 脱 ガ ス 装 置 の 下 で 爆 発 し た が 、マ イ ナ ー な 漏 れ
と火事で済み、オペレーションに支障はなかった。残りのうち 2 つも爆発、被害なし。
3 つ は 内 務 省 の Oil Police に と よ っ て 発 見 さ れ 処 理 さ れ た 。 輸 出 や 生 産 に 影 響 は 出 な か
っ た ( Aswat al-Iraq, 2012.06.07; Antiwar.com , Iraq Oil Report, 2012.006.09)

6 月 10 日 、 バ グ ダ ー ド 北 西 の カ ー デ ィ ミ ー ヤ 地 区 で 、 第 7 代 イ マ ー ム の ム ー サ ・ カ ー
デ ィ ム 師 の 死 を 悼 む た め に 集 ま っ た シ ー ア 派 巡 礼 者 を 標 的 に し て 、自 動 車 爆 弾 2 発 が 爆
発 し 、 少 な く と も 6 名 が 死 亡 、 38 名 が 負 傷 し た 。 同 じ 巡 礼 で 2005 年 に は 1000 名 が 犠
牲 に な っ た 。( Reuters, , 2012.06.10)

6 月 13 日 、 バ グ ダ ー ド と ヒ ッ ラ と キ ル ク ー ク で 少 な く と も 16 件 の 爆 破 事 件 が 発 生 し 、
死 者 は 報 道 に よ り 異 な る が 多 い ケ ー ス で 93 名 に 上 っ た 。 ほ と ん ど の テ ロ で シ ー ア 派 が
標 的 と さ れ た 。最 悪 の 事 件 は バ グ ダ ー ド の カ ッ ラ ー ダ 地 区 で 起 こ っ た 自 動 車 爆 弾 事 件 で
あ り 、 16 名 が 死 亡 、 32 名 が 負 傷 。 ヒ ッ ラ で は 警 察 官 が 多 く 訪 れ る レ ス ト ラ ン 2 軒 が 2
台 の 自 動 車 爆 弾 で 襲 わ れ 、少 な く と も 21 名 死 亡 、50 名 が 負 傷 。キ ル ク ー ク で の 自 動 車
爆 弾 事 件 の 標 的 は ク ル ド 人 政 治 家 だ っ た 模 様 。ま た 、バ グ ダ ー ド で は 銃 撃 で 警 察 官 数 名
が 殺 害 さ れ た 。 ISI が 犯 行 声 明 を 出 し た 。( Los Angels Times, CNN, 2012.06.13;
International Business Times, 2012.06.16)

6 月 14 日 、全 土 で の 死 者 は 14 名 に 上 っ た 。ハ デ ィ ー ド で ス ン ナ 派 の シ ェ イ フ と 3 人 の
親 戚 が 自 宅 で 銃 撃 さ れ て 死 亡 。フ ァ ッ ル ー ジ ャ の 自 爆 テ ロ で 警 察 官 3 名 が 死 亡 、民 間 人
を 含 め 6 名 負 傷 。モ ス ル で 治 安 部 隊 を 狙 っ た 爆 弾 に よ っ て 子 供 3 名 が 死 亡 。デ ィ ジ ュ ラ
で 警 察 官 1 名 が 死 亡 、 な ど 。( antiwar.com, 2012.06.14)

シ ー ア 派 宗 教 行 事 の 最 終 日 と な っ た 6 月 16 日 、 バ グ ダ ー ド の カ ー ズ ィ ミ ー ヤ で の 自 動
車 爆 弾 2 発 で 少 な く と も 26 名 が 死 亡 し た 。32 名 と の 報 道 も あ る 。タ ク シ ー の 中 に 隠 さ
れ た 爆 弾 で 2 名 の 警 察 官 を 含 む 14 名 が 死 亡 、 46 名 が 負 傷 。 1 時 間 後 、 2 台 目 の 駐 車 中
の 車 が 爆 発 し 、 少 な く と も 12 名 が 死 亡 、 26 名 が 負 傷 。 (AP, CNN, 2012.06.16)

6 月 17 日 、 フ ァ ッ ル ー ジ ャ で パ ト ロ ー ル 中 の 兵 士 を 狙 っ た 自 動 車 爆 弾 で 1 名 死 亡 、 3
名 負 傷 。ま た 、同 じ く フ ァ ッ ル ー ジ ャ の 道 路 脇 爆 弾 で 子 供 1 名 が 死 亡 、3 名 負 傷 。バ グ
ダ ー ド 北 西 で は 警 察 署 を 狙 っ た 自 動 車 爆 弾 で 2 名 死 亡 、 26 名 負 傷 。 キ ル ク ー ク 北 部 の
道 路 脇 爆 弾 で ト ル コ の 民 間 警 備 会 社 の イ ラ ク 人 社 員 が 殺 害 さ れ 、 2 名 が 負 傷 。( AFP,
2012.06.17)

6 月 18 日 、 デ ィ ヤ ー ラ 県 バ ァ ク ー バ 東 の シ ュ フ タ 地 区 で 、 最 近 死 亡 し た 部 族 リ ー ダ の
葬 儀 で 、自 爆 テ ロ が 発 生 し た 。死 者 22 名 、負 傷 者 50 名 以 上 。
( antiwar.com, 2012.06.18;
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JIME 国別定期報告「イラク」2012 年 4-6 月
AK News, 2012.06.19)

6 月 18 日 、 ラ マ ー デ ィ の 警 察 本 部 近 く で 爆 弾 が 爆 発 、 死 者 4 名 、 負 傷 者 6 名 。 モ ス ル
で は 警 察 官 1 名 が 銃 撃 で 死 亡 、2 名 負 傷 。キ ル ク ー ク で は 道 路 脇 爆 弾 で 治 安 要 員 1 名 が
死 亡 、3 名 負 傷 。そ の 他 、全 土 あ わ せ て 18 日 の 死 者 は 36 名 、負 傷 者 は 82 名 に 上 っ た 。
( antiwar.com, 2012.06.18)

6 月 22 日 、バ グ ダ ー ド の 青 空 市 場 で 爆 弾 2 発 が 相 次 い で 爆 発 し 、少 な く と も 14 人 が 死
亡 し た 。バ グ ダ ー ド 北 東 部 の シ ー ア 派 住 民 が 多 い 地 域 で 起 こ っ た 。ま た 、同 じ 日 に は サ
ーマッラーのアスカリ聖廟の入り口近くの駐車場で爆弾が爆発し、巡礼者 1 名が死亡、
13 名 が 負 傷 し た 。( AP, 2012.06.22)

6 月 27 日 、 バ グ ダ ー ド 南 部 で 、 3 発 の 道 路 脇 爆 弾 が 爆 発 し て 治 安 要 員 及 び 医 療 関 係 者
11 名 が 殺 害 さ れ た 。 負 傷 者 は 18 名 。( AFP, 2012.06.27)

6 月 29 日 、爆 発 及 び 銃 撃 で 、イ ラ ク 全 土 で 13 名 が 死 亡 、50 名 が 負 傷 し た 。バ グ ダ ー ド
北 部 の バ ラ ド で は 爆 発 物 を 積 ん だ バ イ ク 2 台 が ほ ぼ 同 時 に 2 カ 所 の 市 場 で 爆 発 し 、3 発
目 は 警 察 署 近 く で 爆 発 し た 。ま た 、バ ァ ク ー バ 南 部 で は 検 問 所 が 銃 撃 さ れ サ フ ワ の メ ン
バ ー 4 名 が 死 亡 し た 。( AFP, 2012.06.29)

6 月 30 日 、 モ ス ル の パ イ プ ラ イ ン 近 く で IED が 爆 破 し 、 警 察 官 3 名 が 死 亡 、 同 1 名 が
負 傷 し た 。( AK News, 2012.06.30)
1.2.7.
デモ関連
1.2.7.1. サ ド ル 派 が コ ー ラ ン 焼 却 に 抗 議 し て デ モ
数 百 名 の サ ド ル 派 支 持 者 が ク ー フ ァ で 5 月 4 日 、フ ロ リ ダ の 協 会 で 4 月 29 日 に コ ー ラ ン
が燃やされたことに対する抗議デモを行い、米国やイスラエルを非難するスローガンを唱
え た 。( AFP, 2012.05.04)
1.2.7.2. サ ド ル 派 が メ デ ィ ア の 自 由 を 訴 え て デ モ
数 千 人 の サ ド ル 派 支 持 者 が バ グ ダ ー ド の フ ィ ル ド ゥ ー ス 広 場 で 6 月 20 日 、メ デ ィ ア の 自
由 を 訴 え て デ モ を 行 っ た 。 前 日 、 サ ド ル 師 が 、 イ ラ ー キ ー ヤ TV な ど が 政 府 に 支 配 さ れ て
い る 状 況 を 批 判 し て い た 。( NINA、 2012.06.21)
1.2.8.
治安部隊・司法関連
1.2.8.1. HRW が 秘 密 拘 留 所 は 未 だ 存 在 す る と 告 発
HRW( Human Rights Watch)は 5 月 15 日 、イ ラ ク 政 府 が 未 だ に 、1 年 前 に 閉 鎖 し た と 述
べ て い た 秘 密 拘 留 所 を 運 営 し て い る と 発 表 し た 。 GZ 内 に 、 Camp Honor の 他 2 つ の 秘 密 拘
留 所 が あ る と し て い る 。 政 府 は 反 論 し 、 施 設 は 空 だ と し て い る 。( Reuters, 2012.05.15)
24/42
JIME 国別定期報告「イラク」2012 年 4-6 月
2.0 経 済
2.1.
2.1.1.
経済一般
サウジとの国境検問所の再開を協議
在サウジ・イラク大使館のアリ・ジャービル・アティ商務官は 4 月 5 日、記者会見で、
サウジとイラクとの間のアルアル検問所を再開させる可能性について、現在協議を行って
い る と 明 ら か に し た 。 こ れ に よ っ て 、 13.3 億 ド ル を 超 え な い 規 模 で あ る 両 国 間 の 貿 易 を 拡
大させたいと述べ、倍増を予測している旨語った。ヨルダンのような周辺国を通じた移動
と比較してコストを削減し、イラクの消費財への価格低下につながるだろうとしている。
イ ラ ク に は 13 カ 所 の 国 境 検 問 所 と 、 5 カ 所 の 空 路 の 検 問 所 、 5 カ 所 の 海 路 の 検 問 所 が あ
り、中でも重要なのが、シリアとのワリード及びラビーア、ヨルダンとのトリービール、
サウジとのアルアル、イランとのシャラーミジュとマンディリーヤ、トルコとのイブラー
ヒ ー ム ・ ハ リ ー ル で あ る 。( Sawt al-Iraq, 2012.04.05)
2.1.2.
小麦輸入量が増加見通し
イ ラ ク で は 北 部 の 干 ば つ の 影 響 で 今 年 の 小 麦 の 生 産 が 16%減 少 し 150 万 ト ン に な る と の
見 立 て か ら 、 輸 入 を 300 万 ト ン ま で 拡 大 す る 見 込 み で あ る 。 昨 年 の 生 産 は 178 万 ト ン だ っ
た が 、 今 年 は 150-160 万 ト ン と み ら れ て い る 。 ま た 、 KRG 農 業 水 資 源 省 は 、 今 年 の 小 麦 と
大 麦 の 生 産 量 は 、 昨 冬 の 降 雨 量 減 少 に よ り 、 前 年 比 20%低 下 し て い る と の こ と で あ る 。
イ ラ ク 国 内 で は 年 間 450 万 ト ン の 小 麦 と 125 万 ト ン の 米 が 消 費 さ れ て い る 。 た だ し 、 世
界 の 小 麦 生 産 量 は 十 分 あ る た め 、小 麦 価 格 は 高 騰 し て い な い と の こ と で あ る 。
( Bloomberg,
2012.05.28; AK News, 2012.06.03)
2.1.3.
失 業 率 は 16%
シ ュ ク リ 計 画 相 は 、 イ ラ ク の 失 業 率 は 約 16%、 貧 困 率 は 11%だ と 語 っ た 。 GDP が 伸 び 、
建 設 や サ ー ビ ス へ の 投 資 が 増 え た 結 果 、 失 業 率 も 貧 困 率 も 改 善 し て い る と 述 べ た 。( Iraq
Business News, 2012.06.06)
2.1.4.
KRGは 特 定 の 果 物 ・ 野 菜 を 輸 入 停 止
KRG 農 業 水 資 源 省 は 、食 糧 自 給 を 目 指 す た め 、桃 、イ チ ジ ク 、キ ュ ウ リ を 6 月 半 ば か ら
11 月 30 日 ま で 、 胡 椒 を 無 期 限 で 、 輸 入 停 止 に す る こ と を 決 定 し た 。 そ の 他 、 輸 入 禁 止 措
置に含まれるものは、カボチャ、トマト、豆、タマネギ、ブドウ、リンゴ、ジャガイモ、
カリフラワーなど。7 月からはひまわりの種、スイカ、ナスも含まれる。ひまわりの種は
恒 久 措 置 、ス イ カ は 7 月 末 ま で 、ナ ス は 10 月 半 ば ま で の 予 定 で あ る 。
( AK news, 2012.05.28,
2012.06.18)
2.1.5.
イ ラ ン と の 貿 易 額 は 97 億 ド ル
イ ラ ン 外 務 省 報 道 官 の Ramin Mehmanparast 氏 が 5 月 1 日 に 述 べ た と こ ろ に よ る と 、イ ラ
ン・イ ラ ク 間 の イ ラ ン 歴 前 年( 2012 年 3 月 19 日 ま で )の 貿 易 総 額 は 97 億 ド ル だ っ た 。
( Perss
TV, 2012.06.10)
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JIME 国別定期報告「イラク」2012 年 4-6 月
2.1.6.
規則違反の民間病院などを閉鎖
保 健 省 は 、保 健 規 則 に 違 反 し て い る と し て 、13 の 民 間 病 院 、4 カ 所 の 専 門 医 療 セ ン タ ー 、
26 カ 所 の ク リ ニ ッ ク 、 284 の 研 究 所 、 516 の ヘ ル ス セ ン タ ー を 閉 鎖 し た 。 同 省 は 、 さ ら に
規 則 違 反 の 病 院 等 の 閉 鎖 も 予 告 し て い る 。( AK News, 2012.06.17)
2.1.7.
中東協力センターがイラクに進出支援拠点
経 済 産 業 省 の 外 郭 団 体 、中 東 協 力 セ ン タ ー が バ グ ダ ー ド に イ ラ ク 代 表 事 務 所 を 開 設 し 、6
月 18 日 に 現 地 で 開 所 式 を 行 っ た 。 戦 後 復 興 を 進 め る イ ラ ク へ の 日 本 企 業 進 出 を 支 援 す る 。
代表事務所は、日本企業のビジネス再開に向け、イラクの投資、税制、通関などの情報提
供、イラク政府機関や企業との連携強化などを進める。式典に出席した中東協力センター
の香田忠維理事長は「イラク、日本企業間のビジネス情報の交換を促進し、両者の仲介役
を果たしたい。日本の投資機会拡大に向け便宜を図れるよう努力する」とあいさつした。
事 務 所 の 職 員 は イ ラ ク 人 だ が 、今 後 の 治 安 状 況 に よ っ て は 日 本 人 の 駐 在 も 検 討 す る 。当 面 、
中 東 協 力 セ ン タ ー 本 部 の イ ラ ク デ ス ク が 日 本 企 業 の 窓 口 と な る 。( 共 同 通 信 , 2012.06.19)
2.2.
2.2.1.
財政・金融
中銀がドル需要の高まりに懸念
イランとシリアへの制裁を受けて、イラクのドル需要が民間セクターの通常の需要の 2
倍 に 相 当 す る 4 億 ~ 4.5 億 ド ル に 増 加 し て い る こ と に 対 し て 、 カ ー シ ム 中 銀 副 総 裁 は 懸 念
を 表 明 し た 。 4 月 初 旬 か ら の 新 ル ー ル で は 、 ド ル の 商 業 バ イ ヤ ー は tax clearance certificate
と 、 6 月 30 日 以 降 は 輸 入 品 を 証 明 す る ペ ー パ ー を 出 さ な け れ ば な ら な い こ と に な る 。
シャビービ総裁は 4 月下旬、イラクのディナール相場が乱高下しているのはイラクの不
安定性と、イラン及びシリアの困難な状況ゆえだと語った。年初からドル需要が高まり、
$1=1320 デ ィ ナ ー ル と い う 4 年 ぶ り の ド ル 高 に な っ て お り 、閣 議 は 4 月 11 日 に 調 査 委 員 会
を 立 ち 上 げ て い る 。( Financial Times, 2012.04.02; MEES, 2012.04.23)
2.2.2.
中銀への政府介入を議会が批判
イ ラ ク 議 会 は 、内 閣 に 対 し て 金 融 政 策 に 介 入 し な い よ う 求 め る 書 簡 を 提 出 し た 。政 府 は 、
2011 年 1 月 に 、 中 銀 の よ う な 独 立 機 関 を 内 閣 に 従 属 さ せ る 判 決 を 司 法 機 関 か ら 得 て い る 。
ヌジャイフィ国会議長関係筋によると、政府が中銀の金融政策に関与しようとしているこ
とを受けて、議会は、金融政策は政府の仕事ではなく憲法に反して権力を及ぼすべきでは
ないとの書簡を送った。財務委員会のジャービル・ジャービリ議員は、政府が中銀に影響
力を及ぼそうとしたのはこれが初めてではないと語っている。ヌジャイフィ国会議長は 4
月 10 日 、 シ ャ ビ ー ビ 中 銀 総 裁 と 会 談 し て 憲 法 に 則 っ た 中 銀 の 独 立 を 支 持 す る 旨 確 認 し た 。
( Reuters, 2012.04.11)
2.2.3.
2012 年 KRG予 算 成 立 と デ モ
ク ル デ ィ ス タ ン 地 域 の 議 会 は 、 10 日 間 の 審 議 を 経 て 2012 年 度 予 算 を 可 決 し た 。 予 算 総
額 は 12.6 兆 ID( 108 億 ド ル )。 野 党 の 4 党 ( Gorran, the Islamic Union, Komal and Future)
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JIME 国別定期報告「イラク」2012 年 4-6 月
は 抗 議 の た め 議 場 を 退 出 し た 。 ゴ ラ ン の ア ド ナ ー ン ・ オ ス マ ン は 、 議 会 内 に KRG の 収 入
を 調 査 す る 委 員 会 を 形 成 す る こ と を 求 め て い る 、と 語 っ た 。予 算 は そ の 後 、バ ル ザ ー ニ KRG
大統領に承認された。
な お 、予 算 の 内 容 に 抗 議 す る た め 多 く の ジ ャ ー ナ リ ス ト ら が デ モ を 行 う 意 向 を 表 明 し 、6
月 28 日 に は 市 民 社 会 連 盟 に よ る デ モ が ス レ イ マ ニ ア 、ソ ラ ン 、ド ホ ー ク 、シ ュ ワ ン 、ラ ニ
ア 、カ ラ ル な ど で 行 わ れ た 。ス レ イ マ ニ ア の 議 会 の 外 に は 約 200 名 が 集 ま っ た 。KRG 内 務
省 は 、事 前 許 可 の な い デ モ は 認 め な い と の 発 表 を 25 日 に 行 い 、そ の 結 果 エ ル ビ ル で の デ モ
は見送られた。デモ隊の要求は、プロジェクトの収入を精査する委員会形成や大統領、首
相 、 国 会 議 長 等 に よ る 無 駄 使 い 廃 止 な ど 。( AK News, 2012.06.24, 2012.06.27; NINA,
2012.06.25; Rudaw, 2012.06.30)
2.3.
2.3.1.
産業
運輸・通信
2.3.1.1. ク ウ ェ ー ト の ジ ャ ジ ー ラ 航 空 が イ ラ ク 便 再 開 へ
ジ ャ ジ ー ラ 航 空 が ク ウ ェ ー ト 機 と し て 過 去 22 年 間 で 初 め て 、157 名 の 乗 客 を 乗 せ て イ ラ
ク の ナ ジ ャ フ に 4 月 17 日 に 降 り 立 っ た 。 今 後 週 4 便 で 運 行 す る 。 ジ ャ ジ ー ラ 航 空 は 2004
年 設 立 。同 じ く 週 4 便 の バ グ ダ ー ド 便 就 航 も 予 定 し て い る 。
( idha’ al-Iraq al-hurr, 2012.04.03;
al-Jazeera, 2012.04.18)
2.3.1.2. ボ ー イ ン グ 機 は 年 末 ま で に 受 け 取 り 予 定
運 輸 省 は 、今 年 12 月 に ボ ー イ ン グ 738、787 を 計 40 機 受 け 取 る 予 定 だ と 、カ リ ー ム・ヌ
ー リ 同 省 顧 問 が 明 ら か に し た 。 2008 年 に 購 入 契 約 を 行 っ た 。( IANS, 2012.04.12)
2.3.1.3. エ テ ィ ハ ド 航 空 が バ ス ラ 便 を 開 始
4 月 15 日 に UAE の エ テ ィ ハ ド 航 空 が バ ス ラ 便 を 就 航 さ せ た 。 週 4 便 で 運 行 す る 。 同 航
空 は す で に 2010 年 4 月 か ら バ グ ダ ー ド 便 、同 年 6 月 か ら エ ル ビ ル 便 を 就 航 さ せ て い る 。ア
ル シ ャ ド・タ ウ フ ィ ー ク 駐 UAE イ ラ ク 大 使 は 、3 都 市 へ の 就 航 は 両 国 間 の 貿 易 や 観 光 を 促
進 す る 重 要 な ス テ ッ プ だ と 歓 迎 し た 。( Khaleej Times, 2012.04.15)
2.3.1.4. ボ ン バ ル デ ィ ア の 契 約 打 ち 切 り
イラク航空はカナダのボンバルディア社との契約を打ち切って、ボ―イングかエアバス
を発注することを検討している。財務省は無利子で同航空に 3 億ドルを貸し付けた。同航
空 は 、 2008 年 の 契 約 に 基 づ き 、 ボ ン バ ル デ ィ ア 社 か ら 6 機 の CRJ900( 90 人 乗 り ) を 受 け
取 っ た が 、4 機 の 追 加 オ プ シ ョ ン は 行 使 し な い 意 向 で 、よ り 大 型 機 の 購 入 を 検 討 し て い る 。
( IANS, 2012.04.12; Bloomberg. 2012.05.03)
2.3.1.5. Q-tel が Asiacell の 権 益 を 買 い 増 し
カ タ ル の Q-tel は 、 イ ラ ク の 携 帯 電 話 事 業 者 Asiacell の 権 益 を 14.7 億 ド ル か け て 60%ま
で 引 き 上 げ る と 発 表 し た 。 現 在 は 30%だ が 、 ま ず 53.9%に 引 き 上 げ た 後 、 イ ラ ク 政 府 の 承
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認 を 待 っ て 60%ま で 買 い 増 す 予 定 で あ る 。 51%の 権 益 を も つ イ ラ ク の Farouk Group、 19%
を 持 つ MerchantBridge も Q-tel に 権 益 を 売 却 す る こ と に 合 意 し て い る 模 様 で あ る 。
Asiacell は 、 今 年 第 一 四 半 期 の Q-tel の 収 入 の 5 分 の 1 を 構 成 し て お り 、 Q-tel は 、 今 後
イ ラ ク で 高 速 ブ ロ ー ド バ ン ド や テ ー タ 通 信 が 拡 大 す る と 見 込 ん で い る 。 Asiacell の イ ラ ク
で の シ ェ ア は 38%で 、 Zain が 53%、 Korek が 9%と な っ て い る 。( Reuters, 2012.06.05)
2.3.1.6. Mahan Airline が エ ル ビ ル 便 を 就 航
イ ラ ン の Mahan Airline は 、初 の テ ヘ ラ ン・エ ル ビ ル 便 を 6 月 11 日 に 就 航 さ せ た 。同 社 の
マーケティング・ディレクターは、エルビルを貿易と観光の重要拠点と述べた。また、エ
ルビルのビジネスマンから、イランへの渡航需要が多くあるとしている。フライトは月曜
と 金 曜 の 週 2 便 の 予 定 で あ る 。( Iraq Business News, 2012.06.13)
2.3.1.7. カ タ ル 航 空 が エ ル ビ ル 便 ・ バ グ ダ ー ド 便 を 開 始
カ タ ル 航 空 は 5 月 23 日 か ら 週 4 便 の エ ル ビ ル 直 行 便 の 就 航 を 開 始 し た 。さ ら に 2 週 間 後
に は 、 週 4 便 の バ グ ダ ー ド 直 行 便 の 就 航 を 始 め た 。 ど ち ら の 都 市 に も エ ア バ ス A320 が 使
わ れ る 。バ グ ダ ー ド は カ タ ル 航 空 に と っ て 116 カ 所 目 の 就 航 都 市 と な る 。
(カタル航空ウェ
ブ サ イ ト , 2012.05.23; Iraq Business News. 2012.06.14)
2.3.1.8. エ ミ レ ー ツ 航 空 が エ ル ビ ル 便 を 8 月 か ら 就 航 予 定
エ ミ レ ー ツ 航 空 は 8 月 12 日 か ら ド バ イ・エ ル ビ ル 便 の 運 航 を 開 始 す る と 発 表 し た 。週 4
便で開始し、9 月 1 日から毎日就航の予定である。エミレーツ航空にとって、バグダード
とバスラに次ぐ 3 都市目のイラク便となる。サイード・マクトゥーム・エミレーツ航空社
長 は 、「 イ ラ ク へ の 就 航 を 初 め て 開 始 し て 以 来 、 サ ー ビ ス へ の 需 要 は 10 倍 に な っ た 」 と 語
っ て い る 。 (AK News, 2012.06.21; KRG プ レ ス リ リ ー ス , 2012.06.24)
2.3.2.
電力
2.3.2.1. UAE か ら 電 力 を 購 入
イ ラ ク 電 力 省 は 、 UAE の Oilfield Service か ら 1 日 あ た り 250MW の 電 力 を 2 年 間 輸 入 す
る 契 約 を 4 月 15 日 に 締 結 し た 。 期 間 は 延 長 も あ り 得 る 。 料 金 は 7.5 セ ン ト /kwh で 、 船 上
に据え付けられるタイプの発電所 2 機も含まれている。数週間以内に船はバスラ港に到着
し 、ナ シ ョ ナ ル グ リ ッ ド へ の 接 続 は 7 月 31 日 を 予 定 し て い る 。す で に バ ス ラ 港 に は 、ト ル
コ の 発 電 機 を 擁 し た 船 も 3 隻 停 泊 し て お り 、 270MW を 供 給 す る 。 イ ラ ク の ピ ー ク 需 要 は
1.5 万 MW だ が 、供 給 力 は 半 分 に も 満 た な い 状 況 が 続 い て い る 。
( Dow Jones, 2012.04.15; Gulf
News, 2012.04.16)
2.3.2.2. サ マ ー ワ 発 電 所 の 応 札 は 5 件
電 力 省 が 実 施 し た サ マ ー ワ に 建 設 さ れ る 発 電 所 の EPC 契 約 の 入 札 に 対 し て 、 5 件 の 応 札
が あ っ た 。 2010 年 に 初 の IPP と し て 実 施 す る 予 定 だ っ た が 、 2011 年 6 月 以 降 棚 上 げ さ れ 、
EPC に 切 り 替 え ら れ て い た 。応 札 企 業 は Gama( ト ル コ )、Metka( ギ リ シ ャ )、Daewoo( 韓
国 )、 Arab Contractors( エ ジ プ ト ) の 5 社 。 こ の ほ か 、 事 前 審 査 資 格 を 得 て い た が 、 応 札
は し な か っ た 企 業 5 社 が 、 Ansaldo Energia( イ タ リ ア )、 ABB( ス イ ス )、 Technimont( イ
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タ リ ア )、 日 揮 ( 日 本 )、 Samsung( 韓 国 ) で あ る 。( MEED, 2012.04.20-26)
2.3.2.3. オ ラ ス コ ム と 発 電 所 建 設 契 約 を 締 結
電 力 省 は 4 月 26 日 、 エ ジ プ ト の オ ラ ス コ ム と 、 ベ イ ジ に 1014M W の ガ ス 発 電 所 を 建 設
す る 契 約 を 3.63 億 ド ル で 締 結 し た こ と を 明 ら か に し た 。工 期 は 21 ヶ 月 で 、169MW の ガ ス
ユ ニ ッ ト 6 機 が 据 え 付 け ら れ る 。( Reuters, 2012.04.26)
2.3.2.4. 電 力 輸 入 予 算 を 拡 大
ダ ッ バ ー グ 政 府 報 道 官 は 、議 会 の 経 済 委 員 会 の 勧 告 に 基 づ き 、電 力 輸 入 予 算 を 17 億 ド ル
へ 拡 大 し た と 発 表 し た 。 ま た 、 イ ラ ン の Tavanir 社 に 対 し て 電 力 省 が 抱 え て い る 負 債 も こ
の 予 算 か ら 支 払 わ れ る 、 と 語 っ た 。( AK News, 2012.06.06)
2.3.2.5. イ ラ ン か ら の 電 力 輸 入 に つ い て
シャハリスターニ副首相はインタビューで、イランはいつもイラクに輸出した電力や燃
料の代金支払いについて不満を述べているが、それは単に彼らにドルで支払うことができ
ないために生じている問題だ、との認識を述べた。イランとの経済プロジェクトに関して
は、現在、目下この問題がイラク国内で話し合われており、新しいプロジェクトについて
の 協 議 は 行 わ れ て い な い 、 と 語 っ た 。( Iraq Oil Report, 2012.06.15)
2.3.2.6. 豊 田 通 商 が 24 カ 所 の 変 電 所 設 備 受 注
豊 田 通 商 は 6 月 末 、電 力 省 か ら イ ラ ク 全 土 に わ た る 24 カ 所 の 変 電 所 新 設 プ ロ ジ ェ ク ト を
受注した。日本政府がイラク復興支援の一環として供給する円借款プロジェクトで、総事
業 費 は 約 70 億 円 。 2012 年 9 月 か ら イ ラ ク 北 部 5 カ 所 、 バ グ ダ ー ト 6 カ 所 、 中 部 7 カ 所 、
南 部 6 カ 所 の 合 計 24 カ 所 の 変 電 所 を 新 設 す る 。現 地 で の 建 設 は 、大 手 電 気 機 械 器 具 メ ー カ
ー で あ る シ ー メ ン ス ・ ト ル コ ( Siemens Sanayi ve Ticaret A.S.、 本 社 : イ ス タ ン ブ ー ル ) が
請 け 負 い 、 2014 年 9 月 の 完 工 を 目 指 す 。( 豊 田 通 商 プ レ ス リ リ ー ス , 2012.06.28)
2.3.3.
工業・インフラ
2.3.3.1. ヒ ッ ラ の 住 宅 建 設 を エ ジ プ ト ・ イ ラ ク 企 業 が 受 注
エ ジ プ ト の Energy Petroleum Construction と 、イ ラ ク の Atlalat al-Furat が 。バ グ ダ ー ド 南
部 に 1500 戸 の 住 宅 を 建 設 す る 契 約 を 9500 万 ド ル で 受 注 し た 。 3 年 間 の 間 に ヒ ッ ラ 近 郊 に
Energy Petroleum Construction が 684 戸 ( 4400 万 ド ル ) を 、 Atlalat al-Furat が 816 戸 を 建 設
す る 。 政 府 は 2014 年 ま で に 中 低 所 得 者 向 け に 100 万 戸 の 住 宅 建 設 を 計 画 し て い る 。
( Bloomberg, 2012.04.13)
2.3.3.2. 韓 国 Hanwha グ ル ー プ が 77.5 億 ド ル の 住 宅 建 設 プ ロ ジ ェ ク ト を 受 注
韓 国 の Hanwha グ ル ー プ は 5 月 30 日 、 バ グ ダ ー ド 郊 外 に 10 万 戸 の 住 宅 を 建 設 す る プ ロ
ジ ェ ク ト を 80 億 ド ル で イ ラ ク 政 府 と 契 約 し た 。契 約 は 、バ グ ダ ー ド か ら 南 東 10km に 位 置
す る バ ス マ ヤ に 住 宅 及 び 道 路 建 設 、上 下 水 道 敷 設 な ど を 行 う 内 容 と な っ て い る 。80 億 ド ル
と い う 規 模 は 、 韓 国 の 海 外 に お け る 建 設 プ ロ ジ ェ ク ト の 規 模 ( 700 億 ド ル ) の 1 割 以 上 に
相 当 す る 。( AFP, 2012.05.24; The Korea Herald, 2012.05.31)
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JIME 国別定期報告「イラク」2012 年 4-6 月
2.3.3.3. UAE 企 業 が 建 設 プ ロ ジ ェ ク ト を 受 注
UAE の Tech Group 副 社 長 の ガ リ ブ ・ カ マ ル ・ ジ ャ ー ビ ル 氏 は 、 同 社 傘 下 の Construction
Tech 社 が 、4700 万 ド ル の 建 設 契 約 を 受 注 し た と 発 表 し た 。第 一 フ ェ ー ズ と し て イ ラ ク 中 央
銀 行 の 外 観 改 修 、 エ レ ベ ー タ 修 繕 、 IT シ ス テ ム の ア ッ プ デ ー ト な ど の 契 約 を 4500 万 ド ル
で 、 第 二 フ ェ ー ズ と し て R/D Shell 社 の メ イ ン ・ オ フ ィ ス ・ ビ ル デ ィ ン グ の 建 設 を 215 万
ド ル で 行 う 。( MENAFN, 2012.05.20)
2.3.3.4. イ ラ ン 企 業 の 下 水 道 プ ロ ジ ェ ク ト を 閣 議 承 認
イ ラ ク 政 府 は 、イ ラ ン の ICG 社 に よ る キ ル ク ー ク 下 水 道 復 興 事 業 を 承 認 し た 。プ ロ ジ ェ
ク ト 金 額 は 1.17 億 ド ル で 、 工 期 は 3 年 半 。( Bloobmberg, 2012.06.03)
2.3.3.5. UAE 企 業 が 住 宅 建 設 プ ロ ジ ェ ク ト を 受 注
UAE の IIAJ 社 は デ ィ ー ワ ー ニ ー ヤ に 住 宅 1083 戸 を 2 億 4500 万 ド ル で 建 設 す る こ と に
同 意 し た 。工 期 は 2 年 。同 県 に は 10 万 戸 の 住 宅 需 要 が あ り 、イ ラ ク 政 府 は 住 宅 不 足 に 対 応
す る た め に 2016 年 ま で に 40 億 ド ル を 費 や す 予 定 で あ る 。( Broomberg, 2012.06.29)
2.4.
2.4.1.
石油・ガス
生産状況
2.4.1.1. 3 月 、 4 月 の 生 産 量 は 過 去 最 高
イ ラ ク 石 油 省 の 発 表 に よ る と 、 3 月 の 原 油 生 産 量 は 269.1 万 b/d、 輸 出 量 は 231.7 万 b/d、
う ち 南 部 輸 出 は 191.8 万 b/d、 北 部 輸 出 は 39.9 万 b/d だ っ た 。 こ の 輸 出 量 に 関 し て 、 4 月 1
日 に ジ ハ ー ド 石 油 省 報 道 官 は 、1989 年 以 来 み ら れ な か っ た レ ベ ル に 達 し た と 語 っ た 。輸 出
収 入 は 84.75 億 ド ル だ っ た 。 2 月 は 悪 天 候 と パ イ プ ラ イ ン へ の サ ボ タ ー ジ ュ で 低 い 輸 出 量
に 留 ま っ て い た 。 MEES は 、 SPM の 稼 働 が 開 始 し 、 南 部 輸 出 に パ ラ ダ イ ム ・ シ フ ト が 起 き
ていると評した。
4 月 も 引 き 続 き 生 産 ・ 輸 出 量 が 拡 大 し 、 生 産 量 は 294.2 万 b/d( 南 部 222.4 万 b/d、 北 部
71.8 万 b/d)、 輸 出 量 は 250.8 万 b/d( 南 部 211.5 万 b/d、 北 部 39.3 万 b/d) と な っ た 。 こ れ
に よ っ て 、イ ラ ク は OPEC 内 で 、サ ウ ジ に 次 ぐ 輸 出 国 と な っ た 。
( 石 油 省 ウ ェ ブ サ イ ト ; AFP,
2012.04.01 ; MEES, 2012.04.09; Platts Oilgram News, 2012.05.02)
2.4.1.2. 5 月 は 輸 出 ・ 生 産 量 と も に 減
石 油 省 は 6 月 3 日 、5 月 の 輸 出 量 が 前 月 比 2.2%( 5.6 万 b/d)減 の 245.2 万 b/d に な っ た と
発 表 し た 。5 月 の 石 油 油 収 入 は 80 億 ド ル だ っ た 。国 内 の 製 油 所 が メ ン テ ナ ン ス か ら 再 開 し
たことで、国内消費量が増え、輸出が減るであろうことをルアイビ石油相が事前に明らか
にしていた。
南 部 輸 出 は 208.6 万 b/d。 SPM2 機 と 、 貯 油 庫 と ポ ン ピ ン グ ・ ハ ブ を 結 ぶ 主 要 パ イ プ ラ イ
ン が 完 成 し た こ と で 、 輸 出 能 力 が 額 面 で 180 万 b/d 増 加 し 、 現 在 の 維 持 可 能 な 輸 出 能 力 と
し て 約 80 万 b/d あ る こ と に な っ た 。こ れ に よ り 、南 部 の 生 産 の 障 害 は な く な り 、こ れ ま で
NOC 経 由 で 輸 出 さ れ て い た ア フ ダ ブ 油 田 の 12 万 b/d の 生 産 も 吸 収 で き る よ う に な っ た( た
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だ し こ れ ま で も 統 計 上 は SOC 生 産 量 と し て カ ウ ン ト )。
北 部 輸 出 は 2.7 万 b/d 減 の 36.6 万 b/d。 ト ル コ の ジ ェ イ ハ ン 港 か ら の 輸 出 は 35.9 万 b/d
で 、 ヨ ル ダ ン 向 け が 7000b/d。
生 産 量 に つ い て は 、 石 油 省 が 6 月 26 日 に 明 ら か に し た デ ー タ に よ る と 291.5 万 b/d で 、
前 月 比 2.7 万 b/d 減 少 し た 。 う ち 南 部 生 産 が 218.9 万 b/d だ っ た 。 た だ し 、 Total が ハ ル フ
ァ ヤ 油 田 の 生 産 を 開 始 し て お り 、 生 産 減 少 は 一 時 的 と 見 ら れ て い る 。 国 内 需 要 は 合 計 63.5
万 b/d と 、 4 月 の 54.3 万 b/d よ り 増 加 し て お り 、 輸 出 減 少 の 一 因 と な っ て い る 。( AP,
2012.06.03; Platts Oilgram News, 2012.06.05, 2012.06.28)
2.4.1.3. ト ル コ の パ イ プ ラ イ ン 爆 破
トルコのジェイハン港につながる原油パイプライン 2 本のうち 1 本で、4 月 5 日に大き
な爆破事件があり、送油が止まった。イラク国境に近いトルコのシルナク県で、3 カ所同
時 に 爆 破 が 起 こ っ た 。NOC は 、当 面 の 北 部 輸 出 は ジ ェ イ ハ ン 港 の 貯 油 庫 の 原 油 で 対 応 で き
る と 明 ら か に し 、12 時 間 後 に は 代 替 パ イ プ ラ イ ン に よ る 送 油 が 再 開 さ れ た 。老 朽 化 が 激 し
いため、通常は 1 本を使用し、1 本がバックアップとなっている。イラク側では久しくパ
イ プ ラ イ ン へ の 攻 撃 は 起 こ っ て お ら ず 、前 回 2 月 6 日 の 被 害 も ト ル コ 国 内 だ っ た 。
( Reuters,
2012.04.05; Platts Oilgram News, 2012.04.09)
2.4.1.4. 燃 料 油 が バ ス ラ か ら ク ル デ ィ ス タ ン 地 域 経 由 で 密 輸 か
電 力 省 の 監 査 官 に よ る と 、 バ ス ラ の 海 上 発 電 所 か ら 1 ヶ 月 あ た り 500 万 ド ル の 燃 料 油 が
盗まれてクルディスタン地域にトラック輸送されているという。その後の足取りはつかめ
ていない。アラ・モヒエッディーン監査官によると、あるイラク企業が、発電所の重油を
盗み、タンカートラックに乗せ、ライセンスを偽造してクルディスタン地域へ輸送してい
る と の こ と 。 3 月 末 に 事 前 予 告 無 し の 査 察 を 行 い 、 密 輸 を 確 認 し た と し て い る 。( Iraq Oil
Report, 2012.04.16)
2.4.1.5. 2 番 目 の SPM が 稼 働 開 始
4 月 か ら バ ス ラ 港 沖 に 2 機 目 の SPM が 稼 働 を 開 始 し た 。4 月 19 日 に 最 初 の タ ン カ ー が 接
岸し、翌日、原油の積み出しが行われた。陸上のポンピング施設が不十分なため、先月開
始 さ れ た 1 機 目 も 今 回 の 2 機 目 も 、 現 在 は ま だ 90 万 b/d の 能 力 が フ ル 稼 働 し て い な い 。
( Platts Oilgram News, 2012.04.23)
2.4.1.6. 6 月 の バ ス ラ 原 油 価 格 を 変 更
SOMO は 5 月 11 日 、米 国 、欧 州 向 け の バ ス ラ ラ イ ト 原 油 を 値 上 げ す る と 同 時 に 、ア ジ ア
向 け を 値 下 げ す る と 発 表 し た 。 米 国 向 け は $0.10 値 上 げ し て ASCI マ イ ナ ス $1.80、 欧 州 向
け は $1.60 値 上 げ し て 、 Dated Brent マ イ ナ ス $4.50 、 ア ジ ア 向 け は $1.60 値 下 げ し て
Oman/Dubai マ イ ナ ス $0.25 と な る 。( Dow Jones, 2012.05.11)
2.4.1.7. 2015 年 ま で に 450 万 b/d の 生 産 能 力 を 目 指 す
ガ ド バ ー ン 首 相 顧 問 は 、イ ラ ク の 生 産 能 力 を 現 行 の 300 万 b/d か ら 年 末 ま で に 340 万 b/d
へ 、 更 に 翌 年 50 万 b/d、 翌 々 年 70 万 b/d 引 き 上 げ て 2015 年 ま で に 450 万 b/d の 生 産 能 力
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を 確 保 し た い と 述 べ た 。 ま た 、 今 後 15 年 間 で 石 油 産 業 の 上 流 ・ 中 流 部 門 に 1300 億 ド ル を
投資する予定だと語った。
外 資 と の 契 約 で は 2017 年 ま で に 1200 万 b/d の 生 産 能 力 を 達 成 す る こ と に な っ て い る が 、
埋蔵量の急減と収入最大化のためにこの目標は引き下げられる見通しである。ガドバーン
顧 問 は 、 2017 年 の 目 標 は 確 実 に 600 万 b/d 以 上 に な る と し て い る 。 シ ャ ハ リ ス タ ー ニ 副 首
相 は 4 月 に 、 新 目 標 は 1000 万 b/d 前 後 と 述 べ 、 ル ア イ ビ 石 油 相 は 昨 年 、 600-800 万 b/d と
い う 数 字 を 示 唆 し て い た 。( Petroleum Argus Weekly, 2012.06.15)
2.4.2.
IOCsの 動 向 ・ 開 発 状 況
2.4.2.1. ExxonMobil を 南 部 水 圧 入 プ ロ ジ ェ ク ト の リ ー ダ ー か ら 排 除
シ ャ ハ リ ス タ ー ニ 副 首 相 は 4 月 18 日 、 ExxonMobil は 他 の IOC と 同 様 、 南 部 水 圧 入 プ ロ
ジェクトの一部ではあるが、もはやそのリーダーではなくなったと明言した。同社が行っ
た予備事業はすでに石油省に引き渡されており、石油省は国際企業をリーダーとして雇う
としている。ただし、企業名は明らかにしていない。
ExxonMobil が KRG の 油 田 開 発 に 参 入 し た 結 果 、2012 年 2 月 末 時 点 で す で に リ ー ダ ー 的
役 割 を 終 え て い た と 理 解 さ れ て い る 。 初 期 調 査 は ス ト ッ プ し 、 CSSF ( Common Seawater
Supply Facility)の 2 つ の 主 要 パ ッ ケ ー ジ( 水 処 理 プ ラ ン ト 、120km の パ イ プ ラ イ ン )の デ
ザ イ ン に 関 し て 契 約 は ま だ 結 ば れ て い な い 。( MEED, 2012.04.13-19; Platts Oilgram News,
2012.04.19)
2.4.2.2. Lukoil が 西 ク ル ナ 油 田 の 生 産 開 始
Lukoil は 4 月 25 日 に 、来 週 か ら 西 ク ル ナ 油 田 の 生 産 を 開 始 予 定 だ と 発 表 し た 。Alekperov
社 長 は 、2013 年 末 ま で に 15 万 b/d の 生 産 量 を 予 測 し て い る と 語 っ た 。
( Reuters, 2012.04.25)
2.4.2.3. Statoil が 西 ク ル ナ 油 田 か ら 正 式 に 撤 退
Statoil は 5 月 末 、正 式 に 18.75%の 西 ク ル ナ 油 田 の 権 益 を パ ー ト ナ ー の Lukoil に 移 転 し た
こ と を 発 表 し た 。 こ れ に よ り 、 Lukoil は 75%の 権 益 を 保 持 す る 。
Lukoil overseas の Andrei Kuzyaev 社 長 は 、 西 ク ル ナ 油 田 の 権 益 を 30%ま で 他 社 、 特 に ア
ジ ア 企 業 に 売 却 す る こ と を 検 討 し て い る 、 と 6 月 22 日 に 明 ら か に し た 。
な お 、前 日 に は Alekporov Lukoil 社 長 が 、同 じ く ロ シ ア の Rosneft へ の 西 ア フ リ カ 及 び 西
ク ル ナ 油 田 の 権 益 の 売 却 を 検 討 し て い る こ と を 明 ら か に し て い た 。 Rosneft の 情 報 筋 は 、
ExxonMobil と 交 渉 が 行 わ れ て い る こ と を 認 め た が 、ま だ 何 も 決 ま っ て は い な い と し て い る 。
( UPI, 2012.05.30; Reuters, 2012.06.22; Platts Oilgram News; 2012.06.25)
2.4.2.4. R/D Shell と 生 産 量 削 減 に つ い て 協 議
R/D Shell が イ ラ ク 政 府 と 、マ ジ ュ ヌ ー ン 油 田 の 生 産 目 標 に つ い て 協 議 を 行 っ て い る こ と
が 石 油 省 の 書 類 か ら 明 ら か に な っ た 。 そ れ に よ る と 、 同 油 田 の 生 産 目 標 を 180 万 b/d か ら
100 万 b/d に 下 げ る こ と で 交 渉 が 行 わ れ て い る 模 様 で あ る 。ま た 、3 月 15 日 に Shell 幹 部 と
石 油 省 職 員 が 会 合 を 開 き 、 2017 年 か ら 開 始 予 定 の プ ラ ト ー 生 産 量 維 持 期 間 を 7 年 か ら 20
年に延長することも話し合われていた。
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イ ラ ク に と っ て は 、 既 存 の 契 約 で は 、 埋 蔵 量 の 50%以 上 が 20 年 で 使 い 尽 く さ れ て し ま
う 恐 れ が あ る こ と や 、1800 億 ド ル の 投 資 コ ス ト が 必 要 と な る こ と か ら 、生 産 量 削 減 は 理 に
かなっている、と石油省関係者は見ている。
R/D Shell の 上 級 副 社 長 は 5 月 半 ば 、イ ラ ク 政 府 は 2017 年 ま で に 1200 万 b/d よ り も 600-700
万 b/d の 生 産 能 力 を 得 る 方 が 現 実 的 だ と 認 識 し て い る 、 と 述 べ た 。 多 く の 専 門 家 は 輸 出 ボ
ト ル ネ ッ ク を 勘 案 す る と 600-700 万 b/d が 現 実 的 な 生 産 目 標 と な る だ ろ う と 見 て い る 。 イ
ラ ク 政 府 は 年 末 ま で に 新 生 産 目 標 を 発 表 す る 予 定 で あ る 。( Reuters, 2012.05.08; Petroleum
Argus Weekly, 2012.05.18; PIW, 2012.06.04)
2.4.2.5. Total は ハ ル フ ァ ヤ 油 田 か ら の 生 産 を 開 始
Total は 、 CNPC 及 び Petronas と 開 発 を 進 め て い る ハ ル フ ァ ヤ 油 田 に つ い て 、 6 月 末 ま で
に 輸 出 を 開 始 す る こ と を 期 待 し て い る 。生 産 は 6 月 10 日 に 開 始 し た が 、パ イ プ ラ イ ン の テ
ス ト が 終 わ っ て お ら ず 、輸 出 に は 至 っ て い な い 。生 産 量 も 近 々 、現 在 の 6 万 b/d か ら 10 万
b/d へ 拡 大 見 通 し で あ る 。
一 方 、Total は 現 在 の サ ー ビ ス 契 約 に よ る 収 益 は 同 社 の 基 準 を 下 回 っ て い る と し て 不 満 を
表明しており、もし将来の入札に参加する際には石油省に条件の改善を求めたいとしてい
る 。( Platts Oilgram News, 2012.06.18)
2.4.2.6. 日 立 と 住 商 、 イ ラ ク に 油 田 関 連 設 備
日立製作所は住友商事と組み、イラクで原油増産に役立つ設備の建設を始める。原油に
混じる水を採掘現場で分離する技術で、水は油田に注入し高圧で原油を押し出す。イラク
国営石油会社と試験機納入で合意、来年にも受注を目指す。日立プラントは装置とシステ
ム の 設 計 や 運 転 、住 商 は 市 場 調 査 や 交 渉 を 手 が け る 。10 年 以 内 に イ ラ ク で 100 億 円 の 受 注
を 目 指 す 。( 日 本 経 済 新 聞 電 子 版 ニ ュ ー ス , 2012.06.14)
2.4.3.
エネルギー政策
2.4.3.1. 第 四 次 入 札 の 事 前 審 査 通 過 企 業 は 47 社
石 油 省 PCLD は Syrian General Oil Corporation が 第 四 次 入 札 の 参 加 資 格 を 取 得 し た と 4
月 4 日 に 発 表 し た 。欧 米 は 、同 社 を 含 む シ リ ア の エ ネ ル ギ ー 企 業 5 社 に 制 裁 を 科 し て お り 、
シ リ ア 原 油 ・ 製 品 の 輸 入 禁 止 措 置 も 講 じ て い る 。 サ バ ー ハ ・ ア ブ ド ゥ ル カ ー デ ィ ム PCLD
副局長は、企業が他国によって制裁を受けていても、それは我々には関連しない政治の話
だと語った。
4 月 20 日 に 明 ら か に さ れ た フ ァ イ ナ ル リ ス ト に よ る と 、第 四 次 入 札 参 加 資 格 取 得 企 業 数
は 47 社 。ア ミ ー デ ィ PCLD 局 長 は 4 月 18 日 の 時 点 で は 、ExxonMobil の 件 は 未 定 だ と 話 し
て い た が 、 フ ァ イ ナ ル リ ス ト か ら 外 れ た 。( Dow Jones, 2012.04.05; Iraq Oil Report,
2012.04.19)
2.4.3.2. 第 四 次 入 札 を 実 施 、 落 札 は 3 鉱 区
第 四 次 入 札 は 、12 の 鉱 区 を 対 象 に 行 わ れ た 。第 1~ 6、及 び 第 8 鉱 区 は ガ ス 埋 蔵 量 が 見 込
ま れ て お り 、 第 7 及 び 第 9~ 12 鉱 区 は 原 油 の 埋 蔵 量 が 見 込 ま れ て い る 。 契 約 形 態 は 過 去 3
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回と同様に、生産原油・ガスの 1 バーレル(相当)につき一定の報酬が支払われるという
サービス契約で、入札ではこの報酬額が基準となる。
今回は探鉱契約であり、過去の入札と比較してよりハイリスクと考えられる一方で、入
札の条件は過去の入札とほとんど変わらず、リスクに見合わないという批判が繰り返され
て き た 。 事 前 審 査 を 通 過 し た 企 業 は 合 計 47 社 で あ っ た が 、 入 札 参 加 費 を 支 払 っ た 企 業 は
39 社 、 そ し て 実 際 に 応 札 し た 企 業 は 、 11 社 に 留 ま っ た 。
入 札 の 結 果 は 、12 鉱 区 の う ち 8 鉱 区 に は 全 く 応 札 が な く 、残 り 4 鉱 区 に 7 つ の コ ン ソ ー
シアムが応札し、そのうち 3 鉱区が落札されるというものであった。
落 札 さ れ た 鉱 区 の う ち 、 第 8 鉱 区 に つ い て は 、 日 本 の 石 油 資 源 開 発 ( 80%) と 伊 藤 忠 商
事 ( 20%) の コ ン ソ ー シ ア ム が 10.57 ド ル / バ ー レ ル で 応 札 し た が 、 Pakistan Petroleum が
単 独 で 5.38 ド ル の 札 を 入 れ た た め 、 落 札 に は 至 ら な か っ た 。 し か し 、 10.57 ド ル で も 石 油
省 が 設 定 し て い た 上 限 を 下 回 っ て お り 、Pakistan Petroleum の 応 札 額 の 経 済 性 や 実 現 可 能 性
に対しては専門家からも疑問の声が挙がっている。
第 9 鉱 区 は 、 唯 一 の 応 札 企 業 で あ っ た Kuwait Energy( 40%)、 TPAO( 30%)、 Dragon Oil
( 30%) の 中 東 企 業 コ ン ソ ー シ ア ム が 6.24 ド ル で 落 札 し た 。
第 10 鉱 区 は Lukoil( 80%)と 国 際 石 油 開 発 帝 石( 20%)が 5.99 ド ル で 落 札 し た 。日 本 企
業 は 第 2 次 入 札 で 石 油 資 源 開 発 が ガ ッ ラ ー フ 油 田 に 参 入 し て お り( オ ペ レ ー タ は Petronas)、
今回が 2 件目の日本企業のエネルギー上流開発への参入となる。同鉱区については、デー
タ パ ッ ケ ー ジ を 購 入 し た 企 業 が 36 社 に 上 っ て お り 、最 も 注 目 度 の 高 い 鉱 区 だ っ た と 言 え る 。
入 札 に は Petrovietnam 率 い る コ ン ソ ー シ ア ム と 、 Kuwait Energy・ Dragon Oil の コ ン ソ ー シ
アムも応札し、第四次入札では唯一、3 コンソーシアムが争う構図となった。
第 12 鉱 区 は 、 Premier Oil( 40%)、 Petrovietnam( 30%)、 Bashneft( 30%) の コ ン ソ ー シ
ア ム が 9.8 ド ル で 応 札 し た が 、こ れ は 石 油 省 が 設 定 し た 上 限 値 5 ド ル を 上 回 っ て い た た め 、
落札には至らなかった。
( 吉 岡 明 子「 レ ポ ー ト:イ ラ ク で 第 四 次 油・ガ ス 田 入 札 が 実 施 」
『中
東 動 向 分 析 』 2012 年 6 月 号 )
2.4.3.3. 第 四 次 入 札 で 第 12 鉱 区 が 追 加 落 札
入 札 終 了 後 の 交 渉 を 通 じ て 、 第 12 鉱 区 に 応 札 し て い た Bashneft が 石 油 省 の 上 限 $5/b の
報 酬 額 を 受 け 入 れ る こ と を 表 明 し 、同 鉱 区 の 落 札 に 至 っ た 。当 初 は Premier Oil、Petrovietnam、
Bashnef か ら な る コ ン ソ ー シ ア ム だ っ た が 、 Bashneft が 単 独 で 落 札 し た 。 (Iraq Oil Report,
2012.06.29)
2.4.3.4. 第 五 次 入 札 の 可 能 性
イ ラ ク は ガ ス 開 発 に 特 化 し て 2013 年 初 頭 に 入 札 を 行 う 意 向 だ と 、ガ ド バ ー ン 首 相 顧 問 が
明 ら か に し た 。条 件 と 鉱 区 が 良 け れ ば 、第 五 次 入 札 は 第 四 次 よ り 成 功 す る だ ろ う と 述 べ た 。
ただし、過去 4 回の入札が前例となることを踏まえれば、第五次入札が生産分与契約にな
る 可 能 性 は「 極 め て 低 い 」と し て い る 。
「 大 事 な の は 名 前 で は な く 詳 細 で あ り 、探 鉱 開 発 契
約 と 呼 ぶ も の を よ り 良 い 条 件 で 提 供 で き る だ ろ う 」 と 述 べ た 。( World Petroleum Argus,
2012.06.22)
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2.4.3.5. 東 バ グ ダ ー ド 油 田 を 独 自 開 発
ジ ハ ー ド 石 油 省 報 道 官 は 、第 二 次 油 田 開 発 入 札 で 外 資 か ら の 入 札 が な か っ た 東 バ グ ダ ー ド
油田について、独自に開発を進めていると明らかにした。イラク掘削会社が 6 本、ヨルダ
ン の 企 業 が 7 本 の 油 井 を 掘 削 す る 契 約 を 結 ん だ と の こ と で 、 現 在 の 生 産 能 力 は 1 万 b/d と
の こ と で あ る 。( Aswat al-Iraq, 2012.04.12)
2.4.3.6. 製 油 所 建 設 計 画
シ ャ ハ リ ス タ ー ニ 副 首 相 は 4 月 18 日 、も し 海 外 か ら の 投 資 が 得 ら れ な い な ら ば 、自 力 で
製 油 所 を 建 設 す る と 語 っ た 。現 在 4 つ の 主 要 製 油 所 計 画 が あ り( カ ル バ ラ 製 油 所 14 万 b/d、
ミ サ ン 製 油 所 15 万 b/d、 キ ル ク ー ク 製 油 所 15 万 b/d、 ナ ー ス ィ リ ー ヤ 製 油 所 30 万 b/d)、
こ れ ら が 全 体 で 、現 行 能 力 80 万 b/d に 約 75 万 b/d を プ ラ ス す る こ と に な る 。ま た 、5 件 目
としてナジュマ油田、カイヤラ油田に近いニナワ製油所を建設する可能性も検討されてい
る。
シ ャ ハ リ ス タ ー ニ 副 首 相 に よ る と 、製 油 所 稼 働 率 は 70%で 、コ ス ト は $7/b と い う 非 効 率
性 ゆ え に 、 ガ ソ リ ン 国 内 需 要 の 60%し か 満 た さ せ て い な い と い う 。 2020 年 ま で に 150 万
b/d の 精 製 能 力 を 達 成 す る た め 、 5 カ 所 の 小 規 模 製 油 所 建 設 や 老 朽 設 備 の リ ハ ビ リ も 行 っ
て い く と し て い る 。( Platts Oilgram News, 2012.04.19)
2.4.3.7. 東 洋 エ ン ジ ニ ア リ ン グ が SOC と 技 術 サ ー ビ ス 契 約 を 締 結
東 洋 エ ン ジ ニ ア リ ン グ は SOC と 技 術 提 携 の 契 約 を 締 結 し た 。東 洋 エ ン ジ は 欧 米 の メ ジ ャ
ー(国際石油資本)などとの窓口となり、事業化調査を含む開発計画の立案や入札業務な
ど を 支 援 す る 。SOC が 管 轄 す る 全 て の 油 田 及 び 関 連 設 備 が 対 象 と な る 。初 期 段 階 の 設 計 や
建 設 、 改 修 全 般 の 立 案 に つ い て 必 要 な 技 術 や ノ ウ ハ ウ な ど を 供 与 す る 。 契 約 期 間 は 2012
年から 9 年間。油田開発にとどまらずパイプラインや港湾施設の整備の立案なども支援す
る。事業化検討や計画立案、入札準備や実施など広範囲にわたる業務を、エンジニアリン
グ会社が客先と一体になって行う「包括技術サービス契約」の締結は、イラク国営企業で
は 初 の 試 み で あ る 。( 日 本 経 済 新 聞 , 東 洋 エ ン ジ ニ ア リ ン グ 社 プ レ ス リ リ ー ス , 2012.04.25)
2.4.3.8. ク ル デ ィ ス タ ン 地 域 へ の 経 済 封 鎖 を 検 討
KRG の 原 油 輸 出 停 止 措 置 を 受 け て 、 シ ャ ハ リ ス タ ー ニ 副 首 相 は 5 月 21 日 、 同 日 か ら ク
ルディスタン地域への石油製品の供給を止める経済封鎖を行うとしていたが、タラバーニ
大 統 領 の 要 請 を 受 け て 1 ヶ 月 延 長 す る こ と を 決 め た 。 ハ ウ ラ ミ KRG 天 然 資 源 相 は 、 す で
に 連 邦 政 府 が 経 済 封 鎖 を 行 っ て 製 品 供 給 を 制 限 し て い る と 批 判 し て い る 。す で に KRG は 、
1 ヶ月以内に燃料油を軽油に変えるバータ取引をトルコと結ぶアレンジを行っている。
KRG の 精 製 能 力 は 7 万 b/d で 、テ ィ ー ポ ッ ト と 呼 ば れ る 小 規 模 プ ラ ン ト の 能 力 合 計 が 7 万
b/d あ る 。し か し 、ガ ソ リ ン 、デ ィ ー ゼ ル 、ケ ロ シ ン な ど が 不 足 し て い る 。
( Petroleum Argus
Weekly, 2012.05.25)
2.4.3.9. OPEC 生 産 枠 議 論 に 入 る の は 2 年 後 と の 認 識
ガ ド バ ー ン 首 相 顧 問 は イ ラ ク が OPEC 内 の 生 産 調 整 に 関 す る 議 論 を 必 要 と す る レ ベ ル に
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達 す る ま で あ と 2 年 は か か る と の 見 通 し を 明 ら か に し た 。OPEC は 、昨 年 12 月 に 生 産 量 を
全 体 で 3000 万 b/d と し 、 加 盟 12 ヶ 国 の 各 国 の 生 産 割 当 を 決 め ず 、 セ ン シ テ ィ ブ な 問 題 の
議 論 を 避 け て き た 。 ガ ド バ ー ン 首 相 顧 問 は 「 こ の 問 題 は 、 OPEC 内 で す ぐ に 不 安 定 と な る
要 素 で は な い 。 な ぜ な ら 、 エ ネ ル ギ ー 生 産 が 400 万 b/d を 超 え る ま で に 依 然 と し て 2 年 が
あ る か ら だ 」 と 述 べ た 。 イ ラ ク が 最 後 に 割 り 当 て ら れ た の は 1990 年 7 月 の 314 万 b/d で 、
イ ラ ン と 同 水 準 だ っ た 。( al-Mubasher, 2012.06.20)
2.4.4.
クルディスタン地域
2.4.4.1. KRG が 輸 出 停 止
KRG は 4 月 1 日 、
「生産会社との協議の結果、
( 天 然 資 源 )省 は 輸 出 を 停 止 す る こ と を 決
定した」と発表した。
ハ ウ ラ ミ KRG 石 油 相 は 5 月 半 ば 、 生 産 能 力 30 万 b/d に 対 し て 、 10 万 b/d を 生 産 し て ほ
とんどが国内で精製され消費されているとして、残りについては油井を閉鎖している語っ
て い る 。産 業 筋 に よ る と 、DNO は タ ウ ケ 油 田 の 生 産 量 を 能 力 6-6.5 万 b/d に 対 し て 3 万 b/d
程 度 ま で 縮 小 し 、 Genel Energy は タ ク タ ク 油 田 の 生 産 量 を 8.5 万 b/d の 能 力 に 対 し て 5-.5
万 b/d ま で 削 減 し て い る 。 Kar グ ル ー プ が 開 発 す る フ ル マ ラ 油 田 に つ い て は 、 通 常 は 6.5-7
万 b/d の 生 産 量 で 4 万 b/d が エ ル ビ ル の 製 油 所 へ 、 残 り が 輸 出 に ま わ さ れ て い る が 、 現 状
は明らかではない。
( AFP, 2012.04.01; Bloomberg, 2012.04.02; PIW, 2012.04.16; Platts Oilgram
News, 2012.05.11)
2.4.4.2. KRG の 輸 出 合 意 及 び そ の 停 止 に 至 る 経 緯
輸 出 停 止 後 、双 方 が 2011 年 1 月 の 合 意 違 反 だ と 非 難 し 合 っ て い る 。合 意 文 書 と イ ン タ ビ
ュ ー か ら す る と 、KRG は 合 意 し た 量 を 輸 出 す る 責 任 を 果 た し 、コ ス ト に つ い て の 監 査 も 提
出 し た 。 KRG が 輸 出 を 止 め た の は 、 連 邦 政 府 が 支 払 い を 止 め た 後 で あ る 。 一 方 で KRG も
そ の 年 の 後 半 、 Hess、 Repsol、 ExxonMobil な ど と の 議 論 を 呼 ぶ 交 渉 を 続 け て い た 。 外 資 と
の 契 約 自 体 は 合 意 へ の 違 反 で は な い が 、信 頼 醸 成 を 損 な っ た 。さ ら に は 、監 査 機 関 (BSA: the
Board of Supreme Audit)の ア ブ ド ゥ ル バ シ ィ ト・ト ゥ ル キ 局 長 が 厳 し い 監 査 を 行 っ た こ と も
両政府の想定外だった。
2010 年 4 月 の 合 意 で は 、 タ ウ ケ と タ ク タ ク 油 田 か ら 8.5 万 b/d を 輸 出 し 、 中 央 政 府 は コ
ス ト と し て 半 額 を 支 払 う 内 容 だ っ た 。当 時 の コ ス ト は 合 計 14 億 ド ル 。翌 月 、閣 議 承 認 さ れ
たが、支払い方法を巡って交渉は決裂した。
ル ア イ ビ ・ ハ ウ ラ ミ 会 談 が 2010 年 1 月 18 日 、3 月 3 日 、4 月 11-12 日 に 行 わ れ 、第 二 次
マーリキ政権発足後、クルド支援を得るためにマーリキが譲歩する必要があったことと、
予 算 案 を 通 す 必 要 が あ っ た こ と か ら 、2011 年 1 月 合 意 に つ な が っ た 。財 務 省 か ら コ ス ト が
前 払 い で 直 接 支 払 い が な さ れ る 内 容 で 合 意 さ れ 、輸 出 は 2011 年 2 月 2 日 に 再 開 し た 。し か
し、その後 3 人が閣議で反対を鮮明にした。1 人はシャハリスターニ副首相である。彼は
そ の 強 硬 姿 勢 故 に KRG と の 合 意 か ら 外 さ れ て い た 可 能 性 が あ る 。
シ ャ ハ リ ス タ ー ニ 副 首 相 と ル ア イ ビ 石 油 相 は 、KRG が 監 査 に 協 力 し な か っ た か ら 支 払 い
が止まったとして、支払い前に監査が必要との立場をとっている。しかし、①最新の合意
で は 支 払 い は 監 査 前 と 書 か れ て い る 。 ② 月 々 の KRG へ の 送 金 の 際 に 、 デ ィ ス ク レ 分 を 調
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整 で き る 、 ③ KRG は 監 査 に 協 力 し 、 支 出 に 関 し て す べ て を 公 開 し た 、 と BSA 局 長 は 述 べ
て い る 。た だ し 、BSA は 生 産 や 収 入 の レ ビ ュ ー も 必 要 と し た 。そ し て そ れ を シ ャ ハ リ ス タ
ーニ副首相やルアイビ石油相は奨励した。
彼 ら は 、KRG の 生 産 に つ い て す で に 企 業 は コ ス ト を 回 収 し た 可 能 性 が あ る と 考 え て い る 。
ハ ウ ラ ミ KRG 天 然 資 源 相 も 、 企 業 が 国 内 原 油 販 売 で 支 出 の い く ら か を 賄 っ た こ と を 認 め
て い る 。 民 間 企 業 に 販 売 さ れ た 原 油 量 を ハ ウ ラ ミ 天 然 資 源 相 は 3 万 b/d と し て い る 一 方 、
KRG の コ ン ト ラ ク タ は 15 万 b/d と 述 べ て お り 、 キ ャ ッ シ ュ フ ロ ー に 問 題 は な い と も 語 っ
ている。
ハ ウ ラ ミ KRG 天 然 資 源 相 に よ る と 、2011 年 の 11 ヶ 月 間 の 平 均 輸 出 量 は 10.9 万 b/d。2011
年 10 月 27 日 に サ ー リ フ KRG 首 相 が バ グ ダ ー ド へ 行 き 、マ ー リ キ 首 相 、ル ア イ ビ 石 油 相 、
イ サ ウ ィ 財 務 相 と 会 談 し た 。 そ の 際 、 輸 出 量 17.5 万 b/d で 合 意 し 、 予 算 法 案 に 送 金 と 監 査
は関係ない旨盛り込まれ、イサウィ財務相も合意していた。だが、予算法案が閣議承認さ
れ た 時 に は そ の 記 述 は な く な り 、曖 昧 な 文 言 だ け に な っ た 。も し 輸 出 量 が 17.5 万 b/d に 達
し な か っ た ら そ の 分 を KRG 割 り 当 て の 17%か ら 控 除 す る と の 文 言 は 法 案 可 決 前 に 削 除 さ
れたが、シャハリスターニ副首相は 4 月 2 日に、基本はかわっていないとの立場を表明し
ている。輸出停止直前にイサウィ財務相は監査が済み次第支払いをする旨述べたが、すで
に KRG は 監 査 が 遅 れ の 口 実 に な っ て い る と し て 、 監 査 へ の 協 力 を 停 止 し た 。( Iraq Oil
Report, 2012.05.03)
2.4.4.3. 連 邦 政 府 が KRG の 密 輸 疑 惑 を 非 難
シャハリスターニ副首相は 4 月 2 日、とりわけイラン国境を通して、クルディスタン地
域から大部分の石油が密輸されており、トルコとイランに、国境警備の強化を求めている
と 記 者 会 見 で 語 っ た 。KRG は 2011 年 に 6810.9 万 bbl を 生 産 し た が 、3264.2 万 bbl し か SOMO
に受け取られ輸出されていないとして、残りはイラク国外に密輸されている、と述べた。
石油省は、多くがアフガンに送られているとみていると、石油省情報筋は述べている。ル
アイビ石油相も、イランへの密輸出の詳細なレポートがあり、国際価格より安く売られて
いるとしている。
ま た 、 シ ャ ハ リ ス タ ー ニ 副 首 相 は 、 ク ル ド 地 域 は 、 2010 年 と 2011 年 に ク ル ド の 輸 出 が
低 下 し た こ と で 56.49 億 ド ル が 失 わ れ た と し て 、 そ の 分 を KRG へ の 予 算 配 分 か ら 差 し 引
くべきだと述べた。
ハ ウ ラ ミ KRG 石 油 相 は 4 月 1 日 、 ワ シ ン ト ン で イ ン タ ビ ュ ー に 答 え 、 製 品 の い く ら か
は「当座のところ」他にルートがないのでイランへトラック輸送されていると述べた。イ
ラ ン は 輸 送 地 で あ る だ け で イ ラ ン に 売 っ て い る わ け で は な い 、と 述 べ た 。KRG は 違 法 な こ
とはしていないとしている。
ま た 、 マ ー リ キ 首 相 も 4 月 17 日 、 外 国 に 石 油 を 密 輸 す る の は 国 家 の 富 の 浪 費 だ と し て 、
ク ル デ ィ ス タ ン 地 域 を 通 る 密 輸 を 防 ぐ た め に イ ラ ン 側 と 話 を し た 、と 語 っ た 。
( Bloomberg,
AFP, Dow Jones, 2012.04.02; Iraq Oil Report, 2012.04.03; Aswat al-Iraq, 2012.04.17)
2.4.4.4. ExxonMobil の 契 約 凍 結 意 思 を 巡 っ て 連 邦 政 府 と KRG が 鍔 迫 り 合 い
ル ア イ ビ 石 油 相 は 、 ExxonMobil か ら KRG と の 契 約 を 凍 結 す る 旨 の 2 回 目 の 書 簡 を 4 月
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1 日に受け取ったと語った。最初の書簡は 3 月 5 日とのことである。これに対して、ハウ
ラ ミ KRG 石 油 相 は 4 月 1 日 、 ワ シ ン ト ン で イ ン タ ビ ュ ー に 答 え 、 ExxonMobil は 日 々 活 動
を行い、地域との契約にコミットしていると反論した。
シ ャ ハ リ ス タ ー ニ 副 首 相 は 12 日 の AP と の イ ン タ ビ ュ ー で 、 連 邦 政 府 と KRG が 問 題 を
解 決 す る た め の 時 間 的 猶 予 を 得 る た め 、ExxonMobil が ク ル デ ィ ス タ ン 地 域 で 活 動 を 開 始 し
ないとの確約を同社から得ていると語って、イラク政府が態度を軟化させている可能性を
示唆した。
「 石 油 省 は 、彼 ら が 実 際 の 業 務 を 開 始 し な い と の 条 件 で 、い く ら か の 猶 予 を 与 え
る 決 定 を 行 っ た 」と し て い る 。た だ し 、係 争 地 に あ る 3 油 田 は 交 渉 に 含 ま れ な い と 語 っ た 。
一 方 、 バ ル ザ ー ニ KRG 大 統 領 は 4 月 22 日 、 エ ル ビ ル で 記 者 団 に 対 し て 、 先 月 の 訪 米 時
に ExxonMobil 社 長 が 会 談 を 申 し 込 ん で き て 、彼 ら が KRG と の 契 約 に コ ミ ッ ト し て い る と
伝 え て き た と 述 べ て い る 。「 も し ExxonMobil が 来 れ ば 、 そ れ は 米 軍 の 10 師 団 に も 値 す る 」
「 彼 ら は 権 益 が そ こ に あ れ ば 地 域 を 守 る だ ろ う 」 と 語 っ た 。 (AFP, 2012.04.02, 2012.04.23;
Bloomberg, 2012.04.02; AP, 2012.04.12)
2.4.4.5. ヌ ジ ャ イ フ ィ ・ ニ ナ ワ 県 知 事 が ExxonMobil と KRG の 契 約 を 支 持
ヌ ジ ャ イ フ ィ 県 知 事 は イ ン タ ビ ュ ー で 、「 我 々 は KRG と 同 じ 権 限 を 持 っ て い る と 信 じ て
い る 。 憲 法 上 、 県 と 地 域 に は 大 き な 差 は な い 」「 KRG は 権 限 を 活 用 し て き た 。 我 々 は 今 ま
でそうしてこなかった」と述べた。
ExxonMobil と KRG の 契 約 締 結 後 、 モ ス ル か ら 高 位 代 表 団 が バ グ ダ ー ド を 訪 れ 、 シ ャ ハ
リ ス タ ー ニ 副 首 相 へ の 支 持 を 表 明 し 、ExxonMobil の 鉱 区 に ニ ナ ワ 県 の 係 争 地 が 含 ま れ て い
る こ と に 苦 情 を 述 べ て い た 。 知 事 は バ グ ダ ー ド に ExxonMobil の 契 約 を 止 め る よ う 求 め た
が、
「 彼 ら は 何 も で き な か っ た 」と い う 。県 知 事 は 同 時 に 、治 安 が 改 善 し て き て い る に も か
かわらず投資が増えていないことにも不満を募らせており、
「中央政府は戦略プロジェクト
に着手していない」
「 第 二 の 選 択 は 、権 限 を フ ル に 活 用 し た 県 に な る こ と 」と し て 、も し 中
央政府がそれらの権限を認めないならば、地域昇格も検討している旨を語った。自治拡大
の レ ト リ ッ ク と 平 行 し て 、 ExxonMobil の 契 約 へ の 批 判 を ト ー ン ダ ウ ン さ せ た 。
そ の 後 、ヌ ジ ャ イ フ ィ 県 知 事 は ExxonMobil 及 び KRG と の 会 談 を 重 ね 、県 知 事 に よ る と 、
彼 ら は 、 県 も ExxonMobil の 投 資 か ら 利 益 を 得 る こ と や 交 渉 の テ ー ブ ル に ニ ナ ワ 県 も 含 ま
れ る こ と を 約 束 し た と い う 。 た だ し 、 KRG 関 係 者 は 「 我 々 は 将 来 的 な 協 力 を 話 し 合 う が 、
詳 細 は 未 定 。契 約 は も う 結 ば れ て い る 以 上 、難 し い 」と も 語 っ て い る 。県 知 事 は 、県 と KRG
が係争地を共に発展させることをプライオリティにすればその後争いはなくなるのでは、
と も 語 っ た 。ヌ ジ ャ イ フ ィ 県 知 事 は「 KRG は 我 々 に ド ア を 開 い た 。我 々 は そ こ に い な け れ
ば な ら な い 。我 々 は 人 々 の た め に こ の 地 域 で 結 ば れ る 契 約 か ら 利 益 を 得 な け れ ば な ら な い 」
と 述 べ た 。( Iraq Oil Report, 2012.06.14)
2.4.4.6. マ ー リ キ 首 相 は ExxonMobil の 件 に 関 し て 米 国 の 介 入 を 求 め る
マ ー リ キ 首 相 が オ バ マ 大 統 領 に 対 し て 、 ExxonMobil の 契 約 が イ ラ ク の 安 定 に も た ら す ネ
ガ テ ィ ブ な 影 響 を 説 明 す る 書 簡 を 送 っ た 、と ム サ ウ ィ 首 相 顧 問 が 6 月 19 日 に 明 ら か に し た 。
首相顧問は、
「 マ ー リ キ 首 相 は 、こ の 契 約 は 戦 争 の 発 生 や 、統 一 イ ラ ク の 分 裂 に つ な が る か
もしれない非常に危険なイニシアティブを代表していると見なしている「
」地域における活
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動 を 凍 結 す る と い う ExxonMobil の 書 簡 に も か か わ ら ず 、 我 々 は 、 開 発 活 動 に 関 す る 疑 わ
しい業務が行われているという情報を得ている」
「 メ ッ セ ー ジ の 要 点 は 明 ら か だ 。米 国 政 府
は 介 入 し な け れ ば な ら な い 」「 中 央 政 府 へ の 通 知 と 許 可 な く ExxonMobil に 開 発 契 約 を 付 与
す る こ と は 今 ま で も 、こ れ か ら も 違 法 だ 」と 述 べ た 。ExxonMobil は ロ ー プ ロ フ ァ イ ル に 徹
しているが、産業筋によるとリグ掘削の入札を発表したという。
米 国 政 府 は 、 石 油 法 が 制 定 さ れ る ま で KRG と の 契 約 を 結 ば な い こ と を ア ド バ イ ス し て
いた。ホワイトハウスは、オバマ大統領がマーリキ首相からの書簡を受け取ったことは確
認 し た が 、回 答 を す る ま で コ メ ン ト は し な い 、と 報 道 官 が 述 べ た 。6 月 27 日 時 点 で 、マ ー
リキ首相は米国からの返事はまだ受け取っていないと語った。
な お 、 こ の 件 に 関 し て 、 サ ド ル 師 は 6 月 23 日 、 外 国 の 介 入 を 否 定 し て お き な が ら
ExxonMobil の 件 で オ バ マ 大 統 領 に 介 入 を 求 め る の は ダ ブ ル ス タ ン ダ ー ド だ と 批 判 し た 。
( Reuters,
AFP,
2012.06.19;
World
Petroleum
Argus,
2012.06.22;
NINA,
2012.06.23,
2012.06.27)
2.4.4.7. KRG と ト ル コ は 原 油 と 製 品 の バ ー タ 契 約 を 検 討
ト ル コ と KRG は 5 月 20-21 日 に エ ル ビ ル で 開 か れ た “ Energy and the Kurdistan Region’s
Road to Development”の 場 で 、 1 ヶ 月 以 内 に 双 方 政 府 の 準 備 が で き た 段 階 で 、 国 境 を 越 え た
KRG 原 油 と ト ル コ 石 油 製 品 の バ ー タ 契 約 を 開 始 す る 可 能 性 に つ い て 発 表 し た 。Yildiz ト ル
コ・エ ネ ル ギ ー 相 は 、
「 我 々 は 彼 ら の 原 油 を 得 て 我 々 の 製 品 を 輸 出 す る 用 意 が あ る 」と 語 っ
た。
ハ ウ ラ ミ KRG 天 然 資 源 相 は 、 SOMO に つ い て 、 1980 年 代 に サ ッ ダ ー ム の 権 力 の ツ ー ル
だ っ た が 、 現 在 の 役 割 を 続 け る こ と は で き な い 、 と 述 べ 、 SOMO が 唯 一 の 輸 出 従 事 者 で は
ないことを強調した。また、精製能力拡張が間に合わない場合、国外の製油所に出すこと
を 検 討 し て お り 、 そ れ は 自 分 た ち の 権 利 だ と 語 っ た 。( Iraq Oil Report, 2012.05.21; Platts
Oilgram News, 2012.05.22; PIW, 2012.05.28)
2.4.4.8. ト ル コ と KRG が ク ル デ ィ ス タ ン 地 域 か ら の ダ イ レ ク ト な 輸 出 を 検 討
5 月 20-21 日 に KRG と ト ル コ・エ ネ ル ギ ー 省 が 共 催 し た“ Energy and the Kurdistan Region’s
Road to Development”.の 場 で 、ハ ウ ラ ミ KRG 天 然 資 源 相 は 、2013 年 8 月 か ら ク ル デ ィ ス タ
ン 地 域 か ら ダ イ レ ク ト に 原 油 輸 出 が で き る よ う に な る と し て 、「 我 々 が 輸 出 に 責 任 を 持 つ 。
それは依然としてイラクの石油だ」と述べた。
同相によると、1 年以内にクルディスタン地域内にパイプラインが建設されて、すべて
の 生 産 中 の 油 田 に つ な が れ 、DNO が 所 有 運 営 す る フ ィ ッ シ ュ ハ ブ ー ル の 製 油 所 に 運 ば れ る
という。そこから、原油はイラク・トルコ・パイプラインのイラク側のメーターリング・
ス テ ー シ ョ ン に つ な が る 。 第 一 フ ェ ー ズ は 2012 年 10 月 ま で で タ ク タ ク 油 田 の 原 油 を 輸 送
し 、第 二 フ ェ ー ズ は 2013 年 8 月 ま で に キ ル ク ー ク・ジ ェ イ ハ ン・パ イ プ ラ イ ン と つ な い で
100 万 b/d の 輸 出 量 を 確 保 す る と い う 。 新 パ イ プ プ ラ イ ン は 、 ト ル コ の Genel Energy に よ
っ て 入 札 に か け ら れ 、一 部 は Genel に よ っ て 資 金 援 助 さ れ る 模 様 で あ る 。ハ ウ ラ ミ KRG 天
然 資 源 相 は 、 理 論 的 に は KRG は 、 収 入 が イ ラ ク 全 土 で 分 配 さ れ る な ら ば 海 外 に 原 油 を 販
売できると語っている。フォーマルな計画としては、連邦政府のコントロールを避けるよ
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うにはなっていない。が、官民共に国境の両側でそれを考えている模様である。
Yildiz ト ル コ・エ ネ ル ギ ー 相 は 、
「我々は新パイプラインを建設してクルディスタン地域
の石油を得ることを想定している」と語った。ただし、パイプラインや直接輸入に関する
合 意 は 何 も 結 ば れ て い な い 。 ト ル コ の Calik Energy が ト ル コ 国 内 で の 3 本 目 の パ イ プ ラ イ
ン建設のライセンスを申し込んでいるが、政府関係によると、イニシアティブはあくまで
Calik で あ っ て 政 府 で は な い と し て い る 。ま た 、Yildiz エ ネ ル ギ ー 相 は 、エ ネ ル ギ ー プ ロ ジ
ェ ク ト を 考 え る と き に 我 々 の プ ラ イ オ リ テ ィ は イ ラ ク の 領 土 的 一 体 性 だ 、と も 述 べ て い る 。
ア リ ・ ム サ ウ ィ 首 相 顧 問 は 、「 我 々 は 契 約 に 問 題 な い が 、 そ れ ら は 連 邦 と KRG の 関 係 を
定 め た 憲 法 と 法 に 則 っ て 行 わ れ な け れ ば な ら な い 」 と 述 べ た 。 (Iraq Oil Report, 2012.05.18;
Reuters, 2012.05.20; Financial Times, 2012.05.21; Business Week, 2012.05.22)
2.4.4.9. KRG の 生 産 拡 張 見 通 し
ハ ウ ラ ミ KRG 天 然 資 源 相 は 6 月 19 日 、 現 在 の 生 産 能 力 は 30 万 b/d で 、 2013 年 末 ま で
に 40 万 b/d を 予 定 し て い る 、 と ロ ン ド ン で の イ ラ ク ・ エ ネ ル ギ ー 会 議 で 述 べ た 。 さ ら に
2015 年 末 ま で に 100 万 b/d、 2019 年 ま で に 200 万 b/d に 達 す る と し て い る 。( Dow Jones,
2012.06.19)
2.4.4.10. KRG の 製 油 所 拡 張 計 画
5 月 20-21 日 の “ Energy and the Kurdistan Region’s Road to Development”.で 、 KRG は 精 製
能 力 を 今 後 数 年 で 2 倍 以 上 の 20 万 b/d へ 拡 張 す る 予 定 で あ る こ と が 発 表 さ れ た 。Kar グ ル
ー プ の エ ル ビ ル 製 油 所 が 現 行 の 4 万 b/d か ら 年 末 ま で に 10 万 b/d、2014 年 ま で に 17 万 b/d
に 拡 張 予 定 で 、 バ ジ ア ン 製 油 所 は 7 月 ま で に 3.5 万 b/d に 増 加 予 定 で あ る 。 Genel Energy
は 来 年 12 月 ま で に 、タ ク タ ク 油 田 に 6 万 b/d の コ ン デ ン セ ー ト 製 油 所 建 設 を 予 定 し て い る 。
ク ル デ ィ ス タ ン 地 域 の メ イ ン の 製 油 所 2 つ の 能 力 は 6.5 万 b/d だ が 、 teapot 型 の 製 油 所 が
10 万 b/d を 精 製 し て い る 。( PIW, 2012.05.28)
2.4.4.11. ホ ル モ ル ・ ガ ス 田 の LPG プ ラ ン ト で 火 事
ホ ル モ ル・ガ ス 田 の LPG プ ラ ン ト に お い て 6 月 22 日 、地 元 の LPG ト レ ー ダ が 所 有 す る
LPG ト ラ ッ ク 2 台 が 原 因 と な っ て 火 事 が 起 き 、 ト ラ ッ ク 運 転 手 1 名 が 死 亡 、 4 名 が 負 傷 し
た 。Dana Gas が 明 ら か に し た 。積 み 出 し 施 設 に も 被 害 が で た と の こ と 。調 査 の 実 施 と 修 理
の た め に プ ラ ン ト も 一 時 停 止 し て い る 。 Dana Gas は 2007 年 4 月 か ら ク ル デ ィ ス タ ン 地 域
で 活 動 を 行 っ て お り 、 ホ ル モ ル ・ ガ ス 田 の LPG 生 産 施 設 は 2011 年 始 め に オ ー プ ン し て い
た 。( Reuters, 2012.06.24)
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付表
製油所能力
出 所 : MEES, 2012.04.23
第四次入札事前審査通過企業
出 所 : MEES, 2012.04.30
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第四次入札結果
第1鉱区
第2鉱区
第3鉱区
第4鉱区
第5鉱区
第6鉱区
第7鉱区
第8鉱区
第9鉱区
第10鉱区
第11鉱区
第12鉱区
入札企業
入札額
なし
なし
なし
なし
なし
なし
なし
★Pakistan Petroleum Corp.(100%)
$5.38
Japex(80%), Itochu(20%)
$10.57
★Kuwait Energy(40%), TPAO.(30%),
$6.24
Dragon Oil(UAE, 30%)
★Lukoil(60%), Inpex(40%)
$5.99
Petrovietnam(36%), Premier
Oil(34%), Bashneft(露, 30%)
$7.07
Kuwait Energy(50%), Dragon
Oil(50%)
$6.24
なし
Prmier Oil(40%), Petovietnam(30%),
Bashneft(30%)
$9.80
場所
ニナワ県
ニナワ県・アンバール県
アンバール県
アンバール県
アンバール県
アンバール県・ナジャフ県
カーディスィーヤ県他
ディヤーラ県他
埋蔵可能
性
ガス
ガス
ガス
ガス
ガス
ガス
石油
ガス
バスラ県
データパッ
これまでの ケージ購入企 サイン・ボー
ナス
探鉱活動 業数
油井2本
21 1500万ドル
油井1本
16 2500万ドル
なし
14 2000万ドル
なし
13 2000万ドル
なし
13 2000万ドル
なし
15 2000万ドル
なし
13 2000万ドル
なし
29 1500万ドル
最低投資義
務額
1.1億ドル
1.2億ドル
1.1億ドル
1.1億ドル
1.2億ドル
1.3億ドル
1億ドル
1億ドル
石油
なし
28 2500万ドル
9000万ドル
ディーカール県・ムサンナ県 石油
なし
36 2500万ドル
1億ドル
ナジャフ県・ムサンナ県
石油
油井1本
20 1500万ドル
1.2億ドル
ナジャフ県・ムサンナ県
石油
油井1本
21 1500万ドル
1.2億ドル
出所:Iraq Oil Report, 2012.05.30, 2012.06.01.
注:★が落札企業/コンソーシアム。
注 : そ の 後 、 第 12 鉱 区 は Bashneft が 報 酬 上 限 額 $5/b を 受 け 入 れ て 単 独 で 落 札 。
第四次入札鉱区地図
出 所 : Iraq’s Fourth licensing Roundウ ェ ブ サ イ ト ( http://www.pcldiraq.com/index.php )
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こ の 事 業 は 、競 輪 の 補 助 金 を 受 け て
実施したものです。
http://ringring-keirin.jp
国 別 定 期 報 告 「 イ ラ ク 」 2012 年 4–6 月 2012 年 7 月 4 日 発 行
無断転載を禁じます
編集発行:一般財団法人 日本エネルギー経済研究所 中東研究センター
104-0054 東 京 都 中 央 区 勝 ど き 1-13-1 イ ヌ イ ビ ル ・ カ チ ド キ
Tel: 03-5547-0230 Fax: 03-5547-0229 E-mail: [email protected]
URL: http://jime.ieej.or.jp/
ISSN 1347-7676