第三者レビュー - NECフィールディング

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第三者レビュー
第三者レビュー
NECフィールディング CSR報告書 2009を読んで-1
今回も「本気度」が伝わってくる。冒頭の社長メッセージにおい
編集上での改善点以外に注文させてもらえば、課題設定をもう
ても、人材育成を含む多様な手法による地球社会・地域社会へ
少し具体的に見せてもらえないかということ。セクションによっ
の貢献が語られ、NECフィールディング株式会社がCSRを経営
ては昨年と同じ「課題」が掲載されている。目標としての課題だ
理念の柱に据えていることがよくわかる見せ方になっている。
とその通りなのだが、次年度にやろうとしていることが一つで
かつCSR経営監査部という部署の存在だけでなく、四半期毎の
も具体的にあると、読者としてはリアリティを持つことができる。
戦略会議や毎月の推進会議を基盤とする推進体制が整っている
また、多くは書けなくても、うまく行かなかったこととそれに対
など、このコミットメントが美辞麗句だけのものではないことが
する処置と改善策の紹介も、ステークホルダーを安心させる材
理解される。
料になるだろう。
今回の報告書で評価できると思ったことはたくさんあるが、ま
同社はCSRの分野ではすでに素晴らしい前進があり、社会にも
ずは昨年に引き続き、それぞれのセクションで、2008年度の
社員にも大きく貢献してきていることは、毎年の数々の受賞か
テーマと実績、そして課題がまとめられていること。読み手は
らも明らかだが、地球社会を見渡せば、例えば温暖化を取って
それぞれの業務内容を具体的に知らないので、どんなことが課
みてもまだまだ高いゴール設定が求められている。そしてCSR
題なのか、それに対してどんな取り組みと成果があったのかが
の分野は幅広い。始まったばかりの社会貢献倶楽部の進展もユ
見えることで、一気にわかりやすくなる。次に、ステークホル
ニークなものとして注目に値するが、伴って組織としてのさら
ダーミーティングでの意見とそれに対する同社からの回答の紹
なる前進を期待したい。
介。第三に、実際にリスク発現があった事例とその対応が紹介
されていること。リスクは防止策だけでなく、実際に何か起き
高野 孝子
た場合の対処がより企業の評価につながってくる。第四として
は、社員のコメントの中で、同社の雰囲気がわかったり、身近に
自然活動家、持続可能性教育・体験教育コンサルタ
ント。早稲田大学客員凖教授。教育学博士(英国エジ
感じることができるような、同社の「ウィンドウ」となるものを掲
ンバラ大学)、環境と開発修士(英国ケンブリッジ大
載していること。例えば、SOX法対応推進事務局や新入社員の
学)
、政治学修士・社会学修士(早稲田大学)
。
方たち、ボランティア活動をされている方々のコメントなどだ。
1963年新潟県生まれ。ジャパンタイムス記者を経て、
アマゾン川1,500キロ下り、北極圏横断など多くの冒険に挑む。子どもた
ちへの環境教育に携わる特定非営利活動法人ECOPLUS設立。
「オメガア
ワード2002」受賞(緒方貞子、吉永小百合、中村桂子など世界に貢献する
「
。世界遺産の今」
(朝日新聞社刊 共著)
など著書多数。
日本女性7名に授与)
成果を報告することが主体としても、ステークホルダーと企業
をつなぐコミュニケーションツールとしては、社員のみなさん
の生の声はとても大切だと実感した。
NECフィールディング CSR報告書 2009を読んで-2
昨年に引き続き、第三者評価をさせていただいた。NEC フィー
告書のスリム化を目指すべきと提言したが、CSR報告書は会社
ルディングが標榜する「ITシステムは新しい時代のライフライ
案内の機能を有しつつあり、財務諸表の数値以外で会社の実態
ン」は正にその通りであり、社会機能を支え続けることを事業の
を示すものであり、今後、ますます重要な広報ツールとなること
柱に据えていることに企業の社会的正義を感じる。個人的には
は間違いない。その意味でも、引き続き工夫をこらし、継続した
「ITヘルスケア」コンセプトの下で実践しているBCPの取り組み
取り組みに加えて最新の活動を盛り込みつつ、さらに読みやす
に注目しており、今年度はあらたに新型インフルエンザを想定
い報告書にしていってほしいと願う。
したパンデミック対策を盛り込むなど、ユーザーのみならず社
要望としては、地球温暖化防止というグローバルな課題に向け
会全体に対して安心感を与える努力をしていることを評価した
てさらなるアクションを期待したい。他社に先駆けてIT業界に
い。また日本版SOX法への対応や、グリーン調達システムを新
おける有用な温暖化防止策を示してもらいたいと願う。
しく導入するなど、企業の社会的責任を果たそうという意欲を
持ち、
実践的な取り組みを積み重ねていることも高く評価したい。
会社をあげて取り組んでいる幅広い社会貢献活動や、
「 FIEL -
山口 博之
早稲田大学大学院アジア太平洋研究科事務長。
DING社会貢献倶楽部」発足に伴う自発的な活動のさらなる発
1962 年東京都生まれ。早稲田大学教育学部卒業。
展も期待でき、会社の勢いを感じる。こうした実績故に、
「気候
早稲田大学職員の傍ら日本自然環境ボランティア協
変動MS調査」においてサービス業界1位となったのだろう。
ところでCSR報告書はSRIの観点から投資家にとって利用され
ることに留まらず、社員が自社の全体像を把握して誇りを持て
るようにしたり、学生が就職先を絞り込む際の情報源として利
用している目的を鑑みると、やはり 5 つの項目の実態をバラン
スよくレポートする必要があることは理解できる。前年度、報
会を組織し、1994年から日本人ボランティアを米国
マウントレーニア国立公園に派遣し続けている。そ
の経験を基に2002年より早稲田大学平山郁夫記念ボランティアセンター
にて大学としての教育的社会貢献活動のモデルを構築し、国際教養学部
事務長を経て2008年より現職。
2009年夏に群馬県にて武尊山登山道整備プロジェクトを開始し、また修
行の一環でスペインの世界遺産サンティアゴ・デ・コンポステーラの巡礼
路を歩くなど、精力的に活動を展開中。