最新表面処理技術による アルミ・カーテンウォールを視察するための東京ツアー・ガイド 佐藤敏彦 1. はしがき 「建築技術」誌(http://www.k-gijutsu. co.jp/)の 2005 年 10 月号 は「特集:メタ ルカーテンウォールの新しい潮流を追いか けて」で、最新表面処理技術によるアルミ・ カーテンウォールの論文が 10 数件も掲載 されている。これらの解説は有益であるが、 全文を引用するわけにはいかない。 そこで、同誌で紹介されているカーテン ウォールで、東京都内に建設されている物 件を視察するためのツアー・ガイドを執筆 した。所要時間は 3,4 時間で、交通費は 3,000 円以内であろう。なお、本稿各節の カギカッコ付の題名は「建築技術」誌の解 説論文の原文題名の引用である。 左側超高層ビルが「秋葉原ダイビル」、右側 超高層ビルが「秋葉原UDX」である。 「秋 葉原UDXビル」の建材は「マット処理・ 陽極酸化複合皮膜」である。そして、 「5~6 年前頃からマット処理という特殊な表面処 理が開発され、低コストで塗装のようなソ リッドな色合いが出せ、かつ陽極酸化皮膜 と同等の性能が出せるようになり、多くの 現場で使用されだしている」との事である。 なお、秋葉原は再開発地区とも称されて 「つくばエクスプレス」の開通や大型店舗 の開業で賑わっている(図 3)。 2. 東京駅丸の内のビル群 見学ツアーの起点として、JR東京駅を 選んだ。図 1 に示す東京駅丸の内には 1,2 年前に話題になった丸ビルやOAZOビル がある。また、幾つかの建設中のビルのカ ーテンウォールも見える。 図1 図2 「秋葉原UDXビル」(右側) 東京駅丸の内周辺地図 3. 「マット処理・陽極酸化複合皮膜」の「秋 葉原UDXビル」 東京駅から 2 駅のJR秋葉原駅のホーム から図 2 に示す 2 棟の大きいビルが見える。 図3 1 秋葉原再開発地区 4. 「ステンレス調光輝合金処理」の「日本 橋三井タワー」 秋葉原UDXビル前の中央通りを北へ 5 分ほど歩くと地下鉄・銀座線の末広町駅に 着く。末広町駅から 2 駅目が三越前駅であ る。A8出口が日本橋三井タワーに直結し ている。地上に出て、三井越後屋ステーシ ョンから日本橋三井タワーを眺めるとアル ミ建材が輝きを放っていた(図 4 と図 5)。 この建材は光輝合金をりん酸で電解研磨し ているが、 「アルミ建材のような長尺物は今 まで出来なかったが、 (株)日本電気化学工 業所兵庫工場に設備を増強することにより 可能となった」との事である。 感のある表情が、1 日を通し変化する」と 述べている。なお、松屋銀座ビルの左角の ルイビトン銀座店の外壁は 2 枚のガラスに よるモアレ模様の外壁である(図 7)。 図6 図4 図5 日本橋三井タワーの周辺地図 図7 松屋銀座 モアレ模様の外壁 6. 「フッ素樹脂電着塗装」の「六本木ヒル ズ森タワー」 地下鉄・銀座駅で日比谷線に乗ると、4 駅目が六本木駅である。徒歩 5 分で六本木 ヒルズに到着する。六本木ヒルズは高層ビ ル群であるが、図 8 に示す最高層ビルが六 本木ヒルズ森タワーである。 回転ドアー事件やIT長者で話題の多い 六本木ヒルズ森タワーであるので、東京観 光で訪れた人々も多いと思うが、 「このカー テンウォールはフッ素樹脂電着塗装なの だ!」との感慨を込めて眺めるのは有意義 であろう。フッ素樹脂電着塗装によるカー テンウォールの実績としては、 「香港新空港 三井越後屋ステーション 5. 「アルミエンボスパネルとガラスのダ ブルスキン+耐震ブレース」の「松屋銀 座耐震外装リニューアル」 銀座線の三越前駅から3駅目が銀座駅で ある。A12出口から徒歩1分で松屋銀座 に着く(図 6)。松屋銀座耐震外装リニュー アルは、 「やわらかい布のような表情や光沢 (1996 年)、NTTドコモ埼玉ビル(1999 2 がアルポリック/fr の施工例であるとの公 開情報は無いが、芝浦工業大学の近所なの で、施工経過を何回も見たので本稿で紹介 する。なお、六本木ヒルズ森タワー1 階の バス・ターミナルから田町駅東口行きの「港 区コミュニティーバス」が出発していて、 「田町イーストビル」の筋向いがバスの終 点である。 年)、六本木ヒルズ(2003 年)、グランドハ イアット東京(2003 年)、中部国際空港(2005 年)などがある」との事である。この論文 ではフッ素樹脂電着塗装によるカーテンウ ォールの「長所」と「短所」にも言及して いる。なお、六本木ヒルズ・けやき坂通り のルイビトン店舗の外壁はガラス・パイプ を輪切りに並べたガラス・カーテンウォー ルである(図 9)。 図8 六本木ヒルズ森タワー 図 10 図9 田町イーストビルの地図 ルイビトン六本木店 7. 「アルミ積層複合材/不燃、アルポリッ ク/fr」の「田町イーストビル」 「建築技術」、2005 年 10 月号の広告ペー ジに「アルミ積層複合材/不燃、アルホリッ ク/fr」の広告が掲載されている。施工事 例として「九勧筑紫通ビル」と「DT計画」 の写真が示されている。更に、アルポリッ ク/fr のホームページには「主な施工例」 として、札幌ドーム/スタジアム側壁、京王 線新宿駅/駅天井、料金所天井/料金所施設、 青森市旭町/地下道側壁が写真で示されて いる。 図 10 と図 11 に示す「田町イーストビル」 図 11 田町イーストビル 図 12 にアルポリックの断面図を示す。ま た、 「アルポリック/fr シルバーメタリック、 大きさ 4 X 1270 X 2489、価格 23,625 円」 のインターネット通販の広告もある (http://www.rakuten.co.jp/alpolic/)。 図 12 アルポリックの断面図 8. 「光触媒防汚アルミパネル」の「東京国 3 際空港東側立体駐車場連絡通路」 田町イーストビルから都営地下鉄の三田 駅まで歩くと、京浜急行との相互乗り入れ の「快特」電車で羽田空港へ 25 分で行ける。 「東京国際空港東側立体駐車場連絡通路」 の名称を見つけられなかったが、第 2 旅客 ターミナルビルとP3駐車場を結ぶ連絡通 路であろう(図 13 と図 14)。 図 13 の連絡通路は一見すると、白いペン キが塗られている歩道橋に過ぎない。しか し、 「ここに紹介する光触媒パネルは 焼付 塗装タイプで、耐久性の高い有機塗膜の表 面に光触媒としてクリヤーの中間層と光触 媒層を積層する構造としている」との事で ある。 会社はホームページ上の 1999 年 4 月 20 日 のニュースリリースで「光触媒を利用した 世界で初の外装防汚パネルを使用したビル が完成」と発表している(http:// www. ykkap.co.jp/news/1999/19990420.asp)。そ して、竣工 5 年後の建築物は良好な光触媒 防汚効果を示しているとの事である。 9. むすび 本稿では東京都内に施工されているカー テンウォールの事例だけを「建築技術」誌 2005 年 10 月号から引用したが、同誌には、 高耐候性アクリル電着塗装によるカーテン ウォール、高耐候性ポリエステル粉体塗装 によるカーテンウォール、一次電解発色仕 上げ(有機酸硬質アルマイト)によるカー テンウォール、温かみを感じるアルミカー テンウォール、木・アルミ複合断熱カーテ ンウォールなどの有益な論文も掲載されて いる。 最後に、本稿ではURLアドレスを記載 することなく、多くのインターネット画像 を引用させて頂いた。関係者に御詫びと深 謝をする。 図 13 Tokyo travel guide to watch the aluminum curtain walls treated by high-tech surface finishing technologies 東京国際空港の立体駐車場 By Toshihiko SATO, Professor emeritus of Shibaura Technical University 図 14 立体駐車場と連絡通路 「光触媒防汚アルミパネル」を開発した 4
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