「新聞から情報を」 秋田県立五城目高等学校 教 1 諭 三浦 貴子 はじめに 今年度本校は、初めてNIEの実践校となっ た。 地歴科:1 年現代社会の中で以前から、新聞 を使った授業を行っていた。しかし、現在家庭 で新聞を購読している割合は、以前に比べて格 段に低くなっている。そのため、生徒は新聞に 触れる機会が減少している。さらに、昨今の情 報化社会、特に携帯電話・インターネットが各 家庭に普及しているため、リアルタイムの情報 が 手 に 入 る 。「 改 め て 新 聞 を 開 き 、 ニ ュ ー ス を ④新聞の記事の違い 読むという必要がない」という生徒もいる位で 11/23 ある。しかし、実際その情報をじっくり読み、 北朝鮮の韓国延坪島への砲撃 事件について 自分なりの分析をし、考えるということが出来 るのだろうか。そう考えたとき、授業で新聞を 取り上げ、そこから得た情報を考えさせたいと 〈内容と課題〉 ① 1年間を通して実施した。生徒が提出し 考えた。これが、NIEを行なうきっかけとな た枚数(週)は、クラスにより偏りはある った。 が 、 18 ~ 22 週 分 で あ る 。 し か し 、 2 学 期 は行事が多く提出率が悪く、最終的には最 2 今年度の取り組み 1年 後にまとめて提出する生徒も多かった。 現代社会(2単位)全員 ① 1 年間を通して 生徒は、新聞の記事を読む事に馴れてい ない。新聞は、テレビ欄とスポーツ欄しか 毎日の課題「新聞の中から興味のある記事 読まないと言う生徒が多い。そのため、ど を一つ取り上げ、要約と感想を記入する」 のようにして記事を読むか、要約するかを ・翌月曜日、1週間分提出 指導する必要があった。 ② 1 学期 朝 学 習 ( 10 分 ) で 社 説 を 読 み 、 感 想 を 記 入 す る 。( 9 回 ) ③2学期『新聞と社会』-講演- 魁新報社NIE推進部 大石卓見さん 内容)1面の見出しの一覧を作ると、最 低限の世の中の動きがわかる 魁新報論説委員 渡辺伸也さん 内容)社会の動きと社説について 最初に 1 面のトップ記事を使い、説明5 W1H(いつ、どこで、だれが、何を、ど の よ う に し た )で ま と め る よ う に 指 導 し た 。 さらに、最初は感想を記入する。2学期か らは。自分の意見を記入するようにした。 しかし、ほとんどの生徒が感想のみで終わ り 、意 見 を 記 入 で き る 生 徒 は 極 僅 か だ っ た 。 しかし今後続けるには、各自で読む、考 えるではなく、同じ記事に対して討論する 政治的な信用が薄くなる。また、政治的に ことで意見を持つことができ、興味をもつ 信用が薄くなると、日本の経済も評価が下 ことができるのではないかと考えた。 がることになる。このようなことを分かり やすく話して下さった。普段の授業とは異 ② 先に述べたように、本校の生徒は新聞を なる講義だっただけに、生徒が一度興味を 読むことに馴れていない。社説には全く触 失いかけたニュースを、もう一度見直して れたこともない。そこで、試験的に 1 学期 みようと思わせてくれるような講演であっ 朝 学 習 ( 10 分 ) で 読 ん で 感 想 を 記 入 さ せ た。生徒に興味関心をもたせるために、現 てみた。生徒は初めて読む社説。真剣に読 場で活躍している記者の方や社説を書いて んでいるものの、語句が難解で意味が分か いる方の話を聞く機会は、今後も是非設け らず、最初は戸惑っていた。しかし、回を ていきたい。 重 ね る と ( 10 分 で は 書 け な い が ) 後 日 感 想を書いて提出する生徒が出てきた。自分 なりに意味を調べ感想を記入すると、難し い宿題をやり遂げたような達成感があった ようだった。 試験的に行ったが、朝学習ではなく長期 休業中の課題として使用すると時間的制限 がなく取り組むことができると考えた。 ③ 1 学期から継続したニュースの課題も徐 々に提出率が悪くなり、内容も事件的内容 が多くなった。授業で政治・経済の内容を 学習をしているにも関わらず、政治に関し ④ この項目に力を入れたかったが、簡単な ものではなかった。 て は 皆 無 で あ っ た 。生 徒 に 言 わ せ れ ば 、 「政 2010 年 11 月 23 日 に 発 生 し た 北 朝 鮮 に よ 治なんて誰がやっても同じ。何をやってる る韓国延坪島砲撃事件は、各社で取り上げ かさっぱり分からない」そうである。だか た写真が違っていた。そこで、生徒にとっ ら興味関心が薄い。そこで、魁新報の大石 て隣国の情勢であり日本にも影響をあるこ さんと論説委員の渡辺さんに講義をお願い となどから、この事件を取り上げることに した。新聞の構成を知り、そして政治に関 し た 。 新 聞 を 掲 示 し 、( 魁 、 朝 日 、 読 売 、 して興味を持てる内容でと無理をお願いし 毎日)写真の違い、さらにそれにより読者 た。 はどのような感想をもつか、などを検証し 大石さんは、新聞の構成をエピソードを た。意見交換をすることにより、その後の 交えて解説してくださり、生徒の中には今 情報にも興味をもったようで、次の授業で までの疑問が解決したという生徒もいた。 その後を質問するとほとんどの生徒が答え また論説委員の渡辺さんは、政治に興味 られた。 を 持 て な い 生 徒 に 、生 徒 が 生 ま れ て か ら 15 これにより、生徒は新聞を読むことに馴 年 の 間 に 12 人 も 総 理 が 代 わ っ て い る な ど れていないだけで、決して興味がないわけ の内容を話して下さり、その為に他国から ではないことが分かった。比較検証する授 業は題材を見つけるのが難しいが、今後も 続けたいと感じた。 3 1 年間を振り返って 大きな目標をもってNIEの実践校になった わけではなかった。ただ、新聞を使って生徒に 考える力を付けたかった。そのために、何をす ればいいか、試行錯誤の繰り返しの一年となっ た。 新聞は、本校の生徒にとって難解である。そ れは、確かに語句が難しいということも一因で ある。しかし、それだけではなく彼らは、新聞 という情報伝達手段に慣れていないだけであ る。そこを指導すれば、彼らはその中から情報 を得て、さらに考えることができる。 今後地歴公民科としてだけではなく、学年・ 学校全体としてできれば更に効果的だと思う。 生徒の能力や粘り強さ、そして何に興味関心を 持 つ か 、な ど 多 く の 収 穫 が あ っ た 一 年 で あ っ た 。 それも、このNIEを行ったおかげだと思って いる。試行錯誤の一年だったが、実りある年に なった。魁新報NIE推進部菅原さん、大石さ ざいました。この場をお借りしてお礼申し上げ ます。
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