「新聞から情報を」 1 はじめに 〈内容と課題〉 2 今年度の取り組

「新聞から情報を」
秋田県立五城目高等学校
教
1
諭
三浦
貴子
はじめに
今年度本校は、初めてNIEの実践校となっ
た。
地歴科:1 年現代社会の中で以前から、新聞
を使った授業を行っていた。しかし、現在家庭
で新聞を購読している割合は、以前に比べて格
段に低くなっている。そのため、生徒は新聞に
触れる機会が減少している。さらに、昨今の情
報化社会、特に携帯電話・インターネットが各
家庭に普及しているため、リアルタイムの情報
が 手 に 入 る 。「 改 め て 新 聞 を 開 き 、 ニ ュ ー ス を
④新聞の記事の違い
読むという必要がない」という生徒もいる位で
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ある。しかし、実際その情報をじっくり読み、
北朝鮮の韓国延坪島への砲撃
事件について
自分なりの分析をし、考えるということが出来
るのだろうか。そう考えたとき、授業で新聞を
取り上げ、そこから得た情報を考えさせたいと
〈内容と課題〉
①
1年間を通して実施した。生徒が提出し
考えた。これが、NIEを行なうきっかけとな
た枚数(週)は、クラスにより偏りはある
った。
が 、 18 ~ 22 週 分 で あ る 。 し か し 、 2 学 期
は行事が多く提出率が悪く、最終的には最
2 今年度の取り組み
1年
後にまとめて提出する生徒も多かった。
現代社会(2単位)全員
① 1 年間を通して
生徒は、新聞の記事を読む事に馴れてい
ない。新聞は、テレビ欄とスポーツ欄しか
毎日の課題「新聞の中から興味のある記事
読まないと言う生徒が多い。そのため、ど
を一つ取り上げ、要約と感想を記入する」
のようにして記事を読むか、要約するかを
・翌月曜日、1週間分提出
指導する必要があった。
② 1 学期
朝 学 習 ( 10 分 ) で 社 説 を 読 み 、
感 想 を 記 入 す る 。( 9 回 )
③2学期『新聞と社会』-講演-
魁新報社NIE推進部
大石卓見さん
内容)1面の見出しの一覧を作ると、最
低限の世の中の動きがわかる
魁新報論説委員
渡辺伸也さん
内容)社会の動きと社説について
最初に 1 面のトップ記事を使い、説明5
W1H(いつ、どこで、だれが、何を、ど
の よ う に し た )で ま と め る よ う に 指 導 し た 。
さらに、最初は感想を記入する。2学期か
らは。自分の意見を記入するようにした。
しかし、ほとんどの生徒が感想のみで終わ
り 、意 見 を 記 入 で き る 生 徒 は 極 僅 か だ っ た 。
しかし今後続けるには、各自で読む、考
えるではなく、同じ記事に対して討論する
政治的な信用が薄くなる。また、政治的に
ことで意見を持つことができ、興味をもつ
信用が薄くなると、日本の経済も評価が下
ことができるのではないかと考えた。
がることになる。このようなことを分かり
やすく話して下さった。普段の授業とは異
②
先に述べたように、本校の生徒は新聞を
なる講義だっただけに、生徒が一度興味を
読むことに馴れていない。社説には全く触
失いかけたニュースを、もう一度見直して
れたこともない。そこで、試験的に 1 学期
みようと思わせてくれるような講演であっ
朝 学 習 ( 10 分 ) で 読 ん で 感 想 を 記 入 さ せ
た。生徒に興味関心をもたせるために、現
てみた。生徒は初めて読む社説。真剣に読
場で活躍している記者の方や社説を書いて
んでいるものの、語句が難解で意味が分か
いる方の話を聞く機会は、今後も是非設け
らず、最初は戸惑っていた。しかし、回を
ていきたい。
重 ね る と ( 10 分 で は 書 け な い が ) 後 日 感
想を書いて提出する生徒が出てきた。自分
なりに意味を調べ感想を記入すると、難し
い宿題をやり遂げたような達成感があった
ようだった。
試験的に行ったが、朝学習ではなく長期
休業中の課題として使用すると時間的制限
がなく取り組むことができると考えた。
③
1 学期から継続したニュースの課題も徐
々に提出率が悪くなり、内容も事件的内容
が多くなった。授業で政治・経済の内容を
学習をしているにも関わらず、政治に関し
④
この項目に力を入れたかったが、簡単な
ものではなかった。
て は 皆 無 で あ っ た 。生 徒 に 言 わ せ れ ば 、
「政
2010 年 11 月 23 日 に 発 生 し た 北 朝 鮮 に よ
治なんて誰がやっても同じ。何をやってる
る韓国延坪島砲撃事件は、各社で取り上げ
かさっぱり分からない」そうである。だか
た写真が違っていた。そこで、生徒にとっ
ら興味関心が薄い。そこで、魁新報の大石
て隣国の情勢であり日本にも影響をあるこ
さんと論説委員の渡辺さんに講義をお願い
となどから、この事件を取り上げることに
した。新聞の構成を知り、そして政治に関
し た 。 新 聞 を 掲 示 し 、( 魁 、 朝 日 、 読 売 、
して興味を持てる内容でと無理をお願いし
毎日)写真の違い、さらにそれにより読者
た。
はどのような感想をもつか、などを検証し
大石さんは、新聞の構成をエピソードを
た。意見交換をすることにより、その後の
交えて解説してくださり、生徒の中には今
情報にも興味をもったようで、次の授業で
までの疑問が解決したという生徒もいた。
その後を質問するとほとんどの生徒が答え
また論説委員の渡辺さんは、政治に興味
られた。
を 持 て な い 生 徒 に 、生 徒 が 生 ま れ て か ら 15
これにより、生徒は新聞を読むことに馴
年 の 間 に 12 人 も 総 理 が 代 わ っ て い る な ど
れていないだけで、決して興味がないわけ
の内容を話して下さり、その為に他国から
ではないことが分かった。比較検証する授
業は題材を見つけるのが難しいが、今後も
続けたいと感じた。
3
1 年間を振り返って
大きな目標をもってNIEの実践校になった
わけではなかった。ただ、新聞を使って生徒に
考える力を付けたかった。そのために、何をす
ればいいか、試行錯誤の繰り返しの一年となっ
た。
新聞は、本校の生徒にとって難解である。そ
れは、確かに語句が難しいということも一因で
ある。しかし、それだけではなく彼らは、新聞
という情報伝達手段に慣れていないだけであ
る。そこを指導すれば、彼らはその中から情報
を得て、さらに考えることができる。
今後地歴公民科としてだけではなく、学年・
学校全体としてできれば更に効果的だと思う。
生徒の能力や粘り強さ、そして何に興味関心を
持 つ か 、な ど 多 く の 収 穫 が あ っ た 一 年 で あ っ た 。
それも、このNIEを行ったおかげだと思って
いる。試行錯誤の一年だったが、実りある年に
なった。魁新報NIE推進部菅原さん、大石さ
ざいました。この場をお借りしてお礼申し上げ
ます。