全体の流れ 生命倫理 第2回 いのちの仕組みを学ぶ <10月4日> 巽 純子 近畿大学理工学部生命科学科 1. 生物とは?生きているということ は? 2. 生命に関する基礎知識 • DNA・遺伝子・ゲノム • いのちの作り • いのちの伝達 生物とは?生きているとは? • 生物は「生きる物」あるいは「生のある物」と 書くが、無生物とどこが違うか? 生物学的な「生物の定義」 1. 外界の環境の変化に対して、自分を一定の状態 に保つ「恒常性」を有すること。 2. 物質を分解したり合成したりして、エネルギーを消 費、移動または貯蓄する「代謝能力」がある。 3 自分と同じものを作る「複製能力」がある。 3. 自分と同じものを作る「複製能力」がある 食べ物を分解し、新たに自 分の身体を構成する物質を 合成し、エネルギーを作る 草を食べる ウイルスは生物、無生物? ・ウィルスは地球上で発見されている自己増殖(自 分で自分と同じ物や子孫を作り出すこと)ができる 最小単位のものである。 ・ただし、ウィルスは自分の力だけでは自己増殖 できず、必ず、何か他の生物に寄生しなければ生 生物か無生物か意見が分かれている。 きていけない。 ・複製能力のある遺伝子を内側に閉じ込めただけ の箱みたいなものである。生物の定義のうち、「恒 常性」と「代謝能力」を持たない。 子を作る そもそも遺伝子って何? ヒトの細胞は60兆個の細胞からできて います。その情報を父と母から受け継 いでいます(ゲノムといいます)。その中 の特に働きあるとわかった部分を遺伝 子といいます ゲノム>遺伝子(ほんの数%) 1 ヒトのゲノムは非常にコンパクトに収納されています 核内に大多 数のゲノム DNAが存在 細胞 DNAの二重らせん構 造 仲良しペアー 200 nm 30 nm ヌクレオソーム 11 nm ヒトのゲノム:3 x 109 塩基対(全長約1m) 約2mもの糸状のDNAが、数10μm という小さな細胞核の中に納まっている ヒストン 染色体 1400 nm DNA 参考 10-3 milli (m) micro (μ) 10-6 nano (n) 10-9 pico (p) 10-12 femto (f) 10-15 103 kilo (K) mrga (M) 106 giga (G) 109 tera (T) 1012 peta (P) 1015 すっごい 小さい!! 水素結合を介して結びついている A=T ところで、ヒトのカラダって何 からできているの? ヒトのカラダの2割はアミノ酸 アミノ酸は太古の時代から地球に アミノ酸:20% ヒトのカラダの約60 は水 ヒトのカラダの約60%は水 存在する最も古い栄養成分。原 です。そして、残りの約半 その他:20% 始生命から現在のヒトに至るまで、 分がアミノ酸。 アミノ酸は、生命の源として利用 アミノ酸は人間のカラダの されている。 細胞、ホルモン、酵素など 水:60% を形成する他、カラダにとっ て様々な重要な機能を担っ ている。 バリン ロイシン イソロイシン 3つのアミノ酸はともに分岐鎖アミノ酸と呼ばれます。カラダのたんぱく質を増やす働きや、運 動時のエネルギー源として重要な役割を果たします。 アラニン 肝臓のエネルギー源として重要なアミノ酸です。 アルギニン 血管などの機能を正常に保つために必要なアミノ酸です。 グルタミン 胃腸や筋肉などの機能を正常に保つために必要なアミノ酸です。 リジン 代表的な必須アミノ酸で、パン食・米食で不足しがちなアミノ酸です。 アスパラギン酸 グルタミン酸 プロリン システイン テイ スレオニン メチオニン ヒスチジン G≡C 遺伝子とタンパクの基本構造を学 ぼう 私たちのカラダを構成している、10万種類にも 及ぶタンパク質は、わずか20種類のアミノ酸の さまざまな組み合わせでつくられている。 これら20種類のアミノ酸は、私たちのカラダに これら20種類のアミノ酸は 私たちのカラダに とって、決して欠かせないもの。また、タンパク質 の材料としてつかわれるほか、必要に応じてカラ ダのエネルギー源として利用されている。 ところで、必須アミノ酸って何で 「必須」っていうの? すべてのタンパクは、20種類のア ミノ酸からできています。 生体に栄養学的に必要なアミノ酸で, 遊離アミノ酸あるいはタンパクとして 皮膚などを構成する「コラーゲン」の主要な成分です。速効性のエネルギー源となります。 食事によって摂取しなければならな 皮膚に含まれる黒いメラニン色素の産生を抑えるアミノ酸です。 皮膚に含まれる黒 色素 産生を抑えるアミノ酸です。 いもの メラ いもの、すなわち生体によって生合 すなわち生体によって生合 必須アミノ酸のひとつで、酵素の活性部位などを形成するのに用いられます。 成できないものです。 アスパラガスに多く含まれます。速効性のエネルギー源です。 小麦や大豆に多く含まれます。速効性のエネルギー源です。 必須アミノ酸のひとつで、生体内で必要なさまざまな物質をつくるのに用いられます。 必須アミノ酸のひとつで、ヒスタミンなどをつくるのに用いられます。 フェニルアラニン 必須アミノ酸のひとつで、多種の有用なアミンなどをつくるのに用いられます。 チロシン 多種の有用なアミンをつくるのに用いられ、フェニルアラニンやトリプトファンなどとともに 芳香族アミノ酸とも呼ばれます。 トリプトファン 必須アミノ酸のひとつで、多種の有用なアミンなどをつくるのに用いられます。 アスパラギン アスパラギン酸とともに、TCA回路(エネルギー生産の場)の近くに位置するアミノ酸です。 グリシン グルタチオンや血色素成分であるポルフィリンをつくるのに用いられます。 セリン リン脂質やグリセリン酸をつくるのに用いられます。 2 アミノ酸とタンパク質の関係は? 遺伝子とかDNAは、いのちの設 計図っていうけど、カラダを作っ ているタンパク質との関係はどう なっているの? ある特定のDNAの3つの塩基 (文字のようなもの)の並び は、特定のアミノ酸をコード (指し示す暗号のようなも の)しています。 DNAの長い配列は、アミノ酸 の並びを示し、タンパク質が 作られます。 遺伝子の基本構 造・DNAとRNA 遺伝情報は、どのようにしてタンパクへと翻訳さ れるのだろうか? それぞれのアミノ酸を運ぶ tRNAには、コドンに対応 したアンチコドンが付い ている 5' 3' 表 DNAの3文字の並びはアミノ酸をコードしている セントラルドグマ すべてのアミノ酸に遺伝暗号があ る コドン DNA(情報のもと:設計図) mRNA(情報のコピー) tRNA(情報の翻訳) アミノ酸(生命活動のもと) たんぱく質(実際に身体を作っている) 3 どの細胞にも同じ遺伝子が入ってい るのに、なぜ形も機能も違う臓器が できるの? どの臓器にも、同じ 遺伝子が入っている。 しかし その遺伝子 しかし、その遺伝子 の読まれている場所 が違うのです 生命の情報の流れには2通りある 情報の 情報の流 ひとつの れ 単位 働きの違い 何が主に活 担い手の 躍しているか 細胞 ゲノム 縦の流れ 遺伝情報 (次世代へ 伝達 つなげる) DNAの複製 遺伝子 横の流れ 遺伝情報 (個体の発 発現 生) RNAへの転 写タンパクへ 体細胞 の翻訳(合 成) 配偶子(精子、 卵)は、体細胞 の減数分裂に より染色体数 が半数になる 生殖細胞 遺伝学的情報(身体を作る 設計図)は時間的空間的 制御されてヒトを作る 発生 受精卵にすべての遺伝学的 情報(遺伝子・染色体)は含 まれている ヒトの染色 体 ヒトの体細胞1個に含まれる 染色体の数は46本で,これは 22対の常染色体と1対の性染 色体からなる. ヒトの男性の性染色体はXY で,女性の性染色体はXXで ある.また,常染色体は性別 によるちがいいはない. 44+XY 44+XX 4 • 体細胞 2n(2倍体) 23本x2:46本 • 生殖細胞(配偶子) 精子、卵 n(1倍体) 23本 減数分裂と体細胞分裂 減数分裂ー染色体数が半分になり、生殖 細胞を作る 体細胞分裂ー全く同じ染色体のコピーを作 り数は減らない 人間は生命を作れるか? 生物だけの特徴(ものすごく良く出来た器械との 区別)は生殖すること。そのエネルギーや部品 は外部から持ってきたものをそのまま使わない。 必ず、電子・原子・分子レベルまで分解して、そ れを合成して用いる。 なので、人間が器械で生物を作ることは非常に 難しい。 唯一可能なのは、DNAを使って、全く新しい生 物を作ることであるが、すでにDNAを使った段 階で、ただの真似とも言える。 推薦図書 1リットルの涙―難病と闘い続ける少女亜也の 日記 (幻冬舎文庫) (文庫) 木藤 亜也 (著) 文庫: 270ページ 出版社: 幻冬舎 (2005/02) ISBN-10: 4344406109 ISBN-13: 978-4344406100 発売日: 2005/02 5
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