腹圧性尿失禁への治療法 局所麻酔下での小切開手術である TOT 法が最も優れた治癒率です。 腹圧性尿失禁とは、咳やくしゃみをした時のように 突然おなかに力が入って腹圧が上昇すると、抑えよ うと思っても尿が不随意に漏れてしまう疾患です。 普通は女性に特有の病気で、成人女性の4人に1 人がこの症状を自覚していると言われています。 女性の尿道を挙上支持している骨盤底筋が、出産・ 加齢・女性ホルモン低下などで脆弱化することが腹 圧性尿失禁の原因と考えられています。 治療法について ・骨盤底筋体操(ケーゲル体操) 骨盤の底を支える筋肉(骨盤底筋群)や靱帯の緩みを強化する保存的治療法 です。根気良く継続する必要があります。 ・薬物療法 β刺激薬;尿道の抵抗をあげて腹圧がかかっても尿が漏れるのを軽減する効果 があります。軽症の方に有効です。 ・手術療法 経膣式尿道スリング手術 人工線維(ポリプロピレン)で出来たテープで尿道を支える術式です。 金沢医療センター Kanazawa Medical Center National Hospital Organization 〒920-8650 金沢市下石引町1番1号 Tel (076) 262-4161 FAX (076) 222-2758 a) TVT (Tension-free Vaginal Tape) 手術: TVT 手術がこれまでは最もスタンダードな手術法となっており、 90 %程度の 良好な治癒率が示されています。前膣壁の小切開創から穿刺針を挿入して、 恥骨後面の骨盤腔を通して下腹部にテープを引き出します。膀胱穿孔( 2 ~ 7 %)、血腫形成( 0.5 ~ 2 %)、などの合併症が少ないながらも報告されて います。 b) TOT (Trans-Obturator Tape) 手術: 従来の経膣式スリング手術での合併症を克服するために、穿刺針が盲目的 に骨盤腔内を通過する危険性を最小限にして安全性を向上させる術式が考案 されました。 TOT 手術は、螺旋状に湾曲した穿刺針を用いてポリプロピレンテ ープを閉鎖孔に通す術式です(図2)。本邦では数年前から導入され、良好な成 績が報告されています。重篤な合併症はほとんど報告されていません。膣内に3 cm程度 1 個、外陰部に5mm程度が 2 個と目立つことのない小切開の手術で す。当科では入院(約4日)の上、静脈麻酔と局所麻酔を併用して実施していま す。手術時間は 30 分~ 1 時間以内です。合併症が少なく、高い治療効果 (奏功率90%以上)がみられる優れた治療方法です。 c) 尿道周囲コラーゲン注入術 高齢者、男性尿道括約筋外傷の 場合に行います。 (当科での実績) 純粋な腹圧性尿失禁に対し 経 膣式尿道スリング手術(TOT 法 ) を治療の中心に据え、良好な成 績が得られています。
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