Floating knee fracture ( Fraser の 分 類 : Ⅰ 型 ) の 一 症 例 ∼関節可動域を中心に∼ KEY WORDS 関節可動域 腫張・浮腫管理 拘縮除去 ○ 橋 本 貴 幸 1 ) 岡 田 恒 夫 ( MD ) 1 ) 杉 原 勝 宣 ( MD ) 1 ) 立 石 智 彦 ( MD ) 2 ) 古 俣 正 人 ( MD ) 2 ) 1)土浦協同病院 リハビリテーション科 2)土浦協同病院 整形外科 【 は じ め に 】 Floating knee fracture と は 、 同 側 の 大 腿 骨 と 下 腿 骨 に 同 時 に 発 生 す る ま れ な 骨 折 で あ る 。 今 回 、 右 Floating knee fracture (Fraser の分類:Ⅰ型) と 診 断 さ れ た 症 例 の 理 学 療 法 を 行 う 機 会 を 得 た の で 、 関 節 可 動 域 ( 以 下 ROM ) を 中 心 に 考 察 を 含 め 報 告 す る。 【 症 例 】 年 齢 46 歳 、 男 性 、 現 病 歴 : 平 成 15 年 1 月 1 日 、 乗 用 車 運 転 中 、 木 に 衝 突 し 受 傷 。 【 経 過 】 受 傷 日 、 開 放 創 の 洗 浄 お よ び debridement 施 行 、 1 月 21 日 、 右 Floating knee fracture に 対 し 髄 内 釘 施 行 。 1 月 26 日 、 ベットサイド理 学 療 法 開 始 、 2 月 4 日 よ り 訓 練 室 来 室 。 荷 重 は 同 日 右 下 肢 1/3 よ り 、 左 下 肢 1/3 は 2 月 18 日 よ り 、 以 後 1 週 毎 に 荷 重 を 増 大 。 5 月 9 日 T 時杖にて転院、8 月より復職。 【 初 期 時 理 学 的 所 見 】 ROM-T : 右 股 関 節 屈 曲 70 ° 伸 展 0 ° 右 膝 関 節 屈 曲 30 ° 伸 展 -10 ° 右足 関 節 背 屈 -15 ° 底 屈 45 ° で あ っ た 。 MMT は 両 側 各 関 節 周 囲 筋 群 3+ で あ っ た 。 【 理 学 療 法 】ベッドサイド期 は 、① 腫 張 ・ 浮 腫 管 理 ② 膝 蓋 骨 の 可 動 性 維 持 ③ 徒 手 療 法 を 施 行 し た。訓練室期は①②③を継続したまま④股関節内外転伸展運動⑤大腿四頭筋収縮⑥車輪台 を用いた膝関節屈曲・足関節背屈運動⑦足関節背屈牽引⑧歩行練習を施行した。 【 結 果 】 理 学 療 法 開 始 後 約 40 日 目 、 ROM-T は 右 股 関 節 屈 曲 120 ° 伸 展 10 ° 右 膝 関 節 屈 曲 155 ° 伸 展 0 ° 右 足 関 節 背 屈 20 ° 底 屈 50 ° で 、 筋 力 は 4 レベルま で 回 復 し 両 松 葉 杖 歩 行 可 能。 【考察】同側の大腿骨、下腿骨骨折は、膝関節浮動に伴う膝関節可動域制限と骨折の隣接 関節である股関節、足関節可動域制限の影響も考慮する必要がある。著明な運動制限は、 術前術後肢位及び長期不動期間より膝関節屈曲、股関節伸展、足関背屈で可動域制限因子 は、腫脹・浮腫、拘縮であった。運動療法は、腫脹・浮腫管理の徹底と軟部組織の柔軟性 を引き出すことで各関節可動域を獲得することができた。荷重練習が円滑に行えない時期 に 上 記 関 節 可 動 域 改 善 を 優 先 す べ き と 考 え ら れ 、 荷 重 時 期 の 立 ち 上 が り ・ 歩 行 に お け る スム ーズな 移 行 と し て 重 要 で あ る と 考 え ら れ た 。 メモ MCL 損 傷 後 の AKP 様 症 状 を 呈 し た 一 症 例 増田 一 太 1 )・ 林 近藤 照 美 1 )・ 田 中 典 雄 1 )・ 鵜 飼 幸 彦 1 )・ 宿 南 1) 吉 田 整 形 外 科 病 院 理学療法科 2) 吉 田 整 形 外 科 病 院 整形外科 建 志 1 )・ 赤 羽 根 良 和 1 )・ 中 宿 信 哉 1) 高 則 1 )・ 細 居 雅 敏 1 )・ 笠 井 勉 2) 【 は じ め に 】 MCL 損 傷 は , 膝 に お け る 靭 帯 損 傷 の 中 で も 最 も 頻 度 が 多 く , 膝 に 大 き な 外 反 強 制 ま た は こ れ に 脛 骨 の 回 旋 強 制 が 加 わ る こ と に よ り 発 症 す る . ま た , MCL は 内 側 支 持機構の主な制動機能を担っており,この機構の破綻は,膝関節における前内側不安定性 を 呈 す る . 今 回 こ の MCL 損 傷 に よ り 前 内 側 不 安 定 性 を 基 盤 と し た , P/F 関 節 へ の 異 常 ス ト レ ス に よ り AKP 様 症 状 を 呈 し た 症 例 を 経 験 し た の で , 考 察 を 加 え 報 告 す る . 【 症 例 】 本 症 例 は 30 歳 女 性 , 診 断 名 は MCL 損 傷 で あ る . 平 成 1 5 年 2 月 5 日 転 倒 に よ り 外 反 強 制 さ れ 受 傷 し た . 某 院 を 受 診 し MRI よ り MCL 損 傷 を 指 摘 さ れ , 2W の サ ポ ー タ ー を 着 用 す る 保 存 的 な 加 療 を 受 け た . し か し 立 ち 上 が り 時 の 疼 痛 , ROM 制 限 が 解 消 さ れ ないために同年5月9日当院受診され理学療法開始となる. 【 初 診 時 評 価 】 膝 関 節 可 動 域 は , 屈 曲 100 ° , 伸 展 − 10 ° と 著 明 に 制 限 さ れ て い た . 膝 関 節 周 囲 に 浮 腫 ・ 関 節 水 腫 を 認 め , 膝 関 節 伸 展 − 10 ° で 外 反 不 安 定 性 を 呈 し た . ま た Q-angle は 35 ° , 歩 行 時 は Knee in-Toe out を 呈 す malalignment で あ り , 内 側 広 筋 に は 著 明な萎縮を認めた. 【 考 察 】 本 症 例 は , MCL 損 傷 と malalignment を 基 盤 と し た , 2 次 的 な AKP 様 症 状 を 合 併 し た 症 例 で あ る . MCL の 内 側 支 持 機 構 の 破 綻 は , 大 腿 骨 に 対 し 脛 骨 の 外 旋 不 安 定 性 を 生 じ さ せ , こ れ が P/F 関 節 の 生 理 的 な 運 動 を 阻 害 す る . そ し て AKP 様 症 状 の 発 症 要 因 と し て , 歩 行 時 の 下 腿 の 外 旋 不 安 定 性 と Q-angle の 増 大 に 伴 っ た malalignment に よ る も の , ま た 保 存 療 法 に よ る VL の 拘 縮 と Lateral Retinaculum の 拘 縮 が 考 え ら れ る . こ れ ら に よ り , 膝 蓋 骨 は 外 方 ベ ク ト ル を 強 く 受 け る た め に , AKP 様 症 状 が 発 現 し た と 考 え ら れ た . こ れ ら の 外 旋 不 安 定 性 に 対 し て VM , VMO の 強 化 と の 外 旋 制 動 に 対 す る テ ー ピ ン グ を 加 え て 行 い , 膝 蓋 骨 の 外 方 ベ ク ト ル を 軽 減 さ せ た . ま た 選 択 的 な VL や Lateral Retinaculum の ス ト レ ッ チ を 継 続 的 に 加 え た 結 果 , 現 在 ROM 制 限 ・ 立 ち 上 が り 時 の 痛 み は 解 消 さ れ た . メモ サッカー選手に出現した膝前面痛に対する理学療法 ○岡西 尚人1) 加 藤 哲 弘 ( MD ) 1 ) 1)平針かとう整形外科 【はじめに】今回、インステップキック時に膝蓋骨下部外側部に疼痛が出現した、高校サ ッカー選手の治療をする機会を得た。我々は、疼痛の原因を膝伸展機構のインバランスで あると推察し理学療法を行い、満足のいく結果を収めることができた。その治療内容につ いて若干の考察を交えて報告する。 【 症 例 紹 介 】 1 8 歳 、 男 性 、 高 校 3 年 生 、 サ ッ カ ー 選 手 ( FW )、 平 成 15 年 2 月 頃 よ り 膝 蓋骨下部外側部に疼痛出現し当院受診。局注にて疼痛緩和されるも、4 月になり疼痛増悪 し 、 4 月 12 日 理 学 療 法 開 始 と な る 。 【初診時所見】インステップキック時の膝伸展動作にて膝蓋骨下部外側部に疼痛出現。圧 痛 を 同 部 に 認 め た 。 股 関 節 、 膝 関 節 に 可 動 域 制 限 は な し 。 筋 力 は MMT に て 大 腿 四 頭 筋 5 、 大腿筋膜張筋5、中殿筋4であった 。触診にて腸脛靭帯、外側広筋に過緊張を認めた。 Ober test 陽 性 で あ っ た 。 【治療内容】中殿筋の収縮促通、大腿筋膜張筋のストレッチ、外側広筋のストレッチ、内 側広筋の収縮促通を行った。 【経過】初回治療後、インステップキック時の疼痛は消失した。8日後の4月20日が試 合だったので、インステップキックを禁止して練習参加を許可し、週3日当院にて治療を 行った。4月20日と4月26日の試合には先発出場し途中退場はなかった。 【考察】大腿筋膜張筋(股関節軽度屈曲位での股関節外転)の筋力は5であるが、中殿筋 (軽度伸展位での股関節外転)の筋力は4であり腸脛靭帯、外側広筋の緊張は亢進してい た。膝外側支持機構の緊張亢進が膝伸展時の膝蓋骨外側誘導を招き、膝蓋大腿関節での衝 突を招いていると推察された。本症例の治療では、股関節の状況を考慮し膝伸展機構のバ ランスを調整する必要があった。 メモ 半月板切除後の成績不良因子とその対応 赤羽根良和1) 宿南高則1) 林典雄1) 鵜飼建志1) 中宿伸哉1) 田中幸彦1) 近藤照美1) 細居雅敏1) 増田一太1) 笠 井 勉 ( MD )2 ) 1) 吉 田 整 形 外 科 病 院 リハビリテーション科 2) 吉 田 整 形 外 科 病 院 整形外科 【はじめに】膝関節鏡視下術は近年半月板損傷に対する切除術を目的とするほか、OAに 対しても適応範囲を拡大しつつあるが、OAに対する切除術は、治療成績が安定していな い。そこで今回我々は、半月板切除術を施行した症例を成績良好群と不良群に分類し、術 後の成績不良となる要因について検討したので、若干の考察を加え報告する。 【 対 象 】 同 一 術 者 に よ り 関 節 鏡 視 下 に て 半 月 板 切 除 術 が 施 行 さ れ た 37 名 39 膝 を 対 象 と し た。術後3カ月以内に運動療法が終了したものを良好群、3カ月以上必要としたものを不 良群に分類した。 【方法】検討項目は①性差②年齢③術前半月板JOA④術前OA J O A ⑤ 術 前 ・術 後 2 カ 月 時 の F T A ⑥ O A grade ⑦ 術 後 半 月 板 J O A の 減 点 項 目 ⑧ 術 後 O A J O A の 減 点 項 目 ⑨ 術 後 2 カ 月 時 の 階 段 降 段 時 痛 ( 以 下 V A S ) ⑩ patella 低 位 の 有 無 に つ い て 調 査 し た 。 【結果】不良群は女性が多く年齢は高い傾向にあった。術前半月板JOA及び術前OA JOAは不良群に低い傾向であった。術前術後のFTAは両群間に有意差を認めなかった。 O A grade Ⅲ 以 上 の 症 例 を 不 良 群 に 多 く 認 め た 。 不 良 群 に お け る 術 後 半 月 板 J O A 、 O A J O A の 減 点 項 目 は 、階 段 昇 降 で あ っ た 。V A S は 不 良 群 に 高 く 有 意 差 を 認 め た 。patella 低位は不良群に多く認めた。 【考察】術後の不良因子には女性、高年齢などの内的因子についての報告は多く、今回の 研究と同様な結果であった。また術後半月板及びOA JOAの減点項目として「階段昇 降」のみに有意差を認めた。階段昇降時の疼痛は膝蓋大腿関節(以下PF)痛と相関性が 高いことから、不良因子にはPF痛が関与していると考えられた。 OAにおける疼痛発生機序は、押田らは半月板由来であると報告し、伊藤らはFTAの増 大であると報告している。しかし今回我々の調査では、半月板切除やFTAの改善が得ら れたとしても術後成績には反映されず、不良因子には大腿脛骨関節よりむしろ膝蓋大腿関 節由来の疼痛が起因していると考えらた。 メモ ファベラ腓骨靭帯が原因で膝後外側角部痛を生じた一症例 近 藤 照 美 1 )・ 林 典 雄 1 )・ 鵜 飼 建 志 1 )・ 赤 羽 根 良 和 1 )・ 中 宿 伸 哉 1 )・ 田 中 幸 彦 1 ) 宿 南 高 則 1 )・ 細 居 雅 敏 1 )・ 増 田 一 太 1 )・ 笠 井 勉 2 )・ 澤 崎 進 一 2 ) 1)吉田整形外科病院リハビリテーション科 2)吉田整形外科病院整形外科 【はじめに】今回、顆間窩隆起骨折後に膝伸展制限が起こり、膝関節後外側角部に痛みを 生じた一症例を経験した。本症例における後外側角部痛の発生メカニズムについて、機能 解剖学的考察を加え報告する。 【 症 例 紹 介 】 症 例 は 18 歳 男 性 で 、 平 成 14 年 8 月 25 日 、 交 通 事 故 に よ り 受 傷 し た 。 他 院 に 搬 送 さ れ 外 傷 性 く も 膜 下 出 血 の た め 安 静 を 要 し 、 10 月 か ら 理 学 療 法 開 始 さ れ た が 、 著 明 な 膝 関 節 伸 展 制 限 が 残 存 し た た め 、 平 成 15 年 5 月 23 日 に 当 院 を 受 診 、 顆 間 窩 隆 起 骨 折 を診断のもと、理学療法開始となった。 【 初 診 時 所 見 】 膝 関 節 可 動 域 は 伸 展 ‐ 15 ° 、 屈 曲 145 ° で あ っ た 。 前 方 引 き 出 し テ ス ト は 陰 性 、 extension lag は 陽 性 で 内 側 広 筋 に 萎 縮 が み ら れ 、 後 方 関 節 包 な ど の 短 縮 が 認 め ら れ た 。 Instability は 認 め ら れ な か っ た が 、 歩 行 時 に 大 腿 の 内 旋 が 強 く 入 る knee in toe out ( 以 下 KITO ) を 呈 し て い た 。 X-P 上 骨 癒 合 は 良 好 で あ っ た 。 【 経 過 】 半 膜 様 筋 、 関 節 包 な ど の 膝 関 節 後 方 組 織 の stretching と 持 続 牽 引 を 行 い 、 5 月 29 日には伸展‐ 5 °と改善された。しかし 6 月 6 日の時点で歩行の足底接地から立脚中期に お け る 膝 伸 展 時 に 後 外 側 角 部 痛 を 訴 え る よ う に な っ た 。 フ ァ ベ ラ 腓 骨 靭 帯 ( 以 下 FFL ) の触診では緊張と強い圧痛を認め、膝関節伸展、外旋強制にて、歩行時と同様な疼痛の再 現 を 得 た 。 FFL に 対 す る 選 択 的 stretching を 中 心 に 加 療 し 、 疼 痛 、 可 動 域 の 改 善 が 認 め ら れた。 【 考 察 】 FFL は フ ァ ベ ラ か ら 腓 骨 後 方 に 走 行 し 、 下 腿 の 後 外 側 回 旋 不 安 定 性 を 制 動 し て い る 。 本 症 例 で は 、 FFL に 緊 張 と 強 い 圧 痛 を 認 め 、 膝 関 節 伸 展 、 外 旋 強 制 時 に 同 様 な 疼 痛の再現が認められた。これは歩行の足底接地から立脚中期における膝伸展時に、短縮し て い た FFL が 伸 張 さ れ 、 さ ら に KITO に よ り 下 腿 外 旋 が 強 制 さ れ る 事 で 痛 み が 出 現 し た と 考 え ら れ た 。 治 療 と し て は FFL の 選 択 的 stretching 、 3 方 向 持 続 牽 引 、 VM 強 化 な ど に よ り 、 FFL へ の mechanical stress の 軽 減 を 計 り 良 好 に 改 善 し た 。 メモ 右大腿骨骨幹部骨折の術後理学療法 ∼可動域改善に難渋し、関節授動術を施行した症例∼ 阿部 1) 竜 治 1) 森 古 沢 由 佳 里 1) 統 子 1) 久保 猪田 茂生 こ の み 1) 1 )岡 波 総 合 病 院 リ ハ ビ リ テ ー シ ョ ン 科 1) 米 沢 橋内 秀 典 1 )真 鍋 友 尚 2) 浅野 悟 1) 栗原 多恵 明 裕 3) 2 )岡 波 総 合 病 院 整 形 外 科 1 )碧 南 市 民 病 院 はじめに 今回、大腿骨骨幹部骨折の骨接合術後の可動域拡大に難渋し、授動術を施行された症例に ついて、可動域拡大が困難であった理由と、授動術前・後の膝屈曲制限に対する理学療法 について若干の考察を加え報告する。 症例紹介 60 歳 女 性 。 平 成 15 年 3 月 27 日 、 自 動 車 運 転 中 ト ラ ッ ク と 衝 突 し 受 傷 。 右 大 腿 骨 骨 幹 部骨折、右骨盤骨折、左恥骨骨折、肋骨骨折と診断される。 手 術 記 録 ( 4/9 ) 殿 部 外 側 よ り 遠 位 へ 8cm の 皮 切 を 入 れ 、 大 腿 筋 膜 張 筋 、 中 殿 筋 を 縦 走 切 開 し た 。 梨 状 窩 か ら 髄 内 釘 を 挿 入 後 、 大 転 子 部 、 大 腿 骨 遠 位 部 に 横 止 め Screw を 挿 入 し た 。 理学療法開始∼授動術施行時理学所見・経過① 術 後 5 日 目 理 学 療 法 開 始 。 炎 症 性 浮 腫 認 め 、 膝 屈 曲 25 ° で Patella 上 縁 内 上 方 2 横 指 の ( 以 下 VM) 部 に 圧 痛 ・ 運 動 痛 を 認 め た 。 PT 開 始 5 日 目 、 CT 所 見 上 遠 位 screw が VM 筋 腹 約 2/3 ま で 突 出 。内 外 側 広 筋( 以 下 VM,VL )の 萎 縮 と Extension lag40 ° 認 め た 。ま た Patella 骨 運 動 制 限 を 認 め た 。 3 ∼ 6W は 疼 痛 部 位 、 ROM ほ ぼ 変 わ ら ず 、 術 後 7 W で VM,VL 筋 膨 隆 、 可 動 域 ・ Extension lag の 拡 大 認 め る も 、 術 後 10W で 膝 屈 曲 95 ° Extension lag5 ° で 関 節 授 動 術 ・ 関 節 鏡 で の 癒 着 剥 離 ・ 遠 位 screw 抜 去 術 施 行 。 術 中 最 終 可 動 域 (155 ° ) 獲 得 主 な 治 療 : 浮 腫 除 去 ・ Quad setting ・ 膝 蓋 大 腿 関 節 訓 練 ( 以 下 P-FjtROMex) 授 動 術 後 ∼ ENT 時 理 学 所 見 ・ 経 過 ② 授 動 術 直 後 、 膝 炎 症 性 浮 腫 認 め 膝 屈 曲 120 ° で 前 述 の 遠 位 VM 部 の 伸 張 痛 と 関 節 鏡 術 創 部 の 伸 張 痛 、 さ ら に Quad の 防 御 収 縮 認 め 、 こ れ が 授 動 術 後 ( 以 下 術 後 )3W ま で 続 い た 。 術 後 3W 、 膝 屈 曲 130 ° で 術 創 部 痛 、 大 腿 四 頭 筋 の 伸 張 痛 ・ Patella 骨 運 動 制 限 を 認 め た 。 術 後 5 W で 膝 屈 曲 142 ° 、 大 腿 四 頭 筋 、 遠 位 VM 部 伸 張 痛 の 消 失 。 術 後 8W+3d で 最 終 域 可 能 と な る が 、 最 終 域 で の P-Fjt 術 創 部 伸 張 痛 ・ Patella 運 動 制 限 残 存 の ま ま ENT と な っ た 。 主 な 治 療 : 術 直 後 の CPM ・ 浮 腫 除 去 、 大 腿 前 面 筋 ・ 軟 部 組 織 伸 長 訓 練 ・ P-FjtROMex 、 考察 授 動 術 前 は 、 Screw に よ る 機 械 ス ト レ ス を 考 慮 し つ つ 、 筋 ・ 軟 部 組 織 に 対 す る 近 位 方 向 へ の 筋 滑 走 を 中 心 と し た 拘 縮 予 防 を 実 施 し た が 、 結 果 的 に ROM 制 限 が 残 存 し 、 骨 折 部 周 囲の筋・軟部組織への伸張刺激が不十分であったと考えられた。可動域獲得が困難となっ た骨接合術後3 W 以降に、制限因子となる組織に対し直接的な伸張刺激を加える必要性 を 感 じ た 。 授 動 術 後 は 、 防 御 収 縮 を 制 限 因 子 の 一 つ と 考 え 、 そ の 要 因 の 一 つ に Therapist の操作方法にあると考えた。また時間を要したものの組織に対して直接的な治療を実施し 可動域再獲得が可能となり効果的な治療選択ができたと考えられる。 メモ 足根洞症候群に対する足底挿板療法について 中宿 伸 哉 1 )・ 林 典 雄 1 )・ 鵜 飼 建 志 1 )・ 赤 羽 根 良 和 1 )・ 田 中 宿南 高 則 1 )・ 近 藤 照 美 1 )・ 細 居 雅 敏 1 )・ 増 田 一 太 1 )・ 笠 井 幸彦1) 勉 ( MD ) 2) 1)吉田整形外科病院リハビリテーション科 2)吉田整形外科病院整形外科 【はじめに】足根洞に限局した圧痛と歩行時足関節外側から足背にかけて疼痛を生じた症 例に対し、足底挿板にて治療した結果、良好な成績が得られたので、その作製方法ととも に報告する。 【 対 象 】 平 成 14 年 5 月 21 日 よ り 平 成 15 年 6 月 2 日 ま で に 当 院 を 受 診 さ れ 、 足 根 洞 症 候 群 と 診 断 さ れ た 症 例 6 例 10 足 、 男 性 2 名 、 女 性 4 名 、 平 均 年 齢 51.8 ± 26.9 歳 を 対 象 と し た。 【初診時所見】全例において足根洞に圧痛、歩行時足関節外側部痛が認められた。レント ゲ ン 上 特 異 的 な 所 見 は 確 認 さ れ な か っ た 。 footprint に よ る 歩 行 時 footprint で は 、 5 足 に や や凹足が、2 足に凹足が認められた。歩行観察では、全例において踵骨回外位にて接地し ていた。なお、明らかな外傷癧がある例はなく、不安定性テストも全例において陰性であ った。 【方法】全例において足底挿板療法を施行した。踵接地時の踵骨回外に対し、踵骨の外側 縁に沿って中足骨パッドを貼付し踵骨の直立化を図った。次に踵骨の回内誘導に対するカ ウンター目的として舟状骨パッドを貼付した。また、必要に応じて前足部の支持を追加し 完成とした。 【 結 果 】 歩 行 時 足 関 節 外 側 部 痛 は 、 足 底 挿 板 使 用 後 最 短 当 日 、 最 長 24 日 、 平 均 17.3 ± 6.8 日 に て 全 例 消 失 し た 。足 根 洞 の 圧 痛 は 、7 足 に お い て 最 短 14 日 、最 長 24 日 、平 均 19.0 ± 7.1 日で消失したが、3 足においては軽減しているものの残存した。 【考察】 本症における疼痛発生機序として、踵接地時における踵骨の回外接地が大きく関与して いると思われる。踵骨が回外位で接地することにより、足根洞内の骨間距踵靱帯に伸張ス トレスが加わる。これにより、骨間距踵靱帯が微細断裂し、また滑膜が増生することで慢 性炎症が生じるため疼痛が生じたものと思われた。 足根洞症候群に対する足底挿板療法は、早期疼痛消失、軽減させるための有効な治療手 段の 1 つになると考えられた。 メモ 当院における踵骨棘に対する足底挿板療法について 中宿 伸 哉 1 )・ 林 典 雄 1 )・ 鵜 飼 建 志 1 )・ 赤 羽 根 良 和 1 )・ 田 中 宿南 高 則 1 )・ 近 藤 照 美 1 )・ 細 居 雅 敏 1 )・ 増 田 幸彦1) 一 太 1 )・ 笠 井 勉 ( MD ) 2 ) 吉 田 整 形 外 科 病 院 リハビリテーション科 1 ) 吉田整形外科病院整形外科2) 【はじめに】今回、踵骨棘と診断され理学療法を実施した症例に対し、足底挿板療法を試 み、良好な成績が得られたので、その方法とともに報告する。 【 対 象 】 平 成 14 年 3 月 28 日 か ら 平 成 15 年 1 月 22 日 ま で に 当 院 を 受 診 し 、 踵 骨 棘 と 診 断 さ れ た 症 例 19 例 26 足 、 男 性 3 名 、 女 性 16 名 、 平 均 年 齢 53.1 ± 12.3 歳 を 対 象 と し た 。 【 初 診 時 所 見 】 圧 痛 部 位 は 、 踵 部 中 央 か ら や や 内 側 に か け て 全 例 26 足 100 % に 認 め 、 足 底 腱 膜 付 着 部 は 6 足 23.1 % で あ っ た 。 踵 部 に 対 す る 叩 打 痛 は 全 例 認 め ら れ た 。 足 趾 の 過 伸 展 ス ト レ ス に 伴 い 疼 痛 が 誘 発 さ れ た 症 例 は 1 例 3.8 % で あ っ た 。 レ ン ト ゲ ン 上 踵 骨 棘 が 確 認 さ れ た の は 、 16 足 61.5 % で あ っ た 。 横 倉 法 で は 、 9 足 34.6 % に 扁 平 足 が 確 認 さ れ た 。 ま た 、 calcaneal pitch は 、 15 ° 未 満 が 6 足 23.1 % 、 平 均 11.0 ± 3.7 ° で 、 15 ° 以 上 が 20 足 76.9 % 、 平 均 19.9 ± 3.4 ° で あ っ た 。 歩 行 時 footprint 及 び 歩 行 分 析 に て 、 踵 骨 が 回 内 し て い る も の は 12 足 46.2 % で 、 踵 骨 が 回 外 し て い る も の は 14 足 53.8 % で あ っ た 。 踵 接 地 時 の 疼 痛 は 全 例 に 認 め ら れ た が 、 4 足 15.4 % に お い て は 長 時 間 の 立 位 で も 踵 部 痛 が 出 現 していた。 【方法及び結果】踵部に対して床からの衝撃を吸収・分散化する目的として、足底挿板を 作製した。足底挿板装着により、歩行時及び荷重時に伴う踵部痛は、全例において即座に 消失及び著明に軽減した。 【 考 察 】 insole therapy の 目 的 は 、 踵 部 が 床 か ら 受 け る 衝 撃 を 吸 収 し 、 か つ 圧 痛 部 位 に 極 力加わることなく分散することである。踵部にかかる荷重に対し、踵部の内側・後方・外 側にわたる辺縁で受けるようにパッドを貼付した。さらに重心の軌跡を正常化し母趾での 蹴り出しを可能にする目的として舟状骨パッドを貼付した。また、長時間の立位にて疼痛 が誘発されるものは、足底腱膜の伸張による影響が考慮されたため、さらに中足骨パッド を貼付した。今回作製した足底挿板は、歩行時・荷重時における踵部痛に対し有効な治療 の 1 つであると思われた。 メモ 足部アーチ障害に伴う中足骨頭部痛を呈した2症例 ∼足底挿板の効果∼ 長田 瑞穂1) 林 典雄2) 1 )平 成 医 療 専 門 学 院 理学療法学科 2 )吉 田 整 形 外 科 病 院 リハビリテーション科 【はじめに】 中足骨頭部に疼痛を訴える代表的な足部障害として外反母趾、開張足や扁平足などのア ーチ障害を主体とする疾患があるが、ハイアーチに伴った疼痛も同様に散見される。今回、 中 足 骨 頭 部 に 圧 の 集 積 を 認 め 、 疼 痛 を 訴 え た low ア ー チ と high ア ー チ に 対 し て 足 底 挿 板 を処方し改善を得た2症例について報告する。 【症例紹介】 症 例 1 : 40 歳 、 女 性 、 low ア ー チ に よ り 中 足 骨 頭 部 痛 を 呈 し た 症 例 で あ る 。 フ ッ ト プ リ ント上、ⅡからⅤ中足骨頭部への圧の集積を認め、後足部は踵骨の過回内と内側縦アーチ の低下を示唆した。 症 例 2 : 54 歳 、 女 性 、 high ア ー チ に よ り 中 足 骨 頭 部 痛 を 呈 し た 症 例 で あ る 。 フ ッ ト プ リ ン ト 上 、 Ⅰ か ら Ⅳ 中 足 骨 頭 部 に 圧 の 集 積 を 認 め 、 ア ー チ は 反 対 側 に 比 べ high ア ー チ で あり足長、MTP幅とも短縮を認めた。 【足底挿板の調整内容及び経過】 症例1:舟状骨パッドは載距突起のやや後方から前方へ内側縦アーチを挙上させるよう に貼付し、中足骨パッドはⅡ、Ⅲ中足骨部を持ち上げるように中足骨底から骨幹中央部に 貼付した。処方14日後、足底挿板により著しく歩行時痛は改善し、処方1ヶ月後、足底 挿板は使用しなくとも疼痛は消失した。 症例2:舟状骨パッドを載距突起から前方に内側の縦アーチに沿って貼付し、中足骨パ ッドをⅡ、Ⅲ中足骨部と立方骨、踵骨外側に連続して3枚貼付した。処方4日後、母趾M TP関節に疼痛出現したため、中足骨パッドをやや近位で中足骨底部に貼付したところ疼 痛徐々に改善し、処方38日後、足底挿板を使用しなくとも症状は改善した。 【考察】 症例1では踵骨は回内しており、内側縦アーチは低下し、Ⅱ、Ⅲ中足骨頭部に荷重がか かっている足部であったため、荷重に対してアーチの崩れを防止して中足骨頭部への荷重 を分散させた。 症例2では足長が短く内側縦アーチが挙上している足部はリスフラン関節での底屈が大 きく、中足骨頭部に荷重がかかっている足部であったため、荷重を利用したアーチの低下 による修正を行った。中足骨頭部の圧の集中や疼痛を呈している症例では必ずしも同じア ーチ障害ではなく、適切な足底挿板の治療を行うためには総合的に評価し、処方後の経過 観察と修正を行う事で疼痛の改善、変形の矯正、アライメントの改善が可能と考えられた。 メモ フットプリントにおける異常所見と荷重位 X 線所見との関係につ いて 林 典 雄 1 ) ,中 宿 伸 哉 1 ) ,鵜 飼 建 志 1 ) ,赤 羽 根 良 和 1 ) ,田 中 幸 彦 1 ) ,細 居 雅 敏 1), 宿南高則1) 近 藤 照 美 1),増 田 一 太 1 ) ,笠 井 勉 2 ) ,吉 田 徹 2 ) ,長 田 瑞 穂 3 ) ,篠 田 信 之 4 ) 吉 田 整 形 外 科 病 院 リハビリテーション科 1 ) ,吉 田 整 形 外 科 病 院 整 形 外 科 2 ) 平成医療専門学院理学療法学科3) ,名 光 ブ レ ー ス 4 ) 【はじめに】今回我々は、フットプリントにおいて比較的多く認められる異常所見と、荷 重位 X 線所見との間の関連性について検討したので報告する。 【 対 象 ・ 方 法 】 フ ッ ト プ リ ン ト 並 び に 荷 重 位 X 線 写 真 が そ ろ っ た 125 例 ( 男 性 36 例 、 女 性 89 例 ) 200 足 を 対 象 と し た 。 こ れ ら 対 象 に 対 し 、 Brekeman foot print を 用 い 、 自 然 歩 行 中 の フ ッ ト プ リ ン ト を 作 成 し た 。 こ の フ ッ ト プ リ ン ト 所 見 よ り 、 正 常 足 ( 以 下 TypeA ) 35 足 、 後 足 部 回 内 足 ( 以 下 TypeB ) 35 足 、 凹 足 ( 以 下 TypeC ) 30 足 、 中 足 骨 横 ア ー チ 低 下 足 ( 以 下 TypeD ) 56 足 、 扁 平 足 ( 以 下 TypeE ) 44 足 に 分 類 し た 。 荷 重 位 X 線 所 見 は 、 外 反 母 趾 角 、 M1M2 角 、 M1M5 角 、 お よ び 横 倉 法 に て 、 T 値 、 R 値 、 C 値 、 N 値 、 L 値 に つ いて計測した。統計学的処理には一元配置の分散分析を用い、有意水準は5%とした。 【 結 果 お よ び 考 察 】 TypeA の 各 項 目 平 均 計 測 値 は 、 HVA : 13.9 ° 、 M1M2 : 11.0 ° 、 M1M5 : 27.5 ° 、T : 34.4 % 、R : 52.9 % 、C : 33.4 % 、N : 28.9 % 、L : 23.5 % で あ っ た 。M1M2 角 に お い て 正 常 値 10 ° 未 満 を 若 干 上 回 っ て い る ほ か は 、 奥 田 、 横 倉 ら に よ り 示 さ れ た 正 常値と近似しており、フットプリント上の正常足は X 線学的にもその妥当性が示された。 今 回 の 結 果 で は 、 フ ッ ト プ リ ン ト 上 扁 平 足 と 分 類 し た TypeE と 横 ア ー チ 低 下 足 と 分 類 し た TypeD は HVA 、 M1M5 と も に 有 意 に 高 く 、 従 来 の 報 告 同 様 に 外 反 母 趾 角 と 前 足 部 開 張 程 度 の 相 関 関 係 を 示 す も の で あ っ た 。 荷 重 位 側 面 像 に お け る 結 果 で は 、 TypeE は す べ て の 項 目 で 有 意 に 低 値 で あ り 、 荷 重 位 X 線 所 見 と も 関 連 性 を 持 っ て い た 。 TypeB も TypeA に 比較しすべての項目で有意に低値であり、足部の扁平化を示す所見として妥当であった。 TypeB と TypeE と の 比 較 で は 、 R 値 を 除 く 項 目 で 有 意 差 を 認 め 、 後 足 部 の 回 内 傾 向 を 示 す とともに、完全な扁平足の前段階に当たると考えられた。フットプリント上凹足と分類し た TypeC で は 、 正 面 像 に お け る M1M5 角 以 外 の す べ て の 項 目 で TypeA と の 間 に 有 意 差 を 認 め ず 、 必 ず し も high arch を 示 し て い る と は 限 ら な い こ と が 示 さ れ た 。 最 後 に 横 ア ー チ 低 下 足 と 分 類 さ れ た TypeD で は 、 N 、 L 値 に お い て 有 意 差 を 認 め 、 フ ッ ト プ リ ン ト と 荷 重 位 X 線所見との強い関連性を示すと考えられた。 メモ 下腿遠位端骨折の術後早期理学療法を経験して ○林 優1), 小野 晶 代 1 ) ,笠 野 由 布 子 1 ) ,今 井 田 憲 1) ,安 倍 基幸(MD)1), 博文(MD)2) 1)岐阜中央病院 リハビリテーション科 2) 岐阜中央病院 整形 外科 【 は じ め に 】 今 回 、 下 腿 遠 位 端 骨 折 に 対 し て 術 後 早 期 か ら 理 学 療 法 ( 以 下 PT) を 開 始 し 、 術 創 部 に か か る 緊 張 を 抑 制 し つ つ 、 内 側 広 筋 ( 以 下 VM) 、 外 側 広 筋 ( 以 下 VL) の 筋収縮力アップと滑走障害の予防に対するアプローチを施行した所、良好な成績を得 られたので若干の考察を加え報告する。 【 症 例 紹 介 】 症 例 は 24歳 女 性 で 平 成 14年 12月 31日 に 、 ス ノ ー ボ ー ド 中 転 倒 し 受 傷 し た 左 下 腿 両 骨 骨 折 で あ る 。 平 成 15年 1月 6日 に キ ュ ン チ ャ − 髄 内 釘 固 定 を 施 行 し 、 1月 8日 よ り PT開 始 と な っ た 。 【 経 過 】 初 診 時 所 見 は 膝 関 節 可 動 域 他 動 屈 曲 45° 、 伸 展 0° で あ っ た 。 大 腿 四 頭 筋 の 収 縮 時 に は 術 創 部 に 痛 み が あ り 、 VM、 VLの 収 縮 低 下 を 認 め た 。 左 大 腿 遠 位 1/3か ら 足 趾 に か け て 浮 腫 を 認 め 、 膝 関 節 周 辺 に 熱 感 が あ っ た 。 PT開 始 1 W( 抜 糸 時 ) 膝 関 節 屈 曲 95° 、 3 Wで は 膝 関 節 完 全 屈 曲 可 能 と な っ た 。 【考察】本症例に対するリハビリの治療目的は抜糸前には皮膚の伸張を抑え、膝関節 伸 展 に 関 与 す る 軟 部 組 織 の 滑 走 障 害 の 予 防 及 び VM、 VLの 筋 収 縮 力 改 善 で あ る 。 抜 糸 後 はより強い抵抗下での大腿四頭筋の筋力増強を目的に行った。これらにより今回、早 期 に 膝 関 節 可 動 域 の 改 善 が 出 来 た の は 、 疼 痛 を 出 現 さ せ な い よ う 留 意 し PTを 施 行 し 、 膝関節屈曲に必要な軟部組織の十分な伸張性が得られた結果と思われる。 メモ 西本 足 関 節 背 屈 制 限 を 呈 し た 外 傷 性 下 腿 コンパートメント症 候 群 の 一 症 例 風 間 裕 孝 1 )・ 松 井 俊 明 2 ) 1) 新潟医療生活協同組合木戸病院 リハビリテーション科 2)同 整形外科 【 は じ め に 】コンパートメント症 候 群 と は 、筋 膜 及 び 骨 な ど に よ り 閉 鎖 さ れ た 空 間 内 の 内 圧 が 種 々 の要因で亢進し、そのため筋や神経の循環障害が生じた状態である。今回、外傷性の下腿 打 撲 に 伴 い 、 下 腿 コンパートメント症 候 群 と 診 断 さ れ た 足 関 節 重 度 背 屈 制 限 を 呈 し た 症 例 に 対 し 、 選 択 的 な 筋 収 縮 運 動 ・ ストレッチを 中 心 に 施 行 し 改 善 が 認 め ら れ た の で 、若 干 の 考 察 を 含 め 報 告 する。 【 症 例 紹 介 】 13 歳 女 子 中 学 生 、 吹 奏 楽 部 所 属 。 平 成 15 年 5 月 15 日 、 自 転 車 で 乗 用 車 と 接 触 し 、 左 下 腿 を 打 撲 。 翌 日 、 腫 脹 ・ 足 関 節 背 屈 制 限 み ら れ 、 コンパートメント症 候 群 疑 わ れ 安 静 目 的 に 入 院 。 MRI 所 見 で 血 腫 認 め ら れ 、 組 織 内 圧 法 に て 前 方 コンパートメント 40mmHg ・ 浅 後 方 コンパートメント 23mmHg 、 下 腿 周 径 最 大 対 側 + 3cm 。 7 日 間 の 安 静 後 、 疼 痛 軽 減 傾 向 で PT 開 始となった。 【 PT 経 過 】 初 診 時 、 左 下 腿 腫 脹 、 下 腿 中 央 内 側 ∼ 後 方 に か け て の 硬 結 ・ 圧 痛 著 明 で 、 熱 感、皮下出血を認めた。足関節は疼痛のため尖足位で固定状態。他動的背屈で疼痛強く、 ROM は 背 屈 − 50 ° / 底 屈 65 ° 、 周 径 対 側 + 1,5cm で あ っ た 。 開 始 10 日 で 腫 脹 消 失 し 、 周径は 対 側 ± 0cm 、 背 屈 0 ° 、 MMT 底 屈 筋 群 3 、 踵 接 地 歩 行 で 退 院 と な っ た 。 3 週 で 対 側 と 同 等 の 可 動 域 を 得 、 jogging 可 能 と な っ た 。 【 治 療 】 選 択 的 筋 収 縮 運 動 ・ ストレッチ(浅 後 方 ・ 深 後 方 コンパートメント)、アイシング、渦 流 浴 、持 続 的 ストレ ッチ。 【 考 察 】 コンパートメント症 候 群 の 保 存 療 法 の 後 療 法 に 関 し て 報 告 は 少 な い が 、 コンパートメント内 の 血 行 を 良 好 に す る こ と が 重 要 と 言 わ れ て い る 。 本 症 例 は 主 に 浅 後 方 コンパートメントの 障 害 で 、 他 コ ンパートメントの 障 害 よ り 予 後 良 好 と さ れ て い る が 、 下 腿 後 面 の 腫 脹 ・ 圧 痛 ・ 尖 足 著 明 で 、 後 遺 症の遺残が危惧された。しかし、治療として選択的な筋収縮運動を行うことで、筋の滑 走 ・ 収 縮 性 が 改 善 し 、筋 萎 縮 が 防 止 さ れ 、ま た 選 択 的 な ストレッチを 行 う こ と で 筋 の 伸 張 性 が 改 善されたと考えられた。反復収縮に伴い血流及び静脈還流の増加が腫脹の軽減を促進し、 損傷筋の瘢痕化を防止し、筋線維の再生化を促進する作用もあったと考えられた。 メモ 腰部椎間板ヘルニアの保存療法を経験して 井上 雄一1) 1)日下病院 松本 正知2) 赤尾 和則2) 加藤 明(MD)1) 2)桑名市民病院 【はじめに】 腰椎椎間板ヘルニアの治療において、数多くの報告がなされているように当院において も治療の第一選択は保存療法である。今回、腰部椎間板ヘルニアと診断された症例に対し、 当院で行われている運動療法を主とする保存療法について若干の考察を含め報告する。 【症例紹介】 症 例 は 47 歳 男 性 で 5 月 10 日 仕 事 中 腰 痛 感 じ 、 I 病 院 を 受 診 し 改 善 さ れ ず 、 7 月 2 日 当 院 受 診 す る 。 MRI 上 L3/L4 レ ベ ル で 左 側 の デ ィ ス ク の 突 出 を 認 め 、 腰 部 椎 間 板 ヘルニアと診断され入院となる。 【 初 診 時 所 見 お よ び 経 過 】( 7 / 3 ∼ 7 /24 ) 7月3日 左 L4 領 域 に 痺 れ + 、 下 肢 伸 展 挙 上 ( SLR): 右 5 5 ° 左 6 5 ° ラ セ ー グ 徴 候 陽 性 、 腰 痛 : VAS 8 、 指 床 間 距 離 ( FFD ) − 6 0 ㎝ 、 腰痛疾患治療成績判定基準(日本整形外科学会)13点 11日 24日 痺 れ 軽 減 、 VAS 5 、 SLR 右 7 0 ° 左 7 5 ° 、 FFD − 1 4 ㎝ 痺 れ 消 失 VAS 0 、 SLR 右 9 0 ° 左 9 5 ° FFD 2 ㎝ 。 腰 痛 疾 患 治 療 成 績 判 定 基 準 2 8 点 。( 退 院 ) 【方法】 腰椎椎間板ヘルニアの治療を進めるにあたって患者の個人差、病態や病状などから目安 として段階的に治療を行っている。 急性期(発症後1∼2週) 消炎鎮痛処置や持続的骨盤牽引が処方される。 回復期(発症後2週∼4・6週まで)運動療法開始。ハムストリングス等の反復性収縮後 のストレッチ、腹筋・背筋の筋力強化。 治癒期(発症後4∼6週以降) FFD を 0 c m へ 、 柔 軟 性 維 持 、 職 場 へ の 理 解 。 【考察】 急 性 期 は 、 症 状 や MRI 等 の 画 像 情 報 を 加 味 し 、 消 炎 鎮 痛 を 目 的 に 安 静 に し て い る こ と が多い。回復期には、①坐骨神経の滑動性の維持を期待しハムストリングス等に反復性収 縮 後 の ス ト レ ッ チ 、 SLR の 改 善 を 行 い 、 ② 腰 椎 椎 間 板 ヘ ル ニ ア の 再 発 防 止 や 除 痛 を 目 的 とし腹筋・背筋の筋力強化をおこなっている。 治 癒 期 に は 、 回 復 期 の 治 療 に 加 え FFD を 0 cm と す る こ と を 目 標 と し て 治 療 を 進 め て い る。これには骨盤を中心としたハムストリングス柔軟性と腰椎可動性が重要となり、改善 の目安としている。 本症例において発症時期は明確ではなく時間的経過あるが、腰痛強いため消炎鎮痛剤の投 与に加え運動療法が同時におこなわれた。SLRはしびれのある左下肢より右下肢が低下 しており両側に筋収縮をおこなうことにより可動域改善し、また腹筋・背筋筋力強化は腰 痛程度により負担少ない頭部挙上から最終的には同時収縮による筋力増強をおこなった。 退院後は柔軟性維持、職場への理解を促し長時間労働や中腰姿勢作業を避けてもらい現在 でも再発は認められない。 メモ 上 腕 骨 近 位 端 骨 折 ( 4part fructure ) に 対 し て 肩関節人工骨頭置換術を施行した一症例 田 中 和 彦 ・ 福 田 雅 ( MD )・ 伊 藤 芳 毅 ( MD )・ 糸 数 万 正 ( MD ) 岐阜大学医学部附属病院 【 要 旨 】 上 腕 骨 近 位 端 骨 折 で 人 工 骨 頭 の 適 応 と な る の は Neer の 分 類 の 3-part 骨 折 の 一 部 、 4part 骨 折 、 骨 頭 分 割 骨 折 で あ る 。 ま た 、 高 齢 者 に 対 し て は 人 工 骨 頭 置 換 術 を 施 行 し て も しなくても成績がかわらず、適応と判断しない場合も多いのが現状である。今回、高齢者 の 4part 骨 折 に 対 し て 人 工 骨 頭 置 換 術 を 施 行 し た 症 例 を 経 験 し た の で 報 告 す る 。 【症例】S.I 77 歳 男性 【 現 病 歴 】 平 成 15 年 6 月 27 日 に 飲 酒 に て 、 転 倒 し 右 肩 を 打 つ 。 同 日 、 近 医 整 形 外 科 受 診 し 、 右 上 腕 骨 近 位 端 骨 折 ( 4part fructure ) と 診 断 さ れ 、 同 年 7 月 1 日 当科紹介。7月9 日 に 手 術 目 的 に て 入 院 。 7 月 18 日 に て 肩 関 節 人 工 骨 頭 置 換 術 を 施 行 。 【画像所見】単純X−P及び3DCTより外科頚、大結節、小結節に骨折線と上腕骨頭の 転位が認められる。 【理学療法経過】 7 月 10 日 理学療法開始 7 月 18 日 肩関節人工頭置換術施行 7 月 22 日 理学療法開始 7 月 25 日 肘 ・ 手 ・ 手 指 関 節 の 自 動 運 動 可 能 肩 関 節 他 動 挙 上 90 ° 8月1日 肩 関 節 他 動 挙 上 150 ° 大結節が肩峰下を通過(疼痛なし) 8月7月 肩 関 節 他 動 挙 上 170 ° 立 位 に て 棒 や 健 側 上 肢 の 補 助 に て 挙 上 160 ° 可 能 8 月 29 日 肩 関 節 自 動 挙 上 75 ° 肩甲骨・肘・手・手指関節のアプローチ 肩関節から手指までの上肢全体は著明な浮腫により堅い状態 現 在 も 外 来 に て follow 中 【考察】今回、術後の理学療法により浮腫の改善とともに肘・手・手指のROMと自動運 動の改善ができた。そのために肩関節周囲や全身のリラクゼーションが得られ、臼蓋上腕 関 節 で の R O M 改 善 が 容 易 に で き た 。 本 症 例 は 現 在 も Follow 中 で あ り 、 筋 力 訓 練 を 中 心 に施行中である。 メモ 当院における野球肩の治療成績について 鵜飼 建 志 1 )・ 林 彦 1 )・ 宿 南 増田 典 雄 1 )・ 細 居 高 則 1 )・ 近 藤 雅 敏 1 )・ 赤 羽 根 良 和 1 )中 宿 伸 哉 1 )・ 田 中 幸 照美1) 一 太 1 )・ 帯 川 真 由 美 1 )・ 笠 井 勉 ( MD ) 2 ) 杉 本 勝 正 ( MD ) 3 ) 1)吉田整形外科病院 理学療法科 2)吉田整形外科病院 整形外科 3)名鉄病院 整形外科 キーワード 野球肩、治療成績、理学的所見 当院における野球肩の治療成績を報告するとともに、特徴的な所見、理学療法について 報告する。 対 象 は 平 成 14 年 2 月 か ら 平 成 15 年 7 月 ま で 当 院 を 受 診 し 、 運 動 療 法 を 実 施 し た 野 球 肩 56 例 を 対 象 と し た 。 内 訳 は 小 学 生 3 例 、 中 学 生 19 例 、 高 校 生 21 例 、 大 学 生 2 例 、 一 般 社 会 人 11 例 で あ っ た 。 事 前 調 査 項 目 と し て は 1 )疼 痛 発 生 部 位 、 2 )疼 痛 発 生 投 球 相 、 3 )主 な理学所見とした。 1 )疼 痛 発 生 部 位 は 後 外 側 部 59.6% 、 肩 峰 下 部 22.8% 、 肩 前 方 部 21.1% 、 広 背 筋 部 7.0% で あ った。 2 )疼 痛 発 生 投 球 相 は acceleration phase ( 以 下 A 期 ) が 49.1% 、 follow through phase (以 下 F 期 )が 45.2% 、 cocking phase (以 下 C 期 )が 30.2% 、 ball release 時 が 11.3% で あ っ た 。 疼 痛 発 生 部 位 別 で 特 徴 的 な 所 見 と し て 、 QLSS で は F 期 が 22 例 ( 64.7% )と 特 に 多 く 、 C 期 12 例 ( 35.3% )、 A 期 11 例 ( 32.4% )で あ っ た 。 RI 損 傷 で は 全 例 A 期 に あ っ た 。 3 )主 な 理 学 所 見 と し て 、 圧 痛 は 小 円 筋 77.4% 、 quadrilateral space ( 以 下 QLS ) 64.2% 、 棘 上 筋 54.7% 、 上 腕 三 頭 筋 長 頭 腱 35.8% 、 大 円 筋 32.1% 、 rotator interval 部 26.4% な ど で あ っ た 。 可 動 域 制 限 及 び 最 終 域 で の 疼 痛 出 現 は 3rd 内 旋 が 84.9% 、 2nd 外 旋 が 26.4% 、 1st 外 旋 が 15.1% で あ っ た 。 僧 帽 筋 筋 力 低 下 ( MMT3 以 下 )が 下 部 線 維 が 81.1% 、 中 部 線 維 が 47.2% であった。 治 療 内 容 は ① 圧 痛 の あ る 筋 に 対 す る relaxation ② 拘 縮 の 除 去 ③ 筋 力 低 下 改 善 訓 練 ④ 投 球 form 指 導 な ど を 行 っ た 。 結 果 は 、 全 力 投 球 可 能 と な っ た も の は 55 例 ( 96.5% )、 不 可 だ っ た も の は は 2 例 ( 3.5% )で あ っ た 。 全 力 投 球 可 能 と な っ た も の に お い て 、 キ ャ ッ チ ボ ー ル 開 始 治 療 期 間 は 9.4 日 ± 6.5 ( 最 小 1 日 、 最 大 31 日 )、 CB 開 始 治 療 回 数 は 3.2 回 ± 1.6 (最 小 1 回 、 最 大 7 回 )、 全 力 投 球 開 始 期 間 28.1 日 ± 12.1 (最 小 3 日 、 最 大 62 日 )、 全 力 投 球 開 始 治 療 回 数 6.5 回 ± 2.6 (最 小 1 回 、 最 大 14 回 )で あ っ た 。 メモ 胸郭出口症候群牽引型の症例を経験して 細居雅敏1) 宿南高則1) 林典雄1) 鵜飼建志1) 近藤照美1) 増田一太1) 赤羽根良和1) 中宿伸哉1) 田中幸彦1) 笠 井 勉 ( MD )2 ) 1) 吉 田 整 形 外 科 病 院 リハビリテーション科 2) 吉 田 整 形 外 科 病 院 整形外科 【 初 め に 】 胸 郭 出 口 症 候 群 (以 下 TOS )は 、 腕 神 経 叢 圧 迫 型 と 牽 引 型 に 分 類 さ れ 各 々 異 な った特徴を示す。牽引型の特徴は、肩甲骨の内転位保持により腕神経叢の牽引状態を緩め ると即座に症状が改善されることであり、除圧手術の適応は無い。そのため肩甲帯の安定 化 が 保 存 療 法 の 要 点 で あ る と さ れ て い る 。 今 回 、 TOS 牽 引 型 の 症 例 を 経 験 す る 機 会 を 得 たので、その経過とともに実施した理学療法について報告する。 【 症 例 紹 介 】 症 例 は 33 歳 、 1 歳 に な る 双 子 を 持 つ 女 性 で あ る 。 平 成 15 年 7 月 24 日 夜 中 に右肩の冷感を覚え、目が覚めたときに右頸部から上肢にかけて疼痛が出現。翌朝、右頸 部 か ら 右 手 指 ま で し び れ が 出 現 し た た め 当 院 を 受 診 、 TOS と 診 断 さ れ 、 同 日 理 学 療 法 開 始となる。 【初診時評価】主訴は右頸部から右上肢までの疼痛及び手指に至るしびれであった。理学 所 見 は 、 Adson's test (− )・ Wright's か け て 鈍 痛 )・ Three minutes test (+ )・ Morley's test (+ : 右 頸 部 か ら 右 上 肢 に test は 16 秒 で あ っ た 。 ま た 、 圧 痛 所 見 は 斜 角 筋 ・ 小 胸 筋 ・ 肩 甲 挙 筋 に 認 め 、同 筋 を 抑 え る と 上 肢 に 放 散 痛 を 認 め た 。そ の 他 、肩 峰 床 面 距 離 は 右 6 横 指 ・ 左 5 横 指 で あ り 、 僧 帽 筋 中 部 線 維 の MMT は 3 − 、 下 部 線 維 2 + で あ っ た 。 ま た 、 肩 甲 骨 は 下 方 回 旋 ・ 外 転 し て お り 、 X-p 上 に お い て は 、 頸 部 が 疼 痛 の た め 大 き く 右 に 側 屈 しており、頚椎の前彎が減少していた。 【経過】初日の治療後にはしびれ及び疼痛・筋の圧痛は陰性化し、頚の側屈も改善した。 治療 3 回目より僧帽筋中部・下部線維の筋力強化訓練を追加し、治療 5 回目には上肢を抗 重 力 位 に て 保 持 す る 事 が 可 能 と な り 、 若 干 の 右 頸 部 か ら 右 肩 部 の 鈍 痛 と Wright's test 以 外は陰性化した。 【 考 察 】 TOS は 、 重 量 物 の 保 持 に よ り 上 肢 が 下 方 に 牽 引 さ れ 肩 甲 帯 は 下 方 回 旋 ・ 外 転 し 、 腕神経叢を牽引する事により様々な症状を引き起こすものとされている。その背景には不 良 姿 勢 に 伴 う malaligment が 大 き く 関 与 し て い る と さ れ 、 そ の 対 策 の 一 つ と し て K − S バ ン ド の 効 果 は 広 く 認 識 さ れ て い る 。 TOS 牽 引 型 の 治 療 の 基 本 は 肩 甲 骨 の 上 方 回 旋 ・ 内 転 位 の 獲 得 で あ り 、 そ の た め に は 肩 鎖 ・ 胸 鎖 関 節 の 拘 縮 の 除 去 や 下 方 回 旋 筋 の relaxation と 上 方 回 旋 筋 の 筋 力 強 化 が 必 須 で あ る 。 こ れ ら の 治 療 に よ り 、 malaligment が 修 正 さ れ る こ とにより、腕神経叢の弛緩及び肋鎖間隙の拡大が得られるとともに、二次的効果としての 臼蓋上腕関節の安定性が良好な治療成績を得た要因と考える。 メモ 橈骨遠位端骨折に合併する肩関節障害について 宿南 高 則 1 )・ 林 典 雄 1) 田中 幸 彦 1 )・ 近 藤 ・鵜飼 照 美 1 )・ 細 居 建 志 1 )・ 赤 羽 根 雅 敏 1 )・ 増 田 1) 吉田整形外科病院 リハビリテーション科 2) 吉田整形外科病院 整形外科 良 和 1 )・ 中 宿 一 太 1 )・ 笠 井 伸 哉 1) 勉 ( MD ) 2 ) 【はじめに】橈骨遠位端骨折は受傷機転として高齢者の転倒が多数を占め、若年者におい て 交 通 事 故 、 転 落 な ど の high energy に よ る と 報 告 さ れ て い る 。 ま た 、 臨 床 に お い て 肩 関節痛を訴える症例は少なくないとされている。今回我々は、橈骨遠位端骨折に肩関節障 害を合併した症例の臨床的特徴について検討したので報告する。 【 対 象 お よ び 方 法 】 当 院 に お い て 平 成 14 年 1 月 か ら 平 成 15 年 7 月 ま で に 橈 骨 遠 位 端 骨 折 と 診 断 さ れ 、 運 動 療 法 が 依 頼 さ れ た 48 名 の う ち 、 肩 関 節 障 害 を 合 併 し た 6 名 を 対 象 と し た 。 平 均 年 齢 は 68.3 ± 8.5 歳 で あ り 、 全 例 が 女 性 で あ っ た 。 こ れ ら 対 象 に 調 査 項 目 と し て ①骨折型、②骨アライメント、③受傷後、肩関節障害を自覚した期間、④ギプス固定期間、 ⑤肩関節可動域、⑥夜間痛の有無、⑦各種テスト、⑧圧痛所見、以上の各項目について検 討した。 【 結 果 】 ① Colles 骨 折 4 例 、 橈 骨 遠 位 端 粉 砕 骨 折 1 例 、 Barton 骨 折 1 例 ② 受 傷 後 の 平 均 骨 ア ラ イ メ ン ト は radial inclination24.0 ± 9.2 ° 、 radial length12.3 ± 1.0mm 、 volar tilt13.3 ± 10.2 ° ③ 9 ± 8.54 週 ④ 6 ± 1.9 週 ⑤ 平 均 ROM は 、 屈 曲 112.5 ± 19.9 ° 、 1st position 外 旋 30 ± 18.4 ° 、 2nd 内 ・ 外 旋 30 ° 、 1 st 内旋:下位腰椎レベル・殿部外側・ 不 明 そ れ ぞ れ 2 症 例 ⑥ 夜 間 痛 を 66.7 % に 認 め た 。 ⑦ 肩 関 節 外 転 テ ス ト は 50 % に 陽 性 、 painful arc sigh 、 impingement sigh と も に 16.7 % に て 陽 性 ⑧ 部 位 と し て 棘 上 ・ 棘 下 筋 、 Quadri-lateral-space 、 大 ・ 小 円 筋 、 Rotator 【 考 察 】 発 生 原 因 と し て subacromial 時 の 外 力 は second interval 、 上 腕 三 頭 筋 、 結 節 間 溝 部 に 認 め た 。 space の 軟 部 組 織 の 退 行 性 変 化 が 基 盤 に あ り 、 受 傷 joint に お い て 上 腕 骨 頭 が 突 き 上 げ ら れ 走 行 す る 棘 上 筋 、 肩 峰 下 滑 液 包が損傷される事は容易に想像される。その後、4 ∼ 6 週のギプス固定が行なわれるが、 この時期に損傷している腱板疎部を中心とした上方軟部組織・腱板の癒着、肩峰下滑液包 の癒着・瘢痕化が引き起こされると考えられる。林らはそれら軟部組織の癒着により subacromial gliding mechanism の 破 綻 や 上 方 支 持 組 織 の 拘 縮 が 肩 峰 下 圧 の 上 昇 に 関 与 し 、 夜間痛の発生に影響していると報告している。我々の結果において肩関節障害を合併した 症 例 が 12.5 % と 決 し て 稀 な も の で は な い 事 が う か が わ れ る 。 し か し 、 橈 骨 遠 位 端 骨 折 に 対する骨折型や骨癒合時における骨アライメント、ギプス固定期間に対して肩関節障害を 合併しない症例と比較して特異的なものではないと考えられる。また予後については、ま ず橈骨遠位端骨折に対する治療が優先される為に肩関節障害に対する治療が見落とされが ちである。よって、橈骨遠位端骨折受傷後、早期より肩関節の状態は見なければならない 重要なポイントであると考えられる。 メモ Glenoid osteotomy 後 15 年 で 生 じ た 腱 板 断 裂 の 1 例 ○ 熊谷 匡 晃 1? ・ 太 田 喜 久 夫 ( M D ) 1? ・ 福 井 直 人 ( M D ) 1? 1)松阪中央総合病院 【はじめに】 Loose shoulder に 対 す る glenoid osteotomy ( 以 下 G . O . と 略 す ) に つ い て は 疼 痛 , 不 安 定 感 , R O M , 筋 力 , A D L の 改 善 に お い て 良 好 な 成 績 が 報 告 さ れ て い る 。 今 回 G . O . 後 15 年 で生じた腱板断裂例の理学療法を経験したので報告する。 【症例】 42 歳 、 女 性 。 現 病 歴 : 1988 年 1 月 、 N 病 院 に て loose shoulder に 対 し 左 肩 G . O . 施 行 。 術 後理学療法は初期治療をN病院で施行されたが、その後は近医で実施された。術後半年で 疼痛,動揺性,ADLの改善が得られたため理学療法終了となるがROMは 8 割程度にと どまり、その後も徐々に悪化していた。そして、1 年前より疼痛増強しADLに支障をき たすようになる。昨年末、疼痛がさらに増強した為当院整形外科受診し、腱板断裂の診断 に て 2003 年 3 月 11 日 縫 合 術 施 行 さ れ る 。 【理学療法経過】 術後は外転装具を段階的に下垂し 6 週間で除去されるが外転拘縮を認めた。拘縮治療と inner muscle , outer muscle , I S T muscle の 筋 力 強 化 を 進 め 、 術 後 4 ヶ 月 で 挙 上 165 ° ( 120 ° ), 1st 外 旋 70 ° ( 10 ° ), 外 転 150 ° ( 90 ° )と R O M , 筋 力 の 改 善 が み ら れ 、 J O A ス コ ア 87 点 と な っ た 。 ( )内は術前。 【考察】 本 症 例 が 腱 板 断 裂 に 至 っ た 経 過 を 推 察 す る と 、 G .O .に よ り 肩 甲 骨 と 上 腕 骨 の 位 置 関 係 の 変化による軟部組織の力学的関係の変化が生じた事に加え、拘縮が残存した事により肩甲 上 腕 リ ズ ム の 乱 れ , subacromial impingement に よ る 腱 炎 を お こ し 二 次 性 の 肩 峰 下 滑 液 包 炎 へ 進 展 し た こ と が 考 え ら れ る 。 そ し て 、 腱 板 が impinge を 受 け て い る う ち に 腱 の 摩 耗 が 進 み 、 断 裂 に 至 り 、 そ の 修 復 過 程 で 更 に 炎 症 が 波 及 し frozen shoulder に 陥 っ た も の と 推 察 し た 。 そ こ で 、 本 症 例 は 腱 板 断 裂 で は あ る が 病 態 の 本 質 は frozen shoulder で あ り 拘 縮 の 治 療 が主体となった。 メモ 肩 関 節 inner muscles の 作 用 に 関 す る 臨 床 で の 観 察 碧南市民病院 浅野 昭裕 【 は じ め に 】 腋 窩 部 腫 瘍 に よ り 腕 神 経 叢 が cords の 部 分 で 圧 迫 さ れ 、 肩 関 節 に お い て outer muscles が す べ て 完 全 麻 痺 、 inner muscles が 残 存 し 、 inner muscles の 機 能 の み が 観 察 さ れ た症例を経験したので、その特徴を若干の考察を加え報告する。 【症 例 】 症 例 は 53 歳 男 性 で 左 上 腕 以 遠 の 筋 は 完 全 麻 痺 。 大 胸 筋 , 三 角 筋 、 小 胸 筋 、 広 背 筋 、 大 円 筋 も 完 全 麻 痺 で あ っ た 。 棘 上 筋 ,棘 下 筋 ,肩 甲 下 筋 お よ び 僧 帽 筋 ,前 鋸 筋 は 正 常 で あ っ た 。 小 円 筋 は 確 認 で き な か っ た 。 他 動 ROM は 大 き な 制 限 は な か っ た 。 【観 察 】 観 察 内 容 は 、 ① 肩 関 節 の 自 動 運 動 、② 1st.position 中 間 位 で の 等 尺 性 内 ・ 外 旋 、 ③ 1st.position で の 抵 抗 を か け た 内 ・ 外 旋 運 動 、 ④ 外 転 45 ° 位 で の 等 尺 性 内 ・ 外 転 、 ⑤ 外 転角度を変えての等尺性内・外旋、の各運動時における臼蓋と上腕骨頭の位置変化である。 特 徴 的 で あ っ た の は 、 ② 1st.position で の 等 尺 性 内 ・ 外 旋 で と も に 上 腕 骨 頭 が 下 方 へ 亜 脱 臼 し た こ と 、 ③ 内 旋 60 ° お よ び 外 旋 45 ° で 骨 頭 は 臼 蓋 に 適 合 し た こ と 、 ⑤ 外 転 60 ° 以 上での内・外旋では亜脱臼しなかったことである。 【考 察 】 一 般 に inner muscles の 機 能 は 臼 蓋 上 腕 関 節 の 安 定 化 ・ 肩 関 節 運 動 時 の 支 点 形 成 と い わ れ 、実 際 、腱 板 機 能 不 全 な ど で は 上 肢 挙 上 時 に 上 腕 骨 頭 が 上 方 に 変 位 し 挙 上 で き な く な る こ と が 観 察 さ れ る 。 今 回 観 察 さ れ た inner muscles の み に よ る 運 動 の 特 徴 は 、 腱 板 ト レ ー ニ ン グ の 際 に inner muscles の 強 化 を 目 的 と す る 場 合 で あ っ て も 、 そ れ ら の 選 択 的 強 化 の み に と ら わ れ る こ と な く 、 outer muscles や IST muscles と の 協 調 性 を 優 先 し 、ま た 、 肩関節が安定する訓練肢位を選択することが重要であることを示唆している。 メモ 腱板損傷例に対して修復術を施行した理学療法 ∼早期からの肩甲帯周囲へのアプローチについて∼ 岐阜大学医学部附属病院 田 中 和 彦 ・ 福 田 雅 ( MD )・ 伊 藤 芳 毅 ( MD )・ 糸 数 万 正 ( MD ) 【はじめに】臨床において腱板損傷例では、保存療法または手術症例とよく経験する疾患 の一つである。今回、腱板損傷例の修復術後、早期より肩甲胸郭関節の機能改善を施行し たところ良好な成績を得たので、報告する。 【 症 例 1 】 63 歳 女性で4年前に、転倒により右肩関節反復性脱臼と診断され、その後 5 回 脱 臼 を 繰 り 返 し 当 院 に て 精 査 し た と こ ろ 、 右 腱 板 損 傷 も 診 断 さ れ H14.12.6 右 肩 関 節 縫縮術、右腱板修復術、右肩峰形成術施行となった。 【 症 例 2 】 55 歳 男 性 で H14.6 転 倒 時 に 肩 を 捻 り 、 そ の 後 疼 痛 と し び れ を 覚 え 、 近 医 に て右腱板損傷、右上腕二頭筋長頭腱炎と診断された。保存療法に抵抗するために本院にて 右腱板修復術手術施行となった。 【 理 学 療 法 】 腱 板 修 復 術 3 日 後 よ り 開 始 。 患 者 を 坐 位 に て 臼 蓋 上 腕 関 節 を zero position 付 近で把持しつつ、肩甲帯の前・後方引き出しを他動、自動介助、自動運動を徐々に施行し た 。 ま た 、 臼 蓋 上 腕 関 節 を 含 め た 肩 関 節 複 合 体 の 状 態 を 評 価 し つ つ 、 外 転 90 ° 付 近 か ら 徐々に最大挙上の範囲までなるべく肩甲棘と上腕骨が直線上になるような位置で肩甲胸郭 関 節 の 運 動 を 施 行 し た 。 そ の 結 果 、 術 後 1 週 に て 最 大 挙 上 保 持 可 能 。 術 後 2 週 で 90 ° 外 転 位 か ら の 自 動 挙 上 運 動 可 能 。 術 後 3 週 で 60 ° 外 転 か ら の 自 動 挙 上 運 動 可 能 と な り 、 退 院 と な っ た 。 そ の 後 、 外 来 Follow に て 術 後 4 週 経 過 で 下 垂 位 か ら の 挙 上 可 能 と な っ た 。 症例2に関しては、現在も週1回ないし2回の理学療法を施行中である。 メモ 肩関節周囲炎に合併する夜間痛に対する我々の運動療法について 田 中 幸 彦 1 )・ 林 典 雄 1 )・ 鵜 飼 建 志 1 )・ 赤 羽 根 良 和 1 )・ 中 宿 伸 哉 1 )・ 宿 南 高 則 1 ) 近 藤 照 美 1 )・ 細 居 雅 敏 1 )・ 増 田 一 太 1 )・ 帯 川 真 由 美 1 )・ 笠 井 1)吉田整形外科病院リハビリテーション科 勉(MD)2) 2)吉田整形外科病院整形外科 【はじめに】肩関節周囲炎に続発する夜間痛は、その原因が特定されず非常にミステリア スな症状の一つであった。しかし、その夜間痛の原因について小西池らは肩峰下圧の上昇 との関連について報告し、鏡視下手術による徐圧操作にて良好な成績が得られたとしてい る。今回我々は夜間痛に対する運動療法の可能性について検討したので、その結果ととも に若干の考察を加え報告する。 【対 象】平成14年4月から平成15年3月までの1年間で、運動療法の依頼があった 肩関節周囲炎のなかで、石灰化沈着性腱板炎、および明らかな上腕二頭筋長頭腱炎を除く 97例97肩のうち、夜間痛を有した68例68肩を対象とした。性別は男性39名、女 性 2 9 名 で 平 均 年 齢 56.7 歳 、 発 症 か ら の 時 期 は 平 均 4.8 ヶ 月 で あ っ た 。 【運動療法】夜間痛に対する運動療法は、肩峰下滑動機構の改善と上方支持組織の拘縮除 去 を 目 的 に 実 施 し た 。 肩 峰 下 滑 動 機 構 の 改 善 は 棘 上 筋 の 収 縮 を 伴 っ た proximal と 、 棘 上 筋 の 伸 張 に 伴 っ た distal amplitude excurtion の 獲 得 で あ る 。 肩 関 節 上 方 支 持 組 織 の 拘 縮 除 去は、肩関節内転・伸展運動に、外旋を組み合わせることで前上方組織へ、内旋を組み合 わ せ る こ と で 後 上 方 組 織 へ 伸 張 刺 激 を 加 え 、 触 診 下 に て stretch を 加 え た 。 【結 果 】 夜 間 痛 消 失 に 要 し た 治 療 回 数 は 最 小 1 回 、 最 大 18 回 、 平 均 4.8 回 で あ っ た 。 夜 間 痛 消 失 に 要 し た 期 間 は 、 1 週 間 以 内 に 消 失 し た も の 31 例 ( 46%)、 2 週 間 以 内 に 消 失 し た も の 51 例 ( 75% )、 3 週 間 以 内 に 消 失 し た も の 56 例 ( 82% ) で あ っ た 。 【考 察】林らは、夜間痛を有する症例は、有しない症例より第一肢位外旋と結滞動作 が 優 位 に 制 限 さ れ 、 ま た X − P 所 見 に て 臼 蓋 上 腕 骨 間 角 度 ( 以 下 GHA ) が 優 位 に 増 大 し て い た と 報 告 し 、 GHA の 増 大 は 、 肩 峰 下 圧 の 上 昇 を 肩 甲 骨 を 下 方 回 旋 す る こ と で 回 避 す る自己調整によるものではないかと考察している。我々は肩関節上方支持組織の拘縮、肩 峰 下 滑 動 機 構 の 破 綻 、 関 節 周 辺 筋 肉 の spasm の 除 去 す る 運 動 療 法 を 実 施 す る こ と で 、 肩 峰下圧に関与し良好な結果が得られたと考えられた。 メモ
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