The Specialists 東邦大学医療センター大橋病院 小児科 教授 関根 孝司 小児の腎・泌尿器疾患の正しい診断と治療 小児の腎・泌尿器疾患には様々なものがあります。 「子供の腎臓病」 というと 「難治」 、 「学校を長期間休まなければなら ない」など暗いイメージをお持ちの方も多いのではないでしょうか?学校検尿などで蛋白尿・血尿を指摘された時などに過 剰な心配をなさる親御さんも多いと思います。又、乳幼児の「原因のわからない発熱」や「成長障害」から腎疾患が発 見されることもあります。以下、代表的な「小児腎・泌尿器疾患」についてご説明します。どのようなこともご相談ください。 1)ネフローゼ症候群 血尿・蛋白尿があるからといって、 むやみに過剰な検査をおこなったり、 はっ ネフローゼ症候群は、尿中に多量の蛋白が漏れだし、その結果、血液中 きりした診断名を伝えないことは、お子さん、ご両親にとって大変に心配な の蛋白質が減少し、著しい浮腫(むくみ)、乏尿(尿量が減る)を示す疾 ことです。こうしたことのないように、慎重に病歴や尿所見を診ることにより、 患です。発症は4 ∼ 5 歳にピークがあります。 害のない血尿や蛋白尿の患者さんを正しく診断しなければなりません。 ネフローゼ症候群は糸球体腎炎とともに小児の腎臓病の代表です。治療 はステロイドという薬物を中心としてなされ、約 85%の患者さんはステロイド 4)腎・泌尿器形成異常 が非常に良く効きます。こうした患者さんはステロイド反応性は良いのです 乳幼児が突然なんの症状もなく、高熱をだし持続する時、私達は必ず「急 が、薬を中断するとしばしば再発することが治療を難しくしています。現在 性腎盂腎炎は否定できるか?」 と考えます。急性腎盂腎炎は腎臓の細菌が はステロイド薬に加え、いくつかの免疫抑制薬(シクロスポリンなど)を、患 侵入し、高熱を発するもので、放置すると (特に乳児) 、血液や脳脊髄液に 者さんができる限り普通の学校生活を送りながら、患者さんごとに最適な 細菌が侵入し、 敗血症、 髄膜炎という重篤な疾患に進展することがあります。 医療がなされます。しかし約 15%の患者さんはステロイドが聞かないタイプ 私達は乳幼児の不明熱を診た時には、必ず腎盂腎炎の検査を行います。 で、こうした患者さんはさらに強い治療が必要になりますし、治療が長期 腎盂腎炎の場合は抗生物質の点滴静脈注射療法が必要ですが、もう一 のわたることもしばしばです。 つ重要なのは、 「腎・泌尿器系に基礎疾患(最も多いのは膀胱尿管逆流 症)が存在しないか」確認することです。こうした基礎疾患を見逃すと、将 2)慢性糸球体腎炎 来的に腎機能に悪影響を与えることもあり、その診断はとても重要です。 腎臓は「糸球体」 と呼ばれる非常に細い血管から、血液の中の血漿という 液体成分を濾しだします。 「慢性糸球体腎炎」はこの糸球体と呼ばれる部 5)夜尿 分に炎症を起こすもので、IgA 腎症、膜性腎症、膜性増殖性腎症、急速 夜尿のお子さんは相当数おります。上記の腎臓病のように、 「治療しないと 進行性糸球体腎炎などさまざまなタイプがあります。また全身性疾患(血管 腎臓が悪くなってしまう」ことはありませんが、小学校・中学年以上のお子 性紫斑病、全身性ループスエリテマトーデスなど)の症状の一つとして糸球 さんでは精神的な負担が大きくなり、なかなか他人にも相談できず、悩まれ 体に病変を来すこともります。それぞれの疾患ごとに特徴や治療が異なるた るケースも多いです。現在は、夜尿症をいくつかのタイプに分類し、それに め、 「腎生検」 という方法で腎臓の一部を針で採取してきて、顕微鏡、電子 応じていくつかの治療を選択します。具体的には、 ①薬物療法(2 種類の 顕微鏡などで詳細に検査して治療方針を決定します。治療の比較的容易 薬物に分類されます) 、 ②夜尿アラーム療法、という方法があり、患者さん な場合、難しい疾患とそれぞれの患者さんごとに治療の選択も異なります。 のタイプなどにより選択枝を選びます。 3)無症候性血尿・蛋白尿 以上、小児の代表的な腎・泌尿器疾患についてご説明しました。私はこ 学校検尿で、血尿や蛋白尿を指摘されて、2 次、3 次検査になるお子さんが れらのあらゆる領域について実際の診療をおこなっています。 「尿」に関す たくさんおります。学校検尿は上記の慢性糸球体腎炎を迅速に診断し、早 ることについてはどんなことでもご相談ください。 期治療を開始できるように都道府県で一斉におこなうものです。一方、2 次、 3 次検査になるお子さんのうち、 「慢性腎炎やネフローゼ」はごくわずかであ り、大半は体に害のない「無症候性血尿」あるいは「体位性蛋白尿」です。 外来診療日: 〔初診〕月・水曜日 午前 腎専門外来:木曜日 午後(要予約) 診 療 の ご 予 約 は・・・ 病診連携室あてに「診察・検査FAX予約申込書」 をお送り下さい。 電話でのご連絡も承ります。 病診連携室連絡先 病診連携室直通 電話:03-3481-7385 FAX:03-3468-6191 受付時間:月∼金 午前9時∼5時 土 午前9時∼午後1時 (第三土曜日休診) 7RKR8QLYHUVLW\2KDVKL0HGLFDO&HQWHU (代表) 〒153-8515 東京都目黒区大橋2-17-6 電話: KWWSZZZRKDVKLPHGWRKRXDFMS 携帯用サイト:http://www.ohashi.med.toho-u.ac.jp/m/
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