ユースケース:CDMI 機能の有効活用

クラウドデータ管理インターフェース(CDMITM)
ユースケース:CDMI 機能の有効活用
著者 セス メイソン
シスコシステム
クラウドストレージイニシアティブ会員
2013 年 5 月
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クラウドデータ管理インターフェース(CDMI )ユースケース:CDMI 機能の有効活用
概要
ストレージネットワーキング・インダストリ・アソシエーション(SNIA)の Cloud
Storage Initiative(CSI)が発行する一連のホワイトペーパーは、ストレージ専門職にス
トレージの標準に関する情報を与えることを目的としている。
この文章は、クラウドストレージの適用可能性や実装方法を調査している、クラウド
ストレージサービスの開発者やアーキテクトを対象としている。また、クラウドストレ
ージや、クラウドデータ管理インターフェース(CDMITM)を有効に活用する例および
ユースケースを提供する。このホワイトペーパーは、クラウドストレージ一般のユース
ケースばかりでなく、CDMI 特有のユースケースや、本稿執筆時には Amazon の S3 ク
ラウドストレージインターフェースのような他のインターフェースではサポートされ
ていない CDMI 特有の機能のユースケースに焦点を当てている。このホワイトペーパー
は、また CDMI をサポートするシステムを実装する者に手引書として利用されることを
想定している。
SNIA が策定した CDMI の仕様は、クラウドストレージにアクセスするのに必要なメ
ソッドおよびオブジェクトを概説しており、ここではクラウドストレージはプライベー
トなデータセンタもしくはリモート拠点内に存在しサービスプロバイダーによって保
守されているものとしている。執筆時最新の CDMI 標準である 1.0.2 は
http://snia.org/CDMI から参照できる。
このホワイトペーパーのユースケースは、クラウドストレージのユーザ、またはクラ
ウドストレージアプリケーション及びサービスの提供者、のどちらも利用できる 2 つの
主要な分野に焦点を当てる。それは、待ち行列(キュー)と複雑な問い合わせ(クエリ
ー)である。
SNIA CDMI の仕様は、ISO/IEC から既に国際標準として発行されているので、ISO
store(http://www.iso.org/iso/store.htm)から標準仕様を購入できる。ISO/IEC CDMI の
standard number は ISO/IEC 17826-2012 である。
マルチクラウド災害対策(ディザスタリカバリ)用のキューの配備
クラウドストレージは急速に受け入れられているが、それでも多数のストレージ管理
者やアーキテクトは、いまだアプリケーションをデータセンタ内ローカルで扱うために
ストレージを部門内部に配置し続けている。この理由は、セキュリティおよびデータア
クセス性能の向上である。しかし、災害対策(ディザスタリカバリ)用にプライベート・
パブリックハイブリッドクラウドを構築することによって、低価格クラウドの利点の恩
恵を受けることもある。ハイブリッドクラウドでは、クラウド管理者は、ストレージク
ラウドプロバイダーによって保守されるオフサイトストレージクラウドにデータを複
製(レプリケート)できる。ここでは、このハイブリッドクラウドの例を、CDMI のキ
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ューの実装を説明するために使用する。
ローカルストレージ(プライベートクラウド)をサービスプロバイダーのストレージ
クラウド(パブリッククラウド)に接続する際、プライマリのアクセスはすべて企業の
データセンタ内で実行される。しかし、長期間のバックアップやアーカイビングは、サ
ービスプロバイダーのクラウド側によって提供される。これによりインフラのコストを
低減できる。さらに CDMI 標準インターフェースを使用することによって、ユーザは、
その情報のライフサイクルの間、常に一貫したアクセス方法を確立できる。
従来の技術では、ローカルストレージクラウド内のデータレプリケーションや複数サ
イトへのレプリケーション機能を提供する一方で、別のサービスプロバイダーが提供す
るクラウドへのレプリケーションの複雑な設定は、元のクラウド管理者やアーキテクト
の責任範囲であった。サービスプロバイダーのクラウドは、別のエンティティとして保
守されている。ローカルのクラウド管理者は、異なるタイプのデータ、オブジェクトや
コンテナに対しポリシーを設定する必要がある。例えば、低優先度のデータはローカル
のみに保存、中優先度のデータは週に一度複製、高優先度のデータは毎日複製、ビジネ
ス上クリティカルなデータは毎時複製されるよう設定される。これらの顧客要請は、ロ
ーカルストレージクラウド管理者によって実装実行される課金の仕組みの一部として
協議される。
ストレージクラウドがどのように CDMI キューを使用するか説明するために、あるロ
ーカルクラウドストレージ管理者の例を考える。この管理者は、ローカルストレージク
ラウドからサービスプロバイダーのストレージクラウドへオブジェクトを移動するこ
とによって、クラウド内のバックエンドインフラやレプリケーションインフラを構築し
たいと考えている。管理者は、複数の FIFO キュー(例えば中、高、ビジネスクリティ
カル)を作成し、それぞれのキューには自動的にローカルクラウドからオブジェクトが
投入される。指定された時間を経過した後に行われるサービスプロバイダークラウドか
らのオブジェクト削除あるいは無効化を容易にするために、前記の 3 つのキューに相当
する 3 つの FIFO キューを別に構築することが望ましい。これらのキューを使用し、無
効や削除に備えて対象オブジェクトを一時的に格納できる。これらのキューを用いて、
ローカルクラウド管理者は、前もって決められた時間(毎時、毎日、毎週)に、バック
アップキューから対象をコピーあるいは取り出しをし、対象の属性やメタデータをその
ままに保ちながらサービスプロバイダーのクラウドへこれらをコピーする。ディザスタ
リカバリ動作の間、対象の分類、ライフサイクルポリシー情報のようなメタデータをそ
のまま保つことによって、ストレージ管理者は、分類に従って対象を効率的に検索可能
である。
CDMI の仕様はキューの使い方を定義するが、クラウドストレージインフラで個別の
キューがどのように実装されるかについては、開発者やクラウドベンダーに任されてい
る。この柔軟性によってクラウドストレージベンダーは、CDMI の仕様に従いつつも差
別化することができる。例えば、あるベンダーは、キューが実際のオブジェクト自身へ
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のポインタのリストであるように実装することが可能である。このことによりポインタ
自身を除いてほとんどディスク容量を増やすことがないようにできる。別の実装では、
キュー上の対象が特定のストレージノードやディスクにコピーされるように、特定のイ
ンフラ上にキューを持つことが可能である。この項で議論しているモデルは、ある特定
のインフラにおいてビジネス上クリティカルなキューのオブジェクトについて記述し
ている。高優先順位および中優先順位のオブジェクトについてはポインタに基づくイン
フラとして格下げする。
複数のキューを用いた例は単純なように見えるが、多数の情報やデータ要求を組み合
わせたような環境におけるキューへの要求にも拡張できる。このような要求として距離
への要求がある。例えば、
「この対象は、100km 以上離れた場所に複製(レプリケート)
されねばならない。
」
「ある州、国、地域内におかねばならない。」
「データは、異なる送
電網上の場所へ複製され回復可能でなければならない。」
「2 つの異なるクラウドストレ
ージプロバイダーに複製されねばならない。」などが考えられる。このことは、ローカ
ルクラウド管理者に対し、より複雑な性質を持ち、より重要なオブジェクトが送信され
るキューをより多く生成することが要請されている。このオブジェクトはまた、ビジネ
スを超えたローカルクラウド管理者やデータセンタの調整範囲を超えたところから入
力された規制に基づいたポリシーの結果である可能性もある。
CDMI キューの使用は強力であり、ストレージクラウド管理者がもっとも簡単な方法
でデータを容易にアクセスし、キューから読みだすことができるようになる。
複雑な問い合わせ(クエリー)を通じて対象を探し出す
ひとつの組織内で扱われる非構造データが 100 万から 10 億、1 兆オブジェクトへと
増加しているため、これらのオブジェクトを素早く検索するためのより良い方法へのニ
ーズが増大している。ストレージクラウドにデータや対象を格納するアプリケーション
オーナーは、ストレージクラウドに対し複雑な問い合わせ(クエリー)を実行可能にし、
基準に合致したオブジェクトを返答させることが必要となっている。CDMI の仕様では、
正規表現に基づいてストレージクラウドに問い合わせできる能力をサポートする。
クラウド自身に問い合わせることができる利点は、ストレージクラウドインフラの規
模が拡大するときにその問い合わせを実行する能力も拡大することである。これは、外
部データベースにデータを格納する場合や、ストレージクラウド自身をスキャンし不一
致の対象を取り除かねばならない場合は当てはまらない。
幾つかの都市では、電力会社でスマート電力メーターの採用が始まっている。これら
の電力メーターは、無線ネットワークを通じて家庭やビジネスでの電力使用状況を報告
する。さらに家庭やビジネス内にあるデバイスが、個別の使用状況をメーターに報告す
るよう拡張できる。例えば、電気ヒーターや空調は、いつスイッチが入ったか、どのく
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らい長く、どれくらいの電力量が引き出されたかを正確に報告する。指定した時間内に
どのくらいの電力量を消費したか、どれがヒーターや空調の消費であったか、消費者が
見ることもでき、電力会社に報告することもできる。これは簡単な例であるが、電力会
社によるデータマイニング処理の一部であり、正規表現が有効に機能する。
毎回、電力メーターはデータを電力会社に送付する。そのデータは、メーターの場所、
時間、日付、メーターや器具が置かれた場所の天候状況、いつメーターが電源オンされ
たか、電源オフされたかのようなメタデータ、暖房/冷房負荷(最大ファン回転量、最
大暖房/冷房、その他)等を含む。このデータは電力消費オブジェクトに加えられ、器
具ひとつひとつの粒度までの情報を含むきめ細かい電力消費データとなる。
CDMI はコンテナ型をサポートしており、電力会社がその事業目的向けにデータを整
理しストレージクラウドアプリケーションを実装する際に手助けとなるように、このコ
ンテナ型を階層管理(州/都市/zip コード/通りのアドレス)することができる。
電力メーターは、毎日または毎時間ごとに電力を読みだすことができ、その場合電力
会社のストレージクラウドは毎日 100 万のオブジェクトを格納しなくてはいけなくな
るかもしれない。オブジェクト自身は大きくはないが、他の手段で実装されるならオブ
ジェクトの総数は管理不能である。このデータを利用して電力会社は、特定の消費者に
インセンティブや詳細な報告を提供することを決定可能である。
電力会社のあるアプリケーションは、ヒーターや空調を平日日中(月曜から金曜日の
午前 9 時から午後 5 時まで)付けっぱなしにして電気を浪費する家の持ち主を見つける
ために次の基準に合致したアドレスのみを戻すクエリーを構築する。
1. 商用でない自宅であり
2. 郵便番号 ###-####あり
3. 曜日:月曜日、火曜日、水曜日、木曜日、金曜日
4. 時間:午前 9 時から午後 5 時まで
5. 少なくとも X ワットを使用
6. 気温:摂氏 18 度以上
7. 気温:摂氏 27 度以下
この情報に基づき、電力会社は消費者に、料金を低減するためのより効率的な電力使
用方法を示唆する通知を提供できる。電力会社はまたストレージクラウドにヒーターや
空調の使用年数を確かめるための問い合わせ、消費者に老朽化した設備を交換する動機
づけを与えるためにある期間を超えた器具を持っている居住者だけをリストアップす
るようなクエリーを発行できる。
このモデルは電力会社内部で採用され得るが、電力会社は、電力を生成することが事
業であり IT は事業ではない。そこで電力会社らは CDMI に基づいたストレージクラウ
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ドプロバイダーに IT を移すことによって、電力生成や電力使用に関する報告といった
コア事業に集中できる。さらに、電力会社をターゲットとするサードパーティのアプリ
ケーション開発者は、電力会社のよりきめ細かなソリューションをサポートするために
使用可能なアプリケーションを開発して提供することもできる。電力会社は、自身の要
求や予算に基づいて広く存在する CDMI ベースのストレージクラウドプロバイダーを
自由に選択できる。
さらにもう一歩進めてみる。電力会社が、このホワイトペーパーの最初の部分で議論
した CDMI のキューの概念を構築したならば、電力会社は、毎時、通常の電力消費量を
大きく超えて(例えば 50%)消費した居住者を含むキューを構築し、直ちにその通知
を送付可能である。この通知は、空調やヒーターをオンにしたままにしておくユーザに
SMS メッセージとして送信できる。電力会社が、ある居住者は午前 9 時から午後 5 時
までは電力をほとんど使用しないのに、ある日突出した使用があるパターンを認識した
なら極めて有効である。
SNIA の Cloud Technical Working Group は、クラウドをベースとしたストレージにア
クセスするオープンインターフェースを可能にし、複雑なクエリーを構築する能力のよ
うな柔軟な特長をもたせたインターフェースである CDMI を設計するよう動機づけら
れていたので、アプリケーションオーナーの需要に合致し継続的にスケールさせる能力
を提供できた。このスケーリングは、ストレージの歴史上に見られた伝統的なアクセス
速度や容量からでてきたものでなく含まれるデータに見られるようなストレージデバ
イスそれ自身のインテリジェンスをスケールさせることにある。このインテリジェンス
のスケールは、次世代のアプリケーションが IoT(Internet of Things)のデータの海を
格納しオブジェクトを探し出す能力を提供するだろう。
著者について
セス・メイソン(Seth Mason)は、Distinguished Services Engineer であり、ストレ
ージおよびユニファイドネットワーキングの分野で必要不可欠な人である。また、シス
コのデータセンタ高度化部門での思想リーダーであり、シスコのストレージサービスプ
ラクティスの創立メンバである。
セスは、20 年以上のデータセンタの経験がある。彼は、The Cisco Storage Networking
Cookbook および The Cisco MDS Interoperability and Configuration Guide の共著者で
ある。彼は、顧客のネットワークを解析し最適化するために用いられるツールと同様に
Cisco MDS、Device Aliases の共創案者である。彼の責任範囲の中心は、顧客のネット
ワークを FCoE やネットワークベース分析を含むように拡張することにある。彼は、
Cisco Live でユニファイドファブリック、テーブルトーク、
「エンジニアに会おう」と
いうトピックに関する長い間講演者を務めている。彼は、CCIE:SAN 試験の最初の著者
で引き続きそれに貢献している。
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セスはオーバン(Auburn)大学からコンピュータエンジニアリングの学士を得た。
CSI について
SNIA の Cloud Storage Initiative(CSI)は、クラウドストレージのマーケットの成長
と成功を促進するために設立された。SNIA CSI のメンバは、クラウドに関するベンダ
ーとユーザコミュニティを啓発し、クラウドストレージの効果を強調する市場支援活動
を実行し、クラウドの技術的作業に関する他の業界団体と協業し、SNIA の地域支部と
連携して CSI の活動結果が世界中に広まるように努めている。CSI は 30 以上の団体か
ら 140 名が参加し、クラウド管理インターフェース(CDMITM)標準の採用を推進して
いる。さらに情報を得るためには、SNIA CSI ウェブサイト www.snia.org/cloud.を参照
されたい。
SNIA について
ストレージネットワーキング・インダストリ・アソシエーション(SNIA)は非営利
の世界的な団体で、ほぼ全ストレージ業界をわたる 400 以上の会員企業で構成されて
いる SNIA のミッションは標準、技術および情報管理の点で組織に力を与える教育サー
ビスを開発、推進しストレージ業界を世界的にリードすることである。この目的のため
に SNIA は、オープンストレージネットワーキングソリューションをより広くマーケッ
トに推進させるために、標準、教育、サービスを提供することを約束している。より詳
しい情報は、SNIA ウェブサイト www.snia.org を参照されたい。
この文書の利用
SNIA は、次の条件のもとに、個人が私的用途のみ、企業や他のビジネス組織が内部
のみの用途にこの文書を使用する(内部での複製、配布、表示を含む)ことを許諾する。
・テキスト、ダイアグラム、チャート、表、定義は、全く変更せず(そのまま)使用す
る
・資料がこの文書(一部)から複製されたプリントまたは電子的な文書は、この資料に
関する SNIA の著作権を認め、SNIA に再利用の許諾を求める
上記に明に記述された以外に、この文書の商用用途の使用、抜粋やこの文書全体の販
売、この文書の第三者への配布は許されない。明に許諾されないすべての権利は、あき
らかに SNIA に留保されている。
上記に列挙した以外の目的のためにこの文書を使用するためには、[email protected] に、
要求元の特定された個人や企業名、目的、要求の簡単な記述および要求する使用範囲を
含めた e メールで要求し許諾を得ることができる。
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