平成 27 年度 神戸大学 海外インターンシップ実施報告書

平成 27 年度
神戸大学 海外インターンシップ実施報告書
神戸大学経営学部
吉田
覚
目次
1.
インターンシップ概要
2.
研修内容
3.
学び
4.
総括
5.
提言
1.インターンシップ概要
◆派遣国・都市
ポーランド共和国 トルン
◆派遣先
ニコラウス・コペルニクス大学
言語学部日本学科
◆派遣期間
2016 年 3 月 1 日~3 月 24 日
◆研修者
神戸大学経営学部 4 年
吉田 覚
(2016 年 3 月現在)
◆研修内容
・受け入れ先大学の教員担当授業の授業補佐
・個人担当授業の計画と実施
◆目的
海外の大学等、教育研究機関における日本語日本事情の教育補助体験を通して得た多様な
気づきから異文化理解を深化させ、自文化を客観的に意識することと併せて、自己の専門性
をより深める機会を自主的に求めることも目的とする。
2.研修内容
◆受け入れ先大学教員の授業補佐
コペルニクス大学では、ポーランド人教師の授業ではポーランド語を主言語とした日本の
文化や文学の授業が多く、日本人教師の授業では日本語を主言語として会話や聴解、読解の
授業を行っていた。1 年生の授業では稀に日本語教員がポーランド語を使って補足説明をす
ることもあったが、2,3 年生の授業ではそういった光景は殆ど見受けられず、日本語のみの
説明でも十分学生は理解できていた。
授業補佐として 1 年生の会話、2 年生の読解、3 年生のディスカッションの授業に出席し
た。いずれも 1 学年を 2 グループに分け、1 クラス 10 名前後で行われていた。基本的に日
本語のみを使い、グループワークやディスカッションに実際に入るかたちで授業補助をした。
しかし、2 年生の読解の授業では、担当教員のアドバイスのもと、下の教科書を使った授業
をし、最終週にはまとめの小テストを作成して採点と講評も行った。(添付資料 1)
◆個人担当の授業
以下の学年と日時で、授業計画を作成して実施した。
1 年生 3 月 10 日 8:00~9:30、9:45~11:15
2 年生 3 月 8 日 8:00~9:30、9:45~11:15
15 日 8:00~9:30、9:45~11:15
3 年生 3 月 7 日 15:00~16:30、16:45~18:15
14 日 13:15~14:45、15:00~16:30
21 日 16:45~18:15
担当した授業数は多かったものの、基本的に 1~3 年生全て共通の授業を行った。難易度
はその都度変更して臨んだが、関西弁は全学年に教え、2,3 年生では詩の授業を行った。注
意したこととして、できるだけ学生が日本語で発言する機会を設けること、学生の興味関心
を引き付けるために双方向コミュニケーションを大事にしたことなどが挙げられる。
『京阪神エリアの紹介と関西弁講座』
事前に一部の学生にどんな授業がいい
か聞いたところ、関西弁を習ってみた
いという希望が多かったため、京阪神
の 3 都市を比較しながら紹介した後、
日常的によく使う関西弁を教え、練習
をしてもらった。
(添付資料 2)
『日本の詩』
日本語の音や響きが美しいと考える学生
が多くいたため、自分の好きな詩の中で
比較的言葉が簡単なものを紹介した。3
年生のクラスでは谷川俊太郎の「生きる」
を読んだ後に、生きているということに
ついてそれぞれが 1 文ずつ出し合い、そ
れをまとめて詩を作った。
◆その他の活動
3 月 12 日にワルシャワ大学旧図書館で行われた、日本語弁論大会に出席した。ポーラン
ド国内の日本学科の学生と、一般公募から選ばれた高校生・大学生が与えられたテーマの中
で自由にスピーチを行うこの大会は今回で 37 回目を迎え、20 名以上の学生が驚くほど完成
度の高いスピーチを披露した。ニコラウス・コペルニクス大学からは 2 年生 3 名が出場し、
内 2 名が優勝と 4 位を獲得した。2 年生が優勝するというのは快挙であった。しかしながら
どのスピーチも甲乙つけがたいほど高いレベルで、改めてポーランドの日本語教育の水準の
高さを実感した。
翌日の 13 日には、ポーランド日本語教師会の勉強会にオブザーバーとして参加した。研
修の報告プレゼンや基調講演などを聴き、海外における日本語教育について学んだ。
弁論大会の後の写真
中央 3 名がコペルニクス大学から出場
した 2 年生。グレーの上着の女性が優
勝者で、彼女は 2016 年秋の日本での
日本語・文化研修に招待される。
3.学び
◆日本語教育、日本事情教育の在り方について
ニコラウス・コペルニクス大学の日本学科は 2008 年に創設された新しい学科であるにも
かかわらず、そのレベルはとても高い。文科省主催の国費日本語日本文化研修プログラムの
留学試験も今年は 8 名が合格した。これは非漢字圏の国の中で最も合格者の多いポーランド
において、国内トップの成績である。この大学のレベルがこれほど高い理由として以下の 2
つの理由が挙げられる。
1)少人数クラス
1 学年の人数もそもそも 20 名前後と少ないが、さらにそれを 2 つのグループに分けて授業
を行うことにより、一人一人の発言の機会が増え、教員のケアもしやすくなる。私は 3 年生
のクラスで一度は 2 グループ別々に、一度は同時に授業を行ったが、その差は歴然であった。
2)タイトなスケジュールとカリキュラム
ニコラウス・コペルニクス大学では授業が 8 時から始まる。学生は 1 日にだいたい 3~4 コ
マほど授業を受け、空いた時間もよく勉強している。特に漢字の勉強については特に熱心で、
学士課程の 3 年が終わるまでに常用漢字 1900 字をマスターすることが求められている。授
業のスピードもかなり速く、中にはついてこられずに留年する学生もいるが、それでもめげ
ずにもう 1 年勉強し直したり、追試を受けたりしてなんとかついていこうとしていた。
極めて小さいコミュニティではあるものの、その中でお互い切磋琢磨して勉強に励む姿が
多く見られた。また、これは学生のレベルには直接関係はないかもしれないが個人的に感銘
を受けたことが、日本の礼儀作法をきちんと学生が学んでいたことである。全ての学生が、
授業後に退室するときに「失礼します」と言ってお辞儀をして出ていっていた。
少子化が進む日本において労働力の確保は国内産業を守るためにも必須事項であり、外国
人労働者の数が将来的に増えてくると私は考えている。その時に少なからず日本語教育、日
本文化教育は必要となってくると思うが、日本語というのは特に習得が難しい言語である。
ニコラウス・コペルニクス大学の日本語学科の指導方法やカリキュラムなどから学ぶことは
多いのではないかと思う。
◆日本語(国語)教育の楽しさ
上述した詩の授業は日本語の音や言葉の美しさを伝えるために行った。自分の好きな詩人
の中から、相田みつをさんと谷川俊太郎さんを選び紹介した。相田さんの短い詩の中に込め
られた”当たり前だけれど大事なこと”や、谷川さんの詩によって実感する”生きているとい
うこと”を学生に伝えていると、その尊さに自分自身が感動し心が震えた。自分のアイデン
ティティや思考プロセスはあくまで日本語に依拠しており、その考え方や言葉そのものの成
り立ちを含めて伝えることは自分にとって非常に有意義な体験であった。留学中はずっと英
語を使用しており、その生活に慣れてしまっていたが、改めて日本語の美しさと日本語教育
の楽しさを実感した。
4.総括
3 週間という短い期間の中で、計 10 回以上個人で授業を行い、ほぼ毎日複数の授業に出
席した。留学先の大学よりもはるかに高い頻度である。大学内外の様々な機会を通して先生
方や学生と話をし、意見交換を行えたことは自分の将来のキャリアを考える上でも非常に役
に立った。
締め切り直前の応募だったにも関わらず対応していただいたキャリアセンターの藤井様、
グローバル教育推進室の瀬口様、そして温かく受け入れてくださったニコラウス・コペルニ
クス大学の教員の先生方、学生の皆様に心から感謝申し上げます。