DD (ダイレクトドライブ) インバータ全自動洗濯機 ES-SE91 DD(ダイレクトドライブ)インバータ全自動洗濯機 ES-SE91 Direct Drive Inverter Full Automatic Washer ES-SE91 秋 永 典 将 *1 Norimasa Akinaga 隅 山 典 彦 *1 Norihiko Sumiyama 詠 田 浩 明 *2 Hiroaki Nagata 六 車 範 雄 *2 Norio Muguruma 柿 木 健 史 *3 Takeshi Kakinoki 池 防 泰 裕 *3 Yasuhiro Ikebou 青 木 尚 彦 *3 Naohiko Aoki まえがき 近年, 「省資源」 ・ 「省エネ」など環境への配慮に対 し社会的要請が高まってきており, 主婦の生活意識も 地球を大切にしながら賢く暮らしていくという志向に なってきている。一方洗濯に関しても, “速く,合理 的に,経済的に洗いたい” , “早朝や夜間でも周囲に気 兼ねなく静かに洗いたい”などの要求があり,これら の要求に応えるため,97 年度当社はインバータ洗濯 機を商品化し,通産省より省エネバンガードの通産大 臣賞を頂くことができた。 98 年度は,さらに洗濯機本来の基本性能向上を図 るために,パルセータ(回転翼)および洗濯槽を直接 駆動する新開発の高トルク DD(ダイレクトドライ ブ)モータを採用した。この DD モータと当社独自の インバータ制御システムにより新洗浄方式を開発し た。以下に本開発を導入した商品の概要を紹介する。 (写真1) 写真1 全自動洗濯機 ES-SE91 表1 ES-SE91 の主な仕様 形名 電源 標準洗濯容量 標準水量 標準使用水量 電動機定格消費電力 待機時消費電力 外形寸法 (幅×奥行×高さ) 製品質量 1 . 製品概要(表1) (1) 衣類に優しいハイブリッド洗浄システム「3 (トリプル)水流」 従来の約 15 倍の回転力を有する高トルク DD モー タと,新電磁クラッチ機構の開発により,従来のパル セータ(回転翼)の水流に加え,水の入った洗濯槽ご と左右に反転させることで,3つの水流を生み出し, 衣類に合わせたきめ細い制御で衣類を傷めず, 効果的 に汚れを落とす洗濯を実現した。 (2)むだ水セーブ機構&容量リニア制御 当社独自のむだ水セーブ機構に加え, 高精度の容量 *1 電化システム事業本部 ランドリーシステム事業部 CVI4005 プロジェクトチーム *2 電化システム事業本部 ランドリーシステム事業部 第1技術部 *3 電化システム事業本部 電化商品開発研究所 ES-SE91 100V 50-60Hz 9.0kg 57L 123L 375W 約0W 620×595×1005(mm) 47kg センサ(回転センサ)とインバータ制御により 0.5kg の小容量から9.0kgの大容量まで無駄のないリニア節 水洗濯を実現した。 (3)静かに洗濯「騒音,振動の抑制」 モータを洗濯槽に直結した DD(ダイレクトドライ ブ)機構を開発採用したことで,機構部のメカ音やベ ルトのすべり音をなくし,運転音を低減した。また, 布がらみを抑えたウォッシングバランスにより,脱水 時の振動を大幅に抑制した静かな洗濯を実現した。 ― 53 ― シャープ技報 第73号・1999年4月 表2 3(トリプル)水流を実現するシーケンス パルセータ反転 (普通の汚れ類) 槽反転 (ウール・毛布類) 槽 + パルセータ反転 (がんこ汚れ類) モータ回転数 80∼120rpm 10∼15rpm 65∼140rpm 電磁クラッチ ON OFF ON 排水モータ OFF (槽固定) ON (槽フリー) ON (槽フリー) 3(トリプル)水流 水流であったが, 多様化した衣類に合わせ理想的な洗 濯を実現する上で,パルセータだけでは限界があっ た。 この課題を解決するために, 従来のパルセータ反転 に洗濯槽の反転を組み合わせた3つの水流(①パル セータ反転,②槽反転,③槽+パルセータのW反転) を開発した。(表2) 水と洗濯物の入った洗濯槽を槽ごと回転させるに は,非常に大きな力が必要で,しかも,モータ回転を 伝達・減速するベルトやギヤなしに,モータの回転を 直接洗濯槽に伝えるダイレクトドライブ方式では,低 速でさらに大きな回転力が必要となる。 磁石トルクと リラクタンストルクを併用した高トルクDCリラクタ ンスモータは,従来の約15倍の回転トルクが得られ, ダイレクトドライブ方式で洗濯槽の反転による洗いを 可能にした。 (表3) 図1 槽+パルセータ反転イメージ 2 . 特長 2・1 高トルクDCリラクタンスモータによる3 (トリプル)水流 従来の洗濯機はパルセータ(回転翼)による1つの 表3 リラクタンス力併用モータと通常 DC モータの特性比較 通常のDCモータ リラクタンス力併用モータ 磁石トルク リラクタンストルク 合成トルク 磁石トルク N S N 磁石 リラクタンストルク N S S N S S N トルク T 磁石トルク 磁石 ロータ (鉄) 0 30 80 通電位相 θ ― 54 ― 90 120 DD (ダイレクトドライブ) インバータ全自動洗濯機 ES-SE91 2・2 むだ水セーブ機構&容量リニア制御 (1)使用水量8%節約 当社では 92 年「穴なしむだ水セーブ槽」を開発し て以来, 業界一の節水と節洗剤の洗濯を提案してきた が,本機では,高精度の容量センサとインバータ制御 により0.5kgの小容量から最大9.0kgの大容量まで,む だのないリニア節水洗濯を実現した。(表4) 図2 むだ水セーブ機構比較 表4 使用水量の比較(L) ES-SE90 ES-SE91 削減率 0.5kg 1kg 32 47 32 47 - - 標準コース 3kg 5kg 75 98 72 90 4% 8% 7kg 117 112 4% 9kg 135 123 8% 2・3 静かに洗濯「静音, 振動の抑制 (1)ダイレクトドライブによる静音化 従来はモータの回転をギアやベルトを介して高トル クの回転力を洗濯機に伝達していたが, 本機ではイン バータモータを洗濯槽に直結したため, 洗濯槽への動 力伝達機構部品が不要になり, ギヤ音やベルト回転音 の発生をなくした。 (2)高トルクモータの静音制御 従来DCブラシレスモータの駆動方式は矩形波状の コイル電流により駆動していたが, ダイレクトドライ ブ機構ではパルセータや洗濯槽駆動時に発生するわず かなトルクリップル(モータ1回転中の駆動トルク変 動)が騒音源になる。この騒音源を少なくするために ロータの極数を従来の4極から 20 極に多極化すると ともに,高精度のロータ位置検出回路(ホールセン サ)と正弦波状の電流駆動方式の採用により業界トッ プクラスの静音化を実現できた。(図4) (3)低振動制御 モータを中央に配置することで重量バランスがよく なり,脱水時の振動が低減できた。さらに,布がらみ を抑えたウォッシングバランス制御により布の偏りに よる振動も低減し,従来機と比べ約 1/2(外郭振幅 900μm → 500μm)の振動に抑えることができた。 新方式 従来方式 DC280V DC280V (2)洗濯槽の黒カビによる衣類の汚染防止 槽に穴がない「むだ水セーブ槽」のため, 従来の全自 動洗濯機のように,洗濯・脱水槽の間に付着した,溶 け残った洗剤カスなどにより発生する黒カビが, 脱水 槽の穴から洗濯中に流れ込んできて, 洗濯物に付着す るのを防止できる。 (図3) 30度 120度 30度 180度 ・電気角120゜ 分の通電率 ・電気角180゜ 分の通電率 (一定幅 Duty) を制御し (可変幅 Duty) を制御し 矩形波状の平均電圧に 正弦波状の平均電圧に より制御 より制御 ↓ ↓ ・無通電期間(30゜ )があり、 ・正弦波状電流により、 常 トルクリップルが発生する に滑らかなトルク駆動が できる 図4 モータ制御方式の比較 表5 運転音の比較 図3 黒カビ付着状態比較 ― 55 ― '97当社 従来機 ES-SE90 '98パワー 速洗力 ES-SE91 運転音 低減 運転音 洗い時 42dB 33dB 9dB 脱水時 47dB 42dB 5dB シャープ技報 第73号・1999年4月 2・4 その他使いやすさを実現した親切設計 (1)大容量ながら公団サイズの防水パンにすっき り設置できる「コンパクトボディ」 (2)排水ホースの引き回しラクラク「スッキリ排 水ホース」 (3)洗濯物の出し入れラクラク「ワイド投入口& ローボディ」 (4)お好みの洗濯コースがメモリできる「私流 コース」 (5)ふたを開けずに中が確認できる「見えるん ウィンドウ」 (6 )低水位から高水位まで糸くずをしっかり キャッチ「ジャンボ糸くずフィルタ」 (従来比約3倍) (7)お洗濯の終了をメロディでお知らせ「メロ ディアラーム」 (8)全国どこでも使える「Hz フリー」 むすび 当社独自のワンタブ節水技術と今回開発のDDイン バータ技術との融合により節水性 No. 1の継承に加 え,環境に配慮した更なる静音性と様々な衣類に適し た清浄性を達成することができた。 今後も使用性の向 上と洗濯の本質向上を追求し, 技術開発を更に推進し ていく所存である。 (1 99 9年1月2 5日受理) 〈お問い合わせ先〉 電化システム事業本部 ランドリーシステム事業部 第1技術部 〒5 81-8 58 5 大阪府八尾市北亀井町3丁目1番72号 電話 (0 6)6 79 1−73 01(大代表) ― 56 ―
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