女性技術者の量的・質的拡大に向けた 企業経営のあり方に関する研究

女性技術者の量的・質的拡大に向けた
企業経営のあり方に関する研究
岡村美好 1、木村達司 2、瀬尾弘美 3、楊雪松 4、高橋富美 5、
三谷由加里 6、石井桂 7、岩岡由季子 8、仁井潤子 9
1
博士(工学) 山梨大学大学院総合研究部
(〒400-8511 山梨県甲府市武田 4-3-11)
E-mail:[email protected]
2
技術士(総合技術監理部門、建設部門) 株式会社建設技術研究所 国土文化研究所
(〒103-0013 東京都中央区日本橋人形町 2-15-1)
E-mail:[email protected]
3
技術士(総合技術監理部門、建設部門) 株式会社建設技術研究所 管理本部人事部人材開発室
(〒103-8430 東京都中央区日本橋浜町 3-21-1)
E-mail:[email protected]
4
技術士(建設部門、農業部門) 工学博士 株式会社建設技術研究所 東京本社水工部
(〒330-0071 埼玉県さいたま市浦和区上木崎 1-14-6)
E-mail:[email protected]
5
技術士(建設部門) 株式会社建設技術研究所 大阪本社道路・交通部
(〒541-0045 大阪府大阪市中央区道修町 1-6-7)
E-mail:[email protected]
6
技術士(応用理学部門) 株式会社建設技術研究所 九州支社地圏環境室
(〒810-0041 福岡県福岡市中央区大名 2-1-12)
E-mail:[email protected]
7
技術士(建設部門) 株式会社建設技術研究所 企画本部経営企画部
(〒103-8430 東京都中央区日本橋浜町 3-21-1)
E-mail:[email protected]
8
株式会社建設技術研究所 管理本部人事部
(〒103-8430 東京都中央区日本橋浜町 3-21-1)
E-mail:[email protected]
9
株式会社建設技術研究所 管理本部経理部
(〒103-8430 東京都中央区日本橋浜町 3-21-1)
E-mail:[email protected]
本研究を女性技術者の量的・質的拡大を制約条件とした企業経営のデザインとして捉え、企業経営のあり方を問題
解決のプロセスにしたがって検討し、提言をまとめた。なお、問題解決における解決方法立案の根拠となる社会学、
心理学、倫理学等の理論には非線形システム理論や多質点系モデルなどの数学的概念を適用して整理した。これによ
り、女性技術者支援は企業経営を社会の変化に対応させ持続するものに変革するために必要であること、女性技術者
が仕事の喜びややりがいを感じられる環境づくりが重要であることを明らかにした。さらに、人間中心設計を適用し
た組織・制度設計についても取り組み、問題の把握と解決方法の案出を行った。
9
Keyword
woman engineer, corporate management, problem solving, nonlinear system, human centered design
1.研究の背景と目的
(1)研究の背景
日本における女性の社会参加は、1972 年施行の勤労婦
人福祉法、1985 年施行の男女雇用均等法を契機に進めら
れ、2003 年には社会のあらゆる分野において指導的地位
に女性が占める割合を、
2020 年までに少なくとも 30%程
度になるように期待した目標(
『2020 年 30%』の目標)
を男女共同参画推進本部が決定した。2013 年には日本再
興戦略の一つとして女性の活躍推進が閣議決定され、
2015 年には「女性の職業生活における活躍の推進に関す
る法律」
(女性活躍推進法)が成立した。
女性活躍推進や男女共同参画に関する調査・研究はア
ンケート調査や各種統計データの分析 1)が中心に行われ、
そこから得られた施策の有効性や問題点を基に支援制度
の改正等が実施されてきた。しかしながら、世界経済フ
ォーラムが発表する 2015 年における日本のジェンダ
ー・ギャップ指数は 0.670(完全平等で 1.0)で調査対象
となった 145 ヶ国中 101 位 2)であり、2014 年の値 0.658
と順位 104 位 3)からの変化はわずかである。
建設業界における女性活躍支援の取り組みは土木技
術者女性の会(1983 年発足)や土木学会教育企画・人材
育成委員会ダイバーシティ推進委員会を中心に行われて
きたが、
2014 年に国土交通省と建設業5団体によって
「も
っと女性が活躍できる建設業行動計画」
が策定され、
2015
年には土木学会が「ダイバーシティ&インクルージョン
行動宣言」を発表し、建設業界全体への取り組みに広が
ってきている。女性活躍推進を契機として働き方が見直
され長時間労働の改善が進められてはいるが、
『2020 年
4)
30%』の実現は困難な状況にある 。
このような状況を背景に、本研究は女性技術者の量
的・質的拡大に向けた企業経営のあり方を明らかしよう
とするものである。
(2)昨年の成果 5)
女性活躍支援に関するこれまでの施策を振り返り、こ
れまでに十分な成果が得られていない理由について考察
するとともに、先進事例および建設分野における状況に
ついても分析した。また、企業経営および働き方につい
て最適化の観点から考察し、今後のあるべき姿と取り組
み方法について検討した。
その結果、女性技術者の量的・質的拡大のためには、
女性の活躍支援を経営戦略と位置づけることが必要であ
り、以下の 4 点が重要であることを示した;①女性活躍
10
支援の目的を再考する、②その目的を組織構成員全員で
共有する、③女性活躍支援策の PDCA サイクルを構築す
る、④支援策の設計においては、働くことに対する意欲
を考慮する。
さらに、今後の女性の活躍支援策の設計手法として、
人間中心設計の導入を提案した。
(3)今期の目的
今後の取り組みを実効力のあるものとするため、従来
のような各種統計データから女性活躍支援のための有効
策を導き出そうとする帰納的アプローチではなく、社会
学や心理学、倫理学などの理論を基に演繹的アプローチ
による問題解決として解決方法の検討を行い、その結果
を提言にまとめることを目的とする。なお、解決方法の
立案において必要となる人や組織、社会における法則性
については、社会学や心理学、倫理学などにおける理論
や知見を用いるが、
「女性」や「男性」といった表現とは
関係なく理論の展開が可能なように、数理的概念を適用
して表現して考察する。
さらに、昨年の成果において提案した人間中心設計を
適用した女性技術者支援策についても考察する。
2.研究方法
これまで、女性の労働に関する研究は統計データやア
ンケート調査結果等から有効な施策に関する特性などの
法則性や理論を導き出すことを目的として行われてきた。
そのため、ある組織における成功事例を他の組織が導入
しても必ずしも同様な成果が得られるとは限らない。
そこで、今後の取り組みを実効力のあるものとするた
め、本研究を女性技術者の活躍支援を条件とする企業経
営のデザインすなわち問題解決と捉え、解決方法の検討
と提案を行う。
問題解決については、文献 6)-8)により表現の違いはあ
るものの図-1 のように表すことができる。このプロセス
に基づいた問題解決を行うことにより、個々の組織の状
況に応じた論理的な解決方法の立案が可能となる。
解決方法の立案において必要となる人や組織、社会に
おける法則性については、社会学や心理学、倫理学など
における理論や知見に数理的概念を適用する。社会学に
おける数理的概念の導入は小林ら 9)やワイドリッヒ 10)
などによって行われているが、女性の労働問題への適用
はほとんど行われていない。
きるか否かは、経路選択において不可欠な判断基準であ
り、
目的地に到達しない経路は選択できないものとなる。
この概念は、関数の関数である汎関数を最小化しよう
とするものであり、数学における変分法、物理学におけ
る変分原理に対応する 12)。最適デザインにおける表現を
用いれば、最短時間や最小経費がデザイン目標、経路は
目的関数、現在地や目的地、経由地はデザイン目標であ
るとともに制約条件となる 11)。
なお、ここでの数理的概念の導入は、先に述べたよう
に「女性」や「男性」といった表現とは関係なく理論の
展開を行うとともに、学術的用語の難解さや学問分野に
よる表現の違いによる混乱を避けて、問題解決の関係者
がそれらの概念を理解し共有できることを目的とするも
のであり、数学的に証明することを目的としたものでは
ない。
図-2 現在地から目的地までの経路探索
図-1 問題解決のプロセス
現在地と目的地の認識を間違っても最適な経路を求
めることは困難であり、目的地が定まらなければ迷走し
目的地に到達しない可能性もある。現在地と目的地の距
離が離れるのに伴って最適な経路を決定する困難さは増
大する。その場合は、現在地から目的地までをいくつか
の区間に分けて各区間について経由地を決めれば、最適
な経路をある程度絞り込むことができる。
図-1 における目的地と経由地の関係は、最終目標と中
期目標と見なすこともでき、そのときの問題解決のプロ
セスは以下のように考えることができる。解決方法の立
案は、現状の問題点を明確した後に最終目標を定めて、
最終目標を達成するための中期目標を定め、中期目標を
達成するための解決方法(戦略)をトップダウンによっ
て細部にまで計画する。解決行為の実行は細部からボト
ムアップで進める。
3.解決方法立案のための理論と数理的概念
図-1 に示した問題解決のプロセスは、人や組織におけ
る意思決定のプロセスであり、数学的には経路探索の最
適化問題 11)と捉えることができる。さらに、人と人のつ
ながりおよび組織・社会の構造について、質点系モデル
を導入する。組織を構成する個人を一つの質点、組織お
よび社会を多数の質点の集合した系と捉える。さらに、
人や組織、社会は時間の経過とともに変化するものとし
て、非線形システムの概念を導入する。
(1)最適化のための経路探索モデル
問題解決における問題とは現状と理想のギャップで
あり、解決方法とはそのギャップを解消するための方法
と考えることができる 6)。別の表現をすれば、図-2 に示
すような、現在地から目的地までの最適な経路を求める
行為 11)である。現在地点から目標地点までの経路は何ら
かの制約条件がなければ無数に存在する。選択した経路
が最適か否かの判断基準は、最終的には到達した地点と
当初の目的地との誤差であるが、経路選択時には現在地
から目的地までの時間や経費、エネルギーなどの最小化
が経路決定の目的となる。
また、経由地は目的地に到達するための目標の一つと
考えることができる。そのときの経路探索においては、
目的地は制約条件の一つとなる。経路が目的地に到達で
(2)意思決定のための多自由度系システム
社会や組織、人間関係のあり方に関しては倫理学や心
理学、
社会学等に基づく考察が必要となる。
本研究では、
社会や組織を構成する個人を一つの質点、社会や組織を
質点の集合、すなわち多質点系と考える。さらに、組織
や個人の価値観を質点の座標軸あるいは自由度で、人と
人とのつながりを質点相互の関係で置き換え、人と人と
のつながり方の違いによる組織の構造やエネルギーの違
い、質点系の境界と問題の枠組みについて考察する。
a)価値観を表す座標あるいは自由度
ダイバーシティ推進におけるキーワードの一つとし
て「多様な価値観」がある。価値観とは個人や組織の意
思決定における判断基準 13)-15)であり、多様な価値観と
11
意思決定の柔軟性が高まることが理解できる。式(1)は
変数として時間 t を含んでいないが、価値観が時間とと
もに変化すると仮定すれば、時間に関しても非線形と考
えることができる。
以上から、組織を構成する一人ひとりが多様な価値観
をもっていることが重要であり、組織はその構成員の価
値観の多様性を尊重しなければならないことがわかる。
b)個人の意思決定
個人の価値観を仕事と家庭の 2 自由度と仮定すると、
式(2)は次式のようになる。
は、意志決定の判断基準として、貨幣による交換可能な
ものだけでなく貨幣には交換できないものも用いている
ことであり、その優先順位も意志決定者によって異なる
ことである。東日本大震災以降に言われた価値観の多様
化とは、人々が求めてきたものが物質的な豊かさ、すな
わちお金で買えるものから、家族や絆などのお金で買え
ないものに変わったということである。
個人・組織は意志決定により行動を決定しその特性を
表現する。このことから、意思決定における判断基準で
ある価値観は、質点の挙動を表現する座標や自由度と見
なすことができる。質点系を構成する質点の座標と質点
系全体の座標が異なれば、個々の質点の挙動を記述する
ことはできない。さらに、自由度の低い質点および質点
系の挙動は限定されたものとなる。
そこで、本研究では「多様な価値観」の多様性を自由
度として捉え、個人や組織の意思決定を多自由度系シス
テムとして表現する。システムについては様々な定義が
あるが、ここではメドウズ 21)による以下の定義を適用す
る;システムとは何かを達成するように一貫性を持って
組織されている、相互につながっている一連の構成要素
である。
あるシステムにおける入力ベクトルを
トルを
Y1   A11
 
Y2   A21
A12  A21  0
次式となり、
(1)
n 自由度系では以下のように表すことができる。
 A1n   X 1 
 A2 n   X 2 
  (2)
    

 Ann   X n 
企業などの活動では、X は投資、 A はその組織の
価値観、Y  は意思決定によって生じる挙動を表し、そ
A12
A22

An 2
こから利益が生じると考えることができる。
多自由度系の概念は図-3 のように表すことができる。
図-3(a)は
(4)
となる。この場合、式(3)は線形システムとなり、個人の
挙動は仕事と家庭で得られる挙動の和となる。
これに対して、仕事と家庭に何らかの関係を認めれば、
式(3)は非線形システムとなり、
線形システムでは得られ
ない挙動を生じる。すなち、非線形システムでは、仕事
が家庭に、家庭が仕事に影響を及ぼし、線形システムで
得られる仕事と家庭で得られる挙動の和以上のものが得
られ、そこから新たな価値が創造される可能性がある。
ワーク・ライフ・バランスの実現は非線形システムの
最適設計であり、システム設計の目的が異なれば最適解
も異なる。個人が仕事と家庭のどちらに重みを置くかに
よって、そのあり方は異なる。
c)組織(企業)の意思決定
式(2)は個々に異なった価値観を有する n 人で構成さ
れる組織として理解することもできる。n 人がそれぞれ
他者の価値観を認めなければ、特性行列は対角行列とな
る。価値観の多様性を認めず仕事に価値観を置く組織は
一自由度系であり、組織の構成員には同じ価値観を有す
ることが求められる。出産・子育て・介護等の組織とは
異なる価値観を有する個人はそのシステムの構成員とし
て評価されないことになる。
組織が非線形システムとなるためには構成員が互い
の違いを理解し合い、価値観の多様性を認めることであ
る。これにより個々の構成員の自由度が高まり、柔軟性
に富んだ組織が構築される。自由度が高いほど柔軟性は
高まり、新たな価値が創造されやすくなる。
d)質点系の構造と人・組織・社会の信頼関係
多数の質点が一つの質点系としての挙動を示すため
には、外力あるいは外的制約条件を与えて一つにまとめ
るか、個々の質点の間に何らかの関係(内的制約条件)
が存在してまとまることが必要となる(図-4)
。
外的制約によってまとまった系では、系のエネルギー
Y  、特性行列をA とすると、このシステムは
Y1   A11
Y   A
 2   21
 
  
Yn   An1
(3)
仕事と家庭を区別して両者には関連がないと考える
場合には、
X 、出力ベク
Y   AX 
A12   X 1 
 
A21   X 2 
A が対角行列となる線形システムである。
(a) 3 軸座標系
(b) 3 自由度系
図-3 多自由度系の概念
前述のシステムの定義「相互につながっている一連の
構成要素」によれば、意思決定の数理的概念としては図
-3(b)が妥当であり、式(1)は非線形システムとなる。
また、この概念図より、自由度(多様性)が高くなると
12
もされている 19)、20)。
e)質点系の境界と問題の枠組み
質点系の挙動を求める場合、解析の対象を明確にする
ために質点系の中と外の境界を明確にすることが必要と
なる(図-5)
。また、問題解決の対象とする系の中と外の
境界と関係は制約条件として考慮される。
問題解決に当たり、その問題は社会とは無関係な組織
として閉じた問題なのか、あるいは社会と一体とした系
で解くべき問題なのかについて検討しておく必要がある。
さらに、3.
(1)で述べたように、系の自由度が多く制
約条件が少ない場合あるいは制約条件がない場合には最
適解を求めることは困難になること、また、外的制約と
内的制約によって系の自由度は縮減できることに注意す
る。
は個々の質点のエネルギーの総和と等しく、外的制約が
なくなれば質点はバラバラになる。内的制約によってま
とまった系では、系のエネルギーは個々の質点のエネル
ギーと質点間の結合エネルギーの合計となり、質点間の
結合が強固になれば結合エネルギーも増加する。
社会主義や集団主義の社会は外的制約によって結合
した系、民主主義や自由主義は内的制約によって結合し
た系と考えることができる。
(a)外的制約によって結合した系
図-5 質点系の境界
(b)内的制約によって結合した系
図-4 質点系としての組織構造
質点間のつながりの一例としてニュートンの第3法
則(作用反作用の法則)があるが、人や組織、社会にお
いては信頼関係がこれに対応すると考えることができる。
組織を構成する個人の間に信頼関係が存在すれば、その
組織は一つのまとまり、すなわち系としてみなすことが
できる。信頼関係は個人と個人の間に期待と責任が作用
反作用の法則のように存在することによって成り立つ。
期待に応じた責任が果たせない場合や誠実な対応でない
場合、二者の力関係が異なる場合には信頼関係が成立す
るのは困難となる。さらに、信頼の度合いが高い組織は
柔軟かつ強靭な組織となる。なお、ニュートンの法則で
使用される物理量の質量と加速度には、社会物理学等の
知見 16)から情報の質と単位時間当たりの情報の発信量
が対応すると考えられる。
以上より、他律的な組織よりも自律的な組織なほうが
強靭であり、高いエネルギーを有していること、すなわ
ち優れたパフォーマンスを示すことがわかる。個人にお
いても自律性の高い方が高いパフォーマンスを示すこと
がデシら 17)によって明らかにされており、組織内の人間
関係の違いや自律性が組織や個人の業績に及ぼす影響に
ついては、自律性を高め人間関係を密にする環境を整え
ることで組織の業績を上昇させることが可能となること
が明らかになっている 16)、18)。また、組織の構成員の自
律性を高めることで企業の業績を向上させた事例の報告
13
例えば、女性技術者の量的・質的拡大の目的である人
材確保は、その背景に少子高齢化による労働人口の減少
があることから、個々の企業で閉じた問題として考える
と限られた人数を取り合うことになる。その場合には、
業界全体の問題として、あるいは日本全体の問題として
検討する必要がある。また、ワーク・ライフ・バランス
を取りながら指定され大量の仕事を限られた時間の中で
処理するという問題は、一人だけの問題として解決する
ことができない場合でも周囲の人たちと連携することで
解決できることもある。
(3)自律のための非線形システム
非線形システムについては、メドウズ 21)は、
「システ
ムとは何かを達成するように一貫性を持って組織されて
いる、相互につながっている一連の構成要素である」と
定義するとともに、部分の総和以上のものであり、自己
組織化が可能であるものとしている。すなわち、ここで
の非線形には、人や組織、社会の挙動が時間に依存する
ことに加えて、それらの構造が自己調節をするフィード
バック機構を持っていることを意味する。また、非線形
システムは普遍的物理法則であるエントロピー増大の法
則(熱力学第二法則)に支配される 22)。
a)エントロピー増大の法則
エントロピーとは乱雑さを表す物理量で、エントロピ
ー増大の法則とは、
「エントロピーの総量は時間とともに
増加することはあっても決して減少しない」というもの
して有効であると考えられる。
である。あるシステムのエントロピーが増大することは
そのシステムが劣化することを意味する。エントロピー
が増大しないあるいは増加の変化が微小な状態は平衡状
態であり、物体は固体から液体、気体と平衡状態が変化
(相転移)しながら劣化していく。
人や組織、社会も非線形システム 23)-25)であり、人の
老化や組織の硬直化、地球環境問題もエントロピー増大
の結果と捉えることができる。人や組織がエントロピー
を増大させずに劣化を防ぐためには適切なフィードバッ
クによって自己組織化を行って平衡状態を保つことが必
要となる。場合によっては、物体の相転移のようにその
構造を変化させて新たな次元での平衡状態に移行してい
くことが必要になる。
日本社会が戦国時代から江戸時代への安定期と移り、
そこから明治維新、太平洋戦争等を経て民主主義を根付
かせてきたことは、日本社会の相転移であると推測でき
る。老舗といわれる、時代を越えて活動を継続している
企業 26)は社会情勢等の変化に応じて制度や構造を変え
てその活動を継続してきた非線形システムと考えること
ができる。
b)自己組織化のためのフィードバック
人は行った行為から否定的なフィードバックがある場
合や何のフィードバックもない状況が続くと、その行為
の継続や繰り返しを停止し劣化する。これを負のフィー
ドバックとする。これに対し、行った行為から肯定的な
フィードバックがあればそれがモチベーションとなり、
その行為を継続・強化する。これを正のフィードバック
とする。例えば、
「喜び」や「やりがい」を感じる行為は
繰り返すことも長時間行うことも苦にならない 28)、29)。
最初は考えながら実行するような複雑な作業も、少しず
つでも進歩が感じられれば繰り返し行うようになり、や
がて無意識で実行できるようになる。これは、脳の働き
が探索的な思考から直感へとモジュール化されたことに
よる 27)。
人や組織は周囲の環境からのフィードバックによって
も自己組織化を行い環境へ適応していく。例えば、前述
した人と人との信頼関係は期待に応じた責任のフィード
バックがあって成立するものであり、その繰り返しによ
って緊密な人間関係が築かれる。そのためには、人や組
織の素養だけでなく行為に対して適切なフィードバック
が与えられる環境があること、すなわち適切な環境づく
り・仕組みづくりが重要であることがわかる。なお、適
切なフィードバックについては、3.
(2)d)で述べた
ように、質の良い情報を短時間に多量に発信することが
効果的であると考えられる。その点で、組織がその理念
を達成するために構成員に対して意思決定層が具体的な
行動を示すことや目的達成に関する情報を繰り返し発信
することは構成員の意識や行動を変える環境・仕組みと
4.問題解決
これまで「女性技術者の量的・質的拡大」という課題
について、解決方法立案のための各種理論について考察
してきた。以下では、図-1 に示した問題解決のプロセス
の各段階について具体的に検討する。
(1)問題の認識
3.
(1)において、問題とは現状と理想のギャップで
あり、現在地と目的地の認識を間違うと最適な経路を求
めることは困難であると述べた。このことから、理想の
レベルによって問題として認識されるか否かが決まるこ
とがわかる。
すなわち、
問題の認識は人によって異なり、
現状に満足している場合や現状を当たり前と思っている
場合には、現状は問題として認識されることはない 30)。
例えば、職場満足度等の調査においては、満足度が高
いと回答した人たちよりも満足度が低いと回答した人た
ちの職場に何らかの問題があると判断されることが多い。
しかし、問題の認識という観点からは、満足度が低いと
回答した人たちは職場に対する理想のレベルが高く職場
の問題を認識している人たちである。これに対して、職
場に対する満足度が高いと回答した人たちは、以下の 3
種類であると考えられる。
①職場に対する理想のレベルが低い
②問題が見えていない
③問題は見えているが、見ないことにしている
このことから、満足度の高い人たちは潜在的な問題を抱
えている可能性があることが推測される。
すなわち、職場満足度調査において、管理職が「満足
度が高い」と回答し、女性や若手職員が「満足度が低い」
と回答した職場では、女性や若手職員の職場に対する理
想のレベルを把握するだけでなく、管理職が潜在的な問
題が抱えている可能性があることを「問題」と判断すべ
きであろう。
女性活躍支援に関しても、国の方針にしたがって制度
整備をしたことで女性活躍支援をやったつもり、理解し
たつもりになっている場合には、問題としての認識はさ
れず、それ以上の状況の改善は望めない。まずは、現状
の取り組みに問題はないかと疑うことから問題解決は始
まる。
以下では、現状の把握と理想すなわちゴールの設定に
ついて検討する。
a)現状の把握
現状把握では、課題である「女性技術者の質的・量的
拡大」の状況把握だけでなく、関連する潜在的な問題や
14
その背景にある問題の本質を把握することが必要となる。
女性の労働は、1972 年施行の勤労婦人福祉法、1985
年施行の男女雇用機会均等法を契機に進められてきてお
り、福祉政策の一つと考えることができる。これに対し
て、企業経営の目的は利益であり、福祉と利益という2
つの異なる座標軸では問題の認識は異なるのは当然であ
り、利益に繋がる福祉政策でなければ積極的な取り組み
は行われないことになる。
男女共同参画に関する現状を把握するための統計デ
ータにおいては離職率や勤続年数などの性別比較が行わ
れる。これに対し、山岸 31)は、差別は自由競争の資本主
義社会だからこそ差別が存在し、男女差別の背景にある
統計的な男女差のほとんどは男女差別の存在に対する男
女の適応行動が生み出したとしている。具体的には、
「女
性はやる気がない」という偏見によって差別された女性
たちにはやる気を示すことで得られる利益が存在せず
「やる気がない」という環境に適応した行動になるとい
うものである。この状況は、山口が「予言の自己成就」
と表現した、女性の活躍推進に積極的でない企業が離職
を前提として雇用した女性に適切な仕事と待遇を与えな
かった結果として出産等を契機に離職に至るという状況
と同様であり、3.
(3)b)で述べた負のフィードバッ
クの結果であると考えられる。
また、女性の離職理由には、出産・育児関連の整備の
不備や長時間労働による仕事と家庭の両立困難が挙げら
れてきた。しかし、企業が適切な人材育成を行ってこな
かったことによる仕事やキャリアへの不満や行き詰まり
感の存在も指摘 32)、33)、されている。このことからも、
人は負のフィードバックによって離職すると考えること
ができる。すなわち、適切な仕事と待遇を与えられない
という環境は仕事の喜びややりがいを奪われた人が働く
意欲を失い離職に向かうきっかけの一つとなると考えら
れる。
現在の女性活躍推進の取り組みは、2003 年に内閣府男
女共同参画推進本部が決定した「2020 年 30%」の目標や
2015 年に成立した「女性活躍推進法」がきっかけとなっ
ており、その背景には少子高齢化時代における人材確保
があるとされている。一方、現在の企業活動は社会の変
化とは無関係ではおられず、現代社会の変化については
グローバル化への対応、インターネットの普及が産業や
人間の知に及ぼす影響、自由主義・資本主義経済の限界
など、様々な指摘 34)-38)が行われている。
b)理想(目的地)の設定
本研究の課題は「女性技術者の量的・質的拡大」であ
るが、3.
(1)
、
(2)で考察したように、この課題達成
が目的地なのか、
経由地なのかを考えなければならない。
経由地ならば、
その目的地はどこか。
人材の確保か、
「2020
年 30%」の達成か、前述のような社会の変化に対応して
15
持続するための組織の改革か。それによって、取るべき
解決方法は異なってくる。
設定された目的地はその組織と構成員の共通の価値
観(座標軸)であり、その組織に係わる意思決定の判断
基準(問題解決における制約条件)となる。企業におい
ては、経営理念がその活動の目的であるとともにその企
業の価値観であるといえよう。したがって、企業内にお
ける意思決定は原則として経営理念に則って行われると
考えることができる。
このことから、一般の企業では「女性技術者の量的・
質的拡大」は経営理念実現のための方法(経由地)とな
る。例外として、
「女性技術者の量的・質的拡大」が経営
理念と相反する企業においては、企業活動として取り組
む必要はないと判断することは妥当であると考えられる。
(2)目標と制約条件の設定
問題認識ができれば、具体的な解決方法立案のための
目標と制約条件を設定する。本研究の課題である「女性
技術者の量的・質的拡大」の「量的」
、
「質的」について
は、具体的な数値や内容で表現しておくことで、解決方
法の立案が容易になるとともに解決方法の妥当性の評価
指標となる。
制約条件は、3.
(2)e)で述べたように、問題の枠
組みを決めるだけでなく、立案した解決方法の適否を判
断する基準となる。法律や制度、組織の価値観、3.で
述べた組織や人の特性も制約条件となる。
特に、3.(1)で述べたように、経営理念は不可欠の
制約条件である。さらに、自律性を高め人間関係を密に
する環境づくり、および適切なフィードバックが行われ
る仕組み作りは、個人や組織のパフォーマンスを高める
うえで不可欠の制約条件と考えられる。ただし、自律性
に関しては目的を有していることと周囲の状況を把握し
ながらもそれらに影響されない判断力を育成することが
制約条件となる。
さらに、設定した目標に対して〇〇できるはずがない、
〇〇すべきであるといった思い込みや偏見も制約条件に
なることに注意が必要である。これらは、新たな解決方
法の立案において自由な発想を制限する。例えば、長時
間労働の解消なんてできるはずがない、男性の育児休業
取得はできるはずがない、子供は手料理で育てなければ
ならない、子育ては母親がすべきであるといったもので
ある。
(3)解決方法の立案
目標と制約条件が設定できれば、
解決方法を立案する。
ここでは、企業経営を構造物設計と同様な最適化問題と
してその解決方法の立案について考える。構造物等を設
計する際には、その構成要素の特性を知り、その特性を
メージを関係者で共有しやすくなり共通の問題認識が可
能となる。
社員の中から、
「キャリアの継続」に関するエピソー
ドを持つ代表的な社員 11 名(女性 5 名、男性 6 名)に対
してインタビューを実施した。把握した内容は、経歴、
入社した動機、現在・過去の働き方、主なライフイベン
ト、オフの過ごし方、モチベーションの変化等である。
インタビューは W-Net(女性総合職キャリア形成ネット
ワーク)の事務局が担当した。
インタビュー内容を元に、KJ 法を用いてペルソナとシ
ナリオの作成を行った。KJ 法による作業では、インタビ
ュー対象者のエピソード(離職しそうになった、一度離
職して戻ってきた、
中途入社した、
育児休業を取得した、
資格を取得した等)の要素を抜き出し、個々の要素を組
み合わせてペルソナおよびシナリオを作成した。作成し
たペルソナとシナリオの例を表-1 に示す。
生かした設計を行うことで最適化が行われる。このこと
から、企業経営を最適化するためには、従業員の多様性
を認めて生かすことは当然であることがわかる。
女性活躍推進法の成立によって既に行動計画をまと
めていれば、それらについて、あるいは先進的な事例に
ついても参考にして、設定した制約条件をもとにそれら
の適否や改善の必要性、新たな解決策の創出を検討し、
最適と考えられる解決方法を選定する。
(4)実行と評価
解決方法が決まれば実行し、評価の結果によっては解
決方法を見直してPDCAサイクルを回していく。
ここで、
注意したいのは、3.
(3)b)で述べた実行の状況や評
価結果の構成員へのフィードバックである。適切なフィ
ードバックが行われて変化が実感できれば、行動は強化
され変化は加速する。
表-1 作成したペルソナとシナリオの例
ペルソナ
5.人間中心設計による問題の把握と制度設計の試み
A さん:男性、35 歳、既婚、子供 2 人。妻は専業
主婦。大阪在住、九州出身、国立大学工学部卒業。
シナリオ
昨年の研究成果に基づき、今後の女性の活躍支援策の
設計手法として、人間中心設計の導入を試みたものであ
る。これまでに6回の研修を行い、問題の把握と解決方
法のアイデア出しまでを行った。
ここでは、人間中心設計の概要とこれまでに得られた
成果に対する考察について述べる。
A は大学では、建築か土木かで悩んだが、大きな構
造物に憧れ、土木を専攻した。先輩からの勧誘も
あり、別の環境系コンサルタントに就職した。
(中
略)大学の先輩に当社の社員がいて、中途採用試
験を受け合格。
(中略)仕事の幅が広がり、先駆的
な仕事も経験できた。しかし、32 歳の頃、仕事が
マンネリ化したように思え、同僚の退職も相次い
だため、退職を考えたが・・・
(後略)
(1)人間中心設計の概要
人間中心設計 39)は、ソフトウェアや工業製品の開発に
おいて、利用者の特性や使い心地を考慮して満足度の高
い製品を作るための手法である。コンピュータを使用し
た対話型システムの人間中心設計に関しては JIS Z
8530 人間工学-インタラクティブシステムの人間中心
設計プロセス(ISO9214-210 :Human-centered design
processes for interactive systems)として規格化されている。
人間中心設計の考え方は、コンピュータの対話型システ
ムに限らず、あらゆる人工物に適用可能とされており、
企業における業務施設や就業規則等の設計、人材育成の
ための研修会の企画などにも対象可能と考えられる。
本研究では、建設系企業において社員にとって満足度
の高い組織の構築を目的として、人事部門によって人間
中心設計を用いたダイバーシティ推進のための潜在的な
問題の抽出と施策の検討を行った。
(3)課題の抽出および制度設計の試み
ペルソナとシナリオを基にして、問題抽出およびある
べき姿と解決方法の検討を行った。
シナリオから得られた課題を抽出し、解決の方向性の
アイデア出しをした。さらに、既存の施策での対応の有
無も確認した。この結果、41 項目の課題が抽出され、課
題に対応する 98 項目の施策が列挙された。
これらには社
内ですでに具体化されているものや、アイデア段階のも
のが含まれるため、検討の結果、今後、施策として提案
できるもの 12 項目を抽出し、
制度設計も含め検討する予
定である。
また、ダイバーシティ推進の必要性の理解を得ること
を目的として、社内の仮想の部署におけるできごとを紹
介する漫画を制作した。漫画にすることで、多くの社員
に読まれることを期待した。制作にあたっては脚本家と
漫画家に情報を提供して、設定やあらすじの提案を受け
る。今回はインタビューをもとに作成したペルソナとシ
ナリオを提供した。制作した漫画はイントラネットにお
いて社内に公開した。社員からは「エピソードが具体的
(2)人間中心設計によるペルソナとシナリオの作成
ペルソナとはここでは社員の代表となる架空の人物、
シナリオとはペルソナの行動を物語として表現したもの
で、シナリオとペルソナを用いることで、具体化したイ
16
3)自らの価値観および組織構成員の価値観の多様性を
尊重し、組織構成員の仕事への動機づけを活かした
人材育成や組織マネジメントを行う必要がある。
で分かりやすい」と評価されている。
(4)考察
ダイバーシティ推進という目的の観点から、女性技術
者以外の社員も対象としたインタビュー調査を行い、人
間中心設計によるペルソナとシナリオを作成することに
より、職場満足度調査などでは得られない具体的な社員
像が明らかになった。そこから描かれた理想の姿は、長
時間労働の解消やワーク・ライフ・バランスの実現だけ
でなく、仕事のやりがいや、会社と社員・社員同士の信
頼など、3.で考察したパフォーマンスを高める姿であ
った。
建設系企業ならびに建設業界の組織構成員は、
4)技術者として自身が働くことの意味を問い直し、組
織の一員として他者と協調しながら新たな価値を
創造できるよう努め、そのために不断の学びを行う
必要がある。
謝辞 人間中心設計の導入に際しては、山田菊子氏(東
京工業大学環境・社会理工学院研究員)からご指導とご
助言をいただいた。心より感謝申し上げる。
6.結語
参考文献
社会学や心理学、倫理学などの理論を基に演繹的アプ
ローチによる問題解決として解決方法の検討を行った。
解決方法の立案において必要となる人や組織、社会にお
ける法則性については、社会学や心理学、倫理学などに
おける理論や知見を用いるが、
「女性」や「男性」といっ
た表現とは関係なく理論の展開が可能なように、数理的
概念を適用して表現して考察した。
これにより、企業とは経営理念の実現を目的とする自
律システムであり、その価値観に賛同する人たちで構成
されるべきものであること、企業経営を最適化するため
には従業員の多様性を認めて生かすことは当然であるこ
とが明らかになった。別の表現をすれば、現在は社会の
変換点にあること、その変化に対応するためにダイバー
シティ推進が必要であることが明らかになった。
さらに、昨年の成果において提案した人間中心設計を
適用した女性技術者支援策についても考察し、女性技術
者の量的・質的拡大のためには、自律性を高め人間関係
を密にする環境づくり、および適切なフィードバックが
行われる仕組み作りが重要であることが明らかになった。
1)例えば、日経 BP ヒット総合研究所(編著)
:日経 WOMAN
女性が活躍する会社 Best100-2014 報告書- 女性管理職・
経営人材育成の戦略と施策、2014.
2)World Economic Forum:Global Gender Gap Report 2015, pp.8-9,
http://www.weforum.org/reports/global-gender-gap-report-2015
3)World Economic Forum:Global Gender Gap Report 2014, pp.8-9,
http://www.weforum.org/reports/global-gender-gap-report-2014
4)須田久美子:女性が活躍できる建設業とするために、橋梁と
基礎、vol.49、pp.102-105、2015.
5)岡村美好、木村達司、瀬尾弘美、楊雪松、高橋富美、三谷由
加里:女性技術者の量的・質的拡大に向けた企業経営のあり
方に関する研究、国土文化研究所年次報告、Vol.13、pp.29-35、
2015.
6)堀井秀之:社会技術論 問題解決のデザイン、pp.38-56、東
京大学出版会、2012.
7)安西祐一郎:問題解決の心理学 人間の時代の発想、中公新
書、1985.
8)柴山盛生、遠山紘司:問題解決の進め方、放送大学教育振興
会、2012.
9)小林淳一、三隅一人、平田暢、松田光司:社会のメカニズム
〔第 2 版〕
、ナカニシヤ出版、2000.
10)ボルフガング・ワイドリッヒ(有賀裕二、佐藤浩監訳)
:ソ
提言
以上の研究成果に基づき、以下を提言する。
シオダイナミクス 社会経済システムの物理学的方法、森北
出版、2007.
1)女性技術者の活躍支援は、企業の経営理念実現のた
めの方法であり、社会の変化に対応して建設系企業
ならびに建設業界が持続と革新を行うための方法
として取り組むべきである。
11)
松岡由幸、
宮田悟志:最適デザインの概念、
共立出版、
pp.36-39、
2008.
12)日本機械学会編:固体力学 基礎と応用、オーム社、
pp.137-149、1985.
13)ラッシュワース・M・キダー:意思決定のジレンマ、日本
女性技術者の活躍支援を進めるために、建設系企業なら
びに建設業界の意思決定層は、
2)自らの問題として意識改革に努め具体的行動により
模範を示すことが必要である。
経済新聞出版社、2015.
14)土木学会土木教育委員会倫理教育小委員会編:土木技術者
の倫理 事例分析を中心として、土木学会、pp.1-55、2003.
17
15)加藤豊:例題 AHP(階層化意志決定法) -基礎と応用-、
がわたしたちにしていること、青土社、2015.
ミネルヴァ書房、2013.
28)M・チクセントミハイ:フロー体験とグッドビジネス 仕
16)アレックス・ペントランド:ソーシャル物理学 「良いア
事と生きがい、世界思想社、2014.
29)D. ピンク:モチベーション 3.0 持続する「やる気!」を
イデアはいかに広がるか」の新しい科学、草思社、2015.
いかに引き出すか、講談社、2014.
17)E. L. デシ、R. フラスト:人を伸ばす力 内発と自律のす
30)
西林克彦:わかったつもり 読解力がつかない本当の原因、
すめ、新曜社、2010.
光文社新書、2005.
18)矢野和夫:データの見えざる手 ウェアラブルセンサが明
31)山岸俊男:安心社会から信頼社会へ 日本型システムの行
かす人間・組織・社会の法則、草思社、2014.
方、第 9 版、中公新書、pp.208-227、2014.
19)リカルド・セムラー(岩本貴久訳)
:奇跡の経営 一週間毎
日が週末発想のススメ、総合法令、2006.
32)山口一男:企業のパフォーマンスと女性活用との関係、企
業力を高める 女性の活躍推進と働き方改革、経団連出版、
20)細川あつし:コーオウンド・ビジネス 従業員が所有する
会社、築地書館、2015.
pp.134-141、2014.
33)中野円佳:
「育休世代」のジレンマ 女性活用はなぜ失敗す
21)ドネラ・H・メドウズ(枝廣淳子訳)
:世界はシステムで動
るのか、光文社新書、2014.
く いま起きていることの本質をつかむ考え方、英治出版、
34)P・F・ドラッカー:ネクスト・ソサエティ 歴史が見たこ
pp.32-34、2015.
とのない未来がはじまる、ダイヤモンド社、2010.
22)蔵本由紀:非線形科学、集英社新書、2007.
35)岩田克人・前田裕之:経済学の宇宙、日本経済新聞出版社、
23)生天目章:社会システム 集合的選択と社会のダイナミズ
ム、ミネルヴァ書房、p.10、2013.
2015.
36)宇沢弘文:経済学は人びとを幸福にできるか、東洋経済新
24)井庭崇、宮台真司、熊坂賢次、公文俊平:社会システム理
聞社、2014.
論 不透明な社会を捉える知の技法、慶応義塾大学出版会、
37)西垣通:集合知とは何か ネット時代の「知」のゆくえ、
2011.
中公新書、2013.
25)ロバート・キーガン、リサ・ラスコウ・レイヒー:なぜ人
38)ポール・ロバーツ:
「衝動」に支配される世界 我慢しない
と組織は変われないのか ハーバード流自己変革の理論と実
消費者が社会をくいつくす、ダイヤモンド社、2015.
践、英治出版、2014 年 4 月
39)黒須正明:HCD ライブラリー 第 1 巻、人間中心設計の基
26)野村進:千年企業の大逆転、文芸春秋、2014.
礎、近代科学社、2014.
27)ニコラス・G・カー:オートメーション・バカ 先端技術
RESEARCH ON CORPORATE MANAGEMENT TOWARD THE QUALITATIVE
AND QUANTITATIVE EXPANSION OF WOMEN ENGINEERS
Miyoshi OKAMURA, Tatsushi KIMURA, Hiromi SEO, Xuesong YANG, Fumi TAKAHASHI,
Yukari MITANI, Katsura ISHI, Yukiko IWAOKA and Junko NII
This study is aimed to design the corporate management, which promotes the qualitative and quantitative
expansion of women engineers, based on problem-solving process and the human centered design. The
solutions of the problem-solving are derived from the theories of Sociology, Psychology and Ethics which are
explained by applying Mathematical concepts such as multi-mass system and nonlinear system. Based on
discussion of nonlinear system theory, it is clarified that promotion of women engineers is essential to sustain
the corporate management and it is important to provide the opportunities and motivations for working to the
women engineers.
18