VMCガス

Contents
• はじめに
– 種々の機能性材料
– 細孔の定義と大きさの分類
– 測定法との関係
• ガス吸着法
– 測定手法(容量法,重量法,流動法)
– 吸着等温線の分類
– 吸着と脱着(脱離)のヒステリシス(吸着プロセス)
• 吸着理論・吸着等温線の解析方法
– 比表面積解析(BET理論)
– メソ細孔~マクロ細孔分布解析(BJH法)
– ミクロ細孔~メソ細孔分布解析(NLDFT)
YUASA IONICS
多孔質物質について
多孔質物質:固体中に大小様々な孔をもつ物質
シリカゲル
活性炭
ゼオライト
ヒドロキシ
カチオン
酸化物
の支柱
ケイ酸塩層
イオン交換
加熱脱水
ピラードクレイ
YUASA IONICS
多孔質物質と細孔径
0.1nm
間
接
法
細
孔
分
布
測
定
法
1nm
ガス吸着法
0.4 nm
3 nm
0.3 nm
分子篩別法
直
接
法
無
機
質
多
孔
体
100nm
1m
10m
100m
1mm
200 nm
水銀圧入法(水銀ポロシメトリー)
950 m
気体拡散 ・ 流体透過法
200 nm
2 nm
毛管上昇法
200 nm
1mm
電子顕微鏡
1 nm
100 m
走査型電子顕微鏡
10 nm
100 m
光学顕微鏡
500nm
肉眼
70 m
2 mm
多孔質ガラス
ゼオライト
アルミナ質隔膜
シリカゲル
アルミナ質多孔質磁器
各種活性炭
ガラス繊維フィルタ
Ni隔膜
シリカアルミナ
マアグネシア触媒
(Dry)
有
機
質
多
孔
体
10nm
セ
ロ
ハ
ン
孔
酢
酸
繊
維
孔
ビ
ニ
ロ
ン
繊
維
孔
ウルトラ
セルフィルタ
ガラスフィルタ
Au隔膜
金属せん孔濾過体
活性アルミナ触媒
金属メッシュ篩
テフロンフィルタ
セロハン孔 (Wet)
MR型
イオン交換樹脂
超MR型
イオン交換樹脂
不織布
マイクロフィルタ
メンブランフィルタ
YUASA IONICS
IUPACにより定義された細孔の種類
ミクロ孔
名称
細孔径
マクロ孔
50nm<
メソ孔
2~50nm
スーパーミクロ孔
ウルトラミクロ孔
<2nm
2~0.7nm
<0.7nm
ゼオライト : ウルトラミクロ孔
MSC,ACF : スーパーミクロ孔,メソ孔
MCM-41,FSM-16,SBA-15など : メソ孔
活性炭,シリカゲル : ミクロ孔~マクロ孔
YUASA IONICS
IUPACによる細孔の定義
細孔の定義 :
w :細孔直径
d :奥行長
d >> w
w
w
pore
d
ink-bottle type pore
blind pore
closed pore
through pore
inter-connected
pore
均一細孔
不均一細孔
多孔質物質
YUASA IONICS
IUPAC(ISO)による推奨評価法
対
象
比表面積
細孔分布(マクロ孔)
細孔分布(メソ孔)
細孔分布(ミクロ孔)
真密度
理
論
方
法
媒
体
BET
ガス吸着法
N2,Kr
Washburn
水銀圧入法
Hg
BJH,(DFT)
ガス吸着法
N2
HK,SF,(DFT)
ガス吸着法
N2,Ar,CO2
Boyle
ガス置換法
He
細孔分布では細孔の大きさにより,3つに分類している点が特徴的である。
即ち,細孔の大きさに応じてガス吸着法と水銀圧入法を使い分ける。
YUASA IONICS
測定方法(吸着装置のしくみ)について
ガス分子をプローブとした測定方法
気体吸着法
物理吸着法
重量法
容量法
定容法
化学吸着法
流動法
定圧法
吸着様式の違い
検出方法の違い
検出対象の違い
YUASA IONICS
一般的な気体吸着法
容量法・・・吸着した気体の容積変化を測定する方法
◎定容法 : 容積を一定に保ち、吸着により生じる圧力変化を
吸着量として検出する
○定圧法 : 圧力を一定に保ち、吸着により生じる容積変化を
吸着量として検出する
重量法・・・吸着による固体の重量変化を測定する方法
利点
欠点
死容積測定が不要
耐荷重の制限がある
蒸気吸着の際、装置低温部への凝
縮による誤差がない
振動に敏感
ガス種を選ばない(耐腐食性)
目盛りの読み取りに精度を要する
高温・高圧でも精度が落ちない
浮力補正が必要
YUASA IONICS
吸着の種類
物理吸着 (physisorption)
化学吸着 (chemisorption)
1
弱くて可逆的な結合
(ファンデルワールス力)
強くて不可逆的な結合
(化学結合)
2
吸着質の臨界温度付近またはそれ
以下で起こる.(T<Tc)
→低温でのみ吸着
吸着質の臨界温度より高温で起こるこ
とがある.(T>Tc)
→高温でも吸着
3
吸着熱 小
(凝縮熱に近い <40 kJ/mol)
吸着熱 大
(50~200 kJ/mol)
4
非活性化吸着
(高温になるほど吸着量が尐ない)
活性化吸着
5
多層吸着
単層吸着
6
可逆反応
不可逆反応(あるいは遅い可逆反応)
7
非特定的
表面特性について特定的
YUASA IONICS
定量法フロー図(例 Autosorb-1)
YUASA IONICS
定量法フロー図(例 Autosorb-1)
ヘ
リ
ウ
ム
Turbo
Pump
Manifold
Diaphragm
Pump
吸
着
質
0-1000Torr
LN2
0-10Torr
Trap
0-1Torr
Pirani
LN2
P
Po
Mantle Heater
YUASA IONICS
定量法フロー図(例 NOVA e シリーズ)
YUASA IONICS
定量法フロー図(例 NOVA e シリーズ)
Rotary
Pump
0-1000Torr
Vent
Manifold
吸
着
質
LN2
Mantle Heater
P1 P2 P3 P4
YUASA IONICS
定量法フロー図(例 Quadrasorb SI シリーズ)
YUASA IONICS
定量法フロー図(例 Quadrasorb SI シリーズ)
Turbo
Pump
Vent
Rotary
Pump
0-1000Torr
Option
Utility
ヘ
リ
ウ
ム
0-10Torr
吸
着
質
Turbo
Pump
M1
M2
M3
M4
前処理
・FloVac Degasser
・Autosorb Degasser
・Master Prep
LN2
YUASA IONICS
重量法フロー図(例 スプリング方式)
Vent
スプリング
L-R
L-S
位置検出器
Pump
0-1000Torr
20MPa
YUASA IONICS
流動法フロー図(例 Monosorb)
YUASA IONICS
流動法フロー図(例 Monosorb)
DB
熱伝導度検出器
DA
アウト
イン
脱気部
コールドトラップ
ロングパス
切替コック
1
2
3
吸着ガス
4
キャリアーガス
測定部
安全弁
(25PSI)
Poステーション
YUASA IONICS
IUPACによる吸着等温線の分類
I型
ミクロ細孔への物理吸着、化学吸着
IV型
メソ細孔への物理吸着
II型
非多孔性表面での吸着
V型
固体-吸着質の相互作用が小さい
以外はIV型と同じ
III型
固体-吸着質の相互作用が小さい
以外はII型と同じ
VI型
吸着層の相転移が起きる場合
YUASA IONICS
様々な物質の吸着等温線
● MCM-41
■ アルミナKHA-B916
●塗料
■触媒
●松炭
■竹炭
● シリカ2
■ シリカ1
● パルプ
■ ポリエチレン膜
● 製薬粉末
■ 燻し銀
YUASA IONICS
ヒステリシスと細孔形状
吸脱着等温線を測定した際、
吸着と脱離の等温線が一致
しない現象(ヒステリシス)か
らおおよその細孔形状を類推
できるケースもある。
YUASA IONICS
標準装備の解析群
解析項目
比表面積
理
論
備
考
Langmuir法
単分子層吸着
BET法
多分子層吸着,BET法はIUPAC推奨理論
全細孔容積
最大吸着量から計算
平均細孔径
全細孔容積と比表面積から計算(円筒状)
t-plot法, α s法
α s法はt-法の汎用型
DR法
吸着エネルギーを計算
メソ細孔以上
BJH法, DH法
BJH法はIUPAC推奨理論
ミクロ細孔
MP法
t-plotの勾配を利用
スーパーミクロ細孔
DA法, HK法, SF法
HK法=活性炭,SF法=ゼオライト
NLDFT
密度汎関数理論
MC法
モンテカルロ計算
FHH法, NK法
表面の粗さ数値化
ミクロ細孔表面積
細
孔
分
布
ミクロ~メソ細孔
フラクタル次元
YUASA IONICS
ガス吸着法による種々の解析
ミクロ細孔
メソ細孔
マクロ細孔
(<20Å)
(20~500Å)
(>500Å)
350
d) 全細孔容積
・ 平均細孔径
Adsorption
Desorption
300
Volume (cm3 -STP/g)
a) 吸着前
250
b) 単分子層形成
200
(P/P0=0.3)
150
b) BET解析
(比表面積)
100
c) 多分子層形成/
50
毛管凝縮
(約P/P0=0.7)
c) BJH解析
(メソ細孔分布)
a)
0
0.0
d) 全細孔に充填
0.2
0.4
0.6
0.8
1.0
(P/P0=0.995)
Relative Pressure (P/Po)
YUASA IONICS
BET法による比表面積解析
BETの式:一定温度で吸着平衡である時,吸着平衡圧P と
その圧力での吸着量V の関係
1
C 1  P 
1




V [( Po / P)  1] VmC  Po  VmC
P : 吸着平衡にある吸着質の気体の圧力
Po : 吸着温度における吸着質の飽和蒸気圧
V : 吸着平衡圧Pにおける吸着量
Vm : 単分子層吸着量,気体分子が固体表面で
多層吸着イメージ
単分子層を形成した時の吸着量
C : 吸着熱などに関する定数>0
BETプロットの…
BETプロット
傾き
切片
1.計算範囲
2.直線性
3.切片
C 1
VmC
1
i
VmC
s
0.05<P/Po<0.35(Ⅰ型等温線 P/Po<0.1)
相関係数 = 0.9999以上
切片 = 1/(VmC) >0
YUASA IONICS
BET解析範囲の指定
ミクロ細孔を有する場合のBET適用範囲の例外
(例)ゼオライト
P/Po=0.05~0.35
BET=510 m2/g
P/Po=0.01~0.1
BET=630 m2/g
適用範囲の変更
YUASA IONICS
メソ細孔解析( Kelvin式と毛細管凝縮)
D  2(rk  t )
メソ細孔直径D
t
① Kelvin式 rk  
rk
2Vm
RT ln( P / Po)
N2の場合
rk 
rm
rk
Vm
γ
θ
4.148
log( Po / P )
② 吸着層の厚み
de Boer式 t [Å]  
Kelvin半径
凝縮層のモル体積
凝縮層の表面張力
接触角(=0)

13.99

 log(Po / P)  0.034
Halsey式
1
2


5
t [Å]  3.54

 2.303log(Po / P) 
1
3
Carbon Black式
D
t [Å]  0.88( P / Po) 2  6.45( P / Po)  2.98
YUASA IONICS
BJH法による細孔径分布解析
相対圧力(P/Po)と細孔直径の関係(tはde Boer式より算出)
凝縮層
P/P0
r k [Å]
t [Å]
細孔直径
P/P0
r k [Å]
t [Å]
細孔直径
0.100
0.188
0.584
0.787
0.896
0.9600
0.9670
4.1
5.7
17.8
39.9
87.0
234
285
3.7
4.3
7.2
10.1
13.1
16.4
17.0
16 Å
20Å
50Å
100Å
200Å
500Å
600Å
0.9720
0.9753
0.9782
0.9804
0.9903
0.9936
0.9950
336
382
433
483
980
1488
1905
17.4
17.7
17.9
18.1
19.1
19.5
19.7
700Å
800Å
900Å
1000Å
2000Å
3000Å
3850Å
累積細孔容積曲線/細孔分布曲線
2.0
10.0
累積細孔容積
2rk
吸着層の厚み, t
メソ細孔へのケルビン凝縮
8.0
細孔分布
1.2
6.0
0.8
4.0
0.4
2.0
0.0
1.0E+01
1.0E+02
1.0E+03
Dv(log d)
2r
累積細孔容積(cc/g)
1.6
0.0
1.0E+04
Pore Diameter(Å)
YUASA IONICS
ウルトラミクロ細孔の解析
吸着分子どうしの相互作用,また吸着分子と細孔の壁の表面にある原子との静電的
引力/反発の相互作用(electrostatic attraction / repulsion interaction)の計算から,
ミクロ細孔径分布を計算する。
Horvath-Kawazoe (HK) Method
w
細孔形状 = スリット型
Active Carbon, Clay
Saito-Foley (SF) Method
w
細孔形状 = 円筒型
Zeolite, Silica gel, Nonotube
YUASA IONICS
ウルトラミクロ細孔の解析時の注意
ゼオライトのようなウルトラミクロ細孔を含む多孔体の細孔分布解析を行うためには、極低圧領域の
等温線データが不可欠です
① 相対圧力 P/P0 = 10-7~
② 相対圧力P/P0 = 10-5~
④ 相対圧力P/P0 = 10-3~
③ 相対圧力P/P0 = 10-4~
⑤ 相対圧力P/P0 = 10-2~
YUASA IONICS
ウルトラミクロ細孔の解析時の注意
SF(Saito-Foley)法 : 吸着分子どうしの相互作用や吸着分子と細孔壁の表面にある原子との静電的引力/反
発の相互作用の計算からミクロ細孔径分布を計算する。 円筒状の細孔を仮定しており、ゼオライトやシリカゲ
ルの代表的な解析法です。活性炭などにはSF法の代わりにHK法が用いられます。
前述の各等温線データを用いて SF法解析を行うと?
SF法 累積細孔容積分布
⑤
④
③
②
①
SF法 細孔分布 Dv(d )
① : 正しい
②~⑤ : 誤
10 Å以下の細
孔容積増加に相
当する等温線
データが不充分
or 無い.
②
②~⑤ : 誤
実際の細孔分布
よりも大きな孔径
方向へピークがシ
フトしてしまう.
③ ④
⑤
結 論
10 Å以下の超ミクロ細孔の細孔分布解析には、
P/P0=10-7からの極低圧等温線データが不可欠.
YUASA IONICS
古典解析法の問題点とNLDFT
情
報
メソ細孔
細 ミクロ細孔
孔
理 論
ミクロ~メソ領域
題
点
BJH法
円筒型細孔を仮定,Kelvin式が成立しない2 nm以下の
ミクロ細孔には適用不可。細孔直径を小さく見積もる
MP法
測定点の影響を受けやすい,0.7 nm以下には適用不可
HK法
スリット型細孔を仮定,ウルトラミクロ細孔(<0.7 nm)か
ら計算できるが,メソ細孔には適用不可
SF法
円筒型細孔を仮定,ウルトラミクロ細孔(<0.7 nm)から
計算できるが,メソ細孔には適用不可
DFT
種々の気体/固体相互作用パラメータを必要とする為,
適用可能な範囲が限定される
分
布
問
NLDFT研究が,計算機の処理能力の向上により飛躍的に近年ますます盛んになっ
ている。さらに吸着質としてN2 , Ar , CO2 ,吸着剤として炭素材料やゼオライト,シ
リカ等のパラメータの最適化により,様々なナノ材料への適用が展開されている。
YUASA IONICS
密度汎関数理論(DFT)とは
ナノ空間に閉じこめられた流体の挙
動を記述する理論
[  (r )]  F [  (r )]   dr (r )[   Uext (r )]
[  (r )] : Grand potential functional
F [  (r )] : Helmholtz free energy
 (r) : Local fluid density
Uext(r) : Potential imposed by the pore walls
“理想細孔”から“理想等温線”の総
和を計算し,測定結果に合致させる
のに必要な細孔分布を求める
吸着質
吸着剤
DFT解析モデル
NLDFT解析モデル
Ref.) Ravikovitch,P.I, Langmuir, 11, 4765 (1995)
YUASA IONICS
NLDFTとBJHによる解析結果の比較
規則性メソ細孔体MCM-41の細孔分布
2.0
0.25
BJH解析
NLDFT解析
NLDFT解析
0.20
1.5
dV/dD
累積細孔容積 [cc/g]
BJH解析
1.0
0.15
0.10
0.5
0.05
0.0
0.00
1
10
細孔直径 [nm]
100
1
10
100
細孔直径 [nm]
BJH法は、細孔直径を小さく見積もる傾向がある
(XRD、TEM等の評価からも指摘されている)
YUASA IONICS
NLDFT解析の一例
87KでのAr吸着等温線(MCM-41,ZSM-5,
細孔分布(ZSM-5&MCM-41,50-50%混合物)
50-50%混合物
Ref.) Alexander V. Neimark, “New method for zeolites characterization”,
TRI/Prinston release, 02/05/2001
YUASA IONICS
NLDFT解析適用範囲
NLDFT method
Pore size range
(Diameter)
N2-silica at 77K based on a cylindrical pore model
0.35 – 80 nm
Ar-zeolite/silica at 87K based on a cylindrical pore model
0.35 – 80 nm
Ar-zeolite/silica at 87K based on a sphrical/cylindrical pore model
0.35 – 80 nm
N2-carbon at 77K based on a slit pore model
0.35 – 30 nm
N2-carbon at 77K based on a cylinderical pore model
0.35 – 30 nm
Ar-carbon at 77K based on a slit pore model
0.35 – 30 nm
CO2-carbon at 273K based on a slit pore model
0.35 – 1.5 nm
NLDFT解析の利点
• 従来の解析法では困難な、2 nm近傍の細孔径を解析できる。
• 一つの理論でミクロ~メソ細孔の解析ができる。
• XRDやTEM等の評価方法の結果とよく一致する。
YUASA IONICS