沖縄の住宅取得環境の近況

K R I
ア ウト ル ッ ク
vol.57
沖縄の住宅取得環境の近況
2 0 1 4 年 4月の消 費 税 増 税 後 、住 宅 需 要はしばらく低 迷していたが、2 0 1 5 年は
現時点で昨年比プラス成長となっている。沖縄の現在の住宅取得状況や金利の
動 向を踏まえ、2 0 1 6 年 以 降の住 宅 取 得 環 境について考 察してみたい。
消費税増税は様々な
影響をもたらした
一戸建ては益々高根の花に
沖縄県内における新設持家の着工戸数(以下、着工数と
にまで 減 少した。
しかし、2015 年(1∼10月計)は 2014 年
言う)
は、
リーマンショックのあった 2008 年以降では、2013 年
の同時期の着工実績を上回っており、最終的には 2014 年
が 3,976 戸でピークであった
(図表1)。
を若干上回りそうだ。特にマンション建設が好調だ。2014 年
図表1:住宅着工数の推移
の 着 工 数 は 前 年 比 で 28%以 上(1,524 戸→1,102 戸)
も
消費税増税の反動により、2014 年の着工数は 3,148 戸
(戸)
20,000
減 少したが 2 0 1 5 年(1∼1 0 月計 )は持 家の約 半 数はマ
2008 年9月
リーマンショック
16,000
16,640
15,435
新設住宅着工数
12,000
10,772
4,000
持家
1,542 3,148
06
07
08
09
10
11
12
1,102
13
14
ンションという状 況 で、す でに 昨 年 の 実 績を 2 0%以 上
(1,102 戸→1,325 戸)上回っている。
弊社は 2011 年に県内事業者と共同で県内の11ブランド
9,092
のマンション居住者に対し、住み心地や設備などに対する
満 足 度 や 望ましい居 住 形 態(一 戸 建てまたはマンション
3,976
マンション
05
13,524
10,914
貸家
8,000
0
2014 年4月
消費税増税8%
2,648
1,325
15(年)
(出所)国土交通省のデータをもとに弊社にて作成
など)
などを調査するアンケートを行った。年代や年収別に
アンケート結果をまとめると、望ましい居住形態はマンション居
住者全体の約 33%がマンションであった(図表2)。
2013 年は、2014 年4月に消費税が8%に増税されるのを
図表 2:望ましい居住形態
控え、全国的にも住宅取得に対する駆け込み需要があった
(%)
100
年だ。
いくつかのアンケートからも、消費税増税が住宅取得を
促した結果がうかがえる。駆け込み需要によって、建設関連
人材不足による工期の遅れ、人件費や一部の建設資材価
80
60
40
建ての場合、見積もりを取ってから実際の入居までに 1 年を
20
少ない人口増 加 地 域であるため、本 土からは多くの住 宅
メーカーが進出しているが、
その動きは今後も続きそうだ。
11.7
33.1
0.9
62.5
1.0
7.1
6.5
13.4
16.3
0.9
24
0
こだわらない
1.1
28.6
47.8
格が高騰し、持家の販売価格も次第に上昇し始めた。一戸
要するケースも珍しくなかった。
また、沖縄県は日本の中で数
無回答
5.8
7.7
7.5
賃貸
マンション
46.7
全体
61.5
37.5
20 代
一戸建て
50
28.3
30 代
40 代
50 代
(出所)株式会社海邦総研 分譲マンションに関する意識調査
ここ数年でマンションは那覇や浦添などの都心部だけでな
く周辺の市町村にも数多く建設されるようになってきており、
08
vol.130 2016 年 1月号
住みたい街でマンションを購入できるケースが多くなったこ
見が多かった。取得費用が高騰し、購入できる層が減少して
とや、
また一戸建てに比べ安価なことなどがマンション志向
いくというのが主な理由だ。実際、住宅建設以外の分野に進
を高め、マンションが普及し始めた要因ではないだろうか。
出したり、一戸建て建設重視からマンション建設重視に移行
ただ、一戸建て志向も依然として根強い。図表 2 にある
した事業者なども存在する。
通り、46.7%が 一 戸 建て志 向である。
しかし、一 戸 建ての
マンションは、供給地域が拡大傾向にある。従来は、那覇
工事費は確実に上昇している。国土交通省の統計によれ
市や豊見城市など本島南部が主な供給地であったが、今年
ば(図表3)2015 年(1∼10 月平均)の沖縄県内の工事費
は沖縄市や嘉手納町などの中部地区にまで広がっており、来
は、RC(鉄筋コンクリート造)が 2,678万円、木造が 2,018 万
年も同様な流れが続きそうだ。
また、那覇市内においては、住
円となっている。床 面 積 の 平 均 はそれぞ れ 約130㎡、約
宅街の中の比較的狭い土地にもマンションが建設され、短期
116 ㎡である。土 地 取 得 費について、例えば 人 気の高い
間のうちに完売となっているケースが増えている。一戸建て工
豊見城市豊崎地区で 60 坪程度の購入予算は概ね 1,500
事費等の高騰が続けば、2016 年のマンション供給は駆け込
万円以上(坪単価 25 万円以上)だ。
したがって、土地購入
み需要のあった 2013 年に迫る可能性もあるのではないだろ
費 用も加 味した 一 戸 建 て 住 宅 の 取 得 費 用 は RC が 約
うか。消費者にとっては、
マンションを選ぶ選択肢がさらに増え
4,200 万円(工事費 2,678 万円+土地購入費 1,500 万円)、
る可能性がある。
木造でも3,500万円程度(工事費 2,018 万円+土地購入費
1,500 万円)になると予想される。
図表3:住宅建設工事費の推移
(万円)
3,000
2,500
2,430
2,435
2,388
2,000
1,752
1,749
1,728
1,500
1,000
1,363
1,662
2,465
2010
2011
2,678
2,602
1,877
1,867
1,387
1,480
1,548
2012
2013
2014
500
0
数年前から住宅ローン金利は史上最低水準を維持して
RC
いる。特に今年は県外から2つの金融機関が参入した結
果、住宅ローンの実質金利はさらに低下傾向にある。金利
2,018
木 造
1,672
だけを見れば、住宅ローンを借り入れる環境としては最適
分譲マンション
な時 期だと言える。県 内の可 処 分 所 得も 2015 年 後 半か
2015年は10月現在
らは前年同月比でプラスが続き始めている。住宅ローンの
2015 (年)
(出所)国土交通省のデータをもとに弊社にて作成
注:国土交通省によるマンションの定義
(利用関係:分譲住宅、
建て方:共同住宅、
構造:鉄骨鉄筋コンクリート造、
鉄筋コンクリート造、
鉄骨造)
低金利、県内景況の好調さなどを鑑みれば、2016 年も住
宅需要は底堅く推移するとみられる。
分譲マンション一戸当たりの建設費は、駆け込み需要が
あった 2013 年は 1,480 万円であったが、2015 年(1∼10 月
平均)
は 1,672 万円となっている。一戸当たりの床面積の平
均は 92.3 ㎡であった。
マンションの販売価格は建設費に、販
2017 年4月には消費税が現在の 8%から 10%に引き上
売管理費やモデルルーム建設費と土地購入費用などが加算
げられる予 定だ。2014 年 4 月に 5%から 8%に引き上げら
され決定される。
また、階層や広さにより金額も大きく変わる
れた際、注 文 住 宅など 請 負契 約を行う住 宅については、
が、一般的には同地域で土地を購入し一戸建てを建設する
新 消 費 税 率 施 行の半 年 前(13年 9 月30日)
までに請 負契
場合よりも安い金額で取得できることが多い。分譲マンション
約を締 結した場 合に経 過 措 置がとられた。つまり、同様な
の建設費も上昇しているが、沖縄で圧倒的なシェアを持つ
措置となれば 16 年 9月30日までの住宅取得契約が現行の
RC 住宅の取得金額も高値傾向が続くのであれば、一戸建
消 費 税 8%の対 象となる。13 年の駆け込み需 要と同様に
て住宅は益々高嶺の花になりそうだ。
したがって、持ち家購入
建設関連の人材不足が深刻化したり、住宅取得価格がさ
希望者の中でも価格面から断念し、
マンションを購入する層
らに高騰する可能性もある。
は今後も一定程度、存在すると予想できる。
そのような状況を踏まえれば、2016 年の住宅取得環境
一戸建ては減少、
マンションは供給地域が拡大
は、住 宅 取 得 購 入 資 金を借り入れる環 境は引き続き良い
と言えそうだが、建 設 費の上 昇 傾 向 が 続いていることか
住宅建設事業者へのヒアリングによれば、消費税が 8%に
そうだ。
増税した段階から、一戸建ての供給は減少していくという意
ら、住 宅 取 得 金 額はさらに高 騰 する可 能 性があると言え
(海邦総研事業支援部研究員/中山禎)
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