極微の世界 放射線のことを理解するためには、物質が何から成り立っているかを 知っておく必要があります。まず、次のページの表を手がかりに人間の目 では見えない極微の世界を簡単に眺めてみましょう。代表的なものの大き さを比較しやすいように、大きさが 10 倍違うところに点線を引いてあり ます。 私たちの体は何十兆個もの細胞から構成されていますが、これは顕微鏡 を使ってやっと見えるくらい小さいものです。その細胞も実は分子と呼ば れる非常に多くの目に見えない“小さな粒子”から成り立っています。脊 椎動物の体の 70 ∼ 80%を占めるといわれる水の分子は、 百億分の数 m(= -10 1 10 m * )という微少なものです。 そして、この分子は原子という“基本単位”となる粒子が組み合わさっ てできています。例えば、水分子は 2 個の水素原子と 1 個の酸素原子か らできています。こうした原子はさらに構造を持ち、原子の中心には中性 子と陽子からなる原子核があり、そのまわりをいくつかの電子が運動して います。 原子核の周囲を電子が運動する範囲 を原子の大きさと考えると、水素原子 -10 の大きさは 10 m 程度です。水素の 原子核は、陽子 1 個でできていますが、 -15 その大きさは 10 m 程度です。後楽 園にある野球場、東京ドームは直径が 約 201m ありますが、銅の原子を東京 ドームの大きさに拡大すると、原子核 はだいたい東京ドームの中央に置いたパチンコ玉くらいの大きさです。 *1 一億とか百万分の一といった大きな数字や小さな数字を表わすために 10 の右肩に 0 の数 を添える表記法があります。例えば、 一億= 10000 0000 = 108、百万分の−= 1 / 100 0000 = 10-6 また、国際単位系(4 ページ参照)では、単位に接頭語(5 ページの表参照)を使います。例えば、 10000 m(メートル)= 10 km(キロメートル) 、 3 と表し、k(キロ)は 1000 = 10 を表す接頭語です。 2 極微の世界 地球の直径(約1万3千km) 106m (1000km) 青森から鹿児島までの距離(1371.4km) 103m (1km) 富士山(標高3776m) 1m (1000mm) 10ー3m (1mm) 東京ドーム (201m) 人間 水滴 人の肝臓細胞(約30μm) 10ー6m (1μm) 分 子 水分子 水素原子の直径 原子 10ー9m (1nm) 10ー12m (1pm) 原子核 10ー15m (1fm) 陽子の半径 3
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