文書処理を取り巻く動向と課題 >

< I T によるビジネス文書処理を取り巻く動向と課題 >
IT技術研究所 戦略企画担当 主査 岩田 誠司
パソコンの普及とそれに伴う文書作成ソフトの活用, 並びに e- 文書法 ( 注 1) などの法律の施行により, 電子化されるビジネス文
書が増加しています。 企業にとっては紙ではなく, 情報を電子化して保管できることでコスト削減などの効果が期待できます。 また,
「会社法 [1]」 や 「金融商品取引法」 (いわゆる日本版 SOX 法 [2]) で求められている内部統制システムの構築では, ビジネス文書
が内部統制の有効性を示す重要なエビデンスとなります。
このような背景の下, ビジネス文書を単に電子化し保存するだけでなく, いかに効率的に作成 ・ 管理し, 有効に活用していくか
が重要となります。
本稿では, IT によるビジネス文書処理を取り巻く課題を整理し, その課題を解決するための当社の取り組みの概要をご紹介します。
1. ビジネス文書の電子化が加速
す [6]。 例えば, 電子化された文書は痕跡 (こんせき) を
残さずに改ざんや複写ができるという紙文書にない特性が
あり, 改ざんや複写を防ぐ, あるいは検知することが課題
となります。 また電子文書に記録された内容について効率
的に検索できることが検索性の要件となっています。 その
ためにはインデックスやキーワードによる検索だけではな
く, 自然言語による検索, 類似検索, 文書の構造情報
を活用した検索などが必要となります。
オフィスでのパソコンの普及や文書作成ソフトの利用, 並
びに e- 文書法の施行などにより, 業務で使用する文書の
電子化が進んでいます。
経済産業省の調査 [3] では, 民間企業での従業員一人
あたりのパソコン保有台数は 2002 年度に 0.6 台 / 人を超え,
2004 年度には 0.892 台 / 人となっています。 また国の行
政機関では 2002 年度に 0.77 台 / 人となり [4],1 台 / 人に
近づいています。
更に総務省の検討会報告 [7] では, 文書の電子化 ・ 保
管における費用の削減, 業務や帳票の多様性などへの
対応が課題として挙げられています。
これに伴い, 業務の電子化や文書の電子化も進んでい
ます。 例えば総務省の行った行政事務のペーパーレス化
このように, e- 文書法の基本要件を満たし, いかに効
率的に電子文書の作成 ・ 管理 ・ 活用を行っていくかが課
題となります。
(2) 電子化された文書を情報資産として活用することが求
に関する調査 [3] では,2002 年度の時点で電子化対象事
務 (57 種類) の 94.5% が電子化 (一部電子化を含む)
されており, 着実に電子化が進んでいます。 また情報の
保管についても電子化が進んでおり,1997 年度では電子
媒体での保管の割合が 57% だったのが,2003 年度には
95.5% になっています [5] (図 1)。 このような業務の電子
化や文書の電子化の進展により, 文書の作成 ・ 配布 ・
回収などに要していた作業量の軽減, 作業時間の短縮,
紙使用量の抑制などの効果が上がっていると報告されてい
ます。
この調査結果は各府省を対象としたものですが, 民間企
業も同様の状況にあると考えられます。
められる
ビジネス文書は企業活動や日常業務におけるノウハウ
が蓄積されたものであり, 単に電子化し保管するだけでは
不十分です。 ビジネス文書を情報資産として捉え, 業務
品質の向上や業務ノウハウの継承に役立ててこそ, 価値
があります。 またビジネス文書には, リスクの事前検出に
につながる情報や経営改善に結びつくヒントが含まれてお
り, 経営判断の材料として活用していくことが重要です。
2. ビジネス文書処理を取り巻く課題
が高い
e- 文書法の施行により, 企業活動で日々発生
する見積書, 請求書, 振替伝票, 業務報告書
などを含む文書を電子化し管理することが可能と
なりました。 文書の電子化においては, 新たに
作成する文書だけでなく, 既に存在する大量の
紙文書の電子化という課題があります。
また, 電子文書の管理 ・ 活用においては e文書法で定められている基本要件 (完全性, 機
密性, 見読性, 検索性) を満たす必要がありま
2
80,0000
紙
情報保管量 (
枚)
ビ ジ ネ ス 文 書 の 電 子 化 が 進 ん で い る 反 面,
様々な課題が出てきています。
(1) 電子文書の作成 ・ 管理 ・ 活用における負荷
電子媒体
60,0000
40,0000
20,0000
0
1997 年度
1999 年度
2001 年度
2003 年度
出展: 総務省 「平成14年度における行政事務ペーパーレス化 (電子化) の実施結果」 [5]
図1.各府省における職員一人あたりの媒体別情報保管量の推移
電子媒体による情報の保管,ファイルサーバーによる情報の共有が進んでいます。
「東芝ソリューション テクニカルニュース」2006年(冬季号)
経済産業省の報告書 「情報技術と経営戦略会議」 に
おいても, 部分的にとどまっている社内の知識の集積 ・
活用を, 全社規模での活用につなげていくことの重要性
が強調されています [8]。
このように, 企業内に膨大に蓄積されている電子化さ
れたビジネス文書を,IT を活用し情報資産として効果的
に活用していくことが課題となります。
(3) ビジネス文書が内部統制におけるエビデンスとなる
会社法や, 日本版 SOX 法で求められている有効な内
部統制システムの構築においては, 各種規程やマニュア
ル類を含むビジネス文書が重要な役割を持ちます。 例え
ば日本版 SOX 法では, 規程などの関連文書の閲覧,
内部統制の実施記録 ( 日々の業務活動のなかで作成され
る業務文書類 ) の検証などにより, 内部統制の整備状況
[2]
や運用状況の評価が行われます 。 そのためには規程
や業務文書間で記述内容の整合性を確保することが重要
となります。
更に実際の内部統制監査においては, 関連する規程
や監査証跡となる文書を迅速に提示する必要があります。
このように, 日々の業務のなかで作成されるビジネス文
書を, 関連法規や社内規程などに照らして問題がないよう
に適切に作成し, 管理していくことが課題となります。
(4) 文書を作成する能力が低下している
パソコンの文書作成ソフトや電子メールの普及により,
文章を書くという敷居は低くなりました。 また電子的に保管
することで, 検索や文書の再利用などが容易になり, ビジ
ネス文書の電子化は更に加速していくと考えられます。
しかし, 文書を容易に作成 ・ 保管 ・ 活用できるという利
点がある反面, 内容を推敲 (すいこう) せずに文書を作
成してしまうことが増え, 文書の質の低下という問題が出て
きました。
文化庁が実施した国語に関する世論調査 (2002 年度)
によると, 日本人の国語力についてどのような課題がある
かという設問に対して, 以下の項目が上位に挙げられてい
ます [9]。
・ 考えをまとめ, 文書を構成する能力 (36%)
・ 敬語などの知識 (35.3%)
・ 説明したり発表したりする能力 (33.1%)
・ 漢字や仮名遣いなどの知識 (29%)
更に 2003 年度の世論調査では, 情報機器の普及によ
る言葉遣いへの影響として, 以下の項目が上位に挙げら
れています [10]。
・ 漢字が書けなくなる (60.9%)
・ 手紙などの伝統的な書き方が失われる (35.6%)
・ 言葉の意味やニュアンスが変わる (34.3%)
・ 新しい言葉や言葉遣いが増える (32.8%)
・ 省略した表現が増える (27%)
また,(財) 日本漢字能力検定協会が行った漢字能力
調査として, 大学 1 年生の 約 6 割, 新卒社会人の約 4
割が常用漢字 (高等学校卒業程度) を習得できておらず,
ともに漢字を文書中で使いこなす能力が低いという分析結
果が報告されています [11]。
このことからも業務文書を情報資産として活用していく場
合, あるいは業務文書を内部統制におけるエビデンスとし
て捉えた場合に, 文書を作成する能力の低下は大きな課
題となることがわかります。 3. 当社の取り組み
ビジネス文書の電子化, 並びに活用は企業にとって重
要な課題となっています。 当社ではビジネス文書処理に
かかわる課題を, ビジネス文書の作成 (電子化を含む),
管理, 活用という観点で整理し, それぞれのソリューショ
ンを開発しています。
なかでもビジネス文書の管理 ・ 活用については, 汎用
プラットフォーム製品と様々なビジネスドメインに応じた業
務ソリューションを開発しています。 本特集では, 特集記
事 1 で電子化された大量の文書を情報資産として活用す
るためのソリューション, 特集記事 2 で活用の容易性と管
理の厳格性を追及する規定文書の管理・活用ソリューショ
ン, 特集記事 3 で e- 文書法などにおいて求められる文
書の原本性保証と効率的な流通プロセスを支援するソ
リューションについてそれぞれ紹介します。
また, ビジネス文書を効果的に管理 ・ 活用するための
前提として必要となる文書の作成支援については, 特集
記事 4 で多種多様な紙文書の電子化を促進する OCR 技
術, 特集記事 5 でビジネス文書の品質を向上させるととも
に文書に起因するリスクを低減させるソリューションについ
てそれぞれ紹介します。
(注 1)e- 文書法 : 通則法と整備法からなり,
それぞれの正式名称は 「民間事業者等が行う書面の保存等における
情報通信の技術の利用に関する法律」, 「民間事業者等が行う書面
の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律の施行に伴う
関係法律の整備等に関する法律」
【参考文献】
[1] 法令データ提供システム . “会社法施行規則” , (オンライン) , 入手先
<http://law.e-gov.go.jp/announce/H18F12001000012.html>, (参照 2006-11-30)
[2] 金融庁 . “財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準
(公開草案)” , (オンライン) , 入手先
<http://www.fsa.go.jp/news/18/singi/20061121-2.pdf>, (参照 2006-11-30) [3] 経済産業省 . “平成 17 年情報処理実態調査結果報告書” ,
(オンライン) , 入手先
<http://www.meti.go.jp/press/20060925001/report.pdf>, (参照 2006-11-30)
[4] 総務省 . “平成14年度 行政情報化基本調査結果報告書” ,
(オンライン) , 入手先
<http://www.soumu.go.jp/gyoukan/kanri/gyou2002.html>, (参照 2006-11-30)
[5] 総務省 . “平成 14 年度における行政事務ペーパーレス化 (電子化)の
実施結果” , (オンライン) , 入手先
<http://www.soumu.go.jp/s-news/2003/030807_4.html> , (参照 2006-11-30)
[6] 経済産業省 . “文書の電子化 ・ 活用ガイド” , (オンライン) , 入手先
<http://www.meti.go.jp/policy/it_policy/e-doc/guide/e-bunshoguide.pdf>,
(参照 2006-11-30) [7] 総務省 . “「政府調達 (公共事業を除く ) における契約の電子化のあり方に
関する検討会」 最終報告書” , (オンライン) , 入手先
<http://www.soumu.go.jp/s-news/2005/050408_1.html>, (参照 2006-11-30) [8] 経済産業省 . “情報技術と戦略会議” , (オンライン) , 入手先
<http://www.meti.go.jp/policy/it_policy/pdf/jyouhougijyutsu2.pdf>,
(参照 2006-11-30) [9] 文化庁 . “平成 14 年度 「国語に関する世論調査」 の結果について” ,
(オンライン) , 入手先
<http://www.bunka.go.jp/1kokugo/14_yoron.html>, (参照 2006-11-30) [10] 文化庁 . “平成 15 年度 「国語に関する世論調査」 の結果について” ,
( オンライン ), 入手先
<http://www.bunka.go.jp/1kokugo/15_yoron.html>,(参照 2006-11-30)
[11] (財 ) 日本漢字能力検定協会 . “2005 年 「漢字能力調査」 結果の概要” ,
(オンライン), 入手先
<http://www.kanken.or.jp/what/topics/050825.pdf>, (参照 2006-11-30)
「東芝ソリューション テクニカルニュース」2006年(冬季号)
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