ニューヨークのすばらしき ヨガ愛を、ニッポンでも

I cover story for women
JPN
NYC
ニューヨークのすばらしき
ヨガ愛を、
ニッポンでも
クラブミュージック×ヨガで、
自由に心身を解き放つ
Photographer: Kohichi Ogasahara Writer: Mayuko Urashima
ヨガ天 国 、ニューヨーク。道 行けば Yo g i e /
Yogini に出くわし、
暖かい季節にはタイムズ
スクエアやブライアントパークがパブリック・ヨ
ガの楽園と化す。
なぜ、
ニューヨークではヨガが
これほど市民権を得ているのか?その秘密を
アツく語るのは斉木美佳、“New York Style
Yoga”を日本で展開するインストラクターだ。
「ISEA BODY STYLE」
麻布十番店
“New York Style Yoga”
の原点
“New York Style Yoga” と聞いて、
ピンと来ない人
も多いであろう。何か斬新なカタチのヨガではないか?
と思う人もいるかもしれない。
だが斉木が教える“New
York Style Yoga”は、太陽礼拝に始まり、戦士のポー
ズ、三角のポーズ…と至ってトラディショナルなもの。
日本のみんなが受けているヨガクラスと違う点は、彼
女がBGMに
「クラブミュージック」
を使うという点だろ
う。
では、
クラブミュージックを使うヨガが“New York
Style”かというと、
そんなイージーな話でもない。
斉木はヨガインストラクターになって間もない頃、旅
行先のニューヨークで体験したヨガクラスに、大きな
衝撃を受けた。
「何かが、全く違いました。
ニューヨークのヨガには“エ
キサイト感”が溢れていたというか。
ニューヨークの先生
はみんな自分の感性で選んだ音楽をかけ、
バシバシとハ
ードなポーズも入れていく。
日本のいわゆるヨガクラス
で使われている歌詞のないヒーリングミュージックでゆ
ったりと…というのはスタンダードではないんです」
「ISEA BODY STYLE」
麻布十番店
ニューヨークではどのスタジオにも、
「自分のスタイ
ル」
で魅了するインストラクターがいて、たくさんの参
加者がいた。
日本もヨガ人口が増えたとはいえ、
ニュー
努力家ゆえの異色なキャリア
今まで日本で毎日触れ、喜びを得ていたはずのヨガが
斉木の経歴はおもしろい。大学卒業後に高校の理
女の言わんとする“New York Style”の原点だ。
ル局のアナウンサー兼キャスターへ。
いずれの仕事も
ヨークには日本のそれとは随分と違う風景があった。
「退屈なもの」にすら思えた。
このとき見た風景が、彼
「私自身、日本では『ヨガの先生』なのに、自分のレベ
科教師となるが、気象予報士の資格を取得し、
ローカ
やりがいはあったが、社会人になってからずっと続けて
ルの低さを痛感しました。
ニューヨークの先生たちは
いたヨガへの魅力にはかなわず、
ヨガインストラクター
負荷を多くかけるヨガ)
であり、
ポーズ数も多い。
さらに
実際に彼女に会ってみると、
とても謙虚で明るい、
フィジカルなスキルが高い。一種のパワーヨガ
(肉体的
へと転身したという具合だ。
フロースタイルで流れるようにシークエンスが展開さ
フレンドリーな印象を受ける。そして何より、話し始め
に参加すればするほど、刺激を受けました。私ももっと
だ。なるほど、
きっと彼女は目標に対して常に真摯に、
れるので、結果的に運動量も多い。
さまざまなスタジオ
難易度の高いポーズに挑戦しようと」
てすぐに伝わってきたのが「ヨガへの並々ならぬ情熱」
一生懸命向き合うタイプなのだろう。
ヨガとNYと数奇な運命
さて、
ニューヨーク旅行でのヨガレッスンに衝撃を受
けてから数ヶ月後。実は彼女にとって人生の一大事が
起こる。
それは7年以上も付き合っていた恋人との、婚
前の破局だった。
だがそのことがきっかけで、彼女はヨ
ガへの情熱をさらに深めることとなる。脳裏から離れ
ないニューヨークでのエキサイティングなヨガに一歩
でも近づきたく、
アメリカで人気の
「ビクラムヨガ」
の元
一番弟子、Jimmy Barkan(ジミー・バーカン)
の元で、
全米ヨガアライアンスのライセンスを取得しようと決意
したのだ。取得のチャンスは、
フロリダとニューヨーク、
年に1回ずつ。
もちろん、再訪を熱望していたニューヨ
ークでの取得を考えていたが、
ひょんなことからフロリ
ダで取得することとなった。
「でも、
それがラッキーでした。実はこの年、
ニューヨー
クの方は結果的に人数未達で開催されなかったんです。
しかもフロリダでのトレーニングのおかげで、半年のニ
ューヨーク留学へのきっかけを得ることができました」
最初からニューヨークでの取得を選んでいたら、
ライ
センス取得にも、留学にも至らなかっただろう。
目の前
の選択が、
ニューヨーク行きを導いてくれた。
この話に付随して、彼女はいう。
「ヨガを続けてみると、いわゆる
『思考の実現』が起こ
るんです。
ヨガによって精神と肉体のバランスがもたら
されるので。
さらに続けると、生き方さえも変えられる」
ニューヨークの、
ヨガへの姿勢
フロリダでのライセンス取得後、
念願叶って半年間の
ニューヨーク留学生活が訪れると、
斉木はスタジオとい
うスタジオを渡り歩いた。
中でもいちばん刺激を受けた
インストラクターは、
Serena Tom
(セリーナ・トム)
だ。
「私が自分のスタイルとしてクラブミュージックを取
り入れようと思いついたのは、セリーナの影響が大き
かったですね。セリーナがクラスでかける音楽はいつ
もクールで、生徒の様子を見ながら、
そのときに合った
音楽へと切り替える。時としてDJのように自分で音楽
“More daily,
more advance”
毎日するから上達もする
を繋ぐこともあって、それにはかなり感心しました。毎
回異なる展開が生徒をワクワクさせ、繰り返し通いた
くなる。
『できるかなぁ』
と心配させるのではなく、
まず
は『楽しそう!』
と思わせてくれる。そういうインストラ
クターがたくさんいるから、
ニューヨーカーにとってヨ
ガは生活の一部となっている。“More daily, more
advance(毎日するから上達もする)”といういいスパ
イラルも生まれるんですね。
日本ではまだ料金も高め
で習い事感覚になりがちな一方で、
ニューヨークは全
般的にリーズナブルで敷居が低い。
たとえばYoga To
The Peopleというスタジオではドネーション
(募金)
システムもあり、2ドルとか5ドルぐらいの任意の料金
で参加できるんですよ」
確かに、公園や広場といった屋外のパブリックスペ
ースでは無料のヨガもよく開催されるニューヨーク。
こういった主催者側のホスピタリティも、多くのニュー
ヨーカーの心をつかんでヨガを広めているといえるか
もしれない。
NY以上の
サティスファクションを!
帰国後、現地のエッセンスをしかと取り入れたレッス
ンを組み立てる中で、
しばしば苦戦することとなったの
は、肝となる曲選びだ。
自由な発想で曲を決めるとはい
え、
やはりヨガのフローにはまるものとはまらないもの
がある。歌詞のある音楽を使うときはなおさらで、
自分
が発する日本語のインストラクションに馴染むか?とい
う考慮も必要だ。
でもそんな試行錯誤も、彼女にとって
は楽しい。
「一般的に、人間は何もせずに座り続けたとしても心
は散漫になり、集中することは難しいんです。
だから、
ヨ
ガの呼吸法などが生まれた。そして更に、その呼吸法
に合わせて体を動かす、現代のヨガとして馴染み深い
ハタ・ヨガなどが生まれてきたわけです。現代人にとっ
てはまず、体を動かすことが必要。
まずはチョット自分
の体に挑戦する、
ニューヨークスタイルを試してみてく
ださい。挑戦の楽しさも出てきて、結果として心と体が
鍛えられる。
アップテンポもスローテンポも、
クラブミュ
ージックが体も心も解放してくれるので、
自然とポーズ
も上達します」
そんな彼女のクラスを覗いてみると、
まさに目からウ
ロコ、
である。落ち着いたサウンドながら、
アップテンポ
な曲でレッスンがスタート。
クラブミュージックといっ
ても決してウルサイものではなく、音量もちょうどいい
ため自然と体が馴染む。体が慣れてきたところで、
さら
にアップテンポな曲へ。教師やキャスターとして、人前
で喋るキャリアを積んできた斉木美佳のインストラク
ションの声はよく通る。
その声はクラブミュージックと
相まって、癒しの音と化す。曲に緩急をつけ、語りかけ、
参加者を飽きさせない。
そろそろ体も疲労してきたかと
いうクライマックスには、
あえていちばんのアップテン
ポナンバーを流し、
みんなの士気を高める。実にエンタ
メ性に優れたレッスンだ。
しかし、斉木のレッスンはそれだけではない。楽しく
フランクなニューヨークスタイルに、
日本人ならではの
「細やかな気配り」が加わっているのだ。彼女の気配
りは、参加者一人ひとりに及ぶ。初心者から上級者ま
で参加することも多いため、
それぞれのレベルに合った
(ポーズの)ポジションを見つけられるようアドバイス
を怠らない。
レッスン後も然り。
「今日はどうでしたか?
キツかった?楽しめた?」
と声をかけ、自分のレッスン
の出来も、必ず省みる。
ニューヨークでより多くの人々に浸透しているとい
うヨガ事情の根底には、
そこに
「特殊なスタイル」があ
るというより、
ヨガをみんなで楽しもう、
ヨガは私たち
のライフスタイルだ、
というバリアフリーな「ニューヨ
ークマインド」が存在する。斉木が私たちと共有した
い“New York Style Yoga”とは、
まさにこれである。
そして
「ニューヨークマインド」
+
「ニッポン人の気配り」
で参加者の満足度を第一に考える彼女のヨガは、
さら
に進化しそうだ。
取材協力: 上から1、2枚 「FITNESS CLUB ICHIGEKI」
3、4、
5枚 「ISEA BODY STYLE」
麻布十番店
斉木美佳「New York Style Yoga」
ウェブサイト
newyorkstyleyoga.jimdo.com
New York Style Yoga 開催スタジオ
ボディメイキングスタジオ
「ISEA BODY STYLE - Hot Core Studio」
〒106-0045 東京都港区麻布十番2-3-9 桂亭ビル4、5F
TEL: 03-3454-5990 I iseabodystyle.com
Fitness Club Ichigeki
〒150-0011 東京都渋谷区東2丁目16-9 一撃PLAZA3F
TEL: 03-5766-5773 I ichigeki-fitness.com