ビジネス著作権検定 初級 正答・解説

ZCG-初-B
第 32 回
ビジネス著作権検定
初級
正答・解説
問題 1
ア
問題 2
ウ
問題 3
エ
問題 4
ウ
問題 5
ウ
問題 6
エ
問題 7
ア
問題 8
ウ
問題 9
イ
問題10
ア
問題11
エ
問題12
ウ
問題13
ア
問題14
ウ
問題15
イ
問題16
イ
問題17
エ
問題18
ウ
問題19
イ
問題20
イ
問題21
エ
問題22
エ
問題23
イ
問題24
イ
問題25
ウ
問題26
イ
問題27
ア
問題28
イ
問題29
ア
問題30
ア
ZCGA03B0
ZCG-初-B
解説作成:サーティファイ ビジネス著作権検定 ワーキンググループ
※解説中の「○条」は、特に断りがない限り「著作権法○条」を示します。
問題1
【正答 ア】
【解説】
著作物は、思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽
の範囲に属するものをいう(2条1項1号)。
ア 表現について高度な創作性は要求されておらず、思想または感情が「創作的に」表現
されていれば著作物である。
イ 一文字でも、思想または感情を「創作的に」表現したものであれば著作物である。
ウ 機械的に忠実に写真に撮影することは、「創作的に」表現したのではなく、複製である。
エ 通常の小説のタイトル(題号)は十分に思想・感情を創作的に表現しているとは言い難
く、基本的には思想・感情を「創作的に」表現した著作物ではない。短い自由詩や俳句を
そのまま、小説のタイトル(題号)にしたものは、それ自体著作物なので、著作物として保
護される。
問題2
【正答 ウ】
【解説】
著作物は、思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽
の範囲に属するものをいう(2条1項1号)。
ア 「表現」とは、単に内心で思っているだけでは足りず、外部から認識可能な形で表出さ
れていなければならない。
イ 他人に見せる予定があるかどうかにかかわらず、思想または感情が創作的に表現され
ていれば著作物である。
ウ データ自体は、思想または感情を創作的に表現したものではないので、著作物になり
得ない。
エ 単なる記録であり、人の思想または感情を創作的に表現しているわけではないので、
著作物になり得ない。
-1-
ZCG-初-B
問題3
【正答 エ】
【解説】
著作物は、思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽
の範囲に属するものをいう(2条1項1号)。また、10条1項に著作物が例示されている。
ア ドラマを参考にしていても、自分の小説にそのアイデアを利用しているだけであれば、
思想または感情を創作的に表現した小説は著作物として保護される。
イ 思想又は感情を創作的に表現したものは、その内容にかかわらず言語の著作物(10
条1項1号)に該当し、著作物として保護される。
ウ 特許を取得していても、プログラムの著作物(10条1項9号)に該当すれば、著作物と
して保護される。
エ 健康診断のような医学検査のためのレントゲン写真は、撮影者の思想または感情の創
作的表現とはいえず、著作物として保護されない。
問題4
【正答 ウ】
【解説】
編集著作物とは、編集物(データベースに該当するものを除く。)でその素材の選択又は
配列によつて創作性を有するものをいう(12条1項)。データベースとは、論文、数値、図形
その他の情報の集合物であつて、それらの情報を電子計算機を用いて検索することができ
るように体系的に構成したものをいう(2条1項10の3号)。
ア データベースに該当するものは、編集物から除外されており、編集著作物にあたらな
い。
イ すべての商品名を発売順に並べただけでは、素材の選択にも配列にも創作性がない
ので、編集著作物にあたらない。
ウ 小説の選択について創作性があるので、編集著作物にあたる。
エ すべての電話加入者を五十音順に並べただけでは、素材の選択にも配列にも創作性
がないので、編集著作物にあたらない。
-2-
ZCG-初-B
問題5
【正答 ウ】
【解説】
映画の著作物の著作者は、その映画の著作物において翻案され、又は複製された小説、
脚本、音楽その他の著作物の著作者を除き、制作、監督、演出、撮影、美術等を担当して
その映画の著作物の全体的形成に創作的に寄与した者とする。ただし、第15条(職務著
作)の規定の適用がある場合は、この限りでない(16条)。
ア 映画の著作物の全体的形成に創作的に寄与していれば、美術や撮影等の担当者も映
画の著作物の著作者となる。
イ 映画の著作物の著作者からは、原作となる小説、脚本、音楽その他の著作物の著作
者が除かれている(16条)。
ウ 16条では職務著作の規定の適用がある場合は除外されており、映画監督が映画の著
作物の全体的形成に創作的に関与したとしても、映画の著作物の著作者とはならない。
エ 映画の著作物に出演している俳優は、実演家として著作隣接権者となるが、出演だけ
で、演技全体の演出をする等映画の著作物の全体的形成に創作的に寄与していない限
りは、映画の著作物の著作者とはならない。
問題6
【正答 エ】
【解説】
ア 著作者は、著作者人格権並びに著作権を享有する(17条1項)ので、共同著作物にお
いてはそれを創作したすべての著作者が著作者人格権を有する。
イ 著作者人格権には、公表権(18条)と氏名表示権(19条)と同一性保持権(20条)があ
る。
ウ 著作者人格権及び著作権の享有には、いかなる方式の履行をも要しない(17条2項)
とされており、登録をする必要はない。
エ 著作者人格権は、著作者の一身に専属し、譲渡することができない(59条)。
-3-
ZCG-初-B
問題7
【正答 ア】
【解説】
ア 著作者、著作権者、出版権者、実演家又は著作隣接権者は、その著作者人格権、著
作権、出版権、実演家人格権又は著作隣接権を侵害する者又は侵害するおそれがある
者に対し、その侵害の停止又は予防を請求することができる(112条1項)。著作者人格
権のうちの公表権を侵害された写真の著作者は、侵害の停止としてWebサイトからの写
真の削除を請求する権利を有する。
イ 著作者の名誉又は声望を害する方法によりその著作物を利用する行為は、その著作
者人格権を侵害する行為とみなす(113条6項)。著作者人格権は、公表権、氏名表示
権、同一性保持権の3つだけだが、著作者の名誉または声望を害する方法により利用
することは、著作者人格権の侵害とみなされる。
ウ 著作物を公衆に提供し、又は提示する者は、その著作物の著作者が存しなくなつた後
においても、著作者が存しているとしたならばその著作者人格権の侵害となるべき行為
をしてはならない。ただし、その行為の性質及び程度、社会的事情の変動その他により
その行為が当該著作者の意を害しないと認められる場合は、この限りでない(60条)。
絵に画家が認めないような書き込みをして展覧会に展示することは、画家の死後であっ
ても、著作者人格権のうちの同一性保持権の侵害となるべき行為にあたるので、著作者
人格権の侵害となる。
エ 著作者人格権又は実演家人格権を侵害した者は、5年以下の懲役若しくは500万円
以下の罰金に処し、又はこれを併科する(119条2項)。
問題8
【正答 ウ】
【解説】
複製とは、印刷、写真、複写、録音、録画その他の方法により有形的に再製することをい
う(2条1項15号)。
ア 書き写すことは複写に該当し、小説の一部分の複製にあたる。
イ 録音することは、有形的再製であり、楽曲の複製にあたる。
ウ 口ずさむことは、楽曲の無形的な再製であって、有形的に再製したことにはならず、複
製にはあたらない。
エ 録画することは、有形的再製であり、複製にあたる。
-4-
ZCG-初-B
問題9
【正答 イ】
【解説】
著作者は、その著作物を公に上映する権利を専有する(22条の2)。上映とは、著作物
(公衆送信されるものを除く。)を映写幕その他の物に映写することをいい、これに伴つて映
画の著作物において固定されている音を再生することを含むものとする(2条1項17号)。
ア 上映では、公衆送信される著作物は除外されている。放送中のアニメーションは、公衆
送信される著作物にあたるので、上映にはあたらず、上映権を侵害しない。
イ 映写幕に限らずテレビモニター等の「その他の物」で再生することも上映にあたるので、
上映権を侵害する。
ウ 上映の対象となる著作物は限定されておらず、絵画の著作物も含まれるので、上映権
を侵害する。
エ 「公に」とは、不特定または特定多数に直接見せまたは聞かせることを目的としている
ことを指すので、家族で鑑賞することは「公に」とはいえず、上映権を侵害しない。
問題10
【正答 ア】
【解説】
ア 詩を電子メールで一斉に多数の者(公衆)に送ることは、公衆によって直接受信される
ことを目的にしているため、公衆送信にあたり、許諾なく行えば、詩の公衆送信権を侵害
する。
イ 友人1人に対してメール送信を行うことは、公衆によって直接受信されることを目的にし
ておらず、公衆送信にあたらないので、公衆送信権を侵害しない。
ウ 実際にラジオを受信して聞いている人がいなくても、公衆が直接に受信することを目的
として無線による送信を行っているので、公衆送信にあたり、そこで著作物を許諾なく利
用すれば、公衆送信権の侵害となる。
エ 公衆送信は、自動公衆送信の場合には送信可能化を含む(23条1項かっこ書き)。ブ
ログに他人の著作物を許諾なく掲載することは送信可能化にあたるので、誰もブログを
閲覧していなくても、公衆送信権を侵害する。
問題11
【正答 エ】
【解説】
著作者は、その美術の著作物又はまだ発行されていない写真の著作物をこれらの原作
品により公に展示する権利を専有する(25条)。
ア 絵のコピーは原作品ではないので、展示権を侵害しない。
イ 写真を放送することは、写真を原作品により展示するわけではないので、展示権を侵
害しない。ただし、公衆送信権(23条1項)の侵害となる。
ウ 評判の写真集に掲載されている写真は「まだ発行されていない写真」ではないので、展
示権を侵害しない。
エ 彫刻の著作物を自宅の居間に飾ることは、公衆に直接見せることを目的にしていない
ので、「公に」にはあたらず、展示権を侵害しない。
-5-
ZCG-初-B
問題12
【正答 ウ】
【解説】
著作者は、その著作物(映画の著作物を除く。)をその複製物(映画の著作物において
複製されている著作物にあつては、当該映画の著作物の複製物を除く。)の貸与により公
衆に提供する権利を専有する(26条の3)。
ア 「公衆」には特定かつ多数の者を含む(2条5項)が、特定かつ少数の者は含まれない。
1人の友人に貸すことは、貸与権の対象とならず、貸与権を侵害しない。
イ 映画の著作物には、貸与権は認められていない。ただし、頒布権(26条)の侵害とな
る。
ウ 出版されている書籍は言語の著作物の複製物であり、不特定多数の人に貸与する行
為は、著作権者の許諾を得なければ、貸与権の侵害となる。
エ 貸与権は、著作物の複製物について認められる権利である。絵画の原作品の貸与は、
貸与権を侵害しない。
問題13
【正答 ア】
【解説】
著作者は、その著作物を翻訳し、編曲し、若しくは変形し、又は脚色し、映画化し、その
他翻案する権利を専有する(27条)。
ア アイデアを得たにすぎない場合、ブログの記述の表現を利用して新たな著作物を作っ
たわけではないので、翻案にはあたらず、ブログの翻案権を侵害しない。
イ 翻訳とは、言語の著作物を言語体系の違う言語表現にすることをいう。ローマ字にする
ことは表記方法を変えるだけで、言語体系の違うものにしているわけではないので、翻
訳にあたらず、翻訳権を侵害しない。
ウ 翻案は、既存の著作物の内面形式を維持しつつ外面形式を変更することをいうので、
全く別のストーリーの場合には、翻案にあたらず、翻案権を侵害しない。
エ 変形とは、写真をもとにして絵を描くというように表現形式を変えることや、彫刻を絵画
にするように次元を変えるようなことをいう。歌謡曲をオーケストラ向けの楽曲にアレンジ
することは編曲にあたり、変形ではないため、変形権は侵害しないが、編曲権を侵害す
る。
-6-
ZCG-初-B
問題14
【正答 ウ】
【解説】
二次的著作物の原著作物の著作者は、当該二次的著作物の利用に関し、当該二次的
著作物の著作者が有するものと同一の種類の権利を専有する(28条)。なお、二次的著作
物とは、著作物を翻訳し、編曲し、若しくは変形し、又は脚色し、映画化し、その他翻案する
ことにより創作した著作物をいう(2条1項11号)。
ア 日本語に翻訳された歌詞は、英語の歌詞の二次的著作物にあたる。日本語に翻訳さ
れた歌詞を演奏するには、もとの作詞家と翻訳した歌詞の創作者の両方から演奏権の
許諾を得る必要がある。
イ 小説(二次的著作物の原著作物)を原作とする漫画(二次的著作物)を創作した場合、
原作小説の著作者は、小説については展示権をもたないが、美術の著作物である漫画
については展示権をもつ。
ウ 映画で使われている音楽は、映画の原著作物ではなく映画で使われている著作物に
すぎないので、その音楽の作曲者は、その映画の著作物に対し、その映画の著作権者
と同じ権利をもつわけではない。
エ 小説(二次的著作物の原著作物)を原作として製作された映画の著作物(二次的著作
物)のDVDを製造、販売する場合、原作小説の著作権者の複製権、頒布権の許諾が必
要である。
問題15
【正答 イ】
【解説】
著作権の目的となつている著作物は、個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られ
た範囲内において使用すること(以下「私的使用」という。)を目的とするときは、原則として、
その使用する者が複製することができる(30条1項)。
ア 会社の業務の参考資料として読むのは、個人的にまたは家庭内その他これに準ずる
限られた範囲内において使用することではなく、複製権の侵害となる。
イ 移動中に楽しむのは、個人的に使用することであり、私的使用にあたるので、自分でコ
ピーする行為は、複製権の侵害とはならない。
ウ 大学の文化祭において来場者にチラシを配布するのは、個人的にまたは家庭内その
他これに準ずる限られた範囲内において使用する範囲を超えており、複製権の侵害とな
る。
エ 著作権を侵害する自動公衆送信(国外で行われる自動公衆送信であつて、国内で行
われたとしたならば著作権の侵害となるべきものを含む。)を受信して行うデジタル方式
の録音又は録画を、その事実を知りながら行う場合は、私的使用のための複製には該
当しない(30条1項3号)。不特定多数の者が閲覧可能な動画共有サイトに無許諾でテ
レビドラマがアップロードされているのは、著作権を侵害する自動公衆送信であり、これ
をダウンロードしてパソコンに保存することはデジタル方式の録画であるので、事実を知
りながらこれを行うことは、複製権の侵害となる。
-7-
ZCG-初-B
問題16
【正答 イ】
【解説】
ア 国若しくは地方公共団体の機関、独立行政法人又は地方独立行政法人が一般に周知
させることを目的として作成し、その著作の名義の下に公表する広報資料、調査統計資
料、報告書その他これらに類する著作物は、説明の材料として新聞紙、雑誌その他の刊
行物に転載することができる。ただし、これを禁止する旨の表示がある場合は、この限り
でない(32条2項)。官公庁発行の白書であっても、転載禁止の表示があれば、著作権
侵害となる。
イ 写真、映画、放送その他の方法によつて時事の事件を報道する場合には、当該事件を
構成し、又は当該事件の過程において見られ、若しくは聞かれる著作物は、報道の目的
上正当な範囲内において、複製し、及び当該事件の報道に伴つて利用することができる
(41条)。写真の無断使用事件を報道するに際して、その写真は、当該事件を構成する
著作物であるので、報道に伴って利用することができる。
ウ 公表された著作物は、営利を目的とせず、かつ、聴衆又は観衆から料金(いずれの名
義をもつてするかを問わず、著作物の提供又は提示につき受ける対価をいう。)を受け
ない場合には、公に上演し、演奏し、上映し、又は口述することができる。ただし、当該上
演、演奏、上映又は口述について実演家又は口述を行う者に対し報酬が支払われる場
合は、この限りでない(38条1項)。客から入場料を徴収しなくても、演奏者に謝礼が支
払われる場合は、そこで演奏する音楽の著作権侵害となる。
エ 公開して行われた政治上の演説は、同一の著作者のものを編集して利用する場合を
除き、利用することができる(40条1項)。同一の著作者の公開の政治上の演説を編集
して利用することは制限にあてはまらず、著作権侵害となる。
問題17
【正答 エ】
【解説】
ア 著作権は、この節に別段の定めがある場合を除き、著作者の死後(共同著作物にあつ
ては、最終に死亡した著作者の死後。次条第1項において同じ。)50年を経過するまで
の間、存続する(51条2項)。著作物の保護期間は、著作者の死後50年間である。
イ 映画の著作物の著作権は、その著作物の公表後70年(その著作物がその創作後70
年以内に公表されなかつたときは、その創作後70年)を経過するまでの間、存続する(5
4条1項)。映画の著作物の保護期間は、公表後70年間である。
ウ 著作権は、この節に別段の定めがある場合を除き、著作者の死後(共同著作物にあつ
ては、最終に死亡した著作者の死後。次条第1項において同じ。)50年を経過するまで
の間、存続する(51条2項)。共同著作物の保護期間は、最終に死亡した著作者の死後
50年間である。
エ 法人その他の団体が著作の名義を有する著作物の著作権は、その著作物の公表後5
0年(その著作物がその創作後50年以内に公表されなかつたときは、その創作後50年)
を経過するまでの間、存続する(53条1項)。法人が著作者である著作物の保護期間は、
基本的には著作物の公表後50年間である。
-8-
ZCG-初-B
問題18
【正答 ウ】
【解説】
ア 著作権は、その全部又は一部を譲渡することができる(61条1項)。
イ 著作権者は、他人に対し、その著作物の利用を許諾することができる(63条1項)。前
項の許諾を得た者は、その許諾に係る利用方法及び条件の範囲内において、その許諾
に係る著作物を利用することができる(63条2項)。したがって、著作物の利用を許諾す
るに際して、「手書きの複製のみ許諾」「関東地方での上映のみ許諾」など、利用の仕方
に細かい条件を付けることができる。
ウ 著作権は、その全部又は一部を譲渡することができる(61条1項)。
エ イで示したとおり、許諾にあたっては、許諾に係る利用方法および条件を定めることが
できるので、その利用方法について独占的な許諾であると定めない限りは、同じ利用方
法を第三者に許諾することができる。
問題19
【正答 イ】
【解説】
著作隣接権者は、89条に列挙されており、実演家(89条1項)、レコード製作者(89条2
項)、放送事業者(89条3項)、有線放送事業者(89条4項)のみである。したがって、出版
事業者、映像製作事業者、インターネット配信事業者は、著作隣接権者ではない。
問題20
【正答 イ】
【解説】
ア 実演家は、実演家人格権として、氏名表示権(90条の2)、同一性保持権(90条の3)
を有するが、レコード製作者は人格権を有しない。著作隣接権者のうち、人格権を有す
るのは、実演家のみである。
イ 実演家は、その実演の公衆への提供又は提示に際し、その氏名若しくはその芸名その
他氏名に代えて用いられるものを実演家名として表示し、又は実演家名を表示しないこ
ととする権利を有する(90条の2第1項)。実演家から、その氏名あるいは芸名等を表示
しないように求められたとき以外は、原則として実演家名を表示しなければならない。
ウ 実演家は、その実演の同一性を保持する権利を有し、自己の名誉又は声望を害する
その実演の変更、切除その他の改変を受けないものとする(90条の3第1項)。実演家
は、同一性保持権として、名誉または声望を害する改変を禁止する権利を有するので
あって、意に反する改変を禁止する権利を有しているわけではない。
エ 実演家は、公表権を有していない。したがって、出演した映画の公開日を決定する権利
を有していない。
-9-
ZCG-初-B
問題21
【正答 エ】
【解説】
ア 実演とは、著作物を、演劇的に演じ、舞い、演奏し、歌い、口演し、朗詠し、又はその他
の方法により演ずること(これらに類する行為で、著作物を演じないが芸能的な性質を有
するものを含む。)をいう(2条1項3号)。落語は、著作物の口演であるので、実演として
保護される。
イ レコードとは、蓄音機用音盤、録音テープその他の物に音を固定したもの(音を専ら影
像とともに再生することを目的とするものを除く。)をいう(2条1項5号)。ボイスレコー
ダーに録音した音でも、レコードとして保護される。
ウ レコードは、物に音を固定したものをいい、著作物を固定したものに限らない。虫の声
や車の音などを録音したCDも、レコードとして保護される。
エ 講義をする人が著作物を演劇的に演じたり、口演したりして演じているわけではないの
で、大学の講義は実演ではない。
問題22
【正答 エ】
【解説】
ア 著作権、出版権又は著作隣接権を侵害した者は、10年以下の懲役若しくは1000万
円以下の罰金に処し、又はこれを併科する(119条1項)。著作権を侵害した場合、懲役
または罰金またはその両方が刑事罰として科されることがある。
イ 著作隣接権を侵害した場合、懲役または罰金またはその両方が刑事罰として科される
ことがある。
ウ 著作者人格権又は実演家人格権を侵害した者(第113条第3項の規定により著作者
人格権又は実演家人格権を侵害する行為とみなされる行為を行つた者を除く。)は、5年
以下の懲役若しくは500万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する(119条2項1号)。
著作者人格権を侵害した場合、懲役または罰金またはその両方が刑事罰として科され
ることがある。
エ 法人の代表者(法人格を有しない社団又は財団の管理人を含む。)又は法人若しくは
人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、次の各号に掲
げる規定の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人に対して当該各号に
定める罰金刑を、その人に対して各本条の罰金刑を科する(124条1項)。著作権侵害
に関しては、同項1号で、法人に対して3億円以下の罰金刑を科すと定めている。
- 10 -
ZCG-初-B
問題23
【正答 イ】
【解説】
ア 日本国民(わが国の法令に基づいて設立された法人及び国内に主たる事務所を有す
る法人を含む。)の著作物、最初に国内において発行された著作物(最初に国外におい
て発行されたが、その発行の日から30日以内に国内において発行されたものを含む。)
および条約によりわが国が保護の義務を負う著作物は、著作権法による保護を受ける
(6条)。日本において最初に発行された著作物や日本が加盟している条約の加盟国の
国民の著作物は、日本において著作権法により保護される。
イ コンピュータプログラムは、特許権の保護対象となる(特許法2条3項1号、4項)ととも
に、著作権で保護される(著作権法10条1項9号)。
ウ 日本国民の著作物であれば、日本において保護される(6条1号)。日本で発行されて
いたり公表されていたりする必要はない。
エ 日本が加盟する条約の加盟国の国民の著作物ではなく、日本で最初に発行されてい
ない著作物は、日本では保護されない。例えば、ツバルの国民の小説で、日本で最初に
発行(他国で最初に発行されてから30日以内に日本で発行されたものを含む)されてい
ないものは、日本では保護されない。
問題24
【正答 イ】
【解説】
契約は、当事者の意思表示が合致することにより成立する(民法521条~528条)。
ア イラスト作成の打診がされただけの段階では、対価や条件が定まっておらず、当事者
の意思表示が合致したとはいえない。
イ 対価や条件が定まり、当事者の意思表示が合致したので、契約は成立する。
ウ イラスト作成料の支払いは、既に成立した契約に基づいた義務の履行である。
エ 契約書を作成しなくても、当事者の意思表示が合致した段階で既に契約は成立してい
る。
問題25
【正答 ウ】
【解説】
ア 知的財産は、著作権法や特許法といった知的財産の種類に応じた個別の法律により
保護される。知的財産法は、著作権法や特許法など知的財産を保護する法律の総称で
あり、「知的財産法」という名称の法律は存在しない。
イ 「知的財産権」とは、特許権、実用新案権、育成者権、意匠権、著作権、商標権その他
の知的財産に関して法令により定められた権利又は法律上保護される利益に係る権利
をいい(知的財産基本法2条2項)、このうち、特許権、実用新案権、意匠権、商標権を
「産業財産権」という。
ウ 上述のとおり、著作権は「知的財産権」に含まれる。
エ 上述のとおり、商標権は「知的財産権」に含まれる。
- 11 -
ZCG-初-B
問題26
【正答 イ】
【解説】
著作物の原作品に、又は著作物の公衆への提供若しくは提示の際に、その氏名若しく
は名称(以下「実名」という。)又はその雅号、筆名、略称その他実名に代えて用いられるも
のとして周知のもの(以下「変名」という。)が著作者名として通常の方法により表示されて
いる者は、その著作物の著作者と推定する(14条)。
問題27
【正答 ア】
【解説】
二次的著作物とは、著作物を翻訳し、編曲し、若しくは変形し、又は脚色し、映画化し、
その他翻案することにより創作した著作物をいう(2条1項11号)。
1 「変形」とは、既存の著作物の表現形式を変更することをいい、写真を絵画にすることは
変形にあたり、写真を絵画にするにあたって新たな創作性が付加されていれば二次的
著作物となる。
2 「翻訳」とは、言語の著作物を言語体系の違うほかの国語で表現し直すことをいい、点
字訳は翻訳にあたらない。
3 言語の著作物の映画化は「翻案」に該当し、製作された映画は二次的著作物となる。
4 「編曲」とは、音楽の著作物に新たな創作性を加えることをいい、伝統的民謡をそのまま
五線譜に書き起こすだけでは、新たな創作性を加えたとはいえないので、編曲にあたら
ない。
問題28
【正答 イ】
【解説】
1 著作者とは、著作物を創作する者をいう(2条1項2号)。著作物であれば、公表されて
いようといまいと、それを創作した人は著作者であり、著作者としての権利を享有する。
2 著作物とは、思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は
音楽の範囲に属するものをいう(2条1項1号)。したがって、自ら「思想又は感情の表現」
を創作的に行う者が著作者であり、創作表現のもととなるヒントを出しても、自らが実際
に創作活動を行っていなければ、著作者ではない。
3 著作者とは、著作物を創作する者をいう(2条1項2号)ので、その地位は相続や契約で
移転することはない。
4 15条1項および2項で職務上作成する著作物の著作者は、一定の要件を満たせば、法
人とすることが定められている。
- 12 -
ZCG-初-B
問題29
【正答 ア】
【解説】
著作者は、その映画の著作物をその複製物により頒布する権利を専有する(26条1
項)。
1 頒布とは、複製物を公衆に譲渡し、または貸与することをいい、複製物を媒介としないイ
ンターネットでの配信は頒布ではないので、映画の頒布権を侵害しない。ただし、公衆送
信権の侵害となる。
2 頒布権は、映画の著作物にのみ認められる権利である。ただし、映画の著作物以外の
著作物には、譲渡権(26条の2)が認められているので、譲渡権の侵害となる。
3 著作者は、映画の著作物において複製されているその著作物を当該映画の著作物の
複製物により頒布する権利を専有する(26条2項)。映画の中で使用されている彫刻は
「映画の著作物において複製されている著作物」であり、彫刻の著作権者にも頒布権が
あるので、頒布権の侵害となる。
4 頒布とは、有償であるか又は無償であるかを問わず、複製物を公衆に譲渡し、又は貸
与することをいい、映画の著作物又は映画の著作物において複製されている著作物に
あつては、これらの著作物を公衆に提示することを目的として当該映画の著作物の複製
物を譲渡し、又は貸与することを含むものとする(2条1項19号)。無償であっても、頒布
権の侵害となる。
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ZCG-初-B
問題30
【正答 ア】
【解説】
1 学校その他の教育機関において教育を担任する者及び授業を受ける者は、その授業
の過程における使用に供することを目的とする場合には、必要と認められる限度におい
て、公表された著作物を複製することができる。ただし、当該著作物の種類及び用途並
びにその複製の部数及び態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合
は、この限りでない(35条1項)。したがって、高校の美術の授業でデザインの参考にす
るため、教師がデザイン集の1ページを生徒の人数分コピーすることは、必要と認められ
る限度であり、かつ、著作権者の利益を不当に害することもないので、著作権侵害とは
ならない。
2 公表された著作物については、入学試験その他人の学識技能に関する試験又は検定
の目的上必要と認められる限度において、当該試験又は検定の問題として複製し、又は
公衆送信を行うことができる(36条1項)。入学試験や検定試験に許諾なく使用できるの
は公表された著作物であるので、未公表の著作物の無許諾使用は、著作権侵害とな
る。
3 美術の著作物若しくは写真の著作物の原作品の所有者又はその同意を得た者は、こ
れらの著作物をその原作品により公に展示することができる(45条1項)。絵画の原作
品を購入した所有者は、有料無料を問わず公の展示を行うことができるので、著作権侵
害とはならない。
4 美術の著作物でその原作品が前条第2項に規定する屋外の場所に恒常的に設置され
ているもの又は建築の著作物は、1号~4号の例外を除き、いずれの方法によるかを問
わず、利用することができる(46条1項)。4号では、専ら美術の著作物の複製物の販売
を目的としての複製が例外として定められており、販売目的で絵葉書を作成することは、
著作権侵害となる。
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