各セクターから見る G7 伊勢志摩サミット

第 42 回定例会 議事録
2016 年 6 月 30 日(木) 14:00~17:00
場所:味の素本社会議室
(〒104-8315 東京都中央区京橋一丁目 15 番 1 号)
各セクターから見る G7 伊勢志摩サミット
司会:味の素株式会社 栗脇 啓(コアメンバー)
Ⅰ.はじめに (35 分)
14:00~14:35
開会あいさつ(5 分)
[進行]司会
参加メンバー自己紹介(15 分)
[進行]司会
NGO と企業の連携推進ネットワークの枠組みと今年度計画(15 分)
[進行]事務局
Ⅱ.基調講演(35 分)
14:35~15:10
「 G7伊勢志摩サミットにおける開発課題に関する結果概要について」
(35 分)
西岡 達史氏
外務省国際協力局
地球規模課題総括課 課長
休 憩 (15 分)
※全体の写真撮影を行います!!
Ⅲ.各セクターの取り組み発表(40 分)
【企業セクター】
「 B7 東京サミットの結果等について」(20 分)
15:25~16:05
中嶋 康氏
日本経済団体連合会
国際経済本部 上席主幹
【NGO セクター】
堀内 葵
「G7 伊勢志摩サミット NGO アドボカシー活動の成果と課題」
(特活)国際協力 NGO センター(JANIC)
(20 分)
調査提言グループ
Ⅳ.全体質疑応答(20 分)
16:05~16:25
本日の登壇者の皆様に、全体で質疑応答をさせていただきます。
[進行]司会
[質疑応答]ご登壇者の皆様
Ⅴ.感想・意見交換会 (30 分)
本日の講演・事例発表を聞き、感想や意見、今後の連携・協働に
向けたアイデアなどをグループで自由に話し合う。
16:25~16:55
[進行]司会
Ⅵ.おわりに(5 分)
16:55~17:00
・メンバーからの報告と事務連絡
[進行]司会
会場協力:味の素株式会社
以上
Ⅱ.基調講演
西岡
達史氏 外務省国際協力局
地球規模課題総括課 課長
「G7 伊勢志摩サミットにおける開発課題に関する結果概要について」
G7 伊勢志摩サミットにおける開発分野の成果
5 月 26 日、27 日に開催された G7 伊勢志摩サミットでは、世界経済やテロ、難民問題といった政治外交問題
等、国際社会が直面する様々な課題について、首脳間で率直な意見交換が行われた。
今年は昨年 9 月に「持続可能な開発の為の 2030 アジェンダ」が国連総会で採択されて以降初めてのサミット
であり、国際社会全体の SDGs 実施に向けた取組みを後押しするメッセージを打ち出すことが強く期待されてい
た。外務省としてもその期待に応えるべく、成果文書や会議での論点、具体的な取組み等について積極的に推進
してきた。
サミットでは第 1~7 までのセッションを行ったが、第 6、7 セッションはアウトリーチと呼ばれ、G7 諸国の
首脳だけではなく途上国の首脳、国際機関の方々をゲストとしてお招きした。第 7 セッションのテーマは「国際
開発」であり、途上国や国際機関の首脳、などを交え、「保健」や「女性の活躍」といった個別の課題に焦点を
あてつつ、SDGs の推進について議論した。
「保健」の分野では、感染症などの公衆衛生危機対応に関する国際社会の能力強化、またより幅広い保健課題
の鍵にもなるユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)について話され、これらの分野に関しては「国際保
健のための G7 伊勢志摩ビジョン」を日本が主導して発出した。日本政府は今後新たに約 11 億ドルの支援方針
を決定したことを発表した。また「女性の活躍」分野では、女性のエンパワーメント、男女平等の推進が持続可
能な成長のために不可欠であることについて首脳間で一致し、「女性の能力開花のための G7行動指針」や「女
性の理系キャリア促進のためのイニシアティブ」に対しては、アウトリーチ参加国・機関からも支持が表明され
た。「アフリカ」に関しては、安全保障や気候変動等にしっかり取組み、一体性のある、豊かで平和なアフリカ
の実現のために、G7 が後押ししていくことで一致した。また、今年 8 月にケニアで TICAD Ⅵが開催されるが、
アフリカ初開催の首脳会議ということで期待が示された。
成果文書「G7 伊勢志摩首脳宣言」が採択されたが、これは G7 として世界経済や貿易、質の高いインフラ投
資、保健、女性、サイバーテロ、腐敗対策など、具体的な分野へのコミットメントに合意したものである。この
宣言文は、昨年から日本が議長国として中心となり継続して検討し、G7 諸国と調整しながら作り上げてきたも
のである。宣言文の中には、SDGs に関連する箇所が多く盛り込まれている。WEB に全文を掲載しているため、
御覧いただきたい。
(http://www.mofa.go.jp/mofaj/ecm/ec/page4_001562.html)
SDGs 推進に向けた我国の取組み
SDGs は MDGs と違い、途上国の開発に限らない広範な課題である。ゴール 1~6 までの貧困、飢餓、保健、
教育、ジェンダー、水、公衆衛生は伝統的な開発課題として従来の途上国の開発課題を引き継いだものだが、ゴ
ール 7 以降の課題は、経済や環境、社会問題など非常に広範な目標が含まれており、途上国だけでなく先進国も
取り組まなければならない、ユニバーサリティが最大の特徴といえる。
日本は、SDGs を作る議論が本格化する前から、MDGs の次世代の目標を作ることについて積極的に貢献して
きた。例えば、2011 年から 2013 年にかけて政策対話を主催し、2013 年には国連総会でサイドイベントを実施
した。そこには安倍総理と岸田外務大臣が出席し、UHC という言葉を SDGs に盛り込む為の精力的な努力も続
けてきた。交渉過程においては、日本政府が開発協力の基本理念として位置づけている「人間の安全保障の理念」
を盛り込む事にも貢献し、日本が重視してきた開発課題である質の高いインフラ、保健、女性、教育、防災など
を盛り込むことに尽力した。それを踏まえて SDGs が採択され、昨年 9 月の国連総会では安倍総理が SDGs に
最大限に取り組むことを表明した。
国内実施にあたり、必要な体制や取組みを関係省庁や有識者、市民社会との意見交換を通じて検討してきた。
SDGs が採択されて初めての G7 サミット、且つ議長国として強いリーダーシップに期待が寄せられていたこと
もあり、サミット直前の 5 月 20 日に総理大臣を本部長、全閣僚を構成員とする SDGs 推進本部を設置し、同時
に第 1 回の本部会合も開催した。日本国内で関係省庁横断的に取組む為の官邸主導の体制、いわゆる推進本部と
いうものは他にもあるが、G7 サミットを契機として総理大臣を本部長とする体制をつくったことは、SDGs が
今後 15 年間に渡る長期的な取り組みである事を考えれば、意義深いものだと感じている。
MDGs の際にはこのような推進本部は日本政府内に無く、外務省が中心となって行っていた。SDGs は MDGs
の達成できなかった目標に引続き取組むだけでなく、過去 15 年の間に生まれた新しい課題にも対応することが
求められている。また、地球規模の課題は互いに関連し、連鎖して起こることが明らかになってきた。つまり、
途上国の開発課題に取り組むだけでは今の地球規模課題の解決には対応できないということである。
SDGs に含まれる日本にとっての国内問題とは、環境問題(循環型社会の構築や気候変動への対処)だけでな
く、日本にとっても深刻な社会問題も含まれており、これに取組む為には外務省だけでなく官邸主導の司令塔を
作り省庁横断的に取組む必要があるということが、SDGs 推進本部が出来た背景である。17 のゴールの全てにお
いて、国内実施と国際協力の両面があり、この広範な分野で国際協力を実施していくには、外務省だけでは当然
カバーできない。専門性のある各省庁の知見を借りながら、省庁横断的に取組むことは十分に機能すると期待で
きる。
推進本部の立上げと同時に発表した具体的な日本政府の貢献策は 3 つある。
一つ目は、
中東地域安定のために、
今後 3 年間で 2 万人の人材育成を含む約 60 億ドルの支援を実施すること。二つ目は、国際保健機関(グローバ
ルファンド、Gavi、GHIT 等)に対し、総額約 11 億ドルの支援を実施すること。三つ目は、
「女性の活躍推進の
ための開発戦略」を新たに発表するとともに、今後 3 年間で約 5 千人の女性行政官の人材育成、約 5 万人の女子
の学習教育の改善を実施していくことを示した。その外にも、数字だけの経済成長ではなく、包摂性、持続可能
性、強靭性を兼ね備えた「質の高い成長」は、SDGsのゴール 8 や 9 に対応する取組みである。ここでは、
ODA を触媒にしつつ民間の資金を効果的に導引していくための質の高いインフラパートナーシップを発表して
いる。保健や教育については、2030 アジェンダの採択に合わせ、「平和と健康のための基本方針」、および「平
和と成長のための学びの戦略」を発表した。防災においては、昨年 3 月に仙台で開催された国連防災世界会議の
フォローアップとして、防災の主流化の取り組みを進めている。
企業や NGO への大きな期待
今後この 2030 アジェンダを実施していくために、先進国を含む全ての国が国内での課題に取組むことと、自
国だけで目標が達成できない途上国に対して、先進国がその実施を支援するという 2 つの柱が必要になる。各国
政府はもちろん、国連機関や、世銀、OECD など様々な機関が取り組みについて急ピッチで課題の検討を進めて
いるが、最大の課題は開発資金の確保である。UNCTAD の試算によれば、SDGs17 のゴールを全て達成するた
めには、全世界で一年間に 4 兆ドルの資金が必要である。先進国の ODA を全て合計しても、この額の 30 分の 1
程度にしかならない。資金だけではなく、知恵や人材といった部分も含め、SDGs の実施のためには先進国、途
上国問わずにあらゆるステークホルダーがそれぞれの役割を進めていくことが必要であり、市民社会や民間企業
にもステークホルダーの一員としての大きな役割が期待されている。
途上国の開発に関しては、以前は ODA による協力が主要な役割を果たしていたが、近年民間企業の役割が確
実に拡大してきている。2000 年から 2013 年までの先進国から途上国への資金の流れの総額内訳を見ると、
「ODA:民間資金:海外送金= 1 : 2 : 1.5」となり、民間資金の流れは ODA の約 2 倍である。ODA は引続き重
要ではあるものの、民間資金を呼び込むための触媒であるという位置づけが強くなってきている。2030 アジェ
ンダでも、民間企業の活動、投資、イノベーションの重要性が強調されている。
PwC
(プライスウォーターハウスクーパース社)が日本を含む全世界のグローバル企業約 1,000 社、および 2015
人の市民を対象に行った調査によると、グローバル企業の多くは SDGs に関して一般市民よりも関心が高く、達
成の責任は第一義的には政府の役割だという意見も少なくはないが、71%の企業は既になんらかの形で SDGs
に対してどのように対応するかを計画し始めている事がわかった。一方で、SDGs が自社にとってどのようなイ
ンパクトをもたらすかについての計測や評価の手法を確立している企業は未だに 13%と少数である。今後は企
業の取組みの中からグッドプラクティスを共有していく必要がある。5 年以内に SDGs を自社の戦略に反映する
と答えた企業は 41%を示しており、自社と SDGs の関連性の特定、CSR 活動の更なる推進、個別プロジェクト
の立上げなどを検討している。
また、別の PwC の調査で業種別に関係が深いと考えられるSDGsの上位 5 つを上げたものがある。ゴール
8 のディーセントワーク、9 の産業、技術革新、社会基盤、3 の健康と福祉、4 の質の高い教育、13 の気候変動、
12 の持続可能な消費と生産が、上位のゴールとして認識されていることが分かった。そうした中で、持続可能
性(サステナビリティ)は企業活動を行う上でのコストではなく、新しいビジネス展開の機会として捉え始めて
いる企業が多くなってきている。背景には、SDGs が企業を取り巻く環境の変化に少なからず影響をもたらして
いることが挙げられる。昨年 9 月の国連サミットで安倍総理が SDGs を積極的に推進することに言及した際に、
GPIF(年金積立管理運用独立行政法人)が国連責任投資原則(PRI)に署名したことを発表した。これは SDGs
の推進において大きなインパクトをもたらすメッセージであった。
民間企業の取組みのひとつである「OPEN2030 プロジェクト」を紹介する。民間企業だけでなく、NGO や有
識者も一体となった取組みだが、SDGs を企業にとってもイノベーションを起こす最大の機会だと捉え、ゴール
12「持続可能な生産と消費」を中心に、生産・加工・流通・消費の見直しを行っている。今後政府としても民間
企業の皆様と更なる連携を進めていきたいと考えている。
国外に目を向けると、米国国際ビジネス協議会(USCIB)やビジネスと持続可能な開発に関するグローバル委
員会(WBCSD)といった新たなイニシアティブが立ち上がっている。
グローバルパートナーシップで、さらにマルチステークホルダー体制で取り組んでいくべきものが、2030 ア
ジェンダの基本的な理念である。NGO と企業という、異なるセクターの集まるこのような場にお招きいただき、
大変貴重な機会だと考えている。
≪質疑応答≫
Q. SDGs の指標については、どうなっているのか。
A. ターゲットが 169 ある。指標の立て方が非常に困難で、定量的に測りにくいものもある。国連の統計委員会
から、すべてのゴールについての定量的な指標がようやくできたところであるが、全加盟国の合意が得られてい
るわけではない。またそれらはグローバル指標であるため、すべての国にその指標が当てはまるわけではない。
日本がどのような指標を使うかについては、今後検討していく。
Q. MDGs では UNDP が主導だったが、SDGs ではどこがその機能を果たすのか?
A. 引き続き UNDP もその機能を担うが、一つの機関が主導するのではなく、国連として全体で取り組んでい
く方針にある。
Ⅲ.各セクターの取り組み発表
【企業セクター】
中嶋
康氏 日本経済団体連合会
国際経済本部 上席主幹
「B7 東京サミットの結果等について」
これまでの B8/B7(G8/G7 ビジネス・サミット)
2007 年 4 月にドイツ産業連盟の呼びかけでスタートして以来、毎年、サミット議長国の経済団体が主催して
いる。ビジネス界としての共同提言をとりまとめ、サミットに提出するのが慣例となっている。
B7 東京サミット共同提言とその模様
2016 年 4 月 20 日~21 日に経団連会館で開催され、
「世界経済」
、
「デジタル革命」、
「貿易・投資」の三つのセ
ッションで活発な議論が行われた。開会挨拶では、榊原経団連会長より「世界経済の先行きが不透明な今こそ、
G7 が経済の安定的かつ持続可能な成長に向けて主導的な役割を果たしていくべき」とのメッセージを伝えた。
また来賓に安倍総理大臣、林経済産業大臣、石原内閣府特命担当大臣、武藤外務副大臣を迎え、ご挨拶をいただ
いた。
第 1 セッション「世界経済」では、主に下記について議論が行われた。

G7 が金融政策のみに頼ることなく、機動的な財政政策を実施するとともに、大胆な構造改革を断行するこ
とが強靭な経済を実現し、新興国に代わって先進国が世界経済を牽引していく上で不可欠

中国経済について、投資主導から消費主導の成長へとソフトランディングが期待されるが、そのためには、
過剰設備問題について、市場歪曲的な補助金その他の政府支援措置を制限するよう働きかけていくべき
第 2 セッション「デジタル革命」では、主に下記について議論された。

デジタル化は、産業分野に止まらず、社会の構造、あり方にまで及ぶもの。
「Society5.0」も社会に変化を起
こそうとするものであり、社会の理解を得ること、ネガティブな影響に対応することが必要

越境データフローの確保とサイバー・セキュリティ対策は、デジタル革命推進の基盤であり、国際協力、標
準化の推進が不可欠

個人情報保護などに関する社会に対する啓蒙活動ならびに時代遅れの規制、無用な規制がイノベーションを
阻害しないよう政府に対する啓蒙活動が必要
第 3 セッション「貿易・投資」では、主に下記について議論された。

日 EU 経済連携協定(EPA)や TTIP(大西洋横断貿易投資パートナーシップ協定)をはじめとするメガ FTA
(自由貿易協定)やサービス等に関する複数国間協定については、合意の時期と内容の双方が重要。両方を
満たすためには、政治のリーダーシップが不可欠

グローバル・ルールづくりを先進国が主導するという目的意識を持って交渉を進めることが必要。その点、
規制協力は非常に重要な取組み。規制協力を推進するためにも日 EU EPA や TTIP の早期実現が必要

デジタル貿易や国有企業に係るルールづくりなど新たな課題については、WTO において取り組むのが理想
的であるが、ドーハ・ラウンドの決着を待っていては遅すぎるため、複数国間による交渉も活用しながら進
めていくことが必要
セッションでの議論は行われなかったが、共同提言には第 4 の項目として「地球規模の課題解決に向けた政策
協調」も盛り込まれている。ここでは、SDGs(持続可能な開発目標)が策定されてから初めて開催される G7
サミットとして、気候変動、循環型社会、アフリカの電化促進、グローバルヘルスなどの地球規模課題への主導
的な取組みを期待する旨、提言している。
B7 サミット終了後、安倍総理大臣に共同提言を手交し、G7 伊勢志摩サミットで同提言を優先的に検討してい
ただくよう要請した。今こそ G7 が足並みを揃え、世界経済の安定的かつ持続的な成長に向けて牽引役を果たす
ことが不可欠である。安倍総理大臣のリーダーシップの下、G7 伊勢志摩サミットがその重要な契機となること
を期待している旨伝えた。
最 後 に 、 G7 伊 勢志 摩サ ミ ッ トの 首 脳宣 言 を受 け て 、榊 原 会長 よ り発 表 し たコ メ ント を 紹介 し た い。
(http://www.keidanren.or.jp/speech/comment/2016/0527.html)
「G7 伊勢志摩経済イニシアティブ」に合意したことは大きな成果であり、中でもすべての政策手段(金融、財
政、構造)を総動員することが再認識されたことを高く評価している。経団連は引き続き、B7 を通じて政府間
の取り組みを全力で支援・後押ししていく。日本国政府には、G7 首脳共同宣言に則り、消費喚起、投資促進等、
需要創造に資する大規模な財政出動を伴う経済対策の策定・実行を求めたい。同時に、日本国再興戦略ならびに
事業環境の国際的なイコールフッティング確保に資する構造改革の推進に取り組んでいただきたい。
(一部抜粋)
【NGO セクター】
堀内
葵 (特活)国際協力 NGO センター(JANIC)調査提言グループ
「G7 伊勢志摩サミット NGO アドボカシー活動の成果と課題」
なぜ G7 に NGO が関わるのか
G7 サミットの主要課題は、
「世界経済・貿易」
「政治・外交」
「気候変動・エネルギー」
「開発」の 4 つに大き
く分けられる。NGO は特に、
「開発」に対して働きかけをするため、長年 G7 サミットに向けてのアドボカシー
を進めてきた。1975 年から始まったサミットは、オイルショックなどの影響もあり、経済問題が主な議題であ
った。しかし 90 年代から、持続可能な開発に関する議題が増え、また市民社会との連携も進められるように変
わってきた。2000 年の沖縄サミットでは、初めて「NGO スペース」が設けられ、NGO のロビー活動を政府が
後押しするようになった。2008 年の洞爺湖サミットでは、NGO による記者会見が行われた。このような経緯が
あり、市民社会がサミットに関わることは慣例化されている。
伊勢志摩サミットでの NGO の活動
1. 2016 年 G7 サミット市民社会プラットフォーム設立
国際協力 NGO、環境 NGO など 62 団体が参加した。共同事務局は JANIC、動く→動かすが務めた。設立目
的は以下の 3 つである。
① G7 に関する政策提言
外務省との定期的な意見交換や、NGO 向けのイベントを実施する。
②
マルチセクターとの連携
ビジネスセクター、アカデミアとの連携を含む。
③
海外 NGO との情報共有
G7 サミットに参加した日本以外 6 か国の NGO に、日本の NGO が情報収集した結果を伝える。
2. 東海「市民サミット」ネットワーク設立
三重、愛知、岐阜の NGO・NPO が「強い市民社会の形成」のために設立。地元の NGO としてサミットの
開催を歓迎するだけでなく、自分たちの活動をアピールした。
3.全国で開催された大臣会合に合わせた NGO の活動
・広島県「外務大臣会合」…核兵器廃絶を求める市民シンポジウム
・新潟県「農業大臣会合」…フードマイレージに関するワークショップを開催
・富山県「環境大臣会合」…環境市民フォーラム・アースデイ開催、環境市民宣言採択
・岡山県「教育大臣会合」…児童労働に関するノーベル平和賞受賞者・カイラシュさんを迎えたシンポジウムの
開催
海外 NGO との連携
1. 2016 年 2 月「NGO 国際戦略会議」
イタリア・ローマで開催された。G7 諸国の NGO を中心に 50 名が参加。保健、気候変動、サプライチェー
ン、難民を重点課題に提言戦略を議論した。イタリアのシェルパ(各国首脳の代理としてサミット議題の準
備を担当する高級官僚のこと)と面会し、各国の日本大使館に NGO の提言を届けた。
2. 2016 年 3 月「CIVIL G7 対話」
市民社会による G7 関連会合であるため、
“C7”と言われている。102 名が参加し、アジア・アフリカから
25 名が参加した。アジア・アフリカからの参加者の渡航費は日本政府から一部拠出された。会議では、8 つ
のテーマ(SDGs、保健、栄養、気候変動・DRR、シリア、難民、ジェンダー、責任あるサプライチェーン)
に関する提言を作成した。シェルパとの対話を行い、G7 諸国の政府に NGO の声を届けた。
政府との対話
1. 2016 年 4 月「サブシェルパとの意見交換会」
外務省経済局政策課と開催時期について折り合いがなかなかつかない中、、ようやく開催された。保健、女
性と開発・教育、紛争・難民問題、ビジネスと人権、飢餓と栄養改善、気候変動・エネルギー、サミット全
般、政府と市民との対話について提言を行った。
2. 2016 年 5 月 「参議院『政府開発援助等に関する特別委員会』での決議」
SDGs を日本政府の政策に位置づけて、
必要な法整備等を進めるよう求めることが決議された。
委員会では、
NGO・研究者が参考人として答弁し、提言も概ね反映された。今後は決議のフォローアップが必要である。
市民の伊勢志摩サミット
2016 年 5 月 23,24 日、三重県四日市市にて、東海「市民サミット」ネットワークと、G7 サミット市民社会
プラットフォームの共催で行った。2 日間で約 500 名が参加する大規模なイベントとなった。
「市民宣言」の発
表や 15 の分科会、16 の提言書の作成等が行われた。最終日には、日本の代表から次回議長国のイタリア市民社
会へバトンが渡され、NGO が継続的に G7 に関わっていくことを示した。サミット終了後、外務省の竹若審議
官(NGO 担当大使)との意見交換会にて、市民宣言と提言書を手渡した。
市民宣言の骨子
1.
地域が直面している課題と地球上を覆う深刻な課題とのつながりを意識しながら、それぞれの市民活動に取
り組み、課題の改善や解決をもたらすこと。
2.
自治体・国・国際機関などに対し、市民からの政策提言活動を継続し、市民協働による効果的な政策づくり
を進めること。
3.
市民協働による政策づくりを効果的に進めるため、新たな制度やネットワークづくりを行うこと
NGO をはじめとする市民社会が、自分たち自身に向けた宣言である。全文は、G7 サミット市民社会プラットフ
ォームのホームページに掲載している。
(http://cso-g7-ise-shima-summit2016.blogspot.jp/2016/05/160524sengen.html)
国際メディアセンターでの活動
国際メディアセンターに設置された NGO スペースにて、記者会見を実施した。55 団体 101 名の NGO が登録
し、3 日間で 21 の記者会見を実施した。また、メディアに取り上げてもらう工夫として、様々なパフォーマン
スを行った。SDGs 達成に向けた 17 人 18 脚、
「今日の一文字」書道パフォーマンス、国際保健に関する UHC
(Universal Health Coverage)スーパーヒーロー、ホームレス・ベッドの展示、などである。その結果、多く
のメディア掲載が実現した。特に中部地域の新聞には多く掲載された。
首脳宣言への評価
【+の評価】
・
「パリ協定の可能な限り早期の批准」
「2016 年中の発効」を目標とした点
・
「健康なシステム,健康な暮らしに関するロードマップ」などのイニシアティブによって支援される「UHC2030」
の設立を支持した点
【―の評価】
・
「格差」の是正など、SDGs の取組みの根幹をなす課題について、言及が乏しく、具体的な解決方法も明示さ
れていない点
・途上国の視点を踏まえた租税回避・タックスヘイブンへの取組みに実質的な前進がない点
・二酸化炭素排出が多い石炭火力発電の規制に全く言及していない点。
・
「栄養支援」の名のもとに行われているアフリカなどでの土地収奪や先住民の排除などの問題について言及が
ない点。
・男性 6 名、女性 1 名という首脳のジェンダーバランスは改善すべき。
活動を通じて達成できたこと
CivilG7、サブシェルパとの意見交換を通じて、NGO による提言の場を提供できた。また、SDGs、パリ協定、
難民問題、国際保健など、NGO による提言の一部が首脳宣言に盛り込まれた。さらに、準備期間およびサミッ
ト期間を通じて、新聞・テレビ・ラジオ・インターネットなど各メディアへの掲載が多く見られた。そして、地
域と NGO の結びつきが見られた。東海「市民サミット」ネットワーク、SDGs 市民社会ネットワークが設立さ
れ、NGO/NPO 間での連携や、地域内での様々な団体による連携が深まった。
不十分であったこと
プラットフォーム設立時期の遅れに伴い、組織作りと戦略作りを同時並行的に行わねばならず、調整作業に多
大な時間を要した。また国際メディアセンターにおいて、海外 NGO の実質的な参加が限定的であった。民間セ
クターとの意見交換や協働ができなかったことも、反省点と感じている。来年以降のフォローアップ体制の構築
は今後検討していきたい。
Ⅳ.全体質疑応答
Q. MDGs と SDGs では、最終的に目指している開発のゴールが変わった。SDGs では、先進国はソリューショ
ンを提供するだけでなく、大量生産・大量消費のライフサイクルを含めて変わらなければならないと宣言されて
いる。それを達成するために、企業が果たす役割は非常に大きい。従来のビジネスモデルである、化石燃料での
大量生産を変えていかねばならない。また、私たち一人ひとりのライフスタイルを変えていかねばならず、新た
なライフスタイルを提示するという企業の役割も大きい。そのような見地に立った場合、今回の首脳たちは、自
分たちが変わらねばならないということをどこまで認識し、議論できたのか?市民社会としては、市民社会のメ
ッセージをどこまで強く打ち出せたのか?
A. 外務省
西岡氏
G7 の首脳宣言の抜粋によると、
「2016 年は新たな時代の幕開け」というのが共通認識である。2015 年は、様々
な角度から地球規模課題の解決を目指すうえで、国際社会の目指す方向が確認された年だった。気候変動につい
てはパリ協定、開発資金の使用についてはアディスアベバ行動目標、防災・減災については仙台防災枠組みが採
択され、2016 年が実行スタートの年となった。
つまり、植民地時代から続く世界の構造である、先進国が途上国をリードし、支援するというパラダイムが変
わったといえる。サミットでは、先進国、途上国双方に異なった役割があるが、一つの方向に進んでいくという
認識が G7 の首脳間で強く共有された。また G7 サミット後にイギリスが EU の離脱を表明したように、世界で
は様々な動きがみられるが、SDGs は国際社会が一致した目標を持つことの重要性を示している。G7 では、首
脳宣言に SDGs が含まれていることからも、首脳が一致した目標を持ったことは重要であった。
A. 経団連
中嶋氏
このままでは経済活動が持続可能ではないという認識のもと、企業も課題克服のために努力している。共同提
言の「デジタル革命の推進」にもあるように、ソリューションの一つが、IoT を活用したスマート社会の実現で
ある。他方、地球規模課題について、経団連は企業の CO2 削減や省エネの努力などをしっかりと受け止め、COP3
以降、自主行動計画を推進してきた。2013 年以降は低炭素社会実行計画を打ちだし、生産段階で排出される CO2
の削減や、エコカーの推進などライフサイクルでの取組み、さらには革新的な技術開発などを柱とする実行計画
を策定してきた。また、廃棄物についても日本が先駆けて 3R(Reduce、Reuse、Recycle)の推進を行い、他国
をリードしてきた。日本は課題解決先進国として地球規模課題の解決に率先して取り組むことが求められており、
経団連もそうした問題意識を持って企業の横断的取組みを主導している。
A. JANIC
堀内
様々な機会を通して政策提言を実施してきた。SDGs の文脈の中で、格差是正、不平等の克服を提言してきが、
首脳宣言には格差や不平等に関する文言がまったくなかったことは残念である。首脳自身が変わるべき、という
提言はしてこなかったが、首脳がリーダーシップを発揮して政策をより良いものに変えていくべきとの提言をし
た。現在の先進国の経済モデルを変える必要性があるとずっと訴えてきた。
ひとつエピソードを紹介すると、サミットに対していくつか批判があったのはご存じの通り。豪華な施設を作
って一回使用しただけで取り壊すこと、配偶者プログラム(首脳の配偶者への待遇)が贅沢すぎることなどであ
る。配偶者プログラムでは NGO スペースの見学がなかった。見学があれば NGO の提言を届けることができた
可能性があった。メディアセンターで NGO の活動をアピールする戦略が欠けていた。
Q.「日本の途上国支援策:官民の連携を重視」のなかに、「質の高い成長」「質の高いインフラ投資」「産業人材
育成の推進」とあるが、外務省としてどのように進めていくのか。
A. 外務省
西岡氏
十分に答えられる材料がないため、後日回答させていただく。
Q. G7 で表明された、SDGs 推進本部の立ち上げによる日本の貢献策として 3 つあるが、1(中東地域の安定化
のための協力)2(国際保健)への取り組みには、巨額の資金の拠出が見込まれると思う。投資に対してその後
の期待される成果があれば教えてほしい。
また、3(女性の躍進推進)では、掲げた目標を達成するのはチャレンジングなものであると思う。今後このよ
うなパートナーと協働したいということがあれば、教えてほしい。
A. 外務省
西岡氏
それぞれの分野で事業を実施し、適切に評価を実施する。事業によって期待される効果も違うため、どのよう
に検証していくかは今後検討していく。女性の躍進推進については、研修を行ったり学校を作るなど、細かい事
業も含め 5 万人ほどの女子の学習環境が変わると考えている。様々なセクターがパートナーになりうる。
Q. Society5.0 とはどこで作られた言葉で、どんな意味か?
A. 経団連
中嶋氏
内閣府の総合科学技術・イノベーション会議の場で提唱された概念と理解している。ドイツの Industry4.0 が
専ら生産現場の革新に重点を置いているのに対し、Society5.0 は経済社会全体を IoT でつなげ超スマート社会を
目指すというコンセプトである。しかし、コンセプトが固まっていない感は否めない。経団連としては、提言活
動や各国経済団体との対話を通じて、普及啓発を推進していく。産学官連携の下、国際的な協力体制をどうつく
るかが今後の課題である。
Q. B7 東京サミットで、市民社会との話し合いはなされたか?
A. 経団連
中嶋氏
この 2 日間では市民社会との対話は実現しなかったが、マルチステークホルダーの連携の重要性は認識してお
り、今後の課題と考えている。
以上