コンピュータ支援診断技術の開発促進のための統合型読影支援環境の

対象とする診療科:放射線科、内科、脳外科
一般機器名称:ASP型コンピュータ支援診断システム
全268
コンピュータ支援診断技術の開発促進のための
統合型読影支援環境の実用化に向けた実証研究
事業管理機関
PL
SL
研究実施機関
発表者
:株式会社ジェイマックシステム
:株式会社ジェイマックシステム 副社長 原真
:国立大学法人東京大学医学部附属病院 放射線科 講師 増谷佳孝
:国立大学法人東京大学医学部附属病院、
一般社団法人画像診断研究・振興・普及協会、イーサイトヘルスケア株式会社
:株式会社ジェイマックシステム 副社長 原真
事業概要
X線CTなどの臨床検査画像の枚数は年々増加し、読影医の能力の限界まで達し、 コンピュータ診断支援技術
の実用化が要請されている。
この計画では、東大病院で開発された統合的コンピュータ診断支援システムを遠隔読影可能な環境に組み込
むことにより、コンピュータ診断支援技術の実用化及び波及を目指す。
1.解決する問題・課題
医療現場のニーズ・課題
我が国の画像診断は多くのCT、MRI 装置と少ない放射線科医数に
よって特徴づけられる。
さらに昨今では、撮像装置の発達により短時間で数多くの画像を撮像
することが出来るようになったために、一検査当たりの画像枚数は飛躍
的に増大しており、読影を行う放射線科医の負担も増大し、放射線科
医の不足がますます顕在化している。
そこで、限られた放射線科医のマンパワーの不足を補うべく、
コンピュータによる病変の自動検出などを行う、いわゆるコンピュータ画
像診断支援(Computer Assisted Detection/Diagnosis:CAD)技術が
期待されている。
東大病院放射線科ではCAD の開発と運用を含めた統合型読影支援
環境(CIRCUS)を独自に開発、実用化を行った。
2009 年に実用を開始し、東大病院内で既に3000症例を超える実績が
あり、現在も開発継続と運用を行っている。
CIRCUSシステムの大きな特徴は、読影医が実際の読影を行いながら、
CADの指摘した病変の候補を採点するインターフェイスを持ち、学習処
理に利用し性能を向上させることが可能な点である。
CADの性能向上のためには、医療施設ごとに異なる性質の画像データ
を同時に使用して学習処理を行うことが望ましいが、
実際に多施設のデータを集積し、学習処理を行うには多大なコストが生
じる。
そこで、ジェイマックシステムが開発したASP型遠隔読影環境と
CIRCUSを組み合わせ、ネットワーク上でCAD開発から実用までを進
める新しい読影支援システムを研究することで、飛躍的な開発の効率
化と性能の向上の同時実現の可能性を検証する。
平成22年度(補正事業)
本研究の目的・達成目標(平成24年2月末時点の目標)
(1) 第二四半期までにASP型遠隔読影システムの中核となる
サーバー群をデータセンターに構築し、CIRCUSをASP型
遠隔読影システム上で動作させる。
(2) 本事業年度内に6000件以上の検査データを収集し、
データ解析とCAD性能の向上※を行う。
※ 例えば、東大データのΦ3mm以上の脳動脈瘤が上位3つの
候補に入る確率ほぼ100%に対して、多施設データでの
95%以上の達成が目標。
(3) 本システムを製品化するために、薬事認証が必要かどうか、またソ
フトウェア薬事の動向を調査しつつ、製品化を検討する。
事業終了後の最終的な開発の到達点
事業終了後も引き続き、CAD評価に参加して頂ける医療機関と
放射線科医を募り、臨床データ数を増加させる。
臨床データ数が増える事で、CADの性能のさらなる向上が見込まれる。
また、本システムを扱う放射線科医が増える事で、CADの普及が
見込まれる。
(現在、ほとんどの放射線科医はCADを使った読影経験が無い。)
事業終了後は、参加医療機関と放射線科読影医には、
システムの使用料を負担して頂くことで、
事業としても成り立つことが見込まれる。
課題解決型医療機器の開発・改良に向けた病院企業間の連携支援事業
1
2.研究実施内容
実施内容
実施内容
実施項目(実施計画書のサブテーマ番号とテーマ名)
結果
①システム全体設計
システム全体の設計と開発を実施
システム全体の設計を行い、問題点の把握を行った。
②CAD 機能の追加開発
CIRCUSの現状の理解と本事業に向けたI/F改修
I/Fの改修を行い、遠隔読影システムと連携した。
③CIRCUSの複数施設対応
CIRCUSを複数施設に対応できるよう改修
複数医療施設のデータを扱えるようになった。
④遠隔読影システム側のCIRCUS対応開発
遠隔読影システムをCIRCUSと連携出来るよう改修
遠隔読影システムとCIRCUSが連携出来た。
⑤データセンター内ハードウェアの導入、設計、構築
データセンターに設置するHardwareの設計構築
データセンターにハードウェアを選定、導入した。
⑥データセンター内アプリケーションの導入
データセンターに開発したアプリケーションを導入
データセンターにアプリケーションを導入した。
⑦利用施設側の画像送信アプリケーションの開発
依頼施設に設置する依頼端末のソフトウェアの改修
依頼時にCAD対象シリーズを選択できるようにした。
⑧依頼施設側画像送信端末設置
研究参加施設への画像送信端末の設置
既存施設を含む計6施設へ導入した。
⑨読影端末設置
読影施設への読影端末の設置
読影施設へ読影端末を5台導入した。
⑩全体稼働テスト
システム全体の稼働テストを実施
テストを行い、大きな問題が無いことを確認した。
⑪遠隔CADシステムの運用開始、画像診断デー
タ収集とCAD診断結果の評価結果の収集
画像及びCAD診断結果データの収集を実施
12月末現在で3517件のデータ収集が完了している。
2月末までに5500件のデータ収集完了予定。
⑫蓄積されたCAD診断結果の評価解析
収集したデータから各種評価解析を実施
性能評価、有病率統計の解析を実施した。
⑬CAD 性能の向上
解析結果から現在の東大病院と同等の性能にする。
追加学習の症例数が増えるに従って、東大病院と同
等の性能に近づくことが確認された。
⑭ソフトウェア薬事に関する情報収集
⑮ソフトウェア薬事に対する準備
ソフトウェア薬事に関する動向について調査
JIRAのソフトウェア薬事に関する講習会に出席
ソフトウェア薬事について、進行中であるという情報を
取得した。
⑯プロジェクトの管理・運営
⑰報告書作成
メーリングリストを開設、定期会議を通して、メンバー
間のコミュニケーションを図った。
プロジェクト全体に遅延なくスケジュール通りに計画を
遂行できた。
活用したものづくり技術
〈技術の保持者(企業名、業種等)〉
〈技術の内容〉
〈活用に至った背景〉
①東大病院放射線科 (医療)
②株式会社ジェイマックシステム(IT)
①CAD(脳動脈瘤、肺結節)のアルゴリズム及びHuman Interface
②ASP型遠隔読影システム
双方とも既存の技術を有しており、この2つの技術
の融合が今回の研究の主目的であるため。
平成22年度(補正事業)
課題解決型医療機器の開発・改良に向けた病院企業間の連携支援事業
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3.得られた成果
肺結節検出(Lung-CAD)の結果
脳動脈瘤検出(MRA-CAD)の結果
【肺結節検出】
追加学習によりΦ5mm以上の肺結節が
上位5個の候補に入る確率が90%⇒91%と上昇
⇒ 東大病院の性能の97%を達成
【脳動脈瘤検出】
追加学習によりΦ2mm以上の脳動脈瘤が
上位3個の候補に入る確率が65% ⇒ 67%と上昇
⇒ 東大病院の性能の95%を達成
データセンター
依頼病院
CTやMRI
読影医
放射線技師
画像参照
レポート記載
画像転送
画像サーバー
インター
ネット
インター
ネット
CAD結果参照
CADの
Feedback
依頼端末
読影レポート
読影レポート
平成22年度(補正事業)
CADサーバー
課題解決型医療機器の開発・改良に向けた病院企業間の連携支援事業
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4.事業化の計画
事業化する医療機器の概要
項目
事業化の体制
概要
体制図
肺結節
参考:気管,気管支及び肺の悪性新生物 9万人
脳動脈瘤
参考:脳血管疾患 147万 人
対象疾患/患者数
対象顧客
読影費用
放射線科読影医、医療施設
市場規模
(平成24年、平成33年)
読影医
依頼施設
システム提供
平成24年:1,000,000円
(読影医10人 ×年間1000件読影 × 100円)
平成33年:440,000,000円
(読影医1000人 × 年間4400件読影 × 100円)
システム利用料
イーサイトヘルスケア
※2011年の放射線診断専門医師数:5700名
アクティブな医師数を4000人と想定し、25%の医師が
使用することを想定しています。
システム提供
システム利用料
CAD提供
現在の市場の状況
国内、海外とも競合なし
(競合、国内/国外等)
ジェイマックシステム
東大病院
CAD利用料
上市時期
平成24年度(本事業継続後すぐに開始)
想定売上規模
年間5,000,000円
(読影医50人×年間1000件読影 × 100円)
(上市3∼5年目程度)
〈業許可〉
担当企業
事業化(上市)までのスケジュール
時期(年度、和暦)
事業化(上市)までの計画内容
平成24年度
一部事業開始
平成27年度
事業本格開始
製造
販売
株式会社ジェイ
マックシステム
業許可有無
業許可の計画内容
既存業許
可:有
ソフトウェア
薬事:未定
ソフトウェア薬事の法規制が定ま
るまでは、現行のビジネス展開を
行う。ソフトウェア薬事の法規制が
確定する前後で、準備を行い、ソフ
トウェア薬事の認可を取得する。
製造
平成22年度(補正事業)
課題解決型医療機器の開発・改良に向けた病院企業間の連携支援事業
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5.医工連携による医療機器開発のポイント
「本事業で苦労した点と克服方法」
・とにかく短期間で結果を出す必要があったこと。
東大病院と最低毎月一回はミーティングを行い、現在の課題点・問題点を管理表として進捗管理を行った。
・協力医療機関の抽出、契約が難航した。医療機関側にかなりのメリットが無いと協力が難しい。
今回は読影医の人脈により参加が可能となった。
「本事業の経験を通じて得た、医療機器開発の成功の秘訣・勘所」
・融合−単体の機能や開発力で優れているだけでなく、優れたもの同士を融合させることで
大きなメリットをもたらす。
・協力してくれる医療機関との折衝。
「事業化を確実に実現するための要件」
すでに開発されているものをパワーアップさせるという考え方。
「共同体によるプロジェクト運営のコツ」
コミュニケーションをきちんと行う事。
「医療機関、民間企業、金融機関などへの要望」
今後の医療では治療だけでなく、診断が重要な位置づけになると考えられる。
CT,MRIを撮影した後に、【専門読影医】が読影をするという事を一般人に理解してもらいたい。
それにより、読影の質を患者が考えて、病院を選べるようにしたい。
また、このような研究では、協力医療機関が必須である。協力施設へのメリット(金銭面)を考慮すべきである。
平成22年度(補正事業)
課題解決型医療機器の開発・改良に向けた病院企業間の連携支援事業
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