否認を受けない 貸倒損失の処理方法

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p o r t
決算期前に再確認!
否認を受けない
貸倒損失の処理方法
1 貸倒損失の概要
2 貸倒引当金処理とは
3 個別評価による貸倒引当金
4 一括評価による貸倒引当金
5 貸倒損失の事例検討
森田 務 公認会計士事務所
第 15 号
決算期前に再確認!否認を受けない貸倒損失の処理方法
1
貸倒損失の概要
法人の有する金銭債権が、債務者の資力喪失等により回収できなくなった場合には、そ
の債権額を貸倒損失として貸倒れとなった日の事業年度に損金に算入します。
貸倒れの区分
貸倒れの事由
債権の全部又は一部が法的手続により
切り捨てられた場合
法律上の貸倒れ
損金算入時期
事実が発生したとき
債権の全額が債務者の資産状況・支払能力等からみて
事実上の貸倒れ
経済的に無価値となり回収不能となった場合
明らかになった事業年
度で損金経理したとき
売掛債権で、債務者との取引を停止して
1年以上経過した場合
損金経理したとき
形式上の貸倒れ
1 法律上の貸倒れ
次に掲げる法律上の貸倒れは、その事実の発生した日の属する事業年度の損金に算入し
ます。法律上その債権は消滅していますので、税法上も損金に算入します。損金経理して
いない場合には課税所得の計算上減算する必要があります。
事
由
貸倒損失額
1
会社更生法若しくは金融機関等の更生手続の特例等に関する
法律の規定による更生計画の認可の決定
切り捨てられた金額
2
民事再生法の規定による再生計画の認可の決定
切り捨てられた金額
3
会社法の規定による特別清算に係る協定の認可の決定
切り捨てられた金額
4
破産法の規定による認可の決定
切り捨てられた金額
私的整理による関係者の協議決定で、次に掲げるもの
5
6
債権者集会の協議決定で合理的な基準により
債務者の負債整理を定めているとき
行政機関又は金融機関その他の第三者のあっせんによる
ロ 当事者間の協議により締結された契約でその内容が
イに準ずるとき
イ
債務者の債務超過の状態が相当期間(通常 3 年ないし 5 年)
継続し、その金銭債権の弁済を受けることができないとき
切り捨てられた金額
切り捨てられた金額
書面による債務免除額
Tax Report
1
決算期前に再確認!否認を受けない貸倒損失の処理方法
2 事実上の貸倒れ
法律上は債権が存在しても債務者の資産状況、支払能力等からみてその全額が回収でき
ない場合には、その事業年度で貸倒れとして損金経理により損金算入することができます。
● 貸倒処理可能なケース
⇒ その全額が回収できないとき。
● 貸倒処理不能なケース
⇒ 一部が回収可能である場合、又は担保物があるとき。
※ ただし、平成 11 年 3 月に全国銀行協会連合会が貸出金等に係る貸倒損失の計上の税務
上の取扱いについて、次のとおり照会したところいずれも差し支えない旨の回答を得てい
ます。(法人税関係個別通達)
照
会
内
容
疎明資料
1
担保物が処分されていない場合であっても、その時価以上に先順
位の担保権が設定されている等当該債権者にとって実質的に取分
がないと認められるときは、担保物がないものとして取り扱って
いいか
現況調査書、担保物
評価書、先順位の貸
出残高調査書等
2
破産管財人から配当零の証明がある場合や、その証明が受けられ
ない場合であっても債務者の資産処分が終了し、今後の回収が見
込まれないまま破産終結までに相当期間かかるときには、破産終
結決定前であっても配当がないものとして取り扱っていいか
管財人確認記録、現
況調査書等
3
債務者・保証人等について追求しうる財産がない場合で、1年程
度その行方を追及しても行方不明のときは、そのときに回収不能
が明らかになったものとして取り扱っていいか
興信所調査書、現況
調査書等
4
保証人が生活保護を受けている場合(それと同程度の収入しかな
い場合を含む)で、その資産からの回収が見込まれないときには、
当該保証人からの回収がないものとして取り扱っていいか
現況調査書等
Tax Report
2
決算期前に再確認!否認を受けない貸倒損失の処理方法
3 形式上の貸倒れ
債権が無価値となっていない場合でも、その売掛債権に次の事実が発生した場合には、
備忘価額を控除した残額を貸倒れとして損金経理により損金算入することができます。
形式上の貸倒れは、売掛債権に限られます。この売掛債権には、売掛金、未収請負金や
通常、売掛金といわない未収加工料、広告代理店等の未収手数料、不動産管理業の未収地
代家賃等営業上の債権は含まれますが、固定資産の譲渡による未収金や貸付金又は未収利
息等は含まれません。
事
由
貸倒損失額
1
債務者との取引を停止した時(最後の弁済期又は最後の弁済の
時がその停止をした時以後である場合には、これらのうち最も
遅い時)以後1年以上経過したとき(その売掛債権について担
保物のある場合は除きます)
売掛債権 − 備忘価額
2
法人が同一地域の債務者について有する当該売掛債権の総額
がその取立てのために要する旅費その他の費用に満たない場
合において、当該債務者に対し支払を督促したにもかかわらず
弁済がないとき
売掛債権 − 備忘価額
4 子会社等の整理および再建費用
経営危機に陥った子会社等を整理するためや、倒産を防止して再建するために資金の供
与や債権放棄等の経済的利益の供与を行うことがあります。この利益供与は原則として寄
付金として取り扱われますが、次の要件があれば寄付金として取り扱われません。
なお、子会社等には、その法人と資本関係を有する者のほか、取引関係、人的関係、資
金関係等において事業関連性を有する者が含まれます。
● 子会社等の解散、経営権の譲渡等により債務の引受けその他の損失負担、又は債権放棄等
をしなければ、今後より大きな損失を蒙ることになることが明らかであると認められるた
め、やむを得ずその損失負担等をするに至った等、相当の理由があると認められたとき。
● 子会社等に対して無利息若しくは低利での貸付け又は債権放棄等が、倒産を防止するなど
やむを得ず行われるもので合理的な再建計画に基づくものであるなど、相当の理由がある
と認められたとき
Tax Report
3
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2
貸倒引当金処理とは
前章の貸倒損失は、税法上、損金算入の要件が明確に決められています。従いまして、
その基準に当てはまらない場合には、損金に算入することが出来ません。そこで、税法で
は、将来の貸倒のリスクに備えた貸倒引当金の設定が一定の限度額の範囲において認めら
れています。
貸倒引当金は、現在の経済状況を反映して、売掛金・受取手形等の債権の貸倒れリスク
に備え、その将来の貸倒損失の見積額を計上するものです。また、法人の貸金等の貸倒れ
による見積額として損金経理した貸倒引当金繰入額のうち、繰入限度額に達するまでの金
額は、その事業年度の損金に算入できます。
法人税法においては、金銭債権を、貸倒れのリスクが高いため、債権ごとに貸倒引当金
の繰入限度額を計算する個別評価の金銭債権と、それ以外の債権を一括して繰入限度額を
計算する一括評価の金銭債権に区分しています。
貸倒引当金に関する計算は、一括評価は「貸倒引当金の損金算入に関する明細書」、個別
評価は「個別評価する金銭債権に関する明細書」を使用します。
個別評価の金銭債権
金銭債権
一括評価の金銭債権
Tax Report
4
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3
個別評価による貸倒引当金
個別評価金銭債権とは、その事業年度終了の時に金銭債権の一部について貸倒れその他
これに類する事実による損失が見込まれる金銭債権をいいます。この個別評価金銭債権は
次のように区分され、それぞれについて損失の見込額の計算方法が定められています。な
お、繰入限度額は個々の債務者ごとに計算します。
また、
「貸倒れその他これに類する事実」には売掛金、貸付金その他これらに類する金銭
債権の貸倒れのほかに、保証金や前渡金等について返還請求した場合の返還請求権が回収
不能となった金額も含まれます。
貸倒引当金の区分
繰入限度額
1
法令手続き等によりその弁済が長期棚上された金銭債権
2
債務超過状態の継続等による一部取立不能の金銭債権
3
法的手続き等の申立て等が生じている金銭債権
5年を超えて弁済される金額
取立不能額
個別評価金銭債権の額の 50%
1 法令手続き等によりその弁済が長期棚上された金銭債権
1
長期棚上の要件
法人の有する個別評価金銭債権の債務者について、次の特定の事由が生じたことにより
その弁済を猶予され、又は賦払いにより弁済されることとなった金銭債権をいいます。
特
定
の
事 由
1
会社更生法若しくは金融機関等の更生手続の特例等に関する法律の規定による更生計画
の認可の決定
2
民事再生法の規定による再生計画の認可の決定
3
会社法の規定による特別清算に係る協定の認可の決定
私的整理による関係者の協議決定で、次に掲げるもの
4
イ 債権者集会の協議決定で合理的な基準により債務者の負債整理を定めているもの
ロ
行政機関又は金融機関その他の第三者のあっせんによる当事者間の協議により締結
された契約でその内容がイに準ずるもの
Tax Report
5
決算期前に再確認!否認を受けない貸倒損失の処理方法
2
繰入限度額の計算
貸倒引当金繰入限度額 = A − B − C
A
対象金銭債権
B
特定の事由が生じた事業年度終了の日の翌日から5年を経過する日までの弁済予定金額
C
担保権の実行その他により取立て等の見込みがある金額
2 債務超過状態の継続等による一部取立不能の金銭債権
1
対象債権の要件
法人の有する個別評価金銭債権の債務者について、債務超過の状態が相当期間(おおむね
1 年以上)継続し、その事業に好転の見通しがないこと、災害、経済事情の急変等による多
大な損失が生じたこと、その他の事実が生じていることにより、その一部の金額について
取立て等の見込みがない金銭債権をいいます。
2
繰入限度額の計算
貸倒引当金繰入限度額 = A − B
A
対象金銭債権
B
担保権の実行その他により取立て等の見込みがある金額
Tax Report
6
決算期前に再確認!否認を受けない貸倒損失の処理方法
3 法的手続き等の申立て等が生じている金銭債権
1
対象となる金銭債権の要件
法人の有する個別評価金銭債権の債務者について、次の事実が生じた場合の金銭債権を
いいます。
特
定
の
事 由
1
会社更生法若しくは金融機関等の更生手続の特例等に関する法律の規定による更生手続
開始の申立て
2
民事再生法の規定による再生手続開始の申立て
3
破産法の規定による破産手続開始の申立て
4
会社法の規定による特別清算開始の申立て
5
手形交換所による取引停止処分
2
繰入限度額の計算
貸倒引当金繰入限度額 = ( A − B − C ) × 50%
A
対象金銭債権
B
実質的に債権と見られない金額
C
担保権の実行、金融機関等の保証債務の履行その他により取立て等の見込みがある金額
※
実質的に債権と見られない金額とは、売掛債権等のうち同一人に対する相殺的関係に
ある債務をいいます。これらの債権については万が一貸倒となった場合でも、債務を
返済しないことにより貸倒を防止できるため、貸倒引当金を設定することはできない
こととなっています。
Tax Report
7
決算期前に再確認!否認を受けない貸倒損失の処理方法
4
一括評価による貸倒引当金
一括評価金銭債権とは、売掛金、貸付金その他これらに準ずる金銭債権(個別評価金銭
債権を除く)で、貸倒れによる損失が見込まれる金銭債権をいいます。一括評価金銭債権
の繰入限度額は、事業年度終了の日における金銭債権に貸倒実績率を乗じて計算します。
なお、資本金 1 億円以下の中小法人については、法定繰入率と貸倒実績率との選択適用が
認められています。
1 一括評価金銭債権
一括評価金銭債権とは、上述のとおり「売掛金、貸付金その他これらに準ずる金銭債
権」であり、「その他これらに準ずる金銭債権」とは次のような債権をいいます。
1 未収の譲渡代金、未収加工料、未収請負金、未収手数料、未収保管料、未収地代家
賃又は貸付金の未収利子で、益金に算入したもの
2 他人のために立替払いした立替金
3 未収の損害賠償金で益金に算入したもの
4 保証債務を履行した場合の求償権
一括評価金銭債権には次のようなものは含まれません。
1 預貯金及びその未収利子、公社債の利子、未収配当その他これに類する債権
2 保証金、敷金、預け金その他これに類する債権
3 手付金、前渡金等で資産取得の対価又は費用の支出に充てる費用
4 仮払金、立替金等で将来精算される費用
5 雇用保険法等に関する法律等の法令の規定により交付を受ける給付金等の未収金
6 仕入割戻しの未収金
Tax Report
8
決算期前に再確認!否認を受けない貸倒損失の処理方法
2 繰上限度額の計算
1
貸倒実績率
貸倒引当金繰入限度額
=
一括評価金銭債権の合計額
×
貸倒実績率
貸倒実績率は、その法人の過去3年間における貸倒損失の発生額に基づき次の算式によ
り計算します。
貸倒実績率=
(A+B+C)×
12
各事業年度の月数合計
D÷各事業年度の数
A
過去3年間の売掛債権等の貸倒による損失額
B
各事業年度の個別評価分の貸倒引当金繰入額
C
各事業年度の個別評価分の貸倒引当金戻入額
D
過去3年間の各事業年度終了時の一括評価金銭債権等の簿価の合計
2
法定繰入率
(資本金1億円以下の中小法人に限定)
貸倒引当金繰入限度額=(A−B)×法定繰入率
A
一括評価金銭債権の合計額
B
実質的に債権と見られない金額
事業の区分
繰入率
1
卸売業及び小売業(飲食店及び料理店業を含み、4の割賦販売小売業を除く)
10/1000
2
製造業(電気、ガス、熱供給、水道及び修理業を含む)
8/1000
3
金融及び保険業
3/1000
4
割賦販売小売業及び割賦あっせん業
5
その他の事業
13/1000
6/1000
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決算期前に再確認!否認を受けない貸倒損失の処理方法
貸倒損失の事例検討
5
3 貸倒実績率の計算例
Q1
合 理 的 な基 準 による切 捨 て
会社更生法の規定による更生手続が進行中であるA社は、同法第 47 条第 5 項(更正債権
等の弁済の禁止)の規定により、更生計画認可前に、裁判所の許可を受けて、次により 250
万円以下の少額債権の弁済をすることとしました。
1
総額が 50 万円以下の債権は全額を弁済する。
2
総額が 50 万円を超え 250 万円以下の債権については、50 万円を超える部分
の金額に相当する債権を放棄することを条件として、50 万円を支払う。これ
による弁済を受けない場合は、その金額を更生債権として更生計画に組み入れ
ることとし、債権者はあらかじめ定められた日までにそのいずれによるかの意
思表示をする。
この場合により 50 万円の弁済を受けることを選択した債権者が放棄することとなるそ
の 50 万円を超える部分の金額に相当する債権については、貸倒れとして損金の額に算入
することができますか。それともA社に対する寄附金となるのでしょうか。
A
貸 倒 れとして損 金 の額 に算 入 されます。
本件では、裁判所の許可を受けた更生手続の一環として 50 万円を超える部分の金
額に相当する債権の放棄が行われるものですから、たとえ債権者が債権の一部を放棄
することを選択したとしても、それは経済的な価値判断に基づくものであり、放棄さ
れた部分の債権相当額を債務者に対する寄附金とすることは相当でないと考えられ
ます。
Q2
子 会 社 に対 する債 権 放 棄
A社(3 月決算)は、子会社であるB社に対し営業資金 5,000 万円の貸付を行ってい
ますが、B社はここ数年財務内容が悪化しています。
A社は、B社の財務内容を改善させる目的から、平成X年 3 月 20 日付で書面により債
Tax Report
10
決算期前に再確認!否認を受けない貸倒損失の処理方法
務免除の通知を行いました。
B社は、債務超過の状態に陥っているわけではなく、債権放棄を行ったのはA社のみで
す。この債務免除につき平成X年 3 月期において貸倒損失が認められますか。
A
子 会 社 の状 況 判 断 により認 められることもあります。
子会社等を整理もしくは再建するに際して、親会社等が子会社等に供与する経済的
利益は、所定の要件を満たす場合には、これを寄付金としない取扱いとなっています。
子会社等の整理もしくは再建のいずれの場合にも、一般的には債務超過等のため資金
繰りが逼迫しており、経営危機に陥っていることを前提としています。しかし、子会
社が債務超過の状態ではないが、許認可の免許や登録が取り消され、子会社が倒産に
至ることが必至であり、親会社が今後より大きな損失を蒙ることとなるような場合に、
これを回避するために、合理的な再建計画に基づき、やむを得ず行う債権放棄は寄附
金とはされず、貸倒損失と認められるものと思われます。
Q3
支 払 拒 絶 を受 けている債 権
メーカーである A 法人は、従来、B 法人を代理店として製品の販売をしていましたが、
諸般の事情から一方的に B 法人との代理店契約を破棄し、C 法人と代理店契約を締結して
取引を始めました。
このため、B 法人との間に紛争が生じ、A 法人が B 法人に対して有していた売掛金につ
いて B 法人が支払を拒絶しています。
A 法人はこの売掛金について「一定期間取引停止後弁済がない場合等の貸倒れ」に準じ
て貸倒処理をすることができますか。
A
当該売掛金について法人税基本通達 9-6-3 により
貸倒処理をすることはできません。
法人税基本通達 9−6−3 は、回収不能の判断について一種の外形基準を適用して
簡素化を図ったものですから、照会事案のように当事者間に営業上の紛争が生じ、そ
のために事実上回収困難になっている債権についてまで、これを適用して損金算入を
認めるものではありません。
Tax Report
11
決算期前に再確認!否認を受けない貸倒損失の処理方法
Q4
保 証 債 務 の貸 倒 損 失 時 期
当社は、その取引先であるXに依頼され、その銀行借入について連帯保証をしていたが、
Aが倒産し行方不明となりました。
銀行から保証債務の履行を請求され、一度に支払うことができないので、5年にわたっ
て分割で支払うこととしました。
全額で 6,000 万円を支払うこととなりますが、保証債務が確定しており、Aに対する
求償権は行使できない状況なのですが、6,000 万円を損失に計上できますか。
A
毎期、返済の都度、返済相当額を貸倒損失として計上することは可能
ですが、全額を貸倒処理をすることは認められません。
法人の有する金銭債権につき、その債務者の資産状況、支払能力等からみてその全
額が回収できないことが明らかとなった場合には、その明らかになった事業年度にお
いて貸倒れとして損金経理をすることができます。
なお、保証債務は、現実にこれを履行するまでは偶発債務に過ぎず、これを履行し、
かつ、それにより取得する求償権につき貸倒れとなることが確実であると認められる
としても、その履行前において貸倒れの対象にすることはできません。
したがって、保証債務の履行とは、債務の肩代りをいうのではなく、実際にその肩
代りにより返済することをいうものと解されています。今後 5 年間にわたり返済の
都度、その返済相当額を貸倒損失として計上することが認められます。
Q5
担 保 物 件 がある場 合 の貸 倒 処 理
当社は、A社に対して貸付を行っており、A社所有の土地建物に抵当権を設定していま
すが、この抵当権は 4 番抵当となっています。
A社が倒産したため、その貸付金について貸倒処理を行いたいと考えています。担保物
の資産価値は低く、劣後抵当であるため、貸金の全額が回収できないと考えられます。貸
倒処理は可能でしょうか。
A
一部でも回収の見込みがあるときは、
その債権を貸倒処理することはできません。
法人の有する金銭債権につき、その債務者の資産状況、支払能力等からみてその全
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12
決算期前に再確認!否認を受けない貸倒損失の処理方法
額が回収できないことが明らかとなった場合には、その明らかになった事業年度にお
いて貸倒れとして損金経理をすることができます。
この場合において、当該金銭債権について担保物があるときは、その担保物を処分
した後でなければ貸倒れとして損金経理をすることはできません。
しかしながら、その担保物に、先順位の抵当権等が担保物の時価を超える金額で付
されているときのように、劣後的かつ名目的で無価値である場合は、その担保物が評
価が正しい限り、この取扱いによりその金銭債権の貸倒れの処理が認められます。
その担保物から幾分かの回収が見込まれる場合は、担保物を処分するまでは貸倒れ
の処理は認められず、担保物からの回収見込額があり、担保物の処分がなされていな
いときは、個別評価金銭債権に係る貸倒引当金の繰入によることとなります。
Q6
破 産 債 権 の貸 倒 処 理
当社は、取引先であるA社に対して売掛債権を有していますが、このほどA社が破産す
ることとなりました。
そこで、このA社に対する売掛債権につき貸倒損失を計上することを検討していますが、
破産債権については、どの段階で貸倒処理をすることになりますか。
A
最終的に回収不能という状態に至ったときに、
貸倒損失を計上することになります。
法人の有する金銭債権について会社更生法の規定による更生計画の認可の決定が
あった場合又は民事再生法の規定による再生計画の認可の決定があった場合におい
て、これらの決定により切り捨てられることとなった部分の金額については、その事
実が発生した日の属する事業年度において貸倒損失として損金の額に算入すること
とされています(法人税法基本通達 9-6-1)。
しかし、この法人税法基本通達 9-6-1 の規定には、破産法の規定による破産債権
について何ら規定されておりません。これは、破産法の規定による破産債権について
は、切捨てという制度がないためであり、税務上は、最終的に回収不能という状態に
いたったときに、貸倒損失を計上することとになります。
したがって、破産廃止の決定や破産終結の決定があった場合には、それにより回収
不能額を貸倒損失として処理することができます。
Tax Report
13
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Q7
取 立 費 用 に満 たない売 掛 金 の貸 倒
T市には当社の販売先としてA社、B社があります。このうち、A社に売掛金の支払い
を再三督促したにもかかわらず、弁済がありません。
平成X年 3 月期の期末日現在でA社に 10 万円、B社に 12 万円の売掛金を有しています
が、T市へ 1 回出張するのに 15 万円の旅費等がかかります。
A社に対する売掛金と 1 回の出張に要する旅費等 15 万円とを比較して、平成X年 3 月
期の確定決算に際して、A社に対して有する売掛金 10 万円の額から備忘価額 1 円を控除
した残額を貸倒れとして損金経理したいと考えていますが、認められるでしょうか。
A
同一地域の全部の債務者に対する売掛債権の残高の総額と
その債務者に係る取立費用を比較することが必要です。
法人税法基本通達 9-6-3 の(2)において、法人が同一地域の債務者について有
するその売掛債権の総額がその取立のために要する旅費その他の費用に満たない場
合において、その債務者に対し支払いを督促したにもかかわらず弁済がないときは、
その債務者に対して有する売掛債権について、その売掛債権の額から備忘価額を控除
した残額を貸倒れとして損金経理したときは、これを認めることとしています。
この取扱いは、「同一地域の債務者について有するその売掛債権の総額」と規定して
いるので、A社に対して有する売掛金と 1 回の出張に要する旅費等とを比較するの
ではなく、A社およびB社に対して有する同一地域の売掛金の合計額 22 万円と 1
回の出張に要する旅費等 15 万円を比較するのであり、事例の場合には、同一地域の
売掛金の合計額がその旅費等を上回っているので、A社に対して有する売掛金を貸倒
れとして損金経理することは認められません。
なお、今後の時の経過およびA社の資産状況、支払能力等の悪化次第では、法人税
法基本通達 9-6-3(1)の取引停止後 1 年以上経過したことによる貸倒を検討する
ことができます。
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14
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Q8
貸 倒 損 失 の計 上 時 期
A社(3 月決算)は、取引先B社に対して売掛金 100 万円に係る約束手形を受領して
いたが、平成 20 年 3 月 25 日に不渡りとなり、B社は銀行取引停止処分となったため(事
実上の倒産)、当該売掛金を回収することが不可能となりました。
その後、B社はA社と取引を行うもののA社に対する買掛金を支払わなかったため、A
社はB社の資産やB社代表取締役の個人資産等を調査し、平成 20 年 12 月 1 日に開催の
取締役会で債権放棄を決めました。
貸倒損失の計上時期はいつが適当でしょうか。
A
債権につてその回収をすることができないと明らかとなった時点で
貸倒損失を計上します。
A社は、B社が銀行取引停止処分を受けた以後も引き続き取引を継続しています。
従って、平成 20 年 3 月期において貸倒損失とするのは妥当性に欠けます。
A社は、B社の資産および代表取締役の個人資産を調査し平成 20 年 12 月 1 日
に開催した取締役会で債権放棄を決め、B社に対し債権放棄を通知しています。この
状況を考えれば、債権についてその回収をすることができないことが明らかとなった
日は、平成 20 年 12 月 1 日であり、平成 21 年 3 月期において貸倒損失を計上す
べきです。
TaxReport
決算期前に再確認! 否認を受けない貸倒損失の処理方法
【著 者】日本ビズアップ株式会社
【発 行】森田 務 公認会計士事務所
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