岡 田 齊 夫 - 日本農業研究所

(略歴)昭和 36 年
昭和 36 年
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平成 7年
平成 7年
平成 13 年
平成 21 年
平成 24 年
おか
だ
岡
田
むね
お
齊 夫
(年齢 78 歳)(昭和 10 年5月9日生)
大阪府立大学大学院農学研究科修士課程修了
愛媛大学農学部助手
農林省に出向、中国農業試験場(研究員)
農学博士(九州大学)の学位を取得
インドネシア中央農業研究所派遣職員
農林水産省農事試験場環境部虫害第一研究室長
農林水産省北海道農業試験場生産環境部長
農林水産省農業環境技術研究所環境生物部長
農林水産省農業環境技術研究所環境研究官
農林水産省退職
生物系特定産業技術研究推進機構プロジェクト研究リーダー
日本植物防疫協会研究所長
出光興産株式会社アグリバイオ事業部技術顧問
出光興産株式会社 退職
研究業績の題名
天敵微生物を用いた生態系調和型害虫防除法の研究
業績紹介
岡田齊夫氏は、天敵微生物を利用した環境に優しい生態系調和型の害虫防除法について、ハスモン
ヨトウと核多角体病ウイルスを材料に、基礎から応用まで詳細な研究を行うとともに、それの実用化
のためのシステムづくりを積極的に行った。このことは微生物農薬の研究開発と実用化のモデルとし
ても、極めて大きな足跡である。
1960 年代前半、高度経済成長時代、日本農業は大きな変革をした。それに伴い病害虫の発生様相も
変化をきたし、かっては大した病害虫と思われていなかった病害虫が、農業生産に大きな影響を及ぼ
すようになってきた。
その典型がハスモンヨトウであり、
特に老齢幼虫には効果のある農薬が少なく、
防除に困難をきたしていた。さらに戦後の農業の牽引役であり、重要作物病害虫防除に優れた効果を
示した化学合成農薬は、1960 年代後半から環境汚染、人畜への影響、農薬抵抗性病害虫の出現など様々
な問題を顕在化させ始めてきた。
氏は、このような問題を解決するのに、病害虫に対する自然制御の機構を妨げない、天敵微生物に
よる害虫防除の研究に 1964 年に着手した。そして広範な作物に甚大な被害を与えるハスモンヨトウを
対象として、各種の天敵微生物の試験から、核多角体病ウイルスを選び防除の研究を開始した。この
研究を 1971 年から4年間行われた農林水産技術会議事務局の別枠研究「害虫の総合的防除法に関する
研究」の中でさらに発展させ、ウイルスの効果試験では、濃厚ウイルス液の超微量散布法を開発する
とともに、ハスモンヨトウの大量継代飼育のために、年間を通して安定して供給できる、寄主植物よ
りも発育に好適な人工飼料の開発、罹病虫飼育容器や病死虫収穫装置の創作など、独創的な手法によ
り実用化への展望を得た。この研究成果は後年、日本化薬株式会社の申請によって「ハスモン天敵」
の商品名で農薬登録された。さらに氏は、イネ科作物害虫のアワヨトウ、野菜・花きのシロイチモジ
ヨトウを天敵ウイルスで、野菜・畑作物のヨトウガを卵寄生蜂と天敵ウイルスで、水稲のウンカ・ヨ
コバイ類を天敵糸状菌で防除する研究を行い、それらについても実用化可能なレベルにまで進めた。
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さらに特筆すべきは、技術として完成していた微生物農薬を現地での利用が可能となるよう、行政
に働きかけ、そのシステムづくりに貢献したことである。これまで防除が困難であったハスモンヨト
ウに対する天敵ウイルス利用について、氏は農林水産省農産園芸局植物防疫課に検討を依頼した。お
りしも同課は病害虫防除に係る社会的ニーズに応えて、難防除病害虫に対する高度防除技術確立事業
を 1984 年から実施し、その一環として上記の生物的防除技術の実用規模での防除試験事業が多数の県
で行われることとなった。本事業の結果、生物的防除による効果が農業関係試験研究機関及び農家で
認められ、多数の研究機関で生物的防除に関する研究が行われるまでに発展した。さらに氏は、生物
的防除技術を定着させるためには民間企業による農薬登録取得、生産、販売が必要であると考え、生
物農薬独自の農薬登録検査基準の必要性を行政機関に提言するとともに、その策定に貢献した。この
基準の策定は民間企業における生物農薬開発を加速させ、基準の完成から 16 年経過した今日、約 100
剤の生物農薬が登録され、環境保全型病害虫管理に使用されている。
以上のように氏は、日本における生物的防除技術開発研究において、多くの先駆的な成果を上げる
とともに、生物農薬の実用化や後進の育成など、学術研究及びわが国農業の発展に顕著な功績をあげ
てきている。
(浅賀宏一選考委員記)
過去に受けた主な賞
昭和 53 年 日本応用動物昆虫学会賞
昭和 61 年 農林水産省職員功績者表彰(農林水産大臣賞)
平成 4年 環境調査センター環境賞
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