十六アジアレポート 2016 年 8 月号

十六アジアレポート 2016 年 8 月号
十六アジアレポート 2016 年 8 月号
2016 年 8 月 1 日
十六銀行 海外サポート部
《 目
次 》
<駐在員レポート>
1.シンガポール: 「シンガポールのアキレス腱」
シンガポール駐在員事務所
2.バンコク: 「『Mfair バンコク 2016 ものづくり商談会』を開催」
3.上海: 「『中国ビジネス交流会 in 青島 2016』を開催」
4.香港: 「香港会議展覧中心」
バンコク駐在員事務所
上海駐在員事務所
香港駐在員事務所
5.ベトナム: 「ベトナムの不動産事情」
十六銀行 海外サポート部 (ベトナム投資開発銀行ジャパンデスク) 中村 敦
6.インドネシア: 「『 3 in 1 制度』の廃止とその後の状況」
十六銀行 海外サポート部(バンクネガラインドネシア ジャパンデスク) 三浦 武雄
7.為替相場情報
本書中の情報は情報提供のみを目的として作成されたものであり、何らかの行動を勧誘するものではあ
りません。ご利用に関しては全てお客様御自身でご判断くださいますよう、宜しくお願い申し上げます。
当資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成されていますが、当行及び執筆者はその正確性を保
証するものではありません。また、本書中の情報は、法律上、会計上、税務上の助言を含むものではあ
りません。法律上、会計上、税務上の助言を必要とされる場合は、それぞれの専門家にご相談ください。
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十六アジアレポート 2016 年 8 月号
1.シンガポール:「シンガポールのアキレス腱」
シンガポール駐在員事務所
シンガポールのアキレス腱、それはなんといっても「水」でしょう。シンガポールは、ほぼ赤道直下
に位置し、熱帯雨林気候に属しますので、年間降水量は優に 2,000 ミリを超え、世界の年間降水量平均
(880 ミリ)と比較しても 2 倍以上あるのです。それならば水資源は十分に確保できそうなのですが、
なぜアキレス腱になってしまうのか。今回は、シンガポールと「水」の関係、そして「水」に対する取
り組みに見るシンガポールという国の凄みをご報告したいと思います。
1.アキレス腱たる理由
独立した 1965 年には 200 万人程度だったシンガポールの人口は、政府が積極的な外資誘致政策を採
ってきたこともあり、2015 年には 554 万人にも達しています。増加する人口に比例して、水需要も増
加の一途を辿っているというわけです。また、国土が狭く、高低差もほとんどないため、河川や湖の保
水能力が低く、貯水池を増やしても、水の供給量が急激に増加することは期待できません。
このように、地形的にも水資源に乏しいシンガポールは、独立以前より隣国マレーシア(当時のマラ
ヤ連邦)からの水供給に大きく依存してきました。ところが独立後、両国間に問題が起こるたびに、マ
レーシアが水供給停止の可能性をちらつかせるなど、外交カードとして使われるようになりました。そ
うでなくとも水資源の確保が自国の生命線であることを認識しているシンガポールは、下水再生水や海
水淡水化の開発を進め、マレーシアとの水供給契約が期限を迎える 2061 年までに、水の自給自足体制
を確立すると発表し、50 年近く先の目標に向かって 1 つ 1 つ課題を克服しています。
2.国家の4つの蛇口
シンガポールでは、「国家の 4 つの蛇口」と呼び、現在から将来に亘り持続可能な水の供給源として
以下の 4 つを掲げ、2060 年度の自給自足化に向けて計画的に準備を進めています。2060 年度における
供給源別の目標比率と併せて見ていくこととします。
① 貯水池
【供給源別の供給比率】
貯水池に溜まった雨水の再利用
供給源
現在
2060 年度目標
です。シンガポールには 17 にも
1 貯水池
20%程度
20%程度
のぼる貯水池があり、実に国土
2 マレーシアからの輸入
40%程度
0%
の半分以上を占めています。こ
3 ニューウォーター
20∼30%程度
50%程度
こに溜まった雨水を取水して国
4 海水淡水化
10%以下
30%程度
内需要を賄っています。マリー
出所:峯山政宏著「なぜ?シンガポールは成功し続けることができるのか」から作成
ナ・ベイ・サンズの足元に広が
るマリーナ・ベイも、実は外海
との間に設けられた「マリー
ナ・バラージ」と呼ばれる堰を
設置することにより、内陸部側
を淡水の貯水池としたものです。
② マレーシアからの輸入
右表の通り、現在ではまだ、こ
の比率が最も大きいですが、
ニューウォーター・ビジター・センター
マリーナ・バラージ
2060 年には全く依存することなく、全供給量を自国で賄えるよう、確実に計画を進めています。
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③ ニューウォーター(NEWater)
国内の下水を再生処理し、工業用水のみならず、飲用水にも利用するというものです。なんと、
この計画のマスタープランが作成し始められたのは 1972 年からだそうで、シンガポールは独立
からわずか 7 年後にこの研究に着手したことになります。コストや技術面の問題をクリアするた
め、時間がかかったようですが、2003 年からは飲用水の原水の一部として、利用が開始されてい
ます。また国内には、国民の理解促進を図るための施設「ニューウォーター・ビジター・センタ
ー」も開設されており、ニューウォーターの安全性や水に関する学習の場としての役割も果たし
ています。筆者も実際に訪問し、帰りに配布される 100%純水のニューウォーターを飲んでみま
したが、当然ながら全くの無色無臭でした。余談ではありますが、下水を浄水加工するろ過処理
の過程では、日系企業の技術が大きく貢献しているそうです。
④ 海水淡水化
2005 年に初のプラントが操業を開始していますが、まだまだ高コストで大量の水需要を賄うこと
は難しいようです。個人的には、ここでも日本の技術の貢献を期待してしまうところです。
3.「弱み」を「強み」に変える逆転の発想
シンガポールでは、2008 年から「シンガポール国際水週間
(Singapore International Water Week)」なるイベントが開催
されています。隔年で開催されるこのイベントでは、水問題解決
のためのハイレベル会合「Water Leaders Summit」や「水」に関
する東南アジア最大規模の見本市「Water Expo」、各種ビジネス
フォーラム等が行われます。今年はちょうど開催年であり、7 月
10∼14 日に行われました。シンガポールでは、こうした大規模な
イベントを自国で開催することで、広く世界から水に関連する
最新の技術や情報を収集することはもちろん、逆に自国がこれ
Water Expo のシンガポールブース
まで研究・開発して培った技術を世界に向けて発信する場としても活用しています。実際シンガポール
には、これまでの長年に亘る水資源開発への取り組みによって、国内外の水関連企業、約 180 社が集積
しているため、政府はこれを更に発展させ、シンガポールを最先端の水関連技術の開発拠点とし、新た
に開発された技術を世界に輸出する「グローバル・ハイドロ・ハブ」としての地位を確立させることを
目指しているのです。このように、自国の「弱み」を「強み」に変え、まさに逆転の発想でビジネスモ
デルを作り出してしまうシンガポールのしたたかさには、舌を巻くばかりです。
4.「水」への取り組みに見るシンガポールの凄み
シンガポールという国は、水資源を持たないにもかかわらず、増加する水需要に対して、国内の限ら
れた水源を用いた自給自足体制を確立すべく、長年、重要な課題として取り組んできました。安全保障
上の観点からも必要に迫られていたとは言え、こうした自国の弱点をしっかりと認識し、それに対して
常に危機感を持ち、国家として何に取り組まなければならないのかを熟知した上で、問題の根本を解決
する政策を打ち出す「構想力」、そしてどんなに長い年月をかけてでも課題を解決しようとする「計画
性」は、称賛に値すると思います。
さらには、そうした努力から得られた果実、つまり世界から水関連の研究開発拠点を誘致し、そこで
生まれた新たな技術を、世界に向けて売り出すというビジネスにまで変えてしまう「発想力」、そして
これら一連の動きを国家として一丸となって取り組む「実行力」まで含めて、改めて凄みを感じます。
この国のことですから、きっと今後も確実に課題を克服し、2061 年には完全に水の自給自足体制が
確立されていることは間違いないと言えるでしょう。
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2.バンコク:「『Mfair バンコク 2016 ものづくり商談会』を開催」
バンコク駐在員事務所
6 月 22 日から 24 日までの 3 日間、バンコク市内
最大規模の展示場「BITEC」にて、「Mfair バンコク
2016 ものづくり商談会」が開催されました。この商
談会は、製造業のマッチングで実績のある Factory
Network Asia Thailand 社(以下、FNA)と展示会開
催に実績のある Reed Tradex 社が主催し、当行をは
じめとする全国の地方銀行、自治体など 35 団体の共
催により開催される製造業のマッチングイベントで
す。
また、当行のタイにおける提携銀行であるカシコ
ン銀行をはじめとしたタイローカル銀行も協賛し、
在タイ日本国大使館、JETRO バンコク事務所、盤谷
日本人商工会議所、タイ投資委員会(BOI)等も後援
するなど、日タイ両国の金融機関、政府機関、経済
団体からも非常に高い注目を集めている商談会です。
タイでは 3 年連続 3 回目の開催となりますが、製
造業及び製造業関連企業を中心に 191 社が出展し、
<開会式の様子>
会期中の一般来場者は約 7 千人に達するなど、大変
盛況のうちに閉幕致しました。
■商談会の特徴
当商談会は、商談会参加者同士の商談マッチング
だけでなく、一般来場者と即席の商談を設けること
が可能です。従って、一般来場者数の確保は商談機
会の増加に直結する大きな要因ですが、昨年より、
ASEAN 最 大 級 の 製 造 業 向 け 総 合 展 示 会
「Manufacturing Expo 2016」との併催を実現したた
め、「Manufacturing Expo 2016」の来場者が当商談
会へも足を運ぶようになったことで、一般来場者数
<会場の様子>
を相応に確保できるようになりました。
今年からの新たな取り組みとしては、ビッグバイ
ヤーブースを設置したことがあげられます。ビッグバイヤーとして、日立オートモーティブシステム
ズ㈱、セイコーインスツル㈱、セイコープレシジョン㈱、曙ブレーキ工業㈱等が出展し、商談会出展
企業が自社の製品やサービスを直接自由にアピールできる機会が設けられました。
また、当商談会の最大の特徴としては、商談件数の多さがあげられます。商談会出展企業から販売
先、調達先等のニーズを事前に募集して、主催者がマッチングをコーディネートしますが、FNA のコー
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ディネートには定評があります。一般来場者との即席の商談も含め、会期中の総商談件数は 3,823 件
となりました。
■出展企業様の感想
今回、当行を経由して当商談会に出展を申し込み
頂いたお取引先様は、それぞれ、自動車部品製造、
機械製造、樹脂製品製造、太陽光発電パネル販売を
主業とされていました(申込方法については後述)。
出展の目的としては、各社様とも、新たな販売先、
サプライヤーの獲得につながるような有効な商談に
多数取り組めることを期して当商談会に出展してい
ることはもちろんですが、例えばタイに進出してま
だ数年しか経っていないお取引先様は、自社の知名
<会場の様子>
度をアップさせることも大きな目的であると話して
おられましたし、競合他社の動向などの情報収集も目的の一つであると考えるお取引先様もいらっし
ゃいました。
商談会終了後の行ったアンケートでは、お取引先様によって 1 日の商談件数は 2∼10 件と開きはあ
るものの、今後のビジネスに資するような有効な商談件数については、各社様とも 0∼2 件にとどまり
ました。
また、商談会の手ごたえ等をヒアリングしたところ、
「直接ビジネスに結びつく面談はほとんどなか
った」、「自社の認知度を高めたいとの思いから出展したが、前回と同じ顔ぶれが多かった」との感想
も頂く一方で、
「短期間に数多くの潜在顧客と面識を得ることができたので、次回も出展したい」との
意向も伺いました。
■出展のメリットは?
たしかに、商談会形式のイベントにおいても、有
効な商談機会に出会える確率はそれほど高くない
かもしれません。
しかしながら、タイ国内において、約 200 社の企
業が出展し、多数の一般来場者も見込める商談会イ
ベントは、当商談会をおいて他にはありません。注
目の高いイベントであるうえに、5 月初旬頃より、
出展企業の情報が掲載されている商談会のガイド
ブックが各方面に相当数配布されることから、自社
<カシコン銀行もブース出展>
の知名度 UP、自社 PR を図るうえでは、最適のイベ
ントではないかと思います。また、開催期間中に商談を重ねる中で、顧客のニーズと自社製品・技術
のミスマッチが把握でき、課題を発見できることもあろうかと思います。
当商談会は、来年も同時期に開催予定です。タイに拠点がない日本企業も出展可能です。例年ですと
11 月中旬から出展企業の募集が開始されますが、共催者経由で申し込むと出展料の割引がありますの
で、ぜひ当行にお問い合わせ下さい。
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3.上海:「『中国ビジネス交流会 in 青島 2016』を開催」
上海駐在員事務所
7 月 8 日(金)に中国・青島市のクラウンプラザ青島にて「中国ビジネス交流会 in 青島 2016」を開
催いたしました。今回は、この交流会の様子をご案内します。
■ 「基幹システム共同化」参加行と合同で開催
今回の交流会は、地方銀行の基幹システム(預
金や外為などの勘定系システムやデータ分析など
の情報系システム)を共同で開発・運用するプロ
ジェクトである「基幹システム共同化」への参加
行である常陽銀行、百十四銀行、南都銀行、山口
フィナンシャルグループと合同で開催しました。
この枠組みで開催する交流会は昨年 12 月のベ
トナム・ホーチミンに続き 3 回目となります。今
回は中国に進出している日系企業 40 社 56 名が参
加し、情報交換や企業交流を積極的に行っていた
だきました。
青島へは上海から飛行機で約 2 時間、中部国際空港か
中国国内では上海以外に拠点を有する地方銀行
ら約 2 時間 30 分で到着します。
(百度地図より作成)
は少なく、青島市に支店を有する山口銀行の協力
の下、交流会開催に至りました。当行が主催・共催する交流会等を青島市で開催することは今回が初め
てとなりますが、各行が協力し、日本各地に親会社を有する現地法人の方に、効率的な情報収集と有効
な面談を行っていただくことを今回の交流会の目的として開催致しました。
■ 参加企業の所在地と業種
今回の交流会へ参加頂いたお客様は、青島へ進出している現地法人が大多数でしたが、一部のお客
様は青島市と同じ山東省の煙台市や、遼寧省の大連市からもご参加いただきました。業種別では食品関
連(約 17%)、製造業のうち自動車関連(約 15%)、物流業(約 11%)、繊維製造業(約 9%)、製
造業のうち自動車以外(約 33%)、その他(システム・卸売・検査等)が(約 15%)となり、当地で
古くから盛んな食品関連のお客様のご参加が目立ちました。
■ 第一部のセミナー、第二部交流会の二部構成
第一部のセミナーでは清華大学・野村総研中国研究センター理事・副センター長の松野豊氏より「中
国の変化と日本企業の対応」をテーマに講演していただきました。各種マクロ統計データや講師の経験
も踏まえて、経済成長率 6%が可能であろうという見解と根拠を説明していただきました。
ご参加者からは「中国の変化を理解するのに役立つ内容であった」、「中国での経験談も踏まえて
おり、納得できる内容であった」と好評でした。今回は大きなテーマとして「経済情勢」についてのセ
ミナーでしたが、国際情勢や開催地・参加者によって、求める内容が異なるものと考えています。今後
もセミナー毎に、多くの方に関心を持っていただけるようなテーマの選別を行ってまいります。
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第二部ではご参加頂いたお客様同士の情報交換の場として、また今後のビジネスに繋がる面談とな
ることを目的として交流会を行いました。限りある時間内で効率的に名刺交換ができるように、お客様
には事前に参加者リストを配布し、主催者が名刺交換ニーズを聞き取り、極力同じテーブルで面談する
ことができるよう席をセッティングしました。同じテーブルにならなかった場合には、各金融機関担当
者が窓口となって、円滑に面談することができるようフォローいたしました。
青島市のGDPや在留邦人数は上海や北京、大連と比較しても小規模ではありますが、現地工場の効
率化や新しい取引先の開拓ニーズが高まっており、第二部が始まる前から、お客様同士の熱心な交流が
繰り広げられました。ご参加者からは「事前の情報提供や、名刺交換のセッティングなど大変有効でし
た。今後もこういった機会を設けて頂くことを希望します」とのお声もいただきました。
【セミナーの様子】
【交流会の様子】
■ 今後のイベントについて
当行では下記の日程で中国国内の商談会を開催します。これらは当行のホームページや海外サポー
トネットワーク会員向けのメールなどで適宜ご案内しております。
○「FBC上海 2016 ものづくり商談会」
平成 28 年 9 月 25 日(日)∼27 日(火)
ファクトリーネットワークチャイナが主催し、当行のほか 33 の地方銀行・自治体が共催します。中
国での調達先や外注先の確保といったニーズを満たすために開催する、主に製造業のお客様向けの商談
会です。今回は参加申込を締め切っておりますが、当日見学していただくことは可能です。昨年は 493
社が出展し、約 4,500 社・7,300 人が来場し、12,000 件にのぼる商談が行われました。
○「2016 大連−地方銀行合同ビジネス商談会」 平成 28 年 11 月 18 日(金)
当行ほか 16 の地方銀行と大連市人民政府が主催する商談会です。大連市人民政府の協力の下、主に工
業製品や食品関連を取扱うお客様向けに、日系現地法人のみならず、中国のローカル企業とも商談をす
ることができる点に特色があります。昨年は日系企業 119 社が参加し商談相手となる中国企業は 385
社が来場し 2,111 件の商談が行われました。現在参加企業を募集しており、申込期限は 8 月 18 日とな
っています。
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4.香港:「香港会議展覧中心」
香港駐在員事務所
十六銀行は平成 28 年 1 月に業務提携を開始した香港貿易発展局(HKTDC)が主催するアジア最大級の
食品見本市「Food Expo 2016」に十六銀行ブースを確保し、お取引企業様と一緒に参加いたします。
「Food
Expo 2016」は香港の湾仔(ワンチャイ)にある「香港会議展覧中心(香港コンベンション&エキシビ
ションセンター)」で 8 月 11 日∼8 月 15 日(十六銀行のブースがあるトレード・ホールは 8 月 11 日∼
8 月 13 日)に行われます。
【概要】
香港会議展覧中心は香港島北部、湾仔(ワンチャイ)地区に
位置する展示施設と会議施設(コンベンション・センター)
に高層オフィスビル、ホテル、コンドミニアムなどを併せた
複合施設です。HKCEC と略されます。香港では最大のコンベ
ンション施設で、重要な会議や展示会などのイベントが催さ
れます。返還記念式典もここで行われました。
他に、香港国際空港の隣に亜洲国際博覧館(アジア・ワール
ド・エキスポ)
、九龍半島側には香港国際展貿中心(ホンコ
香港会議展覧中心
ン・インターナショナル・エキシビション・センター)があ
り、名前が似ていますので注意ください。
【アクセス】
香港国際空港からタクシーで 45 分ほど、料金は 400HKD 前後
(5,000 円∼6,000 円)です。電車の場合は香港国際空港か
らエアポートエクスプレス(機場快線)で香港駅まで行き
(100HKD:1,400 円)、地下鉄(MTR)へ乗り換えて 2 駅です
が、滞在するホテルに先に行く場合、香港駅からエアポート
エクスプレス利用者専用の無料シャトルバスが出ています
エキスポに向かう人たち
ので、こちらを利用されるとお得です。
地下鉄を利用した場合は MTR 港湾線の湾仔(ワンチャイ)駅
で降ります。駅から香港会議展覧中心まで徒歩で 10 分強です
が、あちらこちらの看板に「香港会議展覧中心(HKCEC)
」と
書かれていますので迷うことはないかと思います。また、駅
から香港会議展覧中心やその周辺にある中環広場(セントラ
ルプラザ)
、入境事務大楼(イミグレーションタワー)、湾仔
政府大楼(ワンチャイタワー)などは 2 階の高さの歩道橋で
繋がっています。この周辺を歩くときはこの歩道橋を通るほ
歩道橋
うが近道です。路上の歩道を歩くと、交差点に横断歩道がなかったり、ガードレールで通れなかったり、
目的地まで非常に大回りになってしまいます。
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【周辺】
香港会議展覧中心の周辺は埋め立てと再開発で整備された
地域で、入国管理局や税務署、政府ビルなどの公共施設が多
くあります。また高層オフィスタワーも数多くあり、香港の
ビジネス街でもあります。他方で、湾仔駅より南側のトラム
(2 階建ての路面電車)通り近辺は昔の香港のイメージのよ
うなごちゃごちゃした下町が残っており、屋台街もあります。
近代的なビルが立ち並ぶ空間と、歴史を思わせる建物が並ぶ
空間が隣り合っているのが湾仔で、展示会の出展や視察の際
屋台街
にはこの辺りを見てまわると香港を感じることができるかと思います。
湾仔駅の「A1」
「A2」の入口の付近には外貨両替店が並んで
います。香港の繁華街には本当にたくさんの両替店が店を構
えており、いつでも気軽に両替ができ、しかも 20 種類以上
の通貨に対応しているところがほとんどです。もちろん日本
円も両替できます。ただし、定価があるわけではなく、レー
トは各店ごと、通貨ごとに全然違っています。レートは店先
の看板や、店舗の中の壁などに表示されていますので、何軒
かを見比べて、お得な店舗で両替をしてみるのが香港の楽し
両替店
み方の一つです。空港の両替店より安いところ、高いところ
が隣りあって混在しているのが香港の面白いところです。なお、夜遅くまで営業している店舗もたまに
ありますが、レートが悪いことが多いです。明るいうちに済ませておくことをお勧めいたします。
【食事など】
日本でもおなじみの「福臨門」をはじめ、湾仔周辺には十数
軒のミシュラン有星レストランがあります。食道楽の香港で
すので、展示会の出展や視察の際にはミシュラン店めぐりの
食べ歩きなども面白いのではないかと思います。
ところで、展示会へ出展されている方から、意外と昼食に困
るという声を聞きます。もちろん、香港会議展覧中心の建物
の中や、周辺のホテルなどにレストランはありますが、軽食
を食べるような店は少ないです。コンビニは周辺にたくさん
地下鉄 A1 入口付近
ありますが、日本のような「コンビニ弁当」はなく、パンか
サンドイッチ程度しか置いていません。少し遠いですが地下鉄の「A1」入口周辺やトラム通り沿い、も
しくはフェリー乗り場の方を少し東に行った新鴻基中心(サンホンカイセンター)の辺りまで出る必要
があります。また、昼の 12 時半くらいから、付近のオフィス街が昼休みになるため、こうしたお店は
大変混雑します。イベント会場を出るだけでも結構時間がかかりますので、昼食は早めにされた方がイ
ベント運営がスムーズに行くと思います。
香港会議展覧中心では、毎週のように各種の展示会やイベントが行われており、海外販路拡大に興味
をお持ちの方はこうした展示会を視察いただくことで、香港を身近に感じていただけると思います。
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5.ベトナム:「ベトナムの不動産事情」
海外サポート部 (ベトナム投資開発銀行ジャパンデスク) 中村 敦
筆者が在住するハノイ市では街中の至るところで高層マンションの建設が行われています。昨年、ハノイ市で
は前年比で 90%増となる 21,100 戸の分譲マンションが販売されました。
2015 年 7 月 1 日に住宅法が改正され、外国人でもベトナム国内の住宅を購入できるようになったこともベトナ
ムの不動産市場が活発化している要因の一つと考えられています。これまでベトナムでは、ベトナム人と結婚し
ている外国人など、一部の外国人にだけ不動産の購入が認められていましたが、法改正によりベトナムに入国
を許可された外国人であれば、分譲マンションや分譲住宅を購入できるようになりました(なお、土地について
はベトナム国民全員の所有物とされており、国が代表して管理している為、土地については使用権の取得とい
う扱いになります。使用権には期限があり、外国人が不動産を購入する場合、使用権の期間は最長 50 年間で、
1 回に限り追加で 50 年間の延長が認められています)。既に昨年 7 月から 12 月の半年間だけで、外国人が購
入した不動産は 1,000 戸を超えています。
GDP 成長率が 5-7%で推移し、経済発展の著しいベトナムでは、不動産価格の相場も上昇傾向にあります。
またタイやマレーシア、フィリピンといった近隣諸国に比べて割安な物件が多く(例:ハノイ市中心部にある高層
マンション 新築1LDK50 ㎡の物件が 1000 万円程度)、投資先としても魅力のある市場となっています。しかし
外国人の不動産購入制度はまだ始まったばかりであり、思わぬ落とし穴もありそうです。
その1つが「レッドノート」という日本でいう不動産の「権利書」または「登
記簿謄本」となる証明書を発行する手続きです。外国人に対してレッドノ
ートが交付された事例が少ないため不透明な部分も残されており、役所
の担当者レベルまでその制度や手続きが行きわたらず、購入したものの
レッドノートがなかなか公布されないという話もあります。
またベトナムでは竣工前から販売までの間にも不動産価格は上下する
ため、売買益目的で不動産の購入を行う場合、人気の物件にいち早く投
<ハノイ市内にある高層マンション>
資できれば売買益を期待できますが、外国人がそうした不動産情報を入手することは容易ではありません。さら
に、ベトナムから国外に送金を行う際には煩雑な手続きが必要になるケースが多く、不動産の売却資金を国外
に自由に出せなくなるといったリスクもあります。
こういった事情から、ベトナムで生活の基盤や、事業の拠点を持つ人以外にとっては、まだまだベトナムで不
動産を購入することはハードルが高いと考えられます。潜在的魅力は高いものの、一筋縄ではいかないベトナ
ムの不動産事情。商慣習の浸透や、それに応じた更なる制度の整備を期待したいです。
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6.インドネシア:「『 3 in 1 制度』の廃止とその後の状況」
海外サポート部 (バンクネガラインドネシアトレーニー) 三浦 武雄
世界で最も渋滞がひどいと言われるインドネシアの首都ジャカルタ。通勤ラッシュ時の交通量緩和と
して導入された「3 in 1」という制度をご存知でしょうか。この制度は、平日の朝夕の通勤時間帯(午
前 7 時〜10 時、午後 4 時半〜7 時)には、タクシー以外の車両は 1 台に 3 人以上乗っていなければジャ
カルタ中心部の目抜き通りを通行できないというものです。都心へ流入する車両数が急増したため
1992 年に導入されました。しかし、様々な理由からその効果は疑問視されてきました。まず、車両台
数自体が増えすぎていることです。また、車を止めさせての警察官による人数確認が流れを滞らせてい
ること、3 in 1 を回避した車両が流れ込む他の道路の大渋滞など、逆に渋滞を助長しているのではな
いかという意見もありました。そして、もう 1 つ大きな理由が「ジョッキー」の存在です。ジョッキー
とは、3 in 1 の制度を逆手にとり、規制区域の手前の路上に立って人数合わせのために車に同乗して
報酬を得る人たちです。本来の渋滞緩和の観点から見ると全く理念から外れていますが、3 人に満たな
い車のドライバーは 1 人もしくは 2 人のジョッキーを乗せて規制区域に入るのです。このジョッキーを
乗せるために道端で駐車する車も多く、結果として渋滞をひどくしていました。また、人数を増やすた
めに赤ちゃんをレンタルし、泣かないように睡眠薬などを飲ませて相乗りするというケースや、児童に
強制労働させたとして逮捕者が出るなど、社会的な問題となっていました。このような背景により、2016
年 4 月 5 日から 3 in 1 制度の停止が試験的に行われました。その結果、渋滞緩和の効果が薄いとして、
5 月 16 日に廃止されることが決定しました。
試験期間も含めると廃止から約 4 ヶ月が経過しまし
たが、3 in 1 が廃止されて以降ジャカルタの渋滞は悪
化しています。国際協力機構(JICA)の調査では、
調査を開始した 2014 年以降過去最悪の状態となりま
した。ジャカルタ特別州は 3 in 1 廃止後、首都圏専用
バス「トランスジャカルタ(TJ)」の利用促進のた
め、専用路線を分けるブロックを設置しました。しか
し、それによって一般用車線が狭くなるボトルネッ
ク・ポイントが新たに 4 カ所発生しました。具体的に
は、2 カ所で 2 車線減、残り 2 カ所は 1 車線減となり、
渋滞で混み合う通り(左側はTJ路線)
さらに深刻な渋滞を引き起
こしているのです。3 in 1 で規制対象となっていた
主要道路以外の道でも目に見えて渋滞が悪化している
ように感じます。私の住んでいるアパートから勤務先までは、距離にして約 3 キロです。以前は、朝の
通勤に 20 分ほど、帰りは 40 分ほどかかっていました。3 in 1 廃止後、朝の混雑は以前とさほど変わ
りませんが、夕方にはこの距離の移動に 1 時間以上かかることも珍しくありません。最近では夜 11 時
頃になってもまだ渋滞が続いており、毎日車で移動している私にとっても頭が痛い問題です。
このような事態を受け、代替策として「奇数・偶数システム」を 8 月 30 日から導入することが決定
しています。これは中国の北京などでも行われているもので、ナンバープレート末尾の数字をもとに日
によって進入車両を規制する制度です。また、渋滞緩和策の一環として電子式道路課金システム(ER
P)を来年初めにも導入する考えです。このように、現在も有効な対策を模索しているような状態です。
しかし、増えすぎた自家用車による慢性的な交通渋滞緩和の為には、乗り入れ制限などでは根本的な解
決には結びつかないのではないかと私は思います。公共交通機関利用促進や新たな道路の整備が不可欠
と言えるでしょう。
都市高速鉄道(MRT)や次世代交通システム(LRT)の建設も計画されていますが、完成にはま
だまだ時間がかかるため、ジャカルタ名物の大渋滞はこの先もしばらく解消することはなさそうです。
11
十六アジアレポート 2016 年 8 月号
7.為替相場情報
(1)人民元−円為替相場(中国人民銀行公表仲値)
(月)
(単位:1人民元当たりの日本円)
(火)
(水)
(木)
(金)
6月20日
15.92078
6月21日
15.81703
6月22日
15.88588
6月23日
15.94896
6月24日
15.94261
6月27日
15.37468
6月28日
15.31394
6月29日
15.46121
6月30日
15.50604
7月1日
15.51422
7月4日
15.42900
7月5日
15.38793
7月6日
15.14647
7月7日
15.11944
7月8日
15.07273
7月11日
15.07159
7月12日
15.30972
7月13日
15.65386
7月14日
15.57220
7月15日
15.75423
21.00
過去1年間の人民元−円相場推移
20.00
19.00
18.00
17.00
16.00
15.00
1
0
5/
7/
07
1
07
5/
/2
9
1
0
5/
8/
20
1
0
5/
9/
11
/1
15
0/
03
1
1
5/
0/
25
/1
15
1/
16
1
1
5/
2/
08
1
12
5/
/3
0
1
0
6/
1/
21
1
/
02
6/
12
/0
16
3/
05
1
0
6/
27
3/
/0
16
4/
18
1
0
6/
10
5/
1
06
6/
/0
1
1
0
6/
6/
23
1
/
07
6/
15
上記表、及びグラフはこの公表仲値を便宜的に1人民元当たりの日本円へ換算し直した相場です。
そのため、正式な人民元相場が必要な場合は、中国人民銀行にお問い合わせ下さい。
(2)ドル−円為替相場(当行公表仲値)
(単位:1ドル当たりの日本円)
(月)
(火)
(水)
(木)
(金)
6月20日
104.69
6月21日
103.82
6月22日
104.58
6月23日
104.79
6月24日
100.76
6月27日
102.18
6月28日
101.63
6月29日
102.45
6月30日
102.91
7月1日
102.98
7月4日
102.56
7月5日
102.39
7月6日
101.10
7月7日
100.98
7月8日
100.96
7月11日
100.81
7月12日
102.67
7月13日
104.65
7月14日
104.15
7月15日
105.64
130.00
過去1年間の米ドル−円相場推移
125.00
120.00
115.00
110.00
105.00
7/
15
16
/0
16
/0
6
/2
3
/0
1
10
5/
/0
6
16
16
/0
/0
4
/1
8
/2
7
16
/0
3
/0
5
16
/0
3
16
/0
2
/1
2
/2
1
12
16
/0
1
/3
0
16
/1
2
15
2/
08
15
/1
/1
1
/1
6
/2
5
15
/1
0
0/
03
15
15
/1
/0
9
/1
1
/2
0
15
/0
8
15
7/
29
15
/0
15
/0
7
/0
7
100.00
十六アジアレポート 2016 年 8 月号
(3)タイバーツ−円為替相場(当行公表仲値)
(単位:1バーツ当たりの日本円)
(月)
6月20日
(火)
2.9800
6月21日
6月27日
2.8900
7月4日
2.9300
7月11日
2.8700
(水)
2.9500
6月22日
6月28日
2.8800
7月5日
2.9200
7月12日
2.9200
(木)
(金)
2.9700
6月23日
2.9800
6月24日
2.8400
6月29日
2.9000
6月30日
7月6日
2.8800
7月7日
2.9300
7月1日
2.9300
2.8700
7月8日
2.8700
7月13日
2.9700
7月14日
2.9600
7月15日
3.0200
過去1年間のタイバーツ−円相場推移
3.8
3.6
3.4
3.2
3
15
/0
7/
07
15
/0
7/
29
15
/0
8/
20
15
/0
9/
11
15
/1
0/
03
15
/1
0/
25
15
/1
1/
16
15
/1
2/
08
15
/1
2/
30
16
/0
1/
21
16
/0
2/
12
16
/0
3/
05
16
/0
3/
27
16
/0
4/
18
16
/0
5/
10
16
/0
6/
01
16
/0
6/
23
16
/0
7/
15
2.8
(4)インドネシアルピア−円為替相場(参考値)
(単位:100ルピア当たりの日本円)
(月)
(火)
(水)
(木)
(金)
6月20日
0.7900
6月21日
0.7900
6月22日
0.7900
6月23日
0.7900
6月24日
0.7600
6月27日
0.7700
6月28日
0.7600
6月29日
0.7800
6月30日
0.7900
7月1日
0.7900
7月4日
0.7900
7月5日
0.7900
7月6日
0.7800
7月7日
0.7700
7月8日
0.7700
7月11日
0.7700
7月12日
0.7900
7月13日
0.8000
7月14日
0.8000
7月15日
0.8100
過去1年間のインドネシアルピア−円相場推移
1
0.95
0.9
0.85
0.8
0.75
15
/0
7/
07
15
/0
7/
29
15
/0
8/
20
15
/0
9/
11
15
/1
0/
03
15
/1
0/
25
15
/1
1/
16
15
/1
2/
08
15
/1
2/
30
16
/0
1/
21
16
/0
2/
12
16
/0
3/
05
16
/0
3/
27
16
/0
4/
18
16
/0
5/
10
16
/0
6/
01
16
/0
6/
23
16
/0
7/
15
0.7
13